(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】畦塗り機
(51)【国際特許分類】
A01B 35/00 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A01B35/00 C
A01B35/00 E
(21)【出願番号】P 2020212838
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸治
(72)【発明者】
【氏名】平本 浩志
(72)【発明者】
【氏名】頭司 宏明
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-000003(JP,A)
【文献】特開平10-033006(JP,A)
【文献】特開平11-018503(JP,A)
【文献】特開平11-266603(JP,A)
【文献】特開平10-136708(JP,A)
【文献】特開2009-011273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の爪を有すると共に回転駆動される作業ロータを備え、前記複数の爪が回転することにより元畦の
側面を切り崩す前処理部と、
前記前処理部の後方に位置し、
前記前処理部によって切り崩された元畦の側面に溝を形成する溝形成部と、
前記溝形成部の後方に位置し、前記
溝が形成された元畦の側面に盛られた土を塗り付けて畦を形成する畦形成部と、
を備える、畦塗り機。
【請求項2】
前記溝形成部は、爪状の部材を含む、請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項3】
前記溝形成部は、ディスク状の部材を含む、請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項4】
前記溝形成部は、回転駆動する複数の切削爪を有する切削ロータを含む、請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項5】
前記溝形成部は、前記切削ロータの切削量を調整する機構を含む、請求項4に記載の畦塗り機。
【請求項6】
前記溝形成部は、左右方向又は上下方向に位置の調整が可能である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦塗り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場の畦を形成するための農作業機として、畦塗り機が知られている。畦塗り機は、トラクタ等の走行機体の後部に装着され、走行機体に牽引されながら畦を形成する。畦塗り機は、基本的な構成として、元畦の一部を切り崩して土盛りを行う前処理部と、盛られた土を元畦に塗り付けて畦を形成する畦形成部とを有する。前処理部は、複数の爪を備えた作業ロータの回転により元畦の一部を円弧状に切削して切り崩す。その際に切り崩された土は、後方に向かって放擲され、元畦に形成された円弧状の側面に盛られる。畦形成部は、円弧状の側面に放擲された盛り土を元畦に塗り付けて新しい畦を形成する。このとき、土質や天候等の状況により、元畦に塗り付けられた盛り土が滑落する現象が発生する場合がある。具体的には、元畦と盛り土との間で滑りが発生し、盛り土が下方に向かって崩れてしまう場合がある。
【0003】
図5は、元畦から盛り土が滑落する状況を説明するための模式図である。
図5に示すように、断面視において、元畦10の側面には、前処理部によって円弧状に切削された部分11が形成される。この円弧状に切削された部分11に対して前処理部から土が放擲され、畦形成部によって元畦10の円弧状の側面11aに盛り土12が塗り付けられる。しかしながら、例えば、円弧状に切削された部分11に雨水が溜まるなどして盛り土12の下部が崩されて、盛り土12が滑落する場合がある。また、土質によっては、元畦の側面11aと盛り土12との密着性が悪く、畦塗り機の振動や畦を人が歩く振動等により盛り土12が滑落する場合もある。
【0004】
このような元畦からの盛り土の滑落を防ぐために、例えば特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1には、元畦の側面に盛土係留部(具体的には、溝)を形成し、この盛土係留部の作用により、土を係留して畦の側面における盛り土の滑落現象を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の畦塗り機は、前処理部である盛土機構と畦形成部である整畦機構とを備え、盛土機構の前方に、盛土係留部を形成するための形成機構を有している。そのため、形成機構により元畦に対して盛土係留部を形成した後、盛土機構による元畦の切削処理が行われる。この場合、元畦の側面を切削する際に、盛土係留部も一緒に削れてしまうため、あらかじめ盛土係留部を十分な深さで形成しておく必要がある。したがって、盛土係留部を形成する際、形成機構には大きな負荷がかかるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1記載の畦塗り機における形成機構は、盛土係留部を形成可能な形成体が円盤状の回転体であり、この回転体を回転駆動することにより、盛土係留部を形成する。そのため、形成機構は、少なくとも形成体の直径分の幅の領域を占有し、畦塗り機の全長が長くなり、装置の大型化を招くという問題を有する。さらに、形成機構は、形成体を回転駆動するための駆動機構を必要とするため、この点も畦塗り機の大型化を招く要因の一つとなっている。
