(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】タンパク質凝集物を溶解するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/00 20060101AFI20241101BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20241101BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241101BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241101BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241101BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241101BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241101BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241101BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241101BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241101BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241101BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/864 100Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/16
A61P25/28
A61P21/00
A61P25/16
A61P25/14
(21)【出願番号】P 2023509613
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2021111683
(87)【国際公開番号】W WO2022033454
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】202010796060.4
(32)【優先日】2020-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523044873
【氏名又は名称】アールジェイケイ・バイオファーマ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RJK Biopharma Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チェンチェン
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-523236(JP,A)
【文献】Adv. Sci.,2019年,Vol.7, No.2,1901165, p.1-13
【文献】J. Biol. Chem.,2000年,Vol.275, No.14,p.10437-10442
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性セグメント及び疎水性セグメントを含むポリペプチドであって、
該ポリペプチドが、
タンパク質凝集物を溶解することができ、そして、
TEPQEESEEEVEEPEERQQTPEVVPDDSGTFYDQTVSNDLE(配列番号1)、
TDPQDDSDDDVDDPDDRQQTPDVVPDDSGTFYDQTVSNDLD(配列番号2)、
TKPQKKSKKKVKKPKKRQQTPKVVPDDSGTFYDQTVSNDLK(配列番号3)、
TRPQRRSRRRVRRPRRRQQTPRVVPDDSGTFYDQTVSNDLR(配列番号4)、
ELDEESEDEVEEEQEDRQPSPEPVQENANSAYYDAHPVTNGIE(配列番号8)、
KEEVDEDRDVDESSPQDSPPSKASPAQDGRPPQTAAREATSIPGFPAEGAIPLPV(配列番号9)、及び
EGEVAEEPNSRPQEKSEQDLE(配列番号10)
から選択される配列を含む、
上記ポリペプチド。
【請求項2】
タンパク質凝集物が、FUS凝集物、TDP43凝集物、TIA1凝集物、C9orf72凝集物、又はこれらの組合せである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項4】
DNA又はRNAである、請求項3に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項6】
ウイルスベクターである、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
AAVベクターである、請求項6に記載のベクター。
【請求項8】
請求項3又は4に記載のポリヌクレオチドを含む組換えウイルス。
【請求項9】
AAVである、請求項8に記載の組換えウイルス。
【請求項10】
