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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】データ伝送装置及びデータ伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/22 20060101AFI20241101BHJP
   H04W 76/15 20180101ALI20241101BHJP
   H04W 72/04 20230101ALI20241101BHJP
   H04W 24/04 20090101ALI20241101BHJP
【FI】
H04L1/22
H04W76/15
H04W72/04
H04W24/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020102776
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021197628
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000242600
【氏名又は名称】北陽電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】日野 政典
(72)【発明者】
【氏名】林屋 利明
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-046226(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002431(WO,A1)
【文献】特開2001-285166(JP,A)
【文献】特開2011-188509(JP,A)
【文献】特開2000-078116(JP,A)
【文献】特開2009-194793(JP,A)
【文献】特開平03-076335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 1/00
H04L 1/08-1/24
H04B 1/74
H04W 76/15
H04W 72/0457
H04W 24/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに相対移動自在に設置される第1無線通信装置と第2無線通信装置で構成されるデータ伝送装置であって、
前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置の双方に、第1帯域で無線通信する第1送信部と第1受信部を備えた第1通信部と、前記第1帯域とは異なる第2帯域で無線通信する第2送信部と第2受信部を備えた第2通信部と、前記第1通信部と前記第2通信部の双方を制御する通信制御部と、前記通信制御部に送信データを入力するデータ入力部と、前記通信制御部から受信データを出力するデータ出力部を備え、
送信側の通信制御部は、前記データ入力部から入力された送信データを前記第1送信部と前記第2送信部を介して並行して送信するように制御し、データを送信する際に、前記データ入力部から入力された送信データを、前記第1送信部を介して第1周期で繰り返し送信し、前記第2送信部を介して前記第1周期の半周期以下の第2周期で繰り返し送信するように構成され、
受信側の通信制御部は、前記第1受信部と前記第2受信部を介して並行して受信した受信データの何れか一方を前記データ出力部から出力するように構成され、データを受信する際に、前記第1受信部を介して前記第1周期で受信した受信データと前記第2受信部を介して前記第2周期で受信した受信データの何れか一方を前記第1周期で前記データ出力部から出力するように構成されているデータ伝送装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記第1受信部と前記第2受信部で受信した受信データの真偽を判別するデータ判別部を備え、前記データ判別部で真と判別した最新の受信データを前記データ出力部から出力するように構成されている請求項記載のデータ伝送装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記第1受信部を介して受信し前記データ判別部で真と判別した受信データを、前記第2受信部で受信した受信データの真偽にかかわらず前記データ出力部から出力し、前記第1受信部を介して受信した受信データを前記データ判別部で偽と判別すると、前記第2受信部を介して受信し前記データ判別部で真と判別した受信データを前記データ出力部から出力するように構成されている請求項記載のデータ伝送装置。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記第1周期で前記第1受信部を介して真の受信データを得ることができず、かつ、前記第1周期で前記第2受信部を介して真の受信データを得ることができない場合に、以前に前記第1受信部または前記第2受信部を介して受信した真の受信データで直近の受信データを前記データ出力部から出力するように構成されている請求項記載のデータ伝送装置。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記第1受信部及び前記第2受信部の双方で真の受信データを得ることができない状態が前記第1周期を単位として所定回数継続すると通信エラーと判定するように構成されている請求項からの何れかに記載のデータ伝送装置。
【請求項6】
前記通信制御部は、通信エラーと判定した場合にその状態を表示するモニタ表示部を備えている請求項記載のデータ伝送装置。
【請求項7】
前記第1通信部の通信帯域である前記第1帯域が光通信帯域に設定されるとともに、前記第2通信部の通信帯域である前記第2帯域がRF通信帯域に設定され、
前記通信制御部は、前記第1通信部を介して真の受信データを受信できない場合でも、前記第2通信部を介して真の受信データを受信できる場合には、前記第1通信部を介した相手側との通信の確立中に出力する状態信号を維持するように構成されている請求項からの何れかに記載のデータ伝送装置。
【請求項8】
前記通信制御部は、前記第1通信部及び/または前記第2通信部を介して受信した真の受信データを少なくとも前記第1周期の間保持する記憶部を備えている請求項からの何れかに記載のデータ伝送装置。
【請求項9】
前記第1通信部は、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置の双方または何れか一方に装脱可能に接続され、
前記通信制御部は、前記第1周期の周期内で前記第1受信部及び前記第2受信部で受信した各受信データを比較し、各受信データが相違する場合に通信エラーと判定するように構成されている請求項からの何れかに記載のデータ伝送装置。
【請求項10】
前記通信制御部は、前記第1受信部及び前記第2受信部で受信した各受信データを過去に遡って比較し、一方のみに受信データの変化があった場合は、変化した受信データを前記データ出力部から出力する請求項からの何れかに記載のデータ伝送装置。
