(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】フライヤー
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
A47J37/12 331
(21)【出願番号】P 2024140040
(22)【出願日】2024-08-21
【審査請求日】2024-08-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315002601
【氏名又は名称】クールフライヤー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】福田 弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 澄人
(72)【発明者】
【氏名】山田 光二
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-321274(JP,A)
【文献】特開2018-050985(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0111525(KR,A)
【文献】特開2001-145574(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0139207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽内に溜めた揚げ油をヒータで加熱して、当該油槽内に投入した食材の揚げ調理を行うフライヤーであって、
前記ヒータが配設されると共に食材の揚げ調理が行われる上部油槽と、
前記上部油槽の下部に当該上部油槽に連続して設けられ、油槽内で発生した揚げカスを前記揚げ油と一緒に排出する排出口を最深部に有すると共に当該排出口に向けて傾く複数の傾斜底板を有する下部油槽と、
前記下部油槽の周囲に設けられると共に冷却水が満たされ、当該下部油槽内の揚げ油を強制的に冷却する水冷ジャケットと、
前記排出口に繋がる排出流路の開閉を行う排出弁と、
前記排出弁を通して前記油槽から流下する揚げ油を貯留するリザーブタンクと、
注油ポンプを有すると共に前記リザーブタンク内の揚げ油を前記下部油槽に注油する戻し流路と、を備え、
前記リザーブタンクは、当該リザーブタンクに流入する揚げ油から揚げカスを除去するフィルターを上部に有すると共に、
当該リザーブタンク内の底板は揚げ油の溜り部となる最深部に向けて傾斜しており、
前記戻し流路に通じる吸い上げ管が前記溜り部に配置されると共に、前記吸い上げ管の先端は前記リザーブタンクの底板から離間して配置されていることを特徴とするフライヤー。
【請求項2】
前記リザーブタンクはキャスターを有して前記油槽の下方から引き出し自在であると共に、前記吸い上げ管は
前記リザーブタンクに対して着脱自在であることを特徴とする請求項1記載のフライヤー。
【請求項3】
前記フィルターは前記リザーブタンクに対して着脱自在であることを特徴とする請求項1記載のフライヤー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物の調理に用いるフライヤーに係り、特に、油槽の深さ方向の中ほどに揚げ油を加熱するためのヒータが設けられたフライヤーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフライヤーとしては、揚げ油を貯留する油槽の深さ方向の中ほどにヒータを配置し、当該ヒータより上方の上部油槽を高温部として、当該上部油槽で揚げ物の調理を行う一方、当該ヒータより下方の下部油槽を低温部として、揚げ物調理で油中に生じた水分や揚げカスを当該下部油槽に沈降させ、捕集するように構成したものが知られている。
【0003】
