(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】遊具及び遊具の設置構造
(51)【国際特許分類】
A63G 21/18 20060101AFI20241101BHJP
E04H 3/10 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
A63G21/18
E04H3/10 Z
(21)【出願番号】P 2020190784
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】315010938
【氏名又は名称】クレオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】平岡 正人
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-105677(JP,U)
【文献】特開2002-364074(JP,A)
【文献】実開昭49-026682(JP,U)
【文献】特開2005-131207(JP,A)
【文献】特開2011-103972(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107982923(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 1/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊戯要素、及び、該遊戯要素を設置面に支持させる支持構造体を備え
、貯水層を備えていない遊具であり、
水を放出する放水要素が前記支持構造体に取り付けられていると共に、
前記放水要素に水を供給するためのポンプ及び配管が、前記支持構造体の内部のみに配設されている
ものであり、
前記支持構造体は、デッキ、該デッキを支持する複数の縦パイプ、及び、該縦パイプ同士を連結している横パイプを備え、
前記デッキの下方空間は、前記縦パイプによって両側を支持された複数の側面部で囲まれており、前記デッキの下方空間に前記ポンプが配されていると共に、複数の前記側面部のうちの一つに取水口が形成されており、前記ポンプは前記取水口を介して外部から水を吸引し、吸引した水を前記放水要素に送るものであり、
前記放水要素として、前記デッキより高く延びた前記縦パイプの上端に取り付けられたノズルを備え、前記ポンプから送られた水は、前記縦パイプ及び前記横パイプの少なくとも何れかを介して前記ノズルに供給される
ことを特徴とする遊具。
【請求項2】
前記支持構造体は
、設置面に対する前記縦パイプの下端の高さを前記縦パイプごとに調整可能な設置レベル調整機構を備えており、
該設置レベル調整機構は、前記縦パイプの下端に固着された支柱側フランジと、設置面に載置される設置面側フランジと、該設置面側フランジに対する前記支柱側フランジの高さを互いの螺合により変化させることができる雄ネジ部材及び雌ネジ部材とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の遊具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の遊具が設置面に設置されている遊具の設置構造であり、
前記設置面には、前記放水要素に水を供給するための配管が埋設されていない
ことを特徴とする遊具の設置構造。
【請求項4】
前記支持構造体は、前記設置面に埋設されることなく、前記設置面に載置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の遊具の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊園地やイベント会場などに設置される遊具、及び、該遊具の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
滑り台などの遊戯要素を有する遊具の中には、水を大量に使用するタイプがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の遊具は、水を放出するための種々のノズル、滝のように水を連続的に流す水溜め、給水を受け満杯になったら傾動して水を一度に落下させるバケツなどを備えている。
【0003】
このように水を大量に使用する遊具の場合、特許文献1の遊具と同様に、遊具まで水を送るためのポンプや、ポンプによって送られる水を遊具まで導く配管を、遊具の外部に備えている。
【0004】
