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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】線量計及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20241101BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G01T1/20 A
G01T1/20 C
A61B6/10 501
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023175188
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2019182073の分割
【原出願日】2019-10-02
(65)【公開番号】P2023182753
(43)【公開日】2023-12-26
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】592199294
【氏名又は名称】トーレック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】千田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】洞口 正之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公悦
(72)【発明者】
【氏名】桑本 佳行
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-139435(JP,A)
【文献】特開2019-028034(JP,A)
【文献】特表昭62-502143(JP,A)
【文献】国際公開第2018/158518(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-7/12
A61B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する線量計であって、
放射線を受けて光を発する放射線検出部と、
前記放射線検出部が放射線を受けて発した光が入射されて前記光を伝送するコア及びクラッドを有し、前記クラッドの外周面が遮光性を有する被覆で保護された光ファイバーと、
前記光ファイバーの光出射端部に接続され、前記光ファイバーで伝送された光を検出する光検出部と、
前記光検出部で検出された検出データを、防護壁で仕切られた別室に設置されたコンピュータに無線送信する無線送信部と、
前記放射線検出部及び前記光ファイバーの光入射端部の全体を覆って外部からの光を遮光する樹脂製の遮光カバー部と、
前記光ファイバー及び前記放射線検出部を有する複数の放射線検出プローブと、を備え
前記無線送信部は、前記複数の放射線検出プローブで検出された複数の検出データの全部又は一部を無線送信するとともに、前記複数の放射線検出プローブで検出された複数の線量率又は積算線量のなかで最大のもの及び当該最大のものを検出した検出箇所を無線送信することを特徴とする線量計
【請求項2】
求項1の線量計において、
前記検出データは、前記放射線の照射時間を含むことを特徴とする線量計
【請求項3】
求項1又は2の線量計において、
前記検出データ又は前記検出データに基づいて生成した警報を、画面表示又は音で出力する出力部を、更に備えることを特徴とする線量計
【請求項4】
求項1乃至3のいずれかの線量計において、
患者のX線の皮膚被曝線量を測定する、ことを特徴とする線量計。
【請求項5】
請求項4の線量計において、
医用画像診断用のX線画像撮影または透視中に患者の複数箇所におけるX線の線量率及び累積線量を含む被曝線量及並びに照射時間をリアルタイムに測定する、ことを特徴とする線量計。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの線量計と、前記線量計から無線送信された検出データを受信して処理する外部装置と、を備えるシステム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、
