(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20241101BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241101BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241101BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20241101BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20241101BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241101BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241101BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241101BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241101BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241101BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241101BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241101BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20241101BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K9/16
A61K31/713
A61K47/04
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/00
A61P17/04
A61P27/02
A61P29/00
A61P37/08
A61P43/00 111
C12N15/113 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2021505844
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 KR2019095028
(87)【国際公開番号】W WO2020027641
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-02-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-01
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】10-2019-0093707
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022072
【氏名又は名称】レモネックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LEMONEX INC.
【住所又は居所原語表記】(DM Tower, Bangbae-dong) 103, Bangbae-ro, Seocho-gu, Seoul 06683 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, チョル ヘ
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】前田 佳与子
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0016475(KR,A)
【文献】特開2017-127333(JP,A)
【文献】特開2011-121813(JP,A)
【文献】特開2008-538217(JP,A)
【文献】特開2008-512151(JP,A)
【文献】Small,2012年,Vol.8,No.11,p.1752-1761
【文献】Molecules,2017年,Vol.23,No.47,p.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
A61K47/00-47/69
A61K39/395
A61P1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を
気孔内部に担持した多孔性シリカ粒子;を含み、
前記多孔性シリカ粒子は、
前記核酸分子を担持する前に下記数式1の吸光度の比が1/2となるtが24以上であ
り、
前記多孔性シリカ粒子は、前記核酸分子を担持する前に、前記多孔性シリカ粒子の平均直径が150nm~1,000nmであり、前記多孔性シリカ粒子のBET表面積は200m
2
/g~700m
2
/gであり、前記多孔性シリカ粒子の気孔のg当たりの体積は0.7ml~2.2mlであり、
前記多孔性シリカ粒子は、前記核酸分子を担持する前に前記気孔内部が中性のpHで陽電荷を帯びる、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
[数式1]
A
t/A
0
(式中、A
0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは7.4であり、
A
tは、前記A
0の測定時からt時間経過後に測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【請求項2】
前記核酸分子は、siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAのいずれか一つである、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記核酸分子は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号47の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号24の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号2の配列からなるセンスRNA及び配列番号48の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号25の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号3の配列からなるセンスRNA及び配列番号49の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号26の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号4の配列からなるセンスRNA及び配列番号50の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号27の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号5の配列からなるセンスRNA及び配列番号51の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号28の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号6の配列からなるセンスRNA及び配列番号52の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号29の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号7の配列からなるセンスRNA及び配列番号53の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号30の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号8の配列からなるセンスRNA及び配列番号54の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号31の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号9の配列からなるセンスRNA及び配列番号55の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号32の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号10の配列からなるセンスRNA及び配列番号56の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号33の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号11の配列からなるセンスRNA及び配列番号57の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号34の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号12の配列からなるセンスRNA及び配列番号58の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号35の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号13の配列からなるセンスRNA及び配列番号59の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号36の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号14の配列からなるセンスRNA及び配列番号60の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号37の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号15の配列からなるセンスRNA及び配列番号61の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号38の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号16の配列からなるセンスRNA及び配列番号62の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号39の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号17の配列からなるセンスRNA及び配列番号63の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号40の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号18の配列からなるセンスRNA及び配列番号64の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号41の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号19の配列からなるセンスRNA及び配列番号65の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号42の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号20の配列からなるセンスRNA及び配列番号66の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号43の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号21の配列からなるセンスRNA及び配列番号67の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号44の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号22の配列からなるセンスRNA及び配列番号68の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号45の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号23の配列からなるセンスRNA及び配列番号69の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA及び配列番号46の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA;からなる群より選択される少なくとも一つのsiRNAまたはdsRNAを含む、請求項
2に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項4】
前記センスRNA及び前記アンチセンスRNA配列の3’末端にUUの配列をさらに含むものである、請求項
3に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項5】
前記センスRNA及び前記アンチセンスRNA配列の3’末端にdTdTの配列をさらに含むものである、請求項
3に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項6】
前記核酸分子は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号47の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号24の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号14の配列からなるセンスRNA及び配列番号60の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号37の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号21の配列からなるセンスRNA及び配列番号67の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA及び配列番号44の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA;からなる群より選択される少なくとも一つのsiRNAまたはdsRNAを含む、請求項
3に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項7】
前記核酸分子は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号47の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNAまたは配列番号24の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNAを含む、請求項
6に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
前記多孔性シリカ粒子は、親水性または疎水性の官能基を有するものである、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項9】
前記アトピー性疾患は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、炎症性皮膚疾患、掻痒症および食物アレルギーからなる群より選択される少なくとも一つである、請求項1に記載のアトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたアトピー性疾患の予防または治療効果を有する薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎は、慢性のかゆみと皮膚の炎症症状を伴う難治性疾患である。アトピー性皮膚炎とじんましんの臨床的症状の最も大きな違いは、かゆみを誘発するメカニズムの違いに起因する。一般的にじんましんのかゆみは、肥満細胞から分泌されるヒスタミンによって媒介されるので、抗ヒスタミン薬で治療が可能であるが、アトピー性皮膚炎のかゆみは、ヒスタミンの他にも様々な免疫炎症反応によって媒介されるので、抗ヒスタミン薬だけではかゆみの症状さえも効果的に調節することができない。したがって、アトピー性疾患の効果的な治療のためには、免疫反応によって媒介されるかゆみを癒すことが非常に重要である。
【0003】
TSLP(thymic stromal lymphopoietin)は、アトピー性疾患の慢性炎症反応によって皮膚上皮細胞であるケラチン細胞(keratinocytes)から多く分泌され、慢性のアトピー性皮膚炎患者の複合喘息患者への進行を媒介する重要な因子である。また、皮膚上皮細胞から分泌されたTSLPは、TRPA-1陽性-体性感覚ニューロンを活性化させてかゆみを誘発する。前記TSLPのすべての機能の詳細は知られていないが、最近の研究結果によると、TSLPの発現は、病理学的、免疫学的、そして分子生物学的にアトピー性皮膚炎及び/又は喘息疾患などのアトピー性疾患と関連しているところ、TSLPは美容、治療、薬剤学的に重要な因子と考えられる。
【0004】
TSLPの発現抑制のために、化学的治療方法のようにアンチセンス核酸を用いるか、または干渉RNAとして知られている方法を利用することができる。また、二本鎖RNA(dsRNA)オリゴヌクレオチドとsiRNAオリゴヌクレオチドを用いることができる。
【0005】
一方、現在までsiRNAの送達のために、陽イオン性高分子、脂質ナノ粒子(LNP)、ウイルスおよび様々なナノ物質が開発された。陽イオン性高分子とLNPの臨床的適用は、生体内構造の毒性及び/又は不安定性に注意する必要があり、ウイルス性の遺伝子の送達は、低い包装能力のほか突然変異誘発の問題がある。siRNAバックボーンの化学的変形は、安定性と細胞吸収を増加させることができるが、依然として、高コスト、労働集約性、時間のかかる工程、及び標的細胞での満足できる効果を得るための多量のsiRNA投与のような欠点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、TSLPの発現を高効率で抑制し、優れたアトピー性疾患の予防または治療効果を有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子;を含み、
前記多孔性シリカ粒子は、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtが24以上である、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは7.4であり、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した前記多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0008】
