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特許7580077発熱体用収容具および保温具ならびに商品保温用運搬具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】発熱体用収容具および保温具ならびに商品保温用運搬具
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20241101BHJP
   B65D 81/38 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B65D81/18 F
B65D81/38 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020144669
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039567
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595054213
【氏名又は名称】株式会社オルセン
(73)【特許権者】
【識別番号】514190420
【氏名又は名称】株式会社アジア合同
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】砂子坂 章
(72)【発明者】
【氏名】窪田 仁
(72)【発明者】
【氏名】藤原 智史
(72)【発明者】
【氏名】小林 倫祥
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 伸行
(72)【発明者】
【氏名】江夏 理気
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-071670(JP,U)
【文献】特開2004-203396(JP,A)
【文献】実開平07-008005(JP,U)
【文献】特開2002-058604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
B65D 81/38
B65D 67/00-79/02
A47J 36/28
A47J 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と反応して発熱する発熱体を収容する発熱体用収容具であって、
前記発熱体用収容具は、通気性を有する第1の面部と、この第1の面部に対向する通気性を有する第2の面部とで構成された収容体を備え、
前記収容体は、前記第1の面部と前記第2の面部との間に前記発熱体の収容を可能とした収容部と、前記収容部に対して前記発熱体を装脱する開口部とを有し、
前記発熱体用収容具は、前記第1の面部と反対に位置する前記第2の面部の箇所に設けられた熱反射層を含んで構成され、
前記熱反射層は、不織布と、前記不織布に塗工されたエアロゲルと、前記エアロゲルの表面に蒸着され前記第2の面部に対向して配置されるアルミ層とで構成されている、
ことを特徴とする発熱体用収容具。
【請求項2】
前記第1の面部と前記第2の面部とは通気性が異なっている、
ことを特徴とする請求項1記載の発熱体用収容具。
【請求項3】
前記第1の面部は前記第2の面部よりも通気性に優れる、
ことを特徴とする請求項2記載の発熱体用収容具。
【請求項4】
前記第2の面部の厚さは前記第1の面部厚さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項1記載の発熱体用収容具。
【請求項5】
前記発熱体用収容具は、前記第2の面部と反対に位置する前記熱反射層の箇所に設けられた断熱層を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項記載の発熱体用収容具。
【請求項6】
前記収容部は、単一の前記発熱体を収容する大きさで形成され、
前記収容体は、平面的に並べられて連接されそれぞれが前記開口部を有する複数の前記収容部を備えている、
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項記載の発熱体用収容具。
【請求項7】
請求項1からの何れか1項記載の発熱体用収容具と、前記発熱体用収容具の前記収容部に収容された前記発熱体とからなる、
ことを特徴とする保温具。
【請求項8】
請求項記載の保温具が、断熱性運搬具の内部で前記第1の面部を上に向け、前記第2の面部を下に向けて前記断熱性運搬具の底面に載置されている、
ことを特徴とする商品保温用運搬具。
【請求項9】
空気と反応して発熱する発熱体と、発熱体収容具と、断熱性運搬具とからなる商品保温用運搬具であって、
前記断熱性運搬具は、長方形状の底面と、底面の4辺からそれぞれ起立する4つの側面からなり、その内側に矩形の柱状の空間部を有する商品収容部が形成され、上部が開口部となっている運搬具本体と、前記開口部を開閉する蓋体とで構成され、
前記運搬具本体の前記底面と、前記4つの側面と、前記蓋体の内面はそれぞれ断熱材で覆われ、
前記発熱体収容具は、通気性を有する第1の面部と、この第1の面部に対向する通気性を有する第2の面部とで構成された収容体を備え、
前記収容体は、前記第1の面部と前記第2の面部との間に、前記発熱体の収容を可能とした収容部と、前記収容部に対して前記発熱体を装脱する開口部とを有し、
前記第1の面部と反対に位置する前記第2の面部の箇所に熱反射層が設けられ、
