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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】搬送容器用受け部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/10 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
B65D25/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024080994
(22)【出願日】2024-05-17
【審査請求日】2024-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-313446(JP,A)
【文献】特開2010-149909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納された物品を固定する目的で搬送容器の板状部材に設置される搬送容器用受け部材であって、
前記物品を支持する受け部が設けられた板材からなり、掛止部が設けられた受け具と、
この受け具を保持するとともに、前記掛止部に対して掛止可能な掛止手段を有する保持具と、
貫通孔が設けられた前記板状部材に前記保持具が着脱可能に取り付けられる際に用いられる取付具と、を備え、
前記保持具及び前記取付具は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド及びポリカーボネートのいずれかの材料によって成形され、
前記保持具の一端に保持具側開口部が設けられるとともに前記保持具の他端に保持具側係合爪が設けられ、
前記取付具の一端に取付具側開口部が設けられるとともに前記取付具の他端に取付具側係合爪が設けられ、
前記保持具及び前記取付具は、前記板状部材を間に挟むようにして配置された状態で、前記貫通孔を通して前記保持具側開口部に前記取付具側係合爪を係合させるとともに前記取付具側開口部に前記保持具側係合爪を係合させることによって、前記板状部材に固定されることを特徴とする搬送容器用受け部材。
【請求項2】
前記保持具は、前記受け具の前記受け部に対して嵌合可能な第1の嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送容器用受け部材。
【請求項3】
前記取付具は、前記保持具の前記第1の嵌合部に対して嵌合可能な第2の嵌合部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の搬送容器用受け部材。
【請求項4】
前記保持具の前記第1の嵌合部は、一の方向へ突出するように形成された棒状突起を有することを特徴とする請求項2に記載の搬送容器用受け部材。
【請求項5】
前記保持具に前記掛止手段として係止爪が設けられるとともに、
前記受け部に前記係止爪を挿通可能な係止孔が前記掛止部として設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の搬送容器用受け部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送容器に収納された製品や部品などの物品を固定する目的で搬送容器に設置される搬送容器用受け部材(以下、単に受け部材という。)に係り、特に、物品を支持する受け部を有する受け具と、この受け具を保持する保持具と、この保持具を搬送容器に取り付ける際に用いられる取付具を備えた受け部材に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の搬送や輸送に用いられる容器(以下、搬送容器という。)には、製品や部品などの物品が傷ついたり、破損したりすることを防ぐために受け部材が設置されることが多い。この受け部材としては、例えば、搬送容器に物品を確実に固定できるように、真空成形により物品の形状に沿って形成された三次元曲面を有する支持部を備えたものが知られている。しかしながら、従来、このような受け部材は搬送容器に対してボルトやナットを用いて固定されていたため、搬送容器に設置したり、搬送容器から撤去したりする作業に時間を要するという課題があった。
【0003】
このような課題に対処するものとして、例えば、特許文献1に「搬送容器用受け部材の製造方法とそれに用いられるプリフォーム」という名称で、製品や部品を支持する部分の強度が低下し難く、搬送容器を構成する板材に対して容易に取り付けることが可能な受け部材の製造方法とそれに用いられるプリフォームに関する発明が開示されている。
特許文献1の図面に示された符号を用いて説明すると、特許文献1に開示されたプリフォーム1は、熱可塑性樹脂の射出成形によって形成されて平面視略矩形状をなす板材からなり、真空成形によって収納品受け部15aが形成される成形対象部2と、この成形対象部2を囲むとともに第2の面1bから突出するように設けられた境界部3と、この境界部3の外側に設けられて、上述の矩形を構成する平行な2辺に対応する側面1c、1dをそれぞれ有する第1の結合部4及び第2の結合部10と、第1の面1aと平行な平坦面を有し、第1の結合部4の第1の面1aに設けられた突設部5と、第2の結合10部に対し、成形対象部2を挟んで、平坦面に設けられた長方形状の開口部9と対称に設けられた係合爪12と、を備えた構造となっている。そして、係合爪12が、第2の結合部10の座板10aから延設されるとともに第1の面1a側へ直角に曲折された平面部13と、座板10aを平面視した場合に成形対象部2から離れる方向へ突出するように平面部13から延設されるとともに第2の面1b側へ鋭角に曲折された係合部14と、を備え、かつ、平面部13及び係合部14が、両者のなす角度が小さくなるように弾性変形をさせることにより開口部9内に配置可能な大きさになり、上記角度が大きくなるように弾性変形が回復することにより係合爪12が開口部9に係合可能な大きさになることを特徴としている。