2.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、直径5nm未満の気孔を有するシリカ粒子を120℃~180℃で24時間~96時間膨張剤と反応させ、前記直径5nm未満の気孔を膨張させるステップと、前記気孔が膨張されたシリカ粒子を400℃以上の温度で3時間以上か焼するステップとを含んで製造されたものである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0009】
3.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子の平均直径は150nm~1,000nmであり、そのBET表面積は200m2/g~700m2/gであり、そのg当たりの体積は0.7ml~2.2mlである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0010】
4.前記項目1において、前記核酸分子は、siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAのいずれか一つである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0011】
5.前記項目4において、前記核酸分子は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号47の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号24の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号2の配列からなるセンスRNA及び配列番号48の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号25の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号3の配列からなるセンスRNA及び配列番号49の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号26の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号4の配列からなるセンスRNA及び配列番号50の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号27の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号5の配列からなるセンスRNA及び配列番号51の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号28の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号6の配列からなるセンスRNA及び配列番号52の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号29の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号7の配列からなるセンスRNA及び配列番号53の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号30の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号8の配列からなるセンスRNA及び配列番号54の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号31の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号9の配列からなるセンスRNA及び配列番号55の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号32の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号10の配列からなるセンスRNA及び配列番号56の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号33の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号11の配列からなるセンスRNA及び配列番号57の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号34の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号12の配列からなるセンスRNA及び配列番号58の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号35の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号13の配列からなるセンスRNA及び配列番号59の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号36の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号14の配列からなるセンスRNA及び配列番号60の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号37の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号15の配列からなるセンスRNA及び配列番号61の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号38の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号16の配列からなるセンスRNA及び配列番号62の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号39の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号17の配列からなるセンスRNA及び配列番号63の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号40の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号18の配列からなるセンスRNA及び配列番号64の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号41の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号19の配列からなるセンスRNA及び配列番号65の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号42の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号20の配列からなるセンスRNA及び配列番号66の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号43の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号21の配列からなるセンスRNA及び配列番号67の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号44の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号22の配列からなるセンスRNA及び配列番号68の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号45の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号23の配列からなるセンスRNA及び配列番号69の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA及び配列番号46の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA;からなる群より選択される少なくとも一つのsiRNAまたはdsRNAを含む、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0012】
6.前記項目5において、前記センスRNA及び前記アンチセンスRNA配列の3’末端にUUの配列をさらに含むものである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0013】
7.前記項目5において、前記センスRNA及び前記アンチセンスRNA配列の3’末端にdTdTの配列をさらに含むものである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0014】
8.前記項目5において、前記核酸分子は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号47の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号24の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号14の配列からなるセンスRNA及び配列番号60の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号37の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号21の配列からなるセンスRNA及び配列番号67の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA及び配列番号44の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA;からなる群より選択される少なくとも一つのsiRNAまたはdsRNAを含む、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0015】
9.前記項目8において、前記核酸分子は、配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号47の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNAまたは配列番号24の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNAを含む、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0016】
10.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、外部表面または気孔内部が中性のpHで陽電荷を帯びるものである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0017】
11.前記項目1において、前記多孔性シリカ粒子は、親水性または疎水性の官能基を有するものである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【0018】
12.前記項目1において、前記アトピー性疾患は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、炎症性皮膚疾患、掻痒症および食物アレルギーからなる群より選択される少なくとも一つである、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【発明の効果】
【0019】
本発明の組成物は、TSLPの発現を効果的に抑制できる核酸分子を高効率で徐放的に送達して、優れた効率でTSLPの発現を抑制することができる。これによって、TSLPの過剰発現による様々なアトピー性疾患の予防または治療効果を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、合成されたSLIGRLペプチドのMS分析値を示すものである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の顕微鏡写真である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の製造工程における小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る小気孔粒子の顕微鏡写真である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の気孔直径別の顕微鏡写真である。 DDV(Degradable Delivery Vehicle)は、実施例の粒子であり、括弧内の数字は粒子の直径を、下付き文字の数字は気孔の直径を意味する。例えば、DDV(200)
10は、粒子直径が200nm、気孔直径が10nmである実施例の粒子を意味する。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の生分解性を確認できる顕微鏡写真である。
【
図8】
図8は、一つの例示による円筒状の透過膜を備えたチューブである。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による粒径別の吸光度の減少の結果である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による気孔直径別の吸光度の減少の結果である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による環境のpH別の吸光度の減少の結果である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子の時間経過による吸光度の減少の結果である。
【
図14】
図14は、一つの例示によるsiRNAまたはdsRNAの放出を確認するチューブである。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態に係る多孔性シリカ粒子に担持されたsiRNAの時間経過による放出程度を示すものである。
【
図16】
図16は、siRNAが担持されたDDVのHaCaT細胞内の形態学的特徴を示す。
【
図17】
図17は、siRNAが担持されたDDVのHeLa細胞内の形態学的特徴を示す。
【
図18】
図18は、HaCaT細胞でSLIGRLの処理時にTSLPの発現が誘導されることを示す。
【
図19】
図19は、HaCaT細胞にLEM-siTSLP#1、LEM-siTSLP#14、LEM-siTSLP#21を処理し、取得12時間前にSLIGRLを処理してTSLPを誘導した後、RT-PCRを用いてTSLP mRNAの発現レベルを確認した結果を示す。
【
図20】
図20は、HaCaT細胞にLEM-siTSLP及びsiTSLPを担持したLNPを処理し、TSLP mRNAの発現レベルを比較した結果を示す。
【
図21】
図21は、マウスの皮膚にLEM-siTSLP(mouse)を注入した後、皮膚を摘出して確認した蛍光画像を示す。
【
図22】
図22は、マウスの皮膚にDegradaBALLに担持されていないFITC-接合されたsiTSLP(mouse)を注入した後、皮膚を摘出して確認した蛍光画像を示す。
【
図23】
図23は、マウスの皮膚にLEM-siTSLP(mouse)を注入した後に皮膚を摘出し、LEM-siTSLP(mouse)の送達効果および分布変化を確認した蛍光画像を示す。
【
図24】
図24は、LEM-siTSLP(mouse)が注入されたマウスの擦過行動分析の結果を示す。
【
図25】
図25は、LEM-siTSLP(mouse)が注入されたマウスの擦過行動分析の結果を示す。
【
図26】
図26は、細胞にDegradaBALLを処理後の細胞生存率を観察した実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の具体的な説明において用語の具体的な意味を定義するが、これは当該分野の通常の技術者に理解される意味として受け入れられるものであるだけで、下記に定義された特定の意味に限定しようとする意図ではない。
【0022】
「siRNA」とは、RNA干渉または遺伝子サイレンシングを媒介することができる核酸分子を意味する。siRNAは、標的遺伝子の発現を抑制できるので、効率のよい遺伝子ノックダウン方法または遺伝子治療方法として提供される。siRNA分子は、センス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相応する(corresponding)配列)と、アンチセンス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相補的な配列)とが互いに反対側に位置して二重鎖をなす構造を有することができる。また、siRNA分子は、自己相補性(self-complementary)のセンス及びアンチセンス鎖を有する単一鎖の構造を有することができる。siRNAは、RNA同士にペアをなす二重鎖RNAの部分が完全に対をなすものに限定されず、ミスマッチ(対応する塩基が相補的でない)、バルジ(一方の鎖に対応する塩基がない)等によって対を成していない部分が含まれ得る。siRNAの末端構造は、標的遺伝子の発現をRNAi(RNA interference)効果により抑制できるものであれば、平滑(blunt)末端または粘着(cohesive)末端のいずれも可能である。粘着末端構造としては、3’-末端突出構造と5’-末端突出構造のいずれも可能である。また、siRNA分子は、自己相補性のセンスとアンチセンス鎖との間に短いヌクレオチド配列(例えば、約5-15nt)が挿入された形態を有することができる。この場合、ヌクレオチド配列の発現によって形成されたsiRNA分子は、分子内混成化によってヘアピン構造を形成することになり、全体としてはステム・アンド・ループ構造を形成することになる。このステム・アンド・ループ構造は、インビトロ(in vitro)またはインビボ(in vivo)でプロセシングされ、RNAiを媒介できる活性のsiRNA分子を生成する。
【0023】
「dsRNA」とは、siRNAの前駆体分子であり、標的細胞のDICER酵素(Ribonuclease III)を含むRISC複合体と会合してsiRNAに切断され、この過程でRNAiが発生する。dsRNAは、siRNAよりも数ヌクレオチドだけ長い配列を有し、センス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相応する(corresponding)配列)とアンチセンス鎖(標的遺伝子のmRNA配列に相補的な配列)が互いに反対側に位置して二重鎖をなす構造を有することができる。