【請求項11】
前記通信制御部は、前記第1受信部及び前記第2受信部で受信した各受信データを過去に遡って比較し、各受信データが前記第1周期を単位として所定回数継続して相違する場合に故障と判断するように構成されている請求項から10の何れかに記載のデータ伝送装置。
【請求項12】
互いに相対移動自在に設置される第1無線通信装置と第2無線通信装置との間で実行されるデータ伝送方法であって、
前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置の双方が、第1帯域で無線通信する第1通信ステップと、前記第1帯域とは異なる第2帯域で無線通信する第2通信ステップと、を実行可能に構成され、
前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置のうち送信側の無線通信装置は、外部から送信データが入力されると、前記第1通信ステップと前記第2通信ステップを並行して実行することにより、相手方に同一の送信データを送信し、前記送信側の無線通信装置で実行される前記第1通信ステップは、前記送信データを第1周期で繰り返し送信し、前記第2通信ステップは、前記送信データを前記第1周期の半周期以下の第2周期で繰り返し送信するように構成され、
前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置のうち受信側の無線通信装置は、前記第1通信ステップと前記第2通信ステップを並行して実行して、受信データの何れか一方を受信データとして外部に出力するように構成され
前記受信側の無線通信装置は、前記第1通信ステップを介して前記第1周期で受信した受信データと前記第2通信ステップを介して前記第2周期で受信した受信データの何れか一方を前記第1周期で外部に出力するように構成されているデータ伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造設備などに組み込まれるデータ伝送装置及びデータ伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造設備では、各製造装置間で半導体ウェハを自動搬送するために、各製造装置に設けられたロードポート上に載置された複数枚の半導体ウェハが収容されたウェハキャリア装置を搬送するOHT(Overhead Hoist Transfer)と称する天井走行式無人搬送車(以下、「搬送台車」と記す。)などの自動搬送装置が用いられている。
【0003】
このような搬送台車と製造装置にはデータ伝送装置が組み込まれ、データ伝送装置を介して授受される制御情報に基づいて、搬送台車と製造装置間でウェハキャリア装置が移載される。このようなデータ伝送装置として、SEMIスタンダ-ドE84に規定されるインターロックシーケンスを具現化した8ビットパラレル光データ伝送装置が用いられる。
【0004】
特許文献1には、このようなデータ伝送装置として、ビット情報が予め設定された任意の周期とパルス数とを組み合わせたパルス信号に変調されるとともに、任意のビット数で構成されビット間に所定幅のヌル期間が設定されたフレームデータを、発光素子と受光素子を介して送受信する光データ伝送装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、光データ伝送装置に通信エラーが発生する場合に備えて、無線通信機能を備えた光データ伝送装置が提案されている。
【0006】
しかし、光データ伝送で通信エラーが発生したときに無線通信に切り替えるように構成されているので、その間の通信が途切れることとなり、ウェハキャリア装置の移送が円滑に行なえなくなるという問題や、光データ伝送と無線通信の双方のハードウェアを構築する必要があり、装置コストが嵩むという問題もあった。
【0007】
特許文献3には、パルス位置変調方式により変調された、送信すべき情報が重畳されている無線搬送波を送信する無線信号送信処理部と、前記パルス位置変調方式により変調された、前記送信すべき情報が重畳されている光搬送波を送信する光信号送信処理部と、前記無線信号送信処理部及び前記光信号送信処理部に共通する前記パルス位置変調方式に従って、前記送信すべき情報を変調するベースバンド処理部と、を含む送信装置、及び、パルス位置変調方式により変調された、受信すべき情報が重畳されている無線搬送波を受信する無線信号受信処理部と、前記パルス位置変調方式により変調された、前記受信すべき情報が重畳されている光搬送波を受信する光信号受信処理部と、前記無線信号受信処理部及び前記光信号受信処理部に共通する前記パルス位置変調方式に従って、前記受信すべき情報を復調するベースバンド処理部と、を含む受信装置を備えた通信装置が開示されている。
【0008】
当該通信装置では、ベースバンド処理部を共用可能に構成することで、回路構成を簡素化してコストの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2010-161731号公報
【文献】特開2015-213318号公報
【文献】特開2008-271500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献3に記載された通信装置でも、光信号受信処理部と無線信号受信処理部の双方で受信されたデータをベースバンド処理部で同時に復調することができず、光信号受信処理部と無線信号受信処理部の何れか一方で受信エラーが発生すると、その後に他方の受信処理部に切り替える構成であるため、切り替えに要する時間に送信された受信データを受信することができずに消失するという問題が解消されることはない。
【0011】
この問題は、特許文献2,3のように赤外光を用いた光通信と高周波を用いた無線通信の組み合わせに限るものではなく、帯域の異なる二系統の通信を行う場合でも発生する。
【0012】
本発明の目的は、上述した従来の問題に鑑み、帯域が異なる二系統の通信を行う場合に、データの消失を伴わずに系統を切り替えることができるデータ伝送装置及びデータ伝送方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的達成をするため、本発明によるデータ伝送装置の第一の特徴構成は、互いに相対移動自在に設置される第1無線通信装置と第2無線通信装置で構成されるデータ伝送装置であって、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置の双方に、第1帯域で無線通信する第1送信部と第1受信部を備えた第1通信部と、前記第1帯域とは異なる第2帯域で無線通信する第2送信部と第2受信部を備えた第2通信部と、前記第1通信部と前記第2通信部の双方を制御する通信制御部と、前記通信制御部に送信データを入力するデータ入力部と、前記通信制御部から受信データを出力するデータ出力部を備え、送信側の通信制御部は、前記データ入力部から入力された送信データを前記第1送信部と前記第2送信部を介して並行して送信するように制御し、データを送信する際に、前記データ入力部から入力された送信データを、前記第1送信部を介して第1周期で繰り返し送信し、前記第2送信部を介して前記第1周期の半周期以下の第2周期で繰り返し送信するように構成され、受信側の通信制御部は、前記第1受信部と前記第2受信部を介して並行して受信した受信データの何れか一方を前記データ出力部から出力するように構成され、データを受信する際に、前記第1受信部を介して前記第1周期で受信した受信データと前記第2受信部を介して前記第2周期で受信した受信データの何れか一方を前記第1周期で前記データ出力部から出力するように構成されている点にある。
