(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】精子選別補助装置、精子選別補助システム、及び精子選別補助プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20241101BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G01N33/50 J
G01N33/483 C
(21)【出願番号】P 2024154442
(22)【出願日】2024-09-09
【審査請求日】2024-09-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524335729
【氏名又は名称】株式会社アークス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】棚瀬 将康
(72)【発明者】
【氏名】丸山 裕也
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/248958(WO,A1)
【文献】特表2024-531856(JP,A)
【文献】特開2022-38852(JP,A)
【文献】国際公開第2020/138279(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/090947(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2022/0156922(US,A1)
【文献】国際公開第2021/160347(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0329116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
G02B 21/00 - 21/36
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する指標算出部と、
前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、前記動画像における前記第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する評価部と、
前記動画像における前記第1の時間間隔において、前記第1の精子に対して、当該第1の精子の前記少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、前記評価部によって評価された前記第1の精子と前記第2の精子との相対的な品質の評価を表示する表示制御部と、
を備える、精子選別補助装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記算出した指標に基づいて、前記第1の時間間隔中に認識される前記第1の精子を含む複数の精子の相対的な品質の優劣をさらに評価する、
請求項1に記載の精子選別補助装置。
【請求項3】
前記第1の精子は、前記複数の精子において相対的に品質が優れていると評価された精子である、
請求項2に記載の精子選別補助装置。
【請求項4】
前記指標算出部が算出した前記少なくとも1つの指標を記憶する記憶部をさらに備え、
前記評価部は、前記指標算出部が算出して、前記記憶部に記憶された、前記第2の精子の前記少なくとも1つの指標を参照して前記第1の精子と前記第2の精子との相対的な評価を実施する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の精子選別補助装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記第1の精子と、前記記憶部に前記少なくとも1つの指標が記憶された複数の精子との相対的な評価を実施する、
請求項4に記載の精子選別補助装置。
【請求項6】
前記評価部は、さらに、前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記第1の精子と、前記動画像における前記第1の時間間隔及び前記第2の時間間隔とは異なる第3の時間間隔中に認識される第3の精子との品質を相対的に評価する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の精子選別補助装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記第1の精子に対して前記少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示した動画像と、前記少なくとも1つの指標に関する情報を表示しない動画像と、を切り替えて表示可能である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の精子選別補助装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの指標は、精子の運動性、精子の形態性、及び精子のDNA断片化の発生の程度の少なくとも1つ、又はこれら2種以上から算出されたものである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の精子選別補助装置。
【請求項9】
精子を観察した動画像を撮像する撮像装置と、請求項1~3のいずれか1項に記載の精子選別補助装置と、を備える、
精子選別補助システム。
【請求項10】
コンピュータを、
動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する指標算出部と、
前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、前記動画像における前記第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する評価部と、
前記動画像における前記第1の時間間隔において、前記第1の精子に対して、当該第1の精子の前記少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、前記評価部によって評価された前記第1の精子と前記第2の精子との相対的な品質の評価を表示する表示制御部と、
として機能させる、精子選別補助プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精子選別補助装置、精子選別補助システム、及び精子選別補助プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
不妊治療の1つとして、精子を直接卵子細胞質内に注入して受精させる卵細胞質内精子注入法(ICSI)が開発され、実用化されている。ICSIでは、精子及び卵子を顕微鏡で観察しながら、精子の不動化、精子の吸入、及び精子の卵子への注入等の作業が行われるため、ICSIは顕微授精とも呼ばれている。
【0003】
ICSIの成功率を高めるためには、精子を選別して受精に適した良好な精子を卵子に注入することが重要である。しかしながら、選別作業によって得られる精子が良好か否かは、作業者である胚培養士の経験によるところが大きく、胚培養士間で受精成功率に格差が生じやすい。したがって、客観的に良好な精子を選択するための技術が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、顕微授精の際に良好な精子を選択することを補助する顕微鏡システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、現在のところ、顕微授精を支援するための技術は開発途上である。本発明は、検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子を選択することを可能とする精子選別補助装置、精子選別補助システム、及び精子選別補助プログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る精子選別補助装置は、動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する指標算出部と、少なくとも1つの指標に基づいて、動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、動画像における第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する評価部と、動画像における第1の時間間隔において、第1の精子に対して、第1の精子の少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価部によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価を表示する表示制御部と、を備える。