前記第2の面部と反対に位置する前記熱反射層の箇所に断熱層が設けられ、
前記第1の面部は前記第2の面部よりも通気性に優れ、
前記第2の面部の厚さは前記第1の面部の厚さよりも大きく形成され、
前記発熱体収容具は、前記断熱性運搬具の前記底面を覆う大きさで形成され、
前記発熱体収容具は、前記断熱層が前記底面に載置され前記第1の面部を上に向けて前記運搬具本体に収容され、
運搬すべき商品は前記第1の面部の上に載置される、
ことを特徴とする商品保温用運搬具。
【請求項10】
空気と反応して発熱する発熱体を用いて飲食店の商品を保温しつつ運搬する方法であって、
長方形状の底面と、前記底面の4辺からそれぞれ起立する4つの側面からなり、その内側に矩形の柱状の空間部を有する商品収容部が形成され、上部が開口部となっている運搬具本体と、前記開口部を開閉する蓋体とで構成され、前記運搬具本体の前記底面と前記4つの側面と前記蓋体の内面がそれぞれ断熱材で覆われた断熱性運搬具を用意し、
通気性を有する第1の面部と、この第1の面部に対向する通気性を有する第2の面部とで構成された収容体を備え、前記収容体は、前記第1の面部と前記第2の面部との間に前記発熱体の収容を可能とした収容部と、前記収容部に対して前記発熱体を装脱する開口部とを有し、前記第1の面部と反対に位置する前記第2の面部の箇所に熱反射層が設けられ、前記第2の面部と反対に位置する前記熱反射層の箇所に断熱層が設けられ、前記第1の面部は前記第2の面部よりも通気性に優れ、前記第2の面部の厚さは前記第1の面部厚さよりも大きく形成され、前記断熱性運搬具の前記底面を覆う大きさで形成された発熱体収容具を用意し、
気密性を有する袋に封入されていた前記発熱体を前記袋から取り出し、空気と反応させ発熱を開始させて前記収容部に挿入し、前記発熱体と前記発熱体用収容具とにより商品を保温する保温具を構成し、
この保温具を前記第1の面部を上に、前記断熱層を下に向けて前記運搬具本体の前記底面に載置し、前記第1の面部の上に前記飲食店の商品を載置し、前記蓋体により前記開口部を閉塞して前記断熱性運搬具を運搬するようにした、
ことを特徴とする飲食店の商品を保温しつつ運搬する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体用収容具および保温具ならびに商品保温用運搬具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナの影響により外食が控えられ、食堂やレストランなどで作られた料理の配達や、これらの料理のオンラインデリバリーサービスが行なわれるようになってきている。
例えば、断熱ボックスなどの商品保温用運搬具の内部に料理を収容し、商品保温用運搬具を背負い、料理を自転車で運ぶことも盛んに行なわれている。
このような場合、従来では、運搬時に料理が冷めないように、合成樹脂製の板を電子レンジで加熱し、商品保温用運搬具の底に加熱した合成樹脂製の板を置き、その上に料理を載せて運ぶようにしている。
また、空気と反応して発熱する発熱体を利用した断熱ボックスも提案されているが、発熱体とは別体の底敷きを必要とすることなどから使い勝手が悪く、実用に供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-39377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、従来では、加熱された合成樹脂製の板を商品保温用運搬具の内部に入れることから、料理を含めた商品保温用運搬具の全体の重量が大きくなり、運搬員に大きな負担がかかる問題があった。
また、加熱された合成樹脂製の板は1時間以内の短時間の保温を想定している。従来のように単独の食堂やレストランなどの店舗を拠点とする運搬員が店舗と配達先を行き来して配達を行う場合には、拠点とする店舗に戻る都度、新たに電子レンジなどで加熱した合成樹脂製の板に入れ替えて運搬すればよい。しかし、オンラインフードデリバリーサービスでは、運搬員が拠点とする店舗を持たず、注文を受ける都度異なる店舗を訪問して配達を行う業務形態をとるため、合成樹脂製の板などの保温具を加熱することができず、保温状態を維持したまま配達を行うことが困難であった。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、運搬員にかかる負担を軽減する上で有利で、また、保温材を加熱する設備を必要とすることなく、長時間にわたり料理を保温したまま運搬する上で有利な発熱体用収容具および保温具ならびに商品保温用運搬具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明は、空気と反応して発熱する発熱体を収容する発熱体用収容具であって、前記発熱体用収容具は、通気性を有する第1の面部と、この第1の面部に対向する通気性を有する第2の面部とで構成された収容体を備え、前記収容体は、前記第1の面部と前記第2の面部との間に前記発熱体の収容を可能とした収容部と、前記収容部に対して前記発熱体を装脱する開口部とを有することを特徴とする。
また、本発明は、前記第1の面部と前記第2の面部とは通気性が異なっていることを特徴とする。
また、本発明は、前記第1の面部は前記第2の面部よりも通気性に優れることを特徴とする。
また、本発明は、前記第2の面部の厚さは前記第1の面部厚さよりも大きいことを特徴とする。
