(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】除染システム
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20241101BHJP
B04C 9/00 20060101ALI20241101BHJP
B04C 5/14 20060101ALI20241101BHJP
A61L 2/18 20060101ALI20241101BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20241101BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20241101BHJP
【FI】
A61L9/14
B04C9/00
B04C5/14
A61L2/18 102
B05B17/06
A61L101:22
(21)【出願番号】P 2021554861
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2020038956
(87)【国際公開番号】W WO2021090661
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2019201886
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599053643
【氏名又は名称】株式会社エアレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121784
【氏名又は名称】山田 稔
(72)【発明者】
【氏名】川崎 康司
(72)【発明者】
【氏名】宋 軍
(72)【発明者】
【氏名】北野 司
(72)【発明者】
【氏名】郭 志強
(72)【発明者】
【氏名】二村 はるか
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 至洋
(72)【発明者】
【氏名】角田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】益留 純
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/166554(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/076077(WO,A1)
【文献】特開2006-281170(JP,A)
【文献】特開2000-140729(JP,A)
【文献】国際公開第2019/009376(WO,A1)
【文献】特開2005-103481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
A61L 2/00- 2/28
A61L 101/00-101/56
B04C 1/00-11/00
B05B 17/00-17/08
F24F 1/00-13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の除染対象室に対して、除染用ミストを使用して各除染対象室の内部を除染する除染システムであって、
圧縮空気を発生する圧縮空気発生手段と、除染用ミストを構成する除染液を供給する除染液供給手段とを具備すると共に、
各除染対象室に対して、それぞれ、前記圧縮空気と前記除染液とを気液混合して1次ミストを発生する1次ミスト発生手段と、当該1次ミストから気液分離した除染液を微細な2次ミストに変換する2次ミスト発生手段と、前記圧縮空気発生手段から前記1次ミスト発生手段までの間を連通する空気供給配管と、前記除染液供給手段から前記1次ミスト発生手段までの間を連通する除染液供給配管と、前記1次ミスト発生手段から前記2次ミスト発生手段までの間を連通する1次ミスト供給配管とを具備してなり、
前記2次ミスト発生手段は、1次ミスト受容器と超音波霧化装置とを有して、
前記1次ミスト受容器は、前記1次ミスト供給配管を介して供給された1次ミストから気液分離した空気を外部に放出する空気抜きを備え、
前記超音波霧化装置は、圧電振動子と当該圧電振動子の振動により気液分離した除染液を霧化する複数の微細孔が表裏を貫通して設けられた多孔振動板とを備えていることを特徴とする除染システム。
【請求項2】
前記圧縮空気発生手段と前記除染液供給手段と前記各1次ミスト発生手段とは、前記1次ミスト供給配管を介して各除染対象室から離隔した位置に配置し、
前記各2次ミスト発生手段は、前記1次ミスト供給配管を介して各対応の除染対象室の近傍又は室内に配置することにより、
各除染対象室に対して前記1次ミスト供給配管の搬送距離は、各対応の前記除染液供給配管の搬送距離よりも長いことを特徴とする請求項1に記載の除染システム。
【請求項3】
前記超音波霧化装置は、前記多孔振動板の表面を前記除染対象室の内部に向け、裏面を前記1次ミスト受容器の内部に向けて配置され、
前記1次ミスト受容器に供給された1次ミストは、前記1次ミスト供給配管から前記多孔振動板の裏面に向けて吐出されて気液分離し、分離した除染液が当該多孔振動板の裏面から表面に移動する際に霧化して当該表面から前記除染対象室の内部に放出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の除染システム。
【請求項4】
前記超音波霧化装置は、前記多孔振動板の表面を前記除染対象室の内部に向け、裏面を前記1次ミスト受容器の内部下端部に設けられた液溜りに向けて配置され、
前記1次ミスト受容器に供給された1次ミストは、前記1次ミスト供給配管から前記1次ミスト受容器の内部に放出されて気液分離し、分離した除染液が当該1次ミスト受容器の前記液溜りに回収された後に、前記多孔振動板の裏面から表面に移動する際に霧化して当該表面から前記除染対象室の内部に放出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の除染システム。
【請求項5】
前記1次ミスト受容器は、下端部が集束した紡錘形若しくは半紡錘形、又は、下端部が集束した紡錘形断面若しくは半紡錘形断面を有する形状をして、供給された1次ミストを気液分離し、分離された除染液を下端部に設けられた前記液溜りに回収し、分離された空気を上端部に設けられた前記空気抜きから外部に放出することを特徴とする請求項4に記載の除染システム。
【請求項6】
前記1次ミスト受容器は、サイクロン機構によって供給された1次ミストを気液分離し、分離された除染液を下端部に設けられた前記液溜りに回収し、分離された空気を上端部に設けられた前記空気抜きから外部に放出することを特徴とする請求項4に記載の除染システム。
【請求項7】
前記2次ミストを分散・拡散するミスト分散・拡散手段を備え、
前記ミスト分散・拡散手段は、前記除染対象室の内部壁面に配置した超音波振動盤を具備し、当該超音波振動盤を超音波振動させて盤面から超音波による音響流を発生させ、前記2次ミスト発生手段から放出された2次ミストに対して音響放射圧による押圧を定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、当該2次ミストを分散・拡散させることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の除染システム。
【請求項8】
前記除染対象室の内部に供給された2次ミストは、前記超音波振動盤から発生する超音波振動により更に微細化することを特徴とする請求項7に記載の除染システム。
【請求項9】
前記2次ミストを分散・拡散するミスト拡散手段を備え、