【0008】
かかる精子選別補助装置は、動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子に対して、動画像における第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子に対する相対的な品質の評価を表示する。このため、同一の時間間隔内に存在する精子同士を比較することで精子選別を行う場合よりも、より客観的な精子の品質評価を行うことができる。したがって、検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子を選択することを可能とする。
【0009】
本開示の一側面に係る精子選別補助システムは、精子を観察した動画像を撮像する撮像装置と、本開示の一側面に係る精子選別補助装置と、を備える。
【0010】
本開示の一側面に係る精子選別補助プログラムは、コンピュータを、動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する指標算出部と、少なくとも1つの指標に基づいて、動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、動画像における第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する評価部と、動画像における第1の時間間隔において、第1の精子に対して、第1の精子の少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価部によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価を表示する表示制御部と、として機能させる。
【0011】
かかる精子選別補助システム及び精子選別補助プログラムは、動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子に対して、動画像における第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子に対する相対的な品質の評価を表示する。このため、同一のフレーム内に存在する精子同士を比較することで精子選別を行う場合よりも、より客観的な精子の品質評価を行うことができる。したがって、検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子を選択することを可能とする。
【0012】
なお、本開示の一側面に係るプログラムは、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワーク等を介してダウンロードすることにより、コンピュータ及び/又は装置にインストール又はロードすることができる。
【0013】
また、本明細書等において、「部」とは、単に物理的構成を意味するものではなく、その構成が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの構成が有する機能が2つ以上の物理的構成により実現されても、2つ以上の構成の機能が1つの物理的構成により実現されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子を選択することを可能とする精子選別補助装置、精子選別補助システム、及び精子選別補助プログラム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る精子選別補助システムの全体概念図である。
【
図2】本実施形態に係る精子選別補助装置の機能ブロック図の一例である。
【
図3】本実施形態に係る精子選別補助装置の取得部が取得する動画像の概念図である。
【
図4】本実施形態に係る精子選別補助装置の記憶部における精子の指標を記憶したデータベースの一例を示すである。
【
図5】本実施形態に係る精子選別補助装置により表示が付された動画像の概念図である。
【
図6】本実施形態に係る精子選別補助装置により生成される動画像の切り替えを示す概念図である。
【
図7】本実施形態に係る精子選別補助装置の物理的構成の一例である。
【
図8】本実施形態に係る精子選別方法の工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0017】
[精子選別補助システム]
図1を参照して、本実施形態に係る精子選別補助システム1について説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る精子選別補助システム1の全体概念図である。
【0018】
本実施形態に係る精子選別補助システム1は、本実施形態に係る精子選別補助装置10と、精子を観察した動画像を撮像する撮像装置20、を備える。精子はサンプルSに含まれる。
【0019】
サンプルSは、顕微授精の実施を希望する患者又は被験者等から取得された精子を含む。サンプルSは、精子の他、精子の培養液、又は精子の運動を抑制する高粘性液体(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)溶液)等を含んでいてよい。サンプルSは、例えばガラス製又は樹脂製等のディッシュに配置されていてよい。
【0020】
撮像装置20は、サンプルSを観察した撮像動画像を取得する。
図1において、撮像装置20は、サンプルSの鉛直上方向から平面視で撮像しているが、撮像装置20は、サンプルS中の精子を含む動画像を取得することができればよく、必ずしもサンプルSの鉛直上方向に設けられなくてもよい。撮像装置20は、サンプルSを拡大観察し、サンプルS中の一部の精子を撮像する。
【0021】
撮像装置20は、例えばCCDカメラやCMOSセンサーを備えた撮像装置により構成されてよい。撮像装置20は、光学顕微鏡を介してサンプルSを撮像してもよい。光学顕微鏡による観察法としては、特に限定されないが、明視野観察法、暗視野観察法、位相差観察法、偏光観察法、紡錘体観察法、微分干渉観察法、及びレリーフコントラスト観察法等が挙げられる。また、対物レンズの倍率も適宜調整すればよく、例えば、20倍、40倍、60倍等であってよい。撮像装置20はサンプルSに含まれる精子の動画像を取得する。この際、精子を解像度高く撮像するために、精子選別装置10が、撮像装置20及び/又は撮像装置20に取り付けられた顕微鏡システムの設定を調整してもよい。当該調整は、顕微授精の実施者が行ってもよい。
【0022】
なお、精子選別補助システム1は、顕微鏡システムを構成に含んでいてよい。この場合、サンプルSは顕微鏡のステージ上に配置され、撮像装置20は顕微鏡を介してサンプルSを拡大して撮像する。
【0023】
この場合、精子選別補助システム1は、サンプルSを配置するステージを電気的に駆動させる機構を備えていてよい。このような態様によれば、撮像装置20及び駆動機構を制御することにより、特定の精子を追跡しながら撮像を行うことができる。
【0024】
図1に示すように、精子選別補助装置10は、撮像装置20に接続されている。
図1では、精子選別補助装置10が撮像装置20と有線で接続されているが、これらは無線で接続されていてもよいし、物理的に一体化していてもよい。したがって、撮像装置20は、精子選別補助装置10の一部として、精子選別補助装置10に包含されていてもよい。
【0025】
精子選別補助装置10は、撮像装置20により取得された精子の動画像を解析することで精子選別を補助する。ただし、精子選別補助装置10は、別途撮像された精子の動画像を取得して、当該動画像に含まれる精子に対して精子選別の補助を実施してもよい。以下、精子選別補助装置10について詳述する。
【0026】
(精子選別補助装置)
図2は、精子選別補助装置10の機能ブロック図である。精子選別補助装置10は、取得部11、指標算出部12、記憶部13、評価部14、表示制御部15、及び認識部16を備える。精子選別補助装置10は、取得部11が取得した動画像に含まれる精子の品質に関わる指標を指標算出部12により算出する。算出した指標を記憶部13に記憶させると共に、記憶した指標に基づいて評価部14により精子の品質を評価する。品質を評価した精子について、指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価部14が評価した品質を表示制御部15により表示させる。なお、この際、認識部16が精子の認識、識別、及び/又は追尾を行う。これにより、精子選別補助装置10は、検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子を選択することを可能とする。
