(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】通信制御装置
(51)【国際特許分類】
H04L 12/66 20060101AFI20241101BHJP
H04L 12/46 20060101ALI20241101BHJP
H04L 69/08 20220101ALI20241101BHJP
【FI】
H04L12/66
H04L12/46 100C
H04L69/08
(21)【出願番号】P 2020184313
(22)【出願日】2020-11-04
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】399112333
【氏名又は名称】神田通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】神藤 善行
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220610(JP,A)
【文献】特開2006-309642(JP,A)
【文献】特開2019-204224(JP,A)
【文献】特開2017-111614(JP,A)
【文献】特開2015-115832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00-12/66
H04L 69/08
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信元デバイスから受信したデータを、送信先デバイスの通信プロトコルに対応したデータに変換して上記送信先デバイスに送信する通信制御装置であって、
複数種類の通信プロトコルのうち上記送信元デバイスの通信プロトコルである送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータであって、
当該データの宛先を特定するための情報として上記送信元通信プロトコルに対応したポート番号を含むデータを受信するデータ受信部と、
上記データ受信部により受信されたデータに含まれる上記ポート番号に基づいて複数のテーブルセットの中から特定されるテーブルセットを用いて、上記データ受信部により受信された上記送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、上記送信先デバイスの通信プロトコルである送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換するとともに、上記送信先デバイスの宛先情報を生成するデータ変換部と、
上記データ変換部により変換された上記送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを上記宛先情報に基づいて上記送信先デバイスに送信するデータ送信部とを備えた
ことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
上記テーブルセットは、
上記データ受信部により受信された上記送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、通信プロトコルに依存しない共通フォーマットのデータに変換するための第1のテーブルと、
上記共通フォーマットに変換されたデータに基づいて、制御対象および制御内容の情報を含む共通フォーマットの制御データを生成するための第2のテーブルと、
上記共通フォーマットの制御データを上記送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換するとともに、上記制御対象である上記送信先デバイスの宛先情報を生成するための第3のテーブルとを含み、
上記データ変換部は、
上記第1のテーブルを用いてデータ変換を行う第1の変換処理部と、
上記第2のテーブルを用いてデータ変換を行う第2の変換処理部と、
上記第3のテーブルを用いてデータ変換を行う第3の変換処理部とを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置に関し、特に、通信プロトコルが異なるデバイス間で通信を行うことを可能にするための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の発達により、パソコンやサーバ等のIT関連機器だけでなく、各種のデジタル情報家電や産業用電子機器、センサ、照明、アクチュエータなどの様々な機器(IoTデバイスとも呼ばれる)がインターネットに接続され、これらの機器間で通信を行うことによって所定の処理を行うようにしたシステムが提供されている。例えば、人の動きをセンサで検知して照明を点灯するようにしたり、工場内の機械に不具合が生じていることをセンサで検知して管理者端末に報知するようにしたりすることが可能である。
【0003】
各種のIoTデバイス間をインターネット経由で接続しようとする場合、それぞれのIoTデバイスで採用されている通信方式(通信プロトコル)の違いがネックとなって接続できないことがある。これに対し、従来、通信プロトコルの違いを吸収してデータ通信を行うことを可能にしたシステムが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
