(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241101BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241101BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241101BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20241101BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/0565
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2021561149
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2020016398
(87)【国際公開番号】W WO2021106242
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019215404
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岩本 和也
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-192596(JP,A)
【文献】特開2017-142889(JP,A)
【文献】特開2013-020915(JP,A)
【文献】米国特許第05492610(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/587
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一電極層と、
前記第一電極層の上方に位置する固体電解質層と、
前記固体電解質層の上方に位置する第二電極層と、
参照電極と、
を備え、
前記第一電極層は、
第一集電体と、
前記第一集電体と前記固体電解質層との間に位置する第一合剤層と、を有し、
前記第一集電体は、上面視にて、前記第二電極層から突出している端子部を有し、
前記固体電解質層は、前記上面視にて、前記端子部の少なくとも一部の領域に露出しており、
前記参照電極は、前記上面視にて、前記端子部の少なくとも一部の領域の内側において、前記固体電解質層と接し、
前記参照電極は、前記固体電解質層の前記第一集電体側とは反対側の面に設けられ
、
前記固体電解質層は、断面視における前記第一合剤層の側面の一部を覆い、かつ、前記端子部において前記第一集電体と接する、
電池。
【請求項2】
前記第一合剤層の一部は、前記端子部上に位置し、
前記固体電解質層は、前記第一合剤層の上面の全てを覆う、
請求項
1に記載の電池。
【請求項3】
前記第二電極層は、
第二集電体と、
前記第二集電体と前記固体電解質層との間に位置する第二合剤層と、を有し、
前記固体電解質層は、前記第二合剤層の下面の全てを覆い、断面視における前記第二合剤層の側面の一部を覆い、かつ、前記第二集電体と接する、
請求項1
または2に記載の電池。
【請求項4】
前記第二電極層は、前記上面視で矩形である矩形領域を有し、
前記端子部は、前記上面視にて、前記矩形領域における辺の一部から突出している、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記固体電解質層は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電解質を含む電池に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電解「液」を用いた電池の故障解析では、電池を解体し、次いで、正極と負極とを分離し、正極及び負極それぞれの電気特性(例えば、充放電特性又はインピーダンスなど)の測定による解析、又は、参照電極を挿入し、参照電極を用いた正極及び負極の挙動の測定による解析、が行われる。
【0003】
しかしながら、固体電解質を含む電池(例えば、全固体電池)では、正極層と固体電解質層と負極層とが一体化するように作製されるために、正極層と負極層とを破壊することなく分離することができない。
【0004】
また、電解「液」を用いた電池では、参照電極は電解液に浸っていれば機能するために、参照電極の設置個所は「ほぼ」任意に設定できる。しかしながら、全固体電池では、正極層、固体電解質層及び負極層からなる発電要素外に、参照電極を任意に設置することができない。
【0005】
そこで、特許文献1では、あらかじめ固体電解質「層内」に第3電極(参照電極)を挿入した構成が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、粉体圧縮型の全固体電池の周縁部に固体電解質を圧接したうえで第3の電極(参照電極)を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-80299号公報
【文献】特開2013-20915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、参照電極を容易に設置できる電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る電池は、第一電極層と、前記第一電極層の上方に位置する固体電解質層と、前記固体電解質層の上方に位置する第二電極層と、電極と、を備え、前記第一電極層は、第一集電体と、前記第一集電体と前記固体電解質層との間に位置する第一合剤層と、を有し、前記第一集電体は、上面視にて、前記第二電極層から突出している端子部を有し、前記固体電解質層は、上面視にて、前記端子部の少なくとも一部の領域に露出しており、前記固体電解質層は、断面視における前記第一合剤層の側面の一部を覆い、かつ、前記端子部において前記第一集電体と接し、前記電極は、前記上面視にて、前記端子部の少なくとも一部の領域の内側において、前記固体電解質層と接する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、参照電極を容易に設置できる電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る電池の概略構成を示す上面視図