(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】バンプ形成装置、バンプ形成方法及びバンプ形成プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
H01L21/92 604K
H01L21/60 301G
(21)【出願番号】P 2023529291
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023669
(87)【国際公開番号】W WO2022269772
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-11-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和3年2月17日に、「https://www.yamaha-motor-robotics-online-expo-2021.jp」にて公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 清貴
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-282015(JP,A)
【文献】特開2009-054950(JP,A)
【文献】特開平8-153745(JP,A)
【文献】特開2005-116603(JP,A)
【文献】特開2008-066331(JP,A)
【文献】特開2005-175175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤをボンディング対象であるボンド点にボンディングするボンディングツールと、
前記ボンド点の上にバンプを形成するように前記ボンディングツールを制御するボンディング制御部と
を備え、
前記ボンディング制御部は、
前記ボンディングツールの先端部から延出したワイヤの先端に形成されたボール部を、前記ボンディングツールの先端部によって前記ボンド点に圧着する圧着工程と、
前記ボンド点に圧着された前記ボール部からワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを移動させる繰出工程と、
前記ボンド点に圧着された前記ボール部の一部を前記ボンディングツールの先端部によって押圧し、前記ボンド点に圧着された前記ボール部を変形させる押圧工程と、
前記ワイヤを切断して前記ボンド点の上に前記バンプを形成する切断工程と、を実行するように構成され、
前記ワイヤに関する第1パラメータと、前記ボンディングツールの形状に関する第2パラメータとに基づいて、前記ボンディングツールの軌道のうち少なくとも前記繰出工程における軌道が決定され、
前記第1パラメータは、前記ボール部の圧着される前の直径と、前記ボンド点に圧着された前記ボール部のうち前記ボンディングツールと前記ボンド点との間に形成される圧着下部の径及び厚みを含み、
前記第2パラメータは、前記ボンディングツールの前記ワイヤが挿通されるホールのホール径と、前記ボンディングツールの前記ホールよりも先端側に設けられたチャンファのチャンファ径及びチャンファ角とを含む、
バンプ形成装置。
【請求項2】
前記ボンディング制御部は、入力装置によって入力された前記第1パラメータ及び前記第2パラメータを取得し、前記ボンディングツールの軌道を演算する、
請求項1に記載のバンプ形成装置。
【請求項3】
前記ボンディング制御部は、前記ボンド点に圧着された前記ボール部のうち前記ボンディングツールの内側に形成される圧着上部の体積を演算する、
請求項2に記載のバンプ形成装置。
【請求項4】
前記ボンディングツールの軌道は、前記ボンド点から離間する上昇経路を含み、前記ボンディング制御部は、前記圧着上部の体積に基づいて、前記上昇経路の距離を演算する、
請求項3に記載のバンプ形成装置。
【請求項5】
前記ボンディングツールの軌道は、前記上昇経路と交差する方向に移動するスライド経路をさらに含み、
前記第1パラメータは、前記ワイヤの径及び材質を含み、
前記ボンディング制御部は、前記チャンファ径並びに前記ワイヤの径及び材質に基づいて、前記スライド経路の距離を演算する、
請求項4に記載のバンプ形成装置。
【請求項6】
前記ボンディングツールの軌道は、前記ボンド点に接近する下降経路をさらに含み、
前記ボンディング制御部は、前記上昇経路の距離及び前記ワイヤの材質に基づいて、前記下降経路の距離を演算する、
請求項5に記載のバンプ形成装置。
【請求項7】
ボンディングツールの先端部から延出したワイヤの先端に形成されたボール部を、前記ボンディングツールの先端部によってボンド点に圧着する圧着工程と、
前記ボンド点に圧着された前記ボール部から前記ワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを移動させる繰出工程と、
前記ボンド点に圧着された前記ボール部の一部を前記ボンディングツールの先端部によって押圧し、前記ボンド点に圧着された前記ボール部を変形させる押圧工程と、
前記ワイヤを切断して前記ボンド点の上にバンプを形成する切断工程と、
を含み、
前記ワイヤに関する第1パラメータと、前記ボンディングツールの形状に関する第2パラメータとに基づいて、前記ボンディングツールの軌道のうち少なくとも前記繰出工程における軌道が決定され、
前記第1パラメータは、前記ボール部の圧着される前の直径と、前記ボンド点に圧着された前記ボール部のうち前記ボンディングツールと前記ボンド点との間に形成される圧着下部の径及び厚みを含み、
前記第2パラメータは、前記ボンディングツールの前記ワイヤが挿通されるホールのホール径と、前記ボンディングツールの前記ホールよりも先端側に設けられたチャンファのチャンファ径及びチャンファ角とを含む、
バンプ形成方法。
【請求項8】
前記バンプは、ワイヤボンディングによって電気的に接続される第1のボンド点と第2のボンド点のうち前記第1のボンド点に形成され、
