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特許7580091情報処理装置、情報処理方法、及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
G01C15/00 103Z
G01C15/00 103A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023141548
(22)【出願日】2023-08-31
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】593154436
【氏名又は名称】アイサンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝之
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-024370(JP,A)
【文献】特開2018-005819(JP,A)
【文献】特開2004-348708(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0144565(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0150431(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114092658(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0795396(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00 - 15/14
G01B 11/00 - 11/30
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G06T 1/00
G06T 17/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の三次元形状を三次元座標系における座標点の集合によって表す点群データを取得するように構成される取得部と、
前記対象領域において、複数の区画を定義するように構成される区画定義部と、
前記複数の区画に関して、区画毎に、前記点群データが示す、対応する区画の座標点の一群に基づき、前記対応する区画を代表する一つの標高値である代表標高値を設定することにより、前記区画毎の前記代表標高値を示す前記対象領域の標高マップを生成するように構成される標高マップ生成部と、
前記標高マップに基づき、前記区画毎に、前記対応する区画の前記代表標高値を、前記対応する区画に隣接する区画である隣接区画の前記代表標高値と比較することにより、標高に関する変化量であって前記対応する区画の前記隣接区画に対する変化量を判別し、前記隣接区画に対する前記変化量が基準以上である区画を、変化点として判別するように構成される判別部と、
前記変化点を構成点として用いて、前記対象領域の三次元形状に関する不整三角網(TIN)モデルを生成するように構成されるモデル生成部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記区画定義部は、前記対象領域を水平面に沿って格子状に区画化することによって、前記複数の区画として、等間隔に並ぶ複数の区画を定義する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記標高マップ生成部は、前記区画毎に、前記対応する区画における最低の標高値を、前記対応する区画の前記代表標高値に設定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判別部は、前記隣接区画に対する前記変化量が予め定められた閾値以上である区画を前記変化点として判別する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記判別部は、前記対応する区画の代表標高値と前記隣接区画の代表標高値との差分を前記変化量として算出することにより、前記変化量を判別する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記区画定義部は、前記対象領域を、水平面に沿って、第一の方向及び前記第一の方向に直交する第二の方向に格子状に区画化することによって、前記複数の区画を定義し、
前記判別部は、前記標高に関する前記変化量として、前記第一の方向に隣接する区画に対する変化量が基準以上である区画を、第一変化点として判別し、前記第二の方向に隣接する区画に対する変化量が基準以上である区画を、第二変化点として判別し、
