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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】振動吸収体及びバランサー
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/32 20060101AFI20241101BHJP
   F16F 15/36 20060101ALI20241101BHJP
   F16F 15/30 20060101ALI20241101BHJP
   F16F 15/14 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
F16F15/32 A
F16F15/32 E
F16F15/36 Z
F16F15/30 Q
F16F15/14 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021545649
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2020034607
(87)【国際公開番号】W WO2021049664
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2019165745
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502267800
【氏名又は名称】株式会社かいわ
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山添 重幸
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/013447(WO,A1)
【文献】特開2003-305604(JP,A)
【文献】特開2003-131457(JP,A)
【文献】実開昭58-119645(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00- 15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状のフランジと、
複数のバランサーと
を備える振動吸収体であって、
前記フランジは、
貫通穴と、
前記貫通穴の周囲に配置され、前記複数のバランサーがそれぞれ収容される複数の凹部と
を有し、
前記複数のバランサーは、
錘と、
前記錘の少なくとも一部を覆う本体と
を有し、
前記本体は、保持領域と、前記保持領域の周囲に配置された弾性領域とを有し、
前記保持領域に前記錘が設けられ、
前記弾性領域は、前記複数の凹部において、前記フランジの半径方向に交差する内面及び周方向に交差する内面に、それぞれ接している、
振動吸収体。
【請求項2】
前記複数の凹部を閉塞するフタを備え、
前記保持領域と、前記複数の凹部の底面及び前記フタの内面、の間に隙間が設けられており、
前記弾性領域は、前記複数の凹部の底面と前記フタの裏面に接している、
請求項1に記載の振動吸収体。
【請求項3】
前記弾性領域は、前記複数の凹部において、前記フランジの径方向に交差する内面のうちの最も前記貫通穴から遠い遠位内面に接していて、
前記バランサーは、前記複数の凹部に収容されている状態において前記遠位内面に向かう外周面に複数の周面凸部を有する、請求項1または2に記載の振動吸収体。
【請求項4】
前記遠位内面は複数の内面凸部を有し、前記内面凸部と前記周面凸部とは、当接することによって複数の間隙部を形成する、請求項3に記載の振動吸収体。
【請求項5】
円環状のフランジを備える振動吸収体の前記フランジに着脱可能なバランサーであって、
錘と、
前記錘の少なくとも一部を覆う本体と
を有し、
前記本体は、保持領域と、弾性領域とを有し、
前記保持領域に前記錘が設けられ、
前記保持領域の周囲に前記弾性領域が配置されている、
バランサー。
【請求項6】
前記弾性領域は、前記保持領域を1周するように配置されている、請求項5に記載のバランサー。
【請求項7】
前記弾性領域は、
前記保持領域の外周から外側へ突き出したつばと、
前記つばの先端に一体に設けられた外壁と
を含む、請求項5又は6に記載のバランサー。
【請求項8】
前記つばは、厚さ方向に湾曲した波形状である、請求項7に記載のバランサー。
【請求項9】
前記本体は、前記弾性領域に複数の貫通穴を有する、請求項5又は6に記載のバランサー。
【請求項10】
前記フランジに形成された凹部に収容されることによって着脱自在に取り付けられ、前記本体は、前記凹部に収容された状態において円環状の前記フランジの径方向と交差する内面に向かう外周面の少なくとも一部に、前記内面に向かって突出する複数の周面凸部を備える、請求項5に記載のバランサー。
【請求項11】
前記周面凸部は、前記外周面のうちの前記フランジの中心軸から最も遠い位置にある前記内面に向かう面に形成されている、請求項10に記載のバランサー。
【請求項12】
