(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】分析方法、分析装置および発電システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20241101BHJP
H01M 8/04955 20160101ALI20241101BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20241101BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04955
H01M8/04537
H02J3/38 170
(21)【出願番号】P 2024540590
(86)(22)【出願日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2023032600
【審査請求日】2024-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2022199946
(32)【優先日】2022-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊瀬 豪彦
(72)【発明者】
【氏名】金子 泰
(72)【発明者】
【氏名】田中 良和
(72)【発明者】
【氏名】吉原 康通
(72)【発明者】
【氏名】田口 良文
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/013606(WO,A1)
【文献】特開2012-104487(JP,A)
【文献】特開2009-110806(JP,A)
【文献】特開2010-033767(JP,A)
【文献】特開2006-310109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池装置の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置の出力電圧を受信するステップと、
前記燃料電池装置に異常が発生すると、前記燃料電池装置の異常を示す情報を受信するステップと、
前記直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、前記出力電圧、および前記燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づき前記異常停止の要因を分析するステップとを備える、分析方法。
【請求項2】
前記出力電圧が、前記直交変換装置の整定値より大きいと、前記異常停止の要因が電力系統の異常であると判定し、
前記出力電圧が、前記直交変換装置の整定値以下であり、かつ前記燃料電池装置が異常ありであると、前記異常停止の要因が前記燃料電池装置の異常であると判定し、
前記出力電圧が、前記直交変換装置の整定値以下であり、かつ前記燃料電池装置が異常なしであると、前記異常停止の要因が前記直交変換装置の異常であると判定する、
請求項1に記載の分析方法。
【請求項3】
燃料電池装置の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置の出力電圧、および、前記燃料電池装置に異常が発生すると、前記燃料電池装置の異常を示す情報を受信する通信器と、
前記直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、前記出力電圧、および前記燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づき前記異常停止の要因を分析する制御器とを備える、分析装置。
【請求項4】
燃料電池装置と、
請求項3に記載の分析装置と、を備える発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析方法、分析装置および発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、系統電源と連系可能な燃料電池システムなどの分散型発電装置において、当該発電装置の直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路の出力が過電圧状態になった場合の対策が提案されている。具体的には、特許文献1では、電圧検出器で検出された出力電圧(絶対値)が基準電圧を超過する過電圧状態である場合、当該出力電圧が低下するようにインバータ回路が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、一例として、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力供給の異常停止の要因を従来よりも適切に分析し得る、分析方法、分析装置および発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様(aspect)の分析方法は、燃料電池装置の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置の出力電圧を受信するステップと、前記燃料電池装置に異常が発生すると、前記燃料電池装置の異常を示す情報を受信するステップと、前記直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、前記出力電圧、および前記燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づき前記異常停止の要因を分析するステップと、を備える。
【0006】