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線で示される位置での断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る電池の製造方法において、第一集電体に端子部を形成する工程を説明するための上面視図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1に係る電池の製造方法において、第一集電体に端子部が形成された状態を説明するための上面視図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線で示される位置での断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線で示される位置での断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る電池の製造方法において、第二電極層を作製する工程を説明するための上面視図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1の変形例1に係る電池の概略構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1の変形例2に係る電池の概略構成を示す断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1の変形例3に係る電池の概略構成を示す上面視図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係る電池の概略構成を示す上面視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の一態様を得るに至った経緯)
本発明者らは、固体電解質を含む電池、特に薄型積層全固体電池に参照電極を設置する場合に、以下の課題があることを見出した。
【0013】
上記特許文献1の構成では、参照電極は、固体電解質層内に挿入及び埋設されているために、リチウムイオンの伝導経路(流路)が阻害される。また、第三電極は、固体電解質層内に挿入及び埋設されているために、固体電解質層を薄くできない。また、正極又は負極と、参照電極とが薄い固体電解質層を隔てて存在するために、正極又は負極と、参照電極とが短絡する恐れがある。このように、特許文献1の構成には、上記の課題がある。
【0014】
また、特許文献2の構成は、例えば、真空プロセスを用いた薄膜全固体電池、又は、バインダーを用いたスラリーを塗布し乾燥して作製される全固体電池などの薄型積層全固体電池の場合には、固体電解質層が薄く脆いため、固体電解質層によって参照電極を支持することが困難である。そのため、参照電極付近の固体電解質層が破損しやすく、参照電極の設置が容易ではない。また、固体電解質層が破損した場合、固体電解質層上に設けられた参照電極が他の発電要素と接触して短絡を発生させる恐れがあるなど、電池の安全性が低くなる。電池において安全性の確保は重要であり、このように電池の安全性が低下する場合には、参照電極を容易に設置できない。
【0015】
そこで、本開示では、全固体電池、特に薄型積層全固体電池であって、参照電極を容易に設置できる電池を提供する。
【0016】
(本開示の概要)
本開示の一形態の概要は、以下の通りである。
【0017】
本開示の一態様に係る電池は、第一電極層と、前記第一電極層の上方に位置する固体電解質層と、前記固体電解質層の上方に位置する第二電極層と、を備え、前記第一電極層は、第一集電体と、前記第一集電体と前記固体電解質層との間に位置する第一合剤層と、を有し、前記第一集電体は、上面視にて、前記第二電極層から突出している端子部を有し、前記固体電解質層は、上面視にて、前記端子部の少なくとも一部の領域に露出しており、前記固体電解質層は、断面視における前記第一合剤層の側面の一部を覆い、かつ、前記端子部において前記第一集電体と接する。一例として、前記断面視において、前記第一合剤層の側面の一部は、前記端子部の方を向いている。
【0018】
これにより、固体電解質層は、上面視にて、第二電極層から突出し、端子部の上方で露出する領域を有する。そのため、固体電解質層の露出する領域上に、参照電極を設けることができる。つまり、電池に対して新たに専用の参照電極を設置するための端子構造を設けることなく、参照電極を設けることができ、電池に参照電極の機能を付与することが可能となる。また、固体電解質層の露出する領域は、第一集電体の端子部に支持されているため、固体電解質層の破損が生じにくい。さらに、参照電極が、第一電極層と第二電極層との間に挿入される必要がないため、参照電極と第一電極層又は第二電極層との短絡が抑制される。よって、本態様の電池によれば、参照電極を容易に設置できる。さらに、第一合剤層の端子部側の側面が固体電解質層で覆われる。そのため、固体電解質層の端子部の上方で露出する領域に、参照電極が設けられる場合に、参照電極が第一合剤層と接触することによる短絡が抑制される。
【0019】
また、例えば、前記第一合剤層の一部は、前記端子部上に位置し、前記固体電解質層は、前記第一合剤層の上面の全てを覆ってもよい。
【0020】
これにより、第一合剤層の上面が露出しない。そのため、第一合剤層の上方の固体電解質層に参照電極が設けられる場合に、参照電極が第一合剤層と接触することによる短絡が抑制される。
【0021】
また、例えば、前記第二電極層は、第二集電体と、前記第二集電体と前記固体電解質層との間に位置する第二合剤層と、を有し、前記固体電解質層は、前記第二合剤層の下面の全てを覆い、前記断面視における前記第二合剤層の側面の一部を覆い、かつ、前記第二集電体と接してもよい。一例として、前記断面視において、前記第二合剤層の側面の一部は、前記端子部の方を向いている。
【0022】
これにより、第二合剤層の下面及び端子部側の側面が固体電解質層で覆われる。そのため、固体電解質層の端子部の上方で露出する領域に、参照電極が設けられる場合に、参照電極が第二合剤層と接触することによる短絡が抑制される。
【0023】
また、例えば、前記第2電極は、上面視で矩形である矩形領域を有し、前記端子部は、上面視にて、前記矩形領域における辺の一部から突出していてもよい。
【0024】
これにより、電池の発電要素として機能しない端子部の幅を狭くすることができる。そのため、電池の重量エネルギー密度の低下を抑制しつつ、参照電極を容易に設置できる。
