(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、量子コンピュータ、制御方法、及び、集積回路
(51)【国際特許分類】
G06N 10/00 20220101AFI20241101BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20241101BHJP
【FI】
G06N10/00
B82Y40/00
(21)【出願番号】P 2021013935
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-10-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人科学技術振興機構 CREST研究領域「量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創成」における研究課題「スピン量子計算の基盤技術開発」委託研究、国立研究開発法人科学技術振興機構 さきがけ研究領域「革新的な量子情報処理技術基盤の創出」における研究課題「リアルタイム制御ソフトウェアによる量子ビット仮想化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中島 峻
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 洋平
(72)【発明者】
【氏名】樽茶 清悟
【審査官】福西 章人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184516(JP,A)
【文献】CIMINI, Valeria et al.,Calibration of quantum sensors by neural networks,arXiv [online],2019年04月23日,pp.1-5,インターネット:<URL:https://arxiv.org/pdf/1904.10392v1>、<DOI:10.48550/arXiv.1904.10392>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットデバイスのための測定装置であって、
量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する信号取得部と、
所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された
電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路と
を備えていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記制御信号を減衰させる減衰器と、
前記減衰器による減衰後の前記制御信号に対して所定の電圧を加算する加算器と、
前記加算器の出力に作用することによってフィルタ済信号を生成し、生成したフィルタ済信号を前記
電荷センサに供給するローパスフィルタと
を備えていることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記生成回路が生成する前記制御信号には、前記差分信号に対して積分演算を行うことによって得られた信号成分が含まれている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記生成回路が生成する前記制御信号には、前記差分信号に対して線形演算及び微分演算の少なくとも何れかの演算を行うことによって得られた信号成分が含まれている
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記接点に接続された共振回路と、前記共振回路に接続された高周波発生回路とを備えている
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記量子ドットデバイス上の1又は複数の量子ドットに対して供給される供給電圧の電圧値を取得する供給電圧値取得部と、
前記制御信号が示す電圧値、又は
前記制御信号が示す電圧値の、前記供給電圧の電圧値による微分値
を含む測定ダイアグラムを生成する測定ダイアグラム生成部と
を備えていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
量子ドットデバイスのための測定方法であって、
量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップと、
所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された
電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップと
を含んでいることを特徴とする測定方法。
【請求項8】
量子ドットデバイスと、当該量子ドットデバイスのための測定装置とを備えている量子コンピュータであって、
前記測定装置は、
量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得部と、
所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された
電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路と
を備えていることを特徴とする量子コンピュータ。
【請求項9】
量子ドットデバイスと、当該量子ドットデバイスのための測定装置とを備えている量子コンピュータの制御方法であって、
量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップと、