【0027】
取得部11は、撮像装置20が取得したサンプルの撮像動画像を取得する。撮像動画像は、少なくとも1つの精子を撮像した異なる時間間隔を2以上含む。取得部11は、撮像装置20が撮像している動画像をリアルタイムで取得してもよく、撮像装置20が過去に撮像した動画像を取得してもよい。過去に撮像した動画像は、精子が撮像されていない時間間隔を削除した編集された動画像であってよい。
【0028】
図3は、取得部11が取得する動画像の概念図である。
図3(A)に示すように、取得部11が取得する動画像は精子が撮像されている複数の時間間隔を含む。
【0029】
取得した動画像は、第1の精子が撮像された第1の時間間隔と、第2の精子が撮像された第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔とを少なくとも含む。動画像は、第3の精子が撮像された第1の時間間隔及び第2の時間間隔とは異なる第3の時間間隔をさらに含んでいてよい。
図3(A)では、動画像は、第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔を含む。したがって、動画像は精子が撮像された互いに異なる時間間隔を複数含んでいる。以下、第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔を含む複数の時間間隔を、互いに異なる複数の時間間隔と称することがある。また、以下では、
図3を参照して、第1の精子、第2の精子、及び第3の精子がそれぞれ撮像された第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔を含む動画像について説明するが、動画像は、第1の精子及び第2の精子をそれぞれ撮像した第1の時間間隔及び第2の時間間隔を含んでいればよいし、あるいは、さらに、第4、第5、第6等と追加の精子をそれぞれ撮像した追加の時間間隔を含んでいてよい。
【0030】
本明細書において、動画像の「時間間隔」とは、動画像の各フレームにより画定される時間間隔であり、1又は複数のフレームからなる。上記した時間間隔は、1以上のフレームからなる時間間隔であればよいが、好ましくは2以上のフレームからなる時間間隔である。時間間隔が2以上のフレームからなることにより、当該時間間隔から精子の動きを識別することができるため、精子の運動性に基づいて精子の品質を評価することができる。なお、時間間隔が1のフレームからなる場合は、少なくとも精子の形態に基づいて品質評価をすることができる。
【0031】
第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔の時間的な前後は特に限定されない。例えば、第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔の順に動画像の時刻が古くてよく、この場合、第1の時間間隔が最も過去に撮像された時間間隔である。また、第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔の順に動画像の時刻が新しくてもよく、この場合、第3の時間間隔が最も過去に撮像された時間間隔である。取得部11が動画像をリアルタイムで取得し、リアルタイムで精子の選別を実施するときは、第1の時間間隔は、
図3(A)に示すように最も新しく取得された時間間隔であることが好ましく、リアルタイムで取得されている動画像の時間間隔であることがより好ましい。また、この場合、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔は、第1の時間間隔よりも前に取得された時間間隔である。このような態様では、過去に撮像した第2の時間間隔及び第3の時間間隔に含まれる精子に基づいて、リアルタイムで撮像されている精子の品質を評価することができ、顕微授精の実施者(典型的には、胚培養士)による精子の選別をリアルタイムで補助することができる。
【0032】
なお、第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔の順に動画像の時刻が古く、第1の時間間隔が最も過去に撮像された時間間隔である場合、精子選別補助装置10は、過去に撮像された第1の精子の品質を、その後に撮像された第2の精子及び第3の精子に基づいて評価することとなる。この態様によれば、既に精子注入ツールで第1の精子を選択及び吸引した後に、当該第1の精子の品質を、その後撮像された精子に基づいて評価することができ、胚培養士による精子の選択の熟練度等を評価することができる。あるいは、第1の精子を卵子に注入した後に、注入した第1の精子の品質を、その後撮像された精子に基づいて評価することができる。この場合、例えば、第1の精子、第2の精子、及び第3の精子をそれぞれ卵子に注入した後に、それぞれの受精成功率、胚盤胞到達率、又は着床率の相対的な高さを評価することができる。
【0033】
第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔は、互いに異なる複数の時間間隔である。複数の時間間隔が互いに異なるとは、複数の時間間隔が同一のフレームを含まず、異なるフレームからなることを意味する。したがって、第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔は、重複した時間間隔を含まない。第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔は、互いの間に1フレーム以上の時間間隔が空いていてよい。第1の時間間隔、第2の時間間隔、及び第3の時間間隔は、それぞれ独立に、例えば0.5秒、1秒、2秒、5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、45秒、1分、2分、又は5分であってよい。
【0034】
図3(B)は、取得した動画像の第1の時間間隔に含まれる1フレームを切り出した画像を示す概念図である。同様に、
図3(C)及び
図3(D)は、取得した動画像の第2の時間間隔及び第3の時間間隔にそれぞれ含まれる1フレームを切り出した画像を示す概念図である。
【0035】
図3(B)に示すように、動画像の第1の時間間隔に含まれるフレーム41には、第1の精子41aと、その他の精子41b~41eとを含む複数の精子が撮像されている。第1の時間間隔に含まれる各フレームは、第1の精子41aを少なくとも含んでいればよく、第1の時間間隔に含まれる他のフレームは、精子41b~41eのいずれかを含まなくてよい。第1の精子41aが撮像視野中に存在しているフレームを第1の時間間隔としてもよく、第1の精子41aが撮像視野中に存在している複数のフレームからなる動画像の一部を切り取って第1の時間間隔としてもよい。
【0036】
図3(C)に示すように、動画像の第2の時間間隔に含まれるフレーム42には、第2の精子42aと、その他の精子41c及び42b~42cとを含む複数の精子が撮像されている。第2の時間間隔に含まれるフレーム42は、第1の時間間隔に含まれる精子41a~41eと同一と判断されない第2の精子42aを含む。第2の時間間隔に含まれるフレーム42は、第1の時間間隔に含まれるフレーム41において撮像される精子41cと同一と判断される精子41cを含んでいてもよい。
【0037】
なお、2つのフレームに含まれる精子が同一と判断されるとは、後述の認識部16によりそれらの精子が同一であると判断されることを意味する。なお、異なる時間間隔における2つの精子が同一であるか、異なるかを正確に判断することは困難である場合がある。したがって、認識部16により同一であると判断されない2つの精子について、実際にそれらの精子が同一であるか異なるかどうかは限定されない。すなわち、認識部16は、2つのフレームに含まれる精子が確実に同一であると判断できる場合にそれらの精子を同一と判断してもよい。認識部16は、例えば第1のフレームにおいて撮像される精子が、第1のフレームと第2のフレームとの間の各フレームにおいて常に動画像の撮像視野に存在した場合、当該精子が第2のフレームにおいても撮像されていると判断することができる。
【0038】
図3(D)に示すように、動画像の第3の時間間隔に含まれるフレーム43には、第3の精子43aと、その他の精子41cとを含む複数の精子が撮像されている。第3の時間間隔に含まれるフレーム43は、第1の時間間隔に含まれる精子41a~41e及び第2の時間間隔に含まれる精子42a~42cと同一と判断されない第3の精子43aを含む。第3の時間間隔に含まれるフレーム43は、第1の時間間隔に含まれるフレーム41において撮像される精子41cと同一と判断される精子41cを含んでいてもよい。また、第2の時間間隔に含まれるフレーム42において撮像される精子と同一と判断される精子を含んでいてもよい。