特に、特許文献1には前記下部油槽の全体を外部から覆う水冷ジャケットを設けて、当該下部油槽を強制的に冷却するフライヤーが開示されている。このフライヤーでは前記水冷ジャケットの冷却効果によって前記下部油槽内の油温が摂氏60度以下に抑え込まれるので、高温の上部油槽において食材から放出された水分は揚げ油との比重の相違によって前記下部油槽まで沈降すると、気化することなく当該下部油槽に保持されることになる。このため、揚げ油の沸き立ちによる油跳ねが抑制されて、前記下部油槽に対する揚げカスの沈降を促進することができる他、厨房の油汚れを軽減することが可能となる。また、油槽内における水分の気化が可及的に防止されるので、揚げ油の酸化に伴う劣化を効果的に防止することができ、揚げ油の交換サイクルを長期化することができるといった効果も認められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大量の揚げ調理を連続的に行う業務用のフライヤーの多くでは、油槽の清掃と揚げ油の繰り返し使用を可能とするため、筐体内の油槽下部に油回収タンクが設けられている。例えば、一日の調理業務の終了後に、油槽の揚げ油の全量を前記油回収タンクに排出することにより、空になった油槽の清掃を行うことが可能となる。そして、清掃の完了後に前記油回収タンク内の揚げ油を油槽に戻すことで、揚げ油を繰り返し使用しての揚げ調理を行うことができる。
【0006】
この点に関し、特許文献1に開示されるフライヤーでは、前述したように食材から放出された水分を気化させることなく下部油槽に保持し易くなっていることから、前記油槽から前記油回収タンクに排出された揚げ油には多くの水分が保持されていることになる。このため、前記清掃作業の完了後に前記油回収タンクの揚げ油の全量を油槽に戻したのでは、当該揚げ油内に捕集している水分までも油槽に戻すことになってしまう。前記リザーブタンクから油槽に揚げ油を注ぐ過程で当該揚げ油は攪拌されてしまうので、その状態から再度油槽内の揚げ油を加熱すると、揚げ油に混ざった水分が気化してしまい、揚げ油の劣化を促進してしまう懸念がある。
【0007】
また、揚げ油の繰り返し使用回数を高めるために、油槽から油回収タンクに揚げ油を排出する際に濾過器を通過させ、当該濾過機によって揚げカスを除去することも行われている。揚げ油中に浮遊する細かな揚げカスを前記濾過機によって漉し取るには、当該濾過機におけるフィルターの目を十分に細かくする必要があるが、フィルターの目を細かくすると、揚げ油が当該フィルターを通過するのに多くの時間を要し、その分だけ清掃作業に時間が必要になってしまう。加えて、揚げ油中に含まれる水分は前記フィルターによっては取り除かれず、油回収タンク内で揚げ油と攪拌されてしまう懸念は依然として存在した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、揚げ調理中に食材から放出された水分が気化することなく大量に揚げ油に含まれている場合であっても、当該水分を油槽に戻すことなくリザーブタンクに捕集することが可能であり、揚げ油の繰り返し使用においても当該揚げ油の酸化劣化を防止することが可能なフライヤーを提供することにある。
【0009】
すなわち本発明は、油槽内に溜めた揚げ油をヒータで加熱して、当該油槽内に投入した食材の揚げ調理を行うフライヤーであって、前記ヒータが配設されると共に食材の揚げ調理が行われる上部油槽と、前記上部油槽の下部に当該上部油槽に連続して設けられ、油槽内で発生した揚げカスを前記揚げ油と一緒に排出する排出口を最深部に有すると共に当該排出口に向けて傾く複数の傾斜底板を有する下部油槽と、前記下部油槽の周囲に設けられると共に冷却水が満たされ、当該下部油槽内の揚げ油を強制的に冷却する水冷ジャケットと、前記排出口に繋がる排出流路の開閉を行う排出弁と、前記排出弁を通して前記油槽から流下する揚げ油を貯留するリザーブタンクと、注油ポンプを有すると共に前記リザーブタンク内の揚げ油を前記下部油槽に注油する戻し流路と、を備えている。そして、前記リザーブタンクは、当該リザーブタンクに流入する揚げ油から揚げカスを除去するフィルターを上部に有すると共に、当該リザーブタンク内の底板は揚げ油の溜り部となる最深部に向けて傾斜しており、前記戻し流路に通じる吸い上げ管が前記溜り部に配置されると共に、前記吸い上げ管の先端は前記リザーブタンクの底板から離間して配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リザーブタンクの底板は最深部となる溜り部に向けて傾斜していることから、油槽から前記リザーブタンクに揚げ油を排出すると、当該揚げ油に含まれる水分は前記リザーブタン内において徐々に前記溜り部に集まってくる。また、前記リザーブタンクから揚げ油を前記油槽に戻すための吸い上げ管の先端は前記溜り部において底板から離して配置されているので、注油ポンプを駆動して揚げ油を前記リザーブタンクから吸い上げた場合に、揚げ油の一部は油槽に戻されることなくリザーブタンクに残される。これにより、リザーブタンクの揚げ油に含まれる水分は前記溜り部に集められた状態で、前記吸い上げ管によって吸い上げられることなく当該溜り部に残ることになる。