【0024】
「PNA」とは、DNA又はRNAと類似の構造を持つが、DNA又はRNAとは異なり、電荷を帯びないように設計され、強い結合力を有する合成ポリマーである。DNAとRNAがデオキシリボース(deoxyribose)又はリボース(ribose)糖バックボーン(backbone)をそれぞれ有するのに対して、PNAのバックボーンは、反復的なN-(2-アミノエチル)-グリシン((N-(2-aminoethyl)-glycine)単位がペプチド結合で連結された構造を有する。プリン(purine)とピリミジン(pyrimidine)塩基がメチレン(-CH2-)とカルボニル基(-C=O-)でバックボーンに連結されている構造であり、ペプチドと同様に両末端にそれぞれN-末端とC-末端を有する。
【0025】
「核酸」とは、任意のPNA、DNAまたはRNA、例えば、組織サンプルに存在する染色体、ミトコンドリア、ウイルス及び/又は細菌核酸を含む意味である。二本鎖核酸分子のいずれか1つ又は2つの鎖を含み、無損傷核酸分子の任意の断片または一部を含む。
【0026】
「遺伝子」とは、タンパク質のコーディングまたは転写時、または他の遺伝子発現の調節時に機能的な役割を持つ任意の核酸配列またはその一部を意味する。遺伝子は、機能的タンパク質をコードするすべての核酸またはタンパク質をコードまたは発現する核酸の一部のみからなり得る。核酸配列は、エクソン、イントロン、開始または終了領域、プロモーター配列、他の調節配列または遺伝子に隣接する特有の配列内に遺伝子異常を含むことができる。
【0027】
用語「遺伝子発現」とは、一般的に生物学的活性のあるポリペプチドがDNA配列から生成され、細胞で生物学的活性を示す細胞プロセスを意味する。その意味で、遺伝子発現は、転写及び解読のプロセスを含むだけでなく、遺伝子または遺伝子産物の生物学的活性に影響を与えることができる転写後および解読後のプロセスを含む。前記プロセスは、RNAの合成、加工及び輸送だけでなく、ポリペプチドの合成、輸送、およびポリペプチドの解読後の変形を含むが、これらに限定されるものではない。タンパク質産物を暗号化しない遺伝子、例えばsiRNA遺伝子の場合における「遺伝子発現」という用語は、前駆体siRNAが遺伝子から生成されるプロセスを意味する。通常、前記プロセスは、タンパク質暗号遺伝子に対してRNAポリメラーゼIIによって誘導される転写とは異なり、siRNA遺伝子の転写産物が解読されてタンパク質を生成しないが、転写と呼ばれる。それにもかかわらず、siRNA遺伝子からの成熟siRNAの生成は、その用語が本明細書に使用されるように「遺伝子発現」という用語によって含まれる。
【0028】
用語「標的遺伝子(target gene)」とは、本願に開示される主題の方法および組成物を使用して調整するために標的とする遺伝子を意味する。このため、標的遺伝子は、その発現レベルがmRNAまたはポリペプチドのレベルにsiRNAによって下向き調節される核酸配列を含む。同様に、用語「標的RNA」または「標的mRNA」とは、siRNAが結合して標的遺伝子の発現の調節を誘導する標的遺伝子の転写体を意味する。
【0029】
用語「転写(transcription)」とは、遺伝子の暗号配列に存在する構造情報のRNAへの発現を誘導する遺伝子とRNAポリメラーゼの相互作用を含む細胞プロセスを意味する。
【0030】
「下向き調節(down-regulation)」という表現は、正常組織細胞に比べて、活性化された細胞で細胞内転写(gene transcription)または翻訳(gene translation)によって、特定の遺伝子のmRNAへの発現またはタンパク質への発現量が顕著に減少したことを意味する。
【0031】
「治療」とは、有益な、または望ましい臨床的結果を得るためのアクセスを意味する。本発明の目的のために、有益な、または望ましい臨床的結果は、非限定的に、症状の緩和、疾患の範囲の減少、疾患状態の安定化(即ち、悪化しない)、疾患の進行の遅延化または緩徐化、疾患状態の改善または一時的緩和および軽減(部分的または完全な)、検出可能かまたは検出不可能かを含む。また、「治療」は、治療を受けていないときに予想される生存率と比較して生存率を伸ばすことを意味し得る。治療は、治療学的治療および予防的または予防措置方法のすべてを指す。前記治療は、予防される障害だけでなく、既に発生した障害において要する治療を含む。
【0032】
「予防」とは、関連疾患の発症を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。本願の組成物が、初期症状、または示される前に投与した場合に関連疾患を予防できることは、当業者に自明であろう。
【0033】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明は、TSLP(thymic stromal lymphopoietin)遺伝子の転写体の少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子;を含むTSLP遺伝子発現抑制用組成物を提供するものである。前記多孔性シリカ粒子は、シリカ(SiO2)素材の粒子であり、ナノサイズの粒径を有する。
【0035】
本発明の多孔性シリカナノ粒子は、多孔性粒子であり、ナノサイズの気孔を有し、その表面(外部表面)及び/又は気孔内部にTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持することができる。
【0036】
本発明のTSLP mRNAは、対象ターゲット種と同じ種由来のmRNAであってもよく、例えば、ヒトの場合には配列番号149の配列であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、本発明のTSLP mRNAは、ヒトTSLP mRNA、マウスTSLP mRNA、サルTSLP mRNA、ウサギTSLP mRNAであってもよく、好ましくは、ヒトTSLP mRNAであってもよいが、これらに限定されない。
【0037】
本発明の核酸分子は、TSLP mRNA配列によって異なるように製作することができる。例えば、本発明の核酸分子は、ヒトTSLP mRNA配列に相補的に結合できるように製作されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性粒子であり、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持して体内に投与されたとき、体内で生分解されてTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を放出することができる。つまり、本発明の多孔性シリカ粒子は、体内で徐々に分解され、担持されたTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子が徐放的に放出されるようにすることができる。例えば、下記数式1の吸光度の比が1/2となるtは、24以上である。
【0039】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃で60rpmで水平攪拌され、
前記懸濁液のpHは、7.4であり、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0040】
前記数式1は、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。
【0041】
前記数式1における吸光度A
0、A
tは、例えば
図8に示されているように、円筒状の透過膜に多孔性シリカ粒子および懸濁液を入れ、透過膜の外部にも同じ懸濁液を入れて測定したものであり得る。
【0042】
本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性であり、懸濁液中で徐々に分解され得る。直径50kDaは約5nmに相当するものであり、生分解された多孔性シリカ粒子は、直径50kDaの透過膜を通過することができる。円筒状の透過膜は、60rpmの水平攪拌下にあるので、懸濁液を均一に混合することができ、分解された多孔性シリカ粒子は、透過膜の外部に放出され得る。
【0043】
前記数式1での吸光度は、例えば、透過膜の外部の懸濁液が新しい懸濁液に入れ替わる環境下で測定したものであり得る。懸濁液は、持続的に入れ替わるものであってもよく、一定期間ごとに入れ替わるものであってもよい。前記一定期間は、定期的または不定期的な期間であってもよい。例えば、1時間~1週間の範囲内で、1時間おき、2時間おき、3時間おき、6時間おき、12時間おき、24時間おき、2日おき、3日おき、4日おき、7日おき等に入れ替えることができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
前記「吸光度の比が1/2となる」ということは、t時間後の吸光度が初期吸光度の半分になるということであり、これは多孔性シリカ粒子の約半分が分解されたことを意味する。
【0045】
前記懸濁液は緩衝溶液であってもよく、具体例としては、PBS(リン酸緩衝食塩水)およびSBF(疑似体液)からなる群より選択される1種以上であってもよく、より具体的にはPBSであってもよい。
【0046】
本発明の前記数式1の吸光度の比が1/2となるtは24以上であり、例えばtは24~120であってもよく、例えば、前記範囲内で24~96、24~72、30~70、40~70、50~65などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/5となるtが、例えば70~140であってもよく、例えば、前記範囲内で80~140、80~120、80~110、70~140、70~120、70~110などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の多孔性シリカ粒子は、前記数式1の吸光度の比が1/20となるtが、例えば130~220であってもよく、例えば、前記範囲内で130~200、140~200、140~180、150~180などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明の多孔性シリカ粒子は、測定される吸光度が0.01以下となるtが、例えば、250以上、300以上、350以上、400以上、500以上、1,000以上などであってもよく、その上限は2,000であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明の多孔性シリカ粒子における前記数式1の吸光度の比とtは、高い量の相関関係を有するものであり、例えば、ピアソン相関係数が0.8以上であってもよく、例えば0.9以上、0.95以上であってもよい。
【0051】
前記数式1のtは、多孔性シリカ粒子が体内と同様の環境でどの程度の速度で分解されるかを意味するものである。これは、例えば多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することによって調節できる。
【0052】
例えば、粒子の表面積を増加させてtを減少させるか、表面積を減少させてtを増加させることができる。表面積は、粒子の直径、気孔の直径を調節することによって調節できる。また、表面及び/又は気孔内部に置換基を位置させ、多孔性シリカ粒子が環境(溶媒など)に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、多孔性シリカ粒子にTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持させ、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子と多孔性シリカ粒子間の親和度を増加させ、多孔性シリカ粒子が環境に直接露出することを減らしてtを増加させることができる。また、粒子の製造時に表面をより緻密に製造してtを増加させることもできる。前記に数式1のtを調節できる様々な例を示したが、それらに限定されるものではない。
【0053】
本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば球状粒子であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0054】
本発明の多孔性シリカ粒子は、平均粒径が例えば150nm~1,000nmであってもよく、例えば、前記範囲内で150nm~800nm、150nm~500nm、150nm~400nm、150nm~300nm、150nm~200nmであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0055】
本発明の多孔性シリカ粒子は、平均気孔直径が例えば1nm~100nmであってもよく、例えば、前記範囲内で5nm~100nm、7nm~100nm、7nm~50nm、10nm~50nm、10nm~30nm、7nm~30nmであってもよいが、これらに限定されるものではない。前記のような大きな直径を持って多量のTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持することができ、サイズの大きいTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の担持も可能である。
【0056】
本発明の多孔性シリカ粒子は、BET表面積が、例えば200m2/g~700m2/gであってもよい。例えば、前記範囲内で200m2/g~700m2/g、200m2/g~650m2/g、250m2/g~650m2/g、300m2/g~700m2/g、300m2/g~650m2/g、300m2/g~600m2/g、300m2/g~550m2/g、300m2/g~500m2/g、300m2/g~450m2/gなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の多孔性シリカナノ粒子は、g当たりの体積が例えば0.7ml~2.2mlであってもよい。例えば、前記範囲内で0.7ml~2.0ml、0.8ml~2.2ml、0.8ml~2.0ml、0.9ml~2.0ml、1.0ml~2.0mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。g当たりの体積が小さすぎると、分解速度が速くなりすぎることがあり、大きすぎると、製造が困難であるか、完全な形状を有しないことがある。
【0058】
本発明の多孔性シリカ粒子は、外部表面及び/又は気孔内部に親水性置換基及び/又は疎水性置換基が存在し得る。例えば、表面及び気孔内部の両方に親水性置換基のみが存在するか、疎水性置換基のみが存在してもよく、表面または気孔内部の一方のみに親水性置換基が存在するか、疎水性置換基が存在してもよい。また、表面に親水性置換基が、気孔内部に疎水性置換基が存在してもよく、その逆の場合も可能である。
【0059】
本発明の多孔性シリカ粒子に担持されたTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出は、主に、ナノ粒子の分解によって行われるものである。このため、前記置換基の調節によりTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出環境に対する多孔性シリカ粒子の相互作用を調節し、ナノ粒子自体の分解速度を調節して、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出速度を調節することができる。また、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、ナノ粒子から拡散して放出させることもできるが、前記置換基の調節によりTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子のナノ粒子への結合力を調節し、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出を調節することができる。
【0060】
また、難溶性(疎水性)のTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力を強化するために、気孔内部に疎水性置換基が存在し、使用、製剤化のし易さなどの側面で粒子の表面に親水性置換基が存在するようにするなどの処理も可能である。
【0061】
親水性置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルフヒドリル基、ホスフェート基、チオール基、アンモニウム基、エステル基、イミド基、チオイミド基、ケト基、エーテル基、インデン基、スルホニル基、ポリエチレングリコール基などが挙げられる。疎水性置換基としては、例えば、置換または非置換のC1~C30のアルキル基、置換または非置換のC3~C30のシクロアルキル基、置換または非置換のC6~C30のアリール基、置換または非置換のC2~C30のヘテロアリール基、ハロゲン基、C1~C30のエステル基、及びハロゲン含有基などが挙げられる。
【0062】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、外部表面及び/又は気孔内部が陽電荷、陰電荷、及び/又は無電荷に帯電されたものであってもよい。例えば、表面及び気孔内部の両方が陽電荷に帯電されるか、陰電荷に帯電されてもよく、表面または気孔内部の一方のみが陽電荷に帯電されるか、陰電荷に帯電されてもよい。また、表面が陽電荷、気孔内部が陰電荷に帯電されてもよく、その逆の場合も可能であり、無電荷の場合も同様である。
【0063】
前記帯電は、例えば、非イオン性置換基、陽イオン性置換基または陰イオン性置換基が存在することによって行われたものであり得る。
【0064】
前記陽イオン性置換基は、例えば、塩基性基としてアミノ基、その他の窒素含有基などであってもよく、具体的には、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、窒素原子を含むヘテロ環芳香族化合物基、シアン基及びグアニジン基からなる群より選択される少なくとも一つの官能基であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記陰イオン性置換基は、例えば、酸性基としてカルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、チオール基(-SH)などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0066】