前記ミスト拡散手段は、前記2次ミスト発生手段の近傍に配置した軸流ファンを具備し、当該軸流ファンにより、前記2次ミスト発生手段から放出された2次ミストに対して空気流による押圧を定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、当該2次ミストを分散・拡散させることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の除染システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイソレーター、RABS、無菌室などや、それらに付随するパスルーム、パスボックスなどの室内に除染用ミストを発生させて除染を行う除染システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品或いは食品などを製造する製造現場、或いは、手術室などの医療現場においては、室内の無菌状態を維持することが重要である。特に医薬品製造の作業室である無菌室の除染においては、GMP(Good Manufacturing Practice)に即した高度な除染バリデーションを完了させる必要がある。
【0003】
近年、無菌環境が要求される作業室(以下、除染対象室という)の除染には、過酸化水素ガスが広く採用されている。この過酸化水素ガスは、強力な滅菌効果を有し、安価で入手しやすく、且つ、最終的には酸素と水に分解する環境に優しい除染ガスとして有効である。しかし、過酸化水素ガスは従来、個々の除染対象室、例えば、無菌室、アイソレーター、グローブボックスなど小空間の除染に使用されてきた。一方、大空間の除染対象室や複数の除染対象室の除染に過酸化水素ガスを用いるには、所定濃度の過酸化水素ガスを大量に安定して供給しなければならないという問題があった。
【0004】
このように、大量の過酸化水素ガスを除染ガス発生装置から除染対象室に供給するには、大口径で大規模なダクト工事と、ダクトを保温するヒーター設備と、腐食に耐える材質のダクトが必要であるという問題があった。
【0005】
特に、医薬品製造現場においては、除染対象室は1室と限らない場合が多く、複数の除染対象室を同時に除染する必要がある。この場合に除染対象室ごとに除染液供給装置や除染ガス発生装置を設け、除染ガス発生装置ごとにダクト工事をすることは効率的ではない。そこで、1台の除染ガス発生装置から複数の除染対象室に対して長い距離のダクトを配し、このダクトから各除染対象室に分岐ダクトを配して同時に除染することが行われる。この場合には、ダクトの分岐部分で凝縮が生じやすく、また、除染ガス発生装置から各除染対象室への距離が異なることから、それぞれ、どれだけの量の過酸化水素ガスが供給されたかを正確に把握することができないという問題があった。
【0006】
一方、過酸化水素ガスによる除染効果は、除染対象部位の表面に凝縮する過酸化水素水の凝縮膜によるものであることが下記特許文献1で示された。そこで、本発明者らは、過酸化水素ガスに代えて過酸化水素水の微細なミスト(以下「過酸化水素ミスト」という)を除染対象室に供給することで、より少ない量の除染剤で効率的な除染が可能であることを見出し、下記特許文献2などの提案を行っている。
【0007】
そこで、1室又は複数の除染対象室に過酸化水素ミストを供給することにより、各室を精度よく且つ効率的に除染することが考えられる。しかし、この場合でも除染対象室ごとに除染液供給装置とミスト発生装置(超音波霧化装置など)を設け、各室ごとに除染液の供給量や除染条件を管理することは効率的ではない。そこで、1台の除染液供給装置から複数の除染対象室に対して長い距離の供給配管を配し、この供給配管から各除染対象室にそれぞれ設けられたミスト発生装置(小型高性能の超音波霧化装置を各室に設置することが可能)に除染液を供給し、各除染対象室ごとに過酸化水素ミストを発生して同時に除染することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公昭61-4543号公報
【文献】特願2019-62333号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この場合に、各室の超音波霧化装置に十分な除染液を供給しようとすると、長い距離の供給配管中に除染液がデッド液として残留して効率的ではなく、各室ごとの給液量の管理も容易でないという問題が生じる。一方、除染液の効率的利用を考慮して超音波霧化装置に必要最小限の除染液を供給しようとすると、除染液の供給に不備が生じた場合に除染液が欠乏して超音波霧化装置の心臓部である超音波振動子の故障に直結するという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、大口径のダクトや凝縮防止のヒーターなどの大掛かりな設備を必要とせず、複数の除染対象室に対して各室ごとに長い距離の配管が可能で、供給配管中に除染液がデッド液として残留せず、且つ、各室ごとに必要とする適正量の除染液を供給できて超音波振動子に故障が発生することがないので、除染液の効率的利用を図ることのできる除染システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、小口径の供給配管を利用して過酸化水素水を圧縮空気中に混合した1次ミストを当該供給配管で各除染対象室に供給し、各除染対象室の近傍又は室内で当該1次ミストを気液分離し、分離した過酸化水素水を超音波霧化装置で微細な2次ミストとすることにより本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明に係る除染システムは、請求項1の記載によれば、
1又は2以上の除染対象室(R1~Rn)に対して、除染用ミストを使用して各除染対象室の内部を除染する除染システム(100)であって、
圧縮空気を発生する圧縮空気発生手段(10)と、除染用ミストを構成する除染液を供給する除染液供給手段(20)とを具備すると共に、
各除染対象室に対して、それぞれ、前記圧縮空気と前記除染液とを気液混合して1次ミストを発生する1次ミスト発生手段(E1~En)と、当該1次ミストから気液分離した除染液を微細な2次ミストに変換する2次ミスト発生手段(M1~Mn、Mx、My)と、前記圧縮空気発生手段から前記1次ミスト発生手段までの間を連通する空気供給配管(AL1~ALn)と、前記除染液供給手段から前記1次ミスト発生手段までの間を連通する除染液供給配管(LL1~LLn)と、前記1次ミスト発生手段から前記2次ミスト発生手段までの間を連通する1次ミスト供給配管(ML1~MLn、MLx、MLy)とを具備してなり、
前記2次ミスト発生手段は、1次ミスト受容器(R1~Rn、Rx、Ry)と超音波霧化装置(A1~An、Ax、Ay)とを有して、
前記1次ミスト受容器は、前記1次ミスト供給配管を介して供給された1次ミストから気液分離した空気を外部に放出する空気抜き(Rx2,Ry2)を備え、
前記超音波霧化装置は、圧電振動子(Ax2,Ay2)と当該圧電振動子の振動により気液分離した除染液を霧化する複数の微細孔が表裏を貫通して設けられた多孔振動板(Ax1,Ay1)とを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項2の記載によると、請求項1に記載の除染システムにおいて、
前記圧縮空気発生手段と前記除染液供給手段と前記各1次ミスト発生手段とは、前記1次ミスト供給配管を介して各除染対象室から離隔した位置に配置し、
前記各2次ミスト発生手段は、前記1次ミスト供給配管を介して各対応の除染対象室の近傍又は室内に配置することにより、
各除染対象室に対して前記1次ミスト供給配管の搬送距離は、各対応の前記除染液供給配管の搬送距離よりも長いことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項3の記載によると、請求項1又は2に記載の除染システムにおいて、