所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された
電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップと
を含んでいることを特徴とする制御方法。
【請求項10】
量子ドットデバイスの測定のための集積回路であって、
量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する信号取得部と、
所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された
電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路と
として機能する論理回路が形成されていることを特徴とする集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は量子ドットデバイスのための測定装置、測定方法、量子コンピュータ、量子コンピュータの制御方法、及び集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、量子ドットデバイスおよび量子ドットデバイスの測定装置に関する急速な進展が見られている。量子ドットデバイスの測定装置では、通常、量子ドットにおける数個の電子による電荷配位(charge configuration)の測定が行われる(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】A. Noiri, K. Takeda, J. Yoneda, T. Nakajima, T. Kodera, and S. Tarucha, Radio-frequency detected fast charge sensing in undoped silicon quantum dots, Nano Letters 20, 947 (2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
量子ドットデバイスの測定装置においては、センサの電位に関するファインチューニングが必要であることに起因して、測定効率が向上しないという問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、測定効率の高い量子ドットデバイスの測定技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る測定装置は、量子ドットデバイスのための測定装置であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する信号取得部と、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路とを備えている。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る測定方法は、量子ドットデバイスのための測定方法であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップと、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップとを含んでいる。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る量子コンピュータは、量子ドットデバイスと、当該量子ドットデバイスのための測定装置とを備えている量子コンピュータであって、前記測定装置は、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得部と、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路とを備えている。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る量子コンピュータの制御方法は、量子ドットデバイスと、当該量子ドットデバイスのための測定装置とを備えている量子コンピュータの制御方法であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップと、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップとを含んでいる。
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る集積回路は、量子ドットデバイスの測定のための集積回路であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する信号取得部と、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路と、として機能する論理回路が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、測定効率の高い量子ドットデバイスの測定技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係る量子ドットデバイスの測定システムの構成を示す図である。
【
図2】比較例(実施形態1に係る測定装置のフィードバック制御をオフにした場合)に係る測定結果を示す図である。
【
図3】実施形態1に係る測定装置によるフィードバック制御をオンにした場合に得られる測定結果を示している。
【
図4】実施形態1に係る測定装置の応答性とノイズパワースペクトラル密度を説明するための図である。
【
図5】実施形態1に係る測定装置を用いた測定例を説明するための図である。