請求項3又は4に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項11】
(1)請求項1又は2に記載のポリペプチド、請求項3もしくは4に記載のポリヌクレオチド、請求項5~7のいずれか1項に記載のベクター、請求項8もしくは9に記載の組換えウイルス、又は請求項10に記載の宿主細胞、及び(2)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のポリペプチドを細胞に導入するステップを含む
(ただし、ヒトへの導入を除く)、細胞内のタンパク質凝集物を溶解するための方法。
【請求項13】
細胞が神経細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
タンパク質凝集物がFUS凝集物であり、細胞が運動ニューロンである、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
細胞がインビトロ又はインビボである、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
神経変性疾患を処置するための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項17】
神経変性疾患が、前頭側頭認知症、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、レビー小体病、運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症、海馬硬化症、封入体ミオパチー、封入体筋炎、パーキンソン病、嗜銀顆粒病、アルツハイマー病、紀伊半島のパーキンソン/認知症複合、進行性核上性麻痺、及びピック病から選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
中枢神経系に投与される、請求項16又は17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
脊髄注射、髄腔内注射、脳室内注射、脳内注射、又は海馬内注射を介して投与される、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本願は、2020年8月10日に出願された中国特許出願第202010796060.4に対する優先権を主張し、当該出願の開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
技術分野
[0002]本発明は全体として、神経生物学および神経変性疾患に関する。特に、本発明は、病原性タンパク質の凝集物を溶解するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]タンパク質凝集は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、およびハンチントン病などの多くの神経変性疾患の共通の特徴である。ニューロンにおけるタンパク質凝集物、例えば、ALSにおけるFUS、アルツハイマー病におけるアミロイドベータ、パーキンソン病におけるアルファシヌクレイン、およびハンチントン病におけるハンチンチンは、毒性であると考えられており、ニューロンの損傷または死の原因である。一般に、凝集の程度は、神経変性疾患の重症度に比例する。
【0003】
[0004]ニューロンにおけるタンパク質凝集の原因は完全には理解されていないが、凝集傾向があるタンパク質は細胞内で過飽和であることが多いものの、すなわち、当該タンパク質の細胞濃度は熱力学的溶解度を超えていることが多いものの、ヘテロタイプの相互作用を介する緩衝によって準安定な液体様の状態を維持していると考えられる。準安定な過飽和形態の乱れは、タンパク質溶解度の低下を生じさせ、結果としてタンパク質凝集を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005]タンパク質凝集の阻害または病原性タンパク質凝集物の溶解による神経変性疾患に関する治療法を開発するために、いくつかの試みが行われてきている。例えば、タンパク質凝集を阻害し得る化合物が、米国特許第10435373号、米国特許第9738635号、米国特許第10889584号、米国特許第9284309号、米国特許第9527852号、および米国特許第9790188号において開示されている。米国特許第9845327号は、リソソームの活性化を促進することによるタンパク質凝集の阻害を開示している。しかし、進行性のニューロン変性を回復に向かわせるための方法は依然として分かっていないため、神経変性疾患は、治癒が不可能であると考えられている。したがって、ニューロンにおけるタンパク質凝集を阻害するまたはタンパク質凝集物を溶解するための新規な組成物および方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006]一態様では、本開示は、タンパク質凝集物を溶解し得るポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、ポリペプチドは親水性セグメントおよび疎水性セグメントを含み、前記親水性セグメントは10~20アミノ酸残基長を有し、このうちの少なくとも50%はAsp、Glu、Lys、またはArgであり、前記疎水性セグメントは10~20アミノ酸残基長を有し、このうちの少なくとも50%はTyr、Phe、Trp、Leu、Ile、Val、Met、Pro、Ala、またはCysであり、親水性セグメントはN末端にあり、疎水性セグメントはC末端にあり、またはその逆であり、また、ポリペプチドは20~60アミノ酸残基長を有する。