前記周面凸部は、前記フランジの周方向に連続して配置されている、請求項10または11に記載のバランサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動吸収体、バランサー及び回転体に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、車両の車軸、及びエンジンのクランクシャフトなどの回転軸は、重量の分布の不釣り合い、及び幾何学的な構造の差に起因して、振動を生じる場合がある。回転軸の振動を抑制する手段として、特許文献1には、複数の錘と、複数の錘をそれぞれ任意方向に揺動自在に収納しうる複数の収納室が穿設されたホルダーとを備える振動吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4522493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の振動吸収体は、複数の錘がそれぞれ収納室内を移動することによって、回転軸の振動を抑制する。したがって錘の移動範囲は、収納室の大きさと錘の大きさの差に依存し、自由度が低いので、振動を一定以上小さくすることができない、という問題があった。
【0005】
本発明は、回転軸の振動をより抑制することができる振動吸収体、バランサー及び回転体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る振動吸収体は、円環状のフランジと、複数のバランサーとを備える振動吸収体であって、前記フランジは、貫通穴と、前記貫通穴の周囲に配置され、前記複数のバランサーがそれぞれ収容される複数の凹部とを有し、前記複数のバランサーは、錘と、前記錘の少なくとも一部を覆う本体とを有し、前記本体は、保持領域と、前記保持領域の周囲に配置された弾性領域とを有し、前記保持領域に前記錘が設けられ、前記弾性領域は、前記複数の凹部において、前記フランジの半径方向に交差する内面及び周方向に交差する内面にそれぞれ接している。
【0007】
本発明に係るバランサーは、円環状のフランジを備える振動吸収体の前記フランジに着脱可能なバランサーであって、錘と、前記錘の少なくとも一部を覆う本体とを有し、前記本体は、保持領域と、弾性領域とを有し、前記保持領域に前記錘が設けられ、前記保持領域の周囲に前記弾性領域が配置されている。
【0008】
本発明に係る回転体は、貫通穴が形成された円環状板と、前記貫通穴の周囲に配置され、前記円環状板において他の部分より肉厚が薄い薄肉部または前記円環状板を貫通する複数の切欠き部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弾性領域が弾性変形することによって、錘が保持領域と一体的に弾性領域内を相対的に移動するので、錘の移動の自由度が高く、回転軸の振動をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る振動吸収体を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る振動吸収体の内部構造を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る振動吸収体のフランジを示す平面図である。
図4】aは本実施形態に係るバランサーを示す斜視図であり、bは平面図である。
図5図4のbに示すA-A断面図である。
図6図4のbに示すB-B断面図である。
図7】本実施形態に係る振動吸収体の部分拡大断面図である。
図8】変形例に係るバランサーを示す図である。
図9】別の変形例に係るバランサーを示す図である。
図10】第1実施形態のバランサーを取り付ける際に使用されるケース体の例を示す図である。
図11】gは第2実施形態のバランサーの正面図である。hはg中の一点鎖線で示す断面を矢線A-Aの方向に見た図である。
図12】第2実施形態のバランサーの断面の斜視図である。
図13図11g、図11hに示すバランサーをフランジに取り付けた振動吸収体のフタを外した状態を示す図である。
図14図13に示すフランジの他の例を説明するための図である。
図15】第2実施形態の変形例のバランサーの斜視図である。
図16】kは第2実施形態のバランサーの変形例を示す図である。mは第2実施形態のバランサーの他の変形例を示す図である。
図17】nは第3実施形態のフランジ78を一方の側から見た構成を示す図である。oはnに示すフランジを一方と反対側から見た構成を示す図である。
図18】第3実施形態の他の実施形態であるフランジナットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態について詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態の振動吸収体10は、フランジ12と、フタ14とを備える。振動吸収体10は、貫通穴16を有する円環状である。フランジ12及びフタ14は、鉄、アルミ合金、ステンレス鋼、又はチタン材で形成される。以下の説明において、軸方向とは貫通穴16の中心軸方向、周方向とは貫通穴16を中心とした周方向、半径方向とは貫通穴16を中心とした半径方向とする。
【0012】
フランジ12は、貫通穴16を有する円環状のベース13を有し、ベース13の第1表面にフタ14が設けられている。ベース13の第1表面と反対側の第2表面に、軸方向へ突出した固定ねじ18が一体に形成されている。
【0013】
図2は、振動吸収体10からフタ14を取り除いた状態を示す斜視図である。フランジ12は、中央に貫通穴16を有し、貫通穴16を中心とした円環状の収容領域に、6個のバランサー20が取り外し可能に均等に収容されている。
【0014】
図3は、フランジの平面図であり、後述するバランサーを一つだけ収容した状態を示している。図3に示すように、フランジ12は、内側筒部15と、外側筒部17と、底部19と、6個の仕切り壁23とを有する。内側筒部15は、筒形状を有し、当該内側筒部15より内径が大きい筒形状の外側筒部17と同心円状に配置されている。底部19は、円環状の板部材であり、第2表面側の内側筒部15と外側筒部17の基端同士を接続している。仕切り壁23は、内側筒部15と外側筒部17の間に架け渡され、周方向に均等に配置されている。内側筒部15と外側筒部17の間の領域を、上記収容領域と呼ぶ。