【
図6】実施形態1に係る量子ドットデバイスのための測定方法の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施形態2に係る量子コンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る量子ドットデバイスの測定システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、測定システム1は、量子ドットデバイスの測定装置2、及び量子ドットデバイス10を備えている。
【0014】
(量子ドットデバイス)
量子ドットデバイスの測定装置2の詳細な説明を行う前に、本実施形態に係る量子ドットデバイス10の構成例について、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、量子ドットデバイス10は、一例として、基板SB、第1の量子ドット11、第2の量子ドット12、第1のプランジャーゲートP1、第2のプランジャーゲートP2、電荷センサ13、第3のプランジャーゲートP3、第1の接点OC1、及び第2の接点OC2を備えている。
【0015】
基板SBは、一例として、SiGeより形成された基板上に、Si量子井戸層、Si0.7Ge0.3より形成された層、Si cap層、Al2O3絶縁層、微細ゲート、及び積層ゲート層が積層して構成される。また、第1の量子ドット11、第2の量子ドット12は、基板SB上又は基板SB内に、Si又はSiGeを用いて構成される。ただし、基板SBの具体的構成は本実施形態を限定するものではない。
【0016】
第1のプランジャーゲートP1は、第1の量子ドット11の電磁気学的状況を制御するための構成であり、
図1に示すように、第1のプランジャーゲートP1の先端は、第1の量子ドット11の近傍に配置される。第1のプランジャーゲートP1の電磁気学的状況は、一例として、後述する設定部60によって制御される。
【0017】
なお、本明細書において、電磁気学的状況とは、電位、電流、静電ポテンシャル、コンダクタンス、及び複素インピーダンスの何れか又はそれらの組み合わせのことを指す。第1のプランジャーゲートP1に印可される電位をVLと表記することがある。
【0018】
第2のプランジャーゲートP2は、第2の量子ドット12の電磁気学的状況を制御するための構成であり、
図1に示すように、第2のプランジャーゲートP2の先端は、第2の量子ドット12の近傍に配置される。第2のプランジャーゲートP2の電磁気学的状況は、一例として、後述する設定部60によって制御される。第2のプランジャーゲートP2に印可される電位をV
Rと表記することがある。
【0019】
第3のプランジャーゲートP3は、電荷センサ13の電位を制御又は検知する構成であり、
図1に示すように、第3のプランジャーゲートP3の先端は、
電荷センサ13の近傍に配置される。第3のプランジャーゲートP3は、
図1に示すように、後述するローパスフィルタ43、加算器42、及び減衰器41を介して、測定装置2の測定部20の出力側に接続されている。
【0020】
第1の接点OC1は、
図1に示すように接地されている。換言すれば、第1の接点OC1は、基板SBとグラウンドとを接続するための構成である。基板SBにおける第1の接点OC1の位置は、本実施形態を限定するものではなく、第1の接点OC1は、基板SBの何れかの好適な位置に配置されていればよい。
【0021】
第2の接点OC2は、基板SBと、測定装置2の測定部20の入力側とを接続するための構成であり、
図1に示すように、第2の接点OC2は、コイルL、分岐器32、信号増幅器(ローノイズアンプ)33、及び復調器34を介して測定装置2の測定部20の入力側に接続されている。基板SBにおける第2の接点OC2の位置は、本実施形態を限定するものではなく、第2の接点OC2は、基板SBの何れかの好適な位置に配置されていればよい。
【0022】
基板SBは、一例として、50mK程度の低温環境に配置される。換言すれば、量子ドットデバイス10は50mK程度の極低温環境に配置され、そのような極低温環境に配置された量子ドットデバイス10のための測定装置として、測定装置2は構成されている。このため、測定装置2は、後述するように、50mK程度の極低温環境に配置された量子ドットデバイス10の動作に影響を与えないよう、安定かつ低雑音な回路として実現されている。
【0023】
以上のように構成された量子ドットデバイス10において、第1の量子ドット11及び第2の量子ドット12のそれぞれの電磁気学的状態に応じて、当該第1の量子ドット11に、0電子状態、1電子状態、2電子状態、・・・・、N電子状態(Nは自然数)の何れかが実現され、第2の量子ドットに、0電子状態、1電子状態、2電子状態、・・・・、M電子状態(Mは自然数)の何れかが実現される。
【0024】
後述する測定装置2は、これらの量子ドットにおける電子の量子状態を、当該量子ドットデバイス2から得られる信号を参照して特定(測定)するための構成である。なお、本実施形態において、電子の量子状態との表現には、電子の個数、電子の荷電配位、及び電子のスピンの少なくとも何れかが含まれる。
【0025】
(測定装置)
測定装置2は、量子ドットデバイス10に接続されており、第1の量子ドット11、第2の量子ドット12、及びそれらの近傍における基板SBの電磁気学的状況を測定するための構成である。
図1に示すように、測定装置2は、測定部20、高周波発生回路31、分岐器32、信号増幅器(ローノイズアンプ)33、及び復調器34、減衰器41、加算器42、ローパスフィルタ43を備えている。測定部20は、
図1に示すように、アナログデジタルコンバータ(ADC)21、減算器22、コントローラ23、及びデジタルアナログコンバータ(DAC)24を備えている。