【0004】
搬送容器に用いられている板材が突設部5と係合爪12を内部に配置可能な貫通孔を有している場合、上記構造のプリフォーム1と、このプリフォーム1を用いて製造される受け部材が第1の面1a同士を向い合わせるとともに上記板材を間に挟むように配置された状態において、板材の貫通孔を通して一方の突設部5の開口部9に他方の係合爪12を係合させると、上述の受け部材とプリフォーム1が板材の両面にそれぞれ固定される。すなわち、上記構造のプリフォーム1は、それから製造された受け部材と組み合わせることで、搬送容器に用いられている板材に対して容易に取り付けられるという効果を有している。
【0005】
また、特許文献2には「搬送容器用受け部材の製造方法及びそれに用いられる金型」という名称で、搬送容器を構成する部材に対して着脱可能に取り付けられる受け部材を安価に製造する方法に関する発明が開示されている。
特許文献2の図面に示された符号を用いて説明すると、特許文献2に開示された受け部材1は、熱可塑性樹脂の平板材の一部に設けられた収納品受け部1aが一の方向へ突出するように形成された複数の棒状突起1cを有している。
このような構造の受け部材1では、収納品受け部1aが物品を面全体で支持する従来技術の場合とは異なり、物品と収納品受け部1aが接触する面積が狭いため、収納品への傷が発生し難い。また、収納品受け部1aのうち物品に接触しない部分については、その形状に対する制約が少ないことから、当該部分の加工精度を他の部分よりも低く設定することが可能であり、そのようにすることで、収納品受け部1aを形成する際に用いられる真空成形用の金型の製造コストを削減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第7309249号公報
【文献】特許第7333682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたプリフォームや特許文献2に記載された受け部材は、射出成形と真空成形が可能なものでなければならないため、材質が限定されてしまう。例えば、搬送容器に収納された物品を支持する部分(受け部)をゴムなどのように柔軟性を有する部材で形成しようとしても、そのような部材は真空成形に適していないことから、上述のプリフォームや受け部材に用いることができない。すなわち、特許文献1及び特許文献2に開示された発明では、受け部に対し、プリフォームとは異なる特性を付与することが容易でないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、物品を支持する部分の材質と搬送容器への取り付けに用いられる部分の材質が異なる搬送容器用受け部材を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、収納された物品を固定する目的で搬送容器に設置される搬送容器用受け部材であって、物品を支持する受け部が設けられた板材からなる受け具と、この受け具を保持する保持具と、この保持具が搬送容器に取り付けられる際に用いられる取付具と、を備え、搬送容器に対して着脱可能に取り付けられる保持具及び取付具は射出成形と真空成形のいずれもが可能な材料によって成形され、保持具は、受け具に設けられた掛止部に対して掛止可能な掛止手段を有し、受け具の材質は射出成形や真空成形が可能なものに限られないことを特徴とする。
【0010】
第1の発明においては、受け具の材質が射出成形や真空成形が可能なものに限られないことから、受け部に対し、保持具が備えていない特性が付与され得るという作用を有する。例えば、CFRP、HDPE及び導電材配合品などのような靭性が低い(脆い)素材やエラストマーのような柔軟性を有する素材は、射出成形が可能であってもプリフォームに設けられた掛止手段や係合手段が適切に機能しないため、プリフォームに用いることができない。また、ナイロンやCFRPは真空成形に適していない。そのため、これらの素材を保持具に用いることは困難であるが、受け具に用いることは可能である。そして、エラストマー、ナイロン、CFRP及びHDPEを受け具に用いた場合には、受け部が柔軟性、耐摩耗性、導電性及び耐油性をそれぞれ有することになる。
また、第1の発明においては、受け具の掛止部に保持具の掛止手段を掛止させると、受け具が保持具によって保持されるとともに、掛止部に対する掛止手段の掛止状態を解消させると、受け具の保持具からの取り外しが可能になるという作用を有する。
さらに、保持具と取付具が搬送容器に対して着脱可能であることから、第1の発明においては、搬送容器に用いられている板材に対する取り付けと、その板材からの取り外しが容易であるという作用を有する。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、保持具は、受け具の受け部に対して嵌合可能な第1の嵌合部が設けられていることを特徴とする。
上記構造の第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、第1の嵌合部が受け部と嵌合することにより、保持具に対して受け具が位置決めされるという作用を有する。
【0012】
第3の発明は、第2の発明において、取付具は、保持具の第1の嵌合部と嵌合可能な第2の嵌合部が設けられていることを特徴とする。
上記構造の第3の発明においては、第2の発明の作用に加え、第2の嵌合部が第1の嵌合部と嵌合することにより、保持具に対して取付具が位置決めされるという作用を有する。
【0013】
第4の発明は、第2の発明において、保持具の第1の嵌合部は、一の方向へ突出するように形成された棒状突起を有することを特徴とする。
上記構造の第4の発明においては、第2の発明の作用に加え、第1の嵌合部の棒状突起が、円柱体又は円筒体からなる複数のピンと、このピンが上面に立設されたブロックからなる金型を用いた真空成形によって容易に形成されるという作用を有する。