同様に、前記帯電によって前記置換基の調節によりTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出環境に対する多孔性シリカ粒子の相互作用を調節し、ナノ粒子自体の分解速度を調節して、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出速度を調節することができる。また、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、ナノ粒子から拡散されて放出させることもできるが、前記置換基の調節によりTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子のナノ粒子への結合力を調節し、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出を調節することができる。
【0067】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、その表面及び/又は気孔内部に前記の他にTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の担持、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の標的細胞への移動、その他の目的のための物質の担持、又はその他の追加置換基の結合などのための置換基が存在してもよく、それに結合された抗体、リガンド、細胞透過性のペプチドまたはアプタマーなどをさらに含んでいてもよい。
【0068】
前述した表面及び/又は気孔内部の置換基、電荷、結合物質などは、例えば、表面改質によって付加することができる。
【0069】
表面改質は、例えば、導入しようとする置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができ、前記化合物は、例えば、C1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1つ以上有するものであり、例えば1~3つを有することができ、アルコキシ基の結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0070】
本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程を経て製造したものであってもよく、必要に応じて、か焼(calcination)工程、表面改質工程などをさらに経て製造したものであってもよい。か焼及び表面改質工程をすべて経た場合は、か焼後に表面改質されたものであってもよい。
【0071】
前記小気孔の粒子は、例えば、平均気孔直径が1nm~5nmの粒子であってもよい。
【0072】
前記小気孔の粒子は、溶媒に界面活性剤とシリカ前駆物質を入れて攪拌及び均質化して得ることができる。
【0073】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはメタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
前記溶媒において、水と有機溶媒の混合溶媒の使用時の割合は、例えば、水と有機溶媒を1:0.7~1.5の体積比、例えば1:0.8~1.3の体積比で使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
前記界面活性剤は、例えば、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TMABr(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)、TMPrCl(塩化ヘキサデシルトリメチルピリジニウム)、TMACl(塩化テトラメチルアンモニウム)などであってもよく、具体的にはCTABを使用することができる。
【0076】
前記界面活性剤は、例えば、溶媒1リットル当たりに1g~10g、例えば、前記範囲内で1g~8g、2g~8g、3g~8gなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
前記シリカ前駆物質は、溶媒に界面活性剤を添加して攪拌した後に添加することができる。シリカ前駆物質は、例えば、TMOS(テトラメチルオルソシリケート)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0078】
前記攪拌は、例えば10分~30分間行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0079】
前記シリカ前駆物質は、例えば溶媒1リットル当たりに0.5ml~5ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~4ml、0.5ml~3ml、0.5ml~2ml、1ml~2mlなどの量で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
必要に応じて、触媒として水酸化ナトリウムをさらに使用することができるが、これは溶媒に界面活性剤を添加した後、シリカ前駆物質の添加前に撹拌しながら添加することができる。
【0081】
前記水酸化ナトリウムは、例えば、1M水酸化ナトリウム水溶液を基準で溶媒1リットル当たりに0.5ml~8ml、例えば、前記範囲内で0.5ml~5ml、0.5ml~4ml、1ml~4ml、1ml~3ml、2ml~3mlなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0082】
前記シリカ前駆物質の添加後に溶液を攪拌して反応させることができる。攪拌は、例えば2時間~15時間行うことができ、例えば、前記範囲内で3時間~15時間、4時間~15時間、4時間~13時間、5時間~12時間、6時間~12時間、6時間~10時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。攪拌時間(反応時間)が短すぎると、結晶核生成(nucleation)が不足することがある。
【0083】
前記攪拌の後には、溶液を熟成(aging)させることができる。熟成は、例えば、8時間~24時間行うことができ、例えば、前記範囲内で8時間~20時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~16時間、10時間~14時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0084】
その後、反応産物を洗浄及び乾燥して多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0085】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0086】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができ、具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0087】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0089】
前記洗浄は、遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0090】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば、2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0091】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これらに限定されず、真空状態で行うこともできる。
【0092】
その後、前記で得られた多孔性シリカ粒子の気孔を拡張する。気孔の拡張は、気孔膨張剤を用いて行うことができる。
【0093】
前記気孔膨張剤としては、例えば、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリプロピルベンゼン、トリブチルベンゼン、トリペンチルベンゼン、トリヘキシルベンゼン、トルエン、ベンゼンなどを使用でき、具体的にはトリメチルベンゼンを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
また、前記気孔膨張剤としては、例えばN,N-ジメチルヘキサデシルアミン(N,N-dimethylhexadecylamine、DMHA)を使用できるが、これに限定されるものではない。
【0095】
前記気孔の拡張は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子を気孔膨張剤と混合し、加熱して反応させて行うことができる。
【0096】
前記溶媒は、例えば、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用でき、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
前記多孔性シリカ粒子は、例えば、溶媒1リットル当たりに10g~200g、例えば、前記範囲内で10g~150g、10g~100g、30g~100g、40g~100g、50g~100g、50g~80g、60g~80gなどの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
前記多孔性シリカ粒子は、溶媒中に均一に分散されているものであってもよく、例えば、溶媒に多孔性シリカ粒子を添加して超音波分散したものであってもよい。混合溶媒を使用する場合には、第1の溶媒に多孔性シリカ粒子を分散した後、第2の溶媒を添加したものであってもよい。
【0099】
前記気孔膨張剤は、例えば、溶媒100体積部に対して10~200体積部、前記範囲内で10~150体積部、10~100体積部、10~80体積部、30~80体積部、30~70体積部などの割合で添加できるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
前記反応は、例えば120℃~190℃で行うことができる。例えば、前記範囲内で120℃~190℃、120℃~180℃、120℃~170℃、130℃~170℃、130℃~160℃、130℃~150℃、130℃~140℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
前記反応は、例えば6時間~96時間行うことができる。例えば、前記範囲内で30時間~96時間、30時間~96時間、30時間~80時間、30時間~72時間、24時間~80時間、24時間~72時間、36時間~96時間、36時間~80時間、36時間~72時間、36時間~66時間、36時間~60時間、48時間~96時間、48時間~88時間、48時間~80時間、48時間~72時間、6時間~96時間、7時間~96時間、8時間~80時間、9時間~72時間、9時間~80時間、6時間~72時間、9時間~96時間、10時間~80時間、10時間~72時間、12時間~66時間、13時間~60時間、14時間~96時間、15時間~88時間、16時間~80時間、17時間~72時間などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0102】
前記例示した範囲内で時間および温度を調節して、反応が過剰せずに十分に行われるようにすることができる。例えば、反応温度が低くなると反応時間を増やしたり、反応温度が高くなると反応時間を短くしたりすることができる。反応が十分でないと、気孔の拡張が十分でないことがあり、反応が進行しすぎると、気孔の過剰拡張により粒子が崩壊することがある。
【0103】
前記反応は、例えば、段階的に昇温して行うことができる。具体的には、常温から前記温度まで0.5℃/分~15℃/分の速度で段階的に昇温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~15℃/分、3℃/分~15℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0104】
前記反応は、攪拌下で行うことができる。例えば100rpm以上の速度で攪拌することができ、具体的には100rpm~1,000rpmの速度で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
前記反応後は、反応液を徐々に冷却することができ、例えば、段階的に減温して冷却することができる。具体的には、前記温度から常温まで0.5℃/分~20℃/分の速度で段階的に減温して行うことができ、例えば、前記範囲内で1℃/分~20℃/分、3℃/分~20℃/分、3℃/分~12℃/分、3℃/分~10℃/分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0106】
前記冷却後に反応産物を洗浄および乾燥し、気孔が拡張された多孔性シリカ粒子を得ることができる。必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。
【0107】
前記未反応物質の分離は、例えば、遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0108】
前記洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上、10回以下、例えば、3回、4回、5回、6回、7回、8回などであってもよい。
【0109】
前記有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができ、具体的にはアルコール、より具体的にはエタノールを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0110】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、例えば、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0111】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液を、そのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0112】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、例えば、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0113】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0114】
その後、得られた粒子は、か焼することができる。か焼は、粒子を加熱してその表面および内部のシラノール基を除去して粒子の反応性を下げ、より緻密な構造にし、気孔を満たす有機物を除去する工程であり、例えば400℃以上の温度に加熱して行うことができる。その上限は特に限定されず、例えば、1,000℃、900℃、800℃、700℃等であってもよい。加熱は、例えば3時間以上、4時間以上など行うことができる。その上限は特に限定されず、例えば、24時間、12時間、10時間、8時間、6時間、5時間などであってもよい。より具体的には、400℃~700℃で3時間~8時間、具体的には500℃~600℃で4時間~5時間行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
気孔を満たす有機物を除去することにより、残存有機物によって示される細胞毒性、泡の発生などの問題を防止することができる。
【0116】
その後、得られた多孔性シリカ粒子は、表面改質することができる。表面改質は、表面及び/又は気孔内部に行うことができる。粒子表面と気孔内部は、同じように表面改質してもよく、異なるように表面改質してもよい。
【0117】
前記表面改質により粒子が帯電されるようにするか、または親水性及び/又は疎水性の性質を持つようにすることができる。
【0118】
より具体的には、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の効果的な担持のために、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、窒素原子を含むヘテロ環芳香族化合物基、シアン基及びグアニジン基からなる群より選択される少なくとも一つの置換基を有するようにして、前記多孔性シリカ粒子の表面改質を行うことができる。
【0119】
表面改質は、例えば、導入しようとする親水性、疎水性、陽イオン性、陰イオン性などの置換基を有する化合物を粒子と反応させて行うことができる。前記化合物は、例えばC1~C10のアルコキシ基を有するアルコキシシランであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0120】
前記アルコキシシランは、前記アルコキシ基を1個以上有するものであり、例えば1~3個有することができ、アルコキシ基が結合していない部位に導入しようとする置換基があるか、又はそれで置換された置換基があってもよい。
【0121】
前記アルコキシシランを多孔性シリカ粒子と反応させると、シリコン原子と酸素原子との共有結合が形成され、アルコキシシランが多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部と結合することができる。前記アルコキシシランは、導入しようとする置換基を有しているので、当該置換基を多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に導入することができる。
【0122】
前記反応は、溶媒に分散した多孔性シリカ粒子をアルコキシシランと反応させて行うことができる。
【0123】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);その他ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホアミド、テトラメチル尿素、N-メチルカプロラクタム、テトラヒドロフラン、m-ジオキサン、P-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタンなどを使用でき、具体的にはトルエンを使用できるが、これらに制限されるものではない。
【0124】
前記陽電荷での帯電は、例えばアミノ基、アミノアルキル基などの窒素含有基などの塩基性基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができる。具体的には、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]aniline)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
前記陰電荷での帯電は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、チオール基などの酸性基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができる。具体的には、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)などを使用できるが、これに限定されるものではない。
【0126】