また、本開示の一態様の分析装置は、燃料電池装置の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置の出力電圧、および前記燃料電池装置に異常が発生すると、前記燃料電池装置の異常を示す情報を受信する通信器と、前記直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、前記出力電圧、および前記燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づき前記異常停止の要因を分析する制御器と、を備える。
【0007】
また、本開示の一態様の発電システムは、燃料電池装置と、上記の分析装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様の分析方法、分析装置および発電システムは、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力供給の異常停止の要因を従来よりも適切に分析し得る、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態の発電システムの一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の発電システムにおける分析装置の動作(分析方法)の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1実施形態の実施例の発電システムにおける分析装置の動作(分析方法)の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2実施形態の発電システムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特許文献1の分散型発電装置では、電圧検出器で検出された出力電圧の絶対値が基準電圧を超過する過電圧状態である場合のインバータ回路の制御については、検討されているが、電力負荷への電力供給が異常停止された場合の要因分析については特に検討されていない。
【0011】
そこで、本開示の第1態様の分析方法は、燃料電池装置の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置の出力電圧を受信するステップと、前記燃料電池装置に異常が発生すると、燃料電池装置の異常を示す情報を受信するステップと、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、直交変換装置の出力電圧、および燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づき上記異常停止の要因を分析するステップとを備える。
【0012】
上記によると、本態様の分析方法は、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力供給の異常停止の要因を従来よりも適切に分析し得る。
【0013】
具体的には、本態様の分析方法は、直交変換装置の出力電圧および燃料電池装置の異常を示す情報を受信することで、これらのデータを受信しない場合に比べて、上記異常停止が、電力供給システムにおける何れの装置の異常に起因するかを特定しやすくなる。
【0014】
本開示の第2態様の分析方法は、第1態様の分析方法において、直交変換装置の出力電圧が、直交変換装置の整定値より大きいと、上記異常停止の要因が電力系統の異常であると判定し、直交変換装置の出力電圧が、直交変換装置の整定値以下であり、かつ燃料電池装置が異常ありであると、上記異常停止の要因が燃料電池装置の異常であると判定し、直交変換装置の出力電圧が、直交変換装置の整定値以下であり、かつ燃料電池装置が異常なしであると、上記異常停止の要因が直交変換装置の異常であると判定してもよい。
【0015】
上記によると、本態様の分析方法は、直交変換装置の出力電圧と直交変換装置の整定値との大小関係、および燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づいて、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力供給の異常停止が、電力系統、燃料電池装置および直交変換装置のうちの何れの装置の異常に起因するかを適切に特定することができる。
【0016】
本開示の第3態様の分析装置は、燃料電池装置の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置の出力電圧、および、前記燃料電池装置に異常が発生すると、燃料電池装置の異常を示す情報を受信する通信器と、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、直交変換装置の出力電圧、および燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づき上記異常停止の要因を分析する制御器とを備える。
【0017】
かかる構成によると、本態様の分析装置は、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力供給の異常停止の要因が従来よりも適切に分析され得る。なお、本態様の分析装置が奏する作用効果の詳細は、第1態様の分析方法が奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
【0018】
本開示の第4態様の発電システムは、燃料電池装置と、第3態様の分析装置と、を備える。
【0019】