【0014】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、保持具がポリプロピレン製であることを特徴とする。
第5の発明においては、ポリプロピレンが繰り返し折り曲げても破壊されない性質(ヒンジ特性)を有しているため、掛止手段として保持具に係止爪を設けるとともに、この係止爪を挿通可能な係止孔を掛止部として受け具に設けた場合、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、係止爪を折り曲げて係止孔に掛止させたり、係止孔に対する掛止状態を解消するために、折り曲げられた係止爪を伸ばして元の形状に戻したりした場合でも、係止爪が破損し難いという作用を有する。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、搬送容器に収納される物品に適した特性を受け部に付与することにより、その物品を搬送容器内で適切に固定できるという効果を奏する。また、受け具を保持具から簡単に取り外すことができるため、両者の材質が異なっている場合であってもリサイクル時の分別が容易である。さらに、第1の発明では、搬送容器を構成する板材に対する保持具と取付具の取り付けや取り外しが容易であるため、搬送容器内に設置する作業を効率よく行うことができる。
【0016】
第2の発明では、第1の嵌合部と受け部が嵌合することにより保持具に対して受け具が位置決めされるため、受け具の掛止部に対する保持具の掛止手段の位置合わせが容易になる。したがって、第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、受け具に対する保持具の取り付け作業を短時間で効率よく行うことができるという効果を奏する。また、受け部の剛性が低い場合であっても、受け具よりも剛性の高い保持具に設けられた第1の嵌合部を受け部に嵌合させることで、受け部の強度を高めることができる。
【0017】
第3の発明では、第2の嵌合部と第1の嵌合部が嵌合することにより保持具に対して取付具が位置決めされるため、第2の発明の効果に加え、保持具に対する取付具の取り付け作業を短時間で効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0018】
第4の発明によれば、保持具の第1の嵌合部が簡単な構造の真空成形用金型を用いて容易に形成されることから、第2の発明の効果に加え、保持具において第1の嵌合部を形成する際に要するコストを削減できるという効果を奏する。
【0019】
第5の発明によれば、掛止手段として保持具に係止爪を設けるとともに、この係止爪を挿通可能な係止孔を掛止部として受け具に設けた場合に、係止爪を曲げたり伸ばしたりしても係止爪が破損し難いため、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、同一の保持具に対して受け部の形状並びに材質の異なる複数の受け具を共通して取り付けることにより、製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る受け部材の外観斜視図であり、(b)は同図(a)に示した受け具や保持具とともに受け部材を構成する取付具の外観斜視図である。
図2】(a)は図1(a)及び図1(b)において第1の結合部と第2の結合部を拡大して示した斜視図であり、(b)は係合爪を拡大して示した斜視図であり、(c)は突設部の開口部に係合爪が係合した状態を示した斜視図である。
図3図1(a)に示した保持具の外観斜視図である。
図4】(a)は図3において係止爪とその周辺を拡大して示した図であり、(b)は同図(a)において係止爪を折り曲げた状態を示した図である。
図5】(a)は図1(a)に示した受け具の外観斜視図であり、(b)は同図(a)に示した受け具が図3に示した保持具によって保持された状態を示した外観斜視図である。
図6】(a)は図5(b)におけるA-A線矢視断面図であり、(b)は図1(a)において保持具に図1(c)に示した取付具が取り付けられた状態を示した側面図である。
図7】(a)は搬送容器の底板の一例を示した平面図であり、(b)は同図(a)に示した底板に図1(a)及び図1(b)に示した受け部材が取り付けられた状態を底板の側方から見た図である。
図8】(a)は本発明の第2の実施の形態に係る受け部材の外観斜視図であり、(b)は同図(a)に示した受け具や保持具とともに受け部材を構成する取付具の外観斜視図である。
図9図8(a)に示した保持具の外観斜視図である。
図10】(a)及び(b)はそれぞれ保持具の製造に用いられる熱成形装置の構成を示した模式図及び保持具の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図11】(a)は図8(a)に示した受け具の外観斜視図であり、(b)は図8(a)におけるB-B線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の搬送容器用受け部材の構造及びそれらの発明の作用及び効果について図1乃至図11を用いて具体的に説明する。
なお、以下の説明では搬送容器を構成する底板に受け部材が設置される場合を例に挙げているが、その受け部材は全体が平坦な形状をしている場合だけでなく、開口部を設けることができる板状部分を少なくとも一部に有している部材であっても良いし、底板以外の板状部材に設置されるものであっても良い。そして、そのような部材に上記受け部材を設置する場合にも、以下に説明する本発明の作用及び効果は同様に発揮される。
また、本願明細書では、搬送容器の板材に向いている側の面及びその反対側の面をそれぞれ「第1の面」及び「第2の面」と表現している。
【実施例1】
【0022】