【0026】
また、測定装置2は、
図1に示すように、操作受付部50、設定部60、及びダイアグラム生成部70を備えている。
【0027】
操作受付部50は、使用者による操作を受付け、受け付けた操作が示す情報を設定部60及びダイアグラム生成部70に供給する。
【0028】
設定部60は、前述した又は後述する各種の値の設定を行う。当該設定は、操作受付部50が受け付けた操作に応じたものであってもよい。
【0029】
ダイアグラム生成部70は、測定部20による測定結果を参照して、ダイアグラムを生成する。生成したダイアグラムは、図示しない表示部に表示される。
【0030】
(測定部の入力側に接続された構成)
図1に示すように、測定部20のADC21には、復調器34、信号増幅器33、分岐器32、コイルL、キャパシタCが接続されており、コイルLとキャパシタCとの接続点が、量子ドットデバイス10の接点OC2に接続されている。なお、キャパシタCは必須の構成ではない。キャパシタCを備えない構成の場合、測定部の入力側の回路が有する浮遊容量がキャパシタンスとして寄与することになる。
【0031】
図1に示す構成例では、コイルL、及びキャパシタCが共振回路を形成しており、当該共振回路に、分岐器32を介して高周波発生回路31が接続されている。
【0032】
高周波発生回路31は高周波を発生させる。高周波発生回路31が発生させる高周波の周波数は本実施形態を限定するものではないが、一例として、高周波発生回路31は、数十MHz~数GHz程度の高周波を発生させる。周波発生回路31が発生させる高周波の周波数は、一例として設定部60によって設定される。
【0033】
分岐器32は、高周波発生回路31が発生させる高周波を、共振回路に供給する一方で、接点OC2の電磁気学的状況が反映された高周波を信号増幅器33に伝達する機能を有する。
【0034】
復調器34は、高周波発生回路31が出力する高周波を用いて、信号増幅器33の出力側の信号を復調する。より具体的に言えば、信号増幅器33の出力側の信号を低周波のベースバンド信号に変換することによって復調後の信号を生成する。復調器34による復調後の信号は、測定部20のADC21に供給される。
【0035】
なお、測定部の入力側に高周波発生回路及び共振回路を備える構成は、本実施形態を限定するものではない。一例として、測定装置2は、高周波発生回路及び共振回路を備えない構成としてもよい。
【0036】
(測定部)
測定部20は、上述したように、アナログデジタルコンバータ(ADC)21、減算器22、コントローラ23、及びデジタルアナログコンバータ(DAC)24を備えている。
【0037】
ADC21は、
図1に示すように、復調器34に接続された信号線における信号を取得する。したがって、ADC21は、量子ドットデバイス10の何れかの位置に配置された接点OC2に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する信号取得部であると表現することもできる。
【0038】
ADC21は、取得したアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号を減算器22に供給する。本実施形態において、ADC21による変換後のデジタル信号をvm(t)とも表記する。
【0039】
ADC21によるサンプリングレートは、本実施形態を限定するものではないが、一例として、高周波発生回路31が発生させる高周波の周波数に応じたサンプリングレートを採用することができる。例えば、高周波発生回路31が発生させる高周波の周波数を、数十MHz~数百MHz程度とする場合、これに対応して、ADC21によるサンプリングレートも数十MHz~数百MHzとしてもよい。また、高周波発生回路31が発生させる高周波の周波数よりも低い周波数となるように、ADC21によるサンプリングレートを100MHz以下としてもよい。
【0040】
なお、図示は省略するが、測定部20は、ADC21による変換後のデジタル信号vm(t)に対して作用する周波数可変のデジタルローパスフィルタを備える構成としてもよい。当該構成の場合、減算器22には、当該デジタルローパスフィルタ後の信号が入力される。
【0041】
減算器22は、参照信号vsの値から、デジタル信号vm(t)の値を減算することによって、差分信号e(t)を生成する。ここで参照信号vsは、一例として、一定のセットポイント電圧に対応する値を有するデジタル信号である。また、本実施形態において、参照信号vsのことを目標値と表現することもある。参照信号vsの値は、一例として設定部60が設定する。
【0042】
コントローラ23は、差分信号e(t)から、量子ドットデバイス10に配置された電荷センサ13に供給するための制御信号u(t)を生成する。
【0043】
より具体的には、コントローラ23は、差分信号e(t)に対して以下の演算を行うことによって、制御信号u(t)を生成する。
【数1】
ここで、係数K
p、K
i、及びK
dは、それぞれ、第1項である比例項(P)、第2項である積分項(I)、及び第3項である微分項(D)の係数を示している。
【0044】
したがって、コントローラ23が生成した制御信号u(t)には、差分信号e(t)に対して積分演算を行うことによって得られた信号成分が含まれている。
【0045】
また、コントローラ23が生成した制御信号u(t)には、差分信号e(t)に対して線形演算及び微分演算の少なくとも何れかの演算を行うことによって得られた信号成分が含まれている。
【0046】
