(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】デスロレリンを含む徐放性注射用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/08 20190101AFI20241101BHJP
A61K 9/52 20060101ALI20241101BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241101BHJP
A61P 15/16 20060101ALI20241101BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241101BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K9/52
A61K47/34
A61P15/16 171
A61K47/26
A61K47/38
(21)【出願番号】P 2023020774
(22)【出願日】2023-02-14
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0021275
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519140246
【氏名又は名称】インベンテージ ラボ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】INVENTAGE LAB INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンソン
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/222399(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/130585(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ粒子を含み、
前記マイクロ粒子は、デスロレリンおよび生分解性高分子を含み、
前記生分解性高分子は、ポリラクチド(PLA)およびポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
下記式1による値が1~10であり、下記式2による値が1~2である、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物:
(式1)
C
max 1d-28d/C
max 0-1d
【数1】
式1において、前記C
max 1d-28dおよび前記C
max 0-1dは、前記デスロレリンを含む徐放性注射用組成物をビーグル犬に注射剤として投与し、デスロレリンの血中濃度を測定した値であって、
前記C
max 1d-28dは、前記注射剤を投入して1日から28日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、
前記C
max 0-1dは、前記注射剤を投入して1日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、
式2において、前記D10は、前記粒子
の直径の累積分布における最大値に対して10%
Tileに相当する粒子の直径であり、
前記D50は、前記粒子
の直径の累積分布における最大値に対して50%
Tileに相当する粒子の直径であり、
前記D90は、前記粒子
の直径の累積分布における最大値に対して90%
Tileに相当する粒子の直径である。
【請求項2】
前記生分解性高分子の粘度は、0.1~1.0dl/gである、請求項
1に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物。
【請求項3】
前記デスロレリンおよび生分解性高分子は、1:4~1:10の重量比率で含む、請求項1に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物。
【請求項4】
前記注射剤として投与時、標的部位におけるデスロレリンの放出速度が調節され、前記デスロレリンによるテストステロンの抑制効果が1ヶ月以上持続する、請求項1に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物。
【請求項5】
前記注射剤が投与され、10日以後にテストステロンが0.4ng/ml以下に維持されている、請求項1に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物。
【請求項6】
前記注射用組成物は、懸濁溶剤を含む、請求項1に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物。
【請求項7】
1)デスロレリンおよび生分解性高分子を混合して第1混合物を製造するステップと、
2)溶媒に界面活性剤を溶解して第2混合物を製造するステップと、
3)前記第1混合物および第2混合物は交差点が形成された第1マイクロチャネルおよび第2マイクロチャネルにそれぞれ注入して流れるようにして、前記交差点でマイクロ粒子を生成するステップと、
4)前記マイクロ粒子を前記第2混合物の入った水槽内に収集するステップと、
5)前記収集したマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するステップと、
6)前記有機溶媒の除去されたマイクロ粒子を精製水で洗浄および乾燥するステップと、
7)前記乾燥したマイクロ粒子を懸濁溶剤と混合するステップとを含み、
前記生分解性高分子は、ポリラクチド(PLA)およびポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記第1混合物を第1マイクロチャネルに注入時、700~1,500mbarの圧力条件で注入後、10~30mbar/minの第1条件で圧力を上昇させ、前記注入圧力条件が900~1,700mbarに到達時、2~8mbar/minの第2条件で圧力を上昇させ、
下記式1による値が1~10であり、下記式2による値が1~2である、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物の製造方法:
(式1)
C
max 1d-28d/C
max 0-1d
【数2】
式1において、前記C
max 1d-28dおよび前記C
max 0-1dは、前記デスロレリンを含む徐放性注射用組成物をビーグル犬に注射剤として投与し、デスロレリンの血中濃度を測定した値であって、
前記C
max 1d-28dは、前記注射剤を投入して1日から28日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、
前記C
max 0-1dは、前記注射剤を投入して1日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、
式2において、前記D10は、前記粒子の累積分布における最大値に対して10%に相当する粒子の直径であり、
前記D50は、前記粒子の累積分布における最大値に対して50%に相当する粒子の直径であり、
前記D90は、前記粒子の累積分布における最大値に対して90%に相当する粒子の直径である。
【請求項8】
前記第1混合物を前記第1マイクロチャネルに注入時、700~1,500mbarの圧力条件で注入後、10~30mbar/minの第1条件で圧力を上昇させ、
前記注入圧力条件が900~1,700mbarに到達時、2~8mbar/minの第2条件で圧力を上昇させる、請求項
7に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物の製造方法。
【請求項9】
前記第2混合物は、前記第1混合物を前記第1マイクロチャネルに注入する時、圧力条件対比2~4倍の圧力条件で前記第2マイクロチャネルに注入されている、請求項