【0015】
6個の仕切り壁23によって、収容領域に、6個の凹部22が均等に形成されている。凹部22は、平面視の形状がそれぞれ扇型である窪みであり、各凹部22同士は、仕切り壁23で仕切られている。凹部22は、底面36と、当該底面36の外縁に一体に形成された、周方向に交差する仕切り壁23の内面である第1内面46,48と、半径方向に交差する内側筒部15及び外側筒部17の内面である第2内面42,44とを有する。
【0016】
フタ14は、中央に貫通穴11を有する円環状である。フタ14は、内側筒部15と外側筒部17の間に跨る内径及び外径を有する。フタ14は、フランジ12の収容領域に重ね合わされ、貫通穴11がフランジ12の内側筒部15の外側に嵌め込まれ、図示しないボルトによってフランジ12に固定されている。フタ14がフランジ12に固定されることによって、凹部22がフタ14によって閉塞され、同じ構成を有する6個の収容空間が中心軸の周りで全周に渡って形成されている。
【0017】
図4のaに示すように、バランサー20は、錘24と、本体26とを備える。バランサー20は、錘24を金型(図示しない)に設置した状態で、錘24の周囲に樹脂を注入するインサート成型によって、錘24と本体26とが一体的に形成されている。
【0018】
錘24は、比重が本体26より大きい材料、例えば、鉄、ステンレス鋼、超硬合金、又は銅タングステン合金で形成される。錘24は、立方体形状であり、貫通した矩形状穴25を有する。錘24は、四角形の筒状である。図4のbに示すRは、バランサー20がフランジ12に収容された場合の半径方向を示す。錘24の矩形状穴25は、インサート成型する際、金型に設けられた位置決め突起が挿入される。ただし、バランサー20は、インサート成型で製造されるものに限定されず、錘24の周囲を弾性部材でブロック状に囲むことによっても製造できる。
【0019】
本体26は、弾性変形が可能な軟質の材料、例えば、熱可塑性エラストマー、樹脂、又はゴムで形成される。本体26は、平面視の形状が凹部と同じ扇型であり、保持領域28と、保持領域28の周囲を囲むように配置された弾性領域30とを有する。
【0020】
本体26の保持領域28は、平面視の形状が本体26の輪郭と相似形である扇型であり、所定の厚みを有し、錘24の矩形形状穴(貫通穴)25を除く周囲を覆っている。図5に示す保持領域28の、上側の表面を第1保持面27、下側の表面を第2保持面29、第1保持面27の外縁と第2保持面29の外縁を接続する表面を外周面31と呼ぶ。バランサー20は、第1保持面27側から見た形状と、第2保持面29側から見た形状が同じである。
【0021】
錘24は、本体26の保持領域28に保持されている。錘24は、保持領域28の第1保持面27と第2保持面29の間に保持されている。錘24は、保持領域28の厚み方向の中央に保持されている。半径方向Rにおける錘24と本体26との重なりは、半径方向Rの外側の方が内側より長い。
【0022】
弾性領域30は、平面視において、保持領域28の外縁から本体の外郭までの領域をいう。弾性領域30は、保持領域28の外周面31を1周するように配置されている(図4)。弾性領域30に、つば32と、外壁34とが設けられている。つば32は、保持領域28の外周面31に基端が接続され、外周面31から外側へ先端が突き出している。つば32の基端は、外周面31の厚さ方向略中央に接続されている。つば32は、外周面31を1周するように連続して形成されている。つば32の厚みは、基端から先端までの長さに対し、弾性変形可能な程度に小さい。
【0023】
つば32は、図6に示す通り、本体26の厚み方向に上下に繰り返し湾曲した波形状である。つば32の、上側に湾曲した表面から、下側へ湾曲した表面までの高さHは、錘24の厚みと同じ又はそれ以上である。
【0024】
外壁34は、帯状であり、保持領域28の厚み方向を短手方向とし、表面を外周面31に平行となる向きにして、配置されている(図4)。外壁34は、無端状であって、内表面の短手方向の略中央において、つば32の先端に一体に接続されている。外壁34の短手方向の長さは、保持領域28の厚みより長い。外壁34の外表面37には、短手方向に延びる複数の凸条35が設けられている。
【0025】
バランサー20は、外壁34の外表面37が、凹部22の第1内面46,48及び第2内面42,44に接触した状態で、凹部22に収容される(図3)。すべてのバランサー20がそれぞれ凹部22に収容された後、フタ14が収容領域に配置され、当該収容領域が閉塞される。フタ14は、図示しないがボルトなどの締結手段によってフランジ12に固定される。
【0026】
図7に示すように、凹部22に収容されたバランサー20の外壁34は、凹部22の底面36とフタ14の裏面38に接触している。バランサー20は、保持領域28を収容空間から浮いた状態で保持する。バランサー20は、保持領域28を凹部22及びフタ14と非接触の状態で保持する。すなわち、保持領域28の第1保持面27とフタ14の裏面38、及び、第2保持面29と凹部22の底面36、の間に隙間40がそれぞれ形成されている。
【0027】
錘24は、保持領域28と一体的に、弾性領域30が弾性変形する範囲内において、収容空間に対し、相対的に移動可能である。錘24は、保持領域28と一体的に、半径方向Rに対し平行方向、半径方向Rを中心とする回転方向、周方向を中心とする回転方向、及び軸方向に、収容空間に対し相対的に移動、又は姿勢を変更することが可能である。