【0006】
[0007]一部の実施形態では、親水性セグメントは、TX1PQX1X1SX1X1X1VX1X1PX1X1X1(配列番号11)、X1LX1X1X1SX1X1X1VX1X1X1QX1X1X1(配列番号12)、X1X1X1VX1X1X1X1X1VX1X1(配列番号13)、およびX1X1SX1VQX1LX1(配列番号14)からなる群から選択される配列を有し、式中、各X1はそれぞれ、Asp、Glu、Lys、またはArgである。
【0007】
[0008]一部の実施形態では、親水性セグメントは、TEPQEESEEEVEEPEER(配列番号15)、TDPQDDSDDDVDDPDDR(配列番号16)、TKPQKKSKKKVKKPKKR(配列番号17)、TRPQRRSRRRVRRPRRR(配列番号18)、ELDEESEDEVEEEQEDR(配列番号19)、KEEVDEDRDVDE(配列番号20)、およびEKSEQDLE(配列番号21)からなる群から選択される配列、またはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、またはこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列を有する。
【0008】
[0009]一部の実施形態では、疎水性セグメントは、TFYDQTVSNDL(配列番号22)、ANSAYYDAHPVTNGI(配列番号23)、PPQTAAREATSIPGFPAEGAIPLPV(配列番号24)、およびEGEVAEEPNSRP(配列番号25)から選択される配列、またはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、またはこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列を有する。
【0009】
[0010]一部の実施形態では、ポリペプチドは、TEPQEESEEEVEEPEERQQTPEVVPDDSGTFYDQTVSNDLE(配列番号1)、TDPQDDSDDDVDDPDDRQQTPDVVPDDSGTFYDQTVSNDLD(配列番号2)、TKPQKKSKKKVKKPKKRQQTPKVVPDDSGTFYDQTVSNDLK(配列番号3)、TRPQRRSRRRVRRPRRRQQTPRVVPDDSGTFYDQTVSNDLR(配列番号4)、ELDEESEDEVEEEQEDRQPSPEPVQENANSAYYDAHPVTNGIE(配列番号8)、KEEVDEDRDVDESSPQDSPPSKASPAQDGRPPQTAAREATSIPGFPAEGAIPLPV(配列番号9)、およびEGEVAEEPNSRPQEKSEQDLE(配列番号10)からなる群から選択される配列、またはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、またはこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列を有する。
【0010】
[0011]一部の実施形態では、タンパク質凝集物は、FUS凝集物、TDP43凝集物、TIA1凝集物、C9orf72凝集物またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、タンパク質凝集物は、ベータアミロイド凝集物、アルファシヌクレイン凝集物、またはハンチンチン凝集物である。
【0011】
[0012]別の態様では、本開示は、本明細書において記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAである。
【0012】
[0013]別の態様では、本開示は、本明細書において開示されているポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、AAVベクターである。
【0013】
[0014]別の態様では、本開示は、本明細書において開示されているポリヌクレオチドを含む組換えウイルスを提供する。一部の実施形態では、組換えウイルスは、AAVである。
【0014】
[0015]別の態様では、本開示は、本明細書において開示されているポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。
[0016]別の態様では、本開示は、医薬組成物を提供する。一部の実施形態では、医薬組成物は、(1)本明細書において開示されているポリペプチド、本明細書において開示されているポリヌクレオチド、本明細書において開示されているベクター、または本明細書において開示されている組換えウイルスを含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体を含む。
【0015】