7に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物の製造方法。
【請求項10】
前記5)ステップは、
5-1)15~20℃で20~40分間100~300rpmの速度で1次撹拌するステップと、
5-2)30~40℃で60~120分間100~300rpmの速度で2次撹拌するステップと、
5-3)40~45℃で4~8時間100~300rpmの速度で3次撹拌するステップとを含む、請求項
7に記載のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物に関し、より具体的には、デスロレリンが均一に分布するマイクロ粒子を含む徐放性注射用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
雄反芻動物の睾丸切除術(睾丸の除去)または去勢は様々な理由で必要であり、主に攻撃性を減少させ、ヒトおよび他の動物に害を及ぼす危険性を減少させ、容易に取り扱うためである。
【0003】
また、体重を増やすためのより専用的な飼育の際、遺伝的に低い潜在的な雄による望まない雑種化の危険を回避するためであったり、動物完全体に比べて最上の肉質の比率を増加させ、脂肪を蓄積させることによる、死体のより良好な質を提供するために必要になる。
【0004】
去勢方法としては、外科的な手術により、挫切式、精管結紮式、捻転式、被睾結紮式、牽断式、部分去勢、無血去勢式などがあり、その他、生殖腺に敏感な放射線を一定量以上照射してその能力を喪失させる方法もある。
【0005】
しかし、物理的去勢は、動物に非常に深刻な苦痛およびストレスを発生させるため、動物福祉のレベルで問題にされてきており、スイス、ノルウェー、ベルギー、オランダなどの欧州諸国の場合、約2009年頃に動物の物理的去勢を禁止することを決定し、韓国でもこれと類似の措置を検討している(Thun Rら、Castration in male pigs:Techniques and animal welfare issues.Journal of Physiology and Pharmacology,57,pp.189-194,2006)。
【0006】
不妊化およびリビドーの除去を行うのに適した他の方法は、化学的方法である。1960年代、睾丸または精索の機能(精子およびアンドロゲンホルモン生産)の全体的損失を促進するための目的で、睾丸または精索に直接注入される硬化性物質を使用するための研究が始まった。
【0007】
化学的不妊化は、下記のいくつかの作用剤の睾丸内投与によって、サル、ハムスター、ウサギ、ネズミおよびイヌで試された:塩化第一鉄(Karら、1965)、ダナゾール(Dixitら、1975)、BCG(Dasら、1982)、タンニン亜鉛(Fahimら、1982)、グリセロール(Weinbauerら、1985、Immegart2000)、グルコース、NaCl(Heathら、1987、Russellら、1987)、DBCP(Shemiら、1988)、乳酸(Fordyceら、1989)、亜鉛アルギニン(Fahimら、1993)、フッ化ナトリウム(Sprandoら、1996)、ホルマリン(Balarら、2002)および塩化カルシウム(Samanta1998、Janaら、2002)、氷酢酸カリウム過マンガン酸塩(Giriら、2002)。反芻動物において、乳酸(Hillら、1985)、タンニン酸、亜鉛スルフェート(Feherら、1985)、アルファヒドロキシプロピオン酸(Cohenら、1995)、ホルマリン(Ijazら、2000)、CastrateQuin14(Soerensenら、2001)を雄睾丸内注入する方法を用いた。
【0008】
最近、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の合成類似体であるデスロレリン(Deslorelin)を用いて雄動物の化学的去勢およびイヌの良性前立腺肥大症の治療に活用した。
【0009】
ただし、前記デスロレリンは、インプラント挿入型で動物体内に注入されて、投薬時、動物に大きな痛みを伴う問題があった。
【0010】
このため、化学的去勢剤としてデスロレリンを用いる時、動物に大きな痛みを伴うことなく、臨時不妊剤として効果を長時間維持できる製品に対する開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0052355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、標的部位におけるデスロレリンの放出速度を調節して、初期過放出を防止し、デスロレリンの効果を示すのに十分な程度の量を露出して、前記デスロレリンによる効果を1ヶ月以上示すことができ、均一なマイクロ粒子を含むデスロレリンを含む徐放性注射用組成物を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、前記マイクロ粒子は、粒子のサイズが均一であり、長時間持続的にデスロレリンの放出効果を示すことができるマイクロ粒子を製造可能なデスロレリンを含む徐放性注射用組成物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明は、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物であって、マイクロ粒子を含み、前記マイクロ粒子は、デスロレリンおよび生分解性高分子を含み、下記式1による値が1~10であってもよい:
(式1)
Cmax 1d-28d/Cmax 0-1d
ここで、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物をビーグル犬に注射剤として投与し、デスロレリンの血中濃度を測定したものであって、Cmax 1d-28dは、注射剤を投入して1日から28日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、Cmax 0-1d注射剤を投入して1日以内のデスロレリンの最大血中濃度である。
【0016】
前記マイクロ粒子は、下記式2による値が1~2であってもよい:
【数1】
ここで、D10は、粒子の累積分布における最大値に対して10%に相当する粒子の直径であり、D50は、粒子の累積分布における最大値に対して50%に相当する粒子の直径であり、D90は、粒子の累積分布における最大値に対して90%に相当する粒子の直径である。
【0017】
前記生分解性高分子は、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリラクティック-コ-グリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよい。
【0018】
前記生分解性高分子の粘度は、0.1~1.0dl/gであってもよい。
【0019】
前記デスロレリンおよび生分解性高分子は、1:4~1:10の重量比率で含むことができる。
【0020】
注射剤として投与時、標的部位におけるデスロレリンの放出速度が調節され、前記デスロレリンによるテストステロンの抑制効果が1ヶ月以上持続できる。
【0021】
注射剤が投与され、10日後にテストステロンが0.4ng/ml以下に維持できる。
【0022】
前記注射用組成物は、懸濁溶剤を含むことができる。
【0023】
本発明の他の実施例によるデスロレリンを含む徐放性注射用組成物の製造方法は、1)デスロレリンおよび生分解性高分子を混合して第1混合物を製造するステップと、2)溶媒に界面活性剤を溶解して第2混合物を製造するステップと、3)前記第1混合物および第2混合物は交差点が形成された第1マイクロチャネルおよび第2マイクロチャネルにそれぞれ注入して流れるようにして、前記交差点でマイクロ粒子を生成するステップと、4)前記マイクロ粒子を前記第2混合物の入った水槽内に収集するステップと、5)前記収集したマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するステップと、6)前記有機溶媒の除去されたマイクロ粒子を精製水で洗浄および乾燥するステップと、7)前記乾燥したマイクロ粒子を懸濁溶液と混合するステップとを含み、下記式1による値が1~10であってもよい:
