IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

特許7580066液体霧化システム及びそれを備える照明システム
<>
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図1
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図2
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図3
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図4
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図5
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図6
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図7
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図8
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図9
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図10
  • 特許-液体霧化システム及びそれを備える照明システム 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】液体霧化システム及びそれを備える照明システム
(51)【国際特許分類】
   B05B 17/06 20060101AFI20241101BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20241101BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20241101BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B05B17/06
H03H9/25 Z
A61L9/14
B06B1/06 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020217936
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102899
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪井 淳
(72)【発明者】
【氏名】植田 充彦
(72)【発明者】
【氏名】細見 聡彦
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121050(JP,A)
【文献】特表2016-513992(JP,A)
【文献】特表2004-504936(JP,A)
【文献】実開昭55-028456(JP,U)
【文献】特開2014-057952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 17/06
H03H 9/25
A61L 9/14
B06B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面及び裏面を有する圧電性基板と、前記圧電性基板の前記表面上に設けられており、前記圧電性基板に表面弾性波を発生させるIDT電極と、を含むSAWデバイスと、
前記SAWデバイスを駆動する駆動回路と、
前記圧電性基板の厚さ方向から見て前記表面弾性波の伝搬方向において前記IDT電極に並んでおり、前記圧電性基板の前記表面上に配置されているシート状の第1多孔質部材と、
霧化対象の液体を収容するタンクと、
前記タンク内に配置されており、前記液体を貯液する第2多孔質部材と、
第1端及び第2端を有し、前記第2多孔質部材に貯液されている前記液体を前記第1多孔質部材に輸送する棒状の第3多孔質部材と、を備え、
前記第3多孔質部材では、
前記第1端が前記第2多孔質部材内に配置され前記第2多孔質部材に接しており、
前記第2端が前記第1多孔質部材上に配置され前記第1多孔質部材に接している、
液体霧化システム。
【請求項2】
前記タンクは、
前記SAWデバイスに対向し、前記第3多孔質部材が貫通している貫通孔を有する底壁と、
前記底壁の外周縁から前記SAWデバイス側とは反対側に突出している外周壁と、
前記外周壁よりも内側に位置している筒状の内壁部と、を含み、
前記内壁部は、前記外周壁よりも内側で前記底壁から前記SAWデバイス側とは反対側に突出しており、前記圧電性基板の前記厚さ方向から見て、前記第3多孔質部材を囲んでおり、
前記液体霧化システムは、
前記第3多孔質部材の長手方向に沿った方向から見て前記内壁部と前記第3多孔質部材との間に形成されている空間を更に有する、
請求項1に記載の液体霧化システム。
【請求項3】
前記圧電性基板の前記厚さ方向における前記圧電性基板の前記表面と前記底壁の底面での前記貫通孔の開口縁との距離は、前記第3多孔質部材及び前記第1多孔質部材を介して前記圧電性基板の前記表面上に輸送された前記液体が霧化されたときに発生する液滴粒子の群に含まれる1μm以上の粒径の液滴粒子が直線的に到達する距離である、
請求項2に記載の液体霧化システム。
【請求項4】
前記タンクの前記底壁は、前記貫通孔に近づくにつれて前記圧電性基板の厚さ方向における前記圧電性基板からの距離が短くなっている、
請求項2又は3に記載の液体霧化システム。
【請求項5】
前記駆動回路は、
前記SAWデバイスに接続されている高周波電源と、
前記高周波電源を間欠動作させるタイマ回路と、を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液体霧化システム。
【請求項6】
前記SAWデバイスと前記第1多孔質部材と前記タンクと前記第2多孔質部材と前記第3多孔質部材とを含む霧化ユニットを収容しており、ミスト用の出口を有するケースと、
前記ケースに設けられて前記出口に対向しており、前記ケース内において前記出口に向かう気流を発生させるファンと、を更に備え、
前記霧化ユニットは、前記ファンと前記出口との間に配置されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の液体霧化システム。
【請求項7】
前記霧化ユニットと前記ケースと前記ファンとのセットを複数備える、
請求項6に記載の液体霧化システム。
【請求項8】
前記ケース内において前記SAWデバイスと前記出口との間に配置されており、1μm以上の粒径の液滴粒子を捕集するための障壁板と、
前記ケース内において前記障壁板の下部と前記SAWデバイスとの間に配置されている液吸収部材と、を更に備える、
請求項6又は7に記載の液体霧化システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の液体霧化システムと、
複数の光源を有する照明装置と、
前記液体霧化システムと前記照明装置とを制御する制御装置と、を備える、
照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、液体霧化システム及び照明システムに関し、より詳細には、対象液体を霧化する液体霧化システム、及びその液体霧化システムを備える照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、揮発性香気成分を含有する液体を表面弾性波素子(SAWデバイス)によって霧化する霧化部を備える匂い発生装置を開示している。
【0003】
特許文献1に開示された匂い発生装置は、電気浸透流ポンプと、表面弾性波素子と、RF増幅部(駆動回路)と、制御部と、を備える。電気浸透流ポンプは、貯蔵部と、多孔質材と、出口部と、を有する。貯蔵部には、揮発性香気成分を含有する液体が貯蔵される。電気浸透流ポンプは、貯蔵部に貯蔵された液体を、多孔質材を介して出口部から表面弾性波素子上へ供給する。