一方、遊具には、移動遊園地やイベント会場で使用される遊具など、設置場所を移動させて使用されるものがある。ところが、このように置場所を移動させて使用される遊具が、遊具まで水を送るためのポンプや水を遊具まで導く配管を外部に備えている場合、遊具を移動するごとに、配管と遊具との接続、配管同士の接続、配管とポンプとの接続を解除し、移送した後でも再び接続する必要があり、非常に手間がかかるという問題があった。
【0005】
また、特許文献1の遊具では、水を送るための配管が設置面に施工された基礎部に埋設されている。このように、配管が設置面に埋設されている場合、配管の接続を解除して移送することは非常に困難である。そのため、水を大量に使用する遊具は、設置場所を移動させて使用することが難しいのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、水を大量に使用する遊具でありながら、設置場所を移動させることが容易である遊具、及び、該遊具の設置構造の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる遊具は、
「遊戯要素、及び、該遊戯要素を設置面に支持させる支持構造体を備え、貯水層を備えていない遊具であり、
水を放出する放水要素が前記支持構造体に取り付けられていると共に、
前記放水要素に水を供給するためのポンプ及び配管が、前記支持構造体の内部のみに配設されているものであり、
前記支持構造体は、デッキ、該デッキを支持する複数の縦パイプ、及び、該縦パイプ同士を連結している横パイプを備え、
前記デッキの下方空間は、前記縦パイプによって両側を支持された複数の側面部で囲まれており、前記デッキの下方空間に前記ポンプが配されていると共に、複数の前記側面部のうちの一つに取水口が形成されており、前記ポンプは前記取水口を介して外部から水を吸引し、吸引した水を前記放水要素に送るものであり、
前記放水要素として、前記デッキより高く延びた前記縦パイプの上端に取り付けられたノズルを備え、前記ポンプから送られた水は、前記縦パイプ及び前記横パイプの少なくとも何れかを介して前記ノズルに供給される」ものである。
【0009】
本構成の遊具は、仮設のプールや既設のプールの内部に設置して使用することができる。遊具の使用に際して、最初だけ何らかの手段によりプールに水を供給しておけば、遊具の支持構造体の内部に備えられたポンプによってプールから水が吸引され、支持構造体の内部に配設された配管を通して放水要素まで送水され、放水要素から放出された水はプールに戻り、循環して使用される。
【0010】
本構成の遊具は、放水要素に水を供給するためのポンプ及び配管が支持構造体の内部のみに配設されており、支持構造体の外部にポンプや配管を有していない。そのため、遊具の設置場所を移動させる場合に、従来の遊具とは異なり、配管と遊具との接続、配管同士の接続、配管とポンプとの接続を解除する必要がなく、容易に移動させることができる。そして、遊具を移動させた後も、配管と遊具との接続、配管同士の接続、配管とポンプとの接続をする必要なく、すぐに使用を開始することができる。
【0011】
本発明にかかる遊具は、上記構成に加え、
「前記支持構造体は、設置面に対する前記縦パイプの下端の高さを前記縦パイプごとに調整可能な設置レベル調整機構を備えており、
該設置レベル調整機構は、前記縦パイプの下端に固着された支柱側フランジと、設置面に載置される設置面側フランジと、該設置面側フランジに対する前記支柱側フランジの高さを互いの螺合により変化させることができる雄ネジ部材及び雌ネジ部材とを備える」ものである。
【0012】
従来の遊具は、遊戯要素を支持する支持構造体の支柱などが、設置面に施工された基礎部に埋設固定されているのが一般的である。これに対し、本構成の遊具では、支持構造体を構成する縦パイプが、設置面側フランジを介して設置面に「載置」される。つまり、本構成の遊具は、設置面に埋設固定することなく、設置面に「載置」した状態で使用される構成である。そのため、遊具の設置場所を移動させる場合に、基礎部を破壊して遊具を外す大掛かりな工事が必要なく、遊具を移動させた後も基礎工事の必要がないため、遊具の設置場所を容易に移動させることができる。
【0013】
加えて、設置面に対する縦パイプの下端の高さを、縦パイプごとに調整することができる設置レベル調整機構を備えているため、設置面が水平でなかったとしても、デッキが水平となるように遊具を設置することができる。
【0014】
次に、本発明にかかる遊具の設置構造は、
「上記に記載の遊具が設置面に設置されている遊具の設置構造であり、
前記設置面には、前記放水要素に水を供給するための配管が埋設されていない」ものである。
【0015】