(式1)
Cmax 1d-28d/Cmax 0-1d
ここで、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物をビーグル犬に注射剤として投与し、デスロレリンの血中濃度を測定したものであって、Cmax 1d-28dは、注射剤を投入して1日から28日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、Cmax 0-1dは、注射剤を投入して1日以内のデスロレリンの最大血中濃度である。
【0024】
前記第1混合物を第1マイクロチャネルに注入時、700~1,500mbarの圧力条件で注入後、10~30mbar/minの第1条件で圧力を上昇させ、前記注入圧力条件が900~1,700mbarに到達時、2~8mbar/minの第2条件で圧力を上昇させることができる。
【0025】
前記第2混合物は、前記第1混合物を第1マイクロチャネルに注入する時、圧力条件対比2~4倍の圧力条件で第2マイクロチャネルに注入される。
【0026】
前記5)ステップは、5-1)15~20℃で20~40分間100~300rpmの速度で1次撹拌するステップと、5-2)30~40℃で60~120分間100~300rpmの速度で2次撹拌するステップと、5-3)40~45℃で4~8時間100~300rpmの速度で3次撹拌するステップとを含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、標的部位におけるデスロレリンの放出速度を調節して、初期過放出を防止し、デスロレリンの効果を示すのに十分な程度の量を露出して、前記デスロレリンによる効果を1ヶ月以上示すことができ、均一なマイクロ粒子を含む。
【0028】
また、前記マイクロ粒子は、粒子のサイズが均一であり、長時間持続的にデスロレリンの放出効果を示すことができるマイクロ粒子を製造可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施例による実施例1のpKおよびPD値の測定結果である。
【
図2】本発明の一実施例による比較例1のpKおよびPD値の測定結果である。
【
図3】本発明の一実施例による実施例1および比較例1のPD値の比較結果である。
【
図4】本発明の一実施例による実施例2のpKおよびPD値の測定結果である。
【
図5】本発明の一実施例による比較例2のpKおよびPD値の測定結果である。
【
図6】本発明の一実施例による実施例2および比較例2のPD値の比較結果である。
【
図7】本発明の一実施例による溶出実験に対する振盪方向に関するものである。
【
図8】本発明の一実施例による実施例の溶出率に対する実験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。
【0031】
本発明において、「デスロレリン(Deslorelin)」は、L-pyroglutamyl-L-histidyl-L-tryptophyl-L-seryl-L-tyrosyl-D-tryptophyl-L-leucyl-L-arginyl-L-proline ethylamideおよびその薬学的に許容可能な塩をすべて含むことができる。
【0032】
本発明において、「薬学的に許容可能な」とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、通常アレルギー反応またはこれと類似の反応を起こさないことを意味する。
【0033】
本発明において、「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩を意味する。前記遊離酸としては、有機酸と無機酸を使用することができる。前記有機酸はこれに限定されるものではないが、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、グルコン酸、メタスルホン酸、グリコール酸、コハク酸、4-トルエンスルホン酸、グルタミン酸およびアスパラギン酸を含む。また、前記無機酸はこれに限定されるものではないが、塩酸、臭素酸、硫酸およびリン酸を含む。
【0034】
本発明の一実施例によるデスロレリンを含む徐放性注射用組成物は、マイクロ粒子を含み、前記マイクロ粒子は、デスロレリンおよび生分解性高分子を含み、下記式1による値が1~10であってもよい:
(式1)
Cmax 1d-28d/Cmax 0-1d
ここで、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物をビーグル犬に注射剤として投与し、デスロレリンの血中濃度を測定したものであって、Cmax 1d-28dは、注射剤を投入して1日から28日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、Cmax 0-1dは、注射剤を投入して1日以内のデスロレリンの最大血中濃度である。
【0035】
前記デスロレリンは、性腺刺激ホルモン-分泌ホルモン作用剤(GnRH作用剤)である。
【0036】
性腺刺激ホルモン-分泌ホルモン(GnRH)は、脳下垂体で受容体と相互作用して黄体形成ホルモン(LH)の生産を刺激する、視床下部によって生産される、天然ホルモンである。
【0037】
LH生産を低減するために、ロイプロリドおよびゴセレリンなどのGnRH受容体(GnRH-R)の作用剤が開発された。これらのGnRH作用剤は、通常、GnRHの作用剤、デカペプチドpyroGlu-His-Trp-SerTyr-Gly-Leu-Arg-Pro-Gly-NH2である。例えば、6番にGlyの代わりにD-異性体を有するGnRH作用剤が、天然ホルモンよりも、生物学的効能に優れ、受容体に対する結合親和性/強度がより高い。
【0038】
前記GnRH作用剤は、化学的去勢剤として使用可能であり、前記用途に限定されず、GnRH作用剤の効果によって活用できる用途は、制限なくすべて使用可能である。
【0039】
前記デスロレリンは、先に説明したように、動物の化学的去勢のための用途に用いられている。前記デスロレリンによる化学的去勢効果が現れるためには、テストステロンの数値が0.4ng/ml以下に維持されなければならない。すなわち、デスロレリンはGnGH作用剤で、テストステロンの抑制効果を示すことができる。
【0040】
ただし、前記のような効果を示すためには、注射剤などの方式で体内にデスロレリンを投与する場合、注射して直ちに過剰な程度にデスロレリンに露出させてこそ、その効果を示すことができることが知られている。
【0041】
具体的には、デスロレリンのようなGnRH作用剤は、初期には脳下垂体に作用して性腺ホルモンの分泌を促進させるが、持続的に投与すれば、GnRH受容体に変形が起きて性腺ホルモンの分泌が抑制され、結局、テストステロンの生成も抑制されて、1~3週経過してようやくデスロレリンによる去勢レベル(血漿テストステロン<0.4ng/ml)に減少する。
【0042】
前記のような特徴によって、デスロレリンによる去勢効果を速やかに示すためには、注射初期に薬物の過放出が必要なものと認識されていた。
【0043】
これに対し、本発明の徐放性注射用組成物は、1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間または24ヶ月間化学的去勢効果を示すことができるもので、かつて知られた内容とは異なり、注射初期、デスロレリンの過剰放出を防止するにもかかわらず、優れた去勢効果を示すことができる。
【0044】
前記式1は、本発明のデスロレリンを含む徐放性注射用組成物を投薬した後、ビーグル犬のデスロレリンの血中濃度(pK)を測定した結果を用いたものである。
【0045】
前記式1による値は、1~10であり、3~10であり、6~10であり、7~10であり、7.5~9.5であり、7.5~9であってもよい。前記範囲内で初期過放出を防止し、所望する期間持続的にデスロレリンによる化学的去勢効果を達成することができる。