前記超音波霧化装置は、前記多孔振動板の表面を前記除染対象室の内部に向け、裏面を前記1次ミスト受容器の内部に向けて配置され、
前記1次ミスト受容器に供給された1次ミストは、前記1次ミスト供給配管から前記多孔振動板の裏面に向けて吐出されて気液分離し、分離した除染液が当該多孔振動板の裏面から表面に移動する際に霧化して当該表面から前記除染対象室の内部に放出されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項4の記載によると、請求項1又は2に記載の除染システムにおいて、
前記超音波霧化装置は、前記多孔振動板の表面を前記除染対象室の内部に向け、裏面を前記1次ミスト受容器の内部下端部に設けられた液溜りに向けて配置され、
前記1次ミスト受容器に供給された1次ミストは、前記1次ミスト供給配管から前記1次ミスト受容器の内部に放出されて気液分離し、分離した除染液が当該1次ミスト受容器の前記液溜りに回収された後に、前記多孔振動板の裏面から表面に移動する際に霧化して当該表面から前記除染対象室の内部に放出されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項5の記載によると、請求項4に記載の除染システムにおいて、
前記1次ミスト受容器は、下端部が集束した紡錘形若しくは半紡錘形、又は、下端部が集束した紡錘形断面若しくは半紡錘形断面を有する形状をして、供給された1次ミストを気液分離し、分離された除染液を下端部に設けられた前記液溜りに回収し、分離された空気を上端部に設けられた前記空気抜きから外部に放出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項6の記載によると、請求項4に記載の除染システムにおいて、
前記1次ミスト受容器は、サイクロン機構によって供給された1次ミストを気液分離し、分離された除染液を下端部に設けられた前記液溜りに回収し、分離された空気を上端部に設けられた前記空気抜きから外部に放出することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、請求項7の記載によると、請求項1~6のいずれか1つに記載の除染システムにおいて、
前記2次ミストを分散・拡散するミスト分散・拡散手段(V1~Vn)を備え、
前記ミスト分散・拡散手段は、前記除染対象室の内部壁面に配置した超音波振動盤を具備し、当該超音波振動盤を超音波振動させて盤面から超音波による音響流を発生させ、前記2次ミスト発生手段から放出された2次ミストに対して音響放射圧による押圧を定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、当該2次ミストを分散・拡散させることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、請求項8の記載によると、請求項7に記載の除染システムにおいて、
前記除染対象室の内部に供給された2次ミストは、前記超音波振動盤から発生する超音波振動により更に微細化することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、請求項9の記載によると、請求項1~6のいずれか1つに記載の除染システムにおいて、
前記2次ミストを分散・拡散するミスト拡散手段(W1~Wn)を備え、
前記ミスト拡散手段は、前記2次ミスト発生手段の近傍に配置した軸流ファンを具備し、当該軸流ファンにより、前記2次ミスト発生手段から放出された2次ミストに対して空気流による押圧を定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、当該2次ミストを分散・拡散させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上記構成によれば、除染用ミストの発生源となる除染液は1次ミスト発生手段によって圧縮空気発生手段で発生した圧縮空気に混合され1次ミストとなる。この1次ミストは、1次ミスト供給配管を介して2次ミスト発生手段に供給され2次ミストとして微細な過酸化水素ミストとなる。ここで1次ミストは、圧縮空気と除染液との混合ミストであり密度の高い状態にあり搬送速度も速いので、1次ミスト供給配管には小口径の配管を用いることができる。従って、除染対象室が複数あり、また、各除染対象室に対する1次ミスト供給配管の配置距離が異なる場合でも、除染対象室ごとに適切な距離であり、且つ、長い距離の供給配管を配置することができる。このことにより、大口径のダクトなどの大掛かりな設備を必要としない。
【0022】
また、1次ミスト中の過酸化水素水は液体の状態にあるので、凝縮を防止するために1次ミスト供給配管を保温する必要がない。従って、除染対象室が複数あり除染対象室ごとに長い距離の供給配管を配置する場合であっても、凝縮防止のヒーターなどの大掛かりな設備を必要としない。
【0023】
また、上記構成によれば、除染対象室が複数ある場合には、圧縮空気発生手段と除染液供給手段とを各除染対象室に共通とし、一方、1次ミスト発生手段と2次ミスト発生手段及びこれらを結ぶ1次ミスト供給配管(以下、これらを「除染ユニット」という)とは除染対象室ごとに配置するようにする。このことにより、圧縮空気発生手段と除染液供給手段と各1次ミスト発生手段とを各除染対象室から離隔した位置に配置することができる。一方、各2次ミスト発生手段を各対応の除染対象室の近傍又は室内に配置する。このようにして、除染対象室ごとに別個の除染ユニットを配置し、除染液供給配管の搬送距離を短く、混合気液供給配管の搬送距離を長くする。このことにより、複数の除染対象室に対して各室ごとに長い距離の配管が可能となる。
【0024】
このように、除染液供給配管の搬送距離を短くすることで、1次ミスト発生手段への除染液の供給量を正確に把握することができる。このことにより、除染対象室ごとに2次ミスト発生手段に供給された除染液の量を正確に把握することができ、当該除染対象室に放出された2次ミストの量が明確になる。一方、1次ミスト中の過酸化水素水は液体の状態にあり凝縮することがないので、1次ミスト供給配管の搬送距離を長くして除染液を遠くまで正確に搬送することができる。更に、圧縮空気により配管中の過酸化水素水を完全に搬送することができるので配管中にデッド液が残留することがない。また、2次ミスト発生手段に1次ミストとして供給する過酸化水素水の量を正確に把握できるので、過酸化水素水が欠乏することがなく2次ミスト発生手段の超音波振動子に故障が発生することがない。このことにより、除染液の効率的利用を図ることができる。
【0025】
また、上記構成によれば、超音波霧化装置は、多孔振動板の表面を除染対象室の内部に向け、裏面を1次ミスト受容器の内部に向けて配置されるようにしてもよい。この状態で、1次ミスト受容器に供給された1次ミストは、1次ミスト供給配管から多孔振動板の裏面に向けて直接吐出され、多孔振動板の裏面で気液分離される。分離した除染液は、多孔振動板の裏面から表面に移動する際に霧化して当該表面から除染対象室の内部に放出される。
【0026】
また、上記構成によれば、超音波霧化装置は、多孔振動板の表面を除染対象室の内部に向け、裏面を前記1次ミスト受容器の内部下端部に設けられた液溜りに向けて配置されるようにしてもよい。この状態で、1次ミスト受容器に供給された1次ミストは、1次ミスト受容器の内部に放出されて気液分離される。分離した除染液は、1次ミスト受容器の液溜りに回収され、その後、多孔振動板の裏面から表面に移動する際に霧化して当該表面から除染対象室の内部に放出される。
【0027】