【0039】
したがって、取得した動画像において、第1の時間間隔に第2の精子及び/又は第3の精子が含まれないように、時間間隔、第1の精子、第2の精子、及び/又は第3の精子が選択されてよい。第2の時間間隔に第1の精子及び/又は第3の精子が含まれないように、時間間隔、第1の精子、第2の精子、及び/又は第3の精子が選択されてよい。第3の時間間隔に第1の精子及び/又は第2の精子が含まれないように、時間間隔、第1の精子、第2の精子、及び/又は第3の精子が選択されてよい。すなわち、異なる時間間隔において、各時間間隔において撮像された複数の精子の少なくとも1つが相違してよい。
【0040】
また、第1の精子、第2の精子、及び第3の精子は、互いに異なる精子であることが好ましいが、上述のとおり、異なる時間間隔における精子を正確に異なる精子であると判別することは困難である場合がある。したがって、第1の精子、第2の精子、及び第3の精子は、認識部16により互いが同一であると判断されていない精子であればよい。第1の精子、第2の精子、及び第3の精子は、互いに異なる精子であってよいが、これら3つの精子の2以上が同一の精子であってもよい。第1の精子、第2の精子、及び第3の精子の2以上が同一の精子であるとは、例えば、第2の時間間隔において撮像された第2の精子が撮像視野から外れ、その後の第1の時間間隔において当該第2の精子が撮像視野に戻り第2の精子と同一とは判断されずに第1の精子として認識されるような場合である。
【0041】
また、第1の時間間隔における撮像場所及び/又は撮像視野は、第2の時間間隔における撮像場所及び/又は撮像視野と変更されていてよい。この態様によれば、サンプルSの異なる場所における精子の相対評価を行うことができ、検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子をより客観的に選択することができる。
【0042】
取得部11は、後述の通信部10dにより実現されてよい。
【0043】
図2に戻って、指標算出部12は、動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する。精子の品質とは、顕微授精に用いた場合の受精成功率、胚盤胞到達率、着床率、及び/又は出産成功率等に関する各精子が有する性質を意味する。精子の品質が高いとは、顕微授精に用いた場合の受精成功率、胚盤胞到達率、着床率、及び/又は出産成功率等が相対的に高いことを意味する。
【0044】
精子の品質に関わる少なくとも1つの指標としては、特に限定されないが、例えば世界保健機関(WHO)が発行するWHOラボマニュアル第6版(WHO laboratory manual for the examination and processing of human semen; Sixth Edition)に記載の指標が挙げられる。そのような指標としては、例えば、精子の運動性、精子の形態性、及び精子のDNA断片化の発生の程度の少なくとも1つ、又はこれら2種以上から算出されたものが挙げられる。
【0045】
指標算出部12は、精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を種々の方法で算出してよい。例えば、精子の運動性は、所定の時間間隔における運動の速度、及び移動軌跡の直線性等により指標化することができる。指標算出部12は、所定の時間間隔において精子を追跡して、各フレームにおける精子の位置情報に基づいて運動の速度、直線速度、曲線速度、及び移動軌跡の直線性等を算出できる。精子の運動性は、精子の品質及び運動を教師データとして用いて学習させた学習モデルを用いて算出してもよい。指標算出部12は、サンプルSの調製方法、粘度、サンプルS中のポリビニルピロリドン(PVP)の濃度等の精子の運動性に影響する条件を受け付けて、当該条件に基づいて運動性の指標化を行ってもよい。
【0046】
精子の形態性は、各フレームにおいて撮像された精子の形態に基づいて指標化することができる。指標算出部12は、1つの精子について、複数のフレームに基づいて精子の形態性を指標化し、それらの値を平均して1つの指標として算出してもよい。精子の形態性は、例えば、精子の頭部の形状、尾部の形状、それらの欠損及びサイズのバランス等に基づいて指標化することができる。指標算出部12は、頭部空胞数、頭部縦横アスペクト比、及び/又は形態の異常部位と異常部位の個数等を算出し、これらの値に基づいて指標を算出してもよい。精子の運動性は、精子の品質及び形態を教師データとして用いて学習させた学習モデルを用いて算出してもよい。
【0047】
精子のDNA断片化の発生の程度は、所定の時間間隔における運動の速度、及び移動軌跡の直線性等の精子の運動や、各フレームにおいて撮像された精子の形態を総合的に考慮して指標化することができる。精子のDNA断片化の発生の程度は、精子のDNA断片化の発生の程度と、精子の運動及び/又は形態とを教師データとして用いて学習させた学習モデルを用いて算出してもよい。指標算出部12は、精子のDNAの損傷度合、及び/又は損傷個数等を算出し、これらの値に基づいて指標を算出してもよい。なお、精子のDNA断片化の発生の程度は、DNA断片化を生じている精子を選択的に染色した染色画像を用いて計測することができる。
【0048】
指標算出部12は、上記のような指標を2種以上考慮して、精子の品質を総合的に評価した指標を算出してもよい。指標算出部12は、精子の運動性、精子の形態性、及び精子のDNA断片化の発生の程度にそれぞれ関する指標を任意選択的に重み付けした後に平均した指標を算出してよい。その際、いずれかの指標が閾値を下回る場合には、算出する指標から一定数を減ずる罰則を与えてもよい。
【0049】
指標算出部12は、算出した指標を規格化してもよく、例えば、最低評価を0とし、最高評価を10又は100として規格化してもよい。
【0050】
指標算出部12は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されCPU10aにより実行されるプログラムにより実現されてよい。指標算出部12が算出した指標は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されてよく、通信部10dを介して、各部及び装置に送信されてよい。
【0051】
記憶部13は、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標を記憶する。
図4を参照して、記憶部13が記憶する情報について説明する。
図4は、記憶部13における精子の指標を記憶したデータベースの一例を示す図である。
【0052】
図4に示すように、記憶部13は、取得部11が取得した動画像において認識部16が認識し、指標算出部12が算出した指標を記憶する。動画像において認識部16が認識した精子に対して個別のIDが割り振られ、認識部16が認識した動画像における時刻及び/又は指標算出部12が指標の算出を完了した動画像における時刻が各IDに紐づけられて記憶される。
【0053】
また、指標算出部12が算出した指標についても、各IDに紐づけられて記憶される。なお、記憶部13は、指標算出部12が算出した全ての指標を記憶してもよいし、一部の指標のみを記憶してもよい。
【0054】
なお、
図4において、取得時刻が01:23:68であるIDがXXXのレコードと、取得時刻が02:20:13であるIDがXXXのレコードとは、同一のIDが付されている。これは、認識部16が、取得時刻が01:23:68である精子と、取得時刻が02:20:13である精子とが同一と判断したためである。このように一度動画像の撮像視野に入り指標が算出された精子が、動画像の撮像視野から外れた後に、再度撮像視野に戻った場合であっても、認識部16が同一の精子と判断した場合は同一のIDが付されてよい。なお、認識部16が同一の精子と判断しなかった場合は異なるIDが付されてよい。認識部16は複数の指標が一致する2つの精子を同一の精子と判断してよい。
【0055】
記憶部13は、後述のRAM10b又はROM10cにより実現されてよい。
【0056】
図2に戻って、評価部14は、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標に基づいて、動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、動画像における第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する。
【0057】