前記無電荷(陽電荷または陰電荷でなない、電荷がない状態)での帯電は、電荷を持たない通常の官能基を有するアルコキシシランと反応させて行うことができ、前記陽電荷での帯電と陰電荷での帯電を適宜組み合わせて、陽電荷と陰電荷の相殺による無電荷に帯電させることができるが、これに限定されるものではない。
【0127】
前記親水性の性質は、親水性基、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、カルボニル基、スルフヒドリル基、ホスフェート基、チオール基、アンモニウム基、エステル基、イミド基、チオイミド基、ケト基、エーテル基、インデン基、スルホニル基、ポリエチレングリコール基などを有するアルコキシシランと反応させて持たせることができる。具体的には、 N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、N1-(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン(N1-(3-Trimethoxysilylpropyl)diethylenetriamine)、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン((3-Aminopropyl)trimethoxysilane)、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)、トリメトキシ[3-(メチルアミノ)プロピル]シラン(Trimethoxy[3-(methylamino)propyl]silane)、 3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン(3-(2-Aminoethylamino)propyldimethoxymethylsilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
前記疎水性の性質は、疎水性置換基、例えば、置換または非置換のC1~C30のアルキル基、置換または非置換のC3~C30のシクロアルキル基、置換または非置換のC6~C30のアリール基、置換または非置換のC2~C30のヘテロアリール基、ハロゲン基、C1~C30のエステル基、ハロゲン含有基などを有するアルコキシシランと反応させて持たせることができる。具体的には、トリメトキシ(オクタデシル)シラン(Trimethoxy(octadecyl)silane)、トリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)、トリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)、イソブチル(トリメトキシ)シラン(Isobutyl(trimethoxy)silane)、トリメトキシ(7-オクテン-1-イル)シラン(Trimethoxy(7-octen-1-yl)silane)、トリメトキシ(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン(Trimethoxy(3,3,3-trifluoropropyl)silane)、トリメトキシ(2-フェニルエチル)シラン(Trimethoxy(2-phenylethyl)silane)、ビニルトリメトキシシラン(Vinyltrimethoxysilane)、シアノメチル(Cyanomethyl)、[3-(トリメトキシシリル)プロピル]トリチオカーボネート([3-(trimethoxysilyl)propyl]trithiocarbonate)、(3-ブロモプロピル)トリメトキシシラン((3-Bromopropyl)trimethoxysilane)などを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
そのほか、前記表面改質により難溶性(疎水性)のTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力を強化するために、気孔内部に疎水性置換基が存在し、使用、製剤化のし易さなどの側面で粒子の表面に親水性置換基が存在するようにするなどの処理も可能であり、表面に他のTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を結合するための置換基が存在してもよい。
【0130】
また、前記表面改質は、複合的に行うこともできる。例えば、外部表面または気孔内部に2回以上の表面改質を行うこともできる。具体例として、アミノ基が導入されたシリカ粒子にカルボキシル基を含む化合物をアミド結合で結合して陽電荷に帯電した粒子を、他の表面特性を持つように変化させることができるが、これに限定されるものではない。
【0131】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば、加熱下で行うことができる。加熱は、例えば80℃~180℃、例えば、前記範囲内で80℃~160℃、80℃~150℃、100℃~160℃、100℃~150℃、110℃~150℃などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0132】
前記多孔性シリカ粒子のアルコキシシランとの反応は、例えば4時間~20時間、例えば、前記範囲内で4時間~18時間、4時間~16時間、6時間~18時間、6時間~16時間、8時間~18時間、8時間~16時間、8時間~14時間、10時間~14時間などで行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0133】
前記反応温度、時間、そして表面改質に使用される化合物の量などは、表面改質しようとする程度によって選択できる。本発明の核酸分子または物質の親水性、疎水性、電荷の程度によって反応条件を変えて多孔性シリカ粒子の親水性、疎水性、電荷の程度を調節することにより、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質の放出速度を調節することができる。例えば、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が中性のpHで強い陰電荷を帯びる場合には、多孔性シリカ粒子が強い陽電荷を帯びるようにするために、反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたり、化合物の処理量を増やすことができるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、例えば、小気孔の粒子の製造、気孔の拡張、表面改質、気孔内部の改質工程を経て製造されたものであってもよい。
【0135】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張工程は前述通りの工程によって行うことができ、小気孔の粒子の製造後、そして気孔拡張工程の後に洗浄及び乾燥工程を行うことができる。
【0136】
必要に応じて、洗浄の前に未反応物質の分離を先行することができる。未反応物質の分離は、例えば遠心分離で上澄み液を分離して行うことができる。
【0137】
前記遠心分離は、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0138】
前記小気孔の粒子の製造後の洗浄は、先に例示した範囲内の方法/条件で行うことができるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
前記気孔拡張後の洗浄は、先の例示よりは緩和された条件で行うことができる。例えば、洗浄を3回以内行うことができるが、これに限定されるものではない。
【0140】
前記表面改質と気孔内部改質のそれぞれは、前述通りの工程によって行うことができる。表面改質と気孔内部改質の順に工程を行うことができ、前記両工程の間に粒子の洗浄工程をさらに行うことができる。
【0141】
前記小気孔の粒子の製造および気孔拡張の後に洗浄をより緩和された条件で行う場合、気孔内部には粒子製造、気孔拡張に使用された界面活性剤などの反応液が満たされているため、表面改質時に気孔内部が改質されずに、表面だけが改質され得る。その後、粒子を洗浄すると、気孔内部の反応液が除去され得る。
【0142】
前記表面改質工程と気孔内部改質工程との間の粒子の洗浄は、水及び/又は有機溶媒で行うことができる。具体的には、溶媒ごとに溶解できる物質が異なるので、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0143】
前記洗浄は遠心分離下で行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで行うことができる。その時間は、例えば3分~60分、具体的には、前記範囲内で3分~30分、3分~30分、5分~30分などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0144】
前記洗浄は遠心分離をせずに、フィルタで粒子をろ過して行うこともできる。フィルタは、多孔性シリカ粒子の直径以下の気孔を有するものであってもよい。反応液をそのようなフィルタでろ過すると、粒子だけがフィルタの上に残り、そのフィルタの上に水及び/又は有機溶媒を注ぎ、洗浄することができる。
【0145】
前記洗浄時には、水と有機溶媒を1回または数回交互に使用してもよく、水または有機溶媒単独で1回または数回洗浄してもよい。前記数回は、例えば2回以上10回以下、具体的には、3回以上10回以下、4回以上8回以下、4回以上6回以下などであってもよい。
【0146】
前記乾燥は、例えば20℃~100℃で行うことができるが、これに限定されるものではなく、真空状態で行うこともできる。
【0147】
TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、多孔性シリカ粒子の表面及び/又は気孔内部に担持することができる。担持は、例えば、溶媒中の多孔性シリカ粒子とTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子とを混合して行うことができる。
【0148】
前記溶媒は、水及び/又は有機溶媒であってもよい。有機溶媒としては、例えば、1,4-ジオキサンなどのエーテル類(特に環状エーテル類);クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロプロパン、塩化アミル、1,2-ジブロモエタンなどのハロゲン化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素系芳香族類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジブチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンなどのアルキルアミド類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;などを使用することができる。
【0149】
また、前記溶媒として、PBS(リン酸緩衝食塩水)、SBF(疑似体液)、Borate-buffered saline、Tris-buffered salineなどを使用することもできる。
【0150】
前記多孔性シリカ粒子と本発明の核酸分子の割合は、特に限定されず、例えば、重量比が1:0.05~0.8、例えば、前記範囲内で1:0.05~0.7、1:0.05~0.6、1:0.1~0.8、1:0.1~0.6、1:0.2~0.8、1:0.2~0.6等であってもよい。
【0151】
前記多孔性シリカ粒子に担持されたTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、延長された時間をかけて段階的に放出され得る。このような遅い放出は、連続または非連続性、線形または非線形であってもよく、多孔性シリカ粒子の特徴及び/又はそれとTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子との相互作用に起因して異なり得る。
【0152】
前記多孔性シリカ粒子に担持されたTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、多孔性シリカ粒子が生分解されながら放出されるが、本発明に係る多孔性シリカ粒子は徐々に分解され、担持されたTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子が徐放的に放出されるようにすることができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子の表面積、粒径、気孔直径、表面及び/又は気孔内部の置換基、表面の緻密さの程度などを調節することで調節できるが、これらに限定されるものではない。
【0153】
また、前記多孔性シリカ粒子に担持されたTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子は、多孔性シリカ粒子から離脱して拡散しながらも放出できる。これは多孔性シリカ粒子とTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出環境との関係に影響を受けるものであるところ、これを調整して、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子の放出を調節することができる。例えば、表面改質によって多孔性シリカ粒子のTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子との結合力を強化または弱化させることによって調節することができる。
【0154】
より具体的な例として、担持されるTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が難溶性(疎水性)である場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部が疎水性置換基を有することにより、多孔性シリカ粒子とTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加し得る。これにより、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が疎水性置換基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0155】
本明細書で「難溶性」とは、(水に対して)不溶性(insoluble)、実質的に不溶性(practically insoluble)、またはごくわずかの可溶性(only slightly soluble)を含む意味である。これは「Pharmaceutical Science」18th Edition(USP、Remington、Mack Publishing Company発行)に定義されている用語である。
【0156】
前記難溶性の物質は、例えば1気圧、25℃での水溶解度が10g/L未満、具体的には5g/L未満、より具体的には1g/L未満であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0157】
担持されるTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が水溶性(親水性)である場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部が親水性置換基を有することにより、多孔性シリカ粒子とTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加し得る。これにより、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が親水性置換基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0158】
水溶性物質は、例えば1気圧、25℃での水溶解度が10g/L以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0159】
担持されるTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が電荷を帯びる場合には、粒子の表面及び/又は気孔内部がその逆の電荷に帯電することにより、多孔性シリカ粒子とTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加し得る。これにより、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子が酸性基または塩基性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0160】
具体的には、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が中性のpHで陽電荷を帯びるものであれば、粒子の表面及び/又は気孔内部が中性のpHで陰電荷に帯電するものであってよい。これにより、多孔性シリカ粒子とTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加して、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子がカルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)などの酸性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0161】
また、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質が中性のpHで陰電荷を帯びるものであれば、粒子の表面及び/又は気孔内部が陽電荷に帯電するものであってもよい。これにより、多孔性シリカ粒子とTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質との結合力が増加して、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質を徐放的に放出することができる。これは例えば、多孔性シリカ粒子がアミノ基、その他窒素含有基などの塩基性基を有するアルコキシシランで表面改質されたものであってもよい。
【0162】
TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質は、必要な治療の種類、放出環境、使用される多孔性シリカ粒子に依存して、例えば7日~1年またはそれ以上の期間にわたって放出され得る。
【0163】
また、本発明の多孔性シリカ粒子は、生分解性で100%分解され得るので、これに担持されたTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子または物質は、100%放出され得る。
【0164】