前記バンプにおける前記第2のボンド点に近い側の厚みが、前記第2のボンド点に遠い側の厚みよりも大きい、
請求項7に記載のバンプ形成方法。
【請求項9】
コンピュータに、
ボンディングツールの先端部から延出したワイヤの先端に形成されたボール部を、前記ボンディングツールの先端部によってボンド点に圧着する圧着処理と、
前記ボンド点に圧着された前記ボール部からワイヤを繰り出しながら前記ボンディングツールを移動させる繰出処理と、
前記ボンド点に圧着された前記ボール部の一部を前記ボンディングツールの先端部によって押圧し、前記ボンド点に圧着された前記ボール部を変形させる押圧処理と、
前記ワイヤを切断して前記ボンド点の上にバンプを形成する切断処理と、
を実行させ、
前記ワイヤに関する第1パラメータと、前記ボンディングツールの形状に関する第2パラメータとに基づいて、前記ボンディングツールの軌道のうち少なくとも前記繰出処理における軌道を決定させ、
前記第1パラメータは、前記ボール部の圧着される前の直径と、前記ボンド点に圧着された前記ボール部のうち前記ボンディングツールと前記ボンド点との間に形成される圧着下部の径及び厚みを含み、
前記第2パラメータは、前記ボンディングツールの前記ワイヤが挿通されるホールのホール径と、前記ボンディングツールの前記ホールよりも先端側に設けられたチャンファのチャンファ径及びチャンファ角とを含む、
バンプ形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプ形成装置、バンプ形成方法及びバンプ形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置を用いて目的とするボンディング形状を得るためには多くのパラメータを設定する必要があり、当該パラメータの設定を簡略化するための検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、キーボードによって入力された少なくとも圧着径及び圧着厚に関するボンディング形状のデータを受けて、ボンディング時においてボンディングツール先端に加える超音波パワー、超音波印加時間に関する制御信号及びボンディング点に対するボンディングツールの加圧力に関する制御信号を発生する演算手段を備えたワイヤボンディング装置が開示されている。
【0004】
特許文献2には、ボンディング形状のデータに加えてボンディングツールに関するデータを受けて、超音波パワー、超音波印加時間に関する制御信号及び加圧力に関する制御信号を発生する演算手段を備えたワイヤボンディング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2725116号公報
【文献】特開平6-45413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体装置などのボンド点の上にバンプを形成する装置として、ワイヤボンディング技術を利用したバンプ形成装置が知られている。このようなバンプ形成装置を用いて目的とするバンプ形状を得るためには、ワイヤを圧着してから切断するまえのボンディングツールの軌道に関するパラメータを含む、多くのパラメータを設定する必要である。しかしながら、特許文献1及び特許文献2にはバンプ形成についての記載がないため、バンプ形成装置において特許文献1及び特許文献2の記載を適用したとしても、パラメータ設定を充分に簡略化することはできない場合があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、パラメータ設定を簡略化したバンプ形成装置、バンプ形成方法及びバンプ形成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るバンプ形成装置は、ワイヤをボンディング対象であるボンド点にボンディングするボンディングツールと、
ボンド点の上にバンプを形成するようにボンディングツールを制御するボンディング制御部と
を備え、
ボンディング制御部は、
ボンディングツールの先端部から延出したワイヤの先端に形成されたボール部を、ボンディングツールの先端部によってボンド点に圧着する圧着工程と、
ボンド点に圧着されたボール部からワイヤを繰り出しながらボンディングツールを移動させる繰出工程と、
ボンド点に圧着されたボール部の一部をボンディングツールの先端部によって押圧し、ボンド点に圧着されたボール部を変形させる押圧工程と、
ワイヤを切断してボンド点の上にバンプを形成する切断工程と、
を実行するように構成され、
ワイヤに関する第1パラメータと、ボンディングツールの形状に関する第2パラメータとに基づいて、ボンディングツールの軌道のうち少なくとも繰出工程における軌道が決定される。
【0009】
この態様によれば、熟練の作業者であっても容易ではない多種多様なパラメータを設定するための試作作業及び測定作業を簡略化し、第1パラメータ及び第2パラメータを設定することで所望の形状のバンプを得ることができる。
【0010】
上記態様において、ボンディング制御部は、入力装置によって入力された第1パラメータ及び第2パラメータを取得し、ボンディングツールの軌道を演算してもよい。
【0011】
上記態様において、第1パラメータは、ボール部の圧着される前の直径と、ボンド点に圧着されたボール部のうちボンディングツールとボンド点との間に形成される圧着下部の直径及び厚みを含み、
第2パラメータは、ボンディングツールのワイヤが挿通されるホールのホール径と、ボンディングツールのホールよりも先端側に設けられたチャンファのチャンファ径及びチャンファ角とを含み、
ボンディング制御部は、ボンド点に圧着されたボール部のうちボンディングツールの内側に形成される圧着上部の体積を演算してもよい。
【0012】
上記態様において、ボンディングツールの軌道は、ボンド点から離間する上昇経路を含み、
ボンディング制御部は、圧着上部の体積に基づいて、上昇経路の距離を演算してもよい。