[0017]別の態様では、本開示は、細胞内のタンパク質凝集物を溶解するための方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、本明細書において開示されているポリペプチドを細胞に導入するステップを含む。一部の実施形態では、細胞は神経細胞である。一部の実施形態では、タンパク質凝集物はFUSタンパク質凝集物であり、細胞は運動ニューロンである。一部の実施形態では、細胞は、インビトロまたはインビボである。
【0016】
[0018]別の態様では、本開示は、神経変性疾患の処置を必要とする対象における、神経変性疾患を処置するための方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、治療有効量の本明細書において開示されている医薬組成物を対象に投与するステップを含む。一部の実施形態では、神経変性疾患は、前頭側頭認知症、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、レビー小体認知症、ハンチントン病、レビー小体病、運動ニューロン疾患、前頭側頭変性、海馬硬化症、封入体ミオパチー、封入体筋炎、パーキンソン病、嗜銀顆粒病、アルツハイマー病、紀伊半島のパーキンソン/認知症複合、進行性核上性麻痺、およびピック病から選択される。一部の実施形態では、医薬組成物は中枢神経系に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、脊髄注射、髄腔内注射、脳室内注射、脳内注射、または海馬内注射を介して投与される。
【0017】
[0019]さらに別の態様では、本開示は、タンパク質凝集物を溶解し得るポリペプチドを同定する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、変性領域を有するタンパク質を同定するステップであって、当該変性領域が(a)Glnの少なくとも2つのアミノ酸残基、(b)Arg、Lys、Asp、Glu、およびAsnから選択される少なくとも6つの親水性アミノ酸残基、ならびに(c)Phe、Cys、Leu、Val、およびIleから選択される少なくとも6つの疎水性アミノ酸残基を含む、ステップ;変性領域から基本的になるポリペプチドを作製するステップ;ポリペプチドをタンパク質凝集物と接触させるステップ;ならびにポリペプチドがタンパク質凝集物を溶解することを判定するステップを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、20~60アミノ酸残基長を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、N末端にある親水性セグメントおよびC末端にある疎水性セグメントを含むか、またはその逆である。
【0018】
[0020]以下の図面は本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の態様をさらに示すために含まれている。本開示は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書において示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、さらに良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】[0021]本開示の典型的なポリペプチドの配列を示す図である。
【
図2】[0022]ポリペプチドRJK001~RJK004がインビトロでFUSタンパク質凝集物を溶解したことを示す図である。原核生物によって発現され精製されたFUSタンパク質(pH7.5、10uMのFUS)を、インビトロで、相分離された液滴を形成するように誘導した。ポリペプチドRJK001~RJK007(30uM)を、FUS液滴に一滴ずつ添加した。共焦点レーザー顕微鏡を介して観察を連続して行った。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の顕微鏡画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した後の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した後の顕微鏡画像である。
【
図3】[0023]ポリペプチドRJK001~RJK004がインビトロでTDP-43タンパク質凝集物を溶解したことを示す図である。原核生物によって発現され精製されたTDP43タンパク質(pH7.5、10uMのTDP-43)を、インビトロで、相分離された液滴を形成するように誘導した。ポリペプチドRJK001~RJK007(30uM)を、TDP43液滴に一滴ずつ添加した。共焦点レーザー顕微鏡を介して観察を連続して行った。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の顕微鏡画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
【
図4】[0024]ポリペプチドRJK001~RJK004がインビトロでTIA1タンパク質凝集物を溶解したことを示す図である。ポリペプチドRJK001~RJK007(90uM)を、タンパク質凝集物を有するTIA1タンパク質溶液(pH7.5、30uMのTIA1)に一滴ずつ添加した。共焦点レーザー顕微鏡を介して観察を連続して行った。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の顕微鏡画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