【0004】
特許文献1に開示された匂い発生装置は、液体を液滴として表面弾性波素子の表面へ排出して霧化させる。表面弾性波素子は、表面の液体に弾性表面波を伝搬することによって、液体中に縦波を生じさせ、液体を霧化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-184486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された匂い発生装置のような液体霧化システムでは、SAWデバイスの表面に供給された液体の厚みが不安定となり、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を安定して発生させることが難しかった。ここにおいて、「ナノメートルサイズ」とは、1nm~999nmである。
【0007】
本開示の目的は、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定して発生させることが可能な液体霧化システム及びそれを備える照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る一態様の液体霧化システムは、SAWデバイスと、駆動回路と、第1多孔質部材と、タンクと、第2多孔質部材と、第3多孔質部材と、を備える。前記SAWデバイスは、圧電性基板と、IDT電極と、を含む。前記圧電性基板は、表面及び裏面を有する。前記IDT電極は、前記圧電性基板の前記表面上に設けられており、前記圧電性基板に表面弾性波を発生させる。前記駆動回路は、前記SAWデバイスを駆動する。前記第1多孔質部材は、シート状である。前記第1多孔質部材は、前記圧電性基板の厚さ方向から見て前記表面弾性波の伝搬方向において前記IDT電極に並んでおり、前記圧電性基板の前記表面上に配置されている。前記タンクは、霧化対象の液体を収容する。前記第2多孔質部材は、前記タンク内に配置されており、前記液体を貯液する。前記第3多孔質部材は、棒状であり、第1端及び第2端を有する。前記第3多孔質部材は、前記第2多孔質部材に貯液されている前記液体を前記第1多孔質部材に輸送する。前記第3多孔質部材では、前記第1端が前記第2多孔質部材内に配置され前記第2多孔質部材に接しており、前記第2端が前記第1多孔質部材上に配置され前記第1多孔質部材に接している。
【0009】
本開示に係る一態様の照明システムは、上記液体霧化システムと、照明装置と、制御装置と、を備える。前記照明装置は、複数の光源を有する。前記制御装置は、前記液体霧化システムと前記照明装置とを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の液体霧化システム及び照明システムでは、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定した噴霧量で放出させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る液体霧化システムの構成図である。
図2図2は、同上の液体霧化システムにおける霧化ユニットの縦断面図である。
図3図3は、同上の液体霧化システムにおけるSAWデバイス及び第1多孔質部材の平面図である。
図4図4は、同上の液体霧化システムにおけるタンク、第2多孔質部材及び第3多孔質部材の横断面図である。
図5図5は、同上の液体霧化システムの動作説明図である。
図6図6は、実施形態2に係る液体霧化システムにおける霧化ユニットの縦断面図である。
図7図7は、同上の液体霧化システムの回路ブロック図である。
図8図8は、同上の液体霧化システムにおけるタイマ回路の回路図である。
図9図9は、同上の液体霧化システムにおけるタイマ回路の動作説明図である。
図10図10は、同上の液体霧化システムを備える照明システムの構成図である。
図11図11は、同上の液体霧化システムを備える照明システムの回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の実施形態1~2等において説明する図1~6及び10は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(実施形態1)
以下では、実施形態1に係る液体霧化システム1について図1~5に基づいて説明する。
【0014】
(1)概要
実施形態1に係る液体霧化システム1は、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス5を備え、SAWデバイス5で発生させる表面弾性波のエネルギを霧化対象の液体100(図5参照)に与えて液体100を霧化する。液体霧化システム1は、液体100を霧化することによって液滴粒子を発生させる。ここにおいて、SAWデバイス5は、圧電性基板2と、IDT(Interdigital Transducer)電極3と、を備える。圧電性基板2は、圧電性を有する。IDT電極3は、圧電性基板2に表面弾性波を発生させる。液体霧化システム1は、圧電性基板2上に配置されている第1多孔質部材6を備える。液体霧化システム1では、圧電性基板2上での液体100の厚みが、第1多孔質部材6等によって制御される。液体霧化システム1では、液体100が霧化される。液体100は、例えば、アロマオイルであるが、これに限らず、水、美容用の液体、医療用の液体等であってもよい。液体霧化システム1は、例えば、ミストディフューザに適用することができる。
【0015】
(2)液体霧化システムの詳細
液体霧化システム1は、図1に示すように、SAWデバイス5と、駆動回路10と、第1多孔質部材6と、タンク7と、第2多孔質部材8と、第3多孔質部材9と、を備える。第2多孔質部材8は、タンク7内に配置されており、液体100を貯液する。第3多孔質部材9は、棒状であり、第1端91及び第2端92を有する。第3多孔質部材9は、第2多孔質部材8に貯液されている液体100を第1多孔質部材6に輸送する。第3多孔質部材9では、第1端91が第2多孔質部材8内に配置され第2多孔質部材8に接しており、第2端92が第1多孔質部材6上に配置され第1多孔質部材6に接している。また、液体霧化システム1は、制御装置110を更に備える。液体霧化システム1は、SAWデバイス5とタンク7と第2多孔質部材8と第3多孔質部材9とを含む霧化ユニットU1を複数(例えば、3つ)備える。
【0016】
SAWデバイス5は、図2及び3に示すように、圧電性基板2と、IDT電極3と、を備える。
【0017】
圧電性基板2は、表面21及び裏面22を有する。表面21及び裏面22は、圧電性基板2の厚さ方向D0において離れており、圧電性基板2の厚さ方向D0に交差する。圧電性基板2の表面21及び裏面22は、例えば、圧電性基板2の厚さ方向D0に直交している。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、圧電性基板2の外周形状は、例えば、長方形状である。
【0018】
圧電性基板2は、上述のように圧電性を有する。圧電性基板2は、圧電基板であり、一例として、128°YカットLiNbO単結晶基板である。圧電性基板2の材料は、LiNbOに限らず、例えば、LiTaO等でもよい。圧電性基板2のカット角は、128°に限らず、128°以外のカット角であってもよい。圧電性基板2の厚さは、例えば、0.5mmであるが、これに限らない。
【0019】
IDT電極3は、圧電性基板2の表面21上に設けられており、圧電性基板2に表面弾性波を発生させる。ここで、IDT電極3は、圧電性基板2の表面21上に直接設けられている。
【0020】
IDT電極3は、一対の櫛形電極として、第1櫛形電極31と、第2櫛形電極32と、を有する。第1櫛形電極31及び第2櫛形電極32の各々は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、櫛形状である。第1櫛形電極31は、複数の第1電極指311を含む。第1櫛形電極31は、複数の第1電極指311がつながっている第1導電部312を更に含む。第2櫛形電極32は、複数の第2電極指321を含む。第2櫛形電極32は、複数の第2電極指321がつながっている第2導電部322を更に含む。