このように第1の精子の品質を、第2の精子との相対的な比較により実施することで、異なる時間間隔において撮像された2つの精子間の品質を評価し、同一の時間間隔内に存在する精子同士を比較することで精子選別を行う場合よりも、より客観的な精子の品質評価を行うことができる。
【0058】
具体的には、従来の精子選別補助装置は、例えば、顕微鏡における撮像視野に含まれる複数の精子間の比較を行い、その中で品質が相対的に高い精子を顕微授精の実施者に提示していた。しかしながら、そのような場合、撮像視野において品質が相対的に高い精子を選別することを補助することができるものの、その選別された精子が、検体に含まれる全精子中、どの程度の品質を有するかは不明である。本実施形態に係る精子選別補助装置10は、上記のように異なる時間間隔において認識される精子を基準として評価対象である精子の品質を評価することができるため、撮像視野内において品質が相対的に高い精子を選別するだけでなく、検体中の全精子内において品質が相対的に高い精子を選別する補助ができる。
【0059】
したがって、評価部14は、第1の精子を異なる時間間隔において撮像された精子と比較するだけでなく、同一の時間間隔内に存在する精子とも比較することが好ましい。すなわち、評価部14は、指標算出部12が算出した指標に基づいて、第1の時間間隔中に認識される第1の精子を含む複数の精子の相対的な品質の優劣をさらに評価することが好ましい。
【0060】
図3を参照して、評価部14における評価の例を説明する。評価部14は、
図3(B)に示す第1の時間間隔に含まれるフレーム41において撮像される第1の精子41aの評価を行う。この際、一実施形態において、評価部14は、第1の時間間隔中に認識される複数の精子41a~41dの相対的な品質の優劣を評価して、複数の精子41a~41dの中で相対的に品質が優れていると評価された精子を第1の精子として選択してよい。評価部14は、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標に基づいて、複数の精子41a~41dの品質の比較を行ってよい。例えば、指標算出部12が算出したいずれかの指標、好ましくは精子の運動性、精子の形態性、及び精子のDNA断片化の発生の程度の2種以上から算出された指標の大小に基づいて、品質の相対的な評価を行ってよい。あるいは、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標が所定の閾値を超える1又は複数の精子を第1の精子として選択してよい。なお、複数の精子が第1の精子として選択されるとき、選択された複数の精子のそれぞれについて、第2の精子との品質の相対評価を実施する。
【0061】
本明細書において、複数の精子において特定の精子の品質が優れていると判断する際の閾値は、母集団とする複数の精子の細胞数を基準として、上位50%以上、上位75%以上、若しくは上位90%以上としてもよいし、上位の5つ、上位の3つ、上位の2つ、若しくは上位の1つとしてもよい。あるいは、精子を提供した顕微授精の実施を希望する患者又は被験者の男性不妊症の診断結果に基づいて、閾値を設定し、特定の指標が当該閾値を超えた場合にその精子の品質が優れていると判断してもよい。あるいは、顕微授精の実施者による目視検査によって判断してもよく、CASA(Computer-Aided sperm analyzer)又はSQA(Sperm Quality Analyzer)により測定される値によって判断してもよい。あるいは、後述のようにして作成される複数の精子における指標の分布(ヒストグラム)を参照して、閾値を設定し、特定の指標が当該閾値を超えた場合にその精子の品質が優れていると判断してもよい。
【0062】
評価部14は、第1の精子41aの品質の相対評価を実施する際、
図3(C)に示す第2の時間間隔に含まれるフレーム42において撮像される第2の精子42aとの品質を相対的に評価する。評価部14は、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標に基づいて、第1の精子41aと第2の精子42aとの品質の比較を行ってよい。例えば、指標算出部12が算出したいずれかの指標、好ましくは精子の運動性、精子の形態性、及び精子のDNA断片化の発生の程度の2種以上から算出された指標の大小に基づいて、品質の相対的な評価を行う。
【0063】
一実施形態において、評価部14は、第2の精子42aの選択の際に、第2の時間間隔中に認識される複数の精子のうち、第1の時間間隔中に認識される精子と同一と判断されない複数の精子42a~42cの相対的な品質の優劣を評価して、複数の精子42a~42cの中で相対的に品質が優れていると評価された精子を第2の精子としてもよい。
【0064】
一実施形態において、評価部14は、記憶部13に記憶された、第2の精子の少なくとも1つの指標を参照して第1の精子と第2の精子との相対的な評価を実施してよい。この場合、評価部14は、記憶部13に記憶された精子のうち、第1の時間間隔において認識されている精子と同一と判断されない精子のいずれかを第2の精子として第1の精子との相対的な品質の評価に用いてもよい。あるいは、第1の時間間隔において認識されている精子と同一と判断されない精子の中から相対的に品質が優れていると評価された精子を第2の精子としてもよい。
【0065】
第1の精子41aの品質を相対評価する際、第2の精子42aとの相対評価を実施する限り、その他の精子とのさらなる相対評価をしてもよい。例えば、評価部14は、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標に基づいて、第1の精子と、動画像における第1の時間間隔及び第2の時間間隔とは異なる第3の時間間隔中に認識される第3の精子との品質を相対的に評価してもよい。
【0066】
一実施形態において、評価部14は、第1の精子41aと、記憶部13に少なくとも1つの指標が記憶された複数の精子との相対的な評価を実施してもよい。この場合、当該複数の精子に、第2の精子が含まれている。この態様によれば、第1の精子よりも前に識別され、指標が算出され、記憶部13に少なくとも1つの指標が記憶された複数の精子との相対評価において、第1の精子の品質を評価することができる。
【0067】
第1の精子41aと、記憶部13に少なくとも1つの指標が記憶された複数の精子との相対的な評価を実施する手法は、特に限定されないが、例えば比較対象とする複数の精子が有する指標の分布(ヒストグラム)を作成し、第1の精子41aが有する指標が当該分布のいずれに位置するか、例えば上位何%に位置するかという評価を実施すればよい。評価部14は、記憶部13に少なくとも1つの指標が記憶された複数の精子に関する情報を記憶部13から呼び出し、サンプルS中の精子の総合的な評価を算出してもよい。例えば、評価部14は、サンプルS中の精子の奇形数若しくは奇形率(精子の形態に奇形が生じている数若しくは割合)、運動性に関する指標が閾値を超える精子(運動精子)の数若しくは割合、運動性に関する指標が閾値を下回る精子(不動精子)の数若しくは割合、精子の濃度、及び運動精子と不動精子との割合(精子の運動率)からなる群より選択される少なくとも1種を算出してよい。
【0068】
評価部14は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されCPU10aにより実行されるプログラムにより実現されてよい。評価部14による評価は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されてよく、通信部10dを介して、各部及び装置に送信されてよい。
【0069】
図2に戻って、表示制御部15は、動画像における第1の時間間隔において、第1の精子に対して、第1の精子の少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価部14によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価を表示する。
【0070】
取得部11が取得する動画像が過去に撮像した動画像である場合、表示制御部15は、動画像における第1の時間間隔に含まれる各フレームを編集して、第1の精子の少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価部14によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価を表示してよい。
【0071】
取得部11が動画像をリアルタイムで取得し、リアルタイムで精子の選別を実施し、第1の時間間隔がリアルタイムで取得されている動画像の時間間隔である場合、表示制御部15は、評価部14による評価が得られ次第、リアルタイムで取得されている動画像に第1の精子の少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価部14によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価を表示してよい。したがって、表示制御部15は、評価を表示した動画像を生成する動画像生成部と言い換えることもできる。