特許文献1に記載の中継装置は、受信データからデータの宛先情報、送信元情報、データタイプ、プロトコル種別などを解析して、これらの情報に基づいて、共通に処理可能な所定の形式の内部データに変換した後、複数種類の通信プロトコルの何れかに対応したデータに変換して送信する。特許文献1には、通信プロトコルに応じてプロトコル終端部およびプロトコル変換部にそれぞれ割り当てられたIPアドレスとポート番号との組(ネットワークアドレス)から成るソケット関連付けIDの情報をテーブル等で定義しておき、このテーブル情報を参照することにより、通信プロトコルに対応するソケットを識別することが開示されている。これにより、ソケット関連付けIDで識別される受信側ソケットおよび送信側ソケットが中継装置内において適切に接続され、受信処理部と送信処理部との間に中継処理部を介した論理的な通信路が適切に確立される。
【0005】
特許文献2には、送信側通信デバイスと通信ネットワークとの間および受信側通信デバイスと通信ネットワークとの間にそれぞれ通信ネットワークアクセスデバイス(中継デバイス)を接続し、中継デバイスに接続された電気通信デバイスのプロトコルに適するフォーマットにデータを変換して通信を行うことが開示されている。特許文献2に記載の中継デバイスは、複数のプロトコルに対応した複数のポートを有し、当該複数のポートの何れかに電気通信デバイスを接続可能に構成されている。中継デバイスは、電気通信デバイスが接続されたポートに対応したプロトコルと、通信ネットワークに対応するプロトコル(共通に処理可能な形式)との間でデータのフォーマットを変換するためのトランスレータを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-115832号公報
【文献】特表2009-537888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、中継装置の受信処理部で受信されたデータに含まれる宛先情報(IPアドレス)により示される送信先デバイスに対して、プロトコル変換後のデータが送信される。このため、データの送信元デバイスにおいて、プロトコル変換したデータを送信する相手である送信先デバイスの宛先情報を指定する必要がある。このため、送信元デバイスで生成されるデータの送信先を用途に応じて変えようとする場合は、宛先情報の指定に関する設定登録を変更する操作を送信元デバイスに対して行わなければならない。送信元デバイスが複数存在する場合は、それぞれに対して設定登録の変更操作が必要であり、多くの時間と労力を要するという問題があった。
【0008】
なお、特許文献2には、送信先デバイスの宛先情報をどのように指定するかの記載がなく、その指定方法は不明である。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、データの送信元デバイスにおいて送信先デバイスの宛先情報を指定しなくても、通信プロトコルが異なるデバイス間でデータ通信を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の通信制御装置では、複数種類の通信プロトコルの中の何れかである送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータであって、当該データの宛先を特定するための情報として送信元通信プロトコルに対応したポート番号を含むデータを受信すると、当該受信されたデータに含まれるポート番号に基づいて複数のテーブルセットの中から特定されるテーブルセットを用いて、受信された送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、送信先デバイスの送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換するとともに、送信先デバイスの宛先情報を生成し、変換した送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、生成した宛先情報に基づいて送信先デバイスに送信するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成した本発明によれば、送信元デバイスから通信制御装置にて受信した送信元デバイスの送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータが、送信先デバイスの送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換されて通信制御装置から送信先デバイスに送信されるので、通信プロトコルが異なるデバイス間でデータ通信を行うことができる。このデータ通信の際、送信先デバイスの宛先情報が本発明の通信制御装置により生成されるので、送信元デバイスにおいて送信先デバイスの宛先情報を指定する必要がない。これにより、本発明によれば、データの送信元デバイスにおいて送信先デバイスの宛先情報を指定しなくても、通信プロトコルが異なるデバイス間でデータ通信を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態による通信制御装置を用いた通信システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態による通信制御装置の概略的な機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態による第1のゲートウェイ部の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4A】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【
図4B】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【
図4C】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【