前記モデル生成部は、前記第一変化点及び前記第二変化点を構成点として用いて、前記不整三角網(TIN)モデルを生成するように構成される請求項1記載の情報処理装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか一項記載の情報処理装置における前記取得部、前記区画定義部、前記標高マップ生成部、前記判別部、及び前記モデル生成部として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
対象領域の三次元形状を三次元座標系における座標点の集合によって表す点群データを取得することと、
前記対象領域において、複数の区画を定義することと、
前記複数の区画に関して、区画毎に、前記点群データが示す、対応する区画の座標点の一群に基づき、前記対応する区画を代表する一つの標高値である代表標高値を設定することにより、前記区画毎の前記代表標高値を示す前記対象領域の標高マップを生成することと、
前記標高マップに基づき、前記区画毎に、前記対応する区画の前記代表標高値を、前記対応する区画に隣接する区画である隣接区画の前記代表標高値と比較することにより、標高に関する変化量であって前記対応する区画の前記隣接区画に対する変化量を判別し、前記隣接区画に対する前記変化量が基準以上である区画を、変化点として判別することと、
前記変化点を構成点として用いて、前記対象領域の三次元形状に関する不整三角網(TIN)モデルを生成することと、
を含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地形等の地物の三次元形状に関する三次元計測データの利活用が推進されている。三次元計測データは、膨大な点の三次元座標を記述する点群データである。点群には、計測地の環境や機材の特性等に応じた密度のばらつきが生じる。
【0003】
三次元計測データから地形の起伏や地物形状を抽出して数値地形図データを作成する作業には、標準的な作業方法及び品質評価方法が定められている。数値地形図データにおける地形表面の標高変化については、等高線又は数値地形モデルによる表現が知られており、数値地形モデルとしては、不整三角網(Triangulated Irregular Network,TIN)モデルが知られている。
【0004】
膨大な三次元計測データの演算効率及び点群のばらつきの標準化等の観点から、三次元計測データの最適化及び軽量化に対する試みが行われている。三次元計測データの最適化及び軽量化のための処理として、異常に突出した標高値をノイズとして除去するノイズ除去処理及び点群密度を均一化する間引き処理が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
数値地形モデルの生成に際しては、例えば、上述の処理を三次元計測データに対して実行することにより抽出された点群の三次元座標データを用いて、測量CADソフトウェアによりTINモデルが生成される。
【0006】
しかしながら、従来のソフトウェアによって自動生成されるTINモデルは、現実の地形の勾配変化を適切に表現していないことも多い。一般的に、作業者は、自動生成されたTINモデルの妥当性を判断し、ブレークライン等を設定することによってTINモデルを修正したり、TINモデルの構成点を手動又は半自動的で組み替えたりすることにより、数値地形図データを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-024370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、三次元計測データからTINの構成点を設定する作業には、長い時間を要する。従来技術によれば、最適な地形の勾配変化を表現するTINモデルの生成に、ブレークラインの設定等の作業が必要とされる。
【0009】
そこで、本開示の一側面によれば、不整三角網(TIN)モデルの生成に関して、ユーザの作業負荷を抑制可能な新規技術を提供できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一側面によれば、情報処理装置が提供される。情報処理装置は、取得部と、区画定義部と、標高マップ生成部と、判別部と、モデル生成部と、を備える。取得部は、対象領域の三次元形状を三次元座標系における座標点の集合によって表す点群データを取得するように構成される。
【0011】