【0014】
第1無線通信装置と第2無線通信装置の其々に通信帯域の異なる第1通信部と第2通信部を備え、双方に備えた通信制御部によって第1通信部同士及び第2通信部同士で其々通信するように制御される。送信側の無線通信装置では、データ入力部を介して入力された送信データが通信制御部によって第1通信部に備えた第1送信部と第2通信部に備えた第2送信部を介して並行して送信され、受信側の無線通信装置では、送信データが第1通信部に備えた第1受信部と第2通信部に備えた第2受信部を介して並行して受信され、通信制御部によって何れか一方がデータ出力部から出力される。第1通信部と第2通信部の何れか一方に通信障害が発生しても、他方で通信障害が発生しない限りは受信データの消失という不都合な状態が発生しない。
【0015】
送信側の無線通信装置では、データ入力部から入力された送信データが、第1送信部から第1周期で繰り返し送信され、第2送信部から第2周期で繰り返し送信される。送信データに変化がない場合には、第1送信部から第1周期で同一のデータが繰り返し送信され、第2送信部から第2周期で同一のデータが繰り返し送信される。第2周期は第1周期の半周期以下の周期に設定されているため、第1送信部から送信データが1回送信される間に第2送信部から同一の送信データが少なくとも2回以上送信される。受信側の無線通信装置では、第1受信部によって第1周期で受信データが得られ、第2受信部によって第2周期で受信データが得られるので、通信制御部は第1受信部の受信データと第2受信部の受信データの何れかを選択してデータ出力部から第1周期、つまり長い方の周期で出力する。製品として要求される通信周期を第1周期に設定すれば、第1周期内で通信の冗長性を確保することができる。
【0016】
同第の特徴構成は、上述した第の特徴構成に加えて、前記通信制御部は、前記第1受信部と前記第2受信部で受信した受信データの真偽を判別するデータ判別部を備え、前記データ判別部で真と判別した最新の受信データを前記データ出力部から出力するように構成されている点にある。
【0017】
データ判別部を備えることにより受信データの信頼性を保証することができ、仮にデータ判別部で何れか一方の受信データが偽と判定されるような場合でも、真と判定された他方の受信データの最新値が受信データとして採用されるので、送信データの切り替わりから受信データの切り替わりまでの著しい遅延を回避することができる。
【0018】
同第の特徴構成は、上述した第の特徴構成に加えて、前記通信制御部は、前記第1受信部を介して受信し前記データ判別部で真と判別した受信データを、前記第2受信部で受信した受信データの真偽にかかわらず前記データ出力部から出力し、前記第1受信部を介して受信した受信データを前記データ判別部で偽と判別すると、前記第2受信部を介して受信し前記データ判別部で真と判別した受信データを前記データ出力部から出力するように構成されている点にある。
【0019】
第1受信部で受信され真と判別された受信データが優先してデータ出力部から出力される。第1受信部で受信された受信データが偽と判別される場合には、第2受信部で受信され真と判別された受信データが補完的に出力される。従って、受信データの欠落が回避できる。
【0020】
同第の特徴構成は、上述した第の特徴構成に加えて、前記通信制御部は、前記第1周期で前記第1受信部を介して真の受信データを得ることができず、かつ、前記第1周期で前記第2受信部を介して真の受信データを得ることができない場合に、以前に前記第1受信部または前記第2受信部を介して受信した真の受信データで直近の受信データを前記データ出力部から出力するように構成されている点にある。
【0021】
第1周期で第1受信部及び第2受信部の何れでも真の受信データが得られない場合に、第1受信部または第2受信部を介して受信した真の受信データで直近の受信データが補完的に出力される。従って、受信データの欠落が回避できる。
【0022】
同第の特徴構成は、上述した第から第の何れかの特徴構成に加えて、前記通信制御部は、前記第1受信部及び前記第2受信部の双方で真の受信データを得ることができない状態が前記第1周期を単位として所定回数継続すると通信エラーと判定するように構成されている点にある。
【0023】
第1受信部及び第2受信部の双方で真の受信データが得られない場合に、直ちに通信エラーにすると、その後に正常復帰してもデータ伝送装置を組み込んだシステムが停止する虞がある。しかし、真の受信データを得ることができない状態が第1周期を単位として所定回数継続するまでに正常復帰すると、データ伝送装置を組み込んだシステムの停止を招くことがない。そこで、受信データの更新不能な状態が許容できる限度を、第1周期を単位として所定回数に設定するものである。
【0024】
同第の特徴構成は、上述した第五の特徴構成に加えて、前記通信制御部は、通信エラーと判定した場合にその状態を表示するモニタ表示部を備えている点にある。
【0025】
モニタ表示部の表示状態を確認することで、どのような状態であるのかが容易に判断できる。
【0026】
同第の特徴構成は、上述した第から第の何れかの特徴構成に加えて、前記第1通信部の通信帯域である前記第1帯域が光通信帯域に設定されるとともに、前記第2通信部の通信帯域である前記第2帯域がRF通信帯域に設定され、前記通信制御部は、前記第1通信部を介して真の受信データを受信できない場合でも、前記第2通信部を介して真の受信データを受信できる場合には、前記第1通信部を介した相手側との通信の確立中に出力する状態信号を維持するように構成されている点にある。
【0027】
光通信を行なう受信側の第1通信部と送信側の第1通信部との間で通信が確立すると、受信側の第1通信部が状態信号をオン状態に切り替え、通信が途絶えると状態信号をオフ状態に切り替える。送信側の第1通信部は状態信号がオフ状態に切り替わると、通信エラーに伴って処理の中断を招くことになる。しかし、光通信を行なう第1通信部を介して真の受信データを受信できない場合でも、RF(Radio Frequency)通信を行なう第2通信部を介して真の受信データを受信できる場合には、受信側の第1通信部が状態信号を維持するため、通信エラーに伴う処理の中断を招くことがない。
【0028】