【0025】
また、例えば、前記電池は、電極をさらに備え、前記電極は、前記領域において、前記固体電解質層と接してもよい。
【0026】
これにより、上記電池の固体電解質層の露出する領域上に電極が設けられるため、容易に電極が設置される。よって、電極が参照電極として機能する場合には、電池に新たな参照電極を設置することなく、参照電極の機能が付与された電池が実現される。
【0027】
また、例えば、前記固体電解質層は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含んでもよい。
【0028】
これにより、固体電解質を含むリチウムイオン電池において、参照電極を容易に設置できる。
【0029】
以下、実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0030】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。
【0031】
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、及び、平坦、矩形などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0032】
また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0033】
また、本明細書及び図面において、x軸、y軸及びz軸は、三次元直交座標系の三軸を示している。各実施の形態では、z軸方向を電池の厚み方向としている。また、z軸の正の方向をz軸方向上側とし、z軸の負の方向をz軸方向下側としている。また、本明細書において、「厚み方向」とは、各層が積層された面に垂直な方向のことである。
【0034】
また、本明細書において「上面視」とは、z軸方向上側からz軸に沿って電池を見た場合を意味する。
【0035】
また、本明細書において、電池の構成における「上方」及び「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)及び下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」及び「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0036】
(実施の形態1)
まず、実施の形態1に係る電池について説明する。
【0037】
[電池の構造]
まず、本実施の形態に係る電池の構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る電池100の概略構成を示す上面視図である。
図2は、
図1のII-II線で示される位置での断面図である。
図2には、電池100のうち、端子部13を含む領域の断面が示されている。
【0038】
図1及び
図2に示されるように、電池100は、第一電極層10と、第一電極層10の上方に位置する固体電解質層30と、固体電解質層30の上方に位置する第二電極層20と、を備える。
【0039】
第一電極層10は、第一集電体11と、第一集電体11と固体電解質層30との間に位置する第一合剤層12と、を有する。また、第一電極層10は、上面視にて、第二電極層20と重なり、矩形である発電領域14を有する。第二電極層20は、第一電極層10に対向する。第二電極層20は、第二集電体21と、第二集電体21と固体電解質層30との間に位置する第二合剤層22と、を有する。また、第二電極層20は、上面視にて、第一電極層10と重なり、矩形である発電領域24を有する。本明細書において、発電領域14及び発電領域24は、矩形領域の一例である。
【0040】
電池100は、例えば、薄型積層全固体電池である。第一集電体11及び第二集電体21の厚みは、例えば、それぞれ5μm以上100μm以下である。また、第一合剤層12及び第二合剤層22の厚みは、例えば、それぞれ5μm以上300μm以下である。また、固体電解質層30の厚みは、例えば、5μm以上150μm以下である。
【0041】
第一集電体11は、上面視にて、第二電極層20から突出している端子部13を有する。具体的には、第一集電体11は、上面視にて、第二電極層20の発電領域24と重なる矩形の領域と、そこから突出する端子部13と、を有する。例えば、上面視での第二電極層20の外周は、第二集電体21の外周であるため、端子部13は、上面視にて、第二集電体21から突出している。端子部13は、上面視にて、第二電極層20の発電領域24における、辺の一部から突出している。そのため、端子部13のx軸方向(言い換えると、端子部13が第二電極層20から突出する方向と直交する方向)の幅は、発電領域14及び発電領域24のx軸方向の幅よりも短い。端子部13のx軸方向の幅は、例えば、発電領域14及び発電領域24のx軸方向の幅の半分以下である。これにより、発電要素として機能しない端子部13の幅を小さくすることができ、電池100の重量エネルギー密度が向上する。また、端子部13の幅が小さくなることで、他の端子部等との接触する可能性を低減できるため、短絡が抑制される。
【0042】
端子部13の形状は、図示されている例では矩形であるが、矩形以外の形状であってもよい。端子部13は、例えば、電池100から電流を取り出すための端子として用いられる。また、端子部13は、端子部13上に第一合剤層12及び固体電解質層30が設けられていない領域を有し、端子部13の上下面が露出している。これにより、電流を取り出すための導線等を端子部13の上下面から挟み込むようにして接続できるため、機械的強度の高い接続が可能となる。
【0043】
第一合剤層12は、第一集電体11に接しており、第一集電体11の上方に位置する。第一合剤層12の一部は、上面視にて、発電領域14に位置し、第一合剤層12の別の一部は、第一集電体11の端子部13上に位置する。端子部13上の第一合剤層12の上面は、固体電解質層30で覆われており、露出していない。第一合剤層12は、上面視にて、発電領域14の全域に位置しているが、これに限らない。第一合剤層12は、上面視にて、発電領域14よりも小さい面積であってもよく、発電領域14の内側に位置していてもよい。第一合剤層12が発電領域14の内側に位置する場合、第一合剤層12の側面及び第一集電体11と接するように固体電解質層30が設けられていてもよい。
【0044】