【0028】
振動吸収体10は、研削盤(図示しない)の回転軸に第1表面を向けて、当該回転軸を貫通穴16に差し込み、砥石を第2表面の固定ねじ18に挿入し、固定ねじ18に固定ナット(図示しない)をねじ込み、研削盤に固定される。振動吸収体10は、回転軸及び砥石と一体的に、回転する。
なお、砥石とフランジ12とを、回転軸を備える回転装置から取り外すため、フランジ12には溝120が設けられている(図1及び図2)。図1及び図2においては、フランジ12の外周部に1つの溝120が形成されているが、当該溝120は、フランジ12に収容されるバランサー20の数と同じ数で、かつ、外周部において当該バランサー20と対向する位置に形成することが望ましい。例えば、バランサー20の数が3つの場合には、溝120も3つ形成されることが望ましく、図2に示すように、バランサー20の数が6つの場合には、溝120も6つ形成することが望ましい。すなわち、フランジ12に収容されているバランサーの数に対応する数の溝が形成されることが望ましい。このとき、溝の形成位置はバランサーの位置に対応することが望ましく、例えば、バランサー20の周方向中心位置と、外周部の溝120の周方向中心位置とが一致している他、フランジ12に収容されているバランサー20と対向する外周部の領域に溝120が形成されることも含む。
【0029】
振動吸収体10が軸方向を中心に回転することによって、バランサー20は遠心力を受ける。本体26は、収容空間の内面、すなわち凹部22の底面36、フタ14の裏面38、凹部22の第1内面46,48及び第2内面42,44に接しているので、収容空間に対し相対的に移動しない。
【0030】
振動吸収体10の回転速度が高くなると、錘24にかかる遠心力も大きくなる。錘24にかかる力が大きくなると、つば32が弾性変形し、錘24が保持領域28と一体的に、収容空間に対し、相対的に移動する。例えば、半径方向Rの外側の遠心力によって、錘24の半径方向Rの内側のつば32が伸び、半径方向Rの外側のつば32が縮むことによって、錘24は、収容空間に対し、相対的に半径方向外側へ移動する。
【0031】
弾性領域30が弾性変形することによって、錘24が保持領域28と一体的に、収容空間に対し相対的に移動することができる。錘24は、弾性領域30によって収容空間内に浮いた状態で保持されているので、移動の自由度が高く、回転軸の振動をより抑制することができる。
【0032】
弾性領域30のつば32は、遠心力によって、容易に弾性変形する。錘24が移動する位置は、保持領域28の周囲を囲むつば32の応力と、錘24にかかる力の大きさ及び方向とのバランスによって、自動的に調整される。
【0033】
波形状のつば32は、より複雑に変形することによって、錘24の移動の自由度を、より高めることができる。したがってバランサー20は、回転軸の振動をより抑制することができる。
【0034】
バランサー20は第1保持面27側から見た形状と、第2保持面29側から見た形状が同じであるので、第1保持面27側及び第2保持面29側のどちらからでも凹部22に収容することができる。したがって、バランサー20はフランジ12への組付け性を向上することができる。
【0035】
外壁34の外表面37に複数の凸条35が設けられていることによって、凹部22の第1内面46,48及び第2内面42,44との接触面積を小さくすることができる。したがってバランサー20は、容易に凹部22に挿入することができるとともに、弾性領域30がより容易に弾性変形する。
【0036】
(第1実施形態の変形例)
本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更することが可能である。
【0037】
バランサー20を6個配置する場合について説明したが、振動吸収体10は3個のバランサー20を6個の凹部22に対し、1個おきに収容することとしてもよい。
【0038】
つば32の波形状は、湾曲している場合に限らず、直線的に上下に屈曲していてもよい。つば32は、波形状である場合に限らず、第1保持面27又は第2保持面29に対し平行な平坦な形状であってもよい。つば32は、保持領域28の周囲を1周するように配置されている場合に限らず、部分的に切断されていてもよい。
【0039】
フランジ12は、6個の凹部22を有する場合について説明したが、2個、3個、4個、5個でもよい。フランジ12の仕切り壁23は省略し、1つの凹部22としてもよい。仕切り壁23を省略した場合、1つの凹部22に、複数のバランサー20が、周方向において外表面37同士を接触させて配置される。
【0040】
凹部22及び本体26は、平面視において扇型である場合に限らず、平面視において、円形、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形でもよい。バランサー20の平面視における外郭は、扇型である場合に限らず、円形、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形でもよい。
【0041】
フランジ12は、固定ねじ18を有する場合について説明したが、固定ねじ18を省略してもよい。
【0042】
振動吸収体10は、研削盤に適用する場合に限らず、工作機械の主軸に適用することもできる。振動吸収体10は、電動機、発電機、エンジンによって駆動される回転軸に適用することもできる。振動吸収体10は、電動機、発電機、エンジンによって駆動される圧縮機、又はポンプなど種々の回転機器に適用することができる。
【0043】