図4D】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【
図5A】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【
図5B】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【
図5C】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【
図5D】本実施形態によるデータ変換部の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による通信制御装置100を用いた通信システム1の全体構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の通信システム1は、本実施形態の通信制御装置100、複数種類の通信プロトコルに対応した複数の送信元デバイス201,202,203,・・・、および、複数種類の通信プロトコルに対応した複数の送信先デバイス301,302,303,・・・を備えて構成される。
【0014】
複数種類の通信プロトコルは任意である。例えば、BACnet(Building Automation and Control Networking protocol)、MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)、Modbus、HTTP(Hypertext Transfer Protocol)、TCP(Transmission Control Protocol)、UDP(User Datagram Protocol)、FTP(File Transfer Protocol)、SCP(Secure Copy Protocol)、エコーネットライト(登録商標)、CWMP(CPE WAN Management Protocol)などである。なお、ここに挙げた通信プロトコルは一例であり、これに限定されるものではない。
【0015】
BACnetは、インテリジェントビル用ネットワークのための通信プロトコルであり、例えば空調、照明、アクセス制御、火気検出などの総合的制御に使われる。MQTTは、メッセージ指向ミドルウェアのアプリケーション層で使用される、TCP/IPによるPub/Sub型データ配信モデルの通信プロトコルである。Modbusは、Modicon社が同社のプログラマブルロジックコントローラ向けに策定したシリアル通信プロトコルであり、産業用電子機器を接続する一般的な通信プロトコルである。SCPは、セキュリティの高いファイル転送を行うコマンドの1つであるscp(Secure Copy)において使用される通信プロトコルである。エコーネットライトは、エコーネットコンソーシアムが策定した通信プロトコルであり、スマートハウス向けの制御プロトコルおよびセンサネットワークプロトコルである。CWMPは、デジタル家電等の宅内機器を遠隔管理する標準的な通信プロトコルである。
【0016】
図1では、送信元デバイス201,202,203および送信先デバイス301,302,303をそれぞれ3つずつ示しているが、この数には限定されない。送信元デバイス201,202,203と送信先デバイス301,302,303とが同数である必要もない。例えば、送信元デバイス201,202,203および/または送信先デバイス301,302,303が1つのみであってもよい。
【0017】
図1の例において、送信元デバイス201,202,203は、インターネットまたは携帯電話網などの通信ネットワーク500を介して、本実施形態の通信制御装置100の一方のインタフェースに接続される。また、送信先デバイス301,302,303は、通信ネットワーク500を介して、通信制御装置100の他方のインタフェースに接続される。
【0018】
本実施形態の通信制御装置100は、送信元デバイス201,202,203と送信先デバイス301,302,303との間のデータ通信を中継する。このとき送信元デバイス201,202,203は何れも、通信制御装置100を宛先としてデータを送信する。通信制御装置100は、送信先デバイス301,302,303の宛先情報を内部で生成し、生成した宛先情報を用いてデータを送信先デバイス301,302,303に送信する。
【0019】
このデータ中継の際に、通信制御装置100は、送信元デバイス201,202,203から受信したデータを、送信先デバイス301,302,303の通信プロトコルに対応したデータに変換して送信先デバイス301,302,303に送信する。また、通信制御装置100は、送信元デバイス201,202,203から受信したデータをもとに、送信先デバイス301,302,303の動作を制御するための制御データを生成し、この制御データを送信先デバイス301,302,303に送信する。
【0020】
図2は、通信制御装置100の概略的な機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の通信制御装置100は、機能構成として、データ受信部10、データ変換部20およびデータ送信部30を備えている。データ変換部20は、第1のゲートウェイ部21、第2のゲートウェイ部22、第3のゲートウェイ部23、・・・といった複数のゲートウェイ部を備えている。ここでは3つのゲートウェイ部21,22,23を示しているが、これは図示の便宜上によるものであり、この数に限定される趣旨ではない。
【0021】
これらの機能ブロック10,20,30は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10,20,30は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0022】