【0013】
上記態様において、ボンディングツールの軌道は、上昇経路と交差する方向に移動するスライド経路をさらに含み、
第1パラメータは、ワイヤの径及び材質を含み、
ボンディング制御部は、チャンファ径並びにワイヤの径及び材質に基づいて、スライド経路の距離を演算してもよい。
【0014】
上記態様において、ボンディングツールの軌道は、ボンド点に接近する下降経路をさらに含み、
ボンディング制御部は、上昇経路の距離及びワイヤの材質に基づいて、下降経路の距離を演算してもよい。
【0015】
本発明の他の一態様に係るバンプ形成方法は、ボンディングツールの先端部から延出したワイヤの先端に形成されたボール部を、ボンディングツールの先端部によってボンド点に圧着する圧着工程と、
ボンド点に圧着されたボール部からワイヤを繰り出しながらボンディングツールを移動させる繰出工程と、
ボンド点に圧着されたボール部の一部をボンディングツールの先端部によって押圧し、ボンド点に圧着されたボール部を変形させる押圧工程と、
ワイヤを切断してボンド点の上にバンプを形成する切断工程と、
を含み、
ワイヤに関する第1パラメータと、ボンディングツールの形状に関する第2パラメータとに基づいて、ボンディングツールの軌道のうち少なくとも繰出工程における軌道が決定される。
【0016】
上記態様において、バンプは、ワイヤボンディングによって電気的に接続される第1のボンド点と第2のボンド点のうち第1のボンド点に形成され、
バンプにおける第2ボンド点に近い側の厚みが、第2ボンド点に遠い側の厚みよりも大きくてもよい。
【0017】
本発明の他の一態様に係るバンプ形成プログラムは、コンピュータに、
ボンディングツールの先端部から延出したワイヤの先端に形成されたボール部を、ボンディングツールの先端部によってボンド点に圧着する圧着処理と、
ボンド点に圧着されたボール部からワイヤを繰り出しながらボンディングツールを移動させる繰出処理と、
ボンド点に圧着されたボール部の一部をボンディングツールの先端部によって押圧し、ボンド点に圧着されたボール部を変形させる押圧処理と、
ワイヤを切断してボンド点の上にバンプを形成する切断処理と、
を実行させ、
ワイヤに関する第1パラメータと、ボンディングツールの形状に関する第2パラメータとに基づいて、ボンディングツールの軌道のうち少なくとも繰出処理における軌道を決定する。
【0018】
上記態様において、上記バンプ形成プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パラメータ設定を簡略化したバンプ形成装置、バンプ形成方法及びバンプ形成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係るバンプ形成装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係るバンプ形成方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図3】パラメータの入力画面の一例を示す図である。
【
図4】ワイヤをボンド点にボンディングする直前の状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】ワイヤをボンド点にボンディングした直後の状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】第1実施例に係るキャピラリの軌道の一例を示す図である。
【
図7】第1実施例によって形成されたバンプを示す写真である。
【
図8】第1実施例によって形成されたバンプの第1の使用例を示す図である。
【
図9】第1実施例によって形成されたバンプの第2の使用例を示す図である。
【
図10】第1実施例によって形成されたバンプの第3の使用例を示す図である。
【
図11】第1実施例によって形成されたバンプの第4の使用例を示す図である。
【
図12】第1実施例によって形成されたバンプの第5の使用例を示す図である。
【
図13】第1実施例によって形成されたバンプの第6の使用例を示す図である。
【
図14】第2実施例に係るキャピラリの軌道の一例を示す図である。
【
図15】第2実施例によって形成されたバンプを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。本実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0022】
図1を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るバンプ形成装置1の構成について説明する。
図1は、一実施形態に係るバンプ形成装置の構成を概略的に示す図である。このバンプ形成装置1は、例えばワイヤボンディングの技術分野で用いられるボンディング装置である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るバンプ形成装置1は、ボンディング制御部10、基台11、XYテーブル12、ボンディングヘッド13、トーチ電極14、キャピラリ15、超音波ホーン16、ワイヤクランパ17、ワイヤテンショナ18、回転スプール19、ボンディングステージ20、ヒータ21、操作部40、ディスプレイ41、およびカメラ42等を備えて構成される。
【0024】
以下の実施形態では、ボンディング対象となる半導体装置(例えば半導体ダイ又はチップサイズパッケージ)や基板又はリードフレームに平行な平面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ方向とする。キャピラリ15の先端位置は、X座標、Y座標、およびZ座標で表される空間座標(X,Y,Z)で特定される。
【0025】
基台11は、XYテーブル12を摺動可能に載置して構成されている。XYテーブル12は、ボンディング制御部10からの駆動信号に基づいてキャピラリ15をXY平面で所定の位置に移動可能な移動装置である。