また、本発明は、前記発熱体用収容具は、前記第1の面部と反対に位置する前記第2の面部の箇所に設けられた熱反射層を含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記熱反射層は、不織布と、前記不織布に塗工されたエアロゲルと、前記エアロゲルの表面に蒸着され前記第2の面部に対向して配置されるアルミ層とで構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記発熱体用収容具は、前記第2の面部と反対に位置する前記熱反射層の箇所に設けられた断熱層を含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記収容部は、単一の前記発熱体を収容する大きさで形成され、前記収容体は、平面的に並べられて連接されそれぞれが前記開口部を有する複数の前記収容部を備えていることを特徴とする。
また、本発明の保温具は、発熱体用収容具と、前記発熱体用収容具の前記収容部に収容された前記発熱体とからなることを特徴とする。
また、本発明の商品保温用運搬具は、保温具が、前記第1の面部を断熱性運搬具の内側に、前記第2の面部を断熱性運搬具の内壁面と接触する側に向けて断熱性運搬具の内部に載置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、発熱体を含む発熱体収容具の重量は、従来の加熱すべき合成樹脂板に比べて軽く、したがって、料理を運搬する運搬員の負担を軽減する上で有利となる。
また、発熱体は袋から取り出すことで発熱することから合成樹脂製の板を加熱するための電子レンジなど、保温材を加熱する設備を必要とすることなく、保温具を簡単に準備することが可能となり、料理を保温しつつ運搬作業を簡単に行なう上で有利となる。
また、高温な発熱体をじかに触らず、発熱体を収容する収容体に触れることで発熱体を取り扱うことができることに加え、長いものでは12時間程度にわたり高い温度を維持できることから、店舗で作った料理を保温しつつ運搬する際などに発熱体を簡単に取り扱う上で有利となる。
また、本発明によれば、第1の面部と第2の面部の通気性を異ならせると、通気性の良い方の第1の面部または第2の面部の一方に位置する発熱体の表面は、発熱体の他方の表面よりも温度が高温となる。したがって、保温すべき料理を通気性の良い方の第1の面部または第2の面部の一方に鉛直方向から、あるいは、水平方向から接触させることで、料理の保温をより高温で行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、第2の面部の通気性を第1の面部の通気性に比べて低くすると、通気性の良い第1の面部に位置する発熱体の表面は、第2の面部に位置する発熱体の表面よりも温度が高温となる。したがって、保温すべき料理を通気性の良い方の第1の面部に鉛直方向から、あるいは、水平方向から接触させることで、料理の保温をより高温で行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、第2の面部の厚さを、第1の面部の厚さに比べて大きな寸法で形成すると、保温すべき料理を厚さの薄い第1の面部により発熱体の表面に近づけ、発熱体の熱により効率的に保温する上で有利となり、保温の対象がない箇所に対しては第2の面部により発熱体との距離を確保でき、保温の対象がない箇所と発熱体とが直接接触することを阻止する上で有利となり、発熱体から保温の対象がない箇所に熱が直接伝導されにくくなり、発熱体から発せられる熱の多くを料理の保温に用いる上で有利となる。
また、本発明によれば、発熱体用収容具を、第1の面部と反対に位置する第2の面部の箇所に設けられた熱反射層を含んで構成すると、熱反射層により、保温の対象がない箇所に対して発せられた熱を反射させて発熱体に戻し、発熱体による料理の保温を効率良く行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、熱反射層を、不織布と、不織布に塗工されたエアロゲルと、エアロゲルの表面に蒸着され第2の面部に対向して配置されるアルミ層とで構成すると、熱反射層により、保温の対象がない箇所に対して発せられた熱を発熱体に効率良く戻す上で有利となり、発熱体による料理の保温を効率良く行なう上でより一層有利となる。
また、本発明によれば、第2の面部と反対に位置する熱反射層の箇所に断熱層を設けると、熱反射層に伝わった発熱体からの熱を熱反射層に留め、保温の対象がない箇所に対して発せられた熱を熱反射層により反射させて発熱体に戻し、発熱体による料理の保温を効率良く行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、収容部を、単一の発熱体を収容する大きさの収容部を平面的に並べて複数連接し、各収容部に開口部を設けると、運搬時に商品保温用運搬具が振動を受けても各収容部に収容された発熱体の位置を保持する上で有利となり、複数の発熱体による料理の保温を効率良く行なう上で有利となる。
また、発熱体用収容具と、発熱体用収容具の収容部に収容された発熱体とで構成された本発明の保温具は、高温な発熱体をじかに触らず、保温具を触ることで発熱体を取り扱うことができ、店舗で作った料理を保温しつつ運搬する際などに発熱体を簡単に取り扱う上で有利となる。
また、第1の面部と第2の面部とは通気性が異なっているので、通気性の高い方の第1の面部または第2の面部の一方が、通気性の低い方の第1の面部または第2の面部の他方よりも、発熱体の表面の温度が高温となり、保温すべき料理に対して通気性の高い方の第1の面部または第2の面部の一方を鉛直方向の上方または下方から、あるいは、水平方向から接触させることで、料理の保温をより高温で行なう上で有利となる。