区画定義部は、対象領域において、複数の区画を定義するように構成される。標高マップ生成部は、複数の区画に関して、区画毎に、点群データが示す、対応する区画の座標点の一群に基づき、対応する区画を代表する一つの標高値である代表標高値を設定することにより、区画毎の代表標高値を示す対象領域の標高マップを生成するように構成される。
【0012】
判別部は、標高マップに基づき、区画毎に、対応する区画の代表標高値を、対応する区画に隣接する区画である隣接区画の代表標高値と比較することにより、標高に関する変化量であって対応する区画の隣接区画に対する変化量を判別し、隣接区画に対する変化量が基準以上である区画を、変化点として判別するように構成される。
【0013】
モデル生成部は、変化点を構成点として用いて、対象領域の三次元形状に関する不整三角網(TIN)モデルを生成するように構成される。
【0014】
この情報処理装置によれば、ユーザの作業負荷を抑えて、良好なTINモデルを生成可能である。従って、本開示の一側面によれば、TINモデルの生成に関して、ユーザの作業負荷を抑制可能な新規技術を提供可能である。
【0015】
本開示の一側面によれば、区画定義部は、対象領域を水平面に沿って格子状に区画化することによって、複数の区画を定義するように構成され得る。複数の区画は、等間隔に並ぶように定義され得る。
【0016】
対象領域に対して格子状に等間隔に並ぶ区画を設定し、各区画に対して代表標高値を設定することによれば、点群密度のばらつきの影響を抑えて、適切な不整三角網(TIN)モデルを生成することが可能である。
【0017】
本開示の一側面によれば、標高マップ生成部は、区画毎に、対応する区画における最低の標高値を、対応する区画の代表標高値に設定するように構成され得る。ノイズは、異常に突出した標高値として生じるケースが多く、低い標高値としてノイズが現れることは少ない。従って、区画毎に、最低標高値を代表標高値に設定することによれば、点群データに含まれるノイズの影響を抑えて、不整三角網(TIN)モデルを生成することが可能である。
【0018】
本開示の一側面によれば、判別部は、隣接区画に対する変化量が予め定められた閾値以上である区画を変化点として判別するように構成され得る。このように変化点を判別することによれば、不要な構成点を設定せずに、構成点数を抑えて、適切な不整三角網(TIN)モデルを生成することが可能である。
【0019】
本開示の一側面によれば、判別部は、対応する区画の代表標高値と隣接区画の代表標高値との差分を変化量として算出することにより、変化量を判別するように構成され得る。
【0020】
本開示の一側面によれば、区画定義部は、対象領域を、水平面に沿って、第一の方向及び第一の方向に直交する第二の方向に格子状に区画化することによって、複数の区画を定義するように構成され得る。
【0021】
判別部は、標高に関する変化量として、第一の方向に隣接する区画に対する変化量が基準以上である区画を、第一変化点として判別し、第二の方向に隣接する区画に対する変化量が基準以上である区画を、第二変化点として判別し得る。モデル生成部は、第一変化点及び第二変化点を構成点として用いて、不整三角網(TIN)モデルを生成するように構成され得る。
【0022】
このように構成点を設定することによれば、第一及び第二の方向における起伏を適切に捉えた不整三角網(TIN)モデルを生成することが可能である。
【0023】
本開示の一側面によれば、上述した情報処理装置における取得部、区画定義部、標高マップ生成部、判別部、及びモデル生成部の少なくとも一部として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラムが提供されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録され得る。本開示の一側面によれば、上述した情報処理装置に対応する情報処理方法が提供されてもよい。
【0024】
本開示の一側面によれば、コンピュータにより実行される情報処理方法が提供されてもよい。本開示の一側面によれば、情報処理方法は、対象領域の三次元形状を三次元座標系における座標点の集合によって表す点群データを取得することを含み得る。
【0025】
情報処理方法は更に、対象領域において、複数の区画を定義することを含み得る。情報処理方法は更に、複数の区画に関して、区画毎に、点群データが示す、対応する区画の座標点の一群に基づき、対応する区画を代表する一つの標高値である代表標高値を設定することにより、区画毎の代表標高値を示す対象領域の標高マップを生成することを含み得る。
【0026】