前記外部装置は、前記線量計から前記検出データ又は前記検出データに基づいて生成した警報を、画面表示又は音で出力する出力部を備えることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線などの放射線の線量をリアルタイムに測定する線量計及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光体が放射線を受けて発した光を、光ファイバーを介して光検出部に伝送する線量計が開示されている(特許文献1参照)。この線量計によれば、放射線を用いて撮影または透視される画像への影響を抑えつつ、その画像撮影または透視中に放射線の線量をリアルタイムに測定することができる、とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記線量計において、放射線の検出結果を、その放射線を検出している場所から離れた位置(例えば、線量計が設置された部屋と間に防護壁を有する別室)でリアルタイムに確認できるようにしたい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る放射線を検出する線量計は、放射線を受けて光を発する放射線検出部と、前記放射線検出部が放射線を受けて発した光を伝送する光ファイバーと、前記光ファイバーで伝送された光を検出する光検出部と、前記光検出部で検出された検出データを無線送信する無線送信部とを備える。
前記線量計において、前記検出データは、前記放射線の線量率及び積算線量の少なくとも一方であってもよい。また、前記検出データは、前記放射線の照射時間を含んでもよい。
前記線量計において、前記光ファイバーと前記光検出部とを有する放射線検出プローブを複数備え、前記無線送信部は、前記複数の放射線検出プローブで検出された複数の検出データの全部又は一部を無線送信してもよい。
前記線量計において、前記検出データ又は前記検出データに基づいて生成した警報を、画面表示又は音で出力する出力部を更に備えてもよい。
前記線量計において、前記複数の放射線検出プローブで検出された複数の検出データの最大値を無線送信してもよいし、又は、前記複数の検出データの最大値を出力してもよい。
【0005】
本発明の他の態様に係るシステムは、前記いずれかの線量計と、前記線量計から無線送信された検出データを受信して処理する外部装置と、を備える。
前記システムにおいて、前記外部装置は、前記線量計から前記検出データ又は前記検出データに基づいて生成した警報を、画面表示又は音で出力する出力部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、蛍光体が放射線を受けて発した光を光ファイバーで伝送し、その光ファイバーで伝送された光を検出する光検出部の検出データを無線送信することにより、放射線の検出結果を、その放射線を検出している場所から離れた位置でリアルタイムに確認できることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る線量計の全体構成の一構成例を示す概略構成図。
図2】本実施形態の線量計を用いて、医用画像診断のX線画像撮影または透視中にX線の線量をリアルタイム測定している様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、本実施形態では、本発明をX線の線量を測定する線量計に適用した例について説明するが、本発明は、X線以外の放射線の線量を測定する線量計にも適用することができる。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る線量計の全体構成の一構成例を示す概略構成図である。図1において、本実施形態の線量計10は、複数の放射線検出部としてのX線検出部(センサ部)100(1)~100(N)と、複数の光伝送体としての光ファイバー200(1)~200(N)と、本体装置300とを備える。本体装置300は、光検出部310と制御・処理部320と無線送信部330とを備える。また、本体装置300は、必須ではないが、出力部として液晶ディスプレイなどの表示部340やスピーカなどの音出力部350を備えてもよい。
【0010】
複数のX線検出部100(1)~100(N)及び複数の光ファイバー200はそれぞれ1組ずつ一体的に構成され、複数のX線検出装置である放射線検出プローブとしてのX線検出プローブ50(1)~50(N)となる。X線検出プローブ50(1)~50(N)の数(N)は、検出対象の種類や同時測定箇所の数に応じて設定され、1組又は2組であってもよいし、図1の例のように3組以上(例えば4組又は5組)であってもよい。
【0011】
光ファイバー200(1)~200(N)は、X線検出部100(1)~200(N)の蛍光体から発した光が入射される光入射端部201(1)~201(N)と、その光入射端部201から入射して伝送した光が出射する光出射端部202(1)~202(N)とを有する。