これは、上述した構成の遊具が設置面に設置されている状態での設置構造である。放水要素に水を供給するための配管が設置面に埋設されておらず、放水要素に水を供給するためのポンプ及び配管が遊具の支持構造体の内部のみに配設されているため、遊具の設置場所を容易に移動させることができる。
【0016】
本発明にかかる遊具の設置構造は、上記構成に加え、
「前記支持構造体は、前記設置面に埋設されることなく、前記設置面に載置されている」ものとすることができる。
【0017】
上述したように、遊具の支持構造体が設置面に埋設固定されている場合は、遊具を移動させる工事が大掛かりなものとなり、コストも嵩む。これに対し、遊具の支持構造体が設置面に埋設されることなく、設置面に載置されている本構成では、基礎工事が不要であるため、遊具の設置場所を容易に、コストを抑えて移動させることができる。また、遊具を移動させた後の土地も、すぐに次の用途に利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、水を大量に使用する遊具でありながら、設置場所を移動させることが容易である遊具、及び、該遊具の設置構造を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態である遊具の正面図である。
【
図2】
図1の遊具について装飾や手摺りパネルを省略した状態で示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態である遊具1、及び、遊具1の設置構造について、図面を用いて説明する。
【0021】
遊具1は、遊戯要素10と、放水要素40と、遊戯要素10及び放水要素40を設置面Gに支持させる支持構造体20と、ポンプ50と、放水要素40に水を供給する配管と、を具備している。
【0022】
より具体的に説明すると、支持構造体20は、複数の縦パイプ21と、縦パイプ21によって設置面Gより高い位置に支持されている四つのデッキ22a~22dと、縦パイプ21同士を連結している横パイプ23と、デッキ22a~22dより下方の空間を被覆している側面部24と、設置面Gに対する縦パイプ21の下端の高さを調整する設置レベル調整機構30と、を備えている。
【0023】
四つのデッキ22a~22dは、同じ高さで離隔している二つのデッキ22a,22bと、これらのデッキ22a,22bそれぞれに対して同じ側で隣接しており、デッキ22a,22bより高さの低い二つのデッキ22c,22dである。デッキ22a~22dは、それぞれ平面視(真上から見た視野)が長方形または正方形で、四隅が縦パイプ21で支持されているが、隣接しているデッキ22aとデッキ22c、及び、デッキ22bとデッキ22dは、その間で縦パイプ21の二本を共有している。縦パイプ21は中空の円形パイプであり、何れもデッキ22a~22dより高く延び、その高さは250cm~300cmである。デッキ22aを支持している縦パイプ21の上端には、屋根28が架け渡されている。
【0024】
デッキ22a~22dより下方の空間は、デッキの四隅を支持する縦パイプ21のうち隣接する縦パイプ21によって両側を支持された側面部24によって被覆されている。デッキ22aの下方の空間には、ポンプ50が配設されている。ポンプ50が配されている空間を囲む側面部24の一つには、取水口25が形成されている。ポンプ50は、この取水口25を介して外部から水を吸引し、吸引した水を放水要素40まで送る。なお、取水口25には、ストレーナ25sが取り付けられている。
【0025】
遊戯要素10としては、湾曲しつつ延びる管の中を滑り降りて遊ぶチューブスライダである遊戯要素11と、直線状に延びる板状体の上面を滑り降りて遊ぶ滑り台である遊戯要素12と、壁体に設けられた突起13pを足掛かり手掛かりとして昇り降りして遊ぶクライミング壁である遊戯要素13と、略水平に伸びる管の中を、身をかがめた状態で移動して遊ぶチューブトンネルである遊戯要素14と、橋のように架け渡されたネットの上をバランスを取りながら移動して遊ぶネット吊り橋である遊戯要素15と、を備えている。なお、チューブトンネルである遊戯要素14は、上方に開口する窓部14wを複数有している。この窓部14wは、明かり採り用の窓である。また、ネット吊り橋である遊戯要素15は、同じくネットで形成された手摺り15rを備えている。
【0026】
チューブスライダである遊戯要素11と滑り台である遊戯要素12は、それぞれ高さの大きいデッキ22a,22bから外方に延びるように設けられている。これら高さの大きいデッキ22a,22b間には、チューブトンネルである遊戯要素14が架け渡されている。高さの小さいデッキ22c,22d間には、ネット吊り橋である遊戯要素15が架け渡されている。高さの小さいデッキの一方であるデッキ22cの下方の空間を被覆する四つの側面部24のうち、デッキ22aにもデッキ22dにも対面していない二つの側面部24には、クライミング壁である遊戯要素10cが形成されている。高さの小さいデッキの他方であるデッキ22dには、階段27が設けられている。