情報処理方法は更に、標高マップに基づき、区画毎に、対応する区画の代表標高値を、対応する区画に隣接する区画である隣接区画の代表標高値と比較することにより、標高に関する変化量であって対応する区画の隣接区画に対する変化量を判別し、隣接区画に対する変化量が基準以上である区画を、変化点として判別することを含み得る。
【0027】
情報処理方法は更に、変化点を構成点として用いて、対象領域の三次元形状に関する不整三角網(TIN)モデルを生成することを含み得る。この情報処理方法によれば、不整三角網(TIN)モデルの生成に関して、ユーザの作業負荷を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】情報処理装置の構成を表すブロック図である。
図2】プロセッサが実行するTIN関連処理を表すフローチャートである。
図3】対象領域の区画化に関する説明図である。
図4】プロセッサが実行する変化点判別処理を表すフローチャートである。
図5】勾配変化点を構成点として有するTINモデルを概念的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1に示す本実施形態の情報処理装置10は、地形等の地物に関する三次元計測データから不整三角網(TIN)モデルを生成するように構成される。情報処理装置10は、プロセッサ11と、メモリ13と、ストレージ15と、表示部17と、操作部18と、データ入出力部19とを備える。
【0030】
プロセッサ11は、ストレージ15に格納されたコンピュータプログラムに従う処理を実行することにより、TINモデルを生成する。メモリ13は、RAMを含み、プロセッサ11による処理実行時に作業用メモリとして使用される。
【0031】
ストレージ15は、ハードディスクドライブ及び/又はソリッドステートドライブを含み、コンピュータプログラム、及び、コンピュータプログラムに従う処理の実行時に使用されるデータを記憶する。ストレージ15が記憶するコンピュータプログラムには、三次元計測データからTINモデルを生成するためのコンピュータプログラムが含まれる。
【0032】
表示部17は、プロセッサ11により制御され、情報処理装置10を操作するユーザに向けて各種情報を表示するように構成される。表示部17の例には、液晶ディスプレイが含まれる。操作部18は、情報処理装置10に対するユーザからの操作信号をプロセッサ11に入力するように構成される。操作部18の例には、キーボード及びポインティングデバイスが含まれる。
【0033】
データ入出力部19は、外部装置との間でデータ入出力可能に構成される。データ入出力部19は、有線又は無線により外部装置と通信可能な通信インタフェースを備えることができる。データ入出力部19は、USBメモリに対するデータの読込及び書込が可能なUSBインタフェース、及び/又は、カード型の記録メディアに対するデータの読込及び書込が可能なメディアリーダ/ライタを備えることができる。
【0034】
この情報処理装置10では、操作部18を通じて、ユーザからTINモデルの生成指令が入力されると、プロセッサ11が、コンピュータプログラムに従って、図2に示すTIN関連処理を実行することにより、ユーザから指定された三次元計測データに基づくTINモデルを生成する。
【0035】
図2に示すTIN関連処理を開始すると、プロセッサ11は、上記生成指令の入力時にユーザから指定された三次元計測データを取得する(S110)。三次元計測データは、例えば、地上型レーザスキャナ(Terrestrial Laser Scanner,TLS)、モービルマッピングシステム(Mobile Mapping System,MMS)、測量用ドローン(Unmanned Aerial Vehicle,UAV)、SLAM(Simultaneous Localization and Mappin)等の技術を用いて生成され得る。生成された三次元計測データが、予めデータ入出力部19を通じて情報処理装置10に入力され、ストレージ15に格納される。
【0036】
取得される三次元計測データは、対象地域における地形等の地物の三次元形状を点群により表す三次元点群データである。三次元計測データは、各計測点を、三次元座標で記述する。ここでは、三次元座標系として、X軸、Y軸、及びZ軸を有するXYZ座標系が採用される。すなわち、点群を構成する各計測点の三次元座標は、XYZ座標で表される。
【0037】
XY平面は、水平面に対応し、Z軸は、水平面からの高さ方向に対応する。以下では、三次元座標系において点群を構成する各点のことを座標点と表現する。すなわち、三次元計測データは、対象地域の三次元形状を三次元座標系における座標点の集合によって表す。
【0038】