【0046】
具体的には、式1は下記の通りである:
(式1)
Cmax 1d-28d/Cmax 0-1d
ここで、デスロレリンを含む徐放性注射用組成物をビーグル犬に注射剤として投与し、デスロレリンの血中濃度を測定したものであって、Cmax 1d-28dは、注射剤を投入して1日から28日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、Cmax 0-1dは、注射剤を投入して1日以内のデスロレリンの最大血中濃度である。
【0047】
前記Cmax 1d-28dは、本発明の注射剤を投入して1日から28日以内のデスロレリンの最大血中濃度であり、Cmax 0-1dは、注射剤を投入して1日以内のデスロレリンの最大血中濃度である。
【0048】
前記式1による値が1より大きい値を示すのは、本発明の注射用組成物をビーグル犬に投薬した後、デスロレリンの血中濃度が1日後により高い数値を示すことを意味する。
【0049】
初期過放出は、注射剤などにより薬物を体内に投薬した後、24時間以内に最大血中濃度を示すことである。
【0050】
一般的な注射剤は、薬物自体を投薬するため、注射して直ちに最大血中濃度を示すようになる。
【0051】
また、マイクロ粒子を含む徐放性注射用組成物の場合にも、製造工程上、前記マイクロ粒子の表面に薬物がついたり、粒子のサイズが均一でなかったり、粒子の表面が一様でなかったり、薬物と生分解性高分子との組み合わせによる差によって、注射して直ちに最大血中濃度を示すことができる。
【0052】
これに対し、本発明の徐放性注射用組成物は、デスロレリンを含むマイクロ粒子を含むが、注射後、1日以内に最大血中濃度を示さず、初期過放出を抑制したことを特徴とする。
【0053】
具体的には、従来は、GnRH受容体に変形が起きて性腺ホルモンの分泌が抑制され、結局、テストステロンの生成も抑制するために、初期にデスロレリンを過剰露出させていた。
【0054】
ただし、後述のように、現在市販中の製品を用いてテストステロンの抑制効果を確認した結果によれば、注射初期にデスロレリンの過剰露出があっても、優れたテストステロンの抑制効果が現れないことを確認した。
【0055】
これは、従来知られたように、テストステロンの抑制のためにデスロレリンを初期に過剰放出する必要がないことを意味するといえる。
【0056】
本発明は、初期過放出を抑制し、4週以内に最大血中濃度を示すことができるマイクロ粒子を含む徐放性注射用組成物であって、初期にデスロレリンの過剰放出は抑制しながらも、所望する期間持続的にデスロレリンが放出されるようにして、持続的なテストステロンの抑制効果を示すことができる。
【0057】
前記式1による範囲値を満足する場合は、デスロレリンの初期過放出を防止しながらも、持続的なテストステロンの抑制効果を示すことができることを意味する。前記式1による値が1より大きいのは、1日~28日以内のデスロレリンの最大血中濃度が、1日以内のデスロレリンの最大血中濃度よりも大きい値を示すことを意味するのである。
【0058】
先に説明したように、実験的な結果によれば、テストステロンを効果的に抑制するためには、注射初期のデスロレリンの過放出は不必要である。また、長時間持続的なテストステロンの抑制効果を示すためには、注射後、1日~28日間一定レベル以上にテストステロンに露出しなければならない。これは、GnRH受容体の変形によって、テストステロンの抑制効果が現れることによるもので、GnRH受容体の変形および維持のためには、一定期間持続的なデスロレリンの放出が必要である。
【0059】
本発明の徐放性注射用組成物は、前記ビーグル犬に注射後1週以内のAUCを測定した結果、500day*pg/ml~1,500day*pg/mlであり、700day*pg/ml~1,300day*pg/mlであり、750day*pg/ml~1,100day*pg/mlであってもよい。これは、従来の製品と比較して約12.9%レベルで初期過放出がないことをより明確に確認することができる。
【0060】
このため、本発明では、前記式1による値が1~10であることを特徴とし、前記範囲内で、1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間または24ヶ月間テストステロンの抑制効果を示すことができる。
【0061】
前記マイクロ粒子は、下記式2による値が1~2であってもよい:
【数2】
ここで、D10は、粒子の累積分布における最大値に対して10%に相当する粒子の直径であり、D50は、粒子の累積分布における最大値に対して50%に相当する粒子の直径であり、D90は、粒子の累積分布における最大値に対して90%に相当する粒子の直径である。
【0062】
前記D10、D50およびD90は、マイクロ粒子に対する直径を測定し、これにつき、累積分布上の最大値に対して、10%、50%および90%に相当する値を意味するものである。
【0063】
前記式2は、(D90-D50)と(D50-D10)の比率を限定するもので、平均粒子分布内において、粒子の累積分布上の最大値に対して、90%に相当する粒子の直径と50%に相当する粒子の直径との差と、50%に相当する粒子の直径と10%に相当する粒子の直径との差とを比率で確認して、均一な粒子分布の程度を確認するもので、その値が1に近いほど均一な分布幅を意味するものである。
【0064】
本発明の式2は、マイクロ粒子のサイズ分布をより明確に確認するためのもので、式2による値が1~2であり、1.1~1.9であり、1.2~1.8であり、1.3~1.7であってもよい。前記式2による値を満足すると同時に、マイクロ粒子の平均径が65~100μmの場合、マイクロ粒子のサイズが平均径値に近接して分布することを意味する。これは、均一なサイズのマイクロ粒子が注射により体内に注入され、均一なサイズを有するマイクロ粒子が類似の程度に生分解され、前記マイクロ粒子の生分解によってデスロレリンの放出効果を示すことができる。
【0065】
すなわち、デスロレリンを含むマイクロ粒子は、体内でデスロレリンの放出の程度が粒子のサイズおよび比表面積と関連性が高く、比表面積を大きくするためには、均一な直径を有するマイクロ粒子を用いることが必須である。前記のように粒子のサイズが非常に均一なマイクロ粒子を用いることにより、体内注入時、初期過放出を防止することができ、長時間持続的にデスロレリンの放出効果を示すことが可能で、デスロレリンによる去勢効果を1ヶ月以上発揮することができる。
【0066】
前記デスロレリンおよび生分解性高分子の重量比率は、1:4~1:10であり、1:5~1:8であり、1:6~1:7であり、1:6.6667であってもよい。前記範囲内で混合して使用時、生分解性高分子の分解によってデスロレリンが長時間持続的に放出できる。
【0067】
前記生分解性高分子は、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリラクティック-コ-グリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくは、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)またはポリラクチド(PLA)であるが、前記例に限らない。
【0068】
前記生分解性高分子の粘度は、0.1~1.0dl/gであってもよい。先に説明したように、デスロレリンの持続的な放出は、マイクロ粒子の平均径、サイズ分布、表面状態にも影響を受けるが、前記要素のほか、生分解性高分子および薬物の組み合わせによっても大きな差を示すことができる。
【0069】
前記生分解性高分子は、体内注入可能な製品であって、粘度範囲が0.1~1.0dl/gであり、0.1~0.9dl/gであり、0.15~0.8dl/gであり、0.15~0.7dl/gであり、0.2~0.65dl/gであってもよい。前記範囲内で使用時、デスロレリンとの組み合わせによって初期過放出が抑制されるが、注射初期にも適切な程度のデスロレリン放出が現れ、1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間または24ヶ月間持続的にデスロレリンの放出効果を示すことができる。