【
図5】[0025]ポリペプチドRJK001~RJK004がインビトロでGR50-GFPタンパク質凝集物を溶解したことを示す図である。ポリペプチドRJK001~RJK007(10uM)を、タンパク質凝集物を有するGR50-GFPタンパク質溶液(C9orf72をコードしないRNAから翻訳された、10uM、10%PEG中)に一滴ずつ添加した。共焦点レーザー顕微鏡を介して観察を連続して行った。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の顕微鏡画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
【
図6】[0026]SH-SY5Y細胞モデルにおける、FUSタンパク質凝集物に対するRJK001~RJK007ポリペプチドの効果を示す図である。ポリペプチドRJK001~RJK004および対照ポリペプチドRJK005~RJK007を、熱刺激後に、FUS-mCherryを過剰発現しているSH-SY5Y細胞モデルにトランスフェクトした。G3BP1の染色は、ストレス顆粒を表している。RJK001~RJK004ポリペプチドは、ALSの病原性FUS凝集物に対して顕著な溶解効果を有していたが、対照ポリペプチドRJK005~RJK007は、病原性のFUSタンパク質凝集物の溶解についての効果を有していなかった。
【
図7】[0027]SH-SY5Y細胞モデルにおける、TDP-43タンパク質凝集物に対するRJK001~RJK007ポリペプチドの効果を示す図である。ポリペプチドRJK001~RJK004および対照ポリペプチドRJK005~RJK007を、熱刺激後に、TDP-43-mCherryを過剰発現しているSH-SY5Y細胞モデルにトランスフェクトした。G3BP1の染色は、ストレス顆粒を表している。RJK001~RJK004ポリペプチドは、ALSの病原性TDP-43凝集物に対して顕著な溶解効果を有していたが、対照ポリペプチドRJK005~RJK007は、病原性のTDP-43タンパク質凝集物の溶解についての効果を有していなかった。
【
図8】[0028]初代培養されたマウス運動ニューロンに対する、ALSの病原性FUSタンパク質に対するポリペプチドRJK001および対照ポリペプチドRJK005の効果を示す図である。RJK001ポリペプチドは、マウス運動ニューロンにおけるFUS-GFPタンパク質凝集物の溶解を増強させたが、対照ポリペプチドは、病原性のFUSタンパク質凝集物の溶解に対して効果を有していなかった。蛍光顕微鏡を使用するリアルタイムイメージング技術を使用して、細胞培養物を観察した。左端の画像は、インビトロ培養の10日目の運動ニューロンおよびタンパク質凝集物を示している。左から2~3枚目の画像は、ポリペプチドを添加してすぐ(0分)の顕微鏡画像であり、中間の画像は、ポリペプチドを添加した後の異なる時点(30分、60分、90分)での顕微鏡画像であり、そして右端の画像は、ポリペプチドを添加して120分後の顕微鏡画像である。
【
図9】[0029]初代培養されたマウス運動ニューロンにおける、ALSの病原性SOD1(G93A)タンパク質に対するポリペプチドRJK001および対照ポリペプチドRJK005の効果を示す図である。RJK001ポリペプチドは、マウス運動ニューロンにおけるSOD1(G93A)-GFPタンパク質凝集物の溶解を増強させたが、対照ポリペプチドは、タンパク質凝集物の溶解に対して効果を有していなかった。蛍光顕微鏡を使用するリアルタイムイメージング技術を使用して、細胞培養物を観察した。左側のパネルはポリペプチドRJK001であり、右側のパネルは対照ポリペプチドRJK005である。各パネルにおける左側の画像は、インビトロ培養の10日目の運動ニューロンおよびタンパク質凝集物の画像を示している。各パネルにおける右側の画像は、ポリペプチドを添加して24時間後の顕微鏡画像である。
【
図10】[0030]SOD1(G93A)トランスジェニックマウスへのRJK001ポリペプチドの導入が当該動物における運動機能障害を効果的に軽減し得ることを示す図である。2カ月齢のSOD1(G93A)トランスジェニックマウスに、通常生理食塩水、AAV-RJK001、またはAAV-RJK005を髄腔内注射した。マウスの運動機能についてのオープンフィールド実験の結果が、黒抜きのバー:生理食塩水(対照群)、RJK001(AAV-RJK001ウイルス注射)、およびRJK005(AAV-RJK005ウイルス注射)として示されている。処置の6週間後のオープンフィールド実験の歩行スコア(gait score)が、単位距離当たりの所要時間によって表されている。時間が長いほど、運動パフォーマンスは悪い。RJK005および対照群と比較すると、RJK001実験群のマウスの運動パフォーマンスは著しく改善した。
【
図11】[0031]ポリペプチドRJG001~RJG003がインビトロでFUSタンパク質凝集物を溶解したことを示す図である。原核生物によって発現され精製されたFUSタンパク質(pH7.5、10uMのFUS)を、インビトロで、相分離された液滴を形成するように誘導した。ポリペプチドRJG001~RJG003およびRJK005(30uM)を、FUS液滴に一滴ずつ添加した。共焦点レーザー顕微鏡を介して観察を連続して行った。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の顕微鏡画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