図1(a)は本発明の第1の実施の形態に係る受け部材1aの外観斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示した受け具2や保持具3とともに受け部材1aを構成する取付具4の外観斜視図である。また、図2(a)は図1(a)及び図1(b)において第1の結合部6と第2の結合部13を拡大して示した斜視図であり、図2(b)は係合爪15を拡大して示した斜視図であり、図2(c)は突設部8の開口部12に係合爪15が係合した状態を示した斜視図である。さらに、図3図1(a)に示した保持具3の外観斜視図である。
【0023】
図1(a)及び図1(b)に示すように、受け部材1aは、搬送容器に収納されている製品や部品などの物品を支持するための受け部23を有する受け具2と、この受け具2を保持する保持具3と、この保持具3を搬送容器に取り付ける際に用いられる取付具4を備えている。
図1(a)及び図1(b)並びに図2(a)及び図3に示すように、保持具3及び取付具4は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂の射出成形によって形成されて平面視略矩形状をなす板材からなり、真空成形が施される成形対象部5と、この成形対象部5の外側に設けられて、上述の矩形を構成する平行な2辺に対応する側面3c、3d又は側面4c、4dをそれぞれ有する第1の結合部6及び第2の結合部13を備えている。そして、取付具4の第1の面4aには、平面視長方形状をなす一対の肉盗み7、7が成形対象部5を間に挟むようにして対称に設けられている。
また、保持具3の成形対象部5には、受け具2の受け部23と嵌合可能な段付き構造の第1の嵌合部20(図3を参照)が設けられており、取付具4の成形対象部5には、保持具3の第1の嵌合部20と嵌合可能に第2の嵌合部25が設けられている。
なお、肉盗み7は、射出成形時の収縮に伴う変形を小さくする目的で設けられるものであるため、当該部分の肉厚や射出成形の条件によっては省略することもできる。
【0024】
第1の結合部6は、平面視長方形状をなす座板6aと、この座板6aに対して第1の面3a又は第1の面4aにそれぞれ設けられた突設部8及び突起部9、10からなり、座板6aには、側面3c、3d又は側面4c、4dに対してそれぞれ直交する側面3e、3f又は側面4e、4fの近くに円形の貫通孔11a、11bがそれぞれ設けられている。また、突設部8は、座板6aに垂直であって、かつ、側面3c、4cに平行な一対の側面板8a、8aと、この一対の側面板8a、8aの上端側同士を接続し、平坦で第1の面3a、4aに平行な上面板8cと、座板6aに垂直であって、かつ、上面板8cと一対の側面板8a、8aを接続する一対の側面板8b、8bと、側面板8bと平行に設置されて一対の側面板8a、8a同士を接続する4枚の補強板8d(図1(a)を参照)によって構成されており、突設部8の補強板8dが設けられていない箇所には一対の開口部12、12が設けられている。なお、開口部12は平面視した場合に長方形の長辺の1つに相当する内壁面の一部が切り欠かれることにより、一対の係止部12a、12aが成形対象部5から遠い側に形成されている。また、突設部8の上面板8cには、長手方向の両端に突起部9(図1(b)を参照)がそれぞれ設けられ、略中央に突起部10が設けられている。
【0025】
第2の結合部13の座板13aには、側面3e、3f又は側面4e、4fの近くに円形の貫通孔11bがそれぞれ設けられている。そして、側面3d、4dに対して垂直な方向へ突出するとともに平面視矩形状をなし、かつ、スリット14aによって2つに分けられた一対の係止片14b、14bが座板13aの幅方向(側面3e、3f又は側面4e、4fに直交する方向)の略中央に設けられている。また、第2の結合部13の座板13aには、側面3d、4dに対して垂直な方向へ所定の長さを有する一対のスリット13b、13bが一対の係合爪15、15を間に挟むようにして一対の貫通孔11b、11bの間に設けられている。
なお、後述するように保持具3と取付具4を結合した際に保持具3の側面3dに取付具4の突起部9が当接し、取付具4の側面4dに保持具3の突起部9が当接する。すなわち、保持具3と取付具4は、それぞれ突起部9が側面3d又は側面4dに当接することにより、側面3d又は側面4dに垂直な方向への移動が互いに規制される構造となっている。
【0026】
図2(a)に示すように、突起部10は突設部8の上面板8cの長手方向に平行な直線部分10aと、上面板8cの長手方向に対して垂直をなすように直線部分10aの両端と略中央にそれぞれ設けられた一対の突状部分10b、10b及び突状部分10cからなる。上述したように、保持具3と取付具4を結合する場合、一方のスリット14aの内部に他方の突状部分10cが配置されるとともに、一方の係止片14bが他方の突状部分10b、10cの間にそれぞれ配置される。すなわち、保持具3と取付具4は、一方の係止片14bが他方の突起部10の突状部分10b、10cの間に配置されることにより、側面3d又は側面4dに対して平行な方向及び垂直な方向への移動が互いに規制される構造となっている。
【0027】
係合爪15は、図2(a)に示すように両側にスリット13bが設けられた座板13aと、図2(b)に示すように座板13aから延設され、第1の面3a、4a(図1(a)又は図1(b)を参照)側へ略直角に曲折された平面部16と、座板13aを平面視した場合に成形対象部5から離れる方向へ突出するように平面部16から延設され、第2の面3b、4b(図2(a)を参照)側へ鋭角に曲折された係合部17を備えている。また、係合部17は先端の一部が平面視略矩形状に切り欠かれることにより、平面部16から延設された幅広部17aと、この幅広部17aに続く幅狭部17bが形成されている。そして、幅狭部17bの両側には一対の係止端面17c、17cが形成されている。また、係合爪15の平面部16が延設されている座板13aの第2の面3b、4b(図2(a)を参照)には、幅方向(側面3d、4dと平行な方向)の両側に肉厚部15aがそれぞれ設けられている。