【0070】
また、本発明のマイクロ粒子は、1種の生分解性高分子を用いるか、2種以上の生分解性高分子を用いて製造できる。
【0071】
具体的には、本発明の徐放性注射用組成物中に含まれるマイクロ粒子は、1種の生分解性高分子だけを含むか、2種以上の生分解性高分子を含むことができる。前記マイクロ粒子は、徐放性注射用組成物中に多数含まれ、前記マイクロ粒子は、個別的に別の生分解性高分子を含むことができる。
【0072】
すなわち、1種の生分解性高分子を含むマイクロ粒子を注射用組成物に含むことができ、互いに異なる生分解性高分子を含むマイクロ粒子を注射用組成物に含むことができる。
【0073】
前記生分解性高分子は、0.1~0.3dl/gまたは0.3~0.7dl/gの粘度範囲を示す高分子を含むことができる。
【0074】
具体的には、粘度が0.1~0.3dl/gである生分解性高分子を含むマイクロ粒子、粘度が0.3~0.7dl/gである生分解性高分子を含むマイクロ粒子、およびこれらの混合からなる群より選択されたマイクロ粒子を徐放性注射用組成物に含むことができる。
【0075】
前記粘度が0.1~0.3dl/gである生分解性高分子は、具体的には、0.13~0.28dl/gであり、0.15~0.25dl/gであり、0.22dl/gであってもよい。前記範囲の粘度を示す生分解性高分子を含むことにより、デスロレリンの初期過放出を防止し、1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間または24ヶ月間持続的なデスロレリンの放出効果を示すことができる。
【0076】
前記粘度が0.3~0.7dl/gである生分解性高分子は、具体的には、0.45~0.65dl/gであり、0.5~0.6dl/gであり、0.57dl/gであってもよい。前記範囲の粘度を示す生分解性高分子を含むことにより、デスロレリンの初期過放出を防止し、1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間、12ヶ月間または24ヶ月間持続的なデスロレリンの放出効果を示すことができる。
【0077】
また、前記粘度の小さい生分解性高分子を含むマイクロ粒子は、相対的に体内で速やかに分解されてデスロレリンの放出が終了し、前記粘度の大きい生分解性高分子を含むマイクロ粒子は、相対的に体内で分解が遅くて、初期デスロレリンの放出が現れないことがある。
【0078】
このため、粘度が異なる2種以上の生分解性高分子を含むマイクロ粒子をそれぞれ製造し、これをすべて含むことで、初期にもデスロレリンの放出を示すことができ、長時間持続的なデスロレリンの放出効果を示すことができる。
【0079】
これは、後述のように、本発明の製造方法により互いに異なる生分解性高分子を含むマイクロ粒子を注射用組成物中に含むことができる。すなわち、従来の生分解性高分子を含むマイクロ粒子を製造する方法は、粒子のサイズを調節できないのでサイズが均一な粒子への製造が不可能で、それぞれ異なる生分解性高分子を用いてマイクロ粒子に製造し、これを混合して徐放性注射用組成物として提供することが不可能であった。
【0080】
ただし、本発明は、後述のように、粒子のサイズを調節することができ、製造された粒子のサイズが非常に均一で表面が一様の形状に製造可能な製造方法を用いることにより、2種以上の生分解性高分子を用いてそれぞれデスロレリンを含むマイクロ粒子に製造し、これを混合して徐放性注射用組成物として提供することができる。
【0081】
本発明の他の実施例によるデスロレリンを含む徐放性注射用組成物の製造方法は、1)デスロレリンおよび生分解性高分子を混合して第1混合物を製造するステップと、2)溶媒に界面活性剤を溶解して第2混合物を製造するステップと、3)前記第1混合物および第2混合物は交差点が形成された第1マイクロチャネルおよび第2マイクロチャネルにそれぞれ注入して流れるようにして、前記交差点でマイクロ粒子を生成するステップと、4)前記マイクロ粒子を前記第2混合物の入った水槽内に収集するステップと、5)前記収集したマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するステップと、6)前記有機溶媒の除去されたマイクロ粒子を精製水で洗浄および乾燥するステップと、7)前記乾燥したマイクロ粒子を懸濁溶液と混合するステップとを含むことができる。
【0082】
前記1)ステップは、第1混合物を製造するステップで、デスロレリンおよび生分解性高分子を有機溶媒に溶解させて第1混合物を製造するステップであって、前記生分解性高分子は、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリラクティック-コ-グリコール酸、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、ポリホスファゼン、ポリイミノカーボネート、ポリホスホエステル、ポリアンハイドライド、ポリオルトエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシバレート、ポリヒドロキシブチレート、ポリアミノ酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくは、ポリラクチド-コ-グリコリド(PLGA)またはポリラクチド(PLA)であるが、前記例に限らない。
【0083】
また、前記有機溶媒は、水と混ざらないもので、例えば、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、およびこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つ以上であり、好ましくは、ジクロロメタンであるが、例に限るものではなく、生分解性高分子およびデスロレリンを溶解させることができる有機溶媒で、前記例に限らず、当業者が容易に選択できる有機溶媒であればすべて使用可能といえる。
【0084】
前記1)ステップは、デスロレリンおよび生分解性高分子を溶解させた第1混合物を製造するもので、溶媒は、前述のように、有機溶媒を使用する。これは、デスロレリンおよび生分解性高分子の溶解特性を利用して、有機溶媒を用いて完全に溶解させる。
【0085】
より具体的には、デスロレリンアセテートを第1溶媒に溶解させ、生分解性高分子を第2溶媒に溶解させる。以後、前記第1溶媒に溶解したデスロレリンアセテート混合物および第2溶媒に溶解した生分解性高分子混合物を混合して、第1混合物として製造した。
【0086】
前記第1混合物は、デスロレリンおよび生分解性高分子の重量比率は、1:4~1:10であり、1:5~1:8であり、1:6~1:7であり、1:6.6667であってもよい。前記範囲内で混合して使用時、生分解性高分子の分解によってデスロレリンが長時間持続的に放出できる。
【0087】
前記デスロレリンおよび生分解性高分子の重量比率が1:4未満の場合、すなわち、生分解性高分子を前記重量比率よりも未満で含む場合には、デスロレリンの重量に比べて生分解性高分子の重量比率が少なく、球状の生分解性高分子粒子にデスロレリンが一様に分布して含まれている形態の徐放性粒子の製造が難しい問題が発生し、生分解性高分子およびデスロレリンの重量比率が1:10を超える場合、すなわち、生分解性高分子を前記重量比率よりも超過で含む場合には、徐放性粒子中のデスロレリンの含有量が少なく、所望する濃度の薬物投与のために多量の徐放性粒子を投与しなければならない問題が発生しうる。
【0088】
より具体的には、前記第1混合物中の生分解性高分子は、15~25重量%を含み、好ましくは20重量%であるが、前記例に限らない。
【0089】