S110において、プロセッサ11は、上記指定された三次元計測データをストレージ15から読み出すことにより、三次元計測データを取得することができる。
【0039】
続くS120において、プロセッサ11は、三次元計測データが示す点群をXY平面に正射影したときにXY平面に位置する点群のすべてを含むXY平面上の矩形領域を、対象領域に設定し、対象領域を格子状に区画化する。この区画化によって、プロセッサ11は、対象領域において、X軸方向及び当該X軸方向に直交するY軸方向に等間隔に並ぶ複数の区画を定義する。
【0040】
図3に示すように、プロセッサ11は、対象領域を、予め設定された間隔でX軸方向及びY軸方向に区切ることにより、対象領域を格子状に区画化することができる。各区画は、例えば、1辺が1メートル幅の正方形区画であり得る。
【0041】
区画の形状及びサイズは、これに限定されず、1辺が30センチメートル、50センチメートル、又は2メートル幅の正方形区画であってもよいし、長方形状の区画であってもよい。区画サイズは、例えば、要求されるTINモデルの精度に依る。
【0042】
続くS130において、プロセッサ11は、三次元計測データに基づき、対象領域の区画毎に、標高値リストを生成する。標高値リストは、対応する区画内に位置する座標点の一群に関して、三次元計測データが示す各座標点のZ座標を、標高値として記述するデータである。
【0043】
標高値リストは、対応する区画の区画IDと共に、対応する区画内の全ての座標点の標高値を記述することができる。区画IDは、対象領域を区画化する際に、区画毎に割り当てられる固有の識別コードであり得る。
【0044】
続くS140において、プロセッサ11は、対象領域の区画毎に、対応する区画の代表標高値を、対応する区画の標高値リストに基づき設定し、標高マップを生成する。標高マップは、対象領域の区画毎に、対応する区画の代表標高値を記述したデータである。
【0045】
S140において、プロセッサ11は、対応する区画において最低の標高値を示す座標点を代表点と取り扱って、代表標高値を、代表点の標高値に設定することができる。三次元計測データに含まれるノイズに対応する座標点は、正しい標高値よりも高い標高値を示すことが多い。従って、代表標高値を最低の標高値に設定することによれば、区画内のノイズの座標点を参照せずに、代表標高値を設定できる可能性が高い。
【0046】
続くS150において、プロセッサ11は、図4に示す変化点判別処理を実行する。変化点判別処理を開始すると、プロセッサ11は、対象領域における処理対象行を選択する(S210)。ここでは、対象領域においてX軸方向に並ぶ区画群のことを、行と表現し、Y軸方向に並ぶ区画群のことを、列と表現する。プロセッサ11は、S210の処理の繰返しによって、処理対象行を順に選択することができる。
【0047】
S210において処理対象行を選択すると、続くS220において、プロセッサ11は、処理対象行の中から処理対象区画を選択する。プロセッサ11は、S220の処理の繰返しによって、処理対象区画を、処理対象行に対応する区画群の中からX軸方向に沿って一方向に順に選択することができる。
【0048】
S220において処理対象区画を選択すると、プロセッサ11は、処理対象区画と、処理対象区画に対してX軸方向に隣接する区画であるX方向隣接区画との勾配変化量を算出する(S230)。
【0049】
例えば、プロセッサ11は、処理対象区画に対して、処理対象区画の選択方向に隣接する区画を、X方向隣接区画と取り扱って、勾配変化量を算出することができる。あるいは、プロセッサ11は、処理対象区画に対して、処理対象区画の選択方向とは逆方向に隣接する区画を、X方向隣接区画と取り扱って、勾配変化量を算出することができる。
【0050】
プロセッサ11は、処理対象区画の代表標高値がZ1であり、X方向隣接区画の代表標高値がZ2であるとき、勾配変化量Zとして、標高値Z1,Z2の差分の絶対値|Z1-Z2|を算出することができる(Z=|Z1-Z2|)。このようにしてプロセッサ11は、処理対象区画の代表標高値を、隣接区画の代表標高値と比較することにより、標高に関する変化量として、処理対象区画の隣接区画に対する勾配変化量Zを判別する。
【0051】
続くS240において、プロセッサ11は、勾配変化量が予め設定された閾値以上であるか否かを判断する。プロセッサ11は、勾配変化量が閾値以上であると判断すると(S240でYes)、続くS250において、処理対象区画を、X軸方向における勾配変化点と判別する。その後S260の処理を実行する。
【0052】
プロセッサ11は、勾配変化量が閾値未満であると判断すると(S240でNo)、S250の処理を実行せずに、すなわち、処理対象区画を勾配変化点と判別せずに、S260の処理に移行する。