【0008】
本発明の一実施形態の課題は、簡易な構造で元畦からの盛り土の滑落を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、元畦の一部を切り崩す前処理部と、前記前処理部の後方に位置し、切り崩された元畦の側面に溝を形成する溝形成部と、前記溝形成部の後方に位置し、前記元畦の側面に盛られた土を塗り付けて畦を形成する畦形成部と、を備える。
【0010】
溝形成部は、爪状又はディスク状の部材を含んでもよい。
【0011】
溝形成部は、回転駆動する複数の切削爪を有する切削ロータを含んでもよい。この場合、溝形成部は、切削ロータの切削量を調整する機構を含んでもよい。
【0012】
溝形成部は、左右方向又は上下方向に位置の調整が可能であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態における畦塗り機は、簡易な構造で元畦からの盛り土の滑落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における畦塗り機の構成を示す図であり、(A)は、右側方から見た側面図であり、(B)は、前方から見た正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における畦塗り機の構成を示す図であり、(A)は、右側方から見た側面図であり、(B)は、(A)において溝形成部付近を拡大した拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態における畦塗り機の構成を示す図であり、(A)は、右側方から見た側面図であり、(B)は、(A)において溝形成部付近を拡大した拡大図である。
【
図4】本発明の一実施形態における畦塗り機による畦の形成過程を説明するための図であり、(A)は、溝形成部による処理後の元畦の状態を示し、(B)は、畦形成部による処理後の畦の状態を示している。
【
図5】元畦から盛り土が滑落する状況を説明するための模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態における畦塗り機の構成を示す図であり、(A)は、右側方から見た側面図であり、(B)は、(A)において切削量調整部の近傍を拡大した拡大図である。
【
図7】本発明の一実施形態における畦塗り機の構成を示す図であり、(A)は、上方から見た平面図であり、(B)は、前方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の畦塗り機の実施形態について説明する。但し、本発明の畦塗り機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
説明の便宜上、「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」といった方向を示す語句を用いるが、本発明の畦塗り機に対して、重力の働く方向が「下」であり、その逆が「上」である。また、走行機体の進行する方向が「前」であり、その逆が「後」である。さらに、「前」に向かって、右側が「右」であり、左側が「左」である。
【0017】
[第1実施形態]
本実施形態に係る畦塗り機100の概略の構成について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態における畦塗り機100の構成を示す図である。
図1(A)は、畦塗り機100を右側方から見た側面図である。
図1(B)は、畦塗り機100を前方から見た正面図である。なお、説明を簡単にするため、本発明に関連する部分に着目して説明を行い、通常の畦塗り機が備える一部の構造については、図示や説明を省略する場合がある。
【0019】
図1(A)に示すように、本実施形態における畦塗り機100は、進行方向に向かって前方から順に、天場処理部110、前処理部120、溝形成部130、及び、畦形成部140を備えている。本実施形態の畦塗り機100は、図示しない装着部によってトラクタ等の走行機体に連結され、走行機体に牽引されて畦塗り作業を行う。また、畦塗り機100は、図示しないオフセット機構を有し、オフセット機構により畦形成部140が左右方向(畦塗り機100の進行方向と略直交する方向)にオフセット移動する。
【0020】
天場処理部110は、元畦の上面(天場)に対して切削処理を行う部位である。天場処理部110は、作業ロータ111及び作業ロータ111の上方及び後方を覆うカバー部材112を有する。作業ロータ111は、複数の爪111aを有する。作業ロータ111が回転して複数の爪111aが回転することにより、元畦の上面が切削される。作業ロータ111は、図示しない動力伝達部から動力を受けて回転駆動される。
【0021】
前処理部120は、元畦の法面(側面)に対して切削処理を行う部位である。前処理部120は、作業ロータ121及び作業ロータ121の上方、前方及び後方を覆うカバー部材122を有する。作業ロータ121は、複数の爪121aを有する。作業ロータ121が回転して複数の爪121aが回転することにより、元畦の法面が切削される。作業ロータ121は、図示しない動力伝達部から動力を受けて回転駆動される。
【0022】