【0021】
IDT電極3の材料は、例えば、アルミニウムであるが、これに限らず、他の金属又は合金等であってもよい。また、IDT電極3は、単層構造に限らず積層構造を有していてもよい。
【0022】
以下では、説明の便宜上、圧電性基板2の厚さ方向D0を第1方向D1とし、第1櫛形電極31の第1電極指311の並んでいる方向を第2方向D2とし、第1方向D1と第2方向D2とに直交する方向を第3方向D3として説明することもある。
【0023】
IDT電極3では、複数の第1電極指311と複数の第2電極指321とが、第2方向D2において1つずつ交互に並んでいる。第2方向D2において隣り合う第1電極指311と第2電極指321とは互いに離れている。図2~3等はあくまで模式図であり、IDT電極3における第1電極指311及び第2電極指321の数を実際の数よりも少なく描いてある。
【0024】
IDT電極3では、第1導電部312と第2導電部322とが第3方向D3において互いに対向している。複数の第1電極指311は、第1導電部312につながっており、第2導電部322側に延びている。第3方向D3において、複数の第1電極指311の長さは、互いに同じである。ここにおいて、「同じ」とは、厳密に同じである場合のみに限定されず、略同じ(例えば、複数の第1電極指311の長さの平均値±5%の範囲内で同じ)でもよい。複数の第1電極指311の先端は、第3方向D3において第2導電部322から離れている。第3方向D3において、複数の第2電極指321の長さは、互いに同じである。ここにおいて、「同じ」とは、厳密に同じである場合のみに限定されず、略同じ(例えば、複数の第2電極指321の長さの平均値±5%の範囲内で同じ)でもよい。複数の第2電極指321の先端は、第3方向D3において第1導電部312から離れている。
【0025】
IDT電極3は、複数の第1電極指311と複数の第2電極指321とで決まる交差領域33を有する。交差領域33は、複数の第1電極指311の先端の第1包絡線と複数の第2電極指321の先端の第2包絡線との間の領域である。交差領域33の外周線は、第1包絡線及び第2包絡線を含む。見方を変えれば、交差領域33は、第2方向D2から見て、複数の第1電極指311と複数の第2電極指321とが重なる領域である。図3では、交差領域33を見やすくするために、交差領域33の外周線を、複数の第1電極指311の先端及び複数の第2電極指321の先端から僅かに離してある。同様に、図3では、交差領域33を見やすくするために、交差領域33の外周線を、図3における左端の第1電極指311及び右端の第2電極指321から僅かに離してある。
【0026】
圧電性基板2とIDT電極3とを含むSAWデバイス5は、IDT電極3により表面弾性波を発生させる。より詳細には、SAWデバイス5は、第1櫛形電極31と第2櫛形電極32との間に例えば高周波電源から高周波電圧が印加されることにより、表面弾性波を発生させる。高周波電圧の周波数は、例えば、数MHz~数百MHzであり、一例として40MHzであるが、これに限らない。液滴粒子の粒径を小さくする観点からは、高周波電圧の周波数が高いほうが好ましい。
【0027】
SAWデバイス5では、IDT電極3は、交差領域33において、圧電性基板2に表面弾性波を励振させる。表面弾性波は、圧電性基板2において少なくとも伝搬領域23を伝搬する。ここで、伝搬領域23は、交差領域33を第2方向D2に延長した延長領域に圧電性基板2の厚さ方向D0で重複する領域である。
【0028】
伝搬領域23の幅L1(以下、伝搬幅L1ともいう)は、第3方向D3における交差領域33の幅(以下、交差幅L0ともいう)と同じである。伝搬幅L1は、例えば、0.5mm~10mmである。
【0029】
SAWデバイス5は、反射器4を更に含んでいる。反射器4は、圧電性基板2の表面21上に設けられている。反射器4は、第2方向D2においてIDT電極3と並んでいる。SAWデバイス5では、反射器4、IDT電極3及び伝搬領域23が、この順に並んでいる。したがって、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、伝搬領域23は、IDT電極3を基準として反射器4側とは反対側にある。反射器4は、IDT電極3により発生され第2方向D2において伝搬領域23側とは反対側へ伝搬する表面弾性波を反射する。
【0030】
反射器4は、第1電極41と、第2電極42と、を有している。第1電極41及び第2電極42の各々は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見てIDT電極3と同様に櫛形状である。反射器4の材料は、例えば、アルミニウムであるが、これに限らず、他の金属又は合金等であってもよい。
【0031】
反射器4は、第1電極41及び第2電極42を有する形状に限らず、例えば、短絡グレーティング、開放グレーティングであってもよい。
【0032】
ナノメートルサイズの液滴粒子を得るためには、圧電性基板2の表面21上の液体100の液膜厚(はみ出し部102の厚み)は、薄いほうが好ましい。ここにおいて、「ナノメートルサイズ」とは、1nm~999nmである。
【0033】
第1多孔質部材6は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て表面弾性波の伝搬方向D4においてIDT電極3に並んでいる。ここでいう表面弾性波の伝搬方向D4は、全ての表面弾性波の伝搬方向ではなく、第2方向D2に沿った方向(第2方向D2に平行な方向)である。第1多孔質部材6は、圧電性基板2の表面21上に配置されている。ここにおいて、第1多孔質部材6は、圧電性基板2の表面21上に直接配置されている。したがって、第1多孔質部材6は、圧電性基板2の表面21に接している。
【0034】
液体霧化システム1は、圧電性基板2の表面21上に位置し第1多孔質部材6に保持された液体100を表面弾性波によって霧化する。液体霧化システム1では、液体100は、少なくとも霧化される部位の厚み(液膜厚)が第1多孔質部材6によって制御される。言い換えれば、第1多孔質部材6は、液体100のうち圧電性基板2の表面21上において霧化される部位の厚みを制御する。
【0035】
圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、第1多孔質部材6の外周形状(外縁)は、正方形状であるが、これに限らず、例えば、長方形状であってもよい。
【0036】
第1多孔質部材6は、シート状である。第1多孔質部材6は、例えば、多孔性金属シートである。多孔性金属シートは、複数の繊維状金属を含む多孔質金属である。ここでいう多孔質金属の形状は、例えば、3次元ネットワーク状である。多孔性金属シートは、液体100に対する耐食性を有する。多孔性金属シートの材料は、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS316)であるが、これに限らず、例えば、チタンであってもよい。ナノメートルサイズの液滴粒子を得るためには、多孔性金属シートの厚さは、例えば、0.5mm以下であるのが好ましく、例えば、0.1mm以上0.3mm以下であるのが好ましい。
【0037】
多孔性金属シートは、複数の開気孔を有する。これにより、液体霧化システム1では、多孔性金属シートに、液体100を含浸させることができる。言い換えれば、液体霧化システム1は、複数の開気孔内に液体100を保持することができる。
【0038】
IDT電極3側から第1多孔質部材6の側面6Aを見たときの多孔性金属シートの複数の開気孔の開口幅は、例えば、10μm以上200μm以下である。ここで、開口幅は、SEM(Scanning Electron Microscope Image)像において、開気孔の縁の任意の2点間を結ぶ直線の群のうち最長の直線の長さである。また、圧電性基板2の厚さ方向D0においてタンク7側から第1多孔質部材6の上面6Bを見たときの多孔性金属シートの複数の開気孔の開口幅は、例えば、10μm以上200μm以下である。複数の開気孔の各々は、複数の空隙(孔)がつながって形成されている。多孔性金属シートにおいて液体100を輸送する観点から、複数の空隙のサイズは、10μm以上であるのが好ましい。また、多孔性金属シートにおいて液体100を輸送する観点から、複数の空隙のサイズは、200μm以下であるのが好ましい。