【0012】
なお、以下の実施形態において、複数のX線検出プローブ50(1)~50(N)を区別しないで説明するときはX線検出プローブ50と記載する。また、複数のX線検出部100(1)~100(N)を区別しないで説明するときはX線検出部100と記載し、複数の光ファイバー200(1)~200(N)並びにその光入射端部201(1)~201(N)及び光出射端部202(1)~202(N)を区別しないで説明するときはそれぞれ、光ファイバー200、光入射端部201及び光出射端部202と記載する。
【0013】
X線検出部100は、放射線としてのX線を受けて光を発する蛍光体を有する。蛍光体は、例えば、少なくともEuを付活剤とするYSを母体とした蛍光体である。また、蛍光体は、特性改善のための少量のSmを更に添加したYS:Eu,Smからなる蛍光体であってもよい。なお、蛍光体としては、Smの添加がないYS:Euからなる蛍光体や、Y:Eu、(Y,Gd,Eu)BO、YVO:Euなどからなる蛍光体を用いてもよい。
【0014】
上記所定材料からなる蛍光体は、例えばターゲットがタングステン又はモリブデンなどであって管電圧が20kV以上且つ150kV以下のX線発生装置から発したX線を受けたとき、600nm以上630nm以下の波長範囲に輝線スペクトルを有する赤色領域の光を発する。600nm以上630nm以下の波長範囲は、容易に入手可能な光ファイバーの伝送波長範囲に対応している。X線発生装置の管電圧は40kV以上且つ120kV以下であってもよい。
【0015】
上記少なくともEuを付活剤とするYSを母体とした蛍光体は、X線が照射されたときの損傷(放射線損傷)による輝度の低下が小さい。例えば、本実施形態の蛍光体に対して、累積の吸収線量が2[Gy]になるように上記X線発生装置からのX線を照射したところ、照射後の蛍光体からの光の輝度の低下は、照射前の輝度の10%以内であった。
【0016】
光ファイバー200は、X線検出部100の蛍光体がX線を受けて発した光を、X線検出部100から離れた位置にある光検出部310に伝送することができるため、そのX線が光検出部310によって遮られることがない。
【0017】
光ファイバー200は、例えば、光軸周辺を構成するコアと、そのコアを囲むように設けられたクラッドとを有するステップインデックス型のシングルコアの光ファイバーである。クラッドの外側の表面(周面)は、遮光性を有する被覆で保護されている。光ファイバーのコアとクラッドとの境界では、屈折率がステップ状に変化しており、コアはクラッドよりも高い屈折率を有している。光ファイバーの光入射端部201から入射した光は、主にコアの中を通り、光出射端部202に向かって伝送される。なお、光ファイバー200としては、コアからクラッドにかけて屈折率が連続的に変化するように形成されたグレーデッドインデックス型の光ファイバーや、複数のコアを有するマルチコアの光ファイバーを用いてもよい。
【0018】
光ファイバー200の材質は、例えば、X線に対して良好な透過性を有するとともに、蛍光体から発した600nm以上630nm以下の波長範囲の赤色光を低い伝送損失で伝送可能なものである。このような光ファイバーとしては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂からなる光ファイバー、フッ素樹脂からなる光ファイバーが挙げられる。このような材質の光ファイバー200についても、通常の金属からなるケーブルや導線とは異なり、上記X線に対して良好な透過性を示す。
【0019】
蛍光体は、例えば光入射端部201の光入射面上に塗布され乾燥されることにより層状に形成される。蛍光体の厚さは、例えば0.3~1.0[mm]程度であり、0.4~0.6[mm]程度が望ましい。なお、蛍光体の厚さについては、X線を用いた撮影または透視に必要な十分な蛍光が得られるものであれば、上記例示のものに限定されるものではない。
【0020】
光入射端部201の光入射面上に層状の蛍光体の作製方法にはいくつかの方法があるが、例えば次のような方法で作製することができる。まず、粉末状の蛍光体に、有機合成樹脂を有機溶剤等に溶解させた結合剤を加え、蛍光体を結合剤中に懸濁させた塗料様の塗工液を調整する。この塗工液を、光入射端部201の光入射面上に所定の塗工質量になるように塗工して乾燥させることにより、上記所定の単位面積当たりの質量からなる蛍光体を形成することができる。上記塗工液の塗工には、塗装で用いられるハケや吹き付けによる方法の他、塗工液に浸漬する方法を用いてもよい。また、塗工した膜の乾燥は、常温による乾燥の他に加熱乾燥させてもよい。また、蛍光体は、上記例示した方法以外の方法で作製してもよい。