第二集電体21は、上面視にて、第一電極層10から突出している端子部23を有する。具体的には、第二集電体21は、上面視にて、第一電極層10の発電領域14と重なる矩形の領域と、そこから突出する端子部23と、を有する。例えば、上面視での第一電極層10の外周は、第一集電体11の外周であるため、端子部23は、上面視にて、第一集電体11から突出している。端子部23は、上面視にて、第一電極層10の発電領域14における、辺の一部から突出している。そのため、端子部23のx軸方向(言い換えると、端子部23が第一電極層10から突出する方向と直交する方向)の幅は、発電領域14及び発電領域24のx軸方向の幅よりも短い。端子部23のx軸方向の幅は、例えば、発電領域14及び発電領域24のx軸方向の幅の半分以下である。端子部23の形状は、図示されている例では矩形であるが、矩形以外の形状であってもよい。また、端子部23が第一電極層10から突出する方向は、端子部13が第二電極層20から突出する方向と同じである。端子部23は、例えば、電池100から電流を取り出すための端子として用いられる。
【0045】
なお、第二集電体21は、端子部23を有していなくてもよい。例えば、第二集電体21と導電材料からなるリード層とが接合されることにより、電池100から電流が取り出されてもよい。
【0046】
第二合剤層22は、第二集電体21に接しており、第二集電体21の下方に位置する。第二合剤層22は、上面視にて、発電領域24に位置する。第二合剤層22は、上面視にて、発電領域24の全域に位置しているが、これに限らない。第二合剤層22は、上面視にて、発電領域24よりも小さい面積であってもよく、発電領域24の内側に位置していてもよい。第二合剤層22が発電領域24の内側に位置する場合、第二合剤層22の側面及び第二集電体21と接するように固体電解質層30が設けられていてもよい。
【0047】
固体電解質層30は、第一電極層10と第二電極層20との間に位置する。具体的には、固体電解質層30は、第一合剤層12と第二合剤層22との間に位置し、第一合剤層12の上面及び第二合剤層22の下面に接している。固体電解質層30は、第一合剤層12の上面及び第二合剤層22の下面を全て覆っている。これにより、第一合剤層12及び第二合剤層22が、他の電極等と接触することによる短絡が抑制される。
【0048】
固体電解質層30は、上面視にて、発電領域14及び発電領域24と重なる矩形の領域と、そこから突出する露出領域31と、を有する。露出領域31は、上面視にて、端子部13の内側に位置し、重なっている。つまり、固体電解質層30は、上面視にて、端子部13の一部の領域に露出している。固体電解質層30は、露出領域31において、第一電極層10の上面、具体的には、第一合剤層12の上面と接している。上面視にて、端子部13上における、固体電解質層30の側面の位置は、第一合剤層12の側面の位置と一致している。なお、固体電解質層30は、端子部13上において、第一合剤層12の側面の少なくとも1つの側面を覆い、かつ、第一集電体11と接していてもよい。
【0049】
露出領域31のy軸方向の長さ及びx軸方向の幅は、参照電極を設置できる大きさであればよく、例えば、いずれも5mm以上である。
【0050】
次に、電池100を構成する各部の材料について説明する。
【0051】
本実施の形態において、第一集電体11と第一合剤層12とを備える第一電極層10及び第二集電体21と第二合剤層22とを備える第二電極層20のうち、一方が正極集電体と正極合剤層とを備える正極層であり、他方が負極集電体と負極合剤層とを備える負極層である。
【0052】
正極集電体及び負極集電体の材料としては、公知の材料が用いられうる。正極集電体及び負極集電体には、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス、白金若しくは金、又は、これらの2種以上の合金などからなる箔状体、板状体又は網目状体などが用いられる。
【0053】
正極合剤層は、少なくとも正極活物質を含み、必要に応じて、固体電解質、導電助剤及び結着剤(バインダー)のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0054】
正極活物質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン又はマグネシウムイオンを吸蔵及び放出(挿入及び脱離、又は、溶解及び析出)できる公知の材料が用いられうる。正極活物質としては、リチウムイオンを離脱および挿入することができる材料の場合、例えば、コバルト酸リチウム複合酸化物(LCO)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LNO)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LMO)、リチウム-マンガン-ニッケル複合酸化物(LMNO)、リチウム-マンガン-コバルト複合酸化物(LMCO)、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物(LNCO)又はリチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物(LNMCO)などが用いられる。
【0055】
固体電解質としては、リチウムイオン伝導体、ナトリウムイオン伝導体又はマグネシウムイオン伝導体など公知の材料が用いられうる。固体電解質としては、無機固体電解質及び高分子固体電解質(ゲル状固体電解質含む)のいずれもが用いられうる。無機固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質又は酸化物固体電解質などが用いられる。硫化物固体電解質としては、リチウムイオンを伝導できる材料の場合、例えば、硫化リチウム(Li2S)及び五硫化二リン(P2S5)からなる合成物が用いられる。また、硫化物固体電解質としては、Li2S-SiS2、Li2S-B2S3又はLi2S-GeS2などの硫化物が用いられてもよく、上記硫化物に添加剤としてLi3N、LiCl、LiBr、Li3PO4及びLi4SiO4のうち少なくとも1種が添加された硫化物が用いられてもよい。
【0056】
酸化物固体電解質としては、リチウムイオンを伝導できる材料の場合、例えば、Li7La3Zr2O12(LLZ)、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3(LATP)又は(La,Li)TiO3(LLTO)などが用いられる。