【0039】
実施形態1に係る液体霧化システム1は、部材28を更に備える。部材28は、第1多孔質部材6を圧電性基板2の表面21との間に挟んでいる。部材28の材料は、例えば、部材28の剛性の観点から、金属系材料であるのが好ましい。ここにおいて、金属系材料は、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS316)であるが、これに限らず、例えば、アルミニウム又はチタンであってもよい。部材28の熱伝導率は、圧電性基板2の熱伝導率よりも高い。要するに、部材28の熱伝導性は、圧電性基板2の熱伝導性よりも高い。部材28の材料は、液体100に対する耐食性と、液体100に対する撥液性と、を有していれば、SUS、アルミニウム、チタン等に限らない。
【0040】
部材28は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、第1多孔質部材6におけるIDT電極3側の端部611を露出させるように第1多孔質部材6を圧電性基板2の表面21との間に挟んでいる。部材28は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、U字状であるが、これに限らない。第1多孔質部材6は、第2方向D2においてIDT電極3側の端部611(以下、第1端部611ともいう)と、IDT電極3とは反対側の端部612(以下、第2端部612ともいう)と、を有する。
【0041】
部材28は、例えば、圧電性基板2の表面21との間に第1多孔質部材6を挟んで第1多孔質部材6を圧電性基板2の表面21に密着させている。部材28は、例えば、SAWデバイス5を支持しているベースに対してねじにより固定されているが、これに限らず、例えば、弾性体(例えば、ばね)によって圧電性基板2又はベース側に押されていてもよい。
【0042】
液体霧化システム1では、図3に示すように、第3方向D3における第1多孔質部材6の幅H6が、伝搬幅L1よりも長い。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、伝搬領域23は、第3方向D3において第1多孔質部材6の両端よりも内側に位置している。言い換えれば、厚さ方向D0から見て、第1多孔質部材6は、表面弾性波の伝搬方向D4に直交する方向において少なくとも交差領域33の両端にわたって形成されている。液体霧化システム1では、例えば、交差幅L0が2mmの場合、第3方向D3における第1多孔質部材6の幅H6が3mmである。これらの数値は、あくまで一例であり、これらの数値に限定されない。第3方向D3における第1多孔質部材6の幅H6は、第3方向D3における伝搬領域23の伝搬幅L1よりも長い場合のみに限らず、第3方向D3における伝搬領域23の伝搬幅L1以上であればよい。つまり、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、第3方向D3において伝搬領域23は第1多孔質部材6と同じ範囲であってもよい。部材28において第1多孔質部材6におけるIDT電極3側の端部611を露出させている切欠の幅をH3とすると、伝搬幅L1≦幅H3であるのがより好ましい。
【0043】
液体霧化システム1では、図3に示すように、第3方向D3における部材28の幅H8が、第3方向D3における圧電性基板2の幅H2よりも長い。液体霧化システム1では、部材28は、例えば、SAWデバイス5を支持しているベースに対してねじにより固定されてもよい。第3方向D3における部材28の幅H8は、第3方向D3における圧電性基板2の幅H2よりも長い場合に限らず、圧電性基板2の幅H2以下であってもよい。
【0044】
タンク7は、第1多孔質部材6へ供給する霧化対象の液体100を収容する容器である。タンク7は、底壁71と、外周壁72と、内壁部75と、を含む。また、タンク7は、蓋73を更に含む。
【0045】
底壁71は、SAWデバイス5に対向している。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、底壁71の外形は、四角形状であるが、これに限らず、例えば、円形状であってもよい。底壁71は、第3多孔質部材9が貫通している貫通孔74を有する。貫通孔74の開口形状は、円形状である。圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、貫通孔74は、底壁71の中央に形成されている。外周壁72は、底壁71の外周縁からSAWデバイス5側とは反対側に突出している。内壁部75は、筒状であり、外周壁72の内側に位置している。内壁部75は、円筒状である。内壁部75は、タンク7の外周壁72よりも内側で底壁71からSAWデバイス5側とは反対側に突出しており、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、第3多孔質部材9を囲んでいる。タンク7では、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て内壁部75の内周縁の中心が貫通孔74の中心と略一致するように配置されている。蓋73は、外周壁72に結合されており、外周壁72の上端の開口を塞いでいる。
【0046】
第2多孔質部材8は、タンク7内に配置されており、液体100を貯液する。言い換えれば、第2多孔質部材8は、液体100を保持しており、第3多孔質部材9を介して第1多孔質部材6に液体100を輸送する。第2多孔質部材8は、例えば、液体100を貯液可能であり、液体100を貯液した状態で形状をほぼ維持可能な多孔質部材である。第2多孔質部材8としては、例えば、油吸収材又はフェルトを用いることができる。
【0047】
第3多孔質部材9は、上述のように棒状である。ここにおいて、第3多孔質部材9は、丸棒状である。液体霧化システム1では、第3多孔質部材9の第1端91が第2多孔質部材8内に配置され第2多孔質部材8に接しており、第3多孔質部材9の第2端92が第1多孔質部材6上に配置され第1多孔質部材6に接している。第3多孔質部材9は、タンク7内において第2多孔質部材8に接している部分94(以下、第1部分94ともいう)と、タンク7内において空間S1を介して内壁部75に囲まれている部分95(以下、第2部分95ともいう)とを含む。第3多孔質部材9では、第1部分94が、第3多孔質部材9の第1端91を含む。
【0048】
第3多孔質部材9は、多孔質構造を有し、第1多孔質部材6の上面6Bに交差する方向に沿って液体100を輸送する。ここにおいて、第3多孔質部材9は、液体100を浸透させる。第1多孔質部材6の上面6Bに交差する方向は、圧電性基板2の厚さ方向D0に沿った方向である。液体霧化システム1では、第2多孔質部材8に貯液されている液体が第3多孔質部材9の第1端91を含む第1部分94に浸透し、第3多孔質部材9の第1部分94から第2端92へ向かう方向(下方向)に沿って輸送される。
【0049】
液体霧化システム1では、第3多孔質部材9の材料が第1多孔質部材6の材料と同じである。第3多孔質部材9は、第1多孔質部材6と一体であってもよいし第1多孔質部材6に結合されて一体化されていてもよい。第3多孔質部材9の材料は、第1多孔質部材6の材料と同じである場合に限らず、第1多孔質部材6の材料とは異なる材料であってもよい。第3多孔質部材9の材料は、例えば、ガラス、セラミック又はポリマーであってもよい。
【0050】
液体霧化システム1は、第3多孔質部材9の長手方向に沿った方向から見て内壁部75と第3多孔質部材9との間に形成されている空間S1を更に有する。
【0051】
駆動回路10は、IDT電極3の第1櫛形電極31と第2櫛形電極32との間に高周波電圧を供給可能な高周波電源を含む。
【0052】
制御装置110は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、制御装置110としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0053】