【0053】
本実施形態によれば、処理対象区画に対応するX方向隣接区画が存在しない場合、プロセッサ11は、勾配変化量がゼロであるとみなして、S240で否定判断することができる。
【0054】
S260において、プロセッサ11は、処理対象行におけるX軸方向の末端に位置する区画までを処理対象区画に選択したか否かを判断する。すなわち、処理対象行を構成する区画を全て処理対象区画に選択したか否かを判断する。S260において否定判断すると、プロセッサ11は、S220の処理に戻り、処理対象区画を、処理対象行における次の区画に切り替える。その後、プロセッサ11は、新たな処理対象区画に関して、S230以降の処理を実行する。
【0055】
S260において肯定判断すると、プロセッサ11は、全ての行を処理対象行として選択したか否かを判断する(S270)。選択していないと判断すると(S270でNo)、プロセッサ11は、S210の処理に戻り、処理対象行を、次行に切り替える。その後、プロセッサ11は、新たな処理対象行に関して、S220以降の処理を実行する。
【0056】
S270において全ての行を処理対象行として選択したと判断すると(S270でYes)、プロセッサ11は、続くS310において、処理対象列を選択する。プロセッサ11は、S310の処理の繰返しによって、処理対象列を順に選択することができる。
【0057】
S310において処理対象列を選択すると、続くS320において、プロセッサ11は、処理対象列の中から処理対象区画を選択する。プロセッサ11は、S320の処理の繰返しによって、処理対象区画を、処理対象列に対応する区画群の中からY軸方向に沿って一方向に順に選択することができる。
【0058】
S320において処理対象区画を選択すると、プロセッサ11は、処理対象区画と、処理対象区画に対してY軸方向に隣接する区画であるY方向隣接区画との間の勾配変化量を算出する(S330)。
【0059】
例えば、プロセッサ11は、処理対象区画に対して、処理対象区画の選択方向に隣接する区画を、Y方向隣接区画と取り扱って、勾配変化量を算出することができる。あるいは、プロセッサ11は、処理対象区画に対して、処理対象区画の選択方向とは逆方向に隣接する区画を、Y方向隣接区画と取り扱って、勾配変化量を算出することができる。プロセッサ11は、S230での処理と同様に、勾配変化量として、処理対象区画の標高値とY方向隣接区画の標高値の差分の絶対値を算出することができる。
【0060】
続くS340において、プロセッサ11は、勾配変化量が予め設定された閾値以上であるか否かを判断する。プロセッサ11は、勾配変化量が閾値以上であると判断すると(S340でYes)、続くS350において、処理対象区画を、Y軸方向における勾配変化点と判別する。その後S360の処理を実行する。プロセッサ11は、勾配変化量が閾値未満であると判断すると(S340でNo)、S350の処理を実行せずにS360の処理を実行する。
【0061】
処理対象区画に対応するY方向隣接区画が存在しない場合、プロセッサ11は、勾配変化量がゼロであるとみなして、S340で否定判断することができる。
【0062】
S360において、プロセッサ11は、処理対象列におけるY軸方向の末端に位置する区画までを処理対象区画に選択したか否かを判断する。すなわち、処理対象列を構成する区画を全て処理対象区画に選択したか否かを判断する。S360において否定判断すると、プロセッサ11は、S320の処理に戻り、処理対象区画を、処理対象列における次の区画に切り替える。その後、プロセッサ11は、S330以降の処理を実行する。
【0063】
S360において肯定判断すると、プロセッサ11は、全ての列を処理対象列として選択したか否かを判断する(S370)。選択していないと判断すると(S370でNo)、プロセッサ11は、S310の処理に戻り、処理対象列を、次列に切り替える。その後、プロセッサ11は、新たな処理対象列についてS320以降の処理を実行する。
【0064】
プロセッサ11は、S370において全ての列を処理対象例として選択したと判断すると(S370でYes)、変化点判別処理を終了する。このようにして、変化点判別処理では、X軸方向及びY軸方向において、勾配変化点に対応する区画が判別される。
【0065】
図4に示す変化点判別処理(S150)を終了すると、プロセッサ11は、続くS160(図2参照)において、変化点の一群に関し、各変化点の三次元座標を記述した変化点群データを生成する。ここでいう変化点の一群には、X軸方向の勾配変化点の一群及びY軸方向の勾配変化点の一群が含まれる。