同第の特徴構成は、上述した第から第七の何れかの特徴構成に加えて、前記通信制御部は、前記第1通信部及び/または前記第2通信部を介して受信した真の受信データを少なくとも前記第1周期の間保持する記憶部を備えている点にある。
【0029】
例えば、第1通信部を介して受信した受信データが偽であっても、当該受信データに対応する第1周期に第2通信部を介して受信した真の受信データを記憶部に記憶することで、次の第1周期に記憶部から読み出した真の受信データをデータ出力部から出力することができる。第2通信部を介して受信した受信データが偽である場合も同様である。
【0030】
同第の特徴構成は、上述した第から第の何れかの特徴構成に加えて、前記第1通信部は、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置の双方または何れか一方に装脱可能に接続され、前記通信制御部は、前記第1周期の周期内で前記第1受信部及び前記第2受信部で受信した各受信データを比較し、各受信データが相違する場合に通信エラーと判定するように構成されている点にある。
【0031】
例えば、第1無線通信装置が受信側として機能し、第1通信部が第1無線通信装置に装脱可能に構成されているような場合で、第1通信部から第1無線通信装置に入力された受信データの真偽が通信制御部で検証できないような場合には、第1周期の周期内で第1受信部及び第2受信部で受信した各受信データを比較し、各受信データが相違する場合に通信エラーと判定することができる。
【0032】
同第の特徴構成は、上述した第から第の何れかの特徴構成に加えて、前記通信制御部は、前記第1受信部及び前記第2受信部で受信した各受信データを過去に遡って比較し、一方のみに受信データの変化があった場合は、変化した受信データを前記データ出力部から出力する点にある。
【0033】
同第十一の特徴構成は、上述した第から第十の何れかの特徴構成に加えて、前記通信制御部は、前記第1受信部及び前記第2受信部で受信した各受信データを過去に遡って比較し、各受信データが前記第1周期を単位として所定回数継続して相違する場合に故障と判断するように構成されている点にある。
【0034】
本発明によるデータ伝送方法の第一の特徴構成は、互いに相対移動自在に設置される第1無線通信装置と第2無線通信装置との間で実行されるデータ伝送方法であって、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置の双方が、第1帯域で無線通信する第1通信ステップと、前記第1帯域とは異なる第2帯域で無線通信する第2通信ステップと、を実行可能に構成され、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置のうち送信側の無線通信装置は、外部から送信データが入力されると、前記第1通信ステップと前記第2通信ステップを並行して実行することにより、相手方に同一の送信データを送信し、前記送信側の無線通信装置で実行される前記第1通信ステップは、前記送信データを第1周期で繰り返し送信し、前記第2通信ステップは、前記送信データを前記第1周期の半周期以下の第2周期で繰り返し送信するように構成され、前記第1無線通信装置と前記第2無線通信装置のうち受信側の無線通信装置は、前記第1通信ステップと前記第2通信ステップを並行して実行して、受信データの何れか一方を受信データとして外部に出力するように構成され、前記受信側の無線通信装置は、前記第1通信ステップを介して前記第1周期で受信した受信データと前記第2通信ステップを介して前記第2周期で受信した受信データの何れか一方を前記第1周期で外部に出力するように構成されている点にある。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明によれば、帯域が異なる二系統の通信を行う場合に、データの消失を伴わずに系統を切り替えることができるデータ伝送装置及びデータ伝送方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】データ伝送装置が組み込まれた半導体デバイスの製造設備の説明図
図2】製造装置とOHTの間のデータの送受信シーケンスの説明図
図3】製造装置とOHTの間のデータの送受信に伴う動作の説明図
図4】(a)はデータ伝送装置の機能ブロック構成図、(b)は送信側と受信側の無線通信装置の接続態様を示すデータ伝送装置の説明図、(c)は第1通信部が装脱自在に構成された態様の説明図
図5】第1通信部で送受信されるフレームデータの波形説明図
図6】データ伝送装置で正常に遣り取りされる通信データのタイミングチャート
図7】比較例を示し、データ伝送装置の第1通信部のみで遣り取りされ、通信エラーが発生した場合の通信データのタイミングチャート
図8】比較例を示し、データ伝送装置で通信エラーが発生した場合の通信データのタイミングチャート
図9】本発明のデータ伝送装置で通信エラーが発生した場合の通信データのタイミングチャート
図10】データ伝送装置の具体的な構成例を示す説明図
図11】(a)は図10に示したデータ伝送装置の応用例の説明図、(b)は図10に示したデータ伝送装置の応用例の説明図
図12】(a)は図10に示したデータ伝送装置の応用例の説明図、(b)は図10に示したデータ伝送装置の応用例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に本発明によるデータ伝送装置及びデータ伝送方法の実施形態を説明する。
[データ伝送装置が使用されるシステムの例示]
図1に示すように、半導体デバイスの製造設備では、半導体ウェハに順次所定の処理を施すための各種の製造装置ME(ME1,ME2,ME3,ME4)が通路PWに沿って配設されている。各製造装置ME間で半導体ウェハWを自動搬送するために、製造装置MEの上部空間に設置された走行レールRに沿って搬送台車OHTが走行可能に設けられ、各製造装置MEに設けられたロードポートLPとの間でウェハキャリア装置CRを受け渡しするように構成されている。
【0038】
搬送台車OHTは、走行レールRに沿って自走する走行機構1を備えた基台2に、ウェハキャリア装置CRを掴持するためのチャック機構3を備えた昇降体4を所定の昇降経路に沿って昇降させる昇降機構5が組み込まれている。
【0039】
昇降機構5は、昇降体4と、昇降体4の上面の所定の箇所に一端が固着された複数のベルト6と、ベルト6の夫々の他端が固着された巻取軸を回転駆動する昇降用モータを備え、基台2に設けられた昇降用モータの駆動によりベルト6が巻き上げまたは繰り出され、昇降体4が基台2に対して昇降可能に構成されている。
【0040】
チャック機構3は、ウェハキャリア装置CRの上面の被掴持部を掴持するための一対の爪3Aを備え、昇降体4内部に備えた掴持用ソレノイドまたはモータの駆動により、爪3Aが掴持姿勢または開放姿勢となることでウェハキャリア装置CRを掴持又は開放するように構成されている。
【0041】