弾性領域30は、つば32と外壁34とを有する場合に限らない。図8のc、及び図8のdを参照して変形例1を説明する。図8のcは変形例1に係るバランサーを示す平面図であり、図8のdは変形例に係るバランサーを示す断面図である。図8のc、及び図8のdは、上記実施形態と同様の構成について同様の符号が付されている。図8のc、及び図8のdに示すバランサー50は、本体52と錘24とを備える。本体52の弾性領域30は、つばを有していないが、上記実施形態に比べて大きい力によって弾性変形し得る。図8のdに示すように、弾性領域30は、保持領域28の周囲に配置され、外壁34が設けられている。外壁34と保持領域28の間の弾性領域30は、保持領域28と同じ厚みで形成されている。外壁34の短手方向の長さは、保持領域28の厚みより長い。バランサー50は、フランジ12に収容された場合、保持領域28の第1保持面27とフタ14の裏面38、及び、第2保持面29と凹部22の底面36、の間に隙間40がそれぞれ形成される。上記のように弾性領域30を形成したことによって、バランサー50は、より大きい遠心力が作用した場合であっても、破れなどの破損を防止することができる。したがってバランサー50を備えた振動吸収体は、より高速に回転する回転軸に適用された場合に、より確実に振動を吸収することができる。
【0044】
図9のe、及び図9のfを参照して別の変形例を説明する。図9のeは別の変形例に係るバランサーを示す平面図であり、図9のfは別の変形例に係るバランサーを示す断面図である。図9のe、及び図9のfは、上記実施形態と同様の構成について同様の符号が付されている。図9のe、及び図9のfに示すバランサー53は、本体54と錘24とを備える。本体54の弾性領域30は、図9のeに示したバランサー53に対し、厚み方向に貫通した貫通穴56を有する点が異なる。図9のfに示すように、弾性領域30は、保持領域28の周囲に配置され、外壁34が設けられている。外壁34の短手方向の長さは、保持領域28の厚みより長い。外壁34と保持領域28の間の弾性領域30の厚みは、外壁34の短手方向長さと同じ長さで形成されている。弾性領域30に、厚み方向に貫通した貫通穴56が複数形成されている。貫通穴56は、図9のeに示すように、保持領域28の外周面31を1周するように、等間隔で配置されている。本体54の弾性領域30は、貫通穴56を半径方向に押しつぶすようにして、弾性変形し得る。バランサー53は、フランジ12に収容された場合、保持領域28の第1保持面27とフタ14の裏面38、及び、第2保持面29と凹部22の底面36、の間に隙間40がそれぞれ形成される。上記のように弾性領域30を形成したことによって、バランサー53は、より大きい遠心力が作用した場合であっても、破れなどの破損を防止することができる。したがってバランサー53を備えた振動吸収体は、より高速に回転する回転軸に適用された場合に、より確実に振動を吸収することができる。貫通穴56は、丸穴に限らず、四角穴でもよい。
【0045】
さらに、第1実施形態は、バランサーをフランジに収容することに限定されるものではなく、フランジ押さえに取り付けることもできる。また、バランサーは、例えば図10に示す円盤状のケース体80に収容して取り付けることも可能である。ケース体80は、バランサーを収容する本体82と、本体82と係合してバランサーを抑える蓋体81とを有している。ケース体80は、Z方向に挿通される不図示の回転軸に取り付けられる。取り付けは、本体82及び蓋体81の少なくとも一方の内径の側の面にネジ溝81aを形成し、回転軸の側に形成されたネジ溝に合わせて締め付けることによっても可能である。また、ケース体80は、ナットを使って回転軸に取り付けることも可能である。さらに、バランサーは、フランジの本体、またはナットの側のどちらに取り付けられるものであってもよいし、フランジ本体とナットの両方に取り付けられるものであってもよい。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態で先に説明した構成と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を一部略す。第2実施形態の振動吸収体100は、円環状のフランジ72と、複数のバランサー60とを有している(図13)。
【0047】
図11g、図11hから図14は、第2実施形態のバランサー60を説明するための図である。図11gはバランサー60の正面図である。図11hは、図11gに示す一点鎖線に沿う断面を矢線A-Aの方向に見た図である。図12は、バランサー60の断面の斜視図である。図13は、図11g、図11及び図12に示すバランサー60をフランジ72に取り付けた第2実施形態の振動吸収体100のフタを外した状態を示している。図14は、図13の一部を拡大して示す図である。なお、バランサー60のフランジ72への取り付けは、第1実施形態と同様に、図13、14に示す凹部73にバランサー60を収容することによって行われる。
【0048】
第2実施形態のバランサー60は、錘61と、錘61の少なくとも一部を覆う本体58と、を有している。図11g、図12に示すように、バランサー60は、外壁64の一部がフランジ72(図13)の半径方向R(以下、単に「半径方向」とも記す)に向かう複数の周面凸部65を有している。周面凸部65は、フランジ72の周方向Lに沿って一列に配置されていて、周面凸部65同士の間が周面凹部66となる。周面凸部65と周面凹部66が交互に配置されることにより、バランサー60の外壁64は波形の曲面になっている。
【0049】