【0057】
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト又はカーボンファイバーなどの導電材料が用いられる。また、結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの結着用バインダーなどが用いられる。
【0058】
負極合剤層は、少なくとも負極活物質を含み、必要に応じて、正極合剤層と同様に固体電解質、導電助剤及び結着剤のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0059】
負極活物質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン又はマグネシウムイオンを吸蔵及び放出(挿入及び脱離、又は、溶解及び析出)できる公知の材料が用いられうる。負極活物質としては、リチウムイオンを離脱および挿入することができる材料の場合、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維若しくは樹脂焼成炭素などの炭素材料、金属リチウム、リチウム合金又はリチウムと遷移金属元素との酸化物などが用いられる。
【0060】
固体電解質層30は、少なくとも固体電解質を含み、必要に応じて、結着剤を含んでいてもよい。固体電解質層30は、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含んでいてもよい。
【0061】
固体電解質及び結着剤としては、上記の固体電解質及び結着剤が用いられうる。
【0062】
以上のように、電池100は、第一電極層10と、第一電極層10の上方に位置する固体電解質層30と、固体電解質層30の上方に位置する第二電極層20と、を備える。第一電極層10は、第一集電体11と、第一集電体11と固体電解質層30との間に位置する第一合剤層12と、を有する。第一集電体11は、上面視にて、突出している端子部13を有する。固体電解質層30は、上面視にて、端子部13の少なくとも一部の領域に露出している。
【0063】
電池100によれば、固体電解質層30は、上面視にて、第二電極層20から突出し、端子部13の上方で露出する露出領域31を有する。そのため、固体電解質層30の露出領域31上に、参照電極を設けることができる。つまり、素電池である電池100に対して新たに専用の参照電極を設置するための端子構造を設けることなく、参照電極を設けることができ、電池100に参照電極の機能を付与することが可能となる。例えば、新たな端子構造を設けるための部材の使用量を低減できる。また、固体電解質層30の露出領域31は、第一集電体11の端子部13に支持されているため、固体電解質層30の破損が生じにくい。さらに、参照電極が、第一電極層10と第二電極層20との間に挿入される必要がないため、参照電極と第一電極層10又は第二電極層20との短絡が抑制される。よって、電池100は、参照電極を容易に設置できる。その結果、例えば、参照電極を用いた故障解析が容易となりうる。
【0064】
また、電池100の外装体外部に、予め参照電極と接続される端子を引き出しておくと、参照電極で電池100の正極層及び負極層のそれぞれの充放電状態が測定可能である。その結果、電池100の健康状態(Battery Health又はState of Healthともいわれる)を監視及び制御が可能となり、電池100の信頼性を高めることができる。
【0065】
[電池の製造方法]
次に、本実施の形態に係る電池100の製造方法について説明する。
【0066】
まず、第一集電体11上に第一合剤層12を形成することで、第一電極層10が作製される。第一電極層10の製法の一例としては、公知の塗布工法等が挙げられる。
【0067】
例えば、正極活物質及び負極活物質の一方と無機固体電解質と結着剤と必要に応じ導電助剤とを有機溶剤中で混合し、スラリーを作製する。続いて、該スラリーを第一集電体11上に塗布し、乾燥することで、第一集電体11上に第一合剤層12が形成される。上記無機固体電解質に代えて高分子固体電解質材料を用いてもよい。
【0068】
また、別の製法としては、第一集電体11上に、正極活物質又は負極活物質の材料をターゲット(蒸発源)とした、スパッタ法又は蒸着法など公知の真空薄膜形成プロセスによって第一合剤層12を形成する方法が挙げられる。
【0069】
さらに別の製法としては、正極活物質又は負極活物質と無機固体電解質と必要に応じ導電助剤との混合物をエアロゾルデポジション法(AD法)又は静電スクリーン印刷法で第一集電体11上に堆積させて第一合剤層12を形成する方法が挙げられる。
【0070】
第一集電体11上に第一合剤層12を形成する際に、後の工程で端子部13となる箇所で第一集電体11を露出させるために、第一電極層10は、例えば、上面視にて、第一集電体11の面積よりも第一合剤層12の面積の方が小さくなり、第一集電体11の一部が露出するように形成される。
【0071】
得られた第一電極層10は必要に応じ、平板プレス装置、ロールプレス装置又は冷間等方圧加圧法(CIP:Cold Isostatic Pressing)用の装置などにより圧縮プレスすることもできる。
【0072】
次に、得られた第一電極層10上に、固体電解質層30が形成される。
【0073】
固体電解質層30の製法には、例えば、第一電極層10の作製と同様の製法、すなわち、塗布工法、真空薄膜形成プロセス、AD法又は静電スクリーン印刷法が用いられる。固体電解質層30の材料には、固体電解質又は固体電解質と結着剤との混合物が用いられる。固体電解質層30は、上面視で第一合剤層12の上面と一致する形状で形成される。
【0074】
次に、第一集電体11に端子部13を形成する。
図3は、電池100の製造方法において、第一集電体11に端子部13を形成する工程を説明するための上面視図である。
図4は、電池100の製造方法において、第一集電体11に端子部13が形成された状態を説明するための上面視図である。
図5は、
図4のV-V線で示される位置での断面図である。
図6は、
図4のVI-VI線で示される位置での断面図である。
【0075】
上述の工程により、
図3に示されるように、第一電極層10の第一合剤層12上に固体電解質層30が形成された積層体101が形成されている。積層体101において、上面視にて、第一集電体11は、第一集電体11上に第一合剤層12及び固体電解質層30が形成されていない領域を有する。