コントローラ23が出力する制御信号は、ADC21によるデジタル変換処理に関連する遅延及びコントローラ23自体の処理による遅延に起因して、所定の時間τだけ遅延している。したがって、コントローラ23が出力する制御信号をu(t-τ)とも表記する。ここで、遅延時間τの具体的な値は本実施形態を限定するものではないが、ADC21によるデジタル変換処理に関連する遅延及びコントローラ23自体の処理による遅延に応じて定まる。一例として、高周波発生回路31が発生させる高周波の周波数が100MHz程度である場合、遅延時間τが0.5μs(マイクロ秒)程度となるように設計することが可能である。
【0047】
なお、コントローラ23は一例として、論理回路又は集積回路等によって実現することが可能である。一例として、コントローラ23は、FPGA(Field Programmable Gate Array)によって実現することもできる。
【0048】
また、コントローラ23は、他の例としてソフトウェアを用いて実現することもできる。ただし、コントローラ23をソフトウェアを用いて構成した場合、上述した遅延時間τが数十μs(マイクロ秒)程度になり得るため、当該遅延時間を考慮した設計を行うことが好ましい。
【0049】
(測定部の出力側に接続された構成)
コントローラ23が出力した制御信号u(t-τ)は、デジタルアナログコンバータ(ADC)24によってアナログ信号に変換され、変換後のアナログ回路は減衰器41に入力される。減衰器41は、自身に入力されたアナログ信号を、所定の減衰率で減衰させ、減衰後の信号を出力する。ここで、減衰器41による減衰率は、本実施形態を限定するものではないが、一例として、20dB程度の減衰を行う構成とすることができる。
【0050】
減衰器41による減衰後の信号には、加算器42によって所定の電圧Vsが加算される。加算器42によって所定の電圧が加算された後の信号は、ローパスフィルタ43に供給される。
【0051】
ローパスフィルタ43は自身に入力された信号の高周波成分を減衰させすることによってローパスフィルタ後の信号を生成する。ローパスフィルタ後の信号は、第3のプランジャーゲートP3に供給される。
【0052】
第3のプランジャーゲートP3に供給された信号は、電荷センサ13等を介して、接点OC2の電磁気学的状況に影響を及ぼす。
【0053】
このように、測定装置2は、制御信号uを減衰させる減衰器41と、減衰器41による減衰後の前記制御信号uに対して所定の電圧Vsを加算する加算器42と、前記加算器42の出力に作用することによってフィルタ済信号を生成し、生成したフィルタ済信号を前記電荷センサに供給するローパスフィルタ43とを備えている。
【0054】
測定装置2は、上記の構成を有することによって、50mK程度の極低温環境に配置された量子ドットデバイス10の動作に影響を与えないよう、安定かつ低雑音な回路として実現される。
【0055】
また、以上の説明から分かるように、量子ドットデバイス10、測定部2の入力側の構成、及び測定部2の出力側の構成は、閉じたフィードバックループを構成している。
【0056】
(測定結果)
続いて、参照する図面を代えて、測定装置2による測定結果について説明する。まず、
図2を参照して、比較例に係る測定結果について説明する。
【0057】
図2は、比較例に係る測定結果を示す図である。
図2の上段は、測定装置2によるフィードバック制御をオフにした場合に得られる測定結果を示している。
【0058】
図2の左側のダイアグラムは、横軸をV
L(mV)、縦軸をV
R(mV)とした場合の信号v
m(mV)の値を濃淡で示したダイアグラムである。また、
図2の右側は、横軸をV
L(mV)、縦軸をV
R(mV)とした場合の
【数2】
の値を濃淡で示したダイアグラムである。
【0059】
一方、
図2の下段は、横軸をV
Rとした場合の信号v
mの取り得る値を模式的に示したグラフである。
図2の下段のグラフに示すように、「blind」と示したグレーの範囲では、信号v
mの値に変化が生じない。これは、V
Rの値が「blind」範囲にある場合、測定の感度がないことを示している。「blind」範囲は、Coulomb Blockade Regimeに対応している。一方、
図2の下段のグラフに示すように、「blind」と示したグレーの範囲以外の範囲では、v
mの値がピークを取る挙動を示していることから分かるように、測定の感度があることを示している。v
mの値のピークのことをCoulomb Peakとも呼ぶ。
【0060】
このような「blind」範囲の存在に起因して、
図2の上段左側のダイアグラムでは、濃淡が濃い帯状の領域でのみ測定が感度を有しており、それ以外の範囲では測定が感度を有していない。同様に、
図2の上段右側のダイアグラムでも、縞状の領域でのみ測定が感度を有しており、それ以外の範囲では測定が感度を有していない。
【0061】
したがって、
図2上段に示したV
L及びV
Rの全範囲について有意な測定結果を得るためには、第3のプランジャーゲートP3に供給する信号の値をファインチューニングする等を行うことによって測定感度を有する範囲をずらしながら、繰り返し測定を行う必要がある。
【0062】
一方、
図3は、測定装置2によるフィードバック制御をオンにした場合に得られる測定結果、すなわち、上述した測定装置2の各構成が機能した場合の測定結果を示している。
【0063】
図3の上段左側のダイアグラムは、横軸をV
L(mV)、縦軸をV
R(mV)とした場合の制御信号u(mV)の値を濃淡で示したダイアグラムである。また、
図3の上段右側は、横軸をV
L(mV)、縦軸をV
R(mV)とした場合の
【数3】
の値を濃淡で示したダイアグラムである。
【0064】
また、
図3の下段は、制御信号uの値(横軸)と信号v
mの値(縦軸)との関係を、異なるV
Rに対して示したグラフである。
図3の下段において、グラフの濃淡は異なるV
Rの値に対応している。V