【0072】
図5を参照して、表示制御部15が表示する情報について説明する。
図5は、
図3(B)に示した第1の時間間隔におけるフレーム41において、第1の精子に関する少なくとも1つの指標と、評価部14によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価とを表示した表示画像50の例である。
【0073】
図5に示すように、フレーム41において、精子41aには、第1の精子であること、すなわち、第2の精子との相対的な品質の評価を表示していることを示す情報51aが付されている。情報51aは、精子41aを囲う図形であればよく、その形状は円形に限られず、例えば楕円形、多角形、星形等であってもよい。情報51aは、精子41aを特定するID情報を含んでいてよい。
図5において、情報51aは、精子41aのIDが0065であることを含む。
【0074】
また、
図5に示す例では、精子41b,41cも第1の精子として選択され、すなわち、第2の精子との相対的な品質の評価を表示していることを示す情報51b,51cがそれぞれ付されている。
図5において、情報51b,51cは、精子41b,41cのIDがそれぞれ0046及び0084であることを含む。
【0075】
図5に示すように、フレーム41において、第2の精子との相対的な品質の評価を表示する精子が複数存在する場合、第2の精子との相対的な品質の評価を表示していることを示す情報51a,51b,51cは、さらに、各精子41a,41b,41c間の品質の優劣を示す情報を含んでいてよく、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標に関する情報を含んでいてよい。情報51a,51b,51cは、精子を囲う図形の形状、態様又は色彩により各精子間の品質の優劣を示してよく、精子を囲う図形の形状、態様又は色彩により少なくとも1つの指標の大小を示してよい。
図5では、品質が高い順、すなわち、精子41a,41b,41cの順に精子を囲う図形の色彩が強調されるように示されている。情報51a,51b,51cは、最も品質が高い精子のみを強調するように精子を囲う図形の形状、態様又は色彩が調整されてもよい。情報51a,51b,51cは、フレーム41中に含まれる精子中での品質の順位を表示してもよく、記憶部13に記憶された複数の精子中での品質の順位を表示してもよい。
【0076】
図5において、表示画像50は、評価部14によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価を表示する領域52を有する。領域52は、評価部14によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価が表示されればその構成は特に限定されない。
図5においては、評価部14によって評価が実行された精子41a,41b,41cについて、第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質の相対評価がそれぞれ示される。より具体的には、領域52には、記憶部13に記憶された複数の精子が有する指標のヒストグラムが表示され、精子41a,41b,41cが有する指標が当該ヒストグラムのいずれに位置するかということを示す情報53が表示されている。すなわち、領域52には、第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子を含む、記憶部13に少なくとも1つの指標が記憶された複数の精子と、精子41a,41b,41cとの品質の相対評価が示されている。
図5において、情報53として、精子41a,41b,41cに付与されたそれぞれのIDである0065,0084,0046が、各精子41a,41b,41cが存在するヒストグラムの位置に表示されている。領域52には、さらに、記憶部13に記憶された複数の精子から推定されるサンプルS中の精子の総合的な評価が表示されてよい。領域52には、サンプルS中の精子の奇形数若しくは奇形率(精子の形態に奇形が生じている数若しくは割合)、運動性に関する指標が閾値を超える精子(運動精子)の数若しくは割合、運動性に関する指標が閾値を下回る精子(不動精子)の数若しくは割合、精子の濃度、及び運動精子と不動精子との割合(精子の運動率)からなる群より選択される少なくとも1種が表示されてよい。
【0077】
表示画像50には、さらに第2の精子との相対的な品質の評価を表示した精子41a,41b,41cの拡大画像54a,54b,54cが表示されていてよい。拡大画像を表示することにより、顕微授精の実施者に対して各精子の形態及び運動を注視させることができる。また、拡大画像は、拡大している精子のID及び/又は指標の少なくとも1つを含んでいてよい。
図5においては、拡大画像に対して、後述の領域55において表示されている精子に関する複数の指標から算出される精子の品質を総合的に評価した指標が表示されている。
【0078】
表示画像50には、第1の精子に対して少なくとも1つの指標を関連付けて表示してもよい。
図5においては、第2の精子との相対的な品質の評価を表示した精子41a,41b,41cの拡大画像54a,54b,54cにそれぞれ関連付けて、精子41a,41b,41cの指標をそれぞれ表示する領域55a,55b,55cが表示されている。表示される指標は、指標算出部12が算出した少なくとも1つの指標であれば特に限定されないが、
図5においては、各精子の運動性、形態性、及びDNA断片化の発生の程度を示す指標がそれぞれ表示されている。ここで、精子の運動性を示す指標は、運動速度、直線速度、曲線速度、及び移動軌跡の直線性、並びにこれらの値から算出されてよい精子の運動性を総合的に示す値からなる群より選択される1種以上であってよい。精子の形態性を示す指標は、精子の頭部の形状、尾部の形状、頭部空胞数、それらサイズのバランス(例えば、頭部縦横アスペクト比)、及び形態の異常部位と異常部位の個数、並びにこれらの値から算出されてよい精子の形態性を総合的に示す値からなる群より選択される1種以上であってよい。精子のDNA断片化の発生の程度を示す指標は、精子のDNAの損傷度合、及び損傷個数、並びにこれらの値から算出されてよい精子のDNA断片化の発生の程度を総合的に示す値からなる群より選択される1種以上であってよい。
【0079】
また、表示制御部15は、第1の精子に対して少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示した動画像と、少なくとも1つの指標に関する情報を表示しない動画像と、を切り替えて表示可能である。
【0080】
図6を参照して、表示制御部15における動画像の切り替えについて説明する。
図6(A)は、
図3(B)に示した第1の時間間隔におけるフレーム41において、精子41a,41b,41cに対して少なくとも1つの指標に関する情報として、
図5を用いて説明した情報51a,51b,51cが表示されているフレームの例である。
図6(A)において、情報51a,51b,51cは、第2の精子との相対的な品質の評価を表示していることを示すと共に、フレーム41内において所定の指標が高い上位3つを示す情報である。また、情報51a,51b,51cは、この順に所定の指標が高いことを示すように精子を囲う図形の色彩が強調されている。
【0081】
図6(B)は、
図3(B)に示した第1の時間間隔におけるフレーム41において、第1の精子に対して少なくとも1つの指標に関する情報が表示されていないフレームの例である。
図6(B)に示すように、少なくとも1つの指標に関する情報を表示しない動画像は、取得部11が取得した動画像であってよく、表示制御部15が表示を付さない動画像であってよい。
【0082】
図6(C)は、
図3(B)に示した第1の時間間隔におけるフレーム41において、精子41aに対して少なくとも1つの指標に関する情報として、
図5を用いて説明した情報51aが表示されているフレームの例である。
図6(C)において、情報51aは、第2の精子との相対的な品質の評価を表示していることを示すと共に、フレーム41内において所定の指標が最も高い精子を示す情報である。
【0083】