【0026】
ボンディングヘッド13は、ボンディングアーム(図示しない)と一体に形成されており、ボンディング制御部10からの駆動信号に基づいて超音波ホーン16をZ方向に移動可能に保持する移動装置である。ボンディングヘッド13は軽量な低重心構造を備えており、XYテーブル12の移動に伴って発生する慣性力によるキャピラリ15の動きを抑制可能に構成されている。
【0027】
超音波ホーン16は、末端から先端にかけて、末端部、フランジ部、ホーン部、および先端部の各部で構成された棒状部材である。末端部は、ボンディング制御部10からの駆動信号に応じて振動する超音波発振器161が配置されている。フランジ部は超音波振動の節となる位置でボンディングアームを介してボンディングヘッド13に共振可能に取り付けられている。ホーン部は、末端部の径に比べて長く延在するアームであり、超音波発振器161による振動の振幅を拡大して先端部に伝える構造を備えている。先端部はキャピラリ15を交換可能に保持する取付部となっている。超音波ホーン16は全体として超音波発振器161の振動に共鳴する共振構造を備えており、共振時の振動の節に超音波発振器161およびフランジが位置し、振動の腹にキャピラリ15が位置するような構造に構成されている。これらの構成により、超音波ホーン16は電気的な駆動信号を機械的な振動に変換するトランスデューサとして機能する。
【0028】
キャピラリ15は、ワイヤwをボンディング対象であるボンド点にボンディングする部位であり、本発明における「ボンディングツール」の一例に相当する。キャピラリ15には、挿通穴が設けられており、ボンディングに使用するワイヤwが挿通され繰り出し可能に構成されている。キャピラリ15はバネ力等により交換可能に超音波ホーン16に取り付けられている。
【0029】
ワイヤクランパ17は、ボンディング制御部10の制御信号に基づいて開閉動作を行う圧電素子を備えており、所定のタイミングでワイヤwを把持したり解放したりすることが可能なように構成されている。
【0030】
ワイヤテンショナ18は、ワイヤwを挿通し、ボンディング制御部10の制御信号に基づいてワイヤwに対する張力を自在に変更することにより、ボンディング中のワイヤwに適度な張力を与えることが可能に構成されている。
【0031】
回転スプール19は、ワイヤwが巻き回されたリールを交換可能に保持しており、ワイヤテンショナ18を通じて及ぼされる張力に応じてワイヤwを繰り出すように構成されている。なお、ワイヤwの材料は、加工の容易さと電気抵抗の低さから選択される。通常、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)等が用いられる。
【0032】
トーチ電極14は、図示しない放電安定化抵抗を介して図示しない高電圧電源に接続されており、ボンディング制御部10からの制御信号に基づいてスパーク(放電)を発生し、スパークの熱によってキャピラリ15の先端から繰り出されているワイヤwの先端にフリーエアボールfab(本発明の「ボール部」の一例に相当する。)を形成可能に構成されている。また、トーチ電極14の位置は固定されており、放電時にはキャピラリ15がトーチ電極14から所定の距離まで接近し、ワイヤwの先端とトーチ電極14との間で適度なスパークを発生するようになっている。
【0033】
ボンディングステージ20は、バンプを形成するためのワーク30(例えば基板又は半導体ダイなど)を加工面に載置するステージである。ボンディングステージ20の加工面の下部にはヒータ21が設けられており、ワーク30をボンディングに適する温度にまで加熱可能に構成されている。
【0034】
操作部40は、トラックボール、マウス、ジョイスティック、タッチパネル等の入力手段を備え、オペレータの操作内容をボンディング制御部10に出力する入力装置である。ディスプレイ41には、ワイヤwに関する第1パラメータと、キャピラリ15の形状に関する第2パラメータとの入力画面が表示される。第1パラメータは、例えば、後述するワイヤwの材質及び径Dw、フリーエアボールfabの径Df、並びに、圧着下部63の径D3及び厚みT3である。第2パラメータは、例えば、後述するキャピラリ15のホール径Dh、チャンファ径Dc及びチャンファ角Acである。オペレータは、ディスプレイ41に表示された入力画面に基づき、操作部40を操作して第1パラメータ及び第2パラメータを入力する。
【0035】
カメラ42は、ボンディングステージ20の加工面に載置されたワーク30及びワイヤwの先端を撮影可能に構成されている。ディスプレイ41は、カメラ42で撮像された画像をオペレータに視認可能な所定の倍率で表示するようになっている。オペレータは、ディスプレイ41に表示されるワーク30及びワイヤwの先端を観察し、第1パラメータの一部を設定してもよい。
【0036】
ボンディング制御部10は、所定のソフトウェアプログラムに基づき、キャピラリ15を含むバンプ形成装置1の各部を制御する各種制御信号を出力可能に構成されたコンピュータである。図示を省略しているが、ボンディング制御部10は、例えば、取得部と、表示制御部と、記憶部と、演算部と、出力部とを備えている。取得部は、操作部40に入力された第1パラメータ及び第2パラメータを取得する。表示制御部は、ディスプレイ41に、第1パラメータ及び第2パラメータの入力画面や、カメラ42で撮像された画像を表示する。記憶部は、超音波ホーン16の超音波出力、ボンド点に対するキャピラリ15の加圧力、キャピラリ15の移動速度等の、第1パラメータ及び第2パラメータ以外のパラメータが格納されている。演算部は、第1パラメータ及び第2パラメータに基づいて、ワイヤwをボンド点に圧着してから切断するまでのキャピラリ15の軌道のうち、少なくともワイヤwを繰り出す繰出工程における軌道を演算する。出力部は、演算部によって演算されたキャピラリ15の軌道に基づき、XYテーブル12及びボンディングヘッド13を制御する制御信号を出力する。また、出力部は、記憶部に格納された各種パラメータに基づいて、バンプ形成装置1の各部を制御する各種制御信号を出力する。