【0021】
本実施形態のX線検出部100では、蛍光体と光ファイバー200の光入射端部201の全体を覆って遮光する樹脂製の遮光カバー部が形成されている。遮光カバー部は、蛍光体と光ファイバー200の光入射端部201とを保護する機能も有する。
【0022】
光ファイバー200の光出射端部202は、本体装置300に設けられた光ファイバー接続部311に着脱可能に接続される。
【0023】
光検出部310は、光ファイバー200の光出射端部202から出射した光を検出し、電気信号に変換して出力する。光検出部310としては、例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、光電子倍増管(PMT)等を用いることができる。
【0024】
また、光検出部310は、複数組のX線検出プローブ50を着脱可能に接続できるように構成してもよい。図1の例では、複数個のX線検出プローブ50(1)~50(N)を同時に装着できるように、複数個(例えば、2個又は3個以上)の光ファイバー接続部311(1)~311(N)を設けている。複数個の光ファイバー接続部311(1)~311(N)を設ける場合、光検出部310は、複数個の光ファイバー接続部それぞれに対応させて複数個設けてもよい。また、複数個の光ファイバー接続部からの光を切り替えて受光できるように単一の光検出部310を共用してもよい。
【0025】
制御・処理部320は、例えばCPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースなどを有するマイクロコンピュータで構成され、制御手段、演算手段、データ処理手段としても機能する。制御・処理部320は、所定のプログラムが実行されることにより、各部を制御したり、光検出部310から出力された信号をデジタル信号に変換し、線量の検出データを算出し、その検出データをメモリ等の記憶部に記憶したり、検出データを外部装置に無線送信するように後段の無線送信部330に渡したりする。
【0026】
制御・処理部320は、検出データに基づいて生成した表示データを表示部340に表示したり、検出データに基づいて生成した警報を音出力部350から出力したりするように処理してもよい。表示部340での表示は、例えば、線量、累積線量、線量率、X線の照射時間(以下、「X線照射時間」又は「照射時間」ともいう。)などの検知データの全部又は一部の変化を時間軸のグラフとしてリアルタイムに表示するものであってもよい。また、制御・処理部320は、表示データや警報のデータを外部装置に無線送信するように後段の無線送信部330に渡すように処理してもよい。
【0027】
前記線量の検出データは、例えば、X線の各種線量(例えば、吸収線量[Gy]、線量当量[Sv]、照射線量[C/kg])の値、その累積データである累積線量(「積算線量」ともいう。)[シーベルト]の値、単位時間当たりの線量である線量率[Gy/h]の値である。制御・処理部320には、上記各種線量、累積線量、線量率などを算出するための校正データや各種係数やパラメータの値が記憶されている。ここで、校正データは、光検出部310の出力信号の値を上記各種線量、累積線量、線量率などの値に換算するときに用いる換算テーブル又は換算式のデータであり、使用開始前に実行される校正によって取得される。
【0028】
ここで、複数のX線検出プローブ50を用いる場合であって各X線検出プローブ50の特性が互いに異なる場合は、X線検出プローブ50毎に取得された複数種類の校正データが予め記憶される。この場合は、制御・処理部320は、光検出部310に接続されたX線検出プローブを識別し、対応する校正データを用いて上記各種線量、累積線量、線量率を算出する。更に、本体装置300に複数の光検出部310を設けた場合であって、各光検出部310の特性が互いに異なる場合は、光検出部310毎に取得された複数種類の校正データ、又は、X線検出プローブ50及び光検出部310の組み合わせ毎に取得された複数種類の校正データが予め記憶される。なお、以上の校正データは使用開始後に変化する可能性があるので、使用開始後に定期的に取得及び更新を実行するようにしてもよい。
【0029】