このような搬送台車OHTは、例えば、走行レールRに組み込まれた通信インタフェースを介してホストコンピュータと通信可能なシステム通信部を備え、ホストコンピュータからの指示に基づいて、所定の製造装置MEに走行し、当該製造装置MEとの間でウェハキャリア装置CRを授受するように構成されている。
【0042】
搬送台車OHTと各製造装置MEとの間でウェハキャリア装置CRを授受するために、SEMI E84-0200Aインタフェース規格に基づき動作するデータ伝送装置10が組み込まれている。当該データ伝送装置10は、搬送台車OHT側に設けられた第1無線通信装置10Aと製造装置ME側に設けられた第2無線通信装置10Bとで構成されている。
【0043】
搬送台車OHTには、システム通信部を介してホストコンピュータからの指令に基づいて所定の製造装置MEに移動するために走行機構1を制御し、データ伝送装置10を介した製造装置MEとの送受信データに基づいて昇降機構5及びチャック機構3等を制御する制御装置が搭載されている。
【0044】
[データ伝送装置の説明]
図2及び図3には、SEMI E84-0200Aインタフェース規格に基づいて、能動機器側の搬送台車OHTに設けられた第1無線通信装置10Aと受動機器側の製造装置MEに設けられた第2無線通信装置10Bとの間で行なわれる信号の遣り取りが示されている。第1無線通信装置10Aと第2無線通信装置10Bにより本発明のデータ伝送装置10が構成される。
【0045】
搬送台車OHTが製造装置MEに対する所定位置に到達すると、第1無線通信装置10AはCS-0信号を出力して希望するロードポート番号を選択し、通信可能状態を示すVALID信号を出力する。
【0046】
VALID信号を検出した第2無線通信装置10Bが選択されたロードポート番号が準備できている旨の信号L-REQを出力すると、第1無線通信装置10Aは移載要求信号TR-REQを出力する。移載要求信号TR-REQを受けた第2無線通信装置10Bが移載要求受理信号READYを出力すると、第1無線通信装置10Aは移載開始信号BUSYを出力して、搬送台車OHTからウェハキャリア装置CRが移載される。
【0047】
定位置にウェハキャリア装置CRが移載されると第2無線通信装置10Bの信号L-REQがオフされ、これを受けて第1無線通信装置10Aは移載開始信号BUSYをオフし、移載要求信号TR-REQをオフするとともに、移載終了信号COMPTを出力する。移載終了信号COMPTを受けた第2無線通信装置10Bは移載要求受理信号READYをオフし、その後第1無線通信装置10Aは移載終了信号COMPT及びVALID信号をオフして移載動作を終了する。
【0048】
図4(a)に示すように、データ伝送装置10は、搬送台車OHTと製造装置MEとの関係のように、互いに相対移動自在に設置される第1無線通信装置10Aと第2無線通信装置10Bで構成されている。
【0049】
第1無線通信装置10Aと第2無線通信装置10Bの双方に、第1帯域で無線通信する第1送信部11Tと第1受信部11Rを備えた第1通信部11と、第1帯域とは異なる第2帯域で無線通信する第2送信部12Tと第2受信部12Rを備えた第2通信部12と、第1通信部11と第2通信部12の双方を制御する通信制御部15と、通信制御部15に送信データを入力するデータ入力部13と、通信制御部15から受信データを出力するデータ出力部14と、第1通信部11及び/または第2受信部12Rの通信アドレスなどの通信条件を設定する通信設定部16と、を備えている。通信設定部16にはRS232Cなどの汎用のシリアル通信ポートが設けられ、シリアル通信ポートを介して外部から通信条件を設定することができるように構成されている。
【0050】
データ入力部13及びデータ出力部14で入出力されるパラレル信号が、図2で説明したSEMI E84-0200Aインタフェース規格に準じた各信号となる。データ伝送装置10は、搬送台車OHTと製造装置MEとの間で遣り取りするパラレル信号を第1帯域と第2帯域の2系統の無線信号に変換して送受信する装置である。
【0051】
通信制御部15は、CPU及びメモリを備えた論理回路で構成され、データ入力部13から入力された送信データを第1送信部11Tと第2送信部12Tを介して並行して送信するように制御し、第1受信部11Rと第2受信部12Rを介して並行して受信した受信データの何れか一方をデータ出力部から出力するように構成されている。
【0052】
詳述すると、通信制御部15は、データ入力部13から入力されたパラレル信号を送信データとして第1送信部11Tと第2送信部12Tの其々に受け渡す送信処理部15Aと、第1受信部11Rで受信された受信データの真偽を判別する第1判別部15Bと、第2受信部12Rで受信された受信データの真偽を判別する第2判別部15Cと、第1判別部15Bから得られた受信データと第2判別部15Cから得られた受信データとを比較して決定した受信データをデータ出力部14に出力する比較部15Dと、モニタ表示部15Fと、比較部15Dで受信エラーを検出するとモニタ表示部15Fに備えたエラー表示を点灯制御するエラー処理部15Eを備えている。
【0053】
第1通信部11は、その通信帯域である第1帯域が光通信帯域に設定されるとともに、第2通信部12は、その通信帯域である第2帯域がRF(Radio Frequency)通信帯域に設定されている。
【0054】
第1送信部11Tは、ベースバンド信号である送信データを所定のフレームデータのパルス信号に変調する変調回路と、変調回路で変調されたパルス信号を出力する発光素子である赤外域のLEDを備えて構成され、第1受信部11Rは光パルス信号を受信する受光素子であるフォトダイオードと、フォトダイオードで受光し、電気信号に変換されたフレームデータであるパルス信号をベースバンド信号である受信データに復調する復調回路を備えている。
【0055】
図5に示すように、フレームデータは、フレームの先頭を示すスタートビットSTAと、複数のデータビットDと、データビットDのパリティを示すパリティビットPと、フレームの終了を示すストップビットSTPで構成されている。
【0056】
0または1で表される各ビット情報は、二種類のパルス周期と、二種類のパルス数の組合せで定義されている。
【0057】
スタートビットSTA、ストップビットSTP、データビットDの0、データビットDの1、パリティビットPの其々に、上述した固有のパルス周期及びパルス数の組が定義されている。
【0058】
さらに、各ビットを構成するパルス出力期間SPの間、即ち、各ビット間には所定時間のヌル期間NPが設定されている。以後、パルス出力期間SPに検出される一連のパルス信号をビットグループとも表記する。
【0059】
つまり、ビット情報が予め設定された任意の周期とパルス数とを組み合わせたパルス信号に変調されるとともに、任意のビット数で構成されビット間に所定幅のヌル期間が設定されたフレームデータが第1通信部11間で送受信される。
【0060】