また、第1の面部を断熱性運搬具の内側に、第2の面部を断熱性運搬具の内壁面と接触する側に向けて本発明の保温具が載置されて構成された商品保温用運搬具によれば、保温すべき料理が鉛直方向の下方から、あるいは、水平方向から、あるいは側面から保温具に接触することで、料理の保温を効率良く行なえ、温かい料理を顧客に運搬する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】発熱体用収容具の各収容部に発熱体を収容する説明図である。
図2】(A)は発熱体用収容具の平面図、(B)は同正面図である。
図3】発熱体用収容具を構成する構成部品の展開斜視図である。
図4】(A)は図2のA―A線断面図、(B)は図2のB―B線断面図である。
図5】(A)は発熱体用収容具に発熱体が収容された保温具の平面図、(B)は同正面図である。
図6】断熱性運搬具の内部の底面に保温具が載置された商品保温用運搬具の斜視図である。
図7】実施の形態の発熱体収容具の第1の実験の温度測定結果を示す線図である。
図8】実施の形態の発熱体収容具の第2の実験の温度測定結果を示す線図である。
図9】実施の形態の発熱体収容具の第3の実験の温度測定結果を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1図5に示すように、発熱体用収容具10は発熱体80を収容するもので、図4に示すように、収容体12、熱反射層14、断熱層16、カバーシート18を含んで構成されている。
発熱体80は、空気中の酸素と反応して発熱するものであり、気密性を有する袋に封入されて市場に出回り、袋から取り出すと空気中の酸素と反応して発熱し、空気中の酸素と反応している間は発熱し続け、空気との接触を遮断することで発熱が停止される。
発熱体80は、その成分の配合により発熱温度(例えば80℃から90℃)や発熱時間(例えば6時間から12時間)が調整可能であり、発熱体80には従来公知の様々な構成のものが使用可能である。
発熱体80は、本実施の形態では短辺と長辺とを有する長方形の板状を呈している。
【0009】
収容体12は、第1の面部22と、この第1の面部22に対向する第2の面部24とを含んで構成されている。
そして収容体12は、第1の面部22と第2の面部24との間に単一の発熱体80の収容を可能とした収容部26と、収容部26に対して発熱体80を装脱する開口部28とを有している。
【0010】
第1の面部22と第2の面部24は、共に通気性を有し、かつ、発熱体80が発する熱に対しての耐熱性を有する素材で形成されている。
ここで通気性とは、発熱体80の上面に第1の面部22あるいは第2の面部24を載せた状態で、発熱体80の上面が第1の面部22あるいは第2の面部24を介して空気と接触し続け、発熱体80が発熱し続けることができる構造である。
第1の面部22と第2の面部24は、本実施の形態では、耐熱性を有し、また、収容体12の持ち運びや発熱体80の収容部26への出し入れなどの取り扱い性を向上するためポリエステルやナイロンなどの柔軟性を有する合成繊維や布などの従来公知の様々な素材が使用可能であり、通気性を持たせるためメッシュ素材のものが用いられている。
【0011】
また、第1の面部22と第2の面部24は、通気性が異なっている。
このように第1の面部22と第2の面部24の通気性を異ならせることで、通気性の高い方の第1の面部22または第2の面部24の一方が、通気性の低い方の第1の面部22または第2の面部24の他方よりも、発熱体80の表面の温度が高温となり、したがって、保温すべき料理を通気性の高い方の第1の面部22または第2の面部24の一方に接触させることで、料理の保温をより高温で行なう上で有利となる。
本実施の形態では、第1の面部22の通気性は、第2の面部24の通気性に比べて高く、したがって、第1の面部22の上に保温すべき料理が載置される。
また、第2の面部24の厚さは、第1の面部22の厚さに比べて大きな寸法で形成されている。第1の面部22の厚さは0.05~3mm、好ましくは0.1~1mmであり、第2の面部24の厚さは0.5~5mm、好ましくは1~3mmである。
これは、保温すべき料理が載せられる第1の面部22の厚さを第2の面部24よりも小さくすることで、保温すべき料理を発熱体80の表面に近づけ、発熱体80の熱により効率的に保温し易くするためである。
また、第2の面部24と後述する熱反射層14との距離を確保し、発熱体80と熱反射層14とが直接接触することで発熱体80から熱反射層14に熱が直接伝導されないようにし、発熱体80から発せられる熱の多くを料理の保温に用いられるようするためである。
【0012】
熱反射層14は、第1の面部22と反対に位置する第2の面部24の箇所に設けられている。
熱反射層14は、第2の面部24を介して発熱体80から発せられる熱を発熱体80に反射させるものであり、第1の面部22に載置された料理から離れる方向への発熱体80の熱を発熱体80に戻し、発熱体80による料理の保温を効率良く行なうようにしている。
熱反射層14には、アルミシートなど、熱を反射させる従来公知の様々な材料が使用可能である。
本実施の形態では、熱反射層14は、不織布と、不織布に塗工されたエアロゲルと、エアロゲルの表面に蒸着されたアルミ層とで構成され、軽量化を図りつつ熱の反射が効率良く行なわれるように図られている。
【0013】
断熱層16は、第2の面部24と反対に位置する熱反射層14の箇所に設けられている。