かかる構成によると、本態様の発電システムは、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力供給の異常停止の要因が従来よりも適切に分析され得る。なお、本態様の発電システムが奏する作用効果の詳細は、第1態様の分析方法が奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の上記態様の具体例を説明する。以下で説明する具体例は、いずれも本開示の上記態様の一例を示すものである。よって、以下で示される形状、数値、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態などは、請求項に記載されていない限り、請求項の範囲を限定するものではない。
【0021】
また、以下に説明する構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。
【0022】
さらに、装置の動作においては、必要に応じて、工程の順番を入れ替えてもよいし、公知の工程を追加してもよい。
【0023】
(第1実施形態)
[装置構成]
図1は、第1実施形態の発電システムの一例を示す図である。
図2は、
図1の分析装置の一例を示す図である。
【0024】
本実施形態の発電システム10は、
図1に示す如く、燃料電池装置15と、分析装置20と、を備える。
【0025】
燃料電池装置15は、水素含有ガスと酸素含有ガスを用いて発電する発電ユニットを備える。燃料電池装置15は、単一の発電ユニットを備えてもよいし、複数の発電ユニットを備えてもよい。
【0026】
ここで、後者の場合、発電システム10は、例えば、電力系統に大電力を供給するシステムであってもよい。つまり、後者の場合、燃料電池装置15は、燃料電池スタックを含む複数の発電ユニットからなる発電ユニット群を備え、燃料電池装置15は、発電ユニット群を分割した各グループに対応する。このような発電システム10の詳細な構成は、第2実施形態で説明する。
【0027】
図2に示すように、分析装置20は、通信器21と、制御器23と、を備える。
【0028】
通信器21は、直交変換装置40の出力電圧、および燃料電池装置15に異常が発生した場合、燃料電池装置15の異常を示す情報を受信する受信器である。例えば、通信器21は、通信ネットワークを介して、電圧センサ41で計測される上記出力電圧および燃料電池装置15より送信される上記情報を所定の時間毎に受信してもよい。
【0029】
直交変換装置40は、燃料電池装置15の直流電力を交流電力に変換する装置あって、パワーコンディショナとも呼ばれる。直交変換装置40から出力される交流電力は、
図1に示す如く、適宜の電力負荷に供給される。「電力負荷」として、例えば、工場設備または家電製品などを挙げることができる。前者の工場設備には、一般的に、三相200Vの交流電力が供給される。後者の家電製品には、一般的に、単相100Vの交流電力が供給される。電力負荷は、燃料電池装置15からの電力の他、
図1に示す如く、電力系統からの商用電力を受電可能なように電力系統にも接続されている。また、各発電ユニット内には図示されない直直変換装置(DC-DC変換装置)を備えていてもよい。
【0030】
制御器23は、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、直交変換装置40の出力電圧、および燃料電池装置15の異常を示す情報の有無に基づき上記異常停止の要因を分析する。
【0031】
ここで、「燃料電池装置15の異常を示す情報」は、例えば、燃料電池装置15が異常であることを示す情報であってもよい。かかる情報は、適時に、発電システム10の適宜の外部機器に通知されてもよい。「外部機器」として、例えば、発電システム10で発電する電力供給のサービスを受けている需要者の情報端末、メンテナンス会社の表示装置などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0032】
制御器23は、制御機能を有するものであればよく、演算処理部(図示せず)と制御プログラムを記憶する記憶部と、を備える。演算処理部が、記憶部に記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、制御器23において、所定の制御が行われる。演算処理部として、例えば、マイクロプロセッサが例示される。記憶部としては、例えば、メモリが例示される。なお、制御器23は、燃料電池装置15内の発電ユニットの出力を含む動作を直接制御してもよい。また、発電ユニット内に出力を含め自身の動作を制御する、図示されない制御装置が設けられている場合は、制御器23は、この制御装置を介して、燃料電池装置15内の発電ユニットの出力を含む動作を間接的に制御してもよい。
【0033】
なお、以上の発電システム10の構成は、例示であって、本例に限定されない。例えば、
図1に示す例では、直交変換装置40および電圧センサ41は、発電システム10の外部に設けられているが、これらの直交変換装置40および電圧センサ41は、発電システム10内に設けられていてもよい。また、直交変換装置40内に電圧センサ41が内蔵されていてもよい。
【0034】
[動作]
図3は、第1実施形態の発電システムにおける分析装置の動作(分析方法)の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器23の演算処理部が、制御器23の記憶部から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器23で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器23により動作を制御する場合について、説明する。