【0011】
すなわち、水分を含んだ揚げ油を油槽からリザーブタンクに一時的に排出し、再度リザーブタンクから揚げ油を油槽に注油すれば、当該揚げ油中に含まれる水分をリザーブタンクに捕集することができ、揚げ油の繰り返し使用によっても当該揚げ油の酸化による劣化を可及的に防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を適用したフライヤーの実施形態の一例を示す概略断面図である。
【
図2】実施形態のフライヤーの制御系を示すブロック図である。
【
図3】実施形態のフライヤーのリザーブタンクを示す正面図である。
【
図4】実施形態のフライヤーのリザーブタンクを示す側面図である。
【
図5】実施形態のフライヤーのリザーブタンクを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明のフライヤーを詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明を適用した業務用フライヤーの一例を示している。このフライヤー1は飲食店舗の厨房などで使用される自立タイプのフライヤーであり、約18リットルの揚げ油10を油槽に投入して揚げ調理を行うことが可能である。
【0015】
このフライヤー1は、揚げ油を溜める油槽2と、この油槽2を支える筐体3と、前記油槽2の下方で前記筐体3内に収容されたリザーブタンク4と、前記油槽2から前記リザーブタンク4へ揚げ油を排出するための排出流路5と、を備えている。前記排出流路5には排出弁6が設けられており、この排出弁6を開放することで前記油槽2内の揚げ油が自重によって前記リザーブタンク4へ流動するように構成されている。
【0016】
また、前記排出流路5から前記リザーブタンク4へ揚げ油を排出する経路の途中には網状のフィルター7が設けられており、前記リザーブタンク4へ流動する揚げ油は前記フィルター7を通過する際に揚げカスが当該フィルター7に捕集される。前記フィルターの目の粗さとしては、20~50メッシュのものが適用でき、更には30~40メッシユのものが好ましい。フィルターを形成しているワイヤーの線径にもよるが、例えば50メッシュの網目の大きさは0.279mm程度であり、細かな粒子状の揚げカスは前記フィルターを通過してしまう。このようにフィルター7の目を粗くして大きな揚げカスのみを補修している理由は、当該フィルター7を通過する揚げ油10の単位時間当たりの流量を大きく設定し、前記油槽2内の揚げ油10を迅速にリザーブタンク4へ排出するためである。このリザーブタンク4の詳細については後述する。
【0017】
前記油槽2は、揚げ調理が行われる上部油槽2aと、この上部油槽2aの下部に当該上部油槽2aと連続して設けられた下部油槽2bと、から構成されている。前記上部油槽2a内には揚げ油を加熱するヒータ8が設けられており、当該ヒータ8に通電することで上部油槽2a内の揚げ油を任意の温度に加熱することが可能となっている。一方、前記下部油槽2bは最深部に前記排出流路5に接続される排出口が設けられている。前記排出口の周囲には当該排出口に向けて傾いた複数の傾斜底板20が配置されており、これら傾斜底板20が連なって前記油槽2の底板を構成している。図示した例では、四枚の傾斜底板20が前記排出口に周囲に配置されることで、油槽2の底板は逆四角錘の形状をなしている。
【0018】
また、前記上部油槽2aの周囲は断熱材21によって覆われる一方、前記下部油槽2bの周囲には冷却水を充たした水冷ジャケット22が設けられている。このため、前記ヒータ8に通電すると、当該ヒータ8が設けられると共に前記断熱材21に覆われた上部油槽2a内の揚げ油10は高温(例えば180℃)に加熱される一方、下部油槽2b内の揚げ油10は前記水冷ジャケット22によって強制的に冷却され、当該下部油槽2b内の揚げ油10の温度は100℃未満の低温(例えば60℃)に保たれる。尚、図示はしていないが、前記水冷ジャケット22には冷却水の供給パイプ及び排出パイプが接続されており、下部油槽2bの冷却によって昇温した冷却水を外部へ排出すると共に、低温の新たな冷却水を供給できるようになっている。