【0066】
変化点群データには、変化点毎に、対応する変化点の三次元座標として、対応する変化点が位置する区画の代表標高値がZ座標として記述され、対応する区画の中心座標がXY座標として記述される。別例によれば、変化点群データには、変化点毎に、対応する変化点の三次元座標として、対応する区画の代表標高値に対応する代表点のXYZ座標が記述され得る。
【0067】
プロセッサ11は、変化点群データを生成する際、対象領域の四つ角に対応する4つの区画も、勾配変化点とみなして、対応する勾配変化点の三次元座標を、変化点群データに記述することができる。
【0068】
続くS170において、プロセッサ11は、S160で生成された変化点群データに基づき、TINモデルを生成する。生成されるTINモデルは、変化点のそれぞれを一つの構成点として有するTINモデルである。
【0069】
すなわち、プロセッサ11は、変化点を構成点として用いて、対象領域の三次元形状に関するTINモデルを生成する。TINモデルの生成には、既存のプログラムモジュールが使用され得る。図5には、S170で生成されるTINモデルの例を概念的に示す。
【0070】
続くS180において、プロセッサ11は、S170で生成したTINモデルを出力する。プロセッサ11は、TINモデルを、データファイルとしてストレージ15に記録することができる。プロセッサ11は、TINモデルを、表示部17を通じてユーザに画像出力することができる。その後、プロセッサ11は、図2に示すTIN関連処理を終了する。
【0071】
以上に説明した本実施形態の情報処理装置10によれば、上述した区画毎の代表標高値の設定、及び、勾配変化点の抽出により、三次元計測データに含まれるノイズを除去し、三次元計測データが表す点群を適切に間引きするように、三次元計測データを、変化点群データに変換することができる。
【0072】
従って、本実施形態によれば、TINモデルを生成するための前作業として従来必要とされていた手作業による点群の間引き及びノイズ除去に関する作業時間を低減することができる。
【0073】
本実施形態によれば、上記手法で変化点群データを生成することによって、勾配変化に関する特徴点の情報の消失を抑えて、点群密度を低減することができ、適切なTINモデルを生成することが可能である。例えば、本実施形態によれば、一定方向に勾配変化する凹凸であっても勾配変化点として判別して、地形図作成に適したTINモデルを生成することが可能である。
【0074】
このように、本実施形態の情報処理装置10では、手作業によって生じるユーザの作業負荷を抑制しつつ、適切なTINモデルを生成可能である。
【0075】
付言すれば、情報処理装置10は、操作部18を通じて入力されるユーザからの指示に従って、閾値及び区画サイズを変更可能に構成され得る。この構成によれば、ユーザは、勾配変化点の判別に用いる閾値の調整、及び、区画サイズの調整によって、要求される精度を満足するTINモデルを構築可能である。
【0076】
[その他の実施形態]
本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様を採ることができる。
例えば、上記実施形態では、対象領域を格子状に区画化した。しかしながら、対象領域は、X軸方向又はY軸方向のみに区画化されてもよい。区画は、正方形状、矩形状でなくてもよく、三角形状、四角形以上の多角形状であってもよい。区画は、等間隔に定義されなくてもよい。
【0077】
代表標高値は、対応する区画の最低標高値でなくてもよく、対応する区画内の標高値に関する平均値及び中央値等の統計量であってもよい。
【0078】
上記実施形態における1つの構成要素が有する機能は、複数の構成要素に分散して設けられてもよい。複数の構成要素が有する機能は、1つの構成要素に統合されてもよい。上記実施形態の構成の一部は、省略されてもよい。上記実施形態の構成の少なくとも一部は、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換されてもよい。特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0079】
[本明細書が開示する技術思想]
本明細書には、次の技術思想が開示されていると理解することができる。
[項目1]
対象領域の三次元形状を三次元座標系における座標点の集合によって表す点群データを取得するように構成される取得部と、
前記対象領域において、複数の区画を定義するように構成される区画定義部と、