前記2)ステップは、第2混合物を製造するステップであって、界面活性剤を水に溶解させて第2混合物を製造する。前記界面活性剤は、生分解性高分子溶液が安定したエマルジョンの形成を補助できるものであれば制限なく使用可能である。具体的には、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、およびこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つ以上であり、さらに具体的には、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、レシチン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、エステルアミン、リニアジアミン、ファティアミン、およびこれらの混合物からなる群より選択されたいずれか1つ以上であり、好ましくは、ポリビニルアルコールであるが、例に限らない。
【0090】
前記第2混合物に含まれる界面活性剤は、0.1~1.0重量%、0.3~0.7重量%または0.5重量%含む。残りは、すべて水である。
【0091】
前記3)ステップは、ウエハ上に形成されたマイクロチャネルに第1混合物および第2混合物を注入して流れるようにするステップである。
【0092】
より具体的には、マイクロチャネルは、シリコンウエハ、または高分子フィルムからなる群より選択された素材で形成されるが、前記素材の例は前記例に限らず、マイクロチャネルの形成が可能な素材はすべて使用可能である。
【0093】
前記高分子フィルムは、ポリイミド(Polyimide)、ポリエチレン(Polyethylene)、フッ化エチレンプロピレン(Fluorinated ethylene propylene)、ポリプロピレン(Polypropylene)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate)、ポリスルホン(Polysulfone)、およびこれらの混合からなる群より選択されるが、前記例に限らない。
【0094】
一例として、シリコンウエハに電子ビーム蒸着装置(e-beam evaporator)を用いてアルミニウムを蒸着し、フォトリソグラフィ(photolithography)手法を用いてフォトレジスト(photoresist)をアルミニウム上にパターニングする。以後、フォトレジストをマスクとして用いてアルミニウムエッチング(etching)し、フォトレジストを除去した後、アルミニウムをマスクとしてシリコンをDRIE(deep ion reactive etching)でエッチングし、アルミニウムの除去後、ウエハ上にガラスを陽極接合して密封して、前記マイクロチャネルを製造する。
【0095】
前記マイクロチャネルは、平均径が80~120μmであり、好ましくは100μmであるが、例に限らない。マイクロチャネルの平均径が80μm以下の場合、製造される徐放性粒子の直径が40μm未満と小さな徐放性粒子が製造される可能性があるので、有効な薬物の放出および生体内吸収に影響を及ぼしうる。また、製造された徐放性粒子の平均サイズが100μm超過の場合、注射剤として投与時、異物感および痛みが増加し、製造された粒子の粒度分布が大きくなって均一な粒度の徐放性粒子を製造しにくい。
【0096】
ただし、前記マイクロチャネルの平均径は、注入圧力の範囲に応じて変更可能である。また、前記マイクロチャネルの平均径は粒子の平均径と密接に関係するが、第1混合物および第2混合物の注入圧力とも密接な関係がある。
【0097】
また、前記マイクロチャネルの断面の幅(w)および断面の高さ(d)は、製造される徐放性粒子の平均径(d’)と密接な関係がある。前記マイクロチャネルの断面の幅(w)は、徐放性粒子の平均径(d’)に対して0.7~1.3の比率範囲であり、マイクロチャネルの断面の高さ(d)は、徐放性粒子の平均径(d’)に対して0.7~1.3の比率範囲である。
【0098】
すなわち、製造しようとする徐放性粒子の平均径(d’)が決定されると、これによって、マイクロチャネルの断面の幅(w)および高さ(d)の長さは、d’の0.7~1.3の比率範囲に設定して、所望するサイズの徐放性粒子の製造が可能である。
【0099】
前記3)ステップは、第1混合物および第2混合物を交差点が形成された第1マイクロチャネルおよび第2マイクロチャネルに前記注入圧力条件下で流れるようにすることである。
【0100】
すなわち、第1混合物は、第1マイクロチャネルに沿って流れ、第2混合物は、前記第1マイクロチャネルと交差点を形成するように成形された第2マイクロチャネルに沿って流れて、第1混合物の流れと出会う。
【0101】
より具体的には、前記第1混合物を第1マイクロチャネルに注入時、700~1,500mbarの圧力条件で注入後、10~30mbar/minの第1条件で圧力を上昇させ、前記注入圧力条件が900~1,700mbarに到達時、2~8mbar/minの第2条件で圧力を上昇させることができる。
【0102】
また、前記第2混合物は、前記第1混合物を第1マイクロチャネルに注入する時、圧力条件対比2~4倍の圧力条件で第2マイクロチャネルに注入させることができる。
【0103】
具体的には、前記マイクロチャネルを用いた製造方法において、フローメーターを用いてマイクロチャネルの内部を流れる第1混合物、第2混合物の流速を一定の値に設定し、フィードバック制御により圧力を測定した時、第1混合物がマイクロチャネルを一定の流速で流れるようにするために、要求される圧力が時間に応じて次第に上昇することを確認した。
【0104】
したがって、前記第1混合物に加える圧力を一定に上昇させる方法を用いて流速の変動性を最小化し、前記第1混合物がマイクロチャネルの内部で徐々に硬化することによって、マイクロ粒子分布の不均一またはチャネル閉鎖の問題を防止し、目標とするマイクロ粒子の製造収率を高めることができる。
【0105】
また、前記第1混合物および第2混合物をマイクロチャネルに注入する時の圧力条件は、製造されたマイクロ粒子の平均径を調節するためのもので、前記範囲を具体的に満足しない場合、製造された粒子のサイズが均一でなかったり、前記本発明のマイクロ粒子の平均径の範囲を満足させなかったり、前記式1の値を満足させない問題が発生しうる。
【0106】
すなわち、直線方向のマイクロチャネルに注入される第1混合物よりも、第1混合物の流れと交差点を形成する第2混合物の流れをより速い流速で流れるようにするために、より高い圧力条件下で第2混合物を流れるようにする。
【0107】
前記のように、第1混合物および第2混合物の流速を異ならせ、第2混合物の流速を第1混合物の流速よりも速くすることで、第1混合物の流れと第2混合物の流れとの出会う地点で相対的により速い流速を有する第2混合物が第1混合物を圧縮し、この時、第1混合物および第2混合物の反発力によって第1混合物中の生分解性高分子およびデスロレリンが球状のマイクロ粒子を生成し、より具体的には、球状の生分解性高分子にデスロレリンが一様に分布されている形態のマイクロ粒子を形成する。
【0108】
前記4)ステップは、マイクロ粒子を収集するステップであって、第2混合物の入った水槽内でマイクロ粒子を収集して、初期生成されたマイクロ粒子間の凝集現象(aggregation)を防止する。
【0109】
前記4)ステップは、前記2)ステップで製造した第2混合物、すなわち界面活性剤および水の混合溶液を用いることで、第2混合物を前記2)ステップで製造した後、一部はマイクロチャネルに注入させ、他の一部は4)ステップの水槽に移動させて、収集されたマイクロ粒子間の凝集現象を防止するのに用いられる。
【0110】
前記5)ステップは、水槽内で収集されたマイクロ粒子に存在する有機溶媒を除去するためのステップであって、一定の温度条件および撹拌速度で撹拌して、徐放性粒子の表面に存在する有機溶媒を蒸発させて除去する。この時、撹拌条件は、5-1)15~20℃で20~40分間100~300rpmの速度で1次撹拌するステップと、5-2)30~40℃で60~120分間100~300rpmの速度で2次撹拌するステップと、5-3)40~45℃で4~8時間100~300rpmの速度で3次撹拌するステップとを含むものである。
【0111】
前記撹拌速度は、1次および2次撹拌ステップにおいて、温度条件および撹拌進行時間を異ならせて、撹拌工程を進行させる。