断熱層16には、軽量で断熱性を有する従来公知の様々な材料が使用可能である。
本実施の形態では発泡ウレタンや発泡ポリエチレンなどの合成樹脂や、あるいはゴムなどの発泡材料で形成され、軽量で柔軟性を有し、薄板状を呈している。
断熱層16は、熱反射層14に伝わった発熱体80からの熱を熱反射層14に留め、発熱体80による料理の保温を効率良く行なうようにしている。
カバーシート18は、熱反射層14と反対に位置する断熱層16の箇所に配置され、断熱層16を覆うことで発熱体用収容具10の外観性、商品価値を高めている。
【0014】
収容体12に収容される発熱体80の数は1つでもよく、2つ以上の複数でもよい。
なお、収容部26を、複数の発熱体80が収容される大きさで形成し、この収容部26に対して単一の開口部28を設けてもよい。
しかしながら、実施の形態のように、単一の発熱体80を収容する大きさで開口部28を有する収容部26を平面的に並べて複数連接すると、運搬時に商品保温用運搬具が振動を受けても各収容部26に収容された発熱体80の位置を保持する上で有利となり、複数の発熱体80による料理の保温を効率良く行なう上で有利となる。
発熱体80は、長方形の板状を呈することから、収容体12には、図5(A)に示すように、2つの発熱体80の一方の長辺を近接させ、かつ、それらの長辺を平行させ、さらに、2つの発熱体80の各短辺が同一の直線上に位置した状態で収納されるように収容部26が並べられて設けられている。
【0015】
したがって、図3図4に示すように、第1の面部22を構成する第1の面部用素材22Aと、第2の面部24を構成する第2の面部用素材24Aと、熱反射層14を構成する熱反射層用素材14Aと、断熱層16を構成する断熱層用素材16Aと、カバーシート18を構成するカバーシート用素材18Aとは、それぞれ2つの収容部26を形成する大きさとなっている。
図3に示すように、第1の面部用素材22Aと、第2の面部用素材24Aと、熱反射層用素材14Aと、断熱層用素材16Aと、カバーシート用素材18Aとは平面視長方形を呈している。
図4(A)、(B)に示すように、第2の面部用素材24Aと、熱反射層用素材14Aと、断熱層用素材16Aと、カバーシート用素材18Aとはほぼ同じ大きさの長方形で形成され、長方形の2つの長辺と2つの短辺を合致させて配置されている。
【0016】
第1の面部用素材22Aは、第2の面部用素材24Aに比べて薄いメッシュ素材が用いられている。
図4(A)、(B)に示すように、第1の面部用素材22Aは、第2の面部用素材24Aと、熱反射層用素材14Aと、断熱層用素材16Aと、カバーシート用素材18Aの長方形に比べて、長辺の長さが同一で、短辺の長さが短い長方形となっている。
そして、図4(A)に示すように、第1の面部用素材22Aは、第2の面部用素材24Aと、熱反射層用素材14Aと、断熱層用素材16Aと、カバーシート用素材18Aの長方形の一方の長辺に合致させて配置されている。
また、図4(B)に示すように、第1の面部用素材22Aは、第2の面部用素材24Aと、熱反射層用素材14Aと、断熱層用素材16Aと、カバーシート用素材18Aの長方形の両側の短辺に合致させて配置されている。
【0017】
図4(A)に示すように、第1の面部用素材22Aの長方形の2つの長辺のうちの他方の長辺は、縁取りテープ3202で覆われ、縁取りテープ3202と共に縫い目3002で縫い合わされている。
また、図4(A)に示すように、縁取りテープ3202と共に縫い目3002で縫い合わされた第1の面部用素材22Aの他方の長辺は、第2の面部用素材24Aと、熱反射層用素材14Aと、断熱層用素材16Aと、カバーシート用素材18Aの長方形の他方の長辺からカバーシート用素材18Aの長方形の一方の長辺寄りにずらした箇所に配置されている。
また、図4(A)に示すように、第2の面部用素材24Aと、熱反射層用素材14Aと、断熱層用素材16Aと、カバーシート用素材18Aの長方形の他方の長辺は、縫い目3004で縫い合わされ、さらに、縫い目3004で縫い合わされた他方の長辺は、縁取りテープ3204で覆われ縁取りテープ3204共に縫い目3006で縫い合わされている。
【0018】
また、図4(A)に示すように、第1の面部用素材22と第2の面部用素材24Aと熱反射層用素材14Aとカバーシート用素材18Aとは、長方形の一方の長辺が縫い目3008で縫い合わされ、さらに、縫い目3008で縫い合わされた一方の長辺は、縁取りテープ3206で覆われ縁取りテープ3206と共に縫い目3010で縫い合わされている。
また、図4(B)に示すように、第1の面部用素材22と第2の面部用素材24Aと熱反射層用素材14Aとカバーシート用素材18Aとは、両側の短辺が縫い目3012で縫い合わされ、さらに、縫い目3012で縫い合わされた両側の短辺は、縁取りテープ3208で覆われ縁取りテープ3208と共に縫い目3014で縫い合わされている。
したがって、縁取りテープ3204で覆われた第2の面部用素材24Aの長方形の他方の長辺と、縁取りテープ3202で覆われた第1の面部用素材22Aの長方形の他方の長辺との間に開口部28が形成されている。
すなわち、開口部28は、発熱体80を収容部26に挿入し易いように、縁取りテープ3202と共に縫い目3002で縫い合わされた第1の面部用素材22Aの他方の長辺が、縁取りテープ3204と共に縫い目3006で縫い合わされた第2の面部用素材24Aの他方の長辺からずらした箇所に位置している。