【0076】
端子部13は、第一集電体11上に第一合剤層12及び固体電解質層30が形成されていない領域を含むように、切断して又は打ち抜いて形成される。具体的には、積層体101が、点線で示される切断線C1の位置で切断又は打ち抜きされることで、
図4に示される積層体102が形成される。これにより、端子部13が形成された第一集電体11が得られる。
【0077】
また、
図4から
図6に示されるように、積層体102は、第一集電体11と第一合剤層12とを有する第一電極層10上に、固体電解質層30が形成されている。第一合剤層12及び固体電解質層30の側面は、上面視にて同じ位置であり、第一合剤層12及び固体電解質層30の一部は、第一集電体11の端子部13上に形成されている。また、端子部13以外の領域では、第一集電体11、第一合剤層12及び固体電解質層30の側面は、上面視にて同じ位置である。
【0078】
次に、第二電極層20を作製する。第二電極層20は、上述の第一電極層10と同様の方法で作製されうる。第二電極層20の作製の際には、正極活物質及び負極活物質のうち第一電極層10の作成で用いられなかった方の活物質が用いられる。
図7は、電池100の製造方法において、第二電極層20を作製する工程を説明するための上面視図である。まず、
図7に示されるように、第二集電体21上に、第二合剤層22が形成されることで、積層体103が作製される。第二集電体21上に第二合剤層22を形成する際に、後の工程で端子部23となる箇所で第二集電体21を露出させるために、積層体103は、例えば、上面視にて、第二集電体21の面積よりも第二合剤層22の面積の方が小さくなり、第二集電体21の一部が露出するように形成される。
【0079】
次に、得られた積層体103が、点線で示される切断線C2の位置で切断又は打ち抜きされることで、
図1に示される電池100と同じ形状の第二電極層20が形成される。上面視にて、本実施の形態の製造方法で形成される第二電極層20の形状は、例えば、第一電極層10の形状と同じである。つまり、切断線C2の形状は、
図3に示される切断線C1の形状と同じ形状である。これにより、同一のプロセス又は金型等を用いた切断又は打ち抜きによって、第一電極層10及び第二電極層20の形状を加工できる。
【0080】
次に、積層体102上に、固体電解質層30と第二合剤層22とが接するように、得られた第二電極層20を上下反転させて積層し、接合(圧接)することにより、電池100が得られる。この際、
図1に示される第一電極層10及び第二電極層20の向きとなるように、積層体102と第二電極層20とは積層される。
【0081】
また、第二電極層20の第二合剤層22上にも固体電解質層30を形成し、第二電極層20上の固体電解質層30と第一電極層10上の固体電解質層30とが接するように積層し、接合することにより、電池100を得てもよい。
【0082】
また、第二電極層20は、積層体102上に、第二合剤層22を形成し、さらに第二合剤層22上に、第二集電体21を積層することで、作製されてもよい。
【0083】
なお、電池100において、固体電解質層30は、上面視にて、端子部13の少なくとも一部の領域に露出しているが、これに限らない。例えば、上面視にて、固体電解質層30は、端子部23の少なくとも一部の領域に露出していてもよい。つまり、固体電解質層30は、端子部13上及び端子部23上の少なくとも一方に形成されていてもよい。
【0084】
[変形例1]
以下では、実施の形態1の変形例1について説明する。なお、以下の変形例1の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0085】
図8は、本変形例に係る電池100aの概略構成を示す断面図である。
図8には、
図2と同様に、電池100aのうち端子部13を含む領域の断面が示されている。電池100aは、実施の形態1に係る電池100と比較して、第一電極層10及び固体電解質層30の代わりに、第一電極層10a及び固体電解質層30aを備える点で相違する。
【0086】
図8に示されるように、電池100aは、第一電極層10aと、第一電極層10aの上方に位置する固体電解質層30aと、固体電解質層30aの上方に位置する第二電極層20と、を備える。
【0087】
第一電極層10aは、第一集電体11と、第一集電体11と固体電解質層30aとの間に位置する第一合剤層12aと、を有する。
【0088】
第一合剤層12aは、第一集電体11に接しており、第一集電体11の上方に位置する。第一合剤層12aは、第一集電体11の端子部13上には設けられていない。なお、第一合剤層12aは、一部が端子部13上に設けられていてもよい。
【0089】
固体電解質層30aは、第一電極層10aと第二電極層20aとの間に位置する。固体電解質層30aは、上面視にて、端子部13の一部の領域に露出し、第二電極層20aから突出する露出領域31aを有する。固体電解質層30aは、第一合剤層12aの上面及び第二合剤層22の下面を全て覆っている。固体電解質層30aは、断面視における第一合剤層12aの端子部13側の側面を覆い、かつ、端子部13において第一集電体11と接する。これにより、端子部13の一部の領域に露出している固体電解質層30a上に参照電極が設置される場合に、参照電極と第一合剤層12aとの接触による短絡が抑制される。
【0090】
電池100aは、例えば、上述の製造方法において、第一電極層10a上に固体電解質層30aを形成する際に、第一合剤層12aの上面及び端子部13が形成される側の側面を覆うように固体電解質層30aを形成することによって得られる。
【0091】
[変形例2]
以下では、実施の形態1の変形例2について説明する。なお、以下の変形例2の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0092】
図9は、本変形例に係る電池100bの概略構成を示す断面図である。
図9には、
図2と同様に、電池100bのうち端子部13を含む領域の断面が示されている。電池100bは、実施の形態1に係る電池100と比較して、第一電極層10、第二電極層20及び固体電解質層30の代わりに、第一電極層10b、第二電極層20b及び固体電解質層30bを備える点で相違する。
【0093】