【0019】
食材の揚げ調理はヒータ8によって揚げ油が加熱される前記上部油槽2a内で行われる。一方、揚げ調理中に食材から揚げ油中に放出された水分や揚げカスは前記上部油槽2aから前記下部油槽2bに沈降する。前述の如く、前記下部油槽2b内の揚げ油10は100℃未満の低温に保たれているため、下部油槽2b内に達した水分は気化することなく前記傾斜底板20の近傍にまで沈降する。また、前記下部油槽2b内の揚げ油10の温度は前記上部油槽2a内のそれと比べて著しく低いので、前記下部油槽2bから前記上部油槽2aに揚げ油が対流することはなく、前記下部油槽2bに沈降した揚げカスは前記上部油槽2aへ上昇することなく、前記複数の傾斜底板20の上に堆積する。
【0020】
一方、前記リザーブタンク4と前記油槽2の間には戻し流路40が設けられており、注油ポンプ41を駆動することで前記リザーブタンク4内に存在する揚げ油10を前記油槽2へ適宜注油することが可能となっている。前記戻し流路40は前記ヒータ8よりも下方で前記油槽2に接続されており、より具体的には下部油槽2bの傾斜底板20の上端よりも上方で、前記上部油槽2aと前記下部油槽2bの境界部に接続されている。
【0021】
図2はこのフライヤー1の制御系を示すブロック図である。このフライヤー1は交流電源から電力を供給される電源部11を備えており、マイクロプロセッサーを内蔵した制御部12は前記電源部11から電力を受けて前記注油ポンプ41、前記ヒータ8、前記排出弁6の動作をコントロールしている。また、前記制御部12には前記上部油槽2a内の揚げ油10の温度を測定する温度センサ13が接続されており、前記制御部12は前記温度センサ13の出力信号を所定時間毎に参照しながら、前記上部油槽2a内の揚げ油10が所定温度(例えば180℃)に保たれるように、予め格納されたプログラムに従って前記ヒータ8へ供給する電力を前記電源部11に指令する。
【0022】
前記制御部12にはユーザーインターフェースとしての操作パネル14が接続されている。この操作パネル14には、調理温度の入力を行うUPボタン15及びDOWNボタン16や、上部油槽2a内の揚げ油10の現在温度及び前記UPボタン15及びDOWNボタン16を用いて設定された調理温度を示す表示部17が備えられている。
【0023】
また、前記操作パネル14には、前記油槽2内の揚げ油10の全量を前記リザーブタンク4への排出を指示する抜き取りボタン18が設けられる一方、空状態の前記油槽2を前記リザーブタンク4内の揚げ油10で満たす注油ボタン19が設けられている。前記抜き取りボタン18は例えば油槽2を空にして当該油槽2の清掃を行いたい場合に操作され、当該ボタン18が操作されると前記排出弁6が開放されて、前記油槽2内の揚げ油10の全量が前記リザーブタンク4に排出される。前記注油ボタン19はリザーブタンク4内の揚げ油10を空の油槽2に移したい場合に操作され、当該ボタン19が操作されると、前記注油ポンプ41が起動されて、前記リザーブタンク4内の揚げ油10の略全量が前記油槽2に注がれ、前記油槽2を揚げ油10で満たすことができる。
【0024】
更に、前記油槽2内の使用済み揚げ油10を新しい油に入れ替える場合には、前記抜き取りボタン18の操作によって使用済み揚げ油10をリザーブタンク4に排出した後に、当該リザーブタンク4内の揚げ油を新たな揚げ油に交換し、更に前記注油ボタン19を操作することで前記油槽2を新たな揚げ油10で満たすことができる。これにより、ユーザーは揚げ油10の入った重たい容器を持ち上げることなく、当該揚げ油10の交換作業を容易に行うことが可能となる。
【0025】
前記操作パネル14には、前記油槽2における揚げ調理の実行中に下部油槽2bに堆積した揚げカスを油槽2外に排出する揚げカス排出ボタン30が設けられている。ユーザーがこの揚げカス排出ボタン30を操作すると、前記制御部12は前記排出弁6を所定時間だけ開放し、前記下部油槽2b内の揚げ油10が所定量(例えば4リットル程度)だけ前記リザーブタンク4へ向けて排出される。また、これに伴って前記制御部12は前記注油ポンプ41を起動し、前記リザーブタンク4内の揚げ油10を前記油槽2に注油する。