なお、開口部28を開閉可能に結合する例えば面ファスナーなどからなる結合手段を設けるなど任意である。
【0019】
そして、図1図2図4(B)に示すように、第1の面部用素材22A、第2の面部用素材24A、熱反射層用素材14A、断熱層用素材16A、カバーシート用素材18Aの幅方向の中央が長方形の短辺に平行する方向に縫い目3018により縫い合わされ、これにより第1の面部22と第2の面部24からなる2つの収容部26が形成され、各収容部26の開口部28は、図1図4(A)に示すように、第1の面部用素材22Aの長方形の他方の長辺を構成する縁取りテープ3202と、第2の面部用素材24Aの長方形の他方の長辺を構成する縁取りテープ3204との間に設けられている。
したがって、発熱体用収容具10は、2つの収容部26を備える収容体12、各収容部26の第2の面部24に重ねられた熱反射層14、断熱層16、カバーシート18を含んで構成されている。
【0020】
次に、図6を参照して発熱体用収容具10の使用方法について説明する。
本実施の形態では、店舗で作られた料理を断熱性運搬具34を用いて自転車で運搬する場合について説明する。
断熱性運搬具34は、例えば、長方形状の底面と、底面の4辺からそれぞれ起立する4つの側面からなり、その内側に矩形の柱状の空間部を有する商品収容部3401が形成され、上部が開口部となっている縦長の運搬具本体3402と、ファスナーなどにより運搬具本体3402の開口部を開閉する蓋体3404とで構成され、運搬具本体3402の内面と蓋体3404の内面はそれぞれ断熱材で覆われている。
また、4つの側面のうちの1つの側面には、断熱性運搬具34を背負うための2つのベルト3406が設けられている。
【0021】
まず、気密性を有する袋に封入されていた発熱体80を袋から取り出し、図1に示すように、2つの発熱体80を発熱体用収容具10の各収容部26にそれぞれ挿入する。
発熱体80を発熱体用収容具10の収容部26に挿入することで、図5に示すように、発熱体80と発熱体用収容具10とにより商品を保温する保温具36が構成される。
そしてこの保温具36を運搬具本体3402の内側に、第2の面部24を運搬具本体3402の内壁面と接触する側に向けて載置する。例えば、保温具36を運搬具本体3402の内部の底面の上に、第1の面部22を上に、第2の面部24を下に向けて載置する。
このように保温具36を、第1の面部22を上に、第2の面部24を下に向けて断熱性運搬具34の内部の底面に載置することで、図6に示すように、商品保温用運搬具38が構成される。
運搬員は、店舗で作った料理を保温具36の上に載せ、蓋体3404で運搬具本体3402の開口部を塞ぎ、ベルト3406に手を通して商品保温用運搬具38を背負い、自転車で指定された場所に運搬する。
なお、断熱性運搬具34は、実施の形態の構造に限定されず、手提げ式や肩掛け式のバッグやボックスなど従来公知の様々な運搬具に適用される。
【0022】
つぎに、本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態では、発熱体80の短辺は9.5cm、長辺は13cm、厚さは0.7cmで、重量は50gであり、したがって、二つの発熱体80の重量は、100gとなる。
また、発熱体収容具10の重量は、66gであり、発熱体用収容具10と二つの発熱体80からなる保温具36の重量は116gとなる。
これに対して、短辺が31cm、長辺が34cm、厚さが1cmのポリウレタン製の合成樹脂板の重量は950gであり、発熱体用収容具10と二つの発熱体80からなる保温具36の重量は、合成樹脂板に比べて極めて軽い。
したがって、本実施の形態によれば、発熱体80を含む発熱体収容具10の重量は、従来の加熱すべき合成樹脂板に比べて軽く、したがって、料理を運搬する運搬員の負担を軽減する上で有利となる。
また、発熱体80は袋から取り出すことで、空気と反応して発熱し、長いものでは12時間程度にわたり高い温度を維持することから、合成樹脂製の板を加熱できる電子レンジなどのように保温材を加熱する設備を必要とすることなく、保温具36を簡単に準備することが可能となり、料理を保温しつつ運搬作業を簡単に行なう上で有利となる。
また、高温な発熱体80をじかに触らず、発熱体80を収容する収容体12を触ることで発熱体80を取り扱うことができ、店舗で作った料理を保温しつつ運搬する際に発熱体80を簡単に取り扱う上で有利となる。
また、第1の面部22と第2の面部24とは通気性が異なっているので、通気性の良い方の第1の面部22または第2の面部24の一方に位置する発熱体80の表面は、通気性の悪い方の第1の面部22または第2の面部24の他方に位置する発熱体80の表面よりも空気との反応がより盛んに行なわれ、発熱体80の表面の温度が高温となる。
したがって、保温すべき料理を通気性の良い方の第1の面部22または第2の面部24の一方に鉛直方向から、あるいは、水平方向から接触させることで、料理の保温をより高温で行なう上で有利となる。
【0023】
また、本実施の形態では、第1の面部22の通気性は、第2の面部24の通気性に比べて高く、第1の面部22の上に保温すべき料理が載置される。
この場合、第2の面部24の厚さが、第1の面部22の厚さに比べて大きな寸法で形成されていると、保温すべき料理を厚さの薄い第1の面部22により発熱体80の表面に近づけ、発熱体80の熱により効率的に保温する上で有利となる。