なお、保持具3と取付具4は一方の係合爪15を他方の突設部8の開口部12に係合させることによって互いに分離できない状態になるが、このとき、係合部17の幅狭部17bは図2(c)に示すように一対の係止部12a、12aの間に配置された状態になる。
【0028】
図3に示すように、保持具3は側面3e、3fをそれぞれ有する第3の結合部18が成形対象部5の外側に設けられており、第3の結合部18の座板18aには、側面3e、3fに対して垂直に所定の深さを有する4つの切り欠き18bが形成されるとともに、第2の面3bに対して、側面3e、3fにそれぞれ平行な棒状体19が切り欠き18bを跨ぐように側面3e、3fの近傍に設置されている。そして、切り欠き18bの内部には、側面3e、3fと平行な切り欠き18bの内壁面18c(図4(a)を参照)から延設されるとともに第2の面3bの側に曲折されるようにして係止爪21が形成されている。
【0029】
図4(a)は図3において係止爪21とその周辺を拡大して示した図であり、図4(b)は図4(a)において係止爪21を折り曲げた状態を示した図である。
図4(a)に示すように、係止爪21は、切り欠き18bの内壁面18cから第2の面3b側へ略直角に曲折されるように延設された平面部21aと、座板18aを平面視した場合に成形対象部5から離れる方向へ突出し、かつ、平面部21aと鈍角をなすように曲折された接続部21bと、接続部21bから延設されるとともに第2の面3b側へ鋭角に曲折された係止部21cを備えている。
また、平面部21aには座板18aに近い側と接続部21bに近い側に肉厚部分22aがそれぞれ設けられており、2つの肉厚部分22aの間には、肉薄部分22bが第2の面3bと平行に設けられている。
すなわち、係止爪21は、平面部21aの肉薄部分22bにおいて、係止部21cが第2の面3bに近づく方向へ容易に折り曲げることが可能であり、接続部21bに近い側の肉厚部分22aを座板18aに近い側の肉厚部分22aに対して略直角に折り曲げた場合、図4(b)に示すように係止部21cが棒状体19に係止する構造となっている。
【0030】
図5(a)は図1(a)に示した受け具2の外観斜視図であり、図5(b)は図5(a)に示した受け具2が図3に示した保持具3によって保持された状態を示した外観斜視図である。また、図6(a)は図5(b)におけるA-A線矢視断面図であり、図6(b)は図1(a)において保持具3に図1(c)に示した取付具4が取り付けられた状態を示した側面図である。
図5(a)に示すように、平面視矩形状をなす熱可塑性エラストマー製の板材からなる受け具2には、保持具3の第1の嵌合部20(図6(a)を参照)に対して嵌合可能な段付き構造の受け部23が第1の面2aに対して垂直に、かつ、第2の面2bの側へ突出するように設けられるとともに、上述の矩形を構成する平行な2辺に対応する側面2c、2dに沿って円形の係止孔24がそれぞれ4か所ずつ設けられている。
また、図5(b)及び図6(a)に示すように、受け具2では、受け部23に保持具3の第1の嵌合部20を嵌合させた状態で、保持具3の8つの係止爪21に対して同時に挿通可能な箇所に8つの係止孔24が形成されている。
すなわち、第1の嵌合部20は受け部23と嵌合することにより、受け具2を保持具3に対して位置決めするという機能を有している。そのため、受け部材1aでは、受け具2の係止孔24に対する保持具3の係止爪21の位置合わせが容易である。したがって、受け部材1aによれば、受け具2に対する保持具3の取り付け作業を短時間で効率よく行うことができる。また、受け部23の剛性が低い場合であっても、受け具2よりも剛性の高い保持具3に設けられた第1の嵌合部20を受け部23に嵌合させることで、受け部23の強度を高めることができる。
【0031】
図5(b)において、係止爪21の接続部21bに近い側の肉厚部分22aを座板18aに近い側の肉厚部分22aに対して略直角に折り曲げると、係止爪21が受け具2の係止孔24から抜出不能となるため、図1(a)に示したように受け具2が保持具3によって保持された状態になる。
図1(a)において、保持具3の第1の面3aに取付具4の第1の面4aを向い合わせて取付具4の第2の嵌合部25と保持具3の第1の嵌合部20を嵌合させ、取付具4の突設部8の開口部12に保持具3の係合爪15を近接させるとともに、保持具3の突設部8の開口部12に取付具4の係合爪15を近接させる。
このように、第2の嵌合部25を第1の嵌合部20に嵌合させると、取付具4が保持具3に対して位置決めされるため、一方の突設部8の開口部12に対する他方の係合爪15の位置合わせが容易となる。したがって、受け部材1aでは、保持具3に対する取付具4の取り付け作業を短時間で効率よく行うことができる。
【0032】
この状態から、保持具3に取付具4を近づけていくと、係合爪15は平面部16と係合部17のなす角度が小さくなるように弾性変形する結果、平面部16と係合部17の幅広部17aが開口部12を通過可能な状態になる。そして、係合部17の幅広部17aが開口部12を通過すると、係合爪15の弾性変形が回復することにより、係合部17の幅狭部17bが一対の係止部12a、12aの間に配置され、幅狭部17bの両側に形成された一対の係止端面17c、17cが一対の係止部12a、12aにそれぞれ係止する。これにより、図6(b)に示すように取付具4は保持具3に固定される。
すなわち、保持具3と取付具4は、一方の係合爪15が他方の突設部8の開口部12に係合することによって互いに分離不能な状態となるのである。
なお、図6(b)において、係合部17の幅狭部17bの先端を指で持つなどして平面部21aと係合部17の幅広部17aが開口部12を通過可能になるまで、平面部21aと係合部17のなす角度が小さくなる方向へ係合爪15を弾性変形させると、係合爪15と突設部8の開口部12の係合状態が解消する。そこで、係合爪15を突設部8の開口部12から取り出すと、保持具3と取付具4は分離可能な状態になる。
【0033】
図7(a)は搬送容器の底板26の平面図であり、図7(b)は底板26に受け部材1aが取り付けられた状態を底板26の側方から見た図である。