(3)液体霧化システムの動作
液体霧化システム1では、タンク7内で液体100を貯液している第2多孔質部材8から第3多孔質部材9を介して第1多孔質部材6に液体100が供給される。これにより、液体霧化システム1では、第1多孔質部材6に供給された液体100の少なくとも一部が保持される。
【0054】
また、液体霧化システム1では、駆動回路10によってSAWデバイス5が駆動されることにより、表面弾性波を発生させる。駆動回路10によってSAWデバイス5が駆動されるとは、IDT電極3の第1櫛形電極31と第2櫛形電極32との間に例えば高周波電源から高周波電圧(例えば、40MHzの高周波電圧)が印加されることを意味する。液体霧化システム1は、第1多孔質部材6に液体100の少なくとも一部が保持された状態でSAWデバイス5が駆動されると、表面弾性波によって液体100を霧化することにより、ナノメートルサイズの液滴粒子を含むミストを発生させる。図5では、液体100にドットのハッチングを付してある。
【0055】
液体霧化システム1では、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、液体100のうち第1多孔質部材6におけるIDT電極3側の端部611に位置する部分を表面弾性波によって霧化することによって、液滴粒子が発生する。第1多孔質部材6におけるIDT電極3側の端部611は、霧化ポイント620(図5参照)を含む。霧化ポイント620は、第1多孔質部材6の端部611のうち液体100から液滴粒子が発生する領域である。要するに、液体霧化システム1では、液体100のうち少なくとも第1多孔質部材6の霧化ポイント620に位置する部分を表面弾性波によって霧化させることによって、液滴粒子が発生する。霧化ポイント620は、IDT電極3の交差領域33の第3方向D3における中央部に対して、第2方向D2において対向する。霧化ポイント620は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て、伝搬領域23の第2方向D2に沿った中心線231上に位置する。第3方向D3における霧化ポイント620の幅は、伝搬幅L0以下である。
【0056】
また、液体霧化システム1では、液体100のはみ出し部102を表面弾性波によって霧化させることによっても液滴粒子が発生する。はみ出し部102は、液体100のうち第1多孔質部材6からIDT電極3側で圧電性基板2の表面21上にはみ出した部分である。ナノメートルサイズの液滴粒子を発生させる観点から、液体100のうちはみ出し部102を霧化するときには、はみ出し部102の液膜厚は、薄いほうが好ましい。これにより、液体100のはみ出し部102を霧化することによって形成される液滴粒子の粒径をナノメートルサイズとすることが可能となる。
【0057】
液体100は、少なくとも霧化される部位の厚みが、第1多孔質部材6の厚みと、第3多孔質部材9から第1多孔質部材6への液体100の輸送量と、によって決まる。液体霧化システム1では、霧化動作時は、第3多孔質部材9から第1多孔質部材6への液体輸送量と霧化量とのバランスを取ることによって霧化中の液体100の厚みを第1多孔質部材6の厚みとほぼ同じになるようにコントロールすることが可能である。液体100において霧化される部位は、圧電性基板2の表面21上で第1多孔質部材6に保持されている部位を含む。液体100において霧化される部位のうち第1多孔質部材6の霧化ポイント620に位置する部位の厚みは、第1多孔質部材6の厚みと略同じである。また、液体100において霧化される部位のうちはみ出し部102の厚みは、第1多孔質部材6の厚み以下である。
【0058】
第2多孔質部材8から第3多孔質部材9を介して第1多孔質部材6へ輸送される液体100は、第2多孔質部材8から第3多孔質部材9に浸透し、第3多孔質部材9から第1多孔質部材6に浸透拡散する。第1多孔質部材6への液体100の供給量は、第2多孔質部材8に貯液させる液体100の量又は第2多孔質部材8での液密度と、第2多孔質部材8から第3多孔質部材9への液体100の浸透速度と、第2多孔質部材8と第3多孔質部材9との接触面積と、によって決めることができる。ここでいう液体100の供給量は、供給速度である。液体霧化システム1では、液体100の供給速度は、例えば、1mL/hである。
【0059】
実施形態1に係る液体霧化システム1では、液滴粒子の粒径がナノメートルサイズの液滴粒子を発生させやすい。
【0060】
液体100を霧化することによって形成された液滴粒子の粒径は、例えば、レーザ回折法により測定した値である。より詳細には、液滴粒子の粒径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置を用いて測定した値である。レーザ回折式の粒度分布測定装置は、例えば、Malvern Panalytical社のスプレーテック(商品名)である。スプレーテックは、例えば、レーザ光が、スプレーを通過するときに散乱した光のパターンから粒度分布を測定し、その後、散乱パターンを解析し、液滴径を計算することができる装置である。液体100を霧化することによって形成された液滴粒子の粒径は、個数分布におけるメディアン径(d50)である。
【0061】
(3)効果
液体霧化システム1は、SAWデバイス5と、駆動回路10と、第1多孔質部材6と、タンク7と、第2多孔質部材8と、第3多孔質部材9と、を備える。SAWデバイス5は、圧電性基板2と、IDT電極3と、を含む。圧電性基板2は、表面21及び裏面22を有する。IDT電極3は、圧電性基板2の表面21上に設けられており、圧電性基板2に表面弾性波を発生させる。第1多孔質部材6は、シート状である。第1多孔質部材6は、圧電性基板2の厚さ方向D0から見て表面弾性波の伝搬方向D4においてIDT電極3に並んでおり、圧電性基板2の表面21上に配置されている。タンク7は、霧化対象の液体100を収容する。第2多孔質部材8は、タンク7内に配置されており、液体100を貯液する。第3多孔質部材9は、棒状であり、第1端91及び第2端92を有する。第3多孔質部材9は、第2多孔質部材8に貯液されている液体100を第1多孔質部材6に輸送する。第3多孔質部材9では、第1端91を含む第1部分94が第2多孔質部材8内に配置され第2多孔質部材8に接しており、第2端92が第1多孔質部材6上に配置され第1多孔質部材6に接している。
【0062】
液体霧化システム1では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定して発生させることが可能となる。
【0063】
また、液体霧化システム1は、タンク7が内壁部75を有しており、第2多孔質部材8とタンク7の底壁71の貫通孔74とが離れている。これにより、液体霧化システム1では、液体100が第2多孔質部材8からタンク7の底壁71の貫通孔74と第3多孔質部材9との間の隙間を第3多孔質部材9の外周面を伝って圧電性基板2側へ流れるのを抑制でき、第1多孔質部材6への液体100の供給量が目標の供給量よりも過剰になるのを抑制することが可能となる。
【0064】
ところで、液体霧化システム1では、液体100を霧化することで発生する液体粒子の群が、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を含んでいるが、粒径1μm以上(例えば、1μm~100μm)の大粒径の液滴粒子も低い割合で含むことがある。液体霧化システム1では、圧電性基板2の表面21とタンク7との距離H1は、圧電性基板2の表面21上に輸送された液体100が霧化されたときに発生する液滴粒子の群に含まれる1μm以上の粒径の液滴粒子が直線的に到達可能な距離である。距離H1は、圧電性基板2の厚さ方向D0における圧電性基板2の表面21とタンク7の底壁71の底面711での貫通孔74の開口縁714との距離である。よって、液体霧化システム1では、大粒径の液滴粒子がタンク7の底壁71に衝突して底壁71に付着しやすくなるので、大粒径の液滴粒子を除去することが可能となる。
【0065】