前記核酸分子は、siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAの1つの鎖(strand)をなすものであってもよい。このような場合には、前記siRNA、dsRNA、PNAまたはmiRNAは、RNAi(RNA干渉;RNA interference)によって、前記TSLP遺伝子の発現を抑制するものであってもよく、より具体的には、TSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合してTSLP遺伝子の発現を抑制するものであってもよい。
【0165】
前記核酸分子は、具体的には、下記表1に示す配列番号1の配列からなるセンスRNA及び配列番号47の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号24の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号2の配列からなるセンスRNA及び配列番号48の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号25の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号3の配列からなるセンスRNA及び配列番号49の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号26の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号4の配列からなるセンスRNA及び配列番号50の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号27の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号5の配列からなるセンスRNA及び配列番号51の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号28の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号6の配列からなるセンスRNA及び配列番号52の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号29の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号7の配列からなるセンスRNA及び配列番号53の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号30の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号8の配列からなるセンスRNA及び配列番号54の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号31の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号9の配列からなるセンスRNA及び配列番号55の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号32の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号10の配列からなるセンスRNA及び配列番号56の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号33の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号11の配列からなるセンスRNA及び配列番号57の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号34の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号12の配列からなるセンスRNA及び配列番号58の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号35の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号13の配列からなるセンスRNA及び配列番号59の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号36の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号14の配列からなるセンスRNA及び配列番号60の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号37の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号15の配列からなるセンスRNA及び配列番号61の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号38の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号16の配列からなるセンスRNA及び配列番号62の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号39の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号17の配列からなるセンスRNA及び配列番号63の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号40の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号18の配列からなるセンスRNA及び配列番号64の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号41の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号19の配列からなるセンスRNA及び配列番号65の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号42の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号20の配列からなるセンスRNA及び配列番号66の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号43の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号21の配列からなるセンスRNA及び配列番号67の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号44の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号22の配列からなるセンスRNA及び配列番号68の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA、配列番号45の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNA、配列番号23の配列からなるセンスRNA及び配列番号69の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNAまたは配列番号46の配列からなる鎖及びそれに相補的な鎖からなるdsRNAの1つ以上であってもよいが、これらに限定されない。なお、以下に示す表1及び2において、「Target sequence」は「標的配列」を、「Position in gene sequence」は「遺伝子配列の位置」を、「GC content」は「GC含有量」を、「Sense strand」は「センス鎖」を、「Antisense strand」は「アンチセンス鎖」を、それぞれ意味する。
【0166】
【0167】
本発明の核酸分子は、ヒトを含む動物、例えば、サル(monkeys)、ブタ(pigs)、ウマ(horses)、ウシ(cows)、ヒツジ(sheeps)、イヌ(dogs)、ネコ(cats)、マウス(mice)、ウサギ(rabbits)などに由来するものであってもよく、好ましくは、ヒト由来のものであってもよい。
【0168】
本発明の核酸分子は、それを構成する核酸分子の作用性等価物、例えば、本発明の核酸分子の一部の塩基配列が、欠失(deletion)、置換(substitution)または挿入(insertion)によって変形されたが、本発明の核酸分子と機能的に同じ作用をすることができる変異体(variants)を含む概念である。
【0169】
より具体的には、本発明の核酸分子がsiRNAのセンスRNAまたはアンチセンスRNAをなす場合には、前記センスRNA及びアンチセンスRNA配列の3’末端にUUまたはdTdTの配列をさらに含むものであってもよい。これは核酸加水分解酵素への抵抗性の増大によるsiRNAまたはdsRNAの構造的安定性の向上、安定したRISCの誘導によるsiRNAまたはdsRNAのRNAi効率性の向上などの利点をsiRNAまたはdsRNAに付与することができる。
【0170】
本発明の核酸分子は、標準分子生物学技術、例えば、化学的合成方法または組換え方法を用いて分離または製造するか、又は市販のものを使用することができる。また、本発明の組成物は、本発明の核酸分子そのものだけでなく、細胞内で本発明の核酸分子の発現率を増加させることができる他の物質、例えば化合物、天然物、新規タンパク質などを含むことができる。
【0171】
一方、本発明の核酸分子は、細胞内発現のためのベクターに含んで提供することができる。
【0172】
本発明の核酸分子は、DNA及びDEAE-デキストランの複合体、DNA及び核タンパク質の複合体、DNA及び脂質の複合体などの様々な形質転換技術を用いて細胞内に導入できる。そのために、本発明の核酸分子は、細胞内への効率的な導入を可能にする送達体内に含まれたものであってもよい。前記送達体は、好ましくはベクターであり、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターのいずれも使用可能である。ウイルスベクター(viral vector)としては、例えば、レンチウイルス(lentivirus)、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス(adenovirus)、ヘルペスウイルス(herpes virus)およびアビポックスウイルス(avipox virus)ベクターなどを使用することができ、好ましくはレンチウイルスベクターであるが、これらに限定されるものではない。レンチウイルスは、レトロウイルスの一種であり、核膜孔(nucleopore)や完全な核膜への能動導入を可能にする事前-統合複合体(ウイルス「シェル(shell)」)の求核性により、分裂細胞だけでなく、未分裂細胞も感染させる特徴がある。
【0173】
また、本発明の核酸分子を含むベクターは、選別マーカーをさらに含むことが好ましい。前記「選別マーカー(selection marker)」とは、本発明の核酸分子が導入された細胞の選別を容易にするためのものである。前記ベクターで使用できる選別マーカーとしては、ベクターの導入有無を容易に検出または測定できる遺伝子であれば特に限定されないが、代表的には、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能な表現型を付与するマーカー、例えば、GFP(緑色蛍光タンパク質)、ピューロマイシン(puromycin)、ネオマイシン(Neomycin:Neo)、ハイグロマイシン(hygromycin:Hyg)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(histidinol dehydrogenase gene:hisD)、及びグアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(guanine phosphosribosyltransferase:Gpt)などがあり、好ましくは、GFP(緑色蛍光タンパク質)及びピューロマイシンマーカーを使用することができる。
【0174】
また、本発明は、上述したTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子;を含むTSLP遺伝子発現抑制用組成物;を含む、アトピー性疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供するものである。
【0175】
前記核酸分子、多孔性シリカ粒子、TSLP遺伝子発現の抑制等に関する具体的な内容は前述の通りである。
【0176】
本発明の薬学的組成物は、アトピー性疾患の予防または治療効果を有するものであり、この効果は本発明の核酸分子のTSLP遺伝子の発現を抑制することにより達成される効果であり得る。
【0177】
本発明の薬学的組成物の予防または治療の対象疾患であるアトピー性疾患の例としては、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触性皮膚炎、炎症性皮膚疾患、掻痒症または食物アレルギーのようなアレルギー性疾患からなる群より選択される少なくとも一つの疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、TSLPの過剰発現による疾患に該当するものであれば特に制限されない。
【0178】
「アトピー性皮膚炎」は、アトピー性皮膚炎によって皮膚の感染部位が変化した状態を意味する。この状態は、皮膚疾患とみなされる状態および皮膚疾患とみなされない状態をすべて含む。
【0179】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができ、担体と共に製剤化することができる。本発明で用語「薬学的に許容可能な担体」とは、生物体を刺激せず投与化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない担体または希釈剤を意味する。液状溶液に製剤化される組成物において薬学的に許容可能な担体は、滅菌および生体に適したものとして、食塩水、滅菌水、リンガー液、緩衝食塩水、アルブミン注射液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液及び静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。
【0180】
本発明の薬学的組成物は、本発明の核酸分子を有効成分として含むいずれの剤型にも適用可能であり、経口用または非経口用の剤形に製造することができる。本発明の薬学的剤形は、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)または非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したもの、あるいは吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与に適した形態を含む。
【0181】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有効な量を投与する。有効容量は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られている要素によって決定できる。本発明の薬学的組成物は、個々の治療剤として投与しても、他の治療剤と併用して投与してもよい。また、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単一または多重投与することができる。前記の要素をすべて考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0182】
本発明の薬学的組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食物、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が非常に多様である。適正な投与量は、例えば、患者の体内に蓄積された薬物の量及び/又は使用される本発明の核酸分子の具体的な効能程度によって異なり得る。一般的に、イン・ビボ動物モデル及びイン・ビトロで効果的なものと測定されたEC50に基づいて計算することができ、例えば、体重1kg当たりに0.01μg~1gであってもよい。日、週、月、または年の単位期間に、単位期間当たりの一回または数回に分けて投与してもよく、若しくはインフュージョンポンプを用いて長期間連続して投与してもよい。反復投与の回数は、薬物の体内滞在時間、体内薬物濃度などを考慮して決定する。疾患の治療経過によっては、治療された後でも再発防止のために組成物を投与することができる。
【0183】
本発明の薬学的組成物は、アトピー性疾患の治療に関連して同一または類似の機能を示す有効成分を1種以上、または有効成分の溶解性及び/又は吸収性を維持/増加させる化合物をさらに含有することができる。また必要に応じて、化学治療剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、及び/又は免疫調節剤などをさらに含むことができる。
【0184】
また、本発明の薬学的組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速、持続または遅延放出を提供できるように、当該分野で公知の方法を用いて剤形化することができる。剤形は、粉末、顆粒、錠剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾル、軟質または硬質のゼラチンカプセル、滅菌注射液、滅菌粉末の形態であってもよい。
【0185】
さらに、本発明は、前述したTSLP mRNAの少なくとも一部に相補的に結合する核酸分子を担持した多孔性シリカ粒子;を含むTSLP遺伝子発現抑制用組成物;を含む、アトピー性疾患の予防または改善用の化粧料組成物を提供するものである。
【0186】
前記核酸分子、多孔性シリカ粒子、TSLP遺伝子発現の抑制、アトピー性疾患等の詳細は、前述の通りである。
【0187】
本発明の化粧料組成物は、アトピー性疾患の予防または改善効果を有するものであり、この効果は本発明の核酸分子のTSLP遺伝子の発現を抑制することにより達成される効果であり得る。
【0188】
本発明の化粧料組成物は、化粧料組成物に通常使用される成分をさらに含むことができ、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解化剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤および担体を含むことができるが、これらに限定されない。
【0189】
前記組成物を添加できる製品としては、例えば、収斂化粧水、柔軟化粧水、栄養化粧水、各種クリーム、エッセンス、パック、ファンデーションなどの化粧品類とクレンジング、洗顔剤、石鹸、トリートメント、美容液などがあるが、これらに限定されない。
【0190】