前記複数の区画に関して、区画毎に、前記点群データが示す、対応する区画の座標点の一群に基づき、前記対応する区画を代表する一つの標高値である代表標高値を設定することにより、前記区画毎の前記代表標高値を示す前記対象領域の標高マップを生成するように構成される標高マップ生成部と、
前記標高マップに基づき、前記区画毎に、前記対応する区画の前記代表標高値を、前記対応する区画に隣接する区画である隣接区画の前記代表標高値と比較することにより、標高に関する変化量であって前記対応する区画の前記隣接区画に対する変化量を判別し、前記隣接区画に対する前記変化量が基準以上である区画を、変化点として判別するように構成される判別部と、
前記変化点を構成点として用いて、前記対象領域の三次元形状に関する不整三角網(TIN)モデルを生成するように構成されるモデル生成部と、
を備える情報処理装置。
[項目2]
前記区画定義部は、前記対象領域を水平面に沿って格子状に区画化することによって、前記複数の区画として、等間隔に並ぶ複数の区画を定義する項目1記載の情報処理装置。
[項目3]
前記標高マップ生成部は、前記区画毎に、前記対応する区画における最低の標高値を、前記対応する区画の前記代表標高値に設定する項目1又は項目2記載の情報処理装置。
[項目4]
前記判別部は、前記隣接区画に対する前記変化量が予め定められた閾値以上である区画を前記変化点として判別する項目1~項目3のいずれか一項記載の情報処理装置。
[項目5]
前記判別部は、前記対応する区画の代表標高値と前記隣接区画の代表標高値との差分を前記変化量として算出することにより、前記変化量を判別する項目1~項目4のいずれか一項記載の情報処理装置。
[項目6]
前記区画定義部は、前記対象領域を、水平面に沿って、第一の方向及び前記第一の方向に直交する第二の方向に格子状に区画化することによって、前記複数の区画を定義し、
前記判別部は、前記標高に関する前記変化量として、前記第一の方向に隣接する区画に対する変化量が基準以上である区画を、第一変化点として判別し、前記第二の方向に隣接する区画に対する変化量が基準以上である区画を、第二変化点として判別し、
前記モデル生成部は、前記第一変化点及び前記第二変化点を構成点として用いて、前記不整三角網(TIN)モデルを生成するように構成される項目1記載の情報処理装置。
[項目7]
項目1~項目6のいずれか一項記載の情報処理装置における前記取得部、前記区画定義部、前記標高マップ生成部、前記判別部、及び前記モデル生成部として、コンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム。
[項目8]
コンピュータにより実行される情報処理方法であって、
対象領域の三次元形状を三次元座標系における座標点の集合によって表す点群データを取得することと、
前記対象領域において、複数の区画を定義することと、
前記複数の区画に関して、区画毎に、前記点群データが示す、対応する区画の座標点の一群に基づき、前記対応する区画を代表する一つの標高値である代表標高値を設定することにより、前記区画毎の前記代表標高値を示す前記対象領域の標高マップを生成することと、
前記標高マップに基づき、前記区画毎に、前記対応する区画の前記代表標高値を、前記対応する区画に隣接する区画である隣接区画の前記代表標高値と比較することにより、標高に関する変化量であって前記対応する区画の前記隣接区画に対する変化量を判別し、前記隣接区画に対する前記変化量が基準以上である区画を、変化点として判別することと、
前記変化点を構成点として用いて、前記対象領域の三次元形状に関する不整三角網(TIN)モデルを生成することと、
を含む情報処理方法。
【符号の説明】
【0080】
10…情報処理装置、11…プロセッサ、13…メモリ、15…ストレージ、17…表示部、18…操作部、19…データ入出力部。
【要約】
【課題】不整三角網モデルの生成に関して、ユーザの作業負荷を抑制する。
【解決手段】対象領域の三次元形状を表す点群データが取得される(S110)。対象領域において、複数の区画が定義される(S120)。複数の区画に関して、区画毎に、点群データが示す、対応する区画の座標点の一群に基づき、対応する区画を代表する一つの標高値である代表標高値が設定されることにより、区画毎の代表標高値を示す対象領域の標高マップが生成される(S140)。標高マップに基づき、区画毎に、標高に関する変化量であって対応する区画の隣接区画に対する変化量が判別され、隣接区画に対する変化量が基準以上である区画が、変化点として判別される(S150)。変化点を構成点として用いて、対象領域の三次元形状に関する不整三角網モデルが生成される(S170)。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5