タンク7の底壁71は、貫通孔74に近づくにつれて圧電性基板2の厚さ方向D0における圧電性基板2からの距離が短くなっている。これにより、液体霧化システム1では、タンク7の底壁71に付着した液体100が底壁71に沿って第3多孔質部材9へ流れやすくなり、第3多孔質部材9を介して第1多孔質部材6へ供給されやすくなる。
【0066】
実施形態1に係る液体霧化システム1では、第1多孔質部材6として多孔性金属シートを用いているので、多孔性シートとして樹脂製多孔質シート及びガラスファイバろ紙のいずれを用いる場合と比べても、第1多孔質部材6の機械強度及び耐久性を高めることが可能となる。液体霧化システム1では、液体100を霧化するときに発生する圧力(噴射圧力)によって第1多孔質部材6の霧化ポイント620が圧電性基板2の表面21から離れる向きに膨らむように変形することを抑制することが可能となる。機械強度は、例えば、引っ張り強度である。また、実施形態1に係る液体霧化システム1では、第1多孔質部材6を洗浄して再利用することも可能である。
【0067】
(実施形態2)
以下では、実施形態2に係る液体霧化システム1aについて図6~9に基づいて説明する。実施形態2に係る液体霧化システム1aに関し、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
実施形態2に係る液体霧化システム1aは、複数(例えば、3つ)の霧化ユニットU1に一対一に対応する複数(例えば、3つ)のケース19を備える。また、液体霧化システム1aは、複数の霧化ユニットU1に一対一に対応する複数(例えば、3つ)のファン17を更に備える。したがって、液体霧化システム1aは、霧化ユニットU1とケース19とファン17とのセットを複数備える。複数の霧化ユニットU1の各々は、SAWデバイス5と第1多孔質部材6とタンク7と第2多孔質部材8と第3多孔質部材9とを含む。液体霧化システム1aでは、複数の霧化ユニットU1において第2多孔質部材8に貯液される液体100の成分が互いに異なる。
【0069】
ケース19は、例えば、中空の直方体状である。ケース19は、複数の霧化ユニットU1のうち対応する霧化ユニットU1を収容している。ケース19は、ミスト用の出口192を有する。
【0070】
ファン17は、ケース19に設けられて出口192に対向しており、ケース19内において出口192に向かう気流を発生させる。
【0071】
霧化ユニットU1は、ファン17と出口192との間に配置されている。ファン17と出口192との対向する方向は、第2方向D2に沿った方向である。第2方向D2に沿った方向において、ファン17、IDT電極3、第1多孔質部材6及び出口192が、ファン17から出口192に向かって、ファン17、IDT電極3、第1多孔質部材6及び出口192の順に並んでいる。
【0072】
また、液体霧化システム1aは、障壁板20と、液吸収部材30と、を更に備える。
【0073】
障壁板20は、ケース19内においてSAWデバイス5と出口192との間に配置されている。障壁板20は、1μm以上の粒径の液滴粒子を捕集するための部材(インパクター)である。障壁板20は、気流に対して障壁となる。障壁板20の高さは、ファン17からの気流に乗ったナノメータサイズの粒径の液滴粒子が越えやすく、ファン17からの気流に乗った1μm以上の粒径の液滴粒子が越えにくい高さである。ここで、1μm以上の粒径の液滴粒子はナノメータサイズの粒径の液滴粒子よりも重いので、液体霧化システム1aでは、障壁板20の高さを適宜設定することにより、ナノメータサイズの粒径の液滴粒子の衝突を抑制しつつ、1μm以上の粒径の液滴粒子を障壁板20に衝突させやすくなる。
【0074】
液吸収部材30は、ケース19内において障壁板20の下部201とSAWデバイス5との間に配置されている。液吸収部材30は、障壁板20に衝突した1μm以上の粒径の液滴粒子の蓄積による液体を吸収することで回収する第4多孔質部材である。なお、液吸収部材30に吸収された液体が気化してケース19内の気流に乗ることもあるが、ナノメートルサイズの液滴粒子を含むミストの特性を阻害することはない。
【0075】
液体霧化システム1aでは、霧化ユニットU1で発生するナノメートルサイズの液滴粒子は、大粒径の液滴粒子と比べてケース19内の気流に乗りやすいため、気流に沿って出口192に輸送され、出口192からケース19の外へ噴出される。図6中の点線矢印は、気流に乗って移動するナノメートルサイズの液滴粒子の輸送経路の一例を模式的に示している。大粒径の液滴粒子は、ナノメートルサイズの液滴粒子と比べて慣性力が大きく、最初の噴射方向に、より長く直線状に飛行する。したがって、液体霧化システム1aでは、ナノメートルサイズの粒径の液滴粒子がタンク7の底壁71に衝突するのを抑制しつつ、大粒径の液滴粒子がタンク7の底壁71に衝突させやすくなる。
【0076】
駆動回路10は、高周波電源11と、タイマ回路12と、を含む。
【0077】
高周波電源11は、複数のSAWデバイス5に接続されている。高周波電源11は、複数のSAWデバイス5の各々のIDT電極3の第1櫛形電極31と第2櫛形電極32との間に高周波電圧(例えば、40MHzの高周波電圧)を印加可能である。
【0078】
タイマ回路12は、高周波電源11を間欠動作させる。
【0079】
制御装置110は、複数のSAWデバイス5のうち1以上のSAWデバイス5を駆動回路10によって駆動するように駆動回路10を制御する。また、制御装置110は、複数のファン17に関し、複数のSAWデバイス5のうち駆動回路10によって駆動するSAWデバイス5に対応するファン17を動作させる。
【0080】
以下では、3つのSAWデバイス5を区別して説明する場合に、3つのSAWデバイス5をそれぞれ、第1SAWデバイス5A、第2SAWデバイス5B及び第3SAWデバイス5Cと称することもある。また、3つのファン17を区別して説明する場合に、3つのファン17のうち第1SAWデバイス5Aに対応するファン17を第1ファン17Aと称し、第2SAWデバイス5Bに対応するファン17を第2ファン17Bと称し、第3SAWデバイス5Cに対応するファン17を第3ファン17Cと称することもある。
【0081】
駆動回路10は、図7に示すように、直流電源13と、第1スイッチ14Aと、第2スイッチ14Bと、第3スイッチ14Cと、第1電源用リレー15Aと、第2電源用リレー15Bと、第3電源用リレー15Cと、を有する。また、駆動回路10は、第1高周波リレー16Aと、第2高周波リレー16Bと、第3高周波リレー16Cと、を有する。また、駆動回路10は、第1ファン用リレー18Aと、第2ファン用リレー18Bと、第3ファン用リレー18Cと、を更に有する。第1スイッチ14Aは、直流電源13と第1電源用リレー15Aと間に設けられており、第1電源用リレー15A、第1高周波リレー16A及び第1ファン用リレー18Aそれぞれに対してオン信号(12Vの直流電圧)及びオフ信号(0V)を出力可能である。第2スイッチ14Bは、直流電源13と第2電源用リレー15Bと間に設けられており、第2電源用リレー15B、第2高周波リレー16B及び第2ファン用リレー18Bそれぞれに対してオン信号及びオフ信号を出力可能である。第3スイッチ14Cは、直流電源13と第3電源用リレー15Cと間に設けられており、第3電源用リレー15C、第3高周波リレー16C及び第3ファン用リレー18Cそれぞれに対してオン信号及びオフ信号を出力可能である。
【0082】
直流電源13は、例えば12Vの直流電圧を出力する電源である。
【0083】
図7に示した例では、第1電源用リレー15A、第2電源用リレー15B、第3電源用リレー15C、第1高周波リレー16A、第2高周波リレー16B、第3高周波リレー16C、第1ファン用リレー18A、第2ファン用リレー18B、第3ファン用リレー18C、タイマ回路12及び高周波電源11は、すべて同じ直流電圧(例えば、12V)で駆動される。第1ファン用リレー18A、第2ファン用リレー18B及び第3ファン用リレー18Cが例えば12Vとは異なる直流電圧で駆動される場合には、直流電源13と第1ファン用リレー18A、第2ファン用リレー18B及び第3ファン用リレー18Cとの間にDC-DC変換回路を備えていればよい。図7では、直流電源13からの直流電圧の供給ラインを破線矢印で模式的に示し、第1スイッチ14A、第2スイッチ14B及び第3スイッチ14Cそれぞれからのオン信号の出力ラインを実線矢印で模式的に示してある。