また、保温の対象がない箇所に対しては第2の面部24により発熱体80との距離を確保することで、保温の対象がない箇所と発熱体80とが直接接触することを阻止する上で有利となり、発熱体80から保温の対象がない箇所に熱が直接伝導されにくくなり、発熱体80から発せられる熱の多くを料理の保温に用いる上で有利となる。
また、発熱体用収容具10は、第1の面部22と反対に位置する第2の面部24の箇所に設けられた熱反射層14を含んで構成されているので、熱反射層14により、保温の対象がない箇所に対して発せられた熱を反射させて発熱体80に戻し、発熱体80による料理の保温を効率良く行なう上で有利となる。
【0024】
この場合、熱反射層14を、不織布と、不織布に塗工されたエアロゲルと、エアロゲルの表面に蒸着され第2の面部24に対向して配置されるアルミ層とで構成すると、熱反射層14により、保温の対象がない箇所に対して発せられた熱を発熱体80に効率良く戻す上で有利となり、発熱体80による料理の保温を効率良く行なう上でより一層有利となる。
また、第2の面部24と反対に位置する熱反射層14の箇所に断熱層16を設けると、熱反射層14に伝わった発熱体80からの熱を熱反射層14に留め、保温の対象がない箇所に対して発せられた熱を熱反射層14により反射させて発熱体80に戻し、発熱体80による料理の保温を効率良く行なう上で有利となる。
また、本発明においては収容部26を、複数の発熱体80が収容される大きさで形成し、この収容部26に対して単一の開口部28を設けるようにしてもよいが、単一の発熱体80を収容する大きさの収容部26を平面的に並べて複数連接し、各収容部26に開口部28を設けると、運搬時に商品保温用運搬具38が振動を受けても各収容部26に収容された発熱体80の位置を保持する上で有利となり、複数の発熱体80による料理の保温を効率良く行なう上で有利となる。
【0025】
また、収容体12を備える発熱体用収容具10と、発熱体用収容具10の収容部26に収容された発熱体80とで構成された保温具36は、高温な発熱体80をじかに触らず、発熱体80を覆う収容体12を触ることで発熱体80を取り扱うことができ、店舗で作った料理を保温しつつ運搬する際などに発熱体80を簡単に取り扱う上で有利となる。
また、第1の面部22と第2の面部24とは通気性が異なっているので、通気性の良い方の第1の面部22または第2の面部24の一方が、通気性の悪い方の第1の面部22または第2の面部24の他方よりも、発熱体80の表面の温度が高温となり、保温すべき料理を通気性の良い方の第1の面部22または第2の面部24の一方に本実施の形態のように鉛直方向の下方から、あるいは、水平方向から、あるいは側面から接触させることで、料理の保温をより高温で行なう上で有利となる。
また、第1の面部22を上に、第2の面部24を下に向けて断熱性運搬具34の商品収容部3401の底面に保温具36が載置するなど、第1の面部22を断熱性運搬具34の内側に向け、第2の面部24を断熱性運搬具の内壁面と接触する側に向けて載置されて構成された商品保温用運搬具38によれば、保温すべき料理が鉛直方向の下方から、あるいは、水平方向から、あるいは側面から保温具36に接触することで、料理の保温を効率良く行なえ、温かい料理を顧客に運搬する上で有利となる。
なお、本実施の形態では、本発明の発熱体用収容具10、保温具36、商品保温用運搬具38により料理を保温する場合について説明したが、保温すべき対象は無論料理に限定されず任意であり、また、自転車で料理を運搬する場合について説明したが、運搬の方法は自転車に限らず任意であり、また、本発明は商品を保温するものであるため、運搬するか否かも任意である。
【0026】
次に、本発明の実験例について説明する。
以下の通り、条件を変えて第1の実験~第3の実験を行った。
(第1の実験)
第1の実験では、発熱体収容具10の試料として、後述する実験例A~Cに対応して3種類作成し、比較例となる実験例D、Eと共に、以下のように実験を行った。
実験例A~Cについては、発熱体収容具10に発熱体80を入れて断熱性運搬具34の商品収容部3401の底面に載置し、食品の代用として、ゼリー状の吸水性ポリマーをプラスチックフィルムに入れたものを用い、この食品代用品を沸騰水に入れて20分加熱したものを発熱体収容具10の第1の面部22の上に載置し、温度測定用のデータロガーの温度センサを食品代用品の表面に取り付け、食品代用品の温度変化を測定した。
実験例Dは、発熱体収容具10を用いず、発熱体80を断熱性運搬具34の商品収容部3401の底面に載置し、発熱体80の上面に加熱した食品代用品を載置し、上記と同様に食品代用品の温度変化を測定した。
実験例Eは、発熱体収容具10および発熱体80を省略し、断熱性運搬具34の商品収容部3401の底面に加熱した食品代用品を載置し、上記と同様に食品代用品の温度変化を測定した。
なお、第1の実験~第3の実験において、食品代用品として、株式会社鳥繁産業社製の商品名ファインパック(登録商標)50g(70mm×100mm、成分:アクリルポリマー、水)を6個使用した。また、発熱体80として、エステー株式会社の商品名オンパックス(登録商標)極熱を4個使用した。
また、温度測定用のデータロガーとして、ヴァイサラ社の商品名Veriteq(型番SP1700)を使用した。
【0027】
実験例A~Cに対応する発熱体収容具10の試料の構成は以下の通りである。
実験例A:第1の面部22を厚さの薄いメッシュで構成し、第2の面部24を厚さの厚いメッシュで構成し、熱反射層14としてポリオレフィン発泡体の断熱シートにアルミ層を設けて構成された断熱シート(以下単に「断熱アルミシート」という)を用い、断熱層16を省略し、発熱体収容具10を3層構造とした。