図1(B)に示すように、前処理部120の作業ロータ121は、ほぼ進行方向(つまり、元畦の長手方向)に沿って回転軸を有する。また、作業ロータ121の回転は、反時計回りである。すなわち、作業ロータ121の各爪121aは、ダウンカットで元畦の法面を切り崩す。そのため、前処理部120によって切削処理された元畦の側面は、
図3を用いて説明したように、略円弧状に切り崩される。
【0023】
溝形成部130は、前処理部120によって切削処理がなされた略円弧状の元畦の側面に対して、さらに切削処理を行う部位である。具体的には、溝形成部130は、元畦の略円弧状の側面の一部に対して溝を形成する。本実施形態において、溝形成部130は、2本の爪131a及び131bを有する。
図1(B)に示すように、2本の爪131a及び131bは、左右方向に互いに離間して設けられている。したがって、本実施形態では、元畦の側面に対して2本の溝を形成することができる。ただし、この例に限らず、爪の本数は、形成する溝の数に応じて増減すればよい。
【0024】
本実施形態の溝形成部130を構成する爪131a及び131bは、作業中の位置が固定された固定爪である。つまり、爪131a及び131bは、作業中に回転や移動をすることなく位置が固定されている。ただし、爪131a及び131bは、非作業中に左右方向又は上下方向の位置を調整できるように構成されていてもよい。なお、本実施形態では、溝形成部130として、爪131a及び131bを用いた例を示したが、爪状の部材であれば、刃の有無は問わない。
【0025】
ここで、溝形成部130の構成について、さらに詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態における畦塗り機100の構成を示す図である。具体的には、
図2(A)は、畦塗り機100を右側方から見た側面図である。
図2(B)は、
図2(A)において溝形成部130付近を拡大した拡大図である。また、
図3は、本発明の一実施形態における畦塗り機100の構成を示す図である。具体的には、
図3(A)は、畦塗り機100を上方から見た平面図である。
図3(B)は、
図3(A)において溝形成部130付近を拡大した拡大図である。なお、
図2では、溝形成部130の構成が分かりやすいように、天場処理部110及び他の一部の構成の図示を省略している。
【0026】
図2(A)及び
図3(A)に示すように、溝形成部130は、支持アーム132を介して支持フレーム150に支持されている。支持フレーム150は、前処理部120の作業ロータ121を支持するフレームである。溝形成部130には、溝を形成する際に土壌抵抗によって大きな負荷がかかるため、支持フレーム150のような強固な部材に固定されていることが望ましい。
【0027】
図2(B)に示すように、爪131a及び131bは、共に上下方向に位置を調整することが可能である。爪131aは、支持アーム132に対してブラケット133を介して連結される。ブラケット133は、端部に爪131aを支持するためのホルダ133aを有する。爪131bは、支持アーム132に対してホルダ134を介して連結される。支持アーム132の端部には、複数の孔132aが設けられている。複数の孔132aは、ブラケット133及びホルダ134を固定具135a及び135b(具体的には、ボルト及びナット)によって固定するための孔である。
【0028】
爪131aは、自身に設けられた取付け孔(図示せず)、固定具135aを用いてブラケット133及び支持アーム132に固定される。同様に、爪131bも、自身に設けられた取付け孔(図示せず)、ホルダ134及び固定具135bを用いて支持アーム132に固定される。このとき、爪131a及び131bを固定する位置は、複数の孔132aのうち、どの位置の孔を用いるかによって調整することができる。これにより、各爪131a及び131bは、複数の孔132aが並ぶ方向に沿って上下方向の位置の調整が可能となる。
【0029】
また、
図3(B)に示すように、支持アーム132は、支持フレーム150に固定されたブラケット136を介して支持フレーム150に固定されている。ブラケット136には、複数の孔136aが設けられている。複数の孔136aは、ブラケット136に対して支持アーム132を固定するための孔である。
【0030】
支持アーム132は、自身に設けられた孔(図示せず)をブラケット136の孔136aに合わせ、固定具137(具体的には、ボルト及びナット)を挿通することにより、ブラケット136に対して固定することができる。このとき、支持アーム132を固定する位置は、複数の孔136aのうち、どの位置の孔を用いるかによって調整することができる。これにより、支持アーム132は、複数の孔136aが並ぶ方向に沿って左右方向(畦に近づいたり遠ざかったりする方向)の位置の調整が可能となる。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態における畦塗り機100による畦20aの形成過程を説明するための図である。具体的には、
図4(A)は、溝形成部130による処理後の元畦20の状態を示している。また、
図4(B)は、畦形成部140による処理後の畦20aの状態を示している。
図4(A)では、説明の便宜上、元畦20の側面に対して放擲された土の図示を省略しているが、実際には、前処理部120から後方に向かって土が放擲される。したがって、図示は省略しているが、溝形成部130が溝を形成する時点において、元畦20の側面には土が盛られている。
【0032】