Rの値が増大すると、より薄いグラフへと遷移する。
図3の下段に示すように、v
mの値は、V
Rの値に応じた位置及び高さを有する複数のピーク(Coulomb Peak)を有している。
【0065】
測定装置2によるフィードバック制御をオンにした場合、フィードバック制御により、vmの値は、目標値vsに留まるように制御される。このため、vmの値は、グラフにおいて白丸で示した安定点に留まろうとする。一方で、VRの値が増大すると、ピークの高さが減少すると共に、ピークの位置が左側(uの値が小さい方)へとシフトする。それに伴い、安定点は、グラフにおいて短い左向きの矢印で示したように、左へとシフトする。更にVRの値が増大するとピークの高さが更に低くなるため、ピークの高さが目標値vs未満となる状況が生じる。この場合、測定装置2によるフィードバック制御により、安定点の位置が、より大きなuに対応するピークが有する安定点へとジャンプする(グラフにおける大きな右向きの矢印)。
【0066】
実際に、
図3の上段左側のダイアグラムに示すように、V
Rの値の変化に応じて、特定V
Rの値でuの値は不連続に変化している。
【0067】
一方で、
図3の下段のグラフを用いて説明したように、測定装置2によるフィードバック制御をオンにした場合、フィードバック制御により、v
mの値は、目標値v
sに留まるように制御される。これは、V
L及びV
Rの値が変化しても、測定装置2による測定が感度を有する状態に留まることを示している。
【0068】
実際、
図3の上段右側に示すように、
【数4】
の値が示すダイアグラムには、概ね45°程度傾いたHの字状の境界が明確に測定されている。この境界は、第1量子ドット11及び第2の量子ドットにおける電子の電荷配位の転移境界を示している。
【0069】
このように、フィードバック制御を行う測定装置2によれば、測定装置2が測定感度を有する状態に自動的にフィードバック制御されるので、比較例に係る構成のような、ファインチューニングを行いつつ繰り返し測定を行う必要性は生じない。したがって、測定装置2によれば、測定効率の高い量子ドットデバイスの測定を実現することができる。
【0070】
(測定装置の応答性とノイズパワースペクトラル密度)
続いて、
図4を参照して、測定装置2の応答性とノイズパワースペクトラル密度(Noise Power Specral Density(Noise PSD))について説明する。
【0071】
図4の左側は、V
Rの変動ΔV
Rの発生に応じた信号v
mの変動、及び制御信号uの変動を示すグラフである。
図4の左側に示すように、信号v
m及び制御信号uは、V
Rの変動の発生から0.5μs(マイクロ秒)程度の遅延を有していることが分かる。
【0072】
図4の右側は、測定装置2のフィードバック制御をオフにした場合(濃いグレー)と、フィードバック制御をオンにした場合(薄いグレー)のノイズパワースペクトラル密度を示すグラフである。
図4の右側に示すように、測定装置2のフィードバック制御をオンにすることにより、ノイズの発生が大幅に抑えられる。
【0073】
このように、測定装置2のフィードバック制御は、ノイズ抑制の観点からも好適な制御になっていることが分かる。
【0074】
(測定装置を用いた測定例)
続いて、測定装置2を用いた測定例について、
図5を参照して説明する。
【0075】
図5の上段左側は、Pauli Spin Blockade(PSB)を用いたスピン測定のサイクルを示すダイアグラムである。当該ダイアグラムにおいて実線は、第1の量子ドット11及び第2の量子ドット12よりなる2重量子ドット(Doulbe Quantum Dot(DQD))の荷電転移境界を示している。点Eでは、第1の量子ドット11は空き(Empty)状態であり、点Rでは第1の量子ドットに電子が(再)充填((Re)Loaded)された状態であり、点Mにおいて量子ドットが測定され、点Pにおいて、停留(Park)される。一例として、点Pにおいて、測定装置2のフィードバック制御がオン又はオフにされる。一例として、その他の点では、測定装置2のフィードバック制御はオフにされる。
【0076】
なお、本明細書において、記号(n、m)は、第1の量子ドット11にn個の電子が配置され、第2の量子ドット12に、m個の電子が配置されている状況を示している。
【0077】
図5の下段左側は、測定装置2を用いた2組のシングルショット測定の結果を示すグラフである。左側のピークは、スピン トリプレットに対応する(1、1)状態を示しており、右側のピークは、スピン シングレットに対応する(0、2)状態を示している。それぞれのピーク位置v
11、及びv
02は、時間に応じて変動し得る。
【0078】
図5の上段右側は、測定装置2によるフィードバック制御をオフにした場合(濃いグレー)、及びフィードバック制御をオンにした場合(薄いグレー)の、ピーク位置v
02の時間変動を示すグラフである。同グラフに示すように、測定装置2によるフィードバック制御をオンにすることにより、ピーク位置v
02の時間変動が抑制される。
【0079】
図5の下段右側は、コントローラ23による差分信号e(t)に対する積分時間t
intを横軸とした場合の、シングルショット測定のSNR(Signal to Noise Ratio)を示すグラフである。当該グラフにおいて、丸印(薄いグレー)は、測定装置2によるフィードバック制御をオンにした場合を示しており、四角印(濃いグレー)は、測定装置2によるフィードバック制御をオフにした場合を示している。
【0080】
測定装置2によるフィードバック制御をオンにすることにより、積分時間tintが長い場合のSNRが向上することがわかる。このことは、特に測定対象となる信号が微弱な場合(電荷配置等の条件によりv11とv02の差が小さくSNRが低い場合)に、フィードバック制御によって測定感度が改善されることを示している。