実験例B:第1の面部22を厚さの薄いメッシュで構成し、第2の面部24を厚さの厚いメッシュで構成し、熱反射層14として断熱アルミシートを用い、断熱層16としてウレタンを用い、発熱体収容具10を4層構造とした。
実験例C:第1の面部22および第2の面部24を共に厚さの厚いメッシュで構成し、熱反射層14として断熱アルミシートを用い、断熱層16としてウレタンを用い、発熱体収容具10を4層構造とした。
【0028】
図7は、第1の実験の実験結果を示しており、横軸が経過時間(分)、縦軸が温度(℃)を示しており、線A~Eがそれぞれ実験例A~Eの測定結果を示している。
図7から明らかなように、発熱体収容具10を用いない実験例Eに比較して発熱体収容具10を用いた実験例A~Cは、時間経過に伴う食品代用品の温度低下が小さく、発熱体収容具10を用いることで食品の温度を保持する効果が発揮されていることがわかる。
また、3層構造の実験例Aに比較して4層構造である実験例Bが時間経過に伴う食品代用品の温度低下が最も小さく食品の温度を保持する効果がより高くなっている。
したがって、第1の面部22を厚さの薄いメッシュで構成し、第2の面部24を厚さの厚いメッシュで構成することが食品の温度を保持する上で有利であることがわかる。
また、実験例Bは、4層構造であっても第1の面部22および第2の面部24を共に厚さの厚いメッシュで構成した実験例Cと比較して時間経過に伴う食品代用品の温度低下が小さく食品の温度を保持する効果が高いことがわかる。
【0029】
(第2の実験)
次に第2の実験について説明する。
第2の実験では、発熱体収容具10の試料として、以下の実験例F、Gに対応して2種類作成し、第1の実験と同様に食品代用品の温度変化を測定した。
実験例F:第1の面部22を厚さの薄いメッシュで構成し、第2の面部24を厚さの厚いメッシュで構成し、熱反射層14としてエアロゲル不織布にアルミ層を設けたものを用い、断熱層16としてウレタンを用いた。
実験例G:第1の面部22を厚さの薄いメッシュで構成し、第2の面部24を厚さの厚いメッシュで構成し、熱反射層14として断熱アルミシートを用い、断熱層16としてウレタンを用いた。
図8は、第2の実験の実験結果を示しており、横軸、縦軸は図7と同様であり、線F、Gがそれぞれ実験例F、Gの測定結果を示している。
図8から明らかなように、同じ4層構造であっても、熱反射層14としてエアロゲル不織布にアルミ層を設けた実験例Fが熱反射層14として断熱アルミシートを用いた実験例Gに比較して時間経過に伴う温度低下が小さく食品の温度を保持する上で有利となっている。
【0030】
(第3の実験)
次に第3の実験について説明する。
第3の実験では、発熱体収容具10の試料として、第2の実験の実験例F、実験例Gと同じものを用い、以下のように実験を行った。
発熱体収容具10に発熱体80を入れて断熱性運搬具34の商品収容部3401の底面に載置し、保冷剤を沸騰したお湯に入れて20分加熱した食品代用品を発熱体収容具10の第1の面部22の上に載置し、温度測定用のデータロガーの温度センサを発熱体80の表面と裏面に取り付け、発熱体80の温度変化を測定した。
ここで発熱体80の表面とは第1の面部22に当接する面であり、食品に第1の面部22を介して接する面であり、裏面とは第2の面部24に当接する面であり、食品と反対側に位置する面である。
図9は第3の実験の実験結果を示しており、横軸、縦軸は図6図7と同様であり、線F-1が実験例Fにおける発熱体80の表面の温度、線F-2が実験例Fにおける発熱体80の裏面の温度を示している。
また、線G-1が実験例Gにおける発熱体80の表面の温度、線G-2が実験例Gにおける発熱体80の裏面の温度を示している。
【0031】
図9から明らかなように、食品に接する発熱体80の表面の温度は、熱反射層14としてエアロゲル不織布にアルミ層を設けた実験例F(線F-1)が、熱反射層14として断熱アルミシートを用いた実験例G(線G-1)に比較して高い温度を維持している。
また、食品と反対側の発熱体80の裏面の温度は、熱反射層14としてエアロゲル不織布にアルミ層を設けた実験例F(線F-2)が、熱反射層14として断熱アルミシートを用いた実験例G(線G-2)に比較して低い値を維持している。
すなわち、実験例Fの熱反射層14が実験例Gの熱反射層14に比較して発熱体80から放射される熱を吸収しにくく、言い換えると、実験例Fの熱反射層14が実験例Gの熱反射層14に比較して熱を反射する効率が高いことを示しており、実験例Fの方が実験例Gよりも発熱体80から放射される熱を効率よく食品に向けて反射する上で有利であり、食品の温度を保持する上で有利となっている。
【符号の説明】
【0032】
10 発熱体収容具
12 収容体
14 熱反射層
14A 熱反射層用素材
16 断熱層
16A 断熱層用素材
18 カバーシート
18A カバーシート用素材
22 第1の面部
22A 第1の面部用素材
2202,2204 縁部
24 第2の面部
24A 第2の面部用素材
26 収容部
28 開口部
3002,3004,3006,3008,3010,3012,3014,3018 縫い目
3202,3204,3206,3208 縁取りテープ
34 断熱性運搬具
3401 商品収容部
3402 運搬具本体
3404 蓋体
3406 ベルト
36 保温具
38 商品保温用運搬具
80 発熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9