搬送容器は、例えば、直方体の各辺を構成するように組み合わされた複数本の角パイプなどからなるフレームと、このフレームの底面開口部に設置される平面視矩形状の板材(以下、底板26という。)を備えている。この底板26が、図7(a)に示すように平面視長方形をなすとともに平面視矩形状の一対の貫通孔26a、26a及び開口部26bを備えており、この一対の貫通孔26a、26aが保持具3の第1の面3a(図3を参照)又は取付具4の第1の面4a(図1(b)を参照)に底板26が平行に配置された状態で、突設部8及び係合爪15(図2(a)を参照)を内部へ同時に配置可能であって、かつ、開口部26bが保持具3の第1の嵌合部20及び取付具4の第2の嵌合部25を内部へ配置可能な構造である場合、保持具3と取付具4は、図7(b)に示すように搬送容器の底板26に第1の面3a、4aをそれぞれ向い合わせた状態で、開口部26bの内部に保持具3の第1の嵌合部20及び取付具4の第2の嵌合部25を配置するとともに、貫通孔26aを通して一方の突設部8の開口部12(図2(a)を参照)に他方の係合爪15(図2(a)を参照)を係合させることによって、底板26に固定される。
また、既に説明したように、係合部17の幅狭部17bの先端を指で持つなどして平面部21aと係合部17のなす角度が小さくなる方向へ係合爪15を弾性変形させると、係合爪15と突設部8の開口部12の係合状態が解消して、保持具3と取付具4は互いに分離可能となる。すなわち、保持具3と取付具4は底板26からの取り外しも容易となっている。
このように保持具3と取付具4は搬送容器の底板26に対して着脱可能な構造となっている。
【0034】
上記構造の受け部材1aでは、受け具2の成形方法が射出成形や真空成形に限定されないため、受け具2を保持具3や取付具4と同じ材質にする必要がない。例えば、柔軟性を有するエラストマーは取付機能や保持機能を必要とするプリフォームの素材として適してないため、保持具3や取付具4に用いることはできないが、受け具2には用いることができる。そして、受け具2をエラストマー製にした場合、受け部23が柔軟性を有することになる。同様に、保持具3や取付具4に用いることが困難なナイロンやCFRPあるいはHDPEについても受け具2に対しては用いることができる。そして、受け具2をこれらの材料によってそれぞれ成形した場合、受け部23は耐摩耗性、導電性及び耐油性をそれぞれ有することになる。このように、受け部材1aでは、受け具2の材質が、射出成形や真空成形が可能なものに限られないため、受け具2を保持具3や取付具4の材質と異なるものにすることができる。これにより、受け部23に対し、保持具3や取付具4が備えていない特性が付与されるという作用が発揮される。したがって、受け部材1aでは、搬送容器に収納されている物品に適した特性を受け部23に付与することにより、その物品を搬送容器内で適切に固定することができる。
【0035】
また、受け部材1aでは、受け具2の係止孔24に挿通された保持具3の係止爪21を折り曲げるようにして係止爪21を係止孔24に掛止させると、受け具2が保持具3によって保持される。そして、折り曲げられた係止爪21を伸ばして元の形状に戻すことにより、係止孔24に対する係止爪21の掛止状態を解消させると、受け具2の保持具3からの取り外しが可能になる。すなわち、保持具3は、受け具2に設けられた係止孔24からなる掛止部に対して掛止可能な掛止手段として、係止爪21を備えている。
このように、受け部材1aでは、受け具2を保持具3から簡単に取り外すことができるため、両者の材質が異なっている場合であってもリサイクル時の分別が容易である。
なお、掛止部と掛止手段は保持具3に対して受け具2を着脱可能に固定できる構造であれば良く、係止孔24と係止爪21に限定されるものではない。
【0036】
さらに、図7(a)を用いて説明したように、搬送容器に用いられている底板26が保持具3及び取付具4の突設部8と係合爪15を内部に配置可能な貫通孔26aと、保持具3の第1の嵌合部20及び取付具4の第2の嵌合部25を内部へ配置可能な開口部26bを有している場合、この底板26を間に挟むようにして、保持具3と取付具4を配置した後、開口部26bの内部に保持具3の第1の嵌合部20及び取付具4の第2の嵌合部25を配置するとともに、底板26の貫通孔26aを通して一方の突設部8の開口部12に他方の係合爪15を係合させることで、保持具3と取付具4が底板26の両面にそれぞれ固定される。また、この状態において、係合爪15を弾性変形させて係合爪15と突設部8の開口部12の係合状態を解消させると、保持具3と取付具4は互いに分離可能となる。
すなわち、受け部材1aでは、搬送容器に用いられている底板26に対する取り付けと、その底板26からの取り外しが容易となっている。したがって、受け部材1aでは、搬送容器内に設置する作業を効率良く行うことができる。
【0037】
なお、保持具3と取付具4には、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を用いることができるが、保持具3については、特にポリプロピレンを用いることが望ましい。ポリプロピレンは繰り返し折り曲げても破壊されない性質(ヒンジ特性)を有しているため、保持具3をポリプロピレン製にすると、係止爪21を折り曲げて係止孔24に掛止させたり、係止孔24に対する掛止状態を解消するために、折り曲げられた係止爪21を伸ばして元の形状に戻したりした場合でも、係止爪21が破損し難い。この場合、同一の保持具3に対して受け部23の形状並びに材質の異なる複数の受け具2を共通して取り付けることにより、製造コストの削減を図ることができる。
【実施例2】
【0038】