【0037】
次に、
図2~
図5を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るバンプ形成方法について説明する。当該バンプ形成方法では、前述したバンプ形成装置1が用いられる。
図2は、一実施形態に係るバンプ形成方法を概略的に示すフローチャートである。
図3は、パラメータの入力画面の一例を示す図である。
図4は、ワイヤをボンド点にボンディングする直前の状態を模式的に示す断面図である。
図5は、ワイヤをボンド点にボンディングした直後の状態を模式的に示す断面図である。
【0038】
まず、
図4及び
図5を参照しつつ、本実施形態に係るバンプ形成方法において入力される第1パラメータ及び第2パラメータについて説明する。半導体装置50のボンド点に相当する電極52にワイヤwを圧着する工程を示す断面図である。キャピラリ15には、ホール15hと、チャンファ15cとが形成されている。ホール15h及びチャンファ15cは、キャピラリ15をZ方向に貫通する貫通孔であり、チャンファ15cは、ホール15hよりも先端側に形成されている。ホール15hとチャンファ15cとは接続しており、チャンファ15cは、キャピラリ15の先端に開口している。ホール15h及びチャンファ15cには、ワイヤwが挿通される。ホール15hの直径(以下、「ホール径Dh」とする。)は、キャピラリ15の先端部において略一定であり、ワイヤwの直径(以下、「ワイヤ径Dw」とする。)よりも大きい。チャンファ15cの互いに対向する内周面の成す角度がチャンファ角Acに相当し、チャンファ15cがキャピラリ15の最先端に形成する開口部の直径がチャンファ径Dcに相当する。チャンファ径Dcはホール径Dhよりも大きい。
【0039】
図4に示すように、ワイヤwが電極52に圧着される直前、キャピラリ15の先端部から延出したワイヤwの先端には、スパークによりフリーエアボールfabが形成される。フリーエアボールfabの直径(以下、「フリーエアボール径Df」とする。)は、ワイヤ径Dwよりも大きく、チャンファ径Dcよりも大きい。
図5に示すように、フリーエアボールfabは、電極52に圧着されることで、圧着されたボール部60へと変形する。圧着されたボール部60は、キャピラリ15と電極52との間に形成される圧着下部63と、キャピラリ15の内部に形成される圧着上部64とによって構成される。圧着上部64は、チャンファ15cの内部に形成されるチャンファ部62と、ホール15hの内部に形成されるホール部61とによって構成される。圧着されたボール部60の体積はフリーエアボールfabの体積と同等であるため、フリーエアボールfabの体積は、圧着下部63の体積と圧着上部64の体積との和である。また、圧着上部64の体積は、チャンファ部62の体積とホール部61の体積との和である。圧着下部63の直径を径D3とし、圧着下部63の厚みを厚T3とし、チャンファ部62の厚みを厚T2とし、ホール部61の厚みを厚T1とする。
【0040】
次に、
図2を参照しつつ、バンプ形成方法において説明する。
図2に示す工程S11~S17は、ボンディング制御部10にインストールされたバンプ形成プログラムによって実行される。ボンディング制御部10は、本発明の一実施形態に係るバンプ形成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例である。
まず、入力された第1パラメータ及び第2パラメータを取得する(S11)。このとき、第1パラメータ及び第2パラメータは、例えば、オペレータが
図3に示す入力画面を参照しつつ、操作部40を操作して入力する。入力された第1パラメータ及び第2パラメータを、ボンディング制御部10の取得部が取得する。
【0041】
図3に示す入力画面の一例において、第1パラメータの入力欄として、「ワイヤ」欄の「材質」欄及び「径」欄、「スパーク」欄の「FAB径」欄、「圧着ボール径厚」欄の「圧着ボール径(X,Y)」欄及び「圧着ボール厚(Z)」欄が用意されている。「ワイヤ」欄の「材質」欄には、ワイヤwの材質を入力する。「ワイヤ」欄の「径」欄には、ワイヤ径Dwを入力する。「スパーク」欄の「FAB径」欄には、フリーエアボール径Dfを入力する。「圧着ボール径厚」欄の「圧着ボール径(X,Y)」欄には圧着下部63の径D3を入力し、「圧着ボール径厚」欄の「圧着ボール厚(Z)」欄には、圧着下部63の厚T3を入力する。フリーエアボール径Df並びに圧着下部63の径D3及び厚T3は、試作時に形成されたフリーエアボールfab及び圧着下部63を計測することで得られた実測値である。
【0042】
さらに、第2パラメータの入力欄として、「キャピラリ」欄の「ホール径」、「チャンファ径」及び「チャンファ角」が用意されている。「ホール径」欄には、ホール径Dhを入力し、「チャンファ径」欄には、チャンファ径Dcを入力し、「チャンファ角」の欄には、チャンファ角Acを入力する。
【0043】
なお、第1パラメータ及び第2パラメータ以外の各種パラメータは、工程S11の前にボンディング制御部10の記憶部に格納されており、工程S11においてオペレータによる当該各種パラメータの入力は省略されている。記憶部に格納された各種パラメータは、トーチ電極14、超音波ホーン16、ワイヤクランパ17、ワイヤテンショナ18、回転スプール19、ボンディングステージ20、ヒータ21等を制御する制御信号を決定するために用いられる。
【0044】
次に、キャピラリ15の軌道を演算する(S12)。このとき、ボンディング制御部10の演算部が、取得部が取得した第1パラメータ及び第2パラメータに基づき、キャピラリ15の軌道を演算する。演算されるキャピラリ15の軌道は、ワイヤwを圧着してから切断するまでの工程のうち、ワイヤwを繰り出しつつキャピラリ15を移動させる繰出工程における軌道である。演算されるキャピラリ15の軌道は、例えば、Z方向に延びるホール15h及びチャンファ15cの中心軸と、キャピラリ15の最先端を包含するXY面との交点(X,Y,Z)の軌道である。キャピラリ15の軌道の始点は、例えば、