【0112】
前記のように、温度条件を1次撹拌工程に比べて2次撹拌工程で上昇させて撹拌することを特徴とし、温度を段階的に上昇させることにより、マイクロ粒子の表面に存在する有機溶媒の蒸発速度を調節することができる。すなわち、マイクロ粒子の表面に存在する有機溶媒を徐々に蒸発させて、マイクロ粒子を製造することができる。
【0113】
第1混合物および第2混合物がマイクロチャネルを流れる時の温度も、15~20℃であり、好ましくは17℃である。すなわち、マイクロチャネルを流れ、交差点を形成してマイクロ粒子を生成した後、収集されたマイクロ粒子を1次撹拌する時までは一定に15~20℃に低温を維持する。マイクロ粒子の製造過程で低温を維持してこそ、球状の粒子を製造および維持可能である。すなわち、低温条件ではない場合には、一定の球状の粒子を製造しにくい問題が発生する。
【0114】
以後、2次撹拌工程および3次撹拌工程は、温度を漸進的に上昇させ、撹拌時間を増やして、マイクロ粒子の表面に存在する有機溶媒が徐々に蒸発されるようにして、表面から有機溶媒が蒸発されることにより、マイクロ粒子の表面に及ぼす影響を最小化することができる。すなわち、急激に有機溶媒が蒸発される場合、有機溶媒の蒸発によってマイクロ粒子の表面が滑らかでなく、粗くなる問題が発生しうる。このような問題を防止すべく、前記のように温度条件を漸進的に上昇させ、撹拌工程を進行させる時間も増加させて、有機溶媒の蒸発速度を調節することができ、このような有機溶媒の蒸発速度の調節によって、製造されたマイクロ粒子の表面粗さを制御することができる。
【0115】
最後に、前記6)ステップは、マイクロ粒子を洗浄および乾燥するステップであって、撹拌して表面の有機溶媒をすべて除去したマイクロ粒子を除菌濾過した精製水で数回洗浄してマイクロ粒子に残存する界面活性剤を除去し、以後、凍結乾燥する。
【0116】
最終的に生成されたマイクロ粒子は、球状の生分解性高分子からなるマイクロ粒子にデスロレリンが一様に分布されている形態であり、デスロレリンおよび生分解性高分子を1:4~1:10の重量比率で含む。
【0117】
前記マイクロ粒子内に含まれたデスロレリンおよび生分解性高分子の重量比率は、第1混合物での重量比率と同一であるが、これは、マイクロ粒子を製造し、有機溶媒をすべて蒸発させて除去することにより、第1混合物中での重量比率と同じ比率でデスロレリンおよび生分解性高分子を含有したマイクロ粒子を製造することができる。
【0118】
前記製造されたマイクロ粒子は、懸濁溶剤と混合して注射用組成物に製造できる。
【0119】
前記懸濁溶剤は、等張化剤、懸濁化剤および溶剤を含む。
【0120】
より具体的には、前記等張化剤は、D-マンニトール(D-Mannitol)、マルチトール(Maltitol)、ソルビトール(Sorbitol)、ラクチトール(Lactitol)、キシリトール(Xylitol)、塩化ナトリウム(Sodium chloride)、およびその混合からなる群より選択されてもよいし、好ましくは、D-マンニトールであるが、前記例に限らない。
【0121】
前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Soduim Carboxymethylcellulose)、ポリソルベート80(Polysorbate80)、デンプン(starch)、デンプン誘導体、多価アルコール類、キトサン(chitosan)、キトサン誘導体、セルロース(cellulose)、セルロース誘導体、コラーゲン(collagen)、ゼラチン(gelatin)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid、HA)、アルギン酸(alginic acid)、アルギン(algin)、ペクチン(pectin)、カラギーナン(carrageenan)、コンドロイチン(chondroitin)、コンドロイチンスルフェート(chondroitin sulfate)、デキストラン(dextran)、デキストランスルフェート(dextran sulfate)、ポリリジン(polylysine)、チチン(titin)、フィブリン(fibrin)、アガロース(agarose)、フルラン(fluran)、キサンタンガム(xanthan gum)、およびその混合からなる群より選択され、好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリソルベート80であるが、前記例に限らない。
【0122】
前記溶剤は、注射用水(Injection water)を用いることができ、注射用水として使用可能な溶剤は、制限なくすべて使用可能である。
【0123】
製造例1
デスロレリンを含むマイクロ粒子の製造
デスロレリンアセテートをメタノール(Methanol)に溶解してAPI混合物を製造した。粘度が0.22dl/gであるPLGAおよびPLAをジクロロメタン(Dichloromethane)に溶解させて生分解性高分子混合物を製造した。前記生分解性高分子混合物中のPLGAおよびPLAの重量比率は1.7対18.3である。
【0124】
前記API混合物および生分解性高分子混合物を混合して第1混合物を製造した。この時、第1混合物中のデスロレリンアセテートおよび生分解性高分子の重量比率は1:6.6667である。
【0125】
界面活性剤であるポリビニルアルコールを水に混合して、ポリビニルアルコールを0.5重量%含む第2混合物を製造した。
【0126】
前記第1混合物および第2混合物をシリコンウエハ上に形成されたマイクロチャネルに注入して流れるようにした。
【0127】
この時、第1混合物および第2混合物を一定の流速で流れるようにするために、第1混合物は1000mbarの圧力条件で始めて1分あたり20mbarの上昇率で一定に圧力を上昇させる条件下で流れるようにした後、1200mbarに到達した時、1分あたり7mbarの上昇率に変更した条件下で流れるようにし、第2混合物は3000mbarの圧力条件下で流れるようにした。温度条件は17℃、撹拌速度は300rpmを維持した。
【0128】
前記第1混合物の流れおよび第2混合物の流れとの出会う交差点で生成されたマイクロ粒子を、第2混合物の入った水槽内で収集した。前記水槽内に収集されたマイクロ粒子を17℃で30分間300rpmの速度で1次撹拌し、38℃に温度を上昇させて、1時間400rpmの速度で2次撹拌し、以後、45℃に温度を上昇させて、3時間500rpmの速度で3次撹拌した。
【0129】
撹拌を完了したマイクロ粒子を除菌濾過した精製水で数回洗浄し、凍結乾燥してマイクロ粒子を製造した。
【0130】
製造例2
生分解性高分子として粘度が0.37dl/gであるPLAをメタノールに溶解して生分解性高分子混合物を製造し、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0131】
製造例3
生分解性高分子として粘度が0.57dl/gであるPLAをメタノールに溶解して生分解性高分子混合物を製造したことを除き、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0132】
製造例4
粘度が0.22dl/gであるPLGAおよび粘度が0.41dl/gであるPLAをメタノールに溶解させて生分解性高分子混合物を製造し、前記生分解性高分子混合物中のPLGAおよびPLAの重量比率は1.7対18.3であることを除き、製造例1と同様の方法でマイクロ粒子を製造した。
【0133】
実施例1
前記製造例1のマイクロ粒子は、1バイアルを基準として、2.0mlの懸濁溶剤に加えた後、均一に懸濁させて皮下注射用組成物として製造した。前記皮下注射用組成物中のデスロレリンアセテートおよび生分解性高分子の重量比率は1:6.6667である。
【0134】
前記懸濁溶剤は下記表2の組成で構成した。
【0135】
【0136】
実施例2
製造例1のマイクロ粒子および製造例2のマイクロ粒子を1:0.92の重量比率で混合して用いたことを除き、実施例1と同様に皮下注射用組成物を製造した。