図8(a)は本発明の第2の実施の形態に係る受け部材1bの外観斜視図であり、図8(b)は図8(a)に示した受け具27や保持具28とともに受け部材1bを構成する取付具29の外観斜視図である。また、図9は保持具28の外観斜視図である。さらに、図10(a)及び図10(b)はそれぞれ保持具28の製造に用いられる熱成形装置34の構成を示した模式図及び保持具28の製造方法を説明するためのフローチャートである。そして、図11(a)は受け具27の外観斜視図であり、図11(b)は図8(a)におけるB-B線矢視断面図である。なお、図9では図が煩雑になるのを避けるため、1つの棒状突起に対してのみ符号を付している。また、図1乃至図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付すことにより、その説明を適宜省略する。
図8(a)及び図8(b)並びに図9に示すように、受け部材1bは受け具27、保持具28及び取付具29を備えており、受け具27には、受け部材1aを構成する受け具2において、受け部23の代わりに受け部30が成形対象部5に設けられている。
【0039】
保持具28及び取付具29は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂の射出成形によって形成されて平面視略矩形状をなす板材からなり、真空成形が施される成形対象部5の外側に設けられて、上述の矩形を構成する平行な2辺に対応する側面28c、28d又は側面29c、29dをそれぞれ有する第1の結合部6及び第2の結合部13を備えている。なお、保持具28の側面28c、28d及び取付具29の側面29c、29dは保持具3の側面3c、3d及び取付具4の側面4c、4dにそれぞれ対応する。そして、取付具29の第1の面29aには、平面視長方形状をなす一対の肉盗み7、7が成形対象部5を間に挟むようにして対称に設けられている。なお、図8(b)に示した第2の面29bは取付具4における第2の面4bに対応する。
また、保持具28の成形対象部5には、一の方向へ突出するように形成された複数の棒状突起31a(図9を参照)を有し、受け具27の受け部30の内部へ配置される第1の嵌合部31が保持具3における第1の嵌合部20の代わりに設けられており、取付具29は受け部材1aを構成する取付具4とは異なり、成形対象部5には第2の嵌合部25が設けられていない。
【0040】
図9に示すように、保持具28は側面28e、28fをそれぞれ有する第3の結合部18が成形対象部5の外側に設けられており、第3の結合部18の座板18aには、側面28e、28fに対して垂直に所定の深さを有する4つの切り欠き18bが形成されるとともに、第2の面28bに対して、側面28e、28fにそれぞれ平行な棒状体19が切り欠き18bを跨ぐように側面28e、28fの近傍に設置されている。そして、切り欠き18bの内部には、側面28e、28fと平行な切り欠き18bの内壁面18c(図4(a)を参照)から延設されるとともに第2の面28bの側に曲折されるようにして係止爪21が形成されている。
受け部材1bにおいて、8つの係止孔32(図11(a)を参照)に対して全ての係止爪21が同時に挿通されるように受け具27を保持具28に設置した後、係止爪21の接続部21bに近い側の肉厚部分22aを座板18aに近い側の肉厚部分22aに対して略直角に折り曲げると、係止爪21が受け具27の係止孔32から抜出不能となるため、図8(a)に示したように受け具27が保持具28によって保持される。一方、この状態から係止爪21を伸ばして元の形状に戻すと、係止爪21が係止孔32から抜出可能になるため、受け具27を保持具28から容易に取り外すことができる。
【0041】
保持具28の棒状突起31aは受け具27の受け部30の内部に配置されることにより、受け具27の保持具28に対するズレを防ぐとともに、受け部30の剛性を担保するという機能を有している。
また 保持具28では、棒状突起31aが受け部30の内面30a(図11(b)を参照)に接触する面積の割合が、保持具3の第1の嵌合部20の内面20a(図6(a)を参照)に受け具2の受け部23が接触する面積の割合よりも小さくなっている。そして、棒状突起31aが受け部30の内面30aに接触しない部分については、その形状に対する制約が少ないことから、当該部分の加工精度については他の部分よりも低く設定することが可能である。したがって、上記構造の保持具28によれば、棒状突起31aを形成する際に用いられる真空成形用の金型36(図10(a)を参照)の製造コストが削減される。
【0042】
ここで、保持具28の製造方法について図10を用いて説明する。図10(a)及び図10(b)はそれぞれ保持具28の製造に用いられる熱成形装置34の構成を示した模式図及び保持具28の製造方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明では、保持具28において成形対象部5に真空成形が施される前の状態をプリフォーム33というものとする。
熱成形装置34は、図示しない加熱ブースと締付具に加え、図10(a)に示すように、プラグ35と金型36を備えている。プラグ35は成形対象部5を上から押え付けるようにして成形対象部5を金型36に密着させるための部材であり、略水平をなすように締付具を用いて熱成形装置34に固定されたプリフォーム33の上方に配置される。一方、金型36は上方に突出するように設置された複数本のピン37を備えており、プリフォーム33の下方に配置される。
なお、プラグ35については、使用されない場合もある。
【0043】
図10(b)に示すように、まず、熱可塑性樹脂の射出成形により、略矩形状のプリフォーム33を形成する(ステップS1)。つぎに、プリフォーム33を熱成形装置34の加熱ブース(図示せず)内に設置して、成形対象部5を所定の熱変形温度に達するまで加熱する(ステップS2)。そして、加熱されたプリフォーム33を熱成形装置34に設置した後、プリフォーム33と金型36の間の空間に存在する空気を吸引しながら成形対象部5の第1の面28a(図8(a)を参照)に金型36を下方から押し当てるとともに、成形対象部5の第2の面28b(図9を参照)にプラグ35を上方から押し当てる(ステップS3)。最後に、プリフォーム33を十分に冷却した後、熱成形装置34から取り出す(ステップS4)。