【0084】
駆動回路10では、3つのSAWデバイス5に対して、直流電源13と、タイマ回路12と、高周波電源11と、を共用している。また、駆動回路10は、第1SAWデバイス5Aを含む霧化ユニットU1に対応するように第1スイッチ14A、第1電源用リレー15A、第1高周波リレー16A及び第1ファン用リレー18Aを設けてある。また、駆動回路10は、第2SAWデバイス5Bを含む霧化ユニットU1に対応するように第2スイッチ14B、第2電源用リレー15B、第2高周波リレー16B及び第2ファン用リレー18Bを設けてある。また、駆動回路10は、第3SAWデバイス5Cを含む霧化ユニットU1に対応するように第3スイッチ14C、第3電源用リレー15C、第3高周波リレー16C及び第3ファン用リレー18Cを設けてある。したがって、液体霧化システム1aでは、制御装置110が駆動回路10を制御することによって、複数の霧化ユニットU1のうち1つの霧化ユニットU1を単独で動作させることが可能であり、2以上の霧化ユニットU1を同時に動作させることも可能である。
【0085】
タイマ回路12は、図8に示すように、タイマIC121と、タイマIC121の出力電圧に応じてオンオフする接点123を含むリレー122と、を備える。液体霧化システム1aでは、タイマ回路12の接点123がオンすることにより、タイマ回路12の出力端子Voutとグランド端子との間に接続されている高周波電源11に12Vの電圧が供給され、高周波電源11からSAWデバイス5に高周波電圧が印加される。
【0086】
タイマ回路12は、電源端子Vccとグランド端子との間に接続されている第1キャパシタC1と、電源端子Vccとグランド端子との間に接続されている第1抵抗R1と第2抵抗R2と第1ダイオードDi1と第2キャパシタC2との直列回路と、第1ダイオードDi1に並列接続されている第2ダイオードDi2と第3抵抗R3と第4抵抗R4との直列回路と、を有する。タイマ回路12では、第2キャパシタC2の充放電が繰り返され、第2キャパシタC2の両端電圧に応じてタイマIC121からの出力電圧が変化する。第2キャパシタC2の充電は、図8中に太線の実線矢印で示す充電経路で行われる。充電経路は、電源端子Vcc、第1抵抗R1、第2抵抗R2、第1ダイオードDi1及び第2キャパシタC2を含む経路である。タイマ回路12では、図9に示すように、タイマIC121の8つの端子のうち第2キャパシタC2に接続されている端子の電圧が第2電圧V2に達するとタイマIC121の出力電圧を0Vとするので、接点123がオフとなりタイマ回路12から高周波電源11へのDC12Vの供給が停止される。
【0087】
第2キャパシタC2の放電は、図8中に太線の破線矢印で示す放電経路で行われる。放電経路は、第2キャパシタC2、第2ダイオードDi2、第3抵抗R3、第4抵抗R4を含む経路である。タイマ回路12では、図9に示すように、タイマIC121の8つの端子のうち第1ダイオードDi1のアノードに接続されている端子の電圧が第1電圧V1まで低下するとタイマIC121の出力電圧を12Vとするので、接点123がオンとなりタイマ回路12から高周波電源11へのDC12Vが供給される。
【0088】
タイマ回路12では、図9に示すように、接点123のオン、オフが交互に繰り返されるが、接点123の1回目のオン期間Ton1は、その後のオフ期間Toff、オン期間Tonよりも長い。1回目のオン期間Ton1は、例えば、60秒である。オン期間Toff及びオン期間Tonの各々は、30秒である。液体霧化システム1aでは、液体100を霧化させることで液体100の成分(例えば、香り成分)をケース19の出口192から噴出させるときに、スタート時には、液体100を霧化させている時間を長めにでき、人に早く香りを認識させることが可能となる。
【0089】
液体霧化システム1aは、例えば、照明システム120(図10及び11参照)に適用することができる。
【0090】
照明システム120は、液体霧化システム1aと、照明装置40と、制御装置111と、を備える。照明装置40は、複数の光源400を有する。制御装置111は、液体霧化システム1aと照明装置40とを制御する。照明装置40は、複数の光源400のうち1又は2以上の光源400を駆動する駆動回路404を含んでいる。制御装置111は、制御装置110の代わりに設けられており、液体霧化システム1aにおける駆動回路10を制御するだけではなく、照明装置40における駆動回路404を制御する。
【0091】
複数の光源400は、例えば、第1光源401と、第2光源402と、第3光源403と、を含む。第1光源401、第2光源402及び第3光源403は、例えば、互いに光源色の異なるLEDモジュールである。LEDモジュールの光源色は、例えば、JIS Z9112:2012で定義されているLEDの光源色の相関色温度に基づいて設定されているのが好ましい。JIS Z9112:2012では、LEDの光源色が、XYZ表色系における色度によって、昼光色、昼白色、白色、温白色及び電球色の5種類に区分される。
【0092】
制御装置111は、複数のSAWデバイス5のうち1以上のSAWデバイス5と複数の光源400のうち1以上の光源400とを任意の組み合わせで動作させることができる。これにより、照明システム120では、照明システム120により照明される空間にいる人の、所望の雰囲気に応じて香り及び光源色を変えることが可能となる。
【0093】
照明システム120は、例えば、図10に示すように、壁W1に設置される照明器具405として構成することができる。照明器具405は、例えば、オフィス、店舗、住宅等で用いられる。
【0094】
実施形態2に係る液体霧化システム1aは、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様、第1多孔質部材6と、第2多孔質部材8と、第3多孔質部材9と、を備える。よって、実施形態2に係る液体霧化システム1aでは、実施形態1に係る液体霧化システム1と同様、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定して発生させることが可能となる。
【0095】
上記の実施形態1~2等は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態1~2等は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0096】
例えば、圧電性基板2は、圧電性を有していればよく、圧電基板に限らず、例えば、支持基板上に圧電体層(LiNbO単結晶基板)が設けられた構成でもよい。
【0097】
また、第1多孔質部材6は、多孔性金属シートに限らず、例えば、樹脂製多孔質シート、又はフェルトであってもよい。
【0098】
また、液体霧化システム1、1aでは、第3多孔質部材9の第1端91の全体が第2多孔質部材8に接しているが、これに限らず、第3多孔質部材9の第1端91の一部が第2多孔質部材8に接しないで露出していてもよい。
【0099】
また、液体霧化システム1、1aでは、内壁部75の内径が、第3多孔質部材9の外径と同じであってもよい。この場合でも、第3多孔質部材9が多孔質なので、第3多孔質部材9の第2部分95と内壁部75との間に多数の小さな空隙が存在する。
【0100】
また、液体霧化システム1は、SAWデバイス5とタンク7と第2多孔質部材8と第3多孔質部材9とを含む霧化ユニットU1を複数(例えば、3つ)備えているが、これに限らず、霧化ユニットU1を少なくとも1つ備えていればよい。
【0101】
(態様)
以上説明した実施形態等から本明細書には以下の態様が開示されている。
【0102】