表示制御部15は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されCPU10aにより実行されるプログラムにより実現されてよい。表示制御部15により表示が付された動画像は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されてよく、通信部10dを介して、各部及び装置に送信されてもよく、あるいは、表示部10fに表示されてもよい。精子選別補助装置10が顕微鏡システムに接続される場合、表示制御部15により表示が付された動画像は、通信部10dを介して顕微鏡システムに送信され、顕微鏡システムの接眼レンズに投影されてもよい。
【0084】
図2に戻って、認識部16は、動画像を解析して、精子の認識、識別、及び/又は追尾を行う。動画像から精子を認識する方法としては、精子の代表的形状を示す代表画像を複数用意し、動画像中の各フレームに対して代表画像を用いてパターンマッチングする方法や、精子の観察画像を教師データとして用いて学習させた学習モデルを用いる方法が挙げられる。
【0085】
認識部16は、動画像において撮像された精子に対して個別のID情報を付してもよい。認識部16は、各フレームにおいて精子にID情報を付してよく、同一の精子に対しては同一のID情報を付してよい。認識部16は、2つのフレームに含まれる精子が確実に同一であると判断できる場合にそれらの精子を同一と判断し、同一のID情報を付与してよい。認識部16は、例えば第1のフレームにおいて撮像される精子が、第1のフレームと第2のフレームとの間において常に動画像の撮像視野に存在する場合、当該精子を追跡することで第2のフレームにおいて同一の精子であると判断してよい。2つの精子が同一であるかの判断において、各精子に対して指標算出部12が算出する少なくとも1つの指標を考慮してもよい。例えば、指標算出部12が算出する指標の1又は複数が一致するか、略一致する場合、2つの精子が同一であると判断されてよい。指標が略一致するとは、2つの精子の指標の差の絶対値が、いずれかの精子の指標を基準として、1%以下、2%以下、3%以下、4%以下、5%%以下、又は10%以下であることをいう。
【0086】
認識部16は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されCPU10aにより実行されるプログラムにより実現されてよい。認識部16による認識は、後述のRAM10b又はROM10cに記憶されてよく、通信部10dを介して、各部及び装置に送信されてよい。
【0087】
次いで、
図7を参照して精子選別補助装置10の物理的構成について説明する。
図7は、精子選別補助装置10の物理的構成の一例を示す図である。精子選別補助装置10は、プロセッサに相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶部に相当するRAM(Random Access Memory)10b、及びROM(Read only Memory)10cと、通信部10dと、入力部10eと、表示部10fと、を有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では精子選別補助装置10の機能が一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、精子選別補助装置10の機能は、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、
図7で示す構成は一例であり、精子選別補助装置10はこれら以外の構成要素を有してもよいし、これらの構成要素のうち一部を有さなくてもよい。
【0088】
CPU10aは、RAM10b又はROM10cに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う。CPU10aは、コンピュータを、取得部11、指標算出部12、記憶部13、評価部14、表示制御部15、及び認識部16として機能させるプログラムを実行する演算部である。CPU10aは、入力部10eや通信部10dから種々のデータを受け取り、データの演算結果を表示部10fに表示したり、RAM10bやROM10cに格納したりする。
【0089】
RAM10bは、記憶部のうちデータの書き換えが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。RAM10bは、CPU10aが実行するプログラムを記憶してよい。なお、これらは例示であって、RAM10bには、これら以外のデータが記憶されていてもよい。
【0090】
ROM10cは、記憶部のうちデータの読み出しが可能なものであり、例えば半導体記憶素子で構成されてよい。ROM10cは、例えば書き換えが行われないデータを記憶してよい。
【0091】
通信部10dは、精子選別補助装置10を他の部及び装置、例えば、撮像装置20に接続するインターフェースである。通信部10dは、有線又は無線でネットワークに接続されてよい。
【0092】
入力部10eは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード及びタッチパネルを含んでよい。
【0093】
表示部10fは、CPU10aによる演算結果を視覚的に表示するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)により構成されてよい。表示部10fは、撮像装置20が取得した撮像動画像、及び表示制御部15が表示を付した動画像を表示してよい。
【0094】
なお、本実施形態に係る精子選別補助プログラムは、RAM10bやROM10c等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10dにより接続される通信ネットワークを介して提供されてもよい。精子選別補助装置10では、CPU10aが本実施形態に係るプログラムを実行することにより、
図2を用いて説明した機能が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、精子選別補助装置10は、CPU10aとRAM10b及び/又はROM10cとが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0095】
[精子選別方法]
以下、本実施形態に係る精子選別補助システムを用いて精子を選別する方法について説明する。本実施形態に係る精子選別方法は、本実施形態に係る精子選別補助システムを用いるため、検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子を選択することができる。特に、客観的に品質の高い精子を選択することができる。
【0096】
図8は、本実施形態に係る精子選別方法の工程の一例を示すフローチャートである。なお、
図8には示していないが、顕微授精の実施者(典型的には胚培養士)は、本実施形態に係る精子選別補助システムに対してサンプルSを配置し、撮像装置20の撮像視野にサンプルSを設けるようにセッティングを行う。
【0097】
以下では、精子選別補助システム1が自動的に、顕微授精の実施者の処理を介さずに精子選別を実施する方法について説明するが、以下の各ステップの全て又は一部は顕微授精の実施者が手動で行うこともできる。また、リアルタイムで撮像装置20から動画像を取得する際、精子の選別を補助するための処理もリアルタイムで実行してよい。したがって、以下の各ステップは、動画像の所定の時間間隔ごとに並列して実施してもよい。また、一実施形態において、精子の指標を記憶するステップは省略することができる。
【0098】
図8に示すように、本実施形態に係る精子選別方法では、まず、取得部11を通じて撮像装置20から精子の観察動画像を取得する(以下、「ステップS1」ともいう)。ステップS1において、事前に撮像された動画像を取得してもよいし、撮像装置20が取得している動画像をリアルタイムで取得してもよい。
【0099】
次いで、各精子の認識を行う(以下、「ステップS2」ともいう)。ステップS2では、認識部16が取得した動画像を解析し、動画像の所定の時間間隔において撮像された精子を認識する。この際、認識部16は、各精子にID情報を割り当ててよい。また、認識部16により認識された精子について、認識された時刻と割り当てられたID情報とを記憶部13に記憶してよい。
【0100】
次いで、ステップS2で認識した精子に対して、指標算出部12が少なくとも1つの指標を算出する(以下、「ステップS3」ともいう)。
【0101】
次いで、ステップS3で算出した指標を各精子に紐づけて記憶部13に記憶する(以下、「ステップS4」ともいう)。
【0102】
次いで、ステップS3で指標を算出された少なくとも1の精子の品質を評価する(以下、「ステップS5」ともいう)。ステップS5では、ステップS3で算出した指標に基づいて、第1の時間間隔中に認識される複数の精子から品質が相対的に高い精子又は少なくとも1つの指標が閾値を超える精子を選択してよい。選択された精子を第1の精子とすると、第1の精子について、第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する。第2の精子との品質の相対評価において、ステップS4で指標を記憶した1又は複数の精子を用いて、第1の精子の品質の相対評価を実施してよい。