また、上記構成によれば、1次ミスト受容器は、下端部が集束した紡錘形若しくは半紡錘形をしていてもよい。また、下端部が集束した紡錘形断面若しくは半紡錘形断面を有する形状をしていてもよい。このことにより、供給された1次ミストから気液分離した除染液は、1次ミスト受容器の下端部に設けられた液溜りに回収される。一方、分離された空気は、1次ミスト受容器の上端部に設けられた空気抜きから外部に放出される。
【0028】
また、上記構成によれば、1次ミスト受容器は、サイクロン機構を有していてもよい。このことにより、供給された1次ミストから気液分離した除染液は、1次ミスト受容器の下端部に設けられた液溜りに回収される。一方、分離された空気は、1次ミスト受容器の上端部に設けられた空気抜きから外部に放出される。
【0029】
また、上記構成によれば、2次ミストを分散・拡散するミスト分散・拡散手段を備えていてもよい。ミスト分散・拡散手段は、除染対象室の内部壁面に配置した超音波振動盤を具備し、当該超音波振動盤を超音波振動させて盤面から超音波による音響流を発生させる。このことにより、2次ミスト発生手段から放出された2次ミストに対して音響放射圧による押圧を定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、当該2次ミストを分散・拡散させることができる。また、上記構成によれば、除染対象室の内部に供給された2次ミストは、超音波振動盤から発生する超音波振動により更に微細化することができる。
【0030】
また、上記構成によれば、2次ミストを分散・拡散するミスト拡散手段を備えていてもよい。ミスト拡散手段は、2次ミスト発生手段の近傍に配置した軸流ファンを具備し、当該軸流ファンにより、2次ミスト発生手段から放出された2次ミストに対して空気流による押圧を定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、当該2次ミストを分散・拡散させることができる。
【0031】
よって、本発明によれば、大口径のダクトや凝縮防止のヒーターなどの大掛かりな設備を必要とせず、複数の除染対象室に対して各室ごとに長い距離の配管が可能で、供給配管中に除染液がデッド液として残留せず、且つ、各室ごとに必要とする適正量の除染液を供給できて超音波振動子に故障が発生することがないので、除染液の効率的利用を図ることのできる除染システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明に係る除染システムの第1実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の第1実施形態における2次ミスト発生手段の配置位置を変更した第2実施形態を示す概略構成図である。
【
図3】
図1の第1実施形態における2次ミスト発生手段の配置位置を変更すると共に、ミスト分散・拡散装置を配置した第3実施形態を示す概略構成図である。
【
図4】
図1の第1実施形態における2次ミスト発生手段の配置位置を変更すると共に、ミスト拡散装置を配置した第4実施形態を示す概略構成図である。
【
図5】本発明に係る除染システムで使用する2次ミスト発生手段の1例を示す(A)除染対象室側から見た正面図、(B)側面断面図である。
【
図6】本発明に係る除染システムで使用する2次ミスト発生手段の他の例を示す(A)側面断面図、(B)平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る除染システムを各実施形態に基づいて説明する。なお、本発明は、下記に示す各実施形態に限定されるものではない。
【0034】
≪第1実施形態≫
本発明に係る除染システムの第1実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本第1実施形態に係る除染システム100の概略構成図である。本第1実施形態においては、
図1に示すように、広さの異なるn室(nは正の整数)からなるアイソレーターを除染対象室R1~Rnとしている。各除染対象室は、それぞれ、独立した空間を有して、室内上部に循環ファンF1~Fn、HEPAフィルタH1~Hn、及び、整流板B1~Bnを備えている。
【0035】
なお、本第1実施形態においては、n室からなるアイソレーターを除染対象室とするが、これに限るものではなく、RABS、無菌室、パスルーム、パスボックスなどであってもよく、これらの組合せであってもよい。また、除染対象室の数も1室から複数の何室であってもよい。
【0036】
図1において、除染システム100は、除染対象室R1~Rnの各室に共通の空気圧縮機10と過酸化水素水タンク20とを有している。また、除染対象室R1~Rnは、それぞれ、各室に対応した1次ミストを発生するエジェクタE1~Enと過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnとを備えている。この過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnは、2次ミスト発生手段として作用する。なお、
図1において、除染対象室R1は、2台のエジェクタE1(1)、E1(2)、及び、2台の過酸化水素ミスト発生装置M1(1)、M1(2)を有している。一方、除染対象室Rnは、1台のエジェクタEn、及び、1台の過酸化水素ミスト発生装置Mnを有している。これは、各除染対象室の内部容積に対応させたものである。
【0037】
空気圧縮機10は、過酸化水素水を搬送するためのキャリアガスとしての圧縮空気を発生するための圧縮空気発生手段として作用する。この空気圧縮機10は、除染対象室R1~Rnから離れた位置に配置されている。
【0038】
過酸化水素水タンク20は、除染用ミストとしての過酸化水素ミストの発生源である過酸化水素水を貯留するための除染液供給手段として作用する。この過酸化水素水タンク20は、除染対象室R1~Rnから離れた位置で空気圧縮機10の近傍に配置されている。ここで、過酸化水素水タンク20に貯留される過酸化水素水の濃度は特に限定するものではないが、一般に、危険物などの取扱いを考慮して30~35重量%のものを使用することが好ましい。また、過酸化水素水タンク20は、内部の過酸化水素水の残量を検知する秤量器21と、残量を制御する制御装置(図示せず)を備えている。
【0039】
エジェクタE1~Enは、過酸化水素水を圧縮空気中に気液混合して1次ミストを発生するための1次ミスト発生手段として作用する。このエジェクタE1~Enは、除染対象室R1~Rnから離れた位置で空気圧縮機10及び過酸化水素水タンク20の近傍に配置されている。
【0040】
過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnは、ミスト受容器MR1~MRnと超音波霧化装置A1~An(共に
図1に示していないが、構造は後述する)とから構成されている。ミスト受容器MR1~MRnは、エジェクタE1~Enから搬送されてくる過酸化水素水を含む1次ミストを受容して気液分離する1次ミスト受容器として作用する。また、このミスト受容器MR1~MRnは、気液分離した過酸化水素水を超音波霧化装置A1~Anに供給すると共に、気液分離した空気を外部に放出する。このミスト受容器MR1~MRnの構造については後述する。
【0041】
本第1実施形態の
図1においては、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnは、HEPAフィルタH1~Hnの上部(循環ファンF1~Fnの近傍)に配置されている。この場合、発生したミストは、循環ファンF1~Fnが稼働した場合には拡散される。また、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnの位置は、これに限るものではなく、側壁内側或いは側壁外側などいずれに配置してもよい。なお、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnを除染対象室R1~Rnの外部に配置した場合においても、過酸化水素ミストの放出口は除染対象室R1~Rnの内部に開口するようにする。