第1の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、SAWデバイス(5)と、駆動回路(10)と、第1多孔質部材(6)と、タンク(7)と、第2多孔質部材(8)と、第3多孔質部材(9)と、を備える。SAWデバイス(5)は、圧電性基板(2)と、IDT電極(3)と、を含む。圧電性基板(2)は、表面(21)及び裏面(22)を有する。IDT電極(3)は、圧電性基板(2)の表面(21)上に設けられており、圧電性基板(2)に表面弾性波を発生させる。駆動回路(10)は、SAWデバイス(5)を駆動する。第1多孔質部材(6)は、シート状である。第1多孔質部材(6)は、圧電性基板(2)の厚さ方向(D0)から見て表面弾性波の伝搬方向(D4)においてIDT電極(3)に並んでおり、圧電性基板(2)の表面(21)上に配置されている。タンク(7)は、霧化対象の液体(100)を収容する。第2多孔質部材(8)は、タンク(7)内に配置されており、液体(100)を貯液する。第3多孔質部材(9)は、棒状であり、第1端(91)及び第2端(92)を有する。第3多孔質部材(9)は、第2多孔質部材(8)に貯液されている液体(100)を第1多孔質部材(6)に輸送する。第3多孔質部材(9)では、第1端(91)が第2多孔質部材(8)内に配置され第2多孔質部材(8)に接しており、第2端(92)が第1多孔質部材(6)上に配置され第1多孔質部材(6)に接している。
【0103】
第1の態様に係る液体霧化システム(1;1a)では、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定して発生させることが可能となる。
【0104】
第2の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、第1の態様において、タンク(7)は、底壁(71)と、外周壁(72)と、内壁部(75)と、を含む。底壁(71)は、SAWデバイス(5)に対向している。底壁(71)は、第3多孔質部材(9)が貫通している貫通孔(74)を有する。外周壁(72)は、底壁(71)の外周縁からSAWデバイス(5)側とは反対側に突出している。内壁部(75)は、筒状であり、外周壁(72)の内側に位置している。内壁部(75)は、タンク(7)の外周壁(72)よりも内側で底壁(71)からSAWデバイス(5)側とは反対側に突出しており、圧電性基板(2)の厚さ方向(D0)から見て、第3多孔質部材(9)を囲んでいる。液体霧化システム(1;1a)は、第3多孔質部材(9)の長手方向に沿った方向から見て内壁部(75)と第3多孔質部材(9)との間に形成されている空間(S1)を更に有する。
【0105】
第2の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、底壁(71)における貫通孔(74)の内周面と第3多孔質部材(9)との隙間を通って液体(100)が流れるのを抑制でき、第1多孔質部材(6)への液体(100)の供給量の制御性の向上を図れる。これにより、第2の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定的に形成することが可能となる。
【0106】
第3の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、第2の態様において、圧電性基板(2)の厚さ方向(D0)における圧電性基板(2)の表面(21)と底壁(71)の底面(711)での貫通孔(74)の開口縁(714)との距離(H1)は、第3多孔質部材(9)及び第1多孔質部材(6)を介して圧電性基板(2)の表面(21)上に輸送された液体(100)が霧化されたときに発生する液滴粒子の群に含まれる1μm以上の粒径の液滴粒子が直線的に到達する距離である。
【0107】
第3の態様に係る液体霧化システム(1;1a)では、液体(100)が霧化されたときに発生する液滴粒子の群に含まれる1μm以上の粒径の液滴粒子がタンク(7)の底壁(71)に衝突しやすくなる。
【0108】
第4の態様に係る液体霧化システム(1;1a)では、第2又は3の態様において、タンク(7)の底壁(71)は、貫通孔(74)に近づくにつれて圧電性基板(2)の厚さ方向(D0)における圧電性基板(2)からの距離が短くなっている。
【0109】
第4の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、タンク(7)の底壁(71)に付着した液体(100)が底壁(71)に沿って第3多孔質部材(9)へ流れやすくなり、第3多孔質部材(9)を介して第1多孔質部材(6)へ供給されやすくなる。
【0110】
第5の態様に係る液体霧化システム(1;1a)では、第1~4の態様のいずれか一つにおいて、駆動回路(10)は、高周波電源(11)と、タイマ回路(12)と、を含む。高周波電源(11)は、SAWデバイス(5)に接続されている。タイマ回路は、高周波電源(11)を間欠動作させる。
【0111】
第5の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、SAWデバイス(5)を間欠的に動作させることができ、液体(100)を間欠的に霧化させることが可能となる。
【0112】
第6の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、第1~5の態様のいずれか一つにおいて、ケース(19)と、ファン(17)と、を更に備える。ケース(19)は、SAWデバイス(5)と第1多孔質部材(6)とタンク(7)と第2多孔質部材(8)と第3多孔質部材(9)とを含む霧化ユニット(U1)を収容しており、ミスト用の出口(192)を有する。ファン(17)は、ケース(19)に設けられて出口(192)に対向しており、ケース(19)内において出口(192)に向かう気流を発生させる。霧化ユニット(U1)は、ファン(17)と出口(192)との間に配置されている。
【0113】
第6の態様に係る液体霧化システム(1;1a)は、霧化ユニット(U1)で発生したナノメートルサイズの液滴粒子を含むミストを出口(192)から噴出させることが可能となる。
【0114】
第7の態様に係る液体霧化システム(1a)は、第6の態様において、霧化ユニット(U1)とケース(19)とファン(17)とのセットを複数備える。
【0115】
第7の態様に係る液体霧化システム(1a)は、成分の異なる複数の液体(100)に対応可能となる。
【0116】
第8の態様に係る液体霧化システム(1a)は、第6又は7の態様において、障壁板(20)と、液吸収部材(30)と、を更に備える。障壁板(20)は、ケース(19)内においてSAWデバイス(5)と出口(192)との間に配置されている。障壁板(20)は、1μm以上の粒径の液滴粒子を捕集するための部材である。液吸収部材(30)は、ケース(19)内において障壁板(20)の下部(201)とSAWデバイス(5)との間に配置されている。
【0117】
第9の態様に係る照明システム(120)は、第1~8の態様のいずれか一つの液体霧化システム(1;1a)と、照明装置(40)と、制御装置(111)と、を備える。照明装置(40)は、複数の光源(400)を有する。制御装置(111)は、液体霧化システム(1;1a)と照明装置(40)とを制御する。
【0118】
第9の態様に係る照明システム(120)は、ナノメートルサイズの粒径を有する液滴粒子を、より安定して発生させることが可能となる。
【符号の説明】
【0119】
1、1a 液体霧化システム
2 圧電性基板
21 表面
211 規定領域
22 裏面
23 伝搬領域
3 IDT電極
5、5A、5B、5C SAWデバイス
6 第1多孔質部材
601 繊維状金属
611 端部(第1端部)
7 タンク
71 底壁
711 底面
714 開口縁
72 外周壁
74 貫通孔
75 内壁部
8 第2多孔質部材
9 第3多孔質部材
91 第1端
92 第2端
94 部分
10 駆動回路
11 高周波電源
12 タイマ回路
17 ファン
19 ケース
192 出口
20 障壁板
201 下部
28 部材
30 液吸収部材
40 照明装置
400 光源
100 液体
110 制御装置
111 制御装置
120 照明システム
D0 厚さ方向
S1 空間
U1 霧化ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11