【0081】
(ダイアグラムの生成)
測定装置2が備えるダイアグラム生成部70は、測定装置2による測定結果に基づき、測定ダイアグラムを生成する。ここで、ダイアグラム生成部70は、一例として、設定部60によって設定又は取得された供給電圧VL又はVRの値を参照して、測定ダイアグラムを生成する構成としてもよい。
【0082】
ダイアグラム生成部70が生成する測定ダイアグラムの一例として、
図2の上段のダイアグラム、及び
図3の上段のダイアグラムを挙げることができるが、これは本実施形態を限定するものではなく、ダイアグラム生成部70は、測定結果に基づく種々のダイアグラム又はグラフ等を含む多様なダイアグラムを生成することができる。
【0083】
以上のように、測定装置2は、
量子ドットデバイス10上の1又は複数の量子ドット(11または12)に対して供給される供給電圧(VL又はVR)の電圧値を取得する供給電圧値取得部(設定部60)と、
前記制御信号uが示す電圧値、又は
前記制御信号uが示す電圧値の、前記供給電圧の電圧値(VL又はVR)による微分値
を含む測定ダイアグラムを生成する測定ダイアグラム生成部70と
を備えている。
【0084】
(測定方法)
続いて、本実施形態に係る量子ドットデバイスのための測定方法について、
図6を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る量子ドットデバイスのための測定方法の流れを示すフローチャートである。
【0085】
ステップS102において、測定装置2は、上述した信号vmを取得する。続いて、ステップS104において、測定装置は、上述したように、制御信号uを生成する。生成された制御信号uは、量子ドットデバイス10に供給される。
【0086】
続いて、ステップS106において、測定装置2は、測定を終了させるか否かを判断する。測定を終了させる場合には、ステップS108に進み、測定を終了させない場合には、ステップS102に戻り、測定を続ける。
【0087】
ステップS108において、測定装置2のダイアグラム生成部70は、測定結果に基づき、測定ダイアグラムを生成する。測定ダイアグラムの例は上述した通りである。
【0088】
このように、本実施形態に係る量子ドットデバイスのための測定方法は、
量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップS102と、
所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップS104と
を含んでいる。
【0089】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0090】
実施形態1において説明した量子ドットデバイス10及び測定装置2は、量子コンピュータに適用することができる。
【0091】
図7は、実施形態1において説明した量子ドットデバイス10及び測定装置2を備える量子コンピュータ100の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、本実施形態に係る量子コンピュータ100は、入出力部90、測定装置2、及び量子ドットデバイス10を備えている。なお、
図7では、量子ドットデバイス10を1つ図示しているが、これは本実施形態を限定するものではなく、量子コンピュータ100は、量子ドットデバイス10を複数備える構成とすることができ、測定装置2も、そのような複数の量子ドットデバイスに関する測定を行う構成とすることができる。
【0092】
量子コンピュータ100が実行すべき量子計算を規定する情報、並びに、量子ドットデバイス10及び測定装置2によって実行された量子計算の結果を示す情報は、量子コンピュータ100の備える入出力部90によって入力又は出力される。
【0093】
また、本実施形態に係る量子コンピュータ100の制御方法は、
図6を用いて説明したステップS102及びステップS104を含んで構成される。
【0094】
本実施形態によれば、量子ドットデバイス10及び測定装置2を備える好適な量子コンピュータを実現することができる。
【0095】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した内容ついては、その説明を繰り返さない。
【0096】
本明細書に記載の発明は、上記実施形態にて説明した内容に限られない。本実施形態では、量子ドットデバイス10及び測定装置2を用いた量子ドットの製造方法について説明する。本実施形態における量子ドットの製造方法は、量子ドットにおける量子状態の製造方法と表現することもできる。
【0097】
ここで本実施形態に係る量子ドットは、一例として実施形態1において説明した第1の量子ドット11及び第2の量子ドット12が挙げられる。
【0098】
本実施形態に係る量子ドットの製造方法は、
図6を用いて説明したステップS102及びステップS104を含んで構成される。
【0099】
本実施形態に係る量子ドットの製造方法によれば、量子ドットデバイス10及び測定装置2を用いて、量子ドット、及び量子ドットにおける量子状態を好適に製造することができる。
【0100】
〔ソフトウェアによる実現例〕
測定装置2(以下、「装置」と呼ぶ)の一部の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各ブロック(特に測定部20に含まれる各部(特にコントローラ23)、並びに、操作受付部50、設定部60、ダイアグラム生成部70)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0101】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0102】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0103】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。