【
図12】[0032]SH-SY5Y細胞モデルにおける、FUSタンパク質凝集物に対するRJG001~RJG003ポリペプチドの効果を示す図である。ポリペプチドRJG001~RJG003および対照ポリペプチドRJK005を、熱刺激後に、FUS-mCherryを過剰発現しているSH-SY5Y細胞モデルにトランスフェクトした。G3BP1の染色は、ストレス顆粒を表している。RJG001~RJG003ポリペプチドは、ALSの病原性FUS凝集物に対して顕著な溶解効果を有していたが、対照ポリペプチドRJK005は、病原性のFUSタンパク質凝集物に対する効果を有していなかった。
【
図13】[0033]アミノ酸コードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0034]本開示をさらに詳細に記載する前に、本開示は記載されている特定の実施形態に限定されず、したがって、当然のことながら変化し得ることを理解されたい。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において使用される専門用語は特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0021】
[0035]別段のことが定義されていない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般に理解されているものと同一の意味を有する。本明細書において記載されるものに類似のまたは同等のあらゆる方法および材料もまた、本開示の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が以下で記載される。
【0022】
[0036]本明細書において引用される全ての刊行物および特許は、各々個別の刊行物または特許が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれ、また、それに関連して当該刊行物が引用されている方法および/または材料を開示および記載するために、参照によって本明細書に組み込まれる。あらゆる刊行物の引用は、出願日前のその開示についてであり、先行する開示によって本開示がこのような刊行物に先行するものではないとすることを承認するものであると解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は実際の公開日と異なる可能性があり、実際の公開日は独立して確認される必要がある場合がある。
【0023】
[0037]本開示を読めば当業者には明らかとなるであろうが、本明細書において記載および説明されている個々の実施形態の各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のうちのいずれかの特徴と容易に切り離すことも組み合わせることもできる、個別の構成要素および特徴を有する。あらゆる示されている方法は、示されている事象の順序で、または論理的に可能なあらゆる他の順序で行われ得る。
【0024】
[0038]定義
[0039]前述の全体的説明および以下の詳細な説明の双方とも、典型的かつ説明的なものにすぎず、本発明を特許請求の範囲に記載の通りに制限するものではないことを理解されたい。本願において、単数形の使用は、別段のことが具体的に言及されていない限り、複数形を含む。本開示において、用語「または」は、代替物のみを指していることが明確に示されていない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用される。本明細書において使用される場合、「別の」は、少なくとも第2の、または第3以降のものを意味し得る。さらに、用語「含む(including)」および他の形態、例えば「含む(includes)」および「含まれる(included)」の使用は、限定的ではない。また、「エレメント」または「構成要素」などの用語は、別段のことが具体的に記載されていない限り、1つの単位を含むエレメントおよび構成要素と、2つ以上のサブユニットを含むエレメントおよび構成要素との両方を包含する。また、用語「一部(portion)」の使用は、部分(moiety)の一部、または部分全体を含み得る。
【0025】
[0040]本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から別段のことが明らかに示されない限り、複数形の言及を含む。
[0041]本明細書において使用される場合、用語「投与」は、薬学的な薬剤または組成物を対象に提供することを意味し、限定はしないが、医療専門家による投与および自己投与を含む。
【0026】
[0042]用語「アミノ酸」は、本明細書において使用される場合、アミン(-NH2)官能基およびカルボキシル(-COOH)官能基と、各アミノ酸に特異的な側鎖とを有する有機化合物を指す。アミノ酸の名称は、本開示において、標準的な一文字記号または3文字コードでも表される。
【0027】