データ受信部10は、送信元デバイス201,202,203の何れかより、通信ネットワーク500を介してデータを受信する。データ受信部10が受信するデータは、送信元デバイス201,202,203に対応した複数種類の通信プロトコルのうち、データを送信した送信元デバイスの通信プロトコル(以下、これを便宜的に「送信元通信プロトコル」という)に対応したフォーマットのデータである。データ受信部10が受信するデータは、送信元通信プロトコルに対応したポート番号を含んでいる。
【0023】
本実施形態において、送信元デバイス201,202,203と通信制御装置100との間は、IPアドレスとポート番号とをセットで用いた通信を行う。例えば、ウェブソケットの仕組みを利用した通信を行う。ここで、IPアドレスは、通信制御装置100を宛先とする宛先情報である。送信先デバイス301,302,303を宛先とする宛先情報ではないことに注意されたい。ポート番号は、データ変換部20が備える複数のゲートウェイ部21,22,23のどれにデータを届けるかを特定するためのものであり、送信元デバイス201,202,203の通信プロトコルに対応した値となっている。
【0024】
データ変換部20は、データ受信部10により受信されたデータに含まれるポート番号に基づいて複数のテーブルセットの中から特定されるテーブルセットを用いて、データ受信部10により受信された送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、送信先デバイスの通信プロトコル(以下、これを便宜的に「送信先通信プロトコル」という)に対応したフォーマットのデータに変換するとともに、送信先デバイス301,302,303の宛先情報を生成する。
【0025】
すなわち、データ変換部20が備える複数のゲートウェイ部21,22,23は、それぞれが固有のテーブルセット(複数のテーブル)を備えている。データ変換部20は、複数のゲートウェイ部21,22,23の中から、データ受信部10により受信されたデータに含まれるポート番号に対応するものを選定して、データ受信部10により受信されたデータを供給して処理を実行させる。選定されたゲートウェイ部21,22,23は、内部に備えるテーブルセットを用いて、送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換するとともに、送信先デバイス301,302,303の宛先情報を生成する。
【0026】
以上のように、ポート番号は送信元通信プロトコルに対応した値であり、複数のゲートウェイ部21,22,23がそのポート番号のそれぞれに対応して設けられている。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、ポート番号を送信元通信プロトコルと送信先通信プロトコルとの組み合わせに対応した値とし、複数のゲートウェイ部21,22,23がそのポート番号に対応して設けられる構成としてもよい。この場合、複数のゲートウェイ部21,22,23は、送信元通信プロトコルと送信先通信プロトコルとの組み合わせとして実際に用いるその組み合わせの数だけ設けられることになる。
【0027】
データ送信部30は、データ変換部20により変換された送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、データ変換部20により生成された宛先情報に基づいて送信先デバイス301,302,303に送信する。
【0028】
図3は、第1のゲートウェイ部21の機能構成例を示すブロック図である。なお、第2のゲートウェイ部22および第3のゲートウェイ部23の機能構成もこれと同様である。ただし、以下に説明するテーブルセットの内容はゲートウェイ部21,22,23ごとに異なる。
【0029】
図3に示すように、第1のゲートウェイ部21(第2のゲートウェイ部22および第3のゲートウェイ部23も同様)は、第1のテーブル31、第2のテーブル32および第3のテーブル33と、第1の変換処理部41、第2の変換処理部42、第3の変換処理部43および第4の変換処理部44とを備えている。以下に述べるように、第1のテーブル31および第3のテーブル33は、それぞれ通信プロトコルに応じて異なる構成を有している。第2のテーブル32は、通信プロトコルに依存しない共通フォーマットに対応した構成を有している。
【0030】
第1のテーブル31は、データ受信部10により受信された送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータ(受信データ)を、通信プロトコルに依存しない共通フォーマットのデータに変換するためのテーブルである。第1のテーブル31は、複数のデータ項目を有しており、そのデータ項目は通信プロトコルに応じて異なっている。複数のデータ項目のうち、いくつかは所定の値があらかじめ記録されており、他のいくつかは初期状態でNull値となっており、ここに受信データに含まれる値または受信データの内容に応じた値が記録される。
【0031】
第1の変換処理部41は、第1のテーブル31を用いてデータ変換を行う。すなわち、第1の変換処理部41は、受信データの内容を解析し、受信データに含まれるいくつかの値を、第1のテーブル31内のそれぞれに対応するデータ項目の値として記録する(Null値を書き換える)。また、第1の変換処理部41は、解析した受信データの内容に応じて特定した値を第1のテーブル31内の対応するデータ項目の値として記録する。これにより、送信元通信プロトコルに対応したフォーマットの受信データを、通信プロトコルに依存しない共通フォーマットのデータ(以下、第1変換データという)に変換する。