図5に示す(X,Z)=(X1,Z1)の地点である。X1は、圧着されたボール部60のZ方向に延びる中心軸のX座標上での位置であり、Z1は、圧着下部63と圧着上部64とのXY面に広がる境界面のZ座標上での位置である。
【0045】
次に、ワイヤwの先端にフリーエアボールfabを形成する(S13)。このとき、ボンディング制御部10の出力部は、オペレータが第1パラメータを計測したときと同じ条件で、ワイヤwの先端とトーチ電極14との間でスパークを発生させる。
【0046】
次に、フリーエアボールfabを半導体装置50の電極52に圧着する(S14)。このとき、ボンディング制御部10の出力部は、オペレータが第1パラメータを計測したときと同じ条件で、フリーエアボールfabをキャピラリ15の先端部によって電極52に圧着する。
図5に示すように、フリーエアボールfabは変形し、圧着下部63と、圧着上部64とから成る、圧着されたボール部60に成形される。工程S14は、本発明に係る「圧着工程」の一例に相当する。
【0047】
次に、ワイヤwを繰り出す(S15)。このとき、ボンディング制御部10の出力部は、演算部によって演算されたキャピラリ15の軌道に基づいてキャピラリ15を移動させる。キャピラリ15の移動時、ワイヤクランパ17を解放状態とし、ワイヤwを繰り出す。演算されたキャピラリ15の軌道は、電極52から離れる上昇経路と、上昇経路の次に上昇経路と交差する方向に移動するスライド経路と、スライド経路の次に電極52に接近する下降経路とを少なくとも含む。
【0048】
次に、圧着されたボール部60をキャピラリ15の先端部で押圧する(S16)。このとき、押圧する位置や深さは、ボンディング制御部10の演算部によって演算されている。工程S16で、バンプの形状が決定される。すなわち、バンプの高さや、バンプ表面の傾きの方向や角度が決定される。
【0049】
次に、ワイヤwを切断する(S17)。このとき、ワイヤクランパ17を拘束状態としてキャピラリ15を上昇(電極52から離間)させ、ワイヤwの屈曲点でワイヤwを切断する。ワイヤwの屈曲点は、例えば、工程S16において形成される。
【0050】
上記したように、本発明の一実施形態に係るバンプ形成装置1によれば、キャピラリ15の軌道を決定するXYテーブル12及びボンディングヘッド13の制御信号を演算するための第1パラメータ及び第2パラメータを入力することで、それ以外のパラメータを入力しなくても、所望の形状のバンプを形成することができる。すなわち、熟練の作業者であっても容易ではない多種多様なパラメータを設定するための試作作業及び測定作業を簡略化することができる。
【0051】
次に、
図6及び
図7を参照しつつ、第1実施例に係るバンプ形成方法について説明する。
図6は、第1実施例に係るキャピラリの軌道の一例を示す図である。
図7は、第1実施例によって形成されたバンプを示す写真である。
【0052】
第1実施例は、第1の形状のバンプを形成するためのバンプ形成方法である。
図6に示すように、本実施例においてボンディング制御部10の演算部で演算されるキャピラリ15の軌道は、上昇経路と、スライド経路と、下降経路とを含む。
【0053】
上昇経路は、(X,Z)=(X1,Z1)を始点とし、電極52から離間する方向に移動するキャピラリ15のZ方向に沿った経路である。上昇経路において、キャピラリ15は、(X,Z)=(X1,Z1)から(X,Z)=(X1,Z3)に移動する。上昇経路におけるキャピラリ15の移動方向を、+Z方向とする。このとき、上昇経路の距離は、ホール部61の厚T1及びチャンファ部62の厚T2に基づいて、下記の式1によって演算される。
Z3-Z1=T2+T1+α1
α1は、例えば経験的に求められた定数であるが、ワイヤwの材質やワイヤ径Dwに基づいて決定される変数であってもよい。
【0054】
厚T2は、ホール径Dh、チャンファ径Dc及びチャンファ角Acに基づいて、下記の式によって演算される。
T2={(Dc-Dw)/2}/{tan(Ac/2)}
【0055】
ホール部61の厚T1は、ホール部61の体積をV1としたとき、下記の式によって演算される。
T1=V1/{(Dh/2)2×π}
なお、ホール部61の体積V1は、フリーエアボールfabの体積をV0、チャンファ部62の体積をV2、圧着下部63の体積をV3としたとき、下記の式によって演算される。
V1=V0-(V2+V3)
フリーエアボールfabの体積V0、チャンファ部62の体積V2、圧着下部63の体積V3は、フリーエアボール径Df、ホール径Dh、チャンファ径Dc、チャンファ部62の厚T2、圧着下部63の径D3及び厚T3に基づいて、下記の式によって演算される。
V0={4×π×(Df/2)3}/3
V2=(π/3)×(Dh2+Dh×Dc+Dc2)×T2
V3=π×(D3/2)2×T3
【0056】
次に、スライド経路は、上昇経路の終点である(X,Z)=(X1,Z3)を始点とし、(X,Z)=(X2,Z3)を終点とする、X方向に沿った経路である。スライド経路におけるキャピラリ15の移動方向を、-X方向とする。このとき、スライド経路の距離X2-X1は、チャンファ径Dc及びワイヤ径Dwに基づいて、下記の式によって演算される。
X2-X1=-{(Dc/Dw)×β1+β2}×Dw
β1及びβ2は、例えばワイヤwの材質に基づいて経験的に求められた定数であるが、ワイヤwの材質やワイヤ径Dwに基づいて決定される変数であってもよい。
【0057】
次に、下降経路は、スライド経路の終点である(X,Z)=(X2,Z3)を始点とし、(X,Z)=(X2,Z4)を終点とする、Z方向に沿った経路である。下降経路におけるキャピラリ15の移動方向を、-Z方向とする。このとき、下降経路の距離Z4-Z3は、上昇経路の距離Z3-Z1に基づいて、下記の式によって演算される。