【0137】
実施例3
製造例1のマイクロ粒子および製造例3のマイクロ粒子を1:0.92の重量比率で混合して用いたことを除き、実施例1と同様に皮下注射用組成物を製造した。
【0138】
実施例4
製造例1のマイクロ粒子の代わりに製造例4のマイクロ粒子を混合して用いたことを除き、実施例1と同様に皮下注射用組成物を製造した。
【0139】
比較例1
比較例として市中で販売中のSuprelorin 4.7mg Implant(デスロレリンを4.7mg含む)を用いた。
【0140】
比較例2
比較例として市中で販売中のSuprelorin 9.4mg Implant(デスロレリンを9.4mg含む)を用いた。
【0141】
実験例1
マイクロ粒子の性状の検討
マイクロ粒子の直径を具体的に確認するために、Microtrac粒度分析器を用いて分析を進行させた。
【0142】
【0143】
前記表2に示しているように、製造例に対する粒度分析の結果として、平均径(D50)が80.09μm、95.45μm、68.62μmおよび83.38μmであることが確認された。式による値も、すべて1.11、1.06、1.30および1.67で1~2の範囲内に含まれることで、D10~D95まで非常に均一な直径を有する粒子で含まれることを確認した。
【0144】
実験例2
薬物動態学特性評価1
本発明の実施例1および比較例1に対する薬物動態学評価を確認した。
【0145】
評価は、実施例1および比較例1をビーグル犬に投与し、採血してデスロレリンの血中濃度(PK)およびテストステロンの血中濃度(PD)を測定した。
【0146】
前記6ヶ月以上持続放出剤形として用いた製造例1のマイクロ粒子を含む注射剤はデスロレリンを6.11mg含んだ。
【0147】
実験のために、実施例1および比較例1を各ビーグル犬5匹に投与し、投与経路は皮下注射方式を利用した。
【0148】
採血後、5匹のビーグル犬に対するPKおよびPDの平均値を計算した。実験の結果は下記表3、表4および
図1~
図3の通りである。
【0149】
【0150】
前記表3は、実施例1に対するpKおよびPD値についてのもので、6ヶ月間デスロレリンを持続的に放出できる徐放性注射剤組成物に関するものである。前記式1による値を導出するために、1日~28日間のデスロレリンの最大血中濃度は605pg/mlであり、1日以内のデスロレリンの最大血中濃度は68pg/mlである。式の値は8.9で本発明の範囲内に含まれることを確認することができる。
【0151】
また、PD値が0.4ng/ml以下でテストステロンの抑制効果が現れる時点は2週経過した時点であることを確認した。
【0152】
【0153】
前記表4は、比較例1に対するpKおよびPD値についてのもので、6ヶ月間デスロレリンを持続的に放出することができる。前記式1による値を導出するために、1日~28日間のデスロレリンの最大血中濃度は697pg/mlであり、1日以内のデスロレリンの最大血中濃度は17,624pg/mlである。式の値は0.04で本発明の範囲内に含まれていないことを確認することができる。
【0154】
また、PD値が0.4ng/ml以下でテストステロンの抑制効果が現れる時点は2週経過した時点であることを確認したが、26週後に再度テストステロン値が増加し、実施例1と比較して持続的なテストステロンの抑制効果が現れないことを確認した。
【0155】
前記実施例1および比較例1に対する薬物動態学特性分析の結果をまとめると、下記の通りである。
【0156】
【0157】
前記実験の結果によれば、実施例1の場合、デスロレリンの最大血中濃度は注射後2週の時点と確認され、比較例1は、注射後1時間経過後と確認された。すなわち、比較例1は、デスロレリンの初期過放出が現れるのに対し、実施例1は、初期過放出が抑制されることを確認することができる。
【0158】
また、総AUCは同等レベルと確認されたが、1週以内のAUCの場合は、比較例1に比べて実施例1が約12.9%レベルと確認されて、注射後1週以内にデスロレリンに露出する量の程度において大きな差が現れることを確認した。
【0159】
実験例3
薬物動態学特性評価2
本発明の実施例2および比較例2に対する薬物動態学評価を確認した。
【0160】
評価は、実施例2および比較例2をビーグル犬に投与し、採血してデスロレリンの血中濃度(PK)およびテストステロンの血中濃度(PD)を測定した。
【0161】
前記12ヶ月以上持続放出剤形として用いた製造例1および製造例2のマイクロ粒子を含む注射剤はデスロレリンを11.75mg含んだ。
【0162】
実験のために、実施例2および比較例2を各ビーグル犬5匹に投与し、投与経路は皮下注射方式を利用した。
【0163】
採血後、5匹のビーグル犬に対するPKおよびPDの平均値を計算した。実験の結果は下記表6、表7および
図4~
図6の通りである。
【0164】
【0165】
前記表6は、実施例2に対するpKおよびPD値についてのもので、12ヶ月間デスロレリンを持続的に放出できる徐放性注射剤組成物に関するものである。前記式1による値を導出するために、1日~28日間のデスロレリンの最大血中濃度は1,213pg/mlであり、1日以内のデスロレリンの最大血中濃度は146pg/mlである。式の値は8.31で本発明の範囲内に含まれることを確認することができる。
【0166】
また、PD値が0.4ng/ml以下でテストステロンの抑制効果が現れる時点は1週経過した時点であることを確認した。
【0167】
【0168】
前記表7は、比較例2に対するpKおよびPD値についてのもので、12ヶ月間デスロレリンを持続的に放出することができる。前記式1による値を導出するために、1日~28日間のデスロレリンの最大血中濃度は1,922pg/mlであり、1日以内のデスロレリンの最大血中濃度は51,975pg/mlである。式の値は0.04で本発明の範囲内に含まれていないことを確認することができる。
【0169】
また、PD値が0.4ng/ml以下でテストステロンの抑制効果が現れる時点は1週経過した時点であることを確認した。
【0170】
前記実施例2と比較例2とを比較すれば、28週以上テストステロンの抑制効果が同一に現れることを確認することができる。ただし、本発明の実施例2は、初期過放出がないにもかかわらず、デスロレリンの放出を制御して、長時間持続的なテストステロンの抑制効果が現れた点で、既存の製品である比較例2と差異がある。
【0171】
前記実施例2および比較例2に対する薬物動態学特性分析の結果をまとめると、下記の通りである。
【0172】
【0173】
前記実験の結果によれば、実施例2の場合、デスロレリンの最大血中濃度は注射後3週の時点と確認され、比較例2は、注射後1時間経過後と確認された。すなわち、比較例2は、デスロレリンの初期過放出が現れるのに対し、実施例2は、初期過放出が抑制されることを確認することができる。
【0174】
また、総AUCの場合も、比較例2に比べて実施例2が約56%レベルと確認され、1週以内のAUCの場合も、比較例2に比べて実施例2が約12.9%レベルと確認されて、注射後にデスロレリンに露出する量の程度において大きな差が現れることを確認した。
【0175】
実験例4
薬物溶出実験
実施例1~4、比較例1および比較例2に対して薬物溶出実験を進行させた。
【0176】
溶出試験液はPVA4gおよびtween80 1gを水1,000mlに混合して製造した。
【0177】
溶出試験器としてShaking water bathを用いており、溶出実験容器は内容量120mlのガラス試験容器を用いた。操作条件は、
図7のように、容器の底面に対する垂直方向に水平に振盪し、55℃で150回(往復)で振盪した。
【0178】
【0179】
【0180】
前記実施例1および比較例1は、すべて6ヶ月剤形であり、実施例2および比較例2は、12ヶ月剤形であって、溶出率を比較した結果から、比較例に比べて実施例がより長時間持続的にデスロレリンを放出することを確認した。
【0181】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。