周面凸部65及び周面凹部66は、いずれも比較的薄肉の外壁64が繰り返し折り曲げられた形状を有していて、半径方向Rに力が加えられた場合には外壁64外側の面に当接して撓む弾性力を有している。また、図11g、図11hに示すように、第2実施形態では、保持領域28と周面凸部65、周面凹部66との間に貫通穴301が形成され、本体58の樹脂を薄肉にすることによっていっそう弾性領域30を変形しやすくしている。また、バランサー60の外壁64は、本体58の上面の全周に渡って形成されていて、外壁64のうちの周方向Lの両端の縁(以下、「側方縁」と記す)には凹部304が形成されている。凹部304は、バランサー60を片手で取り扱い易くし、バランサー60を凹部73に容易に収容することを可能にする。さらに、凹部304は、周方向Lの両端部にある周面凸部65の曲率を大きくし、周面凸部65を弾性変形し易くすることができる。
【0050】
錘61には貫通穴611が二つ形成されている。バランサー60は、例えば、インサート成型によって製造することができる。貫通穴611は、成型時に位置決め突起を挿入して錘61を金型に固定することに使用される。固定された錘61の周囲に樹脂材料を流し込むことによって貫通穴611と連通する穴303が形成される。なお、当然のことながら、穴303、貫通穴611の個数や形状、位置は図11g、図11hに示すものに限定されるものでなく、位置決め突起が挿入されて成型時に錘61を固定する機能を果たす限りにおいてどのようなものであってもよい。
【0051】
第2実施形態では、本体58が錘61全体を覆って保持領域28を形成する。本体58及び錘61は正面視において扇形(扇型)状を有している。扇形状の周方向に沿う2つの外縁部となる弧のうち、長い側の孤を長縁591、短い側の孤を短縁592とする。錘61は、図11hのように、フランジ72の半径方向においては保持領域28の略中央であって、かつ、長縁591との距離が短縁592との距離よりも長くなるように配置されている。
【0052】
図13に示すように、バランサー60は、フランジ72に形成された凹部73に収容されることによって着脱自在に取り付けられる。図13に示した例では、フランジ72に3個の凹部73が形成されていて、凹部73同士の間にはネジ穴231が形成された仕切り壁23が設けられている。凹部73は、いずれも扇形状を有していて、3個のバランサー60は凹部73の各々に収容されることによって円環を形成するように配置される。このとき、バランサー60の2つの側方縁は、凹部304を除いて凹部73の内面46,48に接している。
【0053】
本体58は、複数の凹部73において、フランジ72の半径方向と交差する内面のうちの貫通穴16から最も遠い遠位内面75に接している。遠位内面75は、フランジ72が貫通穴16に挿通された不図示の回転軸を中心に回転した場合、外壁64の周面凸部65及び周面凹部66が遠心力によって押し付けられる平滑な曲面である。
第2実施形態では、バランサー60の外壁64が周面凸部65及び周面凹部66を形成することによって遠位内面75と周面凹部66との間に連続する間隙部70がフランジ72の周方向Lに沿って形成される。このような第2実施形態は、凹部73においてバランサー60に支持された錘61が移動できる領域をさらに拡張するものである。遠心力によって変形したバランサー60は、間隙部70に入り込み、さらに移動することができる。このとき、錘61にもバランサー60と共に移動の余地が生じるので、錘61の移動可能な領域を広げることができる。
【0054】
凹部73の内面においては、遠位内面75の対面が遠位内面75よりも貫通穴16に近い近位内面74になっている。周面凸部65は、外壁64のうちの遠位内面75に向かう面に形成されている。このような構成の第2実施形態は、最も大きい遠心力がかかる箇所を弾性領域30にして、回転の振動を効率的に吸収することができる。ただし、第2実施形態は、このような構成に限定されるものではなく、例えば、バランサー60をフランジ72の半径方向に多段階に配置してもよい。このような場合、3つのバランサー60は、フランジ72の半径が異なる複数の周に沿って配置されることになる。
【0055】
複数の周面凸部65は、フランジ72の周方向に連続して配置され、いずれも半径方向Rに沿って突出している。ただし、周面凸部65は遠位内面75に向かって突出していればよい。また、複数の周面凸部の突出方向は一定であっても、異なっていてもよい。さらに、周面凸部65及び周面凹部66は、外壁64を曲面とすることによって形成されるものに限定されるものではない。周面凸部65は、例えば、遠位内面75に向かって突起する突起部を互いに離間して配置するものであってもよい。また、周面凹部66は、例えば、互いに離間して形成された窪みであってもよい。
【0056】
また、第2実施形態の遠位内面75は、図14に示すように、複数の内面凸部76を有するものであってもよい。このような構成においては、複数の内面凸部76同士の間が内面凹部77になる。図14に示す遠位内面75は、バランサー60が収容(セット)された場合に周面凸部65が内面凸部76と対向し、周面凹部66が内面凹部77と対向するように設計されている。この際、凹部73内においては、遠位内面75とバランサー60の外壁64との間に生じる間隙部70を図13に示す構成よりも大きくすることができる。
【0057】
上記構成において、「周面凸部65が内面凸部76と対向する」とは、周面凸部65の頂点と内面凸部76の頂点とが当接するものであってもよい。また、間隙部70が形成される範囲において、周面凸部65の頂点と内面凸部76の頂点とがずれて対向するものであってもよい。