【0042】
超音波霧化装置A1~Anは、ミスト受容器MR1~MRnから気液分離した過酸化水素水を受取り、微細な2次ミストを発生して除染対象室R1~Rnの内部に放出する。この超音波霧化装置A1~Anは、ミスト受容器MR1~MRnと一体になって2次ミスト発生手段として作用する過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnを構成する。なお、この超音波霧化装置A1~Anの構造についても後述する。
【0043】
なお、最も広い除染対象室R1には、上述のように、2組の除染ユニット(2台のエジェクタE1(1)、E1(2)、2台の過酸化水素ミスト発生装置M1(1)、M1(2)、及び、2本の1次ミスト供給配管ML1(1)、ML1(2))が配置されている。これは、除染対象室R1の容積が大きく、1組の除染ユニットのみから多量の過酸化水素ミストを供給するより、2組の除染ユニットに分けて2か所から過酸化水素ミストを放出することにより除染効率が高くなるからである。また、除染対象室の広さによっては、1室に2組より多くの除染ユニットを設けるようにしてもよい。なお、このように1室に複数の除染ユニットを設ける場合でも、1次ミスト供給配管は小口径であり設備費の点で問題となることはない。
【0044】
また、
図1において、除染システム100は、空気圧縮機10とエジェクタE1~Enとを連通する空気供給配管AL1~ALnと、過酸化水素水タンク20とエジェクタE1~Enとを連通する除染液供給配管LL1~LLnと、エジェクタE1~Enとミスト受容器MR1~MRnとを連通する1次ミスト供給配管ML1~MLnとを備えている。
【0045】
空気供給配管AL1~ALnは、空気圧縮機10の吐出口とエジェクタE1~Enの駆動流路(図示しない)とを連通する。空気供給配管AL1~ALnの管路には、それぞれ、圧縮空気の供給を制御する開閉弁(図持せず)が設けられている。ここで、空気供給配管AL1~ALnの材質及び管径については特に限定するものではないが、一般に、内径1~10mmのステンレス管であることが好ましい。なお、
図1には示していないが、空気圧縮機10と空気供給配管AL1~ALnの間の管路には、エアドライヤ、エアレギュレータ、オートドレン、オイルミストセパレータ、その他のフィルタなどを設けるようにしてもよい。
【0046】
除染液供給配管LL1~LLnは、過酸化水素水タンク20の供給口とエジェクタE1~Enの吸引流路(図示しない)とを連通する。除染液供給配管LL1~LLnの管路には、それぞれ、過酸化水素水の供給を制御するチューブポンプP1~Pnが設けられている。ここで、除染液供給配管LL1~LLnの材質及び管径については、過酸化水素水に使用可能なものであれば特に限定するものではないが、一般に、内径1~10mmのステンレス管であることが好ましい。
【0047】
1次ミスト供給配管ML1~MLnは、エジェクタE1~Enの吐出流路と超音波霧化装置A1~Anを構成するミスト受容器MR1~MRnとを連通する。1次ミスト供給配管ML1~MLnは、空気圧縮機10及び過酸化水素水タンク20の近傍から除染対象室R1~Rnの上壁内側に配置された過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnの位置まで長い距離を配管されている。ここで、1次ミスト供給配管ML1~MLnの材質及び管径については、単位時間当りに必要な量の過酸化水素ミストを長い距離搬送することのできるものであることが好ましく、一般に、内径1~10mmのステンレス管であることが好ましい。
【0048】
このように、除染対象室R1~Rnに対して、それぞれ、空気供給配管AL1~ALnと除染液供給配管LL1~LLnと1次ミスト供給配管ML1~MLnとを配置することにより、除染対象室ごとに、別個に過酸化水素ミストを放出することができ、各室ごとに正確な除染を行うことができる。
【0049】
また、
図1から分かるように、1次ミスト供給配管ML1~MLnの搬送距離は、空気供給配管AL1~ALnの搬送距離又は除染液供給配管LL1~LLnの搬送距離よりも長い距離となる。この1次ミスト供給配管ML1~MLnによる1次ミストの搬送距離は、特に限定するものではないが、通常、3~100m程度は搬送することができる。一方、空気供給配管AL1~ALnの搬送距離又は除染液供給配管LL1~LLnの搬送距離は短くすることができる。
【0050】
本第1実施形態において、1次ミストは、圧縮空気と過酸化水素水との混合気液であり密度の高い状態にあり搬送速度も速いので、1次ミスト供給配管ML1~MLnには小口径の配管を用いることができる。従って、除染対象室ごとに長い距離の1次ミスト供給配管ML1~MLnを配置することができる。このことにより、大口径のダクトなどの大掛かりな設備を必要としない。
【0051】
また、1次ミスト中の過酸化水素水は液体の状態にあるので、凝縮を防止するために1次ミスト供給配管ML1~MLnを保温する必要がない。従って、除染対象室ごとに長い距離の配管を配置する場合であっても、凝縮防止のヒーターなどの大掛かりな設備を必要としない。
【0052】
このように、除染液供給配管LL1~LLnの搬送距離を短くすることで、エジェクタE1~Enへの過酸化水素水の供給量を正確に把握することができる。このことにより、除染対象室ごとにミスト受容器MR1~MRnに供給された過酸化水素水の量を正確に把握することができ、当該除染対象室に放出された過酸化水素ミストの量が明確になる。一方、1次ミスト中の過酸化水素水は液体の状態にあり凝縮することがないので、1次ミスト供給配管ML1~MLnの搬送距離を長くして過酸化水素水を遠くまで正確に搬送することができる。更に、圧縮空気により1次ミスト供給配管ML1~MLn中の過酸化水素水を完全に搬送することができるので配管中にデッド液が残留することがない。
【0053】
次に、本第1実施形態に係る除染システム100を使用して除染対象室R1~Rnを除染する除染方法について説明する。
【0054】
本第1実施形態においては、4室の除染対象室R1~Rnを同一の除染用ミスト発生時間で除染する。各除染対象室の広さが異なることから、除染対象室ごとに単位時間当りに放出すべき過酸化水素ミストの量を算出する。これらの除染用ミスト放出量から、各除染対象室に対応するエジェクタE1~Enに対して、除染液供給配管LL1~LLnを介して過酸化水素水タンク20から供給する過酸化水素水の量を算出する。なお、除染前の各室は温度調節機及び湿度調節機を用いて所定の条件に設定しておくことが好ましい。
【0055】
次に、除染操作を開始する。まず、空気供給配管AL1~ALnの開閉弁(図示せず)を開放し、空気圧縮機10から空気供給配管AL1~ALnを介してエジェクタE1~Enの駆動流路に圧縮空気を供給する。ここで、エジェクタE1~Enに供給される圧縮空気は、特に限定するものではないが、それぞれ、吐出圧力が0.05MPa以上であって、空気流量が0.5~20NL/minであることが好ましい。この空気流量は、各除染対象室に供給する過酸化水素水の濃度と量、及び、各除染対象室への距離に応じて適宜設定するようにすればよい。
【0056】