尚、ビット情報を示す周期とパルス数及びその組合せ、ヌル期間の長さ、フレームデータに含まれるデータビット数はシステムに応じて任意に設定されるものである。また、本明細書では詳述しないが、上述のフレームデータ以外に第1通信部11間でハンドシェークのための他の信号が他の発光素子と受光素子を介して授受されるように構成されるものであってもよい。また、上述のフレームデータにデータ入力部から入力されたパラレル信号以外の他の信号が含まれるように構成されるものであってもよい。
【0061】
第2通信部12は、5GHz帯と2.4GHz帯の無線伝送が可能な規格IEEE802.11に準拠したWi-Fi用のRF無線通信部(Wi FiはWi-Fi Allianceの登録商標)であり、第2送信部12Tは、ベースバンド信号である送信データからフレームデータを生成して5GHz帯と2.4GHz帯の無線信号に変調するデジタル変調回路と、デジタル変調回路で変調されたフレームデータを出力する送信アンテナを備えて構成され、第2受信部12Rは高周波信号を受信する受信アンテナと、受信アンテナで受信したフレームデータをベースバンド信号に変換するデジタル復調回路を備えている。なお、IEEE802.11に準拠したRF無線通信部の構成は周知であるので詳細な説明は割愛する。
【0062】
図6に示すように、通信制御部15は、第1送信部11Tを介して第1周期T1でフレームデータを繰り返し送信し、第2送信部12Tを介して第2周期T2でフレームデータを繰り返し送信するように構成されている。本実施形態では第1周期T1が20msec.に設定され、第2周期T2が3.3msec.に設定されている。従って、基本的には第1受信部11Rは第1周期T1でデータを受信し、第2受信部12Rは第2周期T2でデータを受信することとなる。
【0063】
各通信制御部15は、接続機器に対して通信状態を報知するための信号として「GO」信号を出力するように構成されている。即ち、相手方との通信が確立した状態で「GO」信号が立ち上げられ、所定のリトライ回数で通信が回復しない場合に「GO」信号が立ち下げられる。
【0064】
なお、以下の図6図9においては、第1無線通信装置と第2無線通信装置との間における半二重通信の一方向の送受信動作を簡略化して表示している。送信側から受信側へのフレームデータの周期中の空白期間には、図示しない他方向への送受信が行われる。
【0065】
第1送信部11Tを介して第1周期T1で繰り返し送信し、第2送信部12Tを介して第1周期T1の半周期以下の相対的に短い時間の第2周期T2で繰り返し送信するように構成されていればよく、第1周期T1と第2周期T2の具体的な値は限定するものではない。
【0066】
そして、通信制御部15に備えた比較部15Dは、第1受信部11Rを介して第1周期T1で受信した受信データと第2受信部12Rを介して第2周期T2で受信した受信データを比較して何れか一方を第1周期T1でデータ出力部14から出力する。
【0067】
図6に示すように、8ビットのパラレル信号IN1~IN8のうちIN1のみが「1」を示す場合に、バイナリデータ00000001Bを表す1フレームのデータが、第1送信部11Tから周期T1で繰返し繰り返し送信され、第2送信部12Tから周期T2で繰り返し送信される。
【0068】
それらを受けて、バイナリデータ00000001Bを表す1フレームのデータが、第1受信部11Rにより周期T1で繰返し繰り返し受信され、第2受信部12Rにより周期T2で繰り返し受信される。
【0069】
少なくとも、8ビットのパラレル信号IN1~IN8は、周期T1の2倍の時間2T1の間は信号値が変化しないように、逆に言うと周期T1は、8ビットのパラレル信号IN1~IN8の最短の信号切替周期の1/2の値以上の値に設定されている。図6の例では、第1受信部11Rにより常時正常に受信されているため、第1受信部11Rで受信されたデータがデータ出力部14から出力される。
【0070】
図4(a)に示した第1判別部15Bと第2判別部15Cにより、第1受信部11Rと第2受信部12Rで受信した受信データの真偽を判別するデータ判別部が構成され、データ判別部15B,15Cで真と判別した最新の受信データが比較部15Dを介してデータ出力部14から出力される。
【0071】
データ判別部15B,15Cでは、第1受信部11Rと第2受信部12Rで受信されたフレームデータデータが其々適正なデータであるか否かが判別される。具体的には、フレームデータのデータ長、ヘッダー、フッター、パリティ、CRCなどの値が適正であるか否かに基づいて適正なデータであるか否かが判別される。これらの判別はベースバンド信号を抽出する前のフレームデータに対して行なわれるため、データ判別部15B,15Cの機能の一部は第1受信部11Rと第2受信部12Rに備わっている場合もある。
【0072】
データ判別部15B,15Cにより受信データの信頼性を保証することができ、仮にデータ判別部15B,15Cで何れか一方の受信データが偽と判定されるような場合でも、比較部15Dでは真と判定された他方の受信データの最新値が受信データとして採用される。比較部15Dにはデータバッファとして機能する記憶部が設けられ、正常判定された所定周期の受信データが格納可能に構成されている。
【0073】
例えば、第1通信部11を介して受信した受信データが偽であっても、当該受信データに対応する第1周期T1に第2通信部12を介して受信した真の受信データを記憶部に記憶することで、次の第1周期T1に記憶部から読み出した真の受信データをデータ出力部から出力することができる。
【0074】
通信制御部15に備えた比較部15Dは、第1受信部11Rを介して受信しデータ判別部15Bで真と判別した受信データを、第2受信部12Rで受信した受信データの真偽にかかわらずデータ出力部14から出力し、第1受信部11Rを介して受信した受信データをデータ判別部15Bで偽と判別すると、第2受信部12Rを介して受信しデータ判別部15Cで真と判別した受信データをデータ出力部14から出力するように構成されている。
【0075】
第1受信部11Rで受信され真と判別された受信データが優先してデータ出力部から出力される。第1受信部11Rで受信された受信データが偽と判別される場合には、第2受信部12Rで受信され真と判別された受信データが補完的に出力される。従って、受信データの欠落が回避できる。
【0076】
さらに、通信制御部15は、第1周期T1で第1受信部11Rを介して真の受信データを得ることができず、かつ、第1周期T1で第2受信部12Rを介して真の受信データを得ることができない場合に、以前に第1受信部11Rを介して受信した真の受信データで直近の受信データをデータ出力部14から出力するように構成されている。
【0077】
第1周期T1で第1受信部11R及び第2受信部12Rの何れでも真の受信データが得られない場合に、第1受信部11Rを介して受信した真の受信データで直近の受信データが補完的に出力される。従って、受信データの欠落が回避できる。
【0078】
通信制御部15は、第1受信部11R及び第2受信部12Rの双方で真の受信データを得ることができない状態が第1周期を単位として所定回数継続すると通信エラーと判定するように構成されている。