【0032】
第2のテーブル32は、共通フォーマットに変換された第1変換データに基づいて、制御対象および制御内容の情報を含む共通フォーマットの制御データを生成するためのテーブルである。第2のテーブル32は、複数のデータ項目を有しており、その中の1つが制御対象(送信先デバイス301,302,303の何れか)を示すデータ項目であり、別の1つが制御内容(送信先デバイス301,302,303をどのように制御するか)を示すデータ項目である。複数のデータ項目のいくつかは所定の値があらかじめ記録されており、他のいくつかは初期状態でNull値となっており、ここに第1変換データに含まれる値または第1変換データの内容に応じた値が記録される。
【0033】
第2の変換処理部42は、第2のテーブル32を用いてデータ変換を行う。すなわち、第2の変換処理部42は、第1変換データの内容を解析し、第1変換データに含まれるいくつかの値を、第2のテーブル32内のそれぞれに対応するデータ項目の値として記録する。また、第2の変換処理部42は、解析した第1変換データの内容に応じて特定した値を第2のテーブル32内の対応するデータ項目の値として記録する。これにより、第1の変換処理部41により生成された第1変換データから、制御対象および制御内容の情報を含む共通フォーマットの制御データ(以下、これを第2変換データということもある)を生成する。
【0034】
第3のテーブル33は、共通フォーマットの制御データ(第2変換データ)を送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換するとともに、制御対象である送信先デバイス301,302,303の宛先情報を生成するためのテーブルである。第3のテーブル33は、複数のデータ項目を有しており、そのデータ項目は通信プロトコルに応じて異なっている。複数のデータ項目のいくつかは所定の値があらかじめ記録されており、他のいくつかは初期状態でNull値となっており、ここに制御データに含まれる値または制御データの内容に応じた値が記録される。また、複数のデータ項目の1つまたは複数の組が、送信先デバイス301,302,303の宛先情報を示すデータ項目となっている。
【0035】
第3の変換処理部43は、第3のテーブル33を用いてデータ変換を行う。すなわち、第3の変換処理部43は、制御データの内容を解析し、制御データに含まれるいくつかの値を、第3のテーブル33内のそれぞれに対応するデータ項目の値として記録する。また、第3の変換処理部43は、解析した制御データの内容に応じて特定した値を第3のテーブル33内の対応するデータ項目の値として記録する。これにより、通信プロトコルに依存しない共通フォーマットの制御データを、送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータ(以下、第3変換データという)に変換するとともに、送信先デバイス301,302,303の宛先情報を生成する。
【0036】
上述したように、第1のテーブル31および第3のテーブル33は、それぞれ通信プロトコルに応じて異なるデータ項目を有する構成となっている。本実施形態では、通信プロトコルに応じたデータ項目を有するテーブルを、第1のテーブル31として用いることも第3のテーブル33として用いることもできるようにしている。例えば、BACnetに対応したデータ項目を有するテーブルを、BACnetに対応したフォーマットの受信データを共通フォーマットの第1変換データに変換する際の第1のテーブル31として用いることが可能であり、また、共通フォーマットの制御データをBACnetに対応したフォーマットの第3変換データに変換する際の第3のテーブル33として用いることも可能である。
【0037】
ここで、特定の通信プロトコルに対応したテーブルが有する複数のデータ項目のうち、第1のテーブル31として用いる場合に使用するデータ項目と、第3のテーブル33として用いる場合に使用するデータ項目とが必ずしも一致するとは限らない。言い換えると、特定の通信プロトコルに対応したテーブルを第1のテーブル31として用いる場合に、当該第1のテーブル31内に含まれる全てのデータ項目をデータ変換のために使用するとは限らない。同様に、特定の通信プロトコルに対応したテーブルを第3のテーブル33として用いる場合に、当該第3のテーブル33内に含まれる全てのデータ項目をデータ変換のために使用するとは限らない。
【0038】
第4の変換処理部44は、第3の変換処理部43により第3のテーブル33上で生成された第3変換データを用いて、送信先通信プロトコルに対応したフォーマットの送信データを生成する。すなわち、第4の変換処理部44は、第3のテーブル33に含まれる複数のデータ項目のうち、実際に送信データとして使用するデータ項目の値を抽出して、送信先通信プロトコルに対応する実際のフォーマットに成形した送信データを生成する。そして、生成した送信データをデータ送信部30に供給する。
【0039】
図4A~
図4Dおよび
図5A~
図5Dは、データ変換部20の具体的な処理例を示す図である。
図4A~
図4Dは、一例として、特定の場所に設置した人感センサ(BACnet/IP対応の送信元デバイス)から人の検知データを通信制御装置100が受信し、通信制御装置100がこの受信データをもとに、特定の場所に設置した照明(MQTT対応の送信先デバイス)を点灯する制御データを生成して、照明に送信する場合の処理例を示している。
【0040】
図4Aは、第1の変換処理部41の処理例を示す図であり、(a)が受信データを示し、(b)が第1のテーブル31を示している。