次に、除染液供給配管LL1~LLnのチューブポンプP1~Pnを作動し、過酸化水素水タンク20から除染液供給配管LL1~LLnを介してエジェクタE1~Enの吸引流路に過酸化水素水を供給する。なお、この過酸化水素水の供給量は、エジェクタE1~Enに対して上述のようにして計算した量に対応する。ここで、エジェクタE1~Enに供給される過酸化水素水の濃度は、特に限定するものではないが、一般に流通している30~35重量%のものをそのまま使用してもよく、又は、これらを濃縮或いは希釈して使用するようにしてもよい。また、エジェクタE1~Enに供給される過酸化水素水は、それぞれ、流量が0.5~10g/minに調整するようにしてもよい。
【0057】
なお、過酸化水素水の量が上記範囲であることにより、且つ、圧縮空気の量が上記範囲であることにより、1次ミスト供給配管ML1~MLnを介して過酸化水素水を混合した1次ミストを長い距離でも搬送することができる。
【0058】
上述の操作により、エジェクタE1~Enにおいて過酸化水素水と圧縮空気が1次ミスト化し、エジェクタE1~Enの吐出流路から1次ミスト供給配管ML1~MLnを介して過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnを構成するミスト受容器MR1~MRnに供給される。
【0059】
ミスト受容器MR1~MRnにおいては、1次ミストが気液分離して過酸化水素水と空気が発生する。ミスト受容器MR1~MRnで気液分離した過酸化水素は、ミスト受容器MR1~MRnから除染対象室R1~Rn内に放出口を有する超音波霧化装置A1~Anに供給される。この段階において、超音波霧化装置A1~Anの超音波振動子(後述する)は、作動を開始する。このことにより、超音波霧化装置A1~Anで発生した微細な過酸化水素ミストが各除染対象室内に放出され、各除染対象室内が均一に除染される。
【0060】
本発明において「ミスト」とは、広義に解釈するものであって、微細化して空気中に浮遊する除染剤の液滴の状態、除染剤のガスと液滴が混在した状態、除染剤がガスと液滴との間で凝縮と蒸発との相変化を繰り返している状態などを含むものとする。また、粒径に関しても、場合によって細かく区分されるミスト・フォグ・液滴などを含んで広義に解釈する。
【0061】
よって、本発明に係るミストにおいては、場合によってミスト(10μm以下と定義される場合もある)或いはフォグ(5μm以下と定義される場合もある)と呼ばれるもの、及び、それ以上の粒径を有するものも含むものとする。なお、本発明においては、超音波霧化装置A1~Anの作用により、ミスト・フォグ・液滴などの3μm~10μm或いはそれ以上の液滴であっても、5μm以下或いは3μm以下の超微細粒子に均一化されて高度な除染効果を発揮するものと考えられる。
【0062】
このようにして、所定の時間、過酸化水素ミストを放出する。所定の時間を経過した段階で、除染液供給配管LL1~LLnのチューブポンプP1~Pnを停止し、過酸化水素水の供給を止める。この段階では、空気供給配管AL1~ALnを介してエジェクタE1~Enに圧縮空気が供給された状態にあり、1次ミスト供給配管ML1~MLn中の残余の過酸化水素水が全てミスト受容器MR1~MRnに送られる。このことにより、除染対象室R1~Rnに対して、それぞれ、所定量の過酸化水素ミストが正確に放出される。超音波霧化装置A1~Anに供給された過酸化水素水が全てミスト化した段階において、超音波霧化装置A1~Anの超音波振動子(後述する)は、作動を停止する。
【0063】
次に、空気供給配管AL1~ALnの開閉弁11a~15aを閉鎖し、圧縮空気の供給を止める。その後、室内の過酸化水素ミストを排出し室内をエアレーションして除染操作を終了する。なお、上記各操作は、マイクロコンピュータによる自動制御により行うことが好ましい。
【0064】
ここで、本第1実施形態で使用する2次ミスト発生手段の一例について説明する。
図5は、2次ミスト発生手段の1例を示している。
図5において、(A)は除染対象室側から見た正面図、(B)は側面断面図である。
図5において、2次ミスト発生手段としての過酸化水素ミスト発生装置Mxは、ミスト受容器MRxと超音波霧化装置Axとから構成されている。
【0065】
ミスト受容器MRxは、正面内部が半紡錘形の断面をした空間を構成し、半紡錘形の幅が集束する正面下端部に超音波霧化装置Axが取り付けられている。この内部空間の下端部は、気液分離した少量の除染液の液溜りMRx1の機能を有するために幅が集束している。また、ミスト受容器MRxの背面下端部(超音波霧化装置Axに対向する位置)には、1次ミスト供給配管MLxの末端がミスト受容器MRxの内部に向けて連通している。ミスト受容器MRxの背面内部の上端部には、空気抜きMRx2が開口している。なお、この空気抜きMRx2の経路には、過酸化水素を分解するフィルタMHを設けるようにしてもよい。また、ミスト受容器MRxの内部中央の1次ミスト供給配管MLxの末端と空気抜きMRx2との間に邪魔板MRx3が設けられている。
【0066】
超音波霧化装置Axは、気液分離した除染液(過酸化水素水)を霧化する複数の微細孔(図示せず)が表裏を貫通して設けられた略円板状の多孔振動板Ax1と、この多孔振動板Ax1を膜振動させる略円環板状に形成された圧電振動子Ax2と、この圧電振動子Ax2の振動を制御する制御装置(図示せず)とから構成されている。多孔振動板Ax1は、圧電振動子Ax2の内孔部を覆うように圧電振動子Ax2に貼り合わされている。また、多孔振動板Ax1は、その表面を除染対象室の内部に向け、裏面をミスト受容器MRxの内部に向けて取り付けられており、多孔振動板Ax1の複数の微細孔が除染対象室の内部とミスト受容器MRxの内部とを貫通している。なお、
図5においては、多孔振動板Ax1の表面から水平方向に向けて過酸化水素ミストを放出するように配置されているが、これに限るものではなく、下方に向けて或いは配置位置によっては上方に向けて放出するようにしてもよい。
【0067】
この状態において、1次ミストが1次ミスト供給配管MLxを介してミスト受容器MRxの内部に放出される。ミスト受容器MRxの内部では多孔振動板Ax1の裏面と1次ミスト供給配管MLxの末端とが対向している。このことにより、放出された1次ミストは、直接、多孔振動板Ax1の裏面に吐出されて気液分離される。この気液分離された除染液は、超音波振動する多孔振動板Ax1の複数の微細孔を介して微細な2次ミスト(過酸化水素ミスト)となって、除染対象室の内部に放出され除染効果を発揮する。なお、多孔振動板Ax1の裏面で気液分離した除染液の一部が液溜りMRx1に留保されることがあっても、これらは極少量であり多孔振動板Ax1の複数の微細孔を介して微細な2次ミストとなって、除染対象室の内部に放出される。一方、気液分離された空気は、空気抜きMRx2から外部に放出される。
【0068】
このように、超音波霧化装置Axに供給する除染液の量を必要最小限に精度よく制御できるので、複数の除染対象室に対して各室ごとに長い距離の配管を設置した場合でも、除染液の残留を回避して効率的な除染を行うことができる。更に、このように各室ごとに正確な量の過酸化水素ミストを供給できるので、除染液が欠乏して超音波霧化装置Axの心臓部である超音波振動子に故障が発生することがない。また、必要最小限の除染液の量で十分な除染効果を得ることができ、除染液の効率的利用を図ることができる。
【0069】
ここで、多孔振動板Ax1の微細孔の孔径及び穴数は、特に限定するものではなく、超音波霧化効果と過酸化水素ミストの十分な供給量を確保できるものであればよい。なお、通常は4~11μm程度の孔径を有するものであるが、細菌の芽胞のサイズより小さいもの(例えば、0.5~3μm程度)の孔径を選択すれば、フィルタ効果を発揮して細菌によって除染液が汚染することがない。
【0070】
次に、本第1実施形態で使用する2次ミスト発生手段の他の例について説明する。
図6は、2次ミスト発生手段の他の例を示している。
図6において、(A)は側面断面図、(B)は平面断面図である。