【0058】
以上説明したように、第2実施形態の振動吸収体100においては、振動吸収体100の回転速度が高くなると、錘61にかかる遠心力が大きくなる。錘61にかかる力が大きくなると、外壁64が遠位内面75に圧接される。第2実施形態では、比較的薄い外壁64の曲面として形成される周面凸部65と周面凹部66で構成されているために、弾性領域30が径方向に圧縮されて短くなる。このとき、保持領域28に保持されている錘61は、本体58と一体的に凹部73の遠位内面75に向かって移動することになる。
【0059】
上記構成によれば、錘61はバランサー60が遠位内面75に当接した後も移動することが可能になり、凹部73内におけるバランサー60の移動可能な距離が延長される。このような第2実施形態の振動吸収体100は、バランサー60の自由度を高めて吸収可能な振動の範囲を広げることができる。
【0060】
また、第2実施形態は、遠位内面75にも内面凸部76及び内面凹部77が形成されているため、バランサー60と遠位内面75との間に間隙部70を形成することができる。間隙部70は、凹部73内でバランサー60が移動可能な範囲を広げるため、錘61の移動の自由度を大きくすることができる。さらに、内面凸部76及び内面凹部77が形成されていることにより、第2実施形態では、バランサー60の外壁64と遠位内面75との接触面積が小さくなる。このため、第2実施形態は、遠心力によって弾性領域30にかかる圧力を大きくし、周面凸部65を大きく変形させて錘61の移動の自由度を大きくすることができる。このような第2実施形態のバランサー60を備えた振動吸収体100は、吸収可能な振動の程度を大きくすることが可能になる。
【0061】
さらに、第2実施形態のバランサーは、上記の構成に限定されるものではない。図15及び図16k、図16mは、第2実施形態のバランサーの変形例を説明するための図である。図15に示すバランサー60は、外壁64の下面(フランジ72に収容される際に凹部73の底面に向かう側)に、凹部73における位置ずれを防ぐズレ防止リブ68を備えている。
なお、ズレ防止リブ68は、外壁64の下端に設けられることに限定されず、例えば、外壁64の上端に設けられるものであってもよいし、下端と上端との間(例えば中央の高さ)に設けられるものであってもよい。さらに、ズレ防止リブ68は、下端、上端、中央の位置の組み合わせで複数設けられるものであってもよい。
【0062】
また、図16kに示すバランサー69は、図15に示したバランサー60に対し、ズレ防止リブ68を挟んで周面凸部65及び周面凹部66をさらに設けたものである。周面凸部65及び周面凹部66を多段に設けたバランサー69は、遠位内面75との接触面積が大きくなり、凹部73において錘61の高い自由度を維持しつつ移動方向を安定させることができる。
【0063】
図16mに示すバランサー90は、保持領域28及び弾性領域30を有する本体58を備えている。バランサー90の弾性領域30は、周方向Lに沿う溝状の切欠き部85a、85b、85cを外壁64の高さ方向にそれぞれ多段(図16mでは三段)に設けることによって形成される。切欠き部85a、85bの間及び切欠き部85b、85cの間にはそれぞれ柱部86が形成されて、弾性領域30にかかる鉛直方向の力に対する強度を高めている。バランサー90では、切欠き部85a、85b、85cを設けたことによって弾性領域30の樹脂が薄肉になり、遠心力によって遠位内面75に圧接した場合に弾性領域30が容易に変形する。
【0064】
さらに、バランサー90の保持領域28には不図示の錘が保持されている。図16mのように、保持領域28において錘を短縁592の側に近接して設ければ、弾性領域30の半径方向Rに沿う長さが長くなり、弾性領域30をさらに変形し易くすることができる。ただし、第2実施形態の変形例は、図16mに示した構成に限定されるものでなく、バランサー90の成型の難易度や安定性の観点から錘を図16mに示す位置よりも弾性領域30に近づけて設けるものであってもよい。
【0065】
なお、バランサー90においては、弾性領域30のうちの一部が周囲に対してやや凹んだ凹領域92になっていて、弾性領域30が凹部73の底面及びフランジ72のフタ14裏面に接触する接触面の範囲を小さくして錘61の移動の自由度を高めている。また、第2実施形態の変形例では、弾性領域30に潤滑剤を塗布する、あるいは表面をシボ加工して弾性領域30の潤滑性を高めるようにしてもよい。
【0066】
さらに、本発明は、第1実施形態、第2実施形態のようにバランサーをフランジに取り付けて振動吸収体とする構成に限定されるものではない。本発明は、例えば、円盤形状の砥石の回転軸の周囲に複数のバランサーを回転軸から等距離になるように配置することによっても回転の振動を抑えることが可能である。
【0067】
さらに、以上説明した第1実施形態、第2実施形態では、バランサーにグリスを塗布する、あるいは凹部の内面やバランサー表面にシボ加工等を施してバランサーが凹部内をスムーズに移動するようにしてもよい。このようにすれば、錘だけでなく、バランサーそのものが凹部内で移動ができるようになる。
【0068】
(第3実施形態)
以上説明した構成の他、本発明の発明者は、振動吸収体にかかる遠心力を低減して回転の振動を抑える第3実施形態について検討した。
図17n、図17oは、第3実施形態のフランジを説明するための斜視図であって、図17nはフランジ78の一方の側から見た図であって、図17oは図17nのフランジ78を先の一方の側の反対側から見た図である。第3実施形態では、図17nの側を、例えばフランジ78の前方とし、図17oの側をフランジ78の後方とする。フランジ78は、例えばフランジナットと共に不図示の砥石を挟み込む構成である。このようなフランジ78は、貫通穴16に挿通された不図示のスピンドルの回転によって回転する例えば研磨装置に用いられる。