【0079】
第1受信部11R及び第2受信部12Rの双方で真の受信データが得られない場合に、直ちに通信エラーにすると、その後に正常復帰してもデータ伝送装置10を組み込んだシステムが停止する虞がある。
【0080】
しかし、真の受信データを得ることができない状態が第1周期T1を単位として所定回数継続するまでに正常復帰すると、データ伝送装置10を組み込んだシステムの停止を招くことがない。そこで、受信データの更新不能な状態が許容できる限度を、第1周期を単位として所定回数に設定するものである。具体的には、第1周期T1を単位として3回から5回の範囲に設定されているが、このような値に限るものではない。
【0081】
図7には、比較例として、第1通信部11のみを備え第2通信部12を備えていない第1及び第2無線通信装置10A,10Bの信号のタイミングチャートが示されている。基本的に第2通信部12を備えた第1及び第2無線通信装置10A,10Bと同様に動作する。
【0082】
時刻t1以前に通信が確立しており、その旨を示す状態信号である「GO」信号が受信側の通信制御部15によりオンにされた状態から、通信が途切れて状態信号をオフする場合に、その直前の正常な受信データを維持して出力(図7では「リトライ」と記されている。)するように構成されている。
【0083】
通信制御部15または第1受信部11Rは、正常受信する度に監視タイマをリスタートさせ、監視タイマがタイムアウトを検出すると受信ができなかったと判断する異常判定処理を実行するように構成されている。つまり、データ判別部15B,15Cで実行されるフレームデータのエラー判定と、上述の異常判定処理の双方で通信エラーを判定するように構成されている。
【0084】
時刻t2で通信エラーが発生しても時刻t2が属する第1周期T1の次の第1周期T1が経過する迄の間は状態信号を維持して、正常受信された直近の受信データを当該次の第1周期T1の間に出力するように構成されている。
【0085】
時刻t3でも通信エラーが継続して発生すると、通信制御部15は状態信号をオフする。その後、時刻t6で正常に受信すると状態信号をオンして通信を継続する。この例では、時刻t2以降に連続して通信エラーが発生すると、通信が途絶えて受信データが途切れることになる。
【0086】
図8には、他の比較例として、第1通信部11及び第2通信部12を備え、送信側の無線通信装置10Aから送信データを第1送信部11T及び第2送信部12Tから並行して送信しつつ、受信側の無線通信装置10Bで第1受信部11Rに連続して通信エラーが発生したときに第2受信部12Rの受信に切り替える例が示されている。連続して通信エラーが発生すると、状態信号はオフ状態になる。
【0087】
この例では、時刻t2、t3で連続して第1受信部11Rで通信エラーが発生する迄の間は、第2受信部12Rが動作しておらず、時刻t4で第2受信部12Rが作動しても、時刻t4の属する第1周期T1で受信データが欠落することとなり、受信の切り替えによるタイムロスが発生する。
【0088】
図9に示すように、本発明によるデータ伝送装置10によれば、送信側の無線通信装置10Aから送信データを第1送信部11T及び第2送信部12Tから並行して送信しつつ、受信側の無線通信装置10Bで第1受信部11R及び第2受信部12Rで並行して受信しているため、時刻t2、t3、t4、t5で連続して第1受信部11Rで通信エラーが発生しても、第2受信部12Rで正常に受信されているため、第1周期T1の間に第1受信部11Rと第2受信部12R何れか一方で正常に受信データが得られると、受信データが欠落することがない。そして、第1周期T1の其々で正常に受信された最新の受信データが、次の第1周期T1で出力される。
【0089】
そして、通信制御部15は、第1通信部11を介して真の受信データを受信できない場合でも、第2通信部12を介して真の受信データを受信できる場合には、第1通信部11を介した相手側との通信の確立中に出力する状態信号を維持するように構成されている。
【0090】
上述したように、光通信を行なう受信側の第1通信部11と送信側の第1通信部11との間で通信が確立すると、受信側の第1通信部11が状態信号をオン状態に切り替え、通信が途絶えると状態信号をオフ状態に切り替える。送信側の第1通信部11は状態信号がオフ状態に切り替わると、通信エラーに伴って処理の中断を招くことになる。
【0091】
しかし、光通信を行なう第1通信部11を介して真の受信データを受信できない場合でも、RF通信を行なう第2通信部12を介して真の受信データを受信できる場合には、受信側の第1通信部11が状態信号を維持するため、通信エラーに伴って処理の中断を招くことがない。
【0092】
図4(b),(c)には、図4(a)に示したデータ伝送装置10の構成態様が示されている。図4(b)は、図4(a)に示した第1無線通信部10Aと第2無線通信部10Bが、第1通信部11を介して光通信され、第2通信部12を介して無線通信される態様が示されている。光通信の通信可能距離は1m程度に設定され、無線通信の通信可能距離は10m程度に設定される。
【0093】
図4(c)は、第1無線通信部10Aと第2無線通信部10Bの其々に備えた第1通信部11が、第2通信部12などを備えた本体に対して装脱自在に構成された態様が示されている。第1通信部11が本体に対して装脱自在に構成されることにより設置の自由度が高くなる。つまり、設置時の第1通信部11同士の光軸の合わせ込みが容易になる。
【0094】
第1通信部11が本体に対して装脱自在な構成では、通信制御部15が第1通信部11での受信データのエラー検出が困難になる場合がある。第1通信部11から入力された受信データが第1周期前のデータに維持されている可能性がある。しかし、そのような場合でも、通信制御部15は、第1周期T1の周期内で第1受信部11R及び第2受信部12Rで受信した各受信データを比較し、各受信データが相違する場合に通信エラーと判定するように構成することができる。なお、このような判定処理は、第1通信部11が本体と一体に構成されている場合でも採用できる。
【0095】
同様に、通信制御部15は、第1受信部11R及び第2受信部12Rで受信した各受信データを過去に遡って比較し、一方のみに受信データの変化があった場合は、変化した受信データをデータ出力部から出力するように構成してもよい。
【0096】
受信データが変化しないのは通信エラーが生じているか、故障しているか何れかであると判定するのである。
【0097】
通信制御部15は、第1受信部11R及び第2受信部12Rで受信した各受信データを過去に遡って比較し、各受信データが第1周期を単位として所定回数継続して相違する場合に故障と判断するように構成してもよい。基本的に、同一の受信データであるべきところ、第1周期を単位として所定回数継続して相違すると、何れかの受信部11R,12Rに故障が発生している蓋然性があるからである。
【0098】