図6において、2次ミスト発生手段としての過酸化水素ミスト発生装置Myは、ミスト受容器MRyと超音波霧化装置Ayとから構成されている。
【0071】
ミスト受容器MRyは、サイクロン機構を有する形状をして、ミスト受容器MRyの下端部に超音波霧化装置Ayが取り付けられている。この超音波霧化装置Ayが取り付けられている内部空間の下端部は、気液分離した少量の除染液の液溜りMRyの機能を有する。また、ミスト受容器MRyの上部側面には、1次ミスト供給配管MLyの末端がミスト受容器MRyの内部に向けて法線状に連通(サイクロンの導入口に対応)している。ミスト受容器MRyの上端部中央には、空気抜きMRy2が上方に向けて開口している。
【0072】
超音波霧化装置Ayは、略円板状に形成され、気液分離した除染液(過酸化水素水)を霧化する複数の微細孔(図示せず)が表裏を貫通して設けられた多孔振動板Ay1と、この多孔振動板Ay1を膜振動させる略円環板状に形成された圧電振動子Ay2と、この圧電振動子Ay2の振動を制御する制御装置(図示せず)とから構成されている。多孔振動板Ay1は、圧電振動子Ay2の内孔部を覆うように圧電振動子Ay2に貼り合わされている。また、多孔振動板Ay1は、その表面を除染対象室の内部に向け、裏面をミスト受容器MRyの内部に向けて取り付けられており、多孔振動板Ay1の複数の微細孔が除染対象室の内部とミスト受容器MRyの内部とを貫通している。なお、
図6においては、多孔振動板Ay1の表面から下方に向けて過酸化水素ミストを放出するように配置されているが、これに限るものではなく、水平方向に向けて或いは配置位置によっては上方に向けて放出するようにしてもよい。
【0073】
この状態において、1次ミストが1次ミスト供給配管MLyを介してミスト受容器MRyの内部に放出される。ミスト受容器MRyの内部はサイクロン機構を有する形状をしているので、放出された1次ミストは、ミスト受容器MRyの内部側壁で気液分離される。この気液分離した除染液は、ミスト受容器MRyの内部下端部の液溜りMRy1に集められ、超音波振動する多孔振動板Ay1の複数の微細孔を介して微細な2次ミスト(過酸化水素ミスト)となって、除染対象室の内部に放出され除染効果を発揮する。一方、気液分離された空気は、空気抜きMRy2から外部に放出される。
【0074】
このように、超音波霧化装置Ayに供給する除染液の量を必要最小限に精度よく制御できるので、複数の除染対象室に対して各室ごとに長い距離の配管を設置した場合でも、除染液の残留を回避して効率的な除染を行うことができる。更に、このように各室ごとに正確な量の過酸化水素ミストを供給できるので、除染液が欠乏して超音波霧化装置Ayの心臓部である超音波振動子に故障が発生することがない。また、必要最小限の除染液の量で十分な除染効果を得ることができ、除染液の効率的利用を図ることができる。
【0075】
以上のように上記第1実施形態から明らかなように、本発明においては、大口径のダクトや凝縮防止のヒーターなどの大掛かりな設備を必要とせず、複数の除染対象室に対して各室ごとに長い距離の配管が可能で、供給配管中に除染液がデッド液として残留せず、且つ、各室ごとに必要とする適正量の除染液を供給できて超音波振動子に故障が発生することがないので、除染液の効率的利用を図ることのできる除染システムを提供することができる。
【0076】
≪第2実施形態≫
本第2実施形態においては、過酸化水素ミスト発生装置の位置を変更した場合について説明する。上記第1実施形態の
図1においては、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnは、HEPAフィルタH1~Hnの上部(循環ファンF1~Fnの近傍)に配置されている。これに対して、
図2は、上記第1実施形態における2次ミスト発生手段の配置位置を変更した概略構成図である。
【0077】
本第2実施形態の
図2においては、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnは、作業領域上方の整流板B1~Bnの直下に配置されている。具体的に除染対象室R1においては、2台の過酸化水素ミスト発生装置M1(1)、M1(2)が作業領域上方の整流板B1の直下に配置されている。
【0078】
なお、
図2において、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mn以外の位置は
図1と同様である。本第2実施形態においては、過酸化水素ミスト発生装置の位置のみが上記第1実施形態と異なるのであって、発明の作用機構及び効果については上記第1実施形態と同様である。よって、ここでは説明を省略する。
【0079】
≪第3実施形態≫
本第3実施形態においては、過酸化水素ミスト発生装置の位置を変更すると共に、過酸化水素ミストを分散・拡散するミスト分散・拡散装置を配置した場合について説明する。
図3は、上記第1実施形態における2次ミスト発生手段の配置位置を変更すると共に、ミスト分散・拡散装置を配置した概略構成図である。
【0080】
本第3実施形態の
図3においては、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnは、上記第2実施形態と同様に作業領域上方の整流板B1~Bnの直下に配置されている。更に、
図3においては、整流板B1~Bnの上部(整流板B1~BnとHEPAフィルタH1~Hnとの間)に、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnと共にミスト分散・拡散装置V1~Vnが配置されている。ミスト分散・拡散装置V1~Vnは、それぞれ超音波振動盤を具備している。
【0081】
具体的に除染対象室R1においては、2台の過酸化水素ミスト発生装置M1(1)、M1(2)が作業領域上方の整流板B1の直下に配置されている。更に、1台の過酸化水素ミスト発生装置M1(3)とミスト分散・拡散装置V1(1)とが整流板B1の上部(整流板B1とHEPAフィルタH1(1)、H1(2)との間)に配置されている。なお、
図3において、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnとミスト分散・拡散装置V1~Vn以外の位置は
図1と同様である。
【0082】
ここで、ミスト分散・拡散装置V1~Vnについて説明する。
図3の除染対象室R1において、ミスト分散・拡散装置V1(1)は、過酸化水素ミスト発生装置M1(3)から水平に図示左方向に放出される過酸化水素ミストに対して、放出方向の正面から超音波振動による音響放射圧を作用させるように配置されている。
【0083】
ここで、ミスト分散・拡散装置V1(1)を例にして、その構造と作用について説明する。ミスト分散・拡散装置V1(1)は、基盤と複数の送波器とからなる超音波振動盤を具備している。本第3実施形態においては、送波器として超音波発信器を使用した。本第3実施形態においては、基盤の盤上に複数個の超音波発信器をそれらの振動面の送波方向を統一し、或いは、多方向に分散して配置されている。なお、超音波発信器の個数は、特に限定するものではない。
【0084】
本第3実施形態においては、周波数40KHz付近の超音波を送波する周波数変調方式の超音波発信器を使用した。なお、超音波発信器の種類、大きさと構造、出力等に関しては、特に限定するものではない。また、本第3実施形態においては、超音波振動盤に関しては超音波発信器に限るものではなく、超音波の発生機構、周波数域及び出力等について特に限定するものではない。
【0085】
なお、本第3実施形態においては、制御装置により超音波発信器の周波数、出力、発信時間を制御すると共に、超音波の発信を定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、過酸化水素ミストに作用する音響放射圧による押圧を変化させることができる。