【0027】
本実施形態では、放水要素40として複数種類のノズルを備えている。例えば、水を円錐形状に噴射するノズル41、水を扇状に噴射するノズル42、水を直線的に噴射するノズル43、水圧で回転しながら水を噴射するノズル44である。これらの放水要素40は、縦パイプ21の上端近傍にフランジ継手53を介して取り付けられる。何れの放水要素40も共通のフランジ継手53を介して取り付けることができるため、種類の異なる放水要素40の取り付け位置を変更することができる。また、季節によって放水量の異なる放水要素40に、交換することができる。
【0028】
ポンプ50によって送られる水は、縦パイプ21の内部に配された管状部材55を通って放水要素40に供給される。管状部材55は、可撓性を有するホースや縦パイプ21より径の小さいパイプである。具体的には、
図5に示すように、デッキ22a,22cを支持する縦パイプ21の少なくとも一部には、その下部に継手51が設けられている。ポンプ50から送水するためのホース等の管状部材56を、この継手51に接続することにより、縦パイプ21の内部に配された管状部材55に水を送ることができる。或いは、ポンプ50からヘッダー52に送水し、ヘッダー52に接続された複数の管状部材56を介して、複数の縦パイプ21の内部にそれぞれ配されている管状部材55に水を送ることができる。なお、
図5において破線で示しているポンプ50、継手51、ヘッダー52は、デッキ22a,22cより下方に位置する構成であり、屋根28やデッキ22a,22cを透視した状態で図示している。
【0029】
縦パイプ21の内部に配されている管状部材55は、その縦パイプ21の上部に設けられているフランジ継手53に接続されており、このフランジ継手53を介して放水要素40に水を供給する。また、ポンプ50が設置されているデッキ22aの下方の空間から離れているデッキ22b,22dを支持している縦パイプ21については、その内部に管状部材55が配されていない。このように管状部材55が配されていない縦パイプ21の上端近傍に設けられているフランジ継手53に取り付けられる放水要素40に水を供給するためには、管状部材55が配されていない縦パイプ21をと管状部材55が配されている縦パイプ21とを連結している横パイプ23を使用する。つまり、横パイプ23の内部に管状部材55を配し、これを縦パイプ21の内部に配された管状部材55と接続すると共に、放水要素40が取り付けられるフランジ継手53に接続する。これにより、ポンプ50から送られた水は、縦パイプ21の内部に配された管状部材55と横パイプ23の内部に配された管状部材55を介して、管状部材55が配されていない縦パイプ21に設けられている放水要素40まで供給される。
【0030】
また、本実施形態の遊具1では、屋根28の頂上にも放水要素40(図示の例ではノズル44)が設けられている。この放水要素40には、屋根28の裏面に沿って配された送水管58が接続されており、この送水管58が、内部に管状部材55が配されている縦パイプ21の上端に接続されていることにより、管状部材55及び送水管58を介して水が供給される。
【0031】
なお、本実施形態の継手51、ヘッダー52、フランジ継手53、管状部材55,56、及び、送水管58が、本発明の「水を送るための配管」に相当する。
【0032】
設置レベル調整機構30は、遊具1を設置する設置面Gが水平ではない場合であっても、遊具1が水平に設置されるように、すなわち、デッキ22a~22dの上面が水平となるように調整するための機構である。設置レベル調整機構30は、複数の縦パイプ21それぞれの下端に固定された支柱側フランジ31と、設置面Gに載置される設置面側フランジ35とを備えている。支柱側フランジ31及び設置面側フランジ35は、それぞれ縦パイプ21より大径の円盤である。
【0033】
設置面側フランジ35には、その中心点に対して等角度間隔で、複数のボルト36が固着されている。これらのボルト36は、頭部無しボルトである。これら複数のボルト36には、それぞれナット37が螺合させてある。また、これらのボルト36は、ナット37より外側で上方から螺合させるナット34を、別途備えている。そして、隣接するボルト36の間で、同じく設置面側フランジ35の中心点に対して等角度間隔で、複数のナット38が固着されている。更に、設置面側フランジ35の中心には、軸方向に長い高ナット39aが固着されており、この高ナット39aにボルト36より大径の軸部を有する頭部付きボルトである主ボルト39bが螺合させてある。この主ボルト39bの頭部の上面は平坦である。