本発明の化粧料組成物の具体的な剤形は、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、シャンプー、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ボディローション、ボディクレンザー、乳液、口紅、メークアップベース、ファンデーション、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドウなどの剤形を含むことができるが、これらに限定されない。
【0191】
また、本発明は、アトピー性疾患の治療方法に関するものである。
【0192】
本発明のアトピー性疾患の治療方法は、TSLPの発現を抑制させる物質を担持した多孔性シリカ粒子を個体に投与することを含む。
【0193】
TSLPの発現を抑制させる物質は、前述した範囲内のものであってもよい。
【0194】
多孔性シリカ粒子は、先に例示した範囲内のものであってもよく、先に例示した範囲内の方法/条件などで製造されたものであってもよい。
【0195】
個体は、ヒトを含む哺乳類であってもよく、具体的にはヒトであってもよい。
【0196】
前記TSLPの発現を抑制させる物質は、組成物の形態で前述した範囲内の方法で剤形化することができる。
【0197】
投与方法は限定されず、例えば、口腔(oral)、直腸(rectal)、鼻腔(nasal)、局所(topical;頬及び舌下を含む)、皮下、膣(vaginal)または非経口(parenteral;筋肉内、皮下及び静脈内を含む)投与に適したもの、あるいは吸入(inhalation)または注入(insufflation)による投与などの方法であってもよい。
【0198】
また、本発明は、TSLPの発現を抑制させる物質を担持した多孔性シリカ粒子のアトピー性疾患の予防または治療用の医薬組成物を製造するための用途に関するものである。
【0199】
TSLPの発現を抑制させる物質は、前述した範囲内のものであってもよい。
【0200】
多孔性シリカ粒子は、先に例示した範囲内のものであってもよく、先に例示した範囲内の方法/条件などで製造されたものであってもよい。
【0201】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明することにする。
【0202】
以下、本発明で使用されるsiRNAは「siTSLP」に、本発明の多孔性シリカ粒子は「DegradaBALLまたはDDV」に、siTSLPが担持されたDegradaBALLは「LEM-siTSLP 」に略称することがある。
【0203】
実験方法
1.実験材料
DegradaBALLとTAMRAが結合したDegradaBALLは、Lemonex,Inc.(ソウル、大韓民国)から提供された。細胞計数キット-8(Cell counting kit-8)は、Dojindo molecular technologies,Inc.(Maryland、USA)から購入した。10%リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、胎児ウシ血清(FBS)、ロズウェルパーク記念研究所1640(RPMI 1640)、ペニシリン-ストレプトマイシン及び0.05%トリプシン-EDTAは、WelGene(大韓民国)から購入した。PCRプライマーは、いずれもCosmogenetech(ソウル、大韓民国)から購入した。Trizol細胞溶解液は、Molecular Probes Invitrogen(Carlsbad、CA、USA)から購入した。PCR試薬は、いずれもTaKaRa Bio Inc.(Shiga、Japan)から購入した。すべての化学物質は、受領してそのまま使用した。
【0204】
TSLPの発現の誘導に用いられるSLIGRLペプチドは、Lemonex(ソウル、大韓民国)によって合成された。合成されたペプチドのMS分析の結果を
図1に示す。
【0205】
塩基配列は、米国国立生物情報センター(http://www.ncbi.nim.nih.gov)で検索可能であり、公式シンボル(TSLP)と公式名称thymic stromal lymphopoietinとして記載される。承認番号NM_033035.4のヒト配列を用いて、ヒトTSLPに対するsiRNA、dsRNA、アンチセンスRNA配列をデザインした。siRNAデザインを提供するインターネットサイトのうち、GEヘルスケア(http://dharmacon.gelifesciences.com/designcenter/?redirect=true)でDharmacon RNAi & Gene Expressionサービスを通じてsiRNAをデザインした。このとき、デザインしたDNA切片の中、ターゲット配列のGC含有量が30%~70%であるsiRNA配列1~配列10までの配列10個を選別した。また、配列11~配列23までの配列13個は、発明者がGC含有量が30%~70%であるsiRNA配列をデザインした。最終選別された23個のsiRNAは、バイオニア(http://www.bioneer.co.kr)に注文依頼して作製した。このとき、siRNAの作製のために、TSLPのターゲット配列に対するセンス配列及びアンチセンス配列をそれぞれデザインした。また、それぞれの単一の配列であるセンス配列とアンチセンス配列を特異的な塩基対結合によってsiRNA及びdsRNAを作製した。
【0206】
前記記載された配列の具体的な情報を、添付の配列表及び下記表2に具体的に示す。
【0207】
【0208】
2.多孔性シリカ粒子(DDVまたはDegradaBALL)
2-1.多孔性シリカ粒子の製造
(1)多孔性シリカ粒子の製造
1)小気孔粒子の製造
2L丸底フラスコに蒸留水(DW)の960mlとMeOHの810mlを入れた。前記フラスコにCTABを7.88g入れた後、攪拌しながら1M NaOHの4.52mlを素早く入れた。10分間攪拌して均一な混合液を得た後、TMOSの2.6mlを入れた。6時間攪拌して均一に混合した後、24時間熟成し、反応液を得た。
その後、前記反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノール及び蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後、70℃のオーブンで乾燥し、1.5gの粉末状の小気孔多孔性シリカ粒子(気孔平均直径2nm、粒径200nm)を得た。
【0209】
2)気孔の拡張
1.5gの小気孔多孔性シリカ粒子の粉末をエタノール10mlに添加して超音波分散し、水10ml、TMB(trimethyl benzene)10mlを添加して超音波分散し、分散液を得た。
その後、前記分散液をオートクレーブに入れて160℃、48時間反応させた。
反応は25℃で開始し、10℃/分の速度で昇温して行った。その後、オートクレーブ内で1~10℃/分の速度で徐々に冷却した。
冷却した反応液を25℃で10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後70℃のオーブンで乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径10~15nm、粒径200nm)を得た。
【0210】
3)か焼
前記2)で製造された多孔性シリカ粒子をガラスバイアル(vial)に入れて550℃で5時間加熱し、反応終了後、常温まで徐々に冷却して粒子を製造した。
【0211】
(2)多孔性シリカ粒子の製造
気孔拡張時の反応条件を140℃、72時間に変更した以外は、前記2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0212】
(3)多孔性シリカ粒子の製造(10Lスケール)
5倍大きな容器を使用し、各物質をいずれも5倍の容量で使用した以外は、実施例2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0213】
(4)多孔性シリカ粒子の製造(粒径300nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水920ml、メタノール850mlを使用した以外は、2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0214】
(5)多孔性シリカ粒子の製造(粒径500nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水800ml、メタノール1,010ml、CTAB 10.6gを使用した以外は、2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0215】
(6)多孔性シリカ粒子の製造(粒径1,000nm)
小気孔粒子の製造時に蒸留水620ml、メタノール1,380ml、CTAB 7.88gを使用した以外は、2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0216】
(7)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径4nm)
気孔拡張時にTMBを2.5ml使用した以外は、2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0217】
(8)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径7nm)
気孔拡張時にTMBを4.5ml使用した以外は、2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0218】
(9)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径17nm)
気孔拡張時にTMBを11ml使用した以外は、2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0219】
(10)多孔性シリカ粒子の製造(気孔直径23nm)
気孔拡張時にTMBを12.5ml使用した以外は、2-1-(1)の方法と同様にして多孔性シリカ粒子を製造した。
【0220】
(11)多孔性シリカ粒子の製造(二重改質)
1)小気孔粒子の製造
実施例2-1-(1)-1)の方法と同様にして小気孔粒子を製造した。
【0221】
2)気孔の拡張
実施例2-1-(1)-2)の方法と同様にして小気孔粒子をTMBと反応させ、冷却し、遠心分離して上澄み液を除去した。その後、実施例2-1-(1)-2)と同じ条件で遠心分離し、エタノール及び蒸留水で交互に3回洗浄した。その後、実施例2-1-(1)-2)と同じ条件で乾燥し、粉末状の多孔性シリカ粒子(気孔直径10~15nm、粒径200nm)を得た。
【0222】
3)表面改質
気孔が拡張された多孔性シリカ粒子0.8g~1gを50mlのトルエンに分散した後、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-aminopropyl)triethoxysilane)を5ml入れて120℃で還流したまま12時間加熱した。この過程では、前述の洗浄過程および乾燥過程を経た後、1mlのトリエチレングリコール(PEG3,2-[2-(2-methoxyethoxy)ethoxy] acetic acid)と、100mgのEDC(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide)と、200mgのN-ヒドロキシコハク酸イミド(N-Hydroxysuccinimide,NHS)を30mlのPBSに分散して常温で攪拌したまま12時間反応する。その後、生成物は、前記の洗浄及び乾燥過程を経る。
気孔内部に、前のステップの反応液が残っているため、気孔内部は改質されない。
【0223】
4)気孔内部の洗浄
表面改質された粒子粉末800mgを2M HCl/エタノール40mlに溶かし、12時間強く撹拌下で還流した。
その後、冷却された反応液を10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後、70℃のオーブン中で乾燥して粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0224】
5)気孔内部の改質
i)後述する実施例2-2-(2)-1)の方法と同様にして気孔内部にプロピル基を導入した。
ii)後述する実施例2-2-(2)-2)の方法と同様にして気孔内部にオクチル基を導入した。
【0225】
2-2.多孔性シリカ粒子の表面改質
(1)陽電荷での帯電
1)粒径300nmの粒子
実施例2-1-(4)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて、陽電荷に帯電させた。
具体的には、100mL丸底フラスコにおいて、100mgの多孔性シリカ粒子を10mLのトルエンに洗浄器(bath sonicator)で分散させた。その後、1mLのAPTESを添加し、400rpmで攪拌し、130℃で攪拌して12時間反応させた。
反応後、常温まで徐々に冷却し、10分間8,000rpmで遠心分離して上澄み液を除去し、25℃で10分間8,000rpmで遠心分離し、エタノールおよび蒸留水で交互に5回洗浄した。
その後、70℃のオーブン中で乾燥し、表面および気孔内部にアミノ基を有する粉末状の多孔性シリカ粒子を得た。
【0226】
2)粒径200nmの粒子
i)実施例2-1-(1)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、APTESを0.4ml添加し、反応時間を3時間とした以外は、前記実施例2-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
ii)実施例2-1-(9)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、それ以外は、前記実施例2-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
iii)実施例2-1-(10)の多孔性シリカ粒子を(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン((3-Aminopropyl)triethoxysilane,APTES)と反応させて陽電荷に帯電させ、それ以外は、前記実施例2-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0227】
(2)疎水性基の導入
1)プロピル基
前記実施例2-1-(1)の多孔性シリカ粒子をトリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)と反応させて、表面および気孔内部にプロピル基を導入し、APTESの代わりにトリメトキシ(プロピル)シラン(Trimethoxy(propyl)silane)を0.35ml添加し、12時間反応させた以外は、前記実施例2-2-(1)の方法と同様にして改質した。
【0228】
2)オクチル基
前記実施例2-1-(1)の多孔性シリカ粒子をトリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)と反応させて、表面および気孔内部にプロピル基を導入し、APTESの代わりにトリメトキシ-n-オクチルシラン(Trimethoxy-n-octylsilane)を0.5ml添加し、12時間反応させた以外は、前記実施例2-2-(1)の方法と同様にして改質した。
【0229】
(3)陰電荷での帯電
1)カルボキシル基
前記実施例2-1-(1)の多孔性シリカ粒子を無水コハク酸(succinic anhydride)と反応させて陰電荷に帯電させ、トルエンの代わりにDMSO(ジメチルスルホキシド)を使用し、APTESの代わりに80mgの無水コハク酸(succinic anhydride)を添加して24時間常温で攪拌し反応させ、洗浄時に蒸留水の代わりにDMSOを使用した以外は、前記実施例2-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0230】
2)チオール基
APTESの代わりにMPTESの1.1mLを使用した以外は、前記実施例2-2-(1)-1)の方法と同様にして改質した。
【0231】
3)スルホン酸基
前記実施例2-2-(3)-2)の多孔性シリカナノ粒子100mgを、1M硫酸水溶液1mLと30%過酸化水素水20mLに分散して常温で攪拌し、酸化反応を誘導してチオール基をスルホン酸基に酸化した。その後、前記実施例2-2-(1)-1)の方法と同様にして洗浄および乾燥した。
【0232】
3.核酸分子の担持
前記実施例2-2-(1)-2)-ii)の多孔性シリカ粒子10μgと50pmolの核酸分子を1xPBSの条件下で混合した後、常温で30分間置いて積載した。
前記核酸分子は、前記表2の配列の中、配列番号70の配列からなるセンスRNA及び配列番号93の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA(以下、siTSLP#1)、配列番号83の配列からなるセンスRNA及び配列番号106の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA(以下、siTSLP#14)、及び/又は配列番号90の配列からなるセンスRNA及び配列番号113の配列からなるアンチセンスRNAからなるsiRNA(以下、siTSLP#21)を用いて下記実験を行った。但し、後述する内容で核酸分子を構成する配列(e.g.センスRNA、アンチセンスRNA、dsRNA)に対し別途の言及がある場合には、別途言及された配列を含む核酸分子を担持したものと見ることができる。
以下では、siTSLP#1が担持されたDDVをLEM-siTSLP#1、siTSLP#14が担持されたDDVをLEM-siTSLP#14、siTSLP#21が担持されたDDVをLEM-siTSLP#21で表示した。
【0233】
4.細胞生存の測定
A549及びHaCaT細胞を100μlの成長培地(50~70%コンフルエント)を有する96ウェル培養プレートにウェル当たり10,000細胞の密度で接種した。細胞を血清含有培地で適切な濃度のDegradaBALL(実施例2-2-(1)-2)-iiの多孔性シリカ粒子)で処理し、37℃で24時間培養した。培養後、細胞を1xPBSで2回洗浄した後、10μlのCCK-8を含有した100μlの無血清培地を添加し、さらに1時間培養した。培養プレート内の各ウェルの光学密度を450nmの波長で測定した。三重項(deviation of triplicates)の平均及び標準偏差が計算され、プロットされた(
図26を参照)。
【0234】
5.細胞ベースのTSLPノックダウン(knockdown)の分析
5-1.ヒト皮膚角質形成細胞株HaCaT細胞の培養
ヒトTSLP特異的なsiRNA、dsRNA、アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドが、皮膚細胞で発生するTSLPの生産を阻害できるかどうかの探索実験を行うために、ヒト皮膚の構成細胞株である角質形成細胞HaCaT細胞株(CLC cell line service、Germany)を用いた。HaCaT細胞株を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum,FBS;Gibco BRL、USA)と抗生物質が含有されたDMEM培養液(Gibco BRL、USA)で培養した。培養皿は100mmの培養皿、6-ウェルプレート及び24-ウェルプレートを用いて、5%CO2が供給される37℃のインキュベーターで培養した。培養液は2日毎に交換し、細胞が過剰増殖される直前に継代培養した。