【0026】
図3乃至
図5は前記リザーブタンク4の詳細を示す図である。
【0027】
前記リザーブタンク4は底面にキャスター42を備えた矩形状に形成されると共に、正面にはハンドル43が設けられており、大量の揚げ油を貯留した状態で前記筐体3の下方から容易に引き出すことが可能となっている。前記リザーブタンク4の容量は前記油槽2内の揚げ油10の全量よりも大きく設定されており、この実施形態では約26リットルに設定されている。前記リザーブタンク4の上部中央には前述したフィルター7が設けられており、前記油槽2から排出された揚げ油10はフィルター7を通過してリザーブタンク4内に流入し、当該フィルター7によって揚げカスが捕集される。前記フィルター7には持ち手70が設けられており、当該フィルター7のみをリザーブタンク4から取り外して捕集した揚げカスの廃棄処理を行うことができるようになっている。
【0028】
前記リザーブタンク4内の底板は、
図3の正面図に示すように当該リザーブタンク4の左方向へ傾斜した底板44aと、
図4の側面図に示すように当該リザーブタンク4の正面方向へ傾斜した底板44bと、
図5の平面図に示すように当該リザーブタンク4の正面側の左端に設けられた水平な底板44cとから構成されている。前記底板44cは前記リザーブタンク4の最深部であり、当該リザーブタンク4内の揚げ油10が最初に溜り、また最後まで溜まっている溜り部45として機能している。すなわち、当該リザーブタンク4内の揚げ油10は量が減ってくると、前記底板44a,44bの上を流動して前記溜り部45に集まってくる。
【0029】
前記リザーブタンク4の内部には前記戻し流路40に通じる吸い上げ管46が挿し込まれている。この吸い上げ管46は前記溜り部45に配置されると共に、当該吸い上げ管46の先端は前記リザーブタンク4の底板44cから離間して配置されており、前記注油ポンプ41が起動した場合でも、当該リザーブタンク4内の揚げ油は完全には吸い上げられず、前記溜り部に僅かな揚げ油が残る構造となっている。また、前記吸い上げ管46は前記リザーブタンク4に対して着脱自在であり、当該リザーブタンク4を前記筐体3から手前に引き出す際には、当該リザーブタンク4から取り外される。
【0030】
また、前記リザーブタンク4には前記揚げカス排出ボタン30を操作した際に前記下部油槽2bに注油される分の揚げ油10が常に保持されており、かかる揚げ油10は前記溜り部45に存在している。このことから、前記リザーブタンク4の容量は前記油槽2の容量よりも大きく設定されている。
【0031】
既に説明したように、前記抜き取りボタン18又は前記揚げカス排出ボタン30が操作された際には、前記油槽2内の揚げ油10がリザーブタンク4に排出されることになり、その際に下部油槽2b内の傾斜底板20に堆積していた揚げカスは揚げ油10と一緒に油槽2から排出される。排出された揚げ油10に混ざっている比較的大きな揚げカスは前記フィルター7によって補修されるが、微細な揚げカスや水分は前記フィルター7に捕集されることなく揚げ油10に混ざった状態で前記リザーブタンク4に流入する。
【0032】
揚げ油に混じった微細な揚げカスや水分は、当該揚げ油10を前記リザーブタンク4内に貯留することにより、前記リザーブタンク4の底板の上に沈殿する。例えば、一日の業務終了後にユーザーが操作パネル14の抜き取りボタン18を押圧すると、揚げ油10が油槽2からリザーブタンク4へ排出され、同時に前記注油ポンプ41が所定時間だけ駆動されて、前記リザーブタンク4から前記油槽2へ循環させた揚げ油で当該油槽2の洗浄が実施される。前記リザーブタンク4に排出された揚げ油10は翌朝までそのままリザーブタンク4内に保持しておけば、翌日の業務開始時には微細な揚げカスと水分はリザーブタンク4の底板の上に沈殿していることになる。この際、揚げカスは前記リザーブタンクの底板44a,44b,44cの上に堆積することになるが、底板44a,44bは傾斜していることから、揚げ油よりも比重が大きな水分は底板44a,44bの上を流動して,リザーブタンク4の最深部である底板44cの上に溜まることになる。
【0033】
ユーザーは翌日の業務開始時に、前記操作パネル14の注油ボタン19を押圧して前記リザーブタンク4内の揚げ油10を油槽2に戻すことができる。この際、前記注油ポンプ41が動作すると、前記リザーブタンク4内の揚げ油は前記溜り部45に配置された吸い上げ管46によって前記戻し流路40に吸い出され、当該戻し流路40を経て油槽2に注がれる。