図4(A)に示すように、本実施形態では、溝形成部130の2本の爪131a及び131bにより、それぞれ2つの溝25a及び25bが形成される。溝25a及び25bは、円弧状に切削された部分21において、元畦20の側面21aの一部に形成される。溝25a及び25bを形成する位置は、爪131a及び131bの位置を左右方向に調整して決めることができる。また、溝25a及び25bの深さは、爪131a及び131bの上下方向の位置で調整することができる。
【0033】
溝形成部130により溝25a及び25bを形成した後、畦形成部130が盛り土22を塗り固めることにより、新たな畦20aが形成される。このとき、
図4(B)に示すように、盛り土22の一部は、溝25a及び25bの内部を充填する。そのため、溝25a及び25bに充填された盛り土22の一部が、盛り土22の滑落を抑止する滑り止めとして機能する。
【0034】
図1の説明を続ける。畦形成部140は、前処理部120によって元畦に盛られた土を元畦の側面に対して塗り付ける部位である。畦形成部140は、畦の上面を形成する上面形成部141及び畦の法面を形成する法面形成部142を有する。上面形成部141は、回転軸が畦塗り機100の進行方向に対して略直交する方向に延びた円筒形状の部材である。畦形成部140は、この回転軸に対して回動可能に支持されている。畦形成部140は、図示しない動力伝達部から動力を受けることで回転駆動される。法面形成部142は、前述の回転軸に対して傾斜した傾斜面を有する略円錐形状の部材である。本実施形態において、法面形成部142は、円周方向に複数の板状部材が部分的に重なるように配置された多面体である。各板状部材は、法面形成部142の回転に伴って畦の側面に盛られた盛り土を叩き、畦の法面を強固に塗り固めることができる。
【0035】
なお、上面形成部141及び法面形成部142の形状は、
図1に示した構成に限定されない。例えば、上面形成部141は、法面形成部142と同様に、複数の板状部材が部分的に重なって構成されてもよい。また、法面形成部142は、複数の板状部材で構成された多面体ではなく、一体形成された多面体であってもよい。
【0036】
以上説明したとおり、本実施形態の畦塗り機100は、前処理部120と畦形成部140との間に溝形成部130を配置した構造を有する。したがって、元畦に対して切削処理を行った後、切削処理された元畦の側面に対して溝を形成するため、溝形成部130に掛かる負荷が従来技術よりも少なくて済む。
【0037】
また、本実施形態の畦塗り機100は、溝形成部130として、作業中の位置が固定された爪形状の部材を用いるため、溝形成部130の占有面積が小さい。そのため、本実施形態のように、前処理部120と畦形成部140との間に溝形成部130を配置しても、装置全体の大型化を招くことがない。さらに、本実施形態では、回転駆動のための駆動機構も必要ないため、その点も装置全体の小型化に寄与している。
【0038】
以上のとおり、本実施形態の畦塗り機は、簡易な構造で元畦からの盛り土の滑落を抑制することができる。
【0039】
(変形例1)
本実施形態では、溝形成部130として、爪状の部材(具体的には、爪131a及び131b)を例示したが、この例に限られるものではない。例えば、溝形成部130として、1又は複数のディスク状(円盤状)の部材を用いてもよい。つまり、ディスク状の部材で元畦の側面を削ることにより溝を形成してもよい。ディスク状の部材は、円形の板状部材であってもよいが、円錐状の部材であってもよい。また、ディスク状の部材の外周に突起を設け、歯車状の部材としてもよい。
【0040】
溝形成部130としてディスク状の部材を用いる場合、ディスク状の部材は、回転駆動されてもよいし、回転駆動されなくてもよい。回転駆動させる場合、駆動機構を備える必要はあるものの、元畦に溝を形成する際の負荷が軽くて済むという利点がある。また、溝形成部130は、駆動機構を備えることなく、ディスク状の部材が元畦と接する際の摩擦力により回転するように構成されてもよい。
【0041】
(変形例2)
本実施形態では、溝形成部130が元畦を切削することにより溝を形成する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、溝形成部130は、爪状、ディスク状又は棒状の部材を元畦の側面に押し付けることにより溝又は窪みを形成してもよい。この場合、例えば溝形成部130は、作業中に上下方向に爪状、ディスク状又は棒状の部材を移動させる駆動機構を備え、これらの部材を元畦の側面に対して上から押し当てることにより、溝又は窪みを形成すればよい。
【0042】
[第2実施形態]
本実施形態に係る畦塗り機200の概略の構成について、
図6及び
図7を用いて説明する。本実施形態では、第1実施形態とは異なる構造の溝形成部230を有する畦塗り機200について説明する。なお、第1実施形態と同じ要素については、同じ符号を付して表し、詳細な説明を省略する。
【0043】
図6及び
図7は、本発明の一実施形態における畦塗り機200の構成を示す図である。具体的には、
図6(A)は、畦塗り機200を右側方から見た側面図であり、
図6(B)は、畦塗り機200の溝形成部230における切削量調整部232の近傍を拡大した拡大図である。また、
図7(A)は、畦塗り機200を上方から見た平面図であり、
図7(B)は、畦塗り機200を前方から見た正面図である。なお、説明を簡単にするため、本発明に関連する部分に着目して説明を行い、通常の畦塗り機が備える一部の構造については、図示や説明を省略する場合がある。