このような方法によれば、保持具28が金型36を用いた真空成形によって容易に製造されるため、受け部材1bの製造コストを安くするともに、その製造効率を高めることができる。
【0044】
図11(a)及び図11(b)に示すように、平面視矩形状をなす熱可塑性エラストマー製の板材からなる受け具27には、保持具28の棒状突起31aを内部に配置可能な構造の受け部30が第1の面27aに対して垂直に突出するように設けられるとともに、上述の矩形を構成する平行な2辺に対応する側面27c、27dに沿って矩形の係止孔32がそれぞれ4か所に設けられている。なお、この8つの係止孔32は、図11(b)に示すように、受け具27の受け部30の内部へ保持具28の棒状突起31aを配置した状態で、保持具28の8つの係止爪21に対して同時に挿通可能な箇所に形成されている。
そこで、係止孔32に挿通されている係止爪21の平面部21aを係止部21cが第2の面28bに近づく方向へ略直角に折り曲げると、係止爪21が受け具27の係止孔32から抜出不能となるため、図8(a)に示したように受け具27が保持具28によって保持された状態になる。
【0045】
上記構造の受け部材1bにおいても、受け部材1aの場合と同様に、受け具27の材質を保持具28や取付具29の材質と異なるものにすることで、受け部30に対し、保持具28や取付具29が備えていない特性が付与される。したがって、受け部材1bにおいても、搬送容器に収納されている物品に適した特性を受け部30に付与することにより、その物品を搬送容器内で適切に固定することができる。
また、受け部材1bにおいても受け部材1aの場合と同様に、受け具27を保持具28から簡単に取り外すことができるため、両者の材質が異なっている場合であってもリサイクル時の分別が容易である。
さらに、受け部材1bにおいても、搬送容器に用いられている底板26に対する取り付けと、その底板26からの取り外しが容易であるため、受け部材1aの場合と同様に、搬送容器内に設置する作業を効率良く行うことができる。
【0046】
また、保持具28をポリプロピレン製にした場合、係止爪21が破損し難いため、同一の保持具28に対して受け部30の形状並びに材質の異なる複数の受け具27を共通して取り付けることにより、製造コストの削減を図ることができる。
さらに、保持具28では、第1の嵌合部31の棒状突起31aが、円柱体又は円筒体からなる複数のピン37と、このピン37が上面に立設されたブロックからなる金型36を用いた真空成形によって容易に形成されるため、保持具28において第1の嵌合部31を形成する際に要するコストを削減できる。
なお、受け部材1bも受け部材1aの場合と同様に、受け具27の材質が、射出成形や真空成形が可能なものに限られないため、受け具27を熱可塑性エラストマー以外のものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、部品や製品を固定する目的で搬送容器を構成する板材に対して設置される部材として利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1a、1b…受け部材 2…受け具 2a…第1の面 2b…第2の面 2c、2d…側面 3…保持具 3a…第1の面 3b…第2の面 3c、3d…側面 3e、3f…側面 4…取付具 4a…第1の面 4b…第2の面 4c、4d…側面 4e、4f…側面 5…成形対象部 6…第1の結合部 6a…座板 7…肉盗み 8…突設部 8a、8b…側面板 8c…上面板 8d…補強板 9、10…突起部 10a…直線部分 10b、10c…突状部分 11a、11b…貫通孔 12…開口部 12a…係止部 13…第2の結合部 13a…座板 13b…スリット 14a…スリット 14b…係止片 15…係合爪 15a…肉厚部 16…平面部 17…係合部 17a…幅広部 17b…幅狭部 17c…係止端面 18…第3の結合部 18a…座板 18b…切り欠き 18c…内壁面 19…棒状体 20…第1の嵌合部 20a…内面 21…係止爪 21a…平面部 21b…接続部 21c…係止部 22a…肉厚部分 22b…肉薄部分 23…受け部 24…係止孔 25…第2の嵌合部 26…底板 26a…貫通孔 26b…開口部 27…受け具 27a…第1の面 27b…第2の面 27c、27d…側面 28…保持具 28a…第1の面 28b…第2の面 28c、28d…側面 29…取付具 29a…第1の面 29b…第2の面 29c、29d…側面 30…受け部 30a…内面 31…第1の嵌合部 31a…棒状突起 32…係止孔 33…プリフォーム 34…熱成形装置 35…プラグ 36…金型 37…ピン
【要約】
【課題】物品を支持する部分の材質と搬送容器への取り付けに用いられる部分の材質が異なる搬送容器用受け部材を提供する。
【解決手段】受け部材1aは、搬送容器に収納されている部品や製品を支持するための受け具2と、この受け具2を保持する保持具3と、この保持具3を搬送容器の底板などに固定する際に用いられる取付具4を備えている。保持具3及び取付具4は熱可塑性樹脂の射出成形によって形成されて平面視略矩形状をなす板材からなり、真空成形が施される成形対象部5と、この成形対象部5の外側に設けられて、上述の矩形を構成する平行な2辺に対応する側面3c、3d又は側面4c、4dをそれぞれ有する第1の結合部6及び第2の結合部13を備えており、保持具3の成形対象部5には受け具2の受け部23と嵌合可能な第1の嵌合部が設けられ、取付具4の成形対象部5には保持具3の第1の嵌合部と嵌合可能に第2の嵌合部25が設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
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図9
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図11