また、X線検出プローブ50を複数備えている場合、無線送信部330から無線送信する送信データや表示部340に表示する表示データは、複数のX線検出プローブ50で検出された複数の線量率又は累積線量のなかで最大のもの(最大線量率又は最大累積線量)であってもよい。最大線量率又は最大累積線量のデータは、それが検出された検出箇所の情報やX線照射時間とともに無線送信したり表示したりしてもよい。また、表示部340は、複数のX線検出プローブ50で検出された複数の線量率又は累積線量を同時に表示し、その中で最大である最大線量率又は最大累積線量を点滅などで強調する強調表示を行ってもよい。また、表示部340は、複数のX線検出プローブ50で検出された複数の線量率、累積線量又はその両方とともにX線照射時間に表示し、それらの中で最大である最大線量率、最大累積線量又は最大照射時間を点滅などで強調する強調表示を行ってもよい。また、最大線量率、最大累積線量又は最大照射時間が予め設定した所定の閾値を超えたときに警報のデータを生成して無線送信したり音出力部350からアラーム音として出力したりしてもよい。
【0030】
無線送信部330は、例えば近距離通信モジュールで構成され、制御・処理部320から受けた検出データ等を所定の無線通信方式により外部装置に無線送信する。前記無線通信方式は、例えば、Bluetooth(登録商標)、又は、Wi-Fi(登録商標)等の無線LANなどの近距離無線通信方式であってもよい。
【0031】
図2は、本実施形態の線量計10を用いて医用画像診断用のX線画像撮影または透視中にX線の皮膚被曝線量をリアルタイムに測定するシステムの全体構成の一例を示す説明図である。図2の例は、線量計10が設置された部屋71との間が防護壁70で仕切られた別室72に設置された外部装置としてのコンピュータ(PC)60で患者の複数の検出箇所におけるX線の皮膚被曝線量(例えば、最大線量率、最大累積線量など)とともにX線照射時間をリアルタイムに表示してモニターしながら、IVR(Interventional Radiology)と呼ばれる治療法でX線画像をリアルタイムに見ながら患者を治療している例である。
【0032】
ここで、IVRとは、一般的には「放射線診断技術の治療的応用」を意味し、「血管内治療」、「血管内手術」、「低侵襲治療」、「画像支援治療」等とほぼ同義語として使われる場合もある。IVRは、本実施形態のようなX線撮影または透視画像やCT等の患部を含む画像を見ながら体内に細い管(カテーテルや針)を入れて病気を治す治療法であり、血管IVRや非血管IVR等の種類がある。このようなIVRでは、X線を照射しながら行われるので、患者の皮膚被曝障害を防止するため、患者皮膚面(特に被曝障害が発生する可能性が高いX線入射側の皮膚面)における被曝線量を正確に把握して管理する必要がある。
【0033】
そこで、図2の例では、本実施形態の線量計10の複数のX線検出部100(1)~100(N)を、患者のX線画像を撮影または透視している複数箇所の皮膚表面に貼り付け、各箇所の皮膚被曝線量(例えば、最大線量率、最大累積線量など)とX線照射時間とを、防護壁70で仕切られた別室72に設置された外部装置としてのPC60でリアルタイムに測定して表示したり記録したりする。
【0034】
図2において、PC60は例えば近距離通信モジュールを備え、線量計10とPC60とは前述の所定の無線通信方式により互いにデータを送受信することができる。線量計10からPC60に無線送信されるデータは、線量、累積線量、線量率などの検知データであってもよいし、その検知データはX線照射時間を含んでもよい。また、線量計10からPC60に無線送信されるデータは、複数のX線検出プローブ50(前述の図1参照)で検出された複数の線量率、累積線量又はX線照射時間のなかで最大のもの(最大線量率、最大累積線量又は最大照射時間)であってもよい。また、線量計10は、最大線量率、最大累積線量又は最大照射時間が予め設定した所定の閾値を超えたときに生成した警報のデータをPC60に無線送信してもよい。
【0035】
PC60は、例えば、線量計10から受信した線量、累積線量、線量率などの検知データの変化を時間軸のグラフとしてリアルタイムに表示する。PC60は、線量計10の複数のX線検出プローブ50で検出された複数の線量率、累積線量又はその両方とX線照射時間とを同時に表示し、その中で最大である最大線量率、最大累積線量又は最大照射時間を点滅などで強調する強調表示を行ってもよい。
【0036】
また、PC60は、複数のX線検出プローブ50で検出された複数の線量率、累積線量又はその両方とX線照射時間のデータを線量計10から受信したとき、その複数の線量率、累積線量又はX線照射時間のなかで最大のもの(最大線量率、最大累積線量又は最大照射時間)を算出して表示してもよい。また、PC60は、最大線量率、最大累積線量又は最大取捨時間が予め設定した所定の閾値を超えたときに警報のデータを生成し、その警告を表示したりアラーム音として出力したりしてもよい。
【0037】