【0086】
このような構成において、過酸化水素ミスト発生装置M1(3)から放出された過酸化水素ミスト(2次ミスト)は、ミスト分散・拡散装置V1(1)の作動によって整流板B1とHEPAフィルタH1(1)、H1(2)との間の空間に均一にムラなく分散・拡散する。また、この際に過酸化水素ミストは、音響放射圧の作用により更に微細化が進み、整流板B1とHEPAフィルタH1(1)、H1(2)との間の空間及びHEPAフィルタを確実に除染することができる。
【0087】
なお、本第3実施形態においては、過酸化水素ミストは、超音波振動の作用で更に微細化され粒径が小さく表面積が大きくなることから、ミストの蒸発効率が高く蒸発と凝縮とを繰り返しているものと考えられる。また、高度に微細化されたミストであり、除染対象室R1の内壁面に均一且つ薄層の凝縮膜を形成する。これらのことにより、除染対象室R1の内部には過酸化水素の3μm以下の超微細粒子と過酸化水素ガスとが相変化しながら共存して高度な除染環境を発現するものと考えられる。
【0088】
≪第4実施形態≫
本第4実施形態においては、過酸化水素ミスト発生装置の位置を変更すると共に、過酸化水素ミストを分散・拡散するミスト拡散装置を配置した場合について説明する。
図4は、上記第1実施形態における2次ミスト発生手段の配置位置を変更すると共に、ミスト拡散装置を配置した第4実施形態を示す概略構成図である。
【0089】
本第4実施形態の
図4においては、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnは、上記第2実施形態と同様に作業領域上方の整流板B1~Bnの直下に配置されている。更に、
図4においては、整流板B1~Bnの上部(整流板B1~BnとHEPAフィルタH1~Hnとの間)に、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnと共にミスト拡散装置W1~Wnが配置されている。ミスト拡散装置W1~Wnは、それぞれ軸流ファンを具備し、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnの近傍に配置されている。
【0090】
具体的に除染対象室R1においては、2台の過酸化水素ミスト発生装置M1(1)、M1(2)が作業領域上方の整流板B1の直下に配置されている。更に、1台の過酸化水素ミスト発生装置M1(3)と、ミスト拡散装置W1(1)とが過酸化水素ミスト発生装置M1(3)の近傍の整流板B1の上部(整流板B1とHEPAフィルタH1(1)、H1(2)との間)に配置されている。なお、
図4において、過酸化水素ミスト発生装置M1~Mnとミスト拡散装置W1~Wn以外の位置は
図1と同様である。
【0091】
ここで、ミスト拡散装置W1~Wnについて説明する。
図4の除染対象室R1において、ミスト拡散装置W1(1)は、過酸化水素ミスト発生装置M1(3)から水平に図示右方向に放出される過酸化水素ミストに対して、放出方向と略並行に空気流による押圧を作用させるように配置されている。
【0092】
また、過酸化水素ミスト発生装置M1(3)から水平に図示右方向に放出される過酸化水素ミストに対して、ミスト拡散装置W1(1)の空気流放出方向を傾けて設置しても良い。空気流放出方向の傾きは、過酸化水素ミストの放出方向に対して0°~45°が好ましく、5°~30°がより好ましい。更に、ミスト拡散装置W1(1)に軸流ファンの様な渦巻状の空気流を発生するファンを用いる場合には、ミスト発生装置M1(3)から放出される過酸化水素ミストに対して、渦巻状の空気流回転接線方向が上向きにミストに押圧を作用させるようにミスト拡散装置W1(1)を配置することが好ましい。
【0093】
ここで、ミスト拡散装置W1(1)は、一般的な軸流ファンが望ましいが、シロッコファンを用いることも可能である。また圧縮空気等を放出するノズルでも良く、過酸化水素ミスト発生装置から発生したミストを、整流板B1とHEPAフィルタH1(1)、H1(2)との間の狭い空間内でも、より遠方までミストを拡散させる為に空気流を発生させる方法であれば特に限定するものではない。
【0094】
なお、本第4実施形態においては、制御装置により軸流ファンの出力、動作時間を制御すると共に、軸流ファンを定常作動又は間欠作動若しくは強弱作動させることにより、過酸化水素ミストに作用する空気流による押圧を変化させることができる。
【0095】
このような構成において、過酸化水素ミスト発生装置M1(3)から放出された過酸化水素ミスト(2次ミスト)は、ミスト拡散装置W1(1)の作動によって整流板B1とHEPAフィルタH1(1)、H1(2)との間の空間に均一にムラなく拡散することにより、整流板B1とHEPAフィルタH1(1)、H1(2)との間の空間及びHEPAフィルタを確実に除染することができる。
【0096】
以上のように上記第2~第4実施形態からも明らかなように、本発明においては、大口径のダクトや凝縮防止のヒーターなどの大掛かりな設備を必要とせず、複数の除染対象室に対して各室ごとに長い距離の配管が可能で、供給配管中に除染液がデッド液として残留せず、且つ、各室ごとに必要とする適正量の除染液を供給できて超音波振動子に故障が発生することがないので、除染液の効率的利用を図ることのできる除染システムを提供することができる。
【0097】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態においては、圧縮空気発生手段として空気圧縮機を採用するが、これに限定されるものではなく、高圧空気ボンベなど、その他の手段を採用するようにしてもよい。
(2)上記各実施形態においては、1次ミスト発生手段としてエジェクタを採用するが、これに限定されるものではなく、気液ポンプなど、その他の気液混合手段を採用するようにしてもよい。
(3)上記各実施形態においては、除染液供給配管の管路にチューブポンプを採用するが、これに限定されるものではなく、他のどのようなポンプ或いは給液手段を採用するようにしてもよい。
(4)上記第3実施形態においては、過酸化水素ミストを分散・拡散するためのミスト・分散拡散装置(超音波振動盤)を整流板の上部(整流板とHEPAフィルタH1~Hnとの間)に配置したが、これに限定されるものではなく、作業領域上方の整流板の直下或いは作業領域のどのような位置に配置するようにしてもよい。
(5)上記第4実施形態においては、過酸化水素ミストを分散・拡散するためのミスト拡散装置(軸流ファン)を整流板の上部(整流板とHEPAフィルタH1~Hnとの間)に配置したが、これに限定されるものではなく、作業領域上方の整流板の直下或いは作業領域のどのような位置に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0098】
100…除染システム、10…空気圧縮機、AL1~ALn…空気供給配管、
20…過酸化水素水タンク、21…秤量器、LL1~LLn…除染液供給配管、
P1~Pn…チューブポンプ、E1~En…エジェクタ、
ML1~MLn、MLx、MLy…1次ミスト供給配管、
M1~Mn、Mx、My…過酸化水素ミスト発生装置、
MR1~MRn、MRx、MRy…ミスト受容器、
MRx1,MRy1…液溜り、MRx2,MRy2…空気抜き、MRx3…邪魔板、
A1~An、Ax、Ay…超音波霧化装置、
Ax1,Ay1…多孔振動板、Ax2,Ay2…圧電振動子、
V1~Vn…超音波振動盤、W1~Wn…軸流ファン、R1~Rn…除染対象室、
F1~Fn…循環ファン、H1~Hn…HEPAフィルタ、
MH…過酸化水素分解フィルタ、B1~Bn…整流板。