図4A(a)に示す受信データのうち、データ項目「sourDevId」が送信元デバイスであるセンサのID、データ項目「value」が人を検知したことを示す値“1”を示しており、これらの値が
図4A(b)に示す第1のテーブル31のデータ項目「送信元DeviceId」、「値」にそれぞれ記録される。
【0041】
図4Bは、第2の変換処理部42の処理例を示す図であり、(a)が第1のテーブル31(受信データ内の値が記録された第1変換データ)を示し、(b)が第2のテーブル32を示している。
図4B(a)に示す第1変換データのうち、受信データ内の値が記録されたデータ項目「送信元DeviceId」、「値」の値が
図4B(b)に示す第2のテーブル32のデータ項目「受信プロトコルid」、「受信値」にそれぞれ記録される。
【0042】
図4B(b)に示す第2のテーブル32において、データ項目「送信プロトコル種別」には、送信先通信プロトコルの種類を示す情報があらかじめ記憶されている。
図4の例の場合、送信先通信プロトコルがMQTTであることを示す値がデータ項目「送信プロトコル種別」にあらかじめ記録されている。データ項目「送信プロトコルid」には、制御対象を示す値があらかじめ記録されている。
図4の例の場合、特定の場所に設置した照明を示す値がデータ項目「送信プロトコルid」にあらかじめ記録されている。データ項目「送信値」には、制御内容を示す値があらかじめ記録されている。
図4の例の場合、照明を点灯させるという制御内容を示す値がデータ項目「送信値」にあらかじめ記録されている。
【0043】
図4Cは、第3の変換処理部43の処理例を示す図であり、(a)が第2のテーブル32(制御対象および制御内容の情報を含む制御データ(第2変換データ)を示し、(b)が第3のテーブル33を示している。
図4C(a)に示す制御データのうち、データ項目「送信プロトコルid」、「送信値」に記録されている制御対象および制御内容の値が
図4C(b)に示す第3のテーブル33のデータ項目「id」、「値」にそれぞれ記録される。また、制御対象を示す値がデータ項目「送信先トピック」にも記録される。
図4C(b)に示す第3のテーブル33において、データ項目「送信先ホスト」および「ポート番号」には、送信先デバイスの宛先情報があらかじめ記憶されている。
【0044】
図4Dは、第4の変換処理部44の処理例を示す図であり、(a)が第3のテーブル33(制御データから変換された第3変換データ)を示し、(b)が送信データを示している。
図4D(a)に示す第3変換データのうち、データ項目「送信先トピック」に記録されている制御対象の値が
図4D(b)に示す送信データのデータ項目「topic」に記録され、データ項目「値」に記録されている制御内容の値が
図4D(b)に示す送信データのデータ項目「value」に記録される。
【0045】
図5A~
図5Dは、別例として、AIスピーカ(HTTP対応の送信元デバイス)から制御内容に関する音声情報を通信制御装置100が受信し、通信制御装置100がこの受信データをもとに、特定の場所に設置した空調(BACnet対応の送信先デバイス)の温度を所定値に設定する制御データを生成して、空調に送信する場合の処理例を示している。
【0046】
図5Aは、第1の変換処理部41の処理例を示す図であり、(a)が受信データを示し、(b)が第1のテーブル31を示している。
図5A(a)に示す受信データのうち、データ項目「Room」には送信元デバイスであるAIスピーカが設置されている部屋を示す値が記録され、データ項目「Direction」には部屋の中のAIスピーカが設置されている方向(同じ部屋の中にAIスピーカが複数存在する場合にどれであるかを識別するための情報として使われる)を示す値が記録されている。また、データ項目「Device」には送信先デバイスを示す値が記録され、データ項目「Request」には送信先デバイスに対する制御内容を示す値が記録されている。これらの値が
図5A(b)に示す第2のテーブル32のデータ項目「部屋Key」、「部屋方向Key」、「デバイスKey」、「リクエストKey」にそれぞれ記録される。
【0047】
また、
図5A(b)に示す第1のテーブル31において、データ項目「送信種別id」には、制御内容の情報として、「リクエストKey」に記録された値を送信するか、第1のテーブル31のデータ項目「送信値」にあらかじめ記録されている値を送信するかを識別する値が記録される。例えば、前者の場合は“1”、後者の場合は“2”の値が記録される。
図5の例のように、空調の温度を所定値に設定する制御を行う場合は、データ項目「リクエストKey」に所定値が記録され、データ項目「送信種別id」には“1”の値が記録される。
【0048】
図5Bは、第2の変換処理部42の処理例を示す図であり、(a)が第1のテーブル31(受信データ内の値が記録された第1変換データ)を示し、(b)が第2のテーブル32を示している。
図5B(a)に示す第1変換データのうち、「id」にあらかじめ記録されている値が
図5B(b)に示す第2のテーブル32のデータ項目「受信プロトコルid」に記録され、データ項目「リクエストKey」の値が
図5B(b)に示す第2のテーブル32のデータ項目「送信値」に記録される。
【0049】
図5B(b)に示す第2のテーブル32において、データ項目「送信プロトコル種別」には、送信先通信プロトコルの種類を示す情報があらかじめ記憶されている。
図5の例の場合、送信先通信プロトコルがBACnetであることを示す値がデータ項目「送信プロトコル種別」にあらかじめ記録されている。データ項目「送信プロトコルid」には、制御対象を示す値があらかじめ記録されている。