【0035】
まず、発電システム10の発電中の適時に、ステップS1で、燃料電池装置15の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置40の出力電圧が受信される。
【0036】
次に、ステップS2で、燃料電池装置15の運転状態を示す情報を受信するが、このときに、燃料電池装置15に異常が発生している場合、燃料電池装置15の異常を示す情報が受信される。燃料電池装置15の異常を示す情報が受信されると、分析装置20の図示されない記憶部にこの情報が記憶される。ここで、燃料電池装置15の運転状態を示す情報とは、燃料電池装置15の異常を示す情報だけでなく、その他の任意の運転状態を示す情報を含む。例えば、燃料電池装置15が起動、発電、及び停止のいずれかの運転状態であることを示す情報が挙げられる。また、燃料電池装置15の出力電圧、出力電力などの燃料電池装置15の出力を示す情報が挙げられる。なお、燃料電池装置15が複数の発電ユニットを含む場合、各発電ユニットについて、運転状態を示す情報が受信される。
【0037】
次に、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力供給が異常停止すると(ステップS3で「YES」の場合)、ステップS4で、ステップS1の出力電圧と、ステップS2の情報とに基づき、ステップS3の異常停止の要因が分析される。なお、ステップS4を実行するための具体的な処理の一例は、実施例で説明する。なお、燃料電池装置15から電力負荷への電力供給の異常停止は、直交変換装置40からの出力が停止することで検知される。具体的には、例えば、分析装置20で直交変換装置40の出力電圧と出力電流を乗じた値が0になると、燃料電池装置15から電力負荷への電力供給が異常停止したと判定される。なお、直交変換装置40の出力電流が0になると、燃料電池装置15から電力負荷への電力供給が異常停止したと判定してもよい。直交変換装置40の出力電流は、直交変換装置40と電力負荷との間に設けられた、または直交変換装置40に内蔵された、図示されない電流センサにより検知される。
【0038】
本異常停止の要因分析に関する情報は、発電システム10の適宜の外部機器に通知されてもよい。「外部機器」として、例えば、発電システム10で発電する電力供給のサービスを受けている需要者の情報端末、メンテナンス会社の表示装置などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0039】
ステップS3で、上記異常停止がない場合(ステップS3で「No」の場合)、適時にステップS1以降の動作が再実行される。
【0040】
以上の分析装置20の動作は、例示であって、本例に限定されない。例えば、ステップS1の動作のタイミングとステップS2の動作のタイミングとは、同時であってもよいし、順序が逆であってもよい。
【0041】
以上に説明した本実施形態によれば、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力供給の異常停止の要因を従来よりも適切に分析し得る。
【0042】
具体的には、直交変換装置40の出力電圧および燃料電池装置15の異常を示す情報を受信することで、これらのデータを受信しない場合に比べて、上記異常停止が、電力供給システムにおける何れの装置の異常に起因するかを特定しやすくなる。
【0043】
(実施例)
第1実施形態の実施例の分析方法は、以下に説明する動作以外は、第1実施形態の分析方法と同様である。
【0044】
本実施例の分析方法は、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力の供給が異常停止されたとき、直交変換装置40の出力電圧が、直交変換装置40の整定値より大きいと、上記異常停止の要因が電力系統の異常であると判定する。これは以下の理由による。
【0045】
まず、直交変換装置40から電力負荷への電力供給には、直交変換装置40の出力電圧を電力負荷に供給される系統電力の電圧よりも大きくする必要性から、系統電力の電圧が高電圧化するに連れて、直交変換装置40の出力電圧が大きくなる。なお、電力負荷に供給される系統電力の電圧は、電力系統と電力負荷との間に設けられた変圧器を介して低下された電圧となっている。
【0046】
ここで、電力系統の高電圧化は、例えば、電力系統と連系する電力負荷の電力需要の一時的な低下、電力系統に接続された分散型発電装置からの逆潮流などの様々な要因で発生する。また、直交変換装置40では、制御器23によって直交変換装置40の出力電圧が監視されており、当該出力電圧が、予め設定された整定値を超えたことが検出されると、直交変換装置40の電力出力を停止させる機能が働く。よって、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力供給が異常停止されたとき、直交変換装置40の出力電圧が直交変換装置40の整定値より大きい場合には、上記異常停止が、系統電力の電圧が異常に高くなったことに起因すると判断することができる。
【0047】