図9に示されるように、電池100bは、第一電極層10bと、第一電極層10bの上方に位置する固体電解質層30bと、固体電解質層30bの上方に位置する第二電極層20bと、を備える。
【0094】
第一電極層10bは、第一集電体11と、第一集電体11と固体電解質層30bとの間に位置する第一合剤層12bと、を有する。第二電極層20bは、第二集電体21と、第二集電体21と固体電解質層30bとの間に位置する第二合剤層22bと、を有する。
【0095】
第一合剤層12bは、第一集電体11に接しており、第一集電体11の上方に位置する。第一合剤層12bは、第一集電体11の端子部13上には設けられていない。なお、第一合剤層12bは、一部が端子部13上に設けられていてもよい。
【0096】
第二合剤層22bは、第二集電体21に接しており、第二集電体21の下方に位置する。
【0097】
固体電解質層30bは、第一電極層10bと第二電極層20bとの間に位置する。固体電解質層30bは、上面視にて、端子部13の一部の領域に露出し、第二電極層20bから突出する露出領域31bを有する。固体電解質層30bは、第一合剤層12bの上面及び第二合剤層22bの下面を全て覆っている。固体電解質層30bは、断面視における第一合剤層12bの端子部13側の側面を覆い、かつ、端子部13において第一集電体11と接する。また、固体電解質層30bは、断面視における第二合剤層22bの端子部13側の側面を覆い、かつ、第二集電体21と接する。これにより、端子部13の一部の領域に露出している固体電解質層30b上に参照電極が設置される場合に、参照電極と第一合剤層12b及び第二合剤層22bとの接触による短絡が抑制される。
【0098】
電池100bは、例えば、以下の方法で作製される。上述の製造方法において、第一電極層10b上に固体電解質層30bを形成する際に、第一合剤層12bの上面及び端子部13が形成される側の側面を覆うように固体電解質層30bを形成する。さらに、第二集電体21上に第二合剤層22bを形成した後、さらに、第二合剤層22b上に固体電解質層30bを形成する。その際、第二合剤層22bの上面及び端子部13が形成される側の側面を覆うように固体電解質層30bを形成する。このようにして得られた、固体電解質層30bが積層された第一電極層10bと固体電解質層30bが積層された第二電極層20bとを、固体電解質層30b同士が接するように積層することで、電池100bが得られる。
【0099】
[変形例3]
以下では、実施の形態1の変形例3について説明する。なお、以下の変形例3の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0100】
図10は、本変形例に係る電池100cの概略構成を示す上面視図である。
図11は、
図10のXI-XI線で示される位置での断面図である。電池100cは、実施の形態1に係る電池100と比較して、第一電極層10、第二電極層20及び固体電解質層30の代わりに、第一電極層10c、第二電極層20c及び固体電解質層30cを備える点で相違する。
【0101】
図10及び
図11に示されるように、電池100cは、第一電極層10cと、第一電極層10cの上方に位置する固体電解質層30cと、固体電解質層30cの上方に位置する第二電極層20cと、を備える。第一電極層10c及び第二電極層20cは、それぞれ、上面視にて矩形である。
【0102】
第一電極層10cは、第一集電体11cと、第一集電体11cと固体電解質層30cとの間に位置する第一合剤層12cと、を有する。また、第一電極層10cは、上面視にて、第二電極層20cと重なり、矩形である発電領域14cを有する。第二電極層20cは、第二集電体21cと、第二集電体21cと固体電解質層30cとの間に位置する第二合剤層22cと、を有する。また、第二電極層20cは、上面視にて、第一電極層10cと重なり、矩形である発電領域24cを有する。電池100cにおいて、第一集電体11cと第二集電体21cとがy軸方向にずれて積層されている。これにより、後述する端子部13c及び端子部23cが形成されている。第一集電体11cと第二集電体21cとは、上面視にて、x軸方向(言い換えると、端子部13cが第二電極層20cから突出する方向と直交する方向)の幅が同じである。
【0103】
第一集電体11cは、上面視にて、第二電極層20cから突出している端子部13cを有する。具体的には、第一集電体11cは、上面視にて、第二電極層20cの発電領域24cと重なる矩形の領域と、そこから突出する端子部13cと、を有する。第一集電体11cは、上面視にて矩形である。端子部13cは、上面視にて、第二電極層20cとy軸方向にずれて積層された第一集電体11cにおける第二電極層20cと重ならない箇所である。端子部13cのx軸方向の幅は、発電領域24c(すなわち、第二電極層20c)のx軸方向の幅と同じである。
【0104】
第一合剤層12cは、第一集電体11cに接しており、第一集電体11cの上方に位置する。第一合剤層12cの一部は、上面視にて、発電領域14cに位置する。第一合剤層12cの別の一部は、第一集電体11cの端子部13c上にも位置する。端子部13c上の第一合剤層12cの上面は、固体電解質層30cで覆われており、露出していない。
【0105】
第二集電体21cは、上面視にて、第一電極層10cから突出している端子部23cを有する。具体的には、第二集電体21cは、上面視にて、第一電極層10cの発電領域14cと重なる矩形の領域と、そこから突出する端子部23cと、を有する。第二集電体21cは、上面視にて矩形である。端子部23cは、上面視にて、第一電極層10cとy軸方向にずれて積層された第二集電体21cにおける第一電極層10cと重ならない箇所である。また、端子部23cが第一電極層10cから突出する方向は、端子部13cが第二電極層20cから突出する方向とは反対方向である。端子部23cのx軸方向の幅は、発電領域14c(すなわち、第一電極層10c)のx軸方向の幅と同じである。
【0106】
第二合剤層22cは、第二集電体21cに接しており、第二集電体21cの下方に位置する。第二合剤層22cは、上面視にて、発電領域24cに位置する。
【0107】
固体電解質層30cは、第一電極層10cと第二電極層20cとの間に位置する。具体的には、固体電解質層30cは、第一合剤層12cと第二合剤層22cとの間に位置し、第一合剤層12cの上面及び第二合剤層22cの下面に接している。固体電解質層30cは、第一合剤層12cの上面及び第二合剤層22cの下面を全て覆っている。