【0104】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る測定装置は、量子ドットデバイスのための測定装置であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する信号取得部と、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路とを備えている。
【0105】
上記の構成によれば、測定効率の高い量子ドットデバイスの測定技術を実現することができる。
【0106】
本発明の態様2に係る測定装置は、上記態様1において、前記生成回路が生成する前記制御信号には、前記差分信号に対して積分演算を行うことによって得られた信号成分が含まれていてもよい。
【0107】
本発明の態様3に係る測定装置は、上記態様1又は2において、前記生成回路が生成する前記制御信号には、前記差分信号に対して線形演算及び微分演算の少なくとも何れかの演算を行うことによって得られた信号成分が含まれていてもよい。
【0108】
本発明の態様4に係る測定装置は、上記態様1から3の何れにおいて、前記制御信号を減衰させる減衰器と、前記減衰器による減衰後の前記制御信号に対して所定の電圧を加算する加算器と、前記加算器の出力に作用することによってフィルタ済信号を生成し、生成したフィルタ済信号を前記電荷センサに供給するローパスフィルタとを備えていてもよい。
【0109】
本発明の態様5に係る測定装置は、上記態様1から4の何れにおいて、前記接点に接続された共振回路と、前記共振回路に接続された高周波発生回路とを備えていてもよい。
【0110】
本発明の態様6に係る測定装置は、上記態様1から5の何れにおいて、前記量子ドットデバイス上の1又は複数の量子ドットに対して供給される供給電圧の電圧値を取得する供給電圧値取得部と、前記制御信号が示す電圧値、又は前記制御信号が示す電圧値の、前記供給電圧の電圧値による微分値を含む測定ダイアグラムを生成する測定ダイアグラム生成部とを備えていてもよい。
【0111】
本発明の態様7に係る測定方法は、量子ドットデバイスのための測定方法であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップと、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップとを含んでいる。
【0112】
上記の構成によれば、態様1と同様な効果を奏する。
【0113】
本発明の態様8に係る量子ドットの製造方法は、量子ドットデバイスを用いた量子ドットの製造方法であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップと、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップとを含んでいる。
【0114】
上記の構成によれば、好適な量子ドットを製造することができる。
【0115】
本発明の態様9に係る量子コンピュータは、量子ドットデバイスと、当該量子ドットデバイスのための測定装置とを備えている量子コンピュータであって、前記測定装置は、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得部と、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路とを備えている。
【0116】
上記の構成によれば、好適な量子コンピュータを実現することができる。
【0117】
本発明の態様10に係る量子コンピュータの制御方法は、量子ドットデバイスと、当該量子ドットデバイスのための測定装置とを備えている量子コンピュータの制御方法であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する電圧信号取得ステップと、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を、生成回路によって生成する生成ステップとを含んでいる。
【0118】
上記の構成によれば、量子コンピュータの好適な制御方法を提供することができる。
【0119】
本発明の態様11に係る集積回路は、量子ドットデバイスの測定のための集積回路であって、量子ドットデバイスの何れかの位置に配置された接点に対して電磁気学的に接続された信号線における信号を取得する信号取得部と、所定の目標値と前記信号の示す値との差分を示す差分信号から、前記量子ドットデバイスに配置された電荷センサに供給するための制御信号を生成する生成回路と、として機能する論理回路が形成されている。
【0120】
上記の構成によれば、態様1と同様な効果を奏する。
【0121】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1 測定システム
2 量子ドットデバイスの測定装置
10 量子ドットデバイス
11 第1の量子ドット
12 第2の量子ドット
13 電荷センサ
20 測定部
21 アナログデジタルコンバータ(ADC)
22 減算器
23 コントローラ
24 デジタルアナログコンバータ(DAC)
31 高周波発生回路
32 分岐器
33 信号増幅器(ローノイズアンプ)
34 復調器
41 減衰器
42 加算器
43 ローパスフィルタ
50 操作受付部
60 設定部
70 ダイアグラム生成部