【0069】
第3実施形態は、第1実施形態、第2実施形態のバランサーを凹部22内に有する構成に限定されるものではない。第3実施形態は、凹部22にバランサーを収容せずに当該凹部22を中空状態のままとすることが望ましく、凹部22を設けた分だけフランジ78を軽量化し得、回転軸の振動をより抑制することができるものである。フランジ78は、内側筒部15と、外側筒部17と、底部19と、3個の仕切り壁23とを有する。内側筒部15は筒形状を有し、この内側筒部15より内径が大きい筒形状の外側筒部17と同心円状に配置されている。底部19は、円環状の板部材であり、内側筒部15と外側筒部17の基端同士を接続している。仕切り壁23は、内側筒部15と外側筒部17の間に架け渡され、周方向に均等に配置されている。底部19、仕切り壁23及び遠位内面75によって凹部22が形成される。フランジ78においては、貫通穴16、内側筒部15、外側筒部17、底部19が、貫通穴が形成された円環状のフランジ板(円環状板)を構成する。
【0070】
フランジ78は、貫通穴16の周囲に配置され、外側に長い孤の長縁を有し、内側に短い孤の短縁を有する扇型に形成された複数の凹部22を有している。第3実施形態のフランジ78は、内側筒部15の外周、又は外側筒部17の内周に段差部91を備えている。内側筒部15、外側筒部17の表面は同一平面上にあって、所謂「面一」の状態になっている。凹部22は、内側筒部15、外側筒部17の表面と同一平面にあったフランジ板に形成されたものであり、第3実施形態では内側筒部15、外側筒部17の表面がフランジ78のベース13の部分よりも薄肉になっている。第3実施形態は、フランジ78を薄肉化することによって金属材料の一部を除去し、フランジ78を軽量化することができる。
なお、ベース13には、フランジ78から砥石を取り外す際の穴131が外周面に形成されている。図1及び図2に示した溝120と同様に、穴131は、フランジ78に取り付けられるバランサーと同じ数であることが望ましい。形成位置は、バランサーの取り付け位置と対応していることが望ましい。
【0071】
図18は、回転体としてのフランジナット79に切欠き部94を設けてフランジナット79を軽量化した例を説明するための図である。フランジナット79では、全体的に円環状板93の中心にある貫通穴16の周囲に複数の切欠き部94が形成されている。複数の切欠き部94は、フランジナット79とフランジとの間に不図示の砥石を挟み込み回転させた際の振動を抑えるため、貫通穴16の中心からの距離と切り欠きの形状が全て等しいことが望ましい。このようなフランジナット79によれば、フランジナット79から金属材料の一部を除去し、フランジナット79を軽量化し、回転軸の振動をより抑制することができる。
なお、第3実施形態は、図18に示すように、フランジナット79を軽量化することに限定されるものでなく、フランジ本体や砥石にも薄肉部や切欠き部を設けて軽量化することが可能である。
【0072】
さらに、第3実施形態は、第1実施形態、第2実施形態のバランサーを、凹部22や切欠き部94にそれぞれ設けた構成としてもよいことは言うまでもない。第3実施形態は、円環状板においてスピンドル等の回転軸から等距離にある薄肉部、又は円環状板を貫通する複数の切欠き部を備えるものであればよい。薄肉部は、薄肉の程度によらず他の部分より肉厚が薄い部分であればよい。
【0073】
以上説明した第3実施形態によれば、フランジ78又はフランジナット79の一部を薄肉化する、又は切り欠いてフランジ78又はフランジナット79の軽量化を図ることができる。遠心力は、振動吸収体の質量に比例する。このため、フランジ78又はフランジナット79を軽量化する第3実施形態は、振動吸収体に作用する遠心力を小さくして回転の振動を抑えることが可能になる。
【0074】
なお、上述した第3実施形態では、回転体としてフランジ78及びフランジナット79を一例に説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、砥石等その他の回転体において、円環状板の一部を薄肉化する、又は切り欠いて軽量化を図るようにしてもよい。このような砥石等その他の回転体においても、軽量化を図ることにより、回転軸の振動をより抑制することができる。なお、上述した第1実施形態から第3実施形態については、適宜それらの構成を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10,100 振動吸収体
12,72 フランジ
14 フタ
16,301,611 貫通穴
20,50,53,60,69,90 バランサー
22,73 凹部
24,61 錘
26,52,54,58 本体
28 保持領域
30 弾性領域
32 つば
34,64 外壁
36 底面
38 裏面
40 隙間
42,44 第2内面
46,48 第1内面
65 周面凸部
66 周面凹部
68 ズレ防止リブ
70 間隙部
74 近位内面
75 遠位内面
76 内面凸部
77 内面凹部
78 フランジ(回転体)
79 フランジナット(回転体)
80 ケース体
91 段差部
93 フランジ板
94 円形溝
303 穴
591 長縁
592 短縁
L 周方向
R 半径方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18