Z4-Z3=-{(Z3-Z1)+γ1}
γ1は、例えばワイヤwの材質に基づいて経験的に求められた定数であるが、ワイヤwの材質やワイヤ径Dwに基づいて決定される変数であってもよい。
【0058】
下降経路の終点である(X,Z)=(X2,Z4)において、圧着されたボール部60は押圧されて変形する。これにより、バンプの表面は、
図7に示すように、-X方向側から+X方向側に向かうにつれて、+Z方向に傾いた傾斜面となる。
【0059】
なお、上昇経路は、X方向又はY方向に傾いてもよい。このとき、上昇経路の距離は、上昇経路のZ方向に対する傾斜角に基づいて、適宜調整される。同様に、スライド経路は、Y方向又はZ方向に傾いてもよく、下降経路は、X方向又はY方向に傾いてもよい。
【0060】
次に、
図8~
図13を参照しつつ、第1実施例に係るバンプの使用例について説明する。
図8は、第1実施例によって形成されたバンプの第1の使用例を示す図である。
図9は、第1実施例によって形成されたバンプの第2の使用例を示す図である。
図10は、第1実施例によって形成されたバンプの第3の使用例を示す図である。
図11は、第1実施例によって形成されたバンプの第4の使用例を示す図である。
図12は、第1実施例によって形成されたバンプの第5の使用例を示す図である。
図13は、第1実施例によって形成されたバンプの第6の使用例を示す図である。
【0061】
図8に示すように、第1実施例によって形成されたバンプ54Aは、ワイヤボンディングによって電気的に接続される一対のボンド点のうち一方のボンド点に形成することができる。半導体装置50の電極52が本発明に係る「第1のボンド点」の一例に相当し、基板70の電極72が本発明に係る「第2のボンド点」の一例に相当する。バンプ54Aは、半導体装置50の電極52の上に形成されている。半導体装置50の電極52にバンプ54Aが形成されているため、半導体装置50の電極52とボンディングワイヤbwとの接合強度が向上する。したがって、ボンディングワイヤbwを半導体装置50の電極52に押し付ける力を強くしなくても充分な接合強度が得られるため、ワイヤボンディング装置に起因した半導体装置50の損傷が低減できる。
【0062】
バンプ54Aは、基板70の電極72に遠い側の厚みが基板70の電極72に近い側の厚みよりも小さくなるように形成されている。言い換えると、一対のボンド点のうち一方のボンド点である半導体装置50の電極52に形成されたバンプ54Aの表面は、一対のボンド点のうち他方のボンド点である基板70の電極72に近付くにつれて半導体装置50から離間するように傾斜している。
図8に示すワイヤボンディングの態様においては、まず、基板70の電極72にボンディングワイヤbwをボンディングする。次に、ボンディングワイヤbwを繰り出しつつキャピラリ15を移動させる。最後に、ボンディングワイヤbwをバンプ54にボンディングしてから切断する。つまり、
図8に示したワイヤボンディングは、基板70の電極72が一次ボンド点であり、半導体装置50の電極52が二次ボンド点である、いわゆる正ボンディングである。このとき、バンプ54にボンディングされたボンディングワイヤbwは、バンプ54の表面の傾斜により、半導体装置50の外縁から離間する。したがって、ボンディングワイヤbwが、半導体装置50や基板70の表面と略平行に延在する場合であっても、バンプ54の表面の傾斜がボンディングワイヤbwの倒伏を抑制する。これによれば、半導体装置50とボンディングワイヤbwとの接触を抑制することができる。
【0063】
図9に示した第2の使用例において、バンプ54Bは、第1の使用例と同様、正ボンディングのワイヤボンディングに用いられている。
図9において、半導体装置50の電極52の上に形成されたバンプ54Bは、基板70の電極72に遠い側の厚みが基板70の電極72に近い側の厚みよりも大きくなるように形成されている。これによれば、ボンディングワイヤbwのテールカットが容易になり、ボンディングワイヤbwの屈曲を低減することができる。
【0064】
図10に示した第3の使用例において、バンプ54Cは、半導体装置50の電極52が一次ボンド点であり、基板70の電極72が二次ボンド点である、いわゆる逆ボンディングのワイヤボンディングに用いられている。
図10において、基板70の電極72の上に形成されたバンプ54Cは、半導体装置50の電極52から遠い側の厚みが半導体装置50の電極52に近い側の厚みよりも小さくなるように形成されている。これによれば、第1の使用例と同様、ボンディングワイヤbwの倒伏を抑制し、半導体装置50とボンディングワイヤbwとの接触を抑制することができる。
【0065】
図11に示した第4の使用例において、バンプ54Dは、第3の使用例と同様、逆ボンディングのワイヤボンディングに用いられている。
図10において、基板70の電極72の上に形成されたバンプ54Cは、半導体装置50の電極52から遠い側の厚みが半導体装置50の電極52に近い側の厚みよりも大きくなるように形成されている。これによれば、第2の使用例と同様、ボンディングワイヤbwのテールカットが容易になり、ボンディングワイヤbwの屈曲を低減することができる。
【0066】
なお、第1~第4の使用例において、第1実施例に係るバンプは、二次ボンド点の上に形成されているが、一次ボンド点の上に形成してもよい。バンプは、ワイヤボンディングによって電気的に接続される一対のボンド点のうち一方のボンド点にのみ形成されてもよく、両方のボンド点に形成されてもよい。
【0067】
図12に示した第5の使用例において、バンプ54Eは、半導体装置50の電極52の上に形成されている。バンプ54Eは、電極52を平面視したとき、半導体装置50の外縁から遠い側の厚みが半導体装置50の外縁に近い側の厚みよりも小さくなるように形成されている。