図2において、前述の管電圧が印加されたX線管を有するX線発生装置(X線源)410から発生した所定の線種及び線量のX線415は、カテーテルテーブル420上の患者の人体500の所定部位に照射される。人体を通過したX線415は、X線イメージインテンシファイア431を有するX線透視・撮影装置430でリアルタイムに撮影または透視される。ここで、X線イメージインテンシファイア431は、入力蛍光面に受けた2次元的なX線画像を可視光像に変換し出力する装置である。なお、X線イメージインテンシファイア431の代わりに、フラットパネルディテクタ(FPD)を用いてもよい。X線透視・撮影装置430で撮影または透視された画像を、画像表示装置440にリアルタイムに表示され、患者の治療に用いられる。このようなX線画像の撮影または透視を伴うIVRにおける患者の皮膚被曝線量を測定するために、本実施形態の線量計10のX線検出部100を、X線画像を撮影または透視している患者の図中下側の皮膚近傍に配置している。
【0038】
以上、本実施形態によれば、X線検出部100がX線を受けると、そのX線検出部100が有する蛍光体が光を発し、そのX線検出部100の蛍光体が発した光は、光ファイバー200の光入射端部201から入射して伝送され、光出射端部202から出射する。この光ファイバー200の光出射端部202から出射した光を光検出部310で検出する。この光検出部310の検出結果により、X線の線量を測定することができる。
【0039】
特に、本実施形態によれば、複数のX線検出プローブ50を介して検出された光検出部310の検出データを外部装置(PC)70に無線送信することにより、複数箇所のX線の線量の検出結果を、そのX線を検出している場所から離れた位置でリアルタイムに確認できることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、X線検出部100の蛍光体がX線を受けて発した光は、光ファイバー200によりX線検出部100から離れた位置にある光検出部310に伝送することができる。従って、X線の画像の撮影または透視中にX線の線量を測定する場合、画像撮影または透視用のX線の通過領域に光検出部310を配置する必要がなく、画像撮影または透視用のX線が光検出部310によって遮られることがない。更に、画像撮影または透視用のX線を遮るおそれがある蛍光体からコア内に入る光量を高めながら蛍光体のサイズを低減し、また、光ファイバー200についても、通常の金属からなるケーブルや導線とは異なり、X線に対して良好な透過性を示す。従って、X線を用いて画像を撮影または透視する場合、その撮影または透視される画像への影響を抑えることができる。従って、X線を用いて撮影または透視される画像への影響(例えばIVRへの影響)を抑えつつ、その画像撮影または透視中にX線の線量をリアルタイムに測定することができる。
【0041】
また、本実施形態の線量計10は、所定範囲の管電圧を有するX線発生装置から発した医用画像診断用として好適なエネルギー及び線種のX線を用いて撮影または透視される画像への影響を抑えつつ、そのX線の画像撮影または透視中にX線の線量をリアルタイムに測定することができる。従って、本実施形態の線量計10は、血管造影時や血管系及び非血管系のIVR時における皮膚被曝線量のリアルタイム測定などの医用画像診断に用いられる安全なリアルタイム線量計として、好適である。また、本実施形態の線量計10は、消化管の造影時や整形外科における非血管系の検査・治療時における皮膚被曝線量のリアルタイム測定に用いられる安全なリアルタイム線量計としても、好適である。
さらに、本実施形態の線量計10は、IVR術者などの医療スタッフの被曝線量を測定する線量計としても使用できる。
【符号の説明】
【0042】
10 :線量計
50,50(1)~50(N) :X線検出プローブ
60 :PC
70 :防護壁
71 :線量計が設けられた部屋
72 :別室
100,100(1)~100(N) :X線検出部
200,200(1)~200(N) :光ファイバー
201,201(1)~201(N) :光入射端部
202,202(1)~202(N) :光出射端部
300 :本体装置
310 :光検出部
311,311(1)~311(N) :光ファイバー接続部
320 :制御・処理部
330 :無線送信部
340 :表示部
350 :音出力部
415 :X線
420 :カテーテルテーブル
430 :X線透視・撮影装置
431 :X線イメージインテンシファイア等
440 :画像表示装置
500 :人体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【文献】特開2014-173903号公報
図1
図2