【0235】
5-2.HaCaT細胞にLEM-siTSLPを処理
無血清培地に分散させたLEM-siTSLP(25pmol)を、24-ウェルプレート内で培養したHaCaT細胞に処理した。37℃、5%CO2インキュベーター中で6時間培養した後、無血清培養液を除去した。1xPBSで2回洗浄した後、血清含有細胞培地を入れ替えた。さらに6時間後、血清含有培養培地を除去し、1xPBSで洗浄した。血清を含有した培地でSLIGRLペプチド(200μM)を細胞に処理した。TSLP誘導を確認するために培養0、6、12及び24時間後、Trizol(Invitrogen社、USA)を用いて総RNAを抽出した。
【0236】
また、LEM-siTSLPによるTSLPノックダウンの持続期間を測定するために、PAM212細胞を無血清培地でLNPを含有したLNP-siTSLP(mouse)(25pmol siTSLP)及びsiTSLP(mouse)(25pmol)で処理した。5%CO2インキュベーター中で37℃で6時間培養した後、無血清培養液を除去した。1xPBSで2回洗浄した後、血清含有細胞培地を入れ替えた。指示された時間培養を行った後、細胞を血清含有培地でSLIGRL(200μM)を細胞に処理し、TSLP誘導のために、さらに12時間細胞を培養した。総RNAは、Trizolを用いて抽出した。
【0237】
6.RT-PCR
1μgの総RNAとnuclease-free waterを混ぜて16μLになるように準備した。その後、70℃で5分間反応させてRNAを変性(denature)させ、氷で急速に冷やした後、短く遠心分離して蒸発した溶液を集めた。その後、Reverse Transcription Master Premix(エルピスバイオテック、contain random hexamer、5x ready-to-use mix、cat#EBT-1511)の4μLを入れてよく混ぜた後、42℃で1時間反応させた。その後、94℃で5分間反応した後、氷上で冷やして-20℃で保存した。
【0238】
次いで、nuclease-free waterを7.4μL、forward primer及びreverse primer(5μM)をそれぞれ0.8μL、先に合成したcDNA templateを1μL、Power SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix(appliedbiosystems、2x ready-to-use mix、cat#4367659)を10μL混ぜて混合溶液を作成した。
【0239】
mRNA発現量の分析に用いられたRT-PCRプライマー配列は、表3に示す通りである。
【0240】
【0241】
PCRは、95℃で3分間変性(denature)した後、95℃で10秒、60℃で5秒、2ステップサイクルを繰り返した(GAPDH:30サイクル、TSLP:36サイクル)。最終の反応物を1%アガロースゲル(agarose gel)に供して確認した。
【0242】
7.siTSLP及び多孔性シリカ粒子が投与された部位の生体組織イメージング
LEM-siTSLP(0.7nmol siTSLP(mouse)、150μg DDV)(FITC-接合siTSLP(mouse)及びTAMRA-DegradaBALL)20μlをマウスの頬部位の皮膚に注射した。前記DDVとしては、実施例2-2-(1)-2)-ii)の多孔性シリカ粒子を用いた。siTSLP(mouse)としては、センスRNA配列(5’-CGAGCAAAUCGAGGACUGUdTdT-3’(配列番号124))及びアンチセンスRNA配列(5’-ACAGUCCUCGAUUUGCUCGdTdT-3’(配列番号125))が結合されたものを用いた。マウスを犠牲にした後、FOBIイメージング機器(NeoScience Co.,Ltd.、Seoul、Korea)を用いて、切除されたマウスの頬部位の皮膚の蛍光画像を撮影した。得られた皮膚サンプルを4%PFA溶液に入れた。サンプルをパラフィンに包埋し、10μmの厚さに切断した。脱水過程の後、切片されたサンプルをDAPIで染色した。サンプルは20x対物レンズ(Olympus、Tokyo、Japan)が装着されたBX71顕微鏡により観察した。
【0243】
実験結果
1.本発明の核酸分子のTSLP発現抑制の分析
前記表2に含まれた配列によって製造された核酸分子(siRNA又はdsRNA)のTSLPの発現抑制率を確認するために、核酸分子をLipofectamine 2000(Invitrogen社、USA)と陽イオンリポソーム(cationic liposome)を用いてHaCaT細胞にトランスフェクションを行った後、TSLP発現抑制効率を確認した。
核酸分子(siRNA又はdsRNA)を用いたTSLPの発現抑制率を下記表4に示す。
【0244】
【0245】
2.多孔性シリカ粒子(DDVまたはDegradaBALL)
2-1.粒子の形成及び気孔拡張の確認
実験方法の実施例2-1-(1)~(3)の粒子の小気孔粒子、製造された多孔性シリカ粒子を顕微鏡で観察し、小気孔粒子が均一に生成されているか、気孔が十分に拡張されて多孔性シリカ粒子が均一に形成されているかを確認した(
図2~5)。
図2は、実施例2-1-(1)の多孔性シリカ粒子の写真、
図3は、実施例2-1-(2)の多孔性シリカ粒子の写真であり、気孔が十分に拡張された球状の多孔性シリカ粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
図4は、実施例2-1-(1)の小気孔粒子の写真、
図5は、実施例2-1-(1)と2-1-(3)の小気孔粒子の比較写真であり、球状の小気孔粒子が均一に生成されたことを確認することができる。
【0246】
2-2.BET表面積および気孔体積の計算
実験方法の実施例2-1-(1)の小気孔粒子、実施例2-1-(1)、(7)、(8)、(10)の多孔性シリカ粒子の表面積と気孔体積を計算した。表面積は、ブルナウアー-エメット-テラー(Brunauer-Emmett-Teller)(BET)方法により計算し、気孔サイズの分布は、バーレット-ジョイナー-ハレンダ(Barrett-Joyner-Halenda)(BJH)方法により計算した。
前記各粒子の顕微鏡写真を
図6に、計算の結果を下記表5に示す。
【0247】
【0248】
2-3.生分解性の確認
実験方法の実施例2-1-(1)の多孔性シリカ粒子の生分解性を確認するために、37℃、SBF(pH7.4)における生分解の程度を0時間、120時間、360時間に顕微鏡で観察した。それを
図7に示す。
これを参照すると、多孔性シリカ粒子が生分解され、360時間経過後はほぼすべてが分解されたことを確認することができる。
【0249】
2-4.吸光度比の測定
時間別に下記数式1による吸光度比を測定した。
【0250】
[数式1]
At/A0
(式中、A0は、前記多孔性シリカ粒子1mg/mlの懸濁液5mlを直径50kDaの気孔を有する円筒状の透過膜に入れて測定した多孔性シリカ粒子の吸光度であり、
前記透過膜の外部には、前記透過膜と接し、前記懸濁液と同じ溶媒15mlが位置し、前記透過膜の内外部は、37℃で60rpmで水平攪拌され、
Atは、前記A0の測定時からt時間経過後に測定した多孔性シリカ粒子の吸光度である。)
【0251】
具体的には、多孔性シリカ粒子粉末5mgをSBF(pH7.4)5mlに溶かした。その後、5mlの多孔性シリカ粒子溶液を、
図8に示す直径50kDaの気孔を有する透過膜に入れた。外部膜に15mlのSBFを添加し、外部膜のSBFは12時間ごとに入れ替えた。多孔性シリカ粒子の分解は、37℃で60rpmで水平攪拌して行った。
その後、紫外・可視分光法(UV-vis spectroscopy)によって吸光度を測定し、λ=640nmで分析した。
【0252】
(1)吸光度比の測定
実験方法の実施例2-1-(1)の多孔性シリカ粒子の吸光度比を前記方法に従って測定した。その結果を
図9に示す。
これを参照すると、吸光度比が1/2となるtは約58時間であり、非常にゆっくりと分解されることが確認できた。
【0253】
(2)粒径別
実験方法の実施例2-1-(1)、(5)、(6)の多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定した。その結果を
図10に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、粒径の増加によってtが減少することが分かる。
【0254】
(3)気孔の平均直径別
実験方法の実施例2-1-(1)、(9)の多孔性シリカ粒子、そしてコントロールとして実験方法の実施例2-1-(1)の小気孔多孔性シリカ粒子の吸光度を前記数式1により測定した。その結果を
図11に示す(懸濁液と溶媒としては、SBFを使用した。)。
これを参照すると、実施例の多孔性シリカ粒子は、コントロールに比べてtが非常に大きいことが確認できる。
【0255】
(4)pH別
実験方法の実施例2-1-(4)の多孔性シリカ粒子のpH別吸光度を測定した。吸光度は、SBFで、そしてpH2、5及び7.4のTrisで測定した。その結果を
図12に示す。
これを参照すると、pH別にtの差はあるが、いずれも吸光度の比が1/2となるtは24以上であった。
【0256】
(5)帯電
実験方法の実施例2-2-(1)-1)の多孔性シリカ粒子の吸光度を測定し、その結果を
図13に示す(懸濁液と溶媒としては、トリス(Tris,pH7.4)を使用した。)。
これを参照すると、陽電荷に帯電した粒子も吸光度の比が1/2となるtは24以上であった。
【0257】
2-5.担持した核酸分子の放出
Cy5-siRNAをロードした多孔性シリカ粒子10μlをSBF(pH7.4、37℃)に再浮遊させ、気孔直径20kDaの透過膜(
図14のチューブ)に入れた。
その後、透過チューブを1.5mlのSBFに浸漬した。
siRNAの放出は、37℃で60rpmで水平攪拌して行われた。
24時間の前には、0.5、1、2、4、8、12、24時間経過した時間に放出溶媒を回収した。その後は24時間間隔で0.5mlの放出溶媒を蛍光測定のために回収し、等量のSBFを添加した。
Cy5-siRNAの蛍光強度は、670nmの波長(λ
ex=647nm)で測定し、siRNAの放出程度を測定した。その結果を
図15に示す。
これを参照すると、siRNAが50%放出された時間は約48時間であることを確認することができる。
【0258】
3.イン・ビトロLEM-siTSLP処理結果
3-1.HaCaT細胞及びHeLa細胞内形態の確認
(1)実験方法
HaCaT細胞またはHeLa細胞を8-ウェルチャンバー(Lab-Tek Chamber slide system)に2.0×103個だけシーディング(seeding)した後、24時間インキュベート(incubation)する。1xPBSで細胞を2回洗浄した後、TAMRA蛍光が標識されたsiRNA(50ng)をFITC蛍光が標識されたDDV(1μg)に担持してsiRNAとDDV複合体を作成する。その後、無血清培地(serum-free media)の条件下で細胞に2時間処理する。
【0259】
前記DDVとしては、実施例2-2-(1)-2)-ii)の多孔性シリカ粒子を用いた。siRNAとしては、siRNA#1を用いた。
【0260】
2時間後、1xPBSで細胞を2回洗浄する。次いで、10%FBS添加培地(FBS-containing media)に入れ替えた後、時間順に(2、6、8、12、18、24時間)細胞をHoechst 33342(Invitrogen)を用いて核染色する。Delta Vision Elite High Resolution Microscope(GE Healthcare Life Sciences)の60xレンズを用いて、細胞の形態(morphology)変化と細胞内に存在するsiRNAとDDVの細胞内分布を時間によって観察する。
【0261】
(2)実験結果
siRNAとDDV複合体を細胞に処理してから2時間程度となる初期には、細胞内でオレンジ色ないし黄色蛍光が多く示されることを確認した。これは緑色蛍光が標識されたDDVに赤色蛍光が標識されたsiRNAが担持された状態で細胞内に導入されるので、細胞内で緑色蛍光と赤色蛍光が重なってオレンジ色ないし黄色蛍光が示されるものと思われる。
【0262】
時間が経過するにつれて、オレンジ色ないし黄色蛍光が多くなくなり、緑色蛍光が優勢に示されることを確認した。これはDDVからsiRNAが放出されるので、時間が経過するほどオレンジ色ないし黄色蛍光が消え、siRNAの緑色蛍光が優勢に示されるものと思われる。
【0263】
前記結果から、DDVとsiRNAの複合体が細胞内に良好に流入され、細胞内でsiRNA薬物が徐放的に放出されることを確認した。
【0264】
3-2.イン・ビトロ上のLEM-siTSLPのTSLP mRNAノックダウンの確認
LEM-siTSLPのターゲット遺伝子ノックダウン効率を測定するために、HaCaT(ヒトケラチノサイト細胞)を、前述の方法により製造されたLEM-siTSLP#1、LEM-siTSLP#14、及びLEM-siTSLP#21を用いて下記実験を行った。
【0265】
TSLP mRNAノックダウン確認実験を行う前に、HaCaT細胞にSLIGRLを処理すると、TSLPの発現が誘導されることを確認した(
図18を参照)。
【0266】
まず、HaCaT細胞を前記3種のLEM-siTSLP(25pmol)で処理した後、TSLPの発現を誘導するために、200νMのSLIGRLと共に培養した。その結果、細胞株に対するLEM-siTSLPの処理は、TSLPのmRNA発現レベルを低減し、特にLEM-siTSLP#1の処理時はTSLPのmRNA発現抑制に有意な効果を示した。
【0267】
一方、対照群(siTSLP#1、siTSLP#14、siTSLP#21のみ)は、siRNAのみを処理した場合であり、HaCaT細胞においてTSLPのmRNA発現抑制効果を示さなかった(
図19を参照)。この結果は、対照群とは異なり、LEM-siTSLPが細胞内へsiTSLPを効率的にトランスフェクション(transfection)することができ、TSLP遺伝子のノックダウンを誘導することを意味する。
【0268】
4.イン・ビトロ上のLEM-siTSLPの徐放的なsiTSLPの放出
LEM-siTSLPは、HaCaT細胞においてLNPよりもTSLPノックダウン効果をより長く維持することを本実験を通じて確認した。
【0269】
HaCaT細胞をLEM-siTSLP#1(25pmol)及びLNPに担持されたsiTSLP#1(25pmol)で処理した後、SLIGRL処理によりTSLPの発現を誘導した。
【0270】
前記siTSLP#1を担持したDDVは、実施例2-2-(1)-2)-ii)の多孔性シリカ粒子を用いた。
【0271】
HaCaT細胞でTSLP発現の抑制は、LEM-siTSLP#1の処理後96時間まで持続されたが(TSLP発現レベル、72時間:15%、96時間:22%)、LNPに担持されたsiTSLP#1のTSLP発現抑制効率は72時間、96時間のいずれにおいても高くなかった(TSLP発現レベル、72時間:43%、96時間:56%)(
図20を参照)。つまり、LEM-siTSLPは、細胞において、LNPに担持されたsiTSLPと比較して、より長い期間、高いレベルでターゲットmRNAの発現を抑制することが分かる。
【0272】
5.LEM-siTSLPの送達及び分布変化のex-vivo分析
C57BL/6マウスの頬組織にTAMRA-接合されたDegradaBALLに担持されたFITC-接合されたsiTSLPで構成された蛍光標識LEM-siTSLPを注入し、担持されていないFITC-接合されたsiTSLPのみを皮下注入経路を介して注入して、LEM-siTSLPとsiTSLPの注入部位での持続時間を比較した。本実験を通じてLEM-siTSLPの送達効果及び分布変化を確認した。
【0273】
前記DDVとしては、実施例2-2-(1)-2)-ii)の多孔性シリカ粒子を用いた。前記siTSLPとしては、siRNA#1を用いた。
【0274】
切除されたマウスの頬部位の皮膚と切片化された頬部位の皮膚の蛍光画像解析は、注入後1、2、4日目に行った。FITC-siTSLPを担持したTAMRA-DegradaBALLの蛍光は、1日目に注入部位で強い発光を示した。そして、蛍光は、時間の経過によって徐々に減少したが、注入後4日目まで注入部位での蛍光が強く維持された(
図21及び23を参照)。時間の経過によって注入部位での蛍光が減少する傾向は、皮膚切片スライドの傾向によった。これに対して、担持されていないFITC-siTSLPのみを注入したマウスから切除した皮膚や切片化した皮膚のスライドでは、蛍光シグナルが観察されなかった。これはDDVのないsiTSLPのみを投与した場合には、siTSLPが体内で急速に分散してしまったり、非常に迅速な拡散を誘導する小さな断片に分解されることを暗示する(
図22及び23を参照)。前記データから、DDVに担持されていないsiTSLPを処理した場合と比べて、LEM-siTSLPを処理した場合には、皮膚内でsiTSLPを顕著に高い濃度レベルで、注入後少なくとも4日目まで維持できることが分かった。
【0275】
6.LEM-siTSLP注入によるTSLPノックダウン効果のイン・ビボ分析
LEM-siTSLPが注入されたマウスでのTSLPノックダウン効果をマウスの行動分析により確認した。
【0276】
マウスの頬組織をきれいに除毛した後、右頬部位にPBS、siTSLPが担持されたDDV(0.7nmol siRNA、150μg BALL in 20μL PBS)をそれぞれ皮内注射(intradermal(ID)injection)した。
【0277】
前記DDVとしては、実施例2-2-(1)-2)-ii)の多孔性シリカ粒子を用いた。前記siTSLPとしては、センスRNA配列(5’-CGAGCAAAUCGAGGACUGUdTdT-3’(配列番号124))及びアンチセンスRNA配列(5’-ACAGUCCUCGAUUUGCUCGdTdT-3’(配列番号125))が結合されたものを用いた。
【0278】
注入後48時間が経過した後、SLIGRLペプチド100μg(in 20ul PBS)を皮内注射(ID injection)してTSLP誘導(induction)を行った。注入直後から30分間擦過行動(scratching behavior)を観察し、行動様相を比較した。
【0279】
具体的には、マウスが頬部位を擦る回数を分析したが、グルーミング行動と区別するために「後足」で頬を擦る回数だけをカウントした。後足を上げて下げることを1回としてカウントすることが基本であるが、足を下げずに1秒以上継続的に擦る場合には、持続時間を測定して1秒当たりに1回でカウントした。
【0280】
図24は、30分間測定した総擦過回数を示すものであり、
図25は、擦過回数を5分間隔で測定したものである。
【配列表】