図13に示した第6の使用例において、バンプ54Fは、半導体装置50の電極52の上に形成されている。バンプ54Fは、電極52を平面視したとき、半導体装置50の外縁から遠い側の厚みが半導体装置50の外縁に近い側の厚みよりも大きくなるように形成されている。バンプ54F,54Fは、例えば、フリップチップ実装に用いられる。バンプ54F及びバンプ54Fのどちらを形成するかは、接合対象の位置や形状等に応じて、適宜選択される。バンプ54F及びバンプ54Fは、フリップチップ実装以外の用途に用いられてもよい。
【0068】
なお、フリップチップ実装に用いられるバンプの形状は、バンプ54F又はバンプ54Fに限定されるものではない。例えば、隣接する2つの電極のそれぞれの上にバンプを形成する場合、2つのバンプは、互いに接近する側の厚みが互いに離間する側の厚みよりも小さくなるように形成されてもよく、互いに接近する側の厚みが互いに離間する側の厚みよりも大きくなるように形成されてもよい。フリップチップ実装以外の用途の場合も同様に、バンプの形状はバンプ54F又はバンプ54Fに限定されるものではない。
【0069】
次に、
図14及び
図15を参照しつつ、第2実施例に係るバンプ形成方法について説明する。
図14は、第2実施例に係るキャピラリの軌道の一例を示す図である。
図15は、第2実施例によって形成されたバンプを示す写真である。
【0070】
第2実施例は、第2の形状のバンプを形成するためのバンプ形成方法である。
図8に示すように、本実施例においてボンディング制御部10の演算部で演算されるキャピラリ15の軌道は、第1の上昇経路と、第1のスライド経路と、第1の下降経路と、第2の上昇経路と、第2のスライド経路と、第2の下降経路とを含む。第1の上昇経路及び第2の上昇経路におけるキャピラリ15の移動方向を、+Z方向とし、第1の下降経路及び第2の下降経路におけるキャピラリ15の移動方向を、-Z方向とする。第1のスライド経路におけるキャピラリ15の移動方向を、+X方向とし、第2のスライド経路におけるキャピラリ15の移動方向を、-X方向とする。
【0071】
第1の上昇経路の距離は、第1実施例における上昇経路の距離と同様である。
【0072】
第1のスライド経路は、第1の上昇経路の終点である(X,Z)=(X1,Z3)を始点とし、(X,Z)=(X21,Z3)を終点とする、X方向に沿った経路である。第1のスライド経路の距離X21-X1は、チャンファ径Dc及びワイヤ径Dwに基づいて、下記の式によって演算される。
X21-X1={(Dc/Dw)×β11+β12}×Dw
β11及びβ12は、例えばワイヤwの材質に基づいて経験的に求められた定数であるが、ワイヤwの材質やワイヤ径Dwに基づいて決定される変数であってもよい。
【0073】
第1の下降経路は、第1のスライド経路の終点である(X,Z)=(X21,Z3)を始点とし、(X,Z)=(X21,Z41)を終点とする、Z方向に沿った経路である。第1の下降経路の距離Z41-Z3は、第1の上昇経路の距離Z3-Z1に基づいて、下記の式によって演算される。
Z41-Z3=-{(Z3-Z1)+γ11}
γ11は、例えばワイヤwの材質に基づいて経験的に求められた定数であるが、ワイヤwの材質やワイヤ径Dwに基づいて決定される変数であってもよい。
【0074】
第2の上昇経路は、第1の下降経路の終点である(X,Z)=(X21,Z41)をを始点とし、(X,Z)=(X21,Z3)を終点とする、Z方向に沿った経路である。第2の下降経路の距離は、例えば第1の上昇経路の距離と略同等である。
【0075】
第2のスライド経路は、第2の上昇経路の終点である(X,Z)=(X21,Z3)を始点とし、(X,Z)=(X22,Z3)を終点とする、X方向に沿った経路である。第2のスライド経路の距離X22-X21は、第1のスライド経路の距離X21-X1に基づいて、下記の式によって演算される。
X22-X21=-(X21-X1)×2
【0076】
第2の下降経路は、第2のスライド経路の終点である(X,Z)=(X22,Z3)を始点とし、(X,Z)=(X22,Z42)を終点とする、Z方向に沿った経路である。第2の下降経路の距離Z42-Z3は、第1の上昇距離Z3-Z1に基づいて、下記の式によって演算される。
Z42-Z3=-{(Z3-Z1)+γ21}
γ21は、例えばワイヤwの材質に基づいて経験的に求められた定数であるが、ワイヤwの材質やワイヤ径Dwに基づいて決定される変数であってもよい。γ21=γ11であってもよく、このときZ42=Z41となる。
【0077】
なお、
図3の「リバース角度」欄に180degを入力することにより、
図15に示すように、スライド経路を逆にすることができる。この場合、バンプは、ボンディング対象の電極72に遠い側の厚みが電極72に近い側の厚みよりも小さくなるように形成されている
【0078】
図15に示すように、第2実施例によれば、第1実施例よりも高背なバンプを形成することができる。
【0079】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、パラメータ設定を簡略化したバンプ形成装置、バンプ形成方法及びバンプ形成プログラムを提供することができる。
【0080】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…バンプ形成装置、10…ボンディング制御部、11…基台、12…XYテーブル、13…ボンディングヘッド、14…トーチ電極、15…キャピラリ、15h…ホール、15c…チャンファ、16…超音波ホーン、17…ワイヤクランパ、18…ワイヤテンショナ、19…回転スプール、20…ボンディングステージ、21…ヒータ、40…操作部、41ディスプレイ、42…カメラ、半導体装置…50、電極…52、ワイヤ…w、フリーエアボール…fab、圧着されたボール部…60、ホール部…61、チャンファ部…62、圧着下部…63、圧着上部…64、ワイヤ径…Dw、ホール径…Dh、チャンファ角…Ac、チャンファ径…Dc、フリーエアボール径…Df、ホール部の厚…T1、チャンファ部の厚…T2、圧着下部の厚…T3、圧着下部の径…D3。