以上説明したように、本発明によるデータ伝送方法は、互いに相対移動自在に設置される第1無線通信装置と第2無線通信装置との間で実行されるデータ伝送方法であって、第1無線通信装置と第2無線通信装置の双方が、第1帯域で無線通信する第1通信ステップと、第1帯域とは異なる第2帯域で無線通信する第2通信ステップと、を実行可能に構成され、第1無線通信装置と第2無線通信装置のうち送信側の無線通信装置は、外部から送信データが入力されると、第1通信ステップと第2通信ステップを並行して実行することにより、相手方に同一の送信データを送信し、第1無線通信装置と第2無線通信装置のうち受信側の無線通信装置は、第1通信ステップと第2通信ステップを並行して実行して、受信データの何れか一方を受信データとして外部に出力するように構成されている。外部とは、第1無線通信装置または第2無線通信装置が接続された機器、例えば上述した製造装置MEや搬送台車OHTをいう。
【0099】
また、送信側の無線通信装置で実行される第1通信ステップは、送信データを第1周期で繰り返し送信し、第2通信ステップは、送信データを第1周期の半周期以下の第2周期で繰り返し送信するように構成され、受信側の無線通信装置は、第1通信ステップを介して第1周期で受信した受信データと第2通信ステップを介して第2周期で受信した受信データの何れか一方を第1周期で外部に出力するように構成されている。
【0100】
そして、第1無線通信装置及び第2無線通信装置は、第1通信ステップと第2通信ステップで受信した受信データの真偽を判別するデータ判別ステップを備え、データ判別ステップで真と判別した最新の受信データを外部に出力するように構成されている。
【0101】
そして、通信制御部は、第1通信ステップで受信し前記データ判別ステップで真と判別した受信データを、第2通信ステップで受信した受信データの真偽にかかわらず外部に出力し、第1通信ステップで受信した受信データをデータ判別ステップで偽と判別すると、第2通信ステップで受信しデータ判別ステップで真と判別した受信データを外部に出力するように構成されている。
【0102】
さらに、第1無線通信装置及び前記第2無線通信装置は、第1通信ステップで、第1周期で真の受信データを得ることができず、かつ、第2通信ステップで、第1周期で真の受信データを得ることができない場合に、以前に第1通信ステップを介して受信した真の受信データで直前の受信データを外部に出力するように構成されている。
【0103】
以下、他の態様を説明する。
図10には、データ伝送装置10を構成する第1無線通信装置10A及び第2無線通信装置10Bの具体的な構成が例示されている。
【0104】
主に通信制御部15として機能するCPU、第2通信部12として機能するRF通信ユニット、第1通信部11として機能する光通信ユニット、シリアル/パラレル変換回路であるI/Oインタフェース、イーサネット変換回路であるPHY、通信設定部16として機能するRS232Cドライバ、通信設定データや受信データ、パラレル入出力データや故障データのような重要データを格納する不揮発性のメモリ素子であるFRAM(登録商標)などを備えている。
【0105】
D-SUBコネクタ21を介して10ビットパラレルデータが入力され、9ビットパラレルデータが出力される。10ビットパラレルデータに送信データが含まれ、9ビットパラレルデータに受信データが含まれる。CPUとI/Oインタフェースとの間でシリアルデータがやり取りされ、D-SUBコネクタ21を介してパラレルデータがやり取りされる。
【0106】
RS232Cの信号がD-SUBコネクタ21を介してRS232Cドライバに入出力される。また、DC24Vの電源ラインが接続される。DC24VはDC/DCコンバータによって電力系の電源となるDC12V、制御系の電源となるDC3.3Vに変換される。
【0107】
イーサネットケーブルがコネクタRJ-45を介してPHYに接続され、PHYを介してCPUとの間でデータがやり取りされる。また、第1通信部11として機能する光通信ユニットはコネクタRJ-11を介してRS485ドライバと接続され、RS485ドライバを介してCPUとの間でデータがやり取りされる。
【0108】
このようなデータ伝送装置10は、上述した動作態様以外に異なる態様で動作可能に構成されている。
図11(a)に示すように、第1通信部11として機能する光通信ユニットを取り外せば、RS-232CまたはEthernet(ETHERNET/イーサネットは、富士ゼロックス社の登録商標)インタフェースを介して通信アドレスや通信チャンネルなどの通信条件を設定することにより、例えば第2通信部12を介したRF通信を利用して8ビットパラレルデータの無線通信や、8ビットパラレルデータとRS-232CやEthernetのシリアル通信とのデュアル通信に用いることができる。
【0109】
図11(b)に示すように、RS-232CまたはEthernetインタフェースを介して通信アドレスや通信チャンネルなどの通信条件を設定することにより、RS-232CまたはEthernet上のデータの無線通信に用いることができる。
【0110】
図12(a)に示すように、第1通信部11として機能する光通信ユニットを用いて8ビットのパラレルデータを送受信しつつ、RS-232CまたはEthernetインタフェースを介して通信アドレスや通信チャンネルなどの通信条件を設定することにより、例えば第2通信部12を介してRS-232CやEthernetのシリアルデータをRF通信できる。つまり、データソースの異なる2系統のデータを其々独立して送受信できる。
【0111】
図12(b)に示すように、8ビットのパラレルデータを第1通信部11として機能する光通信ユニットを介して送受信しながら、第2通信部12を介してタブレット型のコンピュータなどとRF通信することで、タブレット型のコンピュータに第1通信部11で送受信するデータのログをリアルタイムに表示することができる。
【0112】
つまり、データ伝送装置10を図10に示すように構成すれば、多目的に活用することができる。目的に応じて動作させるために、RS-232Cの通信インタフェースを介して通信制御部15を設定すればよい。
【0113】
上述した実施形態は何れも本発明の一態様に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更することができることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、帯域が異なる二系統の通信を行う場合に、データの消失を伴わずに系統を切り替えることができるデータ伝送装置として広く適用できる。
【符号の説明】
【0115】
10:データ伝送装置
10A:第1無線通信装置
10B:第2無線通信装置
11:第1通信部
11T:第1送信部
11R:第1受信部
12:第2通信部
12T:第2送信部
12R:第2受信部
13:データ入力部
14:データ出力部
15:通信制御部
16:通信設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12