【0034】
その一方、前記リザーブタンク4から揚げ油10を前記油槽2に戻すための吸い上げ管46は、その先端が前記底板44cから離間しており、前記吸い上げ管46と前記底板44cとの間には所定の距離(例えば5mm)が設けられている。このため、前記注油ポンプ41を駆動して揚げ油10を前記リザーブタンク4から吸い上げた場合に、少なくとも前記溜り部45に存在する揚げ油10の一部は油槽2に戻されることなくリザーブタンク4に残される。これにより、前記リザーブタンク4の揚げ油10に含まれる水分は前記溜り部45に集められた状態で、前記吸い上げ管46によって吸い上げられることなく当該溜り部45に残ることになる。
【0035】
すなわち、本実施形態のフライヤー1では、水分を含んだ揚げ油10を油槽2からリザーブタンク4に一時的に排出し、それをある程度の時間間隔を経た後にリザーブタンク4から油槽2に注油すれば、当該揚げ油10中に含まれる水分はリザーブタンク4の溜り部に残存して、水分を取り除いた揚げ油のみをリザーブタンク4から油槽2に注油することが可能となる。
【0036】
特に、本実施形態のフライヤー1は前記下部油槽2bを水冷ジャケット22で囲むことにより、揚げ調理中に食材から揚げ油10中に放出された水分を気化させることなく下部油槽2bに捕集し易い構造となっており、その分だけ前記油槽から前記リザーブタンクに排出された揚げ油には多くの水分が含まれることになる。このため、前述の如く、揚げ油10中に含まれる水分をリザーブタンク4の溜り部に残存させながら、当該水分を取り除いた揚げ油のみをリザーブタンク4から油槽2に注油することができれば、食材から放出された水分を油槽2内で気化させることなく積極的にリザーブタンク4に集めることが可能となる。その結果、油槽内における水分の気化を防止して揚げ油の酸化による劣化を可及的に防止することが可能となり、揚げ油のライフサイクルを延長して、揚げ調理のコストダウンを図ることが可能となる。
【0037】
また、前記リザーブタンク4の底板44a,44b,44cに堆積した微細な揚げカスについても、前記吸い上げ管の先端が前記底板44cと離間していることから、かかる微細な揚げカスが揚げ油と一緒に油槽へ注油されてしまうこともない。
【0038】
以上説明してきたように、本発明のフライヤー1によれば、油槽2で揚げ調理に使用された揚げ油10を一時的にリザーブタンク4へ排出し、更に当該リザーブタンク4から油槽2に再度注油することにより、揚げ調理中に食材から揚げ油10中に放出された水分を前記リザーブタンク4に取り除くことが可能となり、揚げ調理中における揚げ油10の酸化劣化を可及的に防止して、揚げ油10の交換までのライフサイクルを長期化して揚げ調理のコストダウンを図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1…フライヤー、2…油槽、2a…上部油槽、2b…下部油槽、10…揚げ油、3…筐体、4…リザーブタンク、5…排出流路、6…排出弁、7…フィルター、8…ヒータ、17…表示部、18…抜き取りボタン、19…注油ボタン、30…揚げカス排出ボタン、40…戻し流路、41…注油ポンプ、44a,44b,44c…底板、45…溜り部、46…吸い上げ管
【要約】
【課題】
揚げ調理中に食材から放出された水分が気化することなく大量に揚げ油に含まれている場合であっても、当該水分を油槽に戻すことなくリザーブタンクに捕集することが可能であり、揚げ油の繰り返し使用においても当該揚げ油の酸化劣化を防止することが可能なフライヤーを提供する。
【解決手段】
上部油槽で揚げ調理を行う一方、下部油槽は水冷ジャケットによって強制的に冷却されたフライヤーであって、前記下部油槽から排出された揚げ油を貯留するリザーブタンクと、前記リザーブタンク内の揚げ油を前記下部油槽に注油する戻し流路とを備え、前記リザーブタンクは、揚げ油から揚げカスを除去するフィルターを上部に有すると共に、当該リザータンク内の底板は揚げ油の溜り部となる最深部に向けて傾斜しており、前記戻し流路に通じる吸い上げ管が前記溜り部に配置されると共に、前記吸い上げ管の先端は前記リザーブタンクの底板から離間して配置されている。
【選択図】
図1