【0103】
ステップS5では、リアルタイムで撮像装置20が撮像している精子のうちの1つについて、品質の評価を行ってよい。あるいは、ステップS5では、サンプルSの観察を開始してから所定の時間において複数の精子を確認し、ステップS3で算出された少なくとも1つの指標に関するヒストグラムをした後に、精子の品質を行ってよい。
【0104】
次いで、表示制御部15により、ステップS5で第2の精子との品質を相対的に評価した第1の精子に対して、当該第1の精子の少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価された第2の精子に対する相対的な品質の評価を表示した動画像を生成する(以下、「ステップS6」ともいう)。ステップS6では、リアルタイムで撮像装置20が撮像している精子のうちの1つについて、少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価された第2の精子に対する相対的な品質の評価を表示した動画像をリアルタイムで生成してよい。
【0105】
次いで、ステップS6で生成した動画像を表示させる(以下、「ステップS7」ともいう)。ステップS7では、精子選別補助装置10の表示部10fに動画像を表示させてもよいし、精子選別補助装置10に接続された顕微鏡システムの接眼レンズに投影されてもよい。
【0106】
[変形例]
以上、本実施形態の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものではない。例えば、各構成要素及びステップの説明における例示及び/又は好ましい態様等(好ましい、より好ましい、さらに好ましい、さらにより好ましい態様等。)は、特に言及がない限り、それぞれを任意に組み合わせて本実施形態とすることができる。例えば、各実施形態について、好ましい態様として記載されている実施形態と、好ましい態様として記載されている実施形態とを組み合わせてもよいし、好ましい態様等として記載されている実施形態と、より好ましい実施形態(あるいは更に好ましい実施形態等)として記載されている構成とを組み合わせてもよい。また、各構要素成及びステップは、本実施形態の効果を阻害しない限り、適宜省略することができる。
【0107】
例えば、
図1に示す精子選別補助システム1は、サンプルSにおける精子を不動化させるツール、及び/又は精子を吸引しその後卵子の細胞質に注入するための精子注入ツールを備えていてよい。
【0108】
精子注入ツールは、例えば、顕微授精に一般的に用いられるインジェクションピペットであってよい。精子注入ツールは、精子選別補助装置10が選別した精子を不動化させるための手段を備えていてもよい。精子を不動化させるための手段としては、ピエゾ素子等の微弱な振動を与える手段、及びレーザー光照射手段等が挙げられる。精子注入ツールは、精子を吸引し、注入するための圧力制御機構を備えていてよい。
【0109】
また、
図8に示す本実施形態に係る精子選別方法のフローチャートにおいて、ステップS1の前に、あるいはステップS1と並行して、撮像装置20によりサンプル中の精子を撮像してよい。この際、精子選別装置10は、精子を解像度高く撮像するために、撮像装置20及び/又は撮像装置20に取り付けられた顕微鏡システムの設定を調整してもよい。当該調整は、顕微授精の実施者が行ってもよい。
【0110】
[付記]
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]
動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する指標算出部と、
前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、前記動画像における前記第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する評価部と、
前記動画像における前記第1の時間間隔において、前記第1の精子に対して、当該第1の精子の前記少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、前記評価部によって評価された前記第1の精子と前記第2の精子との相対的な品質の評価を表示する表示制御部と、
を備える、精子選別補助装置。
[2]
前記評価部は、前記算出した指標に基づいて、前記第1の時間間隔中に認識される前記第1の精子を含む複数の精子の相対的な品質の優劣をさらに評価する、
[1]に記載の精子選別補助装置。
[3]
前記第1の精子は、前記複数の精子において相対的に品質が優れていると評価された精子である、
[2]に記載の精子選別補助装置。
[4]
前記指標算出部が算出した前記少なくとも1つの指標を記憶する記憶部をさらに備え、
前記評価部は、前記指標算出部が算出して、前記記憶部に記憶された、前記第2の精子の前記少なくとも1つの指標を参照して前記第1の精子と前記第2の精子との相対的な評価を実施する、
[1]~[3]のいずれか1つに記載の精子選別補助装置。
[5]
前記評価部は、前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記第1の精子と、前記記憶部に前記少なくとも1つの指標が記憶された複数の精子との相対的な評価を実施する、
[4]に記載の精子選別補助装置。
[6]
前記評価部は、さらに、前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記第1の精子と、前記動画像における前記第1の時間間隔及び前記第2の時間間隔とは異なる第3の時間間隔中に認識される第3の精子との品質を相対的に評価する、
[1]~[5]のいずれか1つに記載の精子選別補助装置。
[7]
前記表示制御部は、前記第1の精子に対して前記少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示した動画像と、前記少なくとも1つの指標に関する情報を表示しない動画像と、を切り替えて表示可能である、
[1]~[6]のいずれか1つに記載の精子選別補助装置。
[8]
前記少なくとも1つの指標は、精子の運動性、精子の形態性、及び精子のDNA断片化の発生の程度の少なくとも1つ、又はこれら2種以上から算出されたものである、
[1]~[7]のいずれか1つに記載の精子選別補助装置。
[9]
精子を観察した動画像を撮像する撮像装置と、[1]~[8]のいずれか1つに記載の精子選別補助装置と、を備える、
精子選別補助システム。
[10]
コンピュータを、
動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する指標算出部と、
前記少なくとも1つの指標に基づいて、前記動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、前記動画像における前記第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する評価部と、
前記動画像における前記第1の時間間隔において、前記第1の精子に対して、当該第1の精子の前記少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、前記評価部によって評価された前記第1の精子と前記第2の精子との相対的な品質の評価を表示する表示制御部と、
として機能させる、精子選別補助プログラム。
【符号の説明】
【0111】
1…精子選別補助システム、10…精子選別補助装置、11…取得部、12…指標算出部、13…記憶部、14…評価部、15…表示制御部、16…認識部、20…撮像装置、41,42,43…フレーム、50…表示画像、S…サンプル。
【要約】
【課題】検体中の精子の中から顕微授精に適した良好な精子を選択することを可能とする精子選別補助装置を提供すること。
【解決手段】動画像において認識される精子の品質に関わる少なくとも1つの指標を算出する指標算出部と、少なくとも1つの指標に基づいて、動画像における第1の時間間隔中に認識される第1の精子と、動画像における第1の時間間隔とは異なる第2の時間間隔中に認識される第2の精子との品質を相対的に評価する評価部と、動画像における第1の時間間隔において、第1の精子に対して、第1の精子の少なくとも1つの指標に関する情報を関連付けて表示するとともに、評価部によって評価された第1の精子と第2の精子との相対的な品質の評価を表示する表示制御部と、を備える、精子選別補助装置。
【選択図】
図1