また、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力の供給が異常停止されたとき、直交変換装置40の出力電圧が、直交変換装置40の整定値以下であり、かつ燃料電池装置15が異常ありであると、上記異常停止の要因が燃料電池装置15の異常であると判定する。なお、「燃料電池装置15が異常あり」とは、分析装置20が、通信器21を介して燃料電池装置15の異常を示す情報を受信していることを意味する。「燃料電池装置15の異常」として、例えば、燃料電池装置15からの水素漏れ、燃料電池装置15への水素燃料の供給停止、燃料電池装置15の高温化などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、燃料電池装置15が複数の発電ユニットを備える形態において、上記異常停止の要因が、燃料電池装置15の異常と判定されるのは、燃料電池装置15の発電中の発電ユニットの全てに異常が発生し、停止した場合になる。これは、燃料電池装置15の発電中の発電ユニットの一部に異常が発生し停止しても、直交変換装置40の出力電力は低下しても、直交変換装置40の電力出力は継続されるからである。
【0048】
また、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力の供給が異常停止されたとき、直交変換装置40の出力電圧が、直交変換装置40の整定値以下であり、かつ燃料電池装置15が異常なしであると、上記異常停止の要因が直交変換装置40の異常であると判定する。なお、「直交変換装置40の異常」として、例えば、直交変換装置40の高温化などを挙げることができるが、これに限定されない。
【0049】
図4は、第1実施形態の実施例の発電システムにおける分析装置の動作(分析方法)の一例を示すフローチャートである。以下の動作は、例えば、制御器23の演算処理部が、制御器23の記憶部から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器23で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器23により動作を制御する場合について、説明する。
【0050】
図4のステップS1、ステップS2およびステップS3はそれぞれ、
図3のステップS1、ステップS2およびステップS3のそれぞれと同様であるので、これらのステップの説明を省略する。
【0051】
ステップS41で、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力供給の異常停止前における直交変換装置40の出力電圧が、直交変換装置40の整定値よりも大きいか否かが判定される。
【0052】
直交変換装置40の出力電圧が、直交変換装置40の整定値よりも大きい場合(ステップS41で「YES」の場合)、ステップS42で、ステップS3の異常停止が電力系統の異常に起因すると分析される。なお、本異常停止の要因分析に関する情報が、発電システム10の適宜の外部機器に通知されてもよい。
【0053】
直交変換装置40の出力電圧が、直交変換装置40の整定値以下である場合(ステップS41で「NO」の場合)、次の判定ステップに進み、ステップS43で、分析装置20の記憶部(図示せず)に燃料電池装置15の異常を示す情報が存在するか否かが判定される。
【0054】
分析装置20の記憶部に燃料電池装置15の異常を示す情報が存在する場合(ステップS43で「YES」の場合)、ステップS44で、ステップS3の異常停止が燃料電池装置15の異常に起因すると分析される。なお、本異常停止の要因分析に関する情報が、発電システム10の適宜の外部機器に通知されてもよい。
【0055】
分析装置20の記憶部に燃料電池装置15の異常を示す情報が存在しない場合(ステップS43で「NO」の場合)、ステップS45で、ステップS3の異常停止が直交変換装置40の異常に起因すると分析される。なお、本異常停止の要因分析に関する情報が、発電システム10の適宜の外部機器に通知されてもよい。
【0056】
以上に説明した本実施例によれば、直交変換装置40の出力電圧と直交変換装置40の整定値との大小関係、および、燃料電池装置15の異常を示す情報の有無に基づいて、直交変換装置40を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力供給の異常停止が、電力系統、燃料電池装置15および直交変換装置40のうちの何れの装置の異常に起因するかを適切に特定することができる。なお、電力系統の異常、または直交変換装置40の異常により直交変換装置40の出力が停止されると、これを契機に、燃料電池装置15にも異常が発生し、停止する場合がある。つまり、上記異常停止の要因が、電力系統の異常または直交変換装置40の異常であるにもかかわらず、燃料電池装置15の異常を示す情報を受信している場合がある。この場合は、直交変換装置40の出力電圧が整定値を超えたタイミングまたは直交変換装置40の出力電力が0になったタイミングが、燃料電池装置15の異常が発生したタイミングよりも早いため、このタイミングの違いにより要因を判別できる。ただし、分析装置20による異常停止の要因分析が、燃料電池装置15の異常が発生する前に実行される場合は、このタイミングの違いによる要因の判別は不要となる。
【0057】
本実施例の分析方法、分析装置20および発電システム10は、上記特徴以外は、第1実施形態と同様であってもよい。
【0058】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態の発電システムの一例を示す図である。ただし、図面を簡素化する目的で、
図5では、第1実施形態(
図1)における直交変換装置40および電圧センサ41の図示は省略されている。
【0059】
本実施形態の発電システム10は、
図5に示す如く、燃料電池装置15と、分析装置20と、制御装置30A~30Eと、直交変換装置40A~40Eと、を備える。ここで、分析装置20内の構成は、第1実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0060】