図5の例の場合、特定の場所に設置した空調を示す値がデータ項目「送信プロトコルid」にあらかじめ記録されている。
【0050】
図5Cは、第3の変換処理部43の処理例を示す図であり、(a)が第2のテーブル32(制御対象および制御内容の情報を含む制御データ(第2変換データ)を示し、(b)が第3のテーブル33を示している。
図5C(a)に示す制御データのうち、データ項目「送信プロトコルid」、「送信値」に記録されている制御対象および制御内容の値が
図5C(b)に示す第3のテーブル33のデータ項目「id」、「値」にそれぞれ記録される。また、制御対象を示す値がデータ項目「WritePropertyオブジェクト種別」および「WritePropertyインスタンス番号」にも記録される。
図5C(b)に示す第3のテーブル33において、データ項目「送信元DeviceId」、「送信先DeviceId」には、送信元デバイスおよび送信先デバイスの宛先情報があらかじめ記録されている。
【0051】
図5Dは、第4の変換処理部44の処理例を示す図であり、(a)が第3のテーブル33(制御データから変換された第3変換データ)を示し、(b)が送信データを示している。
図5D(a)に示す第3変換データのうち、データ項目「WritePropertyオブジェクト種別」および「WritePropertyインスタンス番号」に記録されている制御対象の値が
図5D(b)に示す送信データのデータ項目「objectType」および「instanceNo」に記録され、データ項目「値」に記録されている制御内容の値が
図5D(b)に示す送信データのデータ項目「value」に記録される。また、データ項目「送信元DeviceId」、「送信先DeviceId」に記録されている送信元デバイスの宛先情報および送信先デバイスの宛先情報が
図5D(b)に示す送信データのデータ項目「sourDevId」、「destDevId」にそれぞれ記録される。
【0052】
以上詳しく説明したように、本実施形態の通信制御装置100では、複数種類の通信プロトコルの中の何れかである送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータであって、送信元通信プロトコルに対応したポート番号を含むデータを送信元デバイス201,202,203から受信すると、受信データに含まれるポート番号に基づいて複数のテーブルセットの中から特定されるテーブルセットを用いて、受信された送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、送信先デバイス301,302,303の送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換するとともに、送信先デバイス301,302,303の宛先情報を生成する。そして、変換した送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータを、生成した宛先情報に基づいて送信先デバイス301,302,303に送信するようにしている。
【0053】
このように構成した本実施形態によれば、送信元デバイス201,202,203から通信制御装置100にて受信した送信元通信プロトコルに対応したフォーマットのデータが、送信先通信プロトコルに対応したフォーマットのデータに変換されて通信制御装置100から送信先デバイス301,302,303に送信されるので、通信プロトコルが異なるデバイス間でデータ通信を行うことができる。このデータ通信の際、送信先デバイス301,302,303の宛先情報が通信制御装置100により生成されるので、送信元デバイス201,202,203において送信先デバイス301,302,303の宛先情報を指定する必要がない。これにより、本実施形態によれば、送信元デバイス201,202,203において送信先デバイス301,302,303の宛先情報を指定しなくても、通信プロトコルが異なるデバイス間でデータ通信を行うことが可能である。
【0054】
このため、送信元デバイス201,202,203では、構築する通信システム1の用途に応じて送信先デバイス301,302,303を変えるときでも、宛先情報の指定は通信制御装置100のままとして変更する必要がないというメリットを有する。特に、特定の通信プロトコルに対応した複数の送信元デバイスと、別の特定の通信プロトコルに対応した1つの送信先デバイスとの間でデータ通信を行うような通信システムにおいて、送信先デバイスを変えるときでも、複数の送信元デバイスでは宛先情報の指定を通信制御装置100のままとして変更する必要がなく、通信制御装置100にて生成する宛先情報を変えるだけで済むので、システム構築を簡便に行うことができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、データ変換部20が複数のゲートウェイ部21,22,23を備え、それぞれのゲートウェイ部21,22,23が第1~第3のテーブル31~33を備える構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、データ変換部20はゲートウェイ部を1つのみ備え、当該ゲートウェイ部が使用するテーブルセットを送信元通信プロトコルに応じて(あるいは、送信元通信プロトコルと送信先通信プロトコルとの組み合わせに応じて)選定する構成としてもよい。
【0056】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 データ受信部
20 データ変換部
21~23 第1~第3のゲートウェイ部
30 データ送信部
31~33 第1~第3のテーブル
41~44 第1~第4の変換処理部
100 通信制御装置