【0108】
固体電解質層30cは、上面視にて、発電領域14c及び発電領域24cと重なる矩形の領域と、そこから突出する露出領域31cと、を有する。露出領域31cは、上面視にて、端子部13cと重なる領域に位置する。つまり、固体電解質層30cは、上面視にて、端子部13cの一部の領域に露出している。
【0109】
電池100cは、例えば、上述の
図3に示される積層体101と
図7に示される積層体103とを、固体電解質層30と第二合剤層22とが接し、かつ、
図10に示される電池100cにおける位置関係となるように積層し、接合することによって、作製される。このようにして積層されることで、第一集電体11cと第二集電体21cとがy軸方向にずれて積層され、端子部13c、端子部23c及び露出領域31cが形成される。電池100cにおいては、端子部13c及び端子部23cの形成のために、切断又は打ち抜きを行う必要がない。よって、簡易に電池100cを形成することができる。
【0110】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2に係る電池について説明する。なお、以下の実施の形態2の説明において、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略又は簡略化する。
【0111】
図12は、本実施の形態に係る電池200の概略構成を示す上面視図である。
図13は、
図12のXIII-XIII線で示される位置での断面図である。
図13には、電池200のうち、端子部13を含む領域の断面が示されている。電池200は、実施の形態1に係る電池100と比較して、電極40をさらに備える点で相違する。
【0112】
図12及び
図13に示されるように、電池200は、第一電極層10と、第二電極層20と、固体電解質層30と、電極40とを備える。
【0113】
電極40は、露出領域31において、固体電解質層30と接している。電極40は、上面視にて、露出領域31の内側に位置し、第二電極層20と離間している。図示されている例では、電極40の厚みは、第二合剤層22の厚みより小さいが、これに限らず、第二合剤層22の厚みよりも大きくてもよい。
【0114】
なお、電極40と第二合剤層22との接触を抑制するために、電極40と第二合剤層22との間に、固体電解質層又は絶縁性の樹脂材料からなる絶縁層が形成されていてもよい。これにより、電極40と第二合剤層22との短絡が抑制される。樹脂材料としては、電池の封止部材として用いられる公知の材料が用いられうる。
【0115】
電極40は、例えば、正極層又は負極層の電位の測定の基準として用いられる参照電極である。参照電極は、例えば、電池200の故障解析又は作動状態の監視及び充放電制御などに用いられうる。これにより、電池200に、参照電極の機能が付与される。電極40は、必要に応じて集電体を含んでいてもよい。電極40は、端子等と接続される。参照電極の材料としては、固体電解質中で一定の電位を示すものを用いられうる。参照電極の材料としては、固体電解質がリチウムイオン伝導体の場合、例えば、金属リチウム、銀、インジウム-リチウム合金又はリチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)などが用いられる。
【0116】
また、例えば、参照電極の材料としては、固体電解質がナトリウムイオン伝導体の場合、金属ナトリウム、銀又はカリウム-ナトリウム合金などが用いられ、固体電解質がマグネシウムイオン伝導体の場合、金属マグネシウム又は銀などが用いられる。
【0117】
電池200は、例えば、上述の製造方法において、形成された積層体102の固体電解質層30上に電極40を形成することで作成される。電極40の形成方法としては、例えば、圧接工法、塗布工法又は真空薄膜形成プロセスなどが用いられる。電極40の形成方法としては、これらの中でも、工程の簡便さから、圧接工法又は塗布工法が用いられてもよい。
【0118】
(他の実施の形態)
以上、本開示に係る電池について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものや、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0119】
例えば、上記実施の形態では、端子部13の一部の領域に固体電解質層30が露出していたが、これに限らない。固体電解質層30は、端子部13の上面を全て覆うように設けられていてもよい。
【0120】
また、例えば、上記実施の形態では、発電領域14及び発電領域24は、上面視にて、矩形であったが、これに限らない。発電領域14及び発電領域24は、上面視にて、円形、楕円形、半円形又は矩形以外の多角形などの他の形状であってもよい。
【0121】
また、例えば、上記実施の形態1及び各変形例では、端子部23が第一電極層10から突出する方向は、端子部13が第二電極層20から突出する方向と同じであったが、これに限らない。端子部23が第一電極層10から突出する方向は、端子部13が第二電極層20から突出する方向と異なっていてもよく、例えば、端子部23が第一電極層10から突出する方向と直交する方向又は反対方向であってもよい。
【0122】
また、上記実施の形態に係る電池を複数積層し、積層電池を形成してもよい。電池が複数積層される場合、全ての電池が上記実施の形態に係る電池でなくてもよい。例えば、積層電池には、端子部を有さない集電体を備える電池が含まれていてもよい。
【0123】
また、上記の実施の形態は、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本開示に係る電池は、例えば、参照電極を設けることが容易な電池として、利用されうる。本開示に係る電池は、例えば、全固体電池、とりわけ薄型積層全固体電池として、有用である。
【符号の説明】
【0125】
10、10a、10b、10c 第一電極層
11、11c 第一集電体
12、12a、12b、12c 第一合剤層
13、13c、23、23c 端子部
14、14c、24、24c 発電領域
20、20b、20c 第二電極層
21、21c 第二集電体
22、22b、22c 第二合剤層
30、30a、30b、30c 固体電解質層
31、31a、31b、31c 露出領域
40 電極
100、100a、100b、100c、200 電池
101、102、103 積層体