【0044】
図6(A)、
図7(A)及び
図7(B)に示すように、本実施形態の畦塗り機200は、溝形成部230を有する。溝形成部230は、固定チェーンケース231、可動チェーンケース233、切削ロータ235、及び切削量調整部237を含み、切削ロータ235によって元畦の略円弧状の側面の一部に対して溝を形成する。切削ロータ235は、回転駆動する複数の切削爪235aを有し、これら切削爪235aを回転させながら元畦に溝を形成してゆく。切削ロータ235を回転駆動する動力は、固定チェーンケース231及び可動チェーンケース233を介して伝達される。
【0045】
固定チェーンケース231は、支持フレーム150に固定され、前処理部120の作業ロータ121を回転駆動する動力を可動チェーンケース233に伝達する。具体的には、固定チェーンケース231は、内部にローラーチェーン及び一対のスプロケットを有し、一対のスプロケットに架け渡されたローラーチェーンによって動力を伝達する。
【0046】
可動チェーンケース233は、固定チェーンケース231に対して回動可能に連結され、固定チェーンケース231から伝達された動力を切削ロータ235に伝達する。固定チェーンケース231と同様に、可動チェーンケース233も、内部にローラーチェーン及び一対のスプロケットを有する。
【0047】
本実施形態の溝形成部230は、固定チェーンケース231と可動チェーンケース233との連結部を軸として可動チェーンケース233を回動させることにより、切削ロータ235を上下方向に移動させることができる。そのため、切削ロータ235を上下方向に移動させることにより元畦に対する切削爪235aの位置(すなわち、切削の深さ)を調整することができる。すなわち、溝形成部230は、可動チェーンケース233の回動量を調整することにより、元畦の切削量を調整することができる。
【0048】
図6(B)に示すように、切削量調整部237は、略扇形の位置調整板241、台座242、及び位置調整ピン243を含む。位置調整板241は、可動チェーンケース233に固定され、位置調整ピン243が挿通される複数の貫通孔241aを有する。台座242は、固定チェーンケース231に固定され、対向する2枚の固定部材242aには、位置調整ピン243が挿通される貫通孔242bがそれぞれ設けられている。
【0049】
位置調整ピン243は、位置調整板241の複数の貫通孔241aのうちのいずれかに挿通され、台座242の固定部材242aに設けられた貫通孔242bに挿通される。これにより、可動チェーンケース233の回動を所定の位置で固定することができる。可動チェーンケース233の回動を固定する位置は、位置調整ピン243を挿通する貫通孔241aの位置によって変えることができる。なお、位置調整ピン243は、抜け止め用にフック状のピン止め部材243aが連結されている。
図6(B)に示すように、フック状のピン止め部材243aを位置調整板241と固定部材242aとの間に架け渡すことにより、位置調整ピン243の脱落を防止することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の畦塗り機200は、回転駆動する複数の切削爪235aを有する切削ロータ235を含む溝形成部230を有する。溝形成部230は、可動チェーンケース233の回動位置を調整することにより、切削ロータ235の上下方向の位置を調整可能であり、元畦に対する切削量を調整することができる。元畦に対する切削量は、切削量を調整する機構(切削量調整部237)を用いて可動チェーンケース233の回動位置を変化させることにより調整することができる。
【0051】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の実施形態(変形例も含む)に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、前述した実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した実施形態及び各変形例は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、それぞれに共通する技術事項については、明示の記載がなくてもそれぞれの実施形態又は変形例に含まれる。
【0052】
前述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0053】
10…元畦、11…円弧状に切削された部分、11a…側面、12…盛り土、20…元畦、20a…畦、21…円弧状に切削された部分、21a…側面、22…盛り土、25a、25b…溝、100、200…畦塗り機、110…天場処理部、111…作業ロータ、111a…爪、112…カバー部材、120…前処理部、121…作業ロータ、121a…爪、122…カバー部材、130、230…溝形成部、131a…爪、132…支持アーム、132a…孔、133…ブラケット、133a、134…ホルダ、135a、135b…固定具、136…ブラケット、136a…孔、137…固定具、140…畦形成部、150…支持フレーム、141…上面形成部、142…法面形成部、231…固定チェーンケース、233…可動チェーンケース、235…切削ロータ、235a…切削爪、237…切削量調整部、241…位置調整板、241a…貫通孔、242…台座、242a…貫通孔、243…位置調整ピン、243a…ピン止め部材