図5に示す例では、発電システム10は、燃料電池スタックを含む複数の発電ユニットからなる発電ユニット群を備える。この発電ユニット群は、複数の発電ユニットによってグループ化されている。
【0061】
本例では、発電ユニット群は、グループAに属する発電ユニットa1~an、グループBに属する発電ユニットb1~bn、グループCに属する発電ユニットc1~cn、グループDに属する発電ユニットd1~dn、および、グループEに属する発電ユニットe1~enのそれぞれにグループ化されている。一つのグループに属する全ての発電ユニットを、単に「グループ内の発電ユニット」ともいう。本開示の燃料電池装置は、例えば、グループA~グループEのそれぞれである。
【0062】
但し、以上の発電ユニット群の構成は例示であって、本例に限定されない。例えば、発電ユニット群は、単一クループの発電ユニットによってグループ化されていてもよい。また、グループ内の発電ユニットの個数は、1個であってもよい。
【0063】
制御装置30A~30Eはそれぞれ、グループAの発電ユニットa1~an、グループBの発電ユニットb1~bn、グループCの発電ユニットc1~cn、グループDの発電ユニットd1~dn、および、グループEの発電ユニットe1~enのそれぞれに対して設けられており、グループ内の発電ユニットのそれぞれの動作を制御する。
【0064】
例えば、制御装置30Aは、通信ネットワークを介して、グループAに属する発電ユニットa1~anの効率的な動作(例えば、寿命の最適化)が可能になるように、これら発電ユニットa1~anのそれぞれの出力を制御する。
【0065】
制御装置30A~30Eは、制御機能を有するものであればよく、演算処理部(図示せず)と制御プログラムを記憶する記憶部と、通信器と、を備える。演算処理部が、記憶部に記憶された制御プログラムを読み出して実行することによって、制御装置30A~30Eにおいて、所定の制御が行われる。演算処理部として、例えば、マイクロプロセッサが例示される。記憶部としては、例えば、メモリが例示される。
【0066】
直交変換装置40A~40Eは、グループAの発電ユニットa1~an、グループBの発電ユニットb1~bn、グループCの発電ユニットc1~cn、グループDの発電ユニットd1~dn、および、グループEの発電ユニットe1~enのそれぞれに対して設けられている。直交変換装置40A~40Eの詳細な構成は、第1実施形態の直交変換装置40と同様であるので説明を省略する。なお、本例では、直交変換装置40A~40Eのそれぞれに、電圧センサおよび電流センサが内蔵されている。
【0067】
分析装置20の制御器23(
図2参照)が、上記のとおり、直交変換装置を介した燃料電池装置15から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、直交変換装置の出力電圧、および燃料電池装置15の異常を示す情報の有無に基づき異常停止の要因を分析する。なお、分析装置20は、直交変換装置40A~40Eに内蔵された電圧センサで検出された直交変換装置40A~40Eの出力電圧を受信する。また、分析装置20は、直交変換装置40A~40Eに内蔵された電流センサで検出された直交変換装置40A~40Eの出力電流を受信する。ここで、燃料電池装置15から電力負荷への電力供給の異常停止は、上記出力電流を用いて第1実施形態と同様の方法で検知される。また、分析装置20は、グループA~Eに属する発電ユニットに異常が生じると、制御装置30A~30Eを介して、発電ユニットの異常を示す情報を受信する。
【0068】
本実施形態の発電システム10が奏する作用効果は、第1実施形態または第1実施形態の実施例に記載の作用効果と同様であるので説明を省略する。
【0069】
以上の発電システム10の構成は例示であって、本例に限定されない。例えば、分析装置20が、制御装置30A~30Eの制御機能を搭載して、直接、グループ内の発電ユニットのそれぞれの動作を制御してもよい。
【0070】
第1実施形態、第1実施形態の実施例および第2実施形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせても構わない。上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示の一態様は、直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力供給の異常停止の要因を従来よりも適切に分析し得る、分析方法、分析装置および発電システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 :発電システム
15 :燃料電池装置
20 :分析装置
21 :通信器
23 :制御器
30A :制御装置
30B :制御装置
30C :制御装置
30D :制御装置
30E :制御装置
40 :直交変換装置
40A :直交変換装置
40B :直交変換装置
40C :直交変換装置
40D :直交変換装置
40E :直交変換装置
41 :電圧センサ
a1~an:発電ユニット
b1~bn:発電ユニット
c1~cn:発電ユニット
d1~dn:発電ユニット
e1~en:発電ユニット
【要約】
本開示の分析方法は、燃料電池装置の直流電力を交流電力に変換する直交変換装置の出力電圧を受信するステップと、前記燃料電池装置に異常が発生すると、前記燃料電池装置の異常を示す情報を受信するステップと、前記直交変換装置を介した燃料電池装置から電力負荷への電力の供給が異常停止されると、前記出力電圧、および前記燃料電池装置の異常を示す情報の有無に基づき前記異常停止の要因を分析するステップとを備える。