【0034】
支柱側フランジ31には、設置面側フランジ35におけるボルト36及びナット38の位置に対応する位置に、貫通孔31hが形成されている。この貫通孔31hの径は、ボルト36を挿通できる大きさである。そして、設置レベル調整機構30は更に、貫通孔31hに挿通することができる外径の雄ネジを有するボルト32を、複数備えている。これらのボルト32も、頭部無しボルトである。ボルト32は、貫通孔31hの個数からボルト36の個数を減算した個数あり、それぞれ螺合するナット33を備えている。
【0035】
次に、上記構成の遊具1の設置について説明する。まず、遊具1の設置面Gに、仮設のプールを配置する。仮設のプールとしては、縁及Pa及び底部Pbが樹脂で形成されたプールP(ビニールプール)を使用することができる(
図2参照)。この仮設のプールPには、最初の一回だけ何らかの手段で水を貯めることができれば、遊具1の備えるポンプ50によって放水要素40とプールPとで水を循環させて使用することができるため、プールPに水を貯めるためのポンプ及び配管は不要である。最初の一回だけプールPに水を貯める方法としては、近接する建物の水道栓からホースを介して水を供給する方法、タンク車で水を運ぶ方法を、例示することができる。なお、仮設のプールに代替して、既設のプールやため池、貯水池など、水を貯めることができる施設を使用することができる。また、くぼ地の底部の一部に貯水槽が埋設されているタイプの貯水施設があるが、このような貯水施設を使用する場合は、貯水槽の直上にポンプ50が位置するように、くぼ地に遊具1を設置する。
【0036】
プールPに水を貯める前に、プールPの内部に遊具1を設置する。そのためには、まず、縦パイプ21を立設させる目標位置に、設置面側フランジ35を載置する。その際、設置面側フランジ35と設置面Gとの間に、ゴム製シートなど緩衝用シート60を敷くのが望ましい。また、設置面側フランジ35を設置面Gに載置するに当たり、主ボルト39bを高ナット39aに螺合させることにより主ボルト39bの頭部の高さを定め、その高さに、設置面側フランジ35から突出しているボルト36に螺合しているナット37の高さを合わせておく。
【0037】
その状態で、縦パイプ21に固着された支柱側フランジ31を下降させて設置面側フランジ35に近づけ、支柱側フランジ31の貫通孔31hに下方からボルト36を挿入し、主ボルト39bの頭部、及び、ボルト36に螺合させてあるナット37の上面に支柱側フランジ31を載置する。仮に、設置面G、及び設置面Gに配置された仮設のプールPの底面Pbが水平ではない場合は、主ボルト39bの頭部、及び、ナット37の上面に載置された支柱側フランジ31にガタツキが生じる。そのような場合には、複数のボルト36について、それぞれに螺合させているナット37を昇降させることにより、支柱側フランジ31が水平となるように調整した後、支柱側フランジ31の上方からボルト36に別のナット34を留め付け、仮り留めをする。
【0038】
その後、残る貫通孔31hに上方からボルト32を挿入し、その下端を設置面側フランジ35に固着されているナット38に締め付ける。その上で、ボルト32において支柱側フランジ31より上方に延び出している部分にナット33を留め付ける。この状態で、支柱側フランジ31が水平となった状態を維持しつつ、ボルト36にナット37及びナット34を締め付けると共に、ボルト32にナット33を締め付ける。この作業を、全ての縦パイプ21の下端に設けられた設置レベル調整機構30について並行して進め、必要に応じて主ボルト39bの高さも微調整することにより、デッキ22a~22dの上面が水平となるように、プールPの内部に遊具1を設置することができる。
【0039】
ここで、本実施形態のボルト32、ボルト36、及び主ボルト39bが本発明の「雄ネジ部材」に相当し、ナット33,34,38、及び高ナット39aが本発明の「雌ネジ部材」に相当する。設置レベル調整機構30は、開口を下方に向けた椀状で、縦パイプ21に沿ってスライド可能なケース69を備えており、上記の調整が済んだ段階で開口縁が設置面Gに当接するまで下降させれば、他の要素がケース69によって被覆され保護される。
【0040】
なお、本実施形態では、設置面側フランジ35に予め固着されているボルト36と、設置面側フランジ35に固着されているナット38に対して後から螺合させるボルト32の双方を、交互に備えている。設置面側フランジ35に予め固着されているボルト36とナット37,34の螺合のみによって設置面側フランジ35に対する支柱側フランジ31の高さを調整することも可能ではあるが、その場合、連結の強度を高めるためにボルト36の本数を増やそうとすると、隣接するボルト36同士の間の空隙が小さくなってしまい、作業がし難いものとなる(作業のために手指が入りにくい)。これに対し、本発明では、設置面側フランジ35に予め固着されているボルト36とナット37,34の螺合によって、設置面側フランジ35に対して支柱側フランジ31を仮り留めしておき、その後で、支柱側フランジ31の上方からボルト32を挿入して設置面側フランジ35に予め固着されているナット38と螺合させている。これにより、作業し易い空間を確保しつつ、ボルト36,32の総本数を増やすことができ、設置面側フランジ35と支柱側フランジ31との連結強度を高めることができる。
【0041】
プールPの内部に遊具1を設置できたら、ポンプ50に駆動用電力を供給するための電源ケーブルを、防水処理が施された状態で外部からプールPの内部に引き入れ、プールPの底部を這わせながら遊具1まで導いてポンプ50に接続する。そして、電源ケーブルに、ゴム製マット等の被覆材を被せて保護する。その後、上述のように何らかの手段でプールPに水を供給し、水深10cm程度の水を貯める(
図2の一点鎖線を参照)。これで、遊具1を使用するための準備が完了する。
【0042】
遊具1の使用に際しては、ポンプ50を作動させることにより、プールPの水が取水口25を介してポンプ50で吸引される。取水口25にはストレーナ25sが取り付けられているため、プールPの水にゴミや落ち葉等が含まれていたとしても、取水口25から取り込まれることが防止される。取水口25から吸引された水は、縦パイプ21の内部に配された管状部材55、横パイプ23の内部に配された管状部材55、及び、屋根28の裏面に配された送水管57の少なくとも一つ以上を介して放水要素40に供給される。遊具1のユーザは、放水要素40から放出される水を観賞しつつ涼しさを感じたり、水遊びをしたりすることができる。
【0043】
放水要素40から放出された水は、プールPの内部に落下し、プールPに貯められた水の一部となる。この水が再び遊具1の内部のポンプ50によって吸引され、放水要素40から放出されるため、使用の開始に当たり最初にプールPに貯めた水を循環させて、繰り返し放水要素40から放出させることができる。
【0044】
遊具1の設置場所を移動させる場合、遊具1は放水要素40まで水を送るためのポンプ50及び配管を自身の内部構成として有しており、且つ、遊具1の支持構造体20は設置面Gに埋設されている訳ではないため、遊具1の全体をそのまま、或いは適宜分解して、容易に移送することができる。
【0045】
そして、仮設のプールPを撤去すれば、設置面Gは元の状態に戻る。そのため、設置面Gを整備する別途の作業を要することなく、それまで遊具1を設置していた場所を別の用途に使用することができる。更に、別の場所に遊具1を設置する場合は、遊具1の放水要素40に水を供給するためのポンプ及び配管の設備がない場所や、必ずしも水平ではない設置面Gであっても、事前の基礎工事や配管工事等を要することなく、容易に遊具1を設置することができる。
【0046】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0047】
例えば、上記の実施形態では、放水要素40が種類の異なるノズル41~44である場合を例示したが、これに限定されず、水を霧状に噴射するノズルである放水要素、滝のように水を連続的に流下させる放水要素、バケツに水を供給し、バケツが満杯になると傾動して水を落下させる放水要素、を備える遊具とすることができる。
【0048】
また、上記の実施形態では、遊戯要素10としてチューブスライダ11、滑り台12、クライミング壁13、チューブトンネル14、及びネット吊り橋15を備える遊具1を例示したが、遊具1が備える遊戯要素の種類や種類の数は、特に限定されるものではない。
【0049】
また、上記の実施形態では、放水要素40まで水を供給するために、縦パイプ21及び横パイプ23の内部に管状部材55を通す場合を例示したが、縦パイプ及び横パイプの径と送水量との関係によっては、縦パイプ21及び横パイプ23自体を、水を通すための管状部材とすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 遊具
10 遊戯要素
20 支持構造体
21 縦パイプ
22a,22b,22c,22d デッキ
23 横パイプ
30 設置レベル調整機構
31 支柱側フランジ
35 設置面側フランジ
40 放水要素
50 ポンプ
55 管状部材
G 設置面