[0043]「細胞」は、本明細書において使用される場合、原核細胞または真核細胞であり得る。原核細胞としては、例えば細菌が含まれる。真核細胞としては、例えば、真菌、植物細胞、および動物細胞が含まれる。好ましくは、本明細書において記載される細胞は、動物細胞である。動物細胞(例えば、哺乳動物細胞またはヒト細胞)のタイプとしては、例えば、神経系または神経器官の細胞、例えば、ニューロン、グリア芽細胞(例えば、アストロサイトおよびオリゴデンドロサイト)、ミクログリア、巨大細胞の神経分泌細胞、星細胞、ベッチェル細胞、ならびに下垂体細胞(例えば、性腺刺激ホルモン分泌細胞、副腎皮質刺激ホルモン分泌細胞、甲状腺刺激ホルモン分泌細胞、成長ホルモン分泌細胞、およびプロラクチン分泌細胞);循環/免疫系または循環/免疫器官の細胞、例えば、B細胞、T細胞(細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、制御性T細胞、ヘルパーT細胞)、ナチュラルキラー細胞、顆粒球(例えば、好塩基球、好酸球、好中球、および過分葉好中球)、単球またはマクロファージ、赤血球(例えば、網赤血球)、肥満細胞、血小板または巨核球、ならびに樹状細胞;内分泌系または内分泌器官の細胞、例えば、甲状腺細胞(例えば、甲状腺上皮細胞、傍濾胞細胞)、副甲状腺細胞(例えば、副甲状腺主細胞、好酸性細胞)、副腎細胞(例えば、クロム親和性細胞)、ならびに松果体の細胞(例えば、松果体細胞);呼吸器系または呼吸器器官の細胞、例えば、肺細胞(I型肺細胞およびII型肺細胞)、クララ細胞、杯細胞、肺胞マクロファージ;循環系または循環器官の細胞、例えば、心筋細胞および周皮細胞;消化器系または消化器官の細胞、例えば、胃の主細胞、壁細胞、杯細胞、パネート細胞、G細胞、D細胞、ECL細胞、I細胞、K細胞、S細胞、腸内分泌細胞、腸クロム親和性細胞、APUD細胞、肝臓細胞(例えば、肝細胞およびクッパー細胞);外皮系または外皮器官の細胞、例えば、骨の細胞(例えば、骨芽細胞、骨細胞、および破骨細胞)、歯の細胞(例えば、セメント芽細胞およびエナメル芽細胞)、軟骨の細胞(例えば、軟骨芽細胞および軟骨細胞)、皮膚/毛髪の細胞(例えば、毛胞、ケラチン生成細胞、およびメラノサイト(母斑細胞)、筋肉細胞(例えば、筋細胞)、脂肪細胞、線維芽細胞、および腱細胞);泌尿器系または泌尿器官の細胞(例えば、ポドサイト、傍糸球体細胞、糸球体内メサンギウム細胞、糸球体外メサンギウム細胞、腎近位尿細管の刷子縁細胞、および緻密斑細胞);ならびに生殖系または生殖器官の細胞(例えば、精子、セルトリ細胞、ライディッヒ細胞、卵子、卵母細胞)が含まれる。細胞は、正常な、健康な細胞、または罹患したもしくは不健康な細胞(例えば、がん細胞)であり得る。哺乳動物細胞は、齧歯動物細胞、例えば、マウス、ラット、ハムスターの細胞であり得る。哺乳動物細胞は、ウサギ目の細胞、例えばウサギの細胞であり得る。哺乳動物細胞はまた、霊長類細胞、例えばヒト細胞であり得る。
【0028】
[0044]本明細書において使用される場合、用語「有効量」または「治療有効量」は、あらゆる障害もしくは疾患の症候および/もしくは根底にある原因を予防する、処置する、低減させる、および/もしくは改善するために十分な薬剤の量、または、細胞に対して所望の効果をもたらすために十分な薬剤の量を意味する。一実施形態では、「治療有効量」は、疾患の症候を低減させるかまたはなくすために十分な量である。別の実施形態では、治療有効量は、疾患自体を克服するために十分な量である。
【0029】
[0045]用語「宿主細胞」は、核酸配列で形質転換されているかまたは形質転換され得、これによって目的のタンパク質を発現する、細胞を意味する。当該用語としては親細胞の子孫が含まれ、子孫は、目的の遺伝子が存在していれば、元の親細胞と形態学的にまたは遺伝子構造が同一であってもなくてもよい。
【0030】
[0046]用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、本明細書において使用される場合、一本鎖形態または二本鎖形態のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)およびこれらのポリマーを指す。別段の指示がない限り、特定のポリヌクレオチド配列はまた、明確に示された配列と同様に、保存的に修飾されたこれらのバリアント(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オルソログ、SNP、および相補配列も暗に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つもしくは複数の選択された(または全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を作製することによって達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605~2608(1985);およびRossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91~98(1994)を参照されたい)。
【0031】
[0047]アミノ酸配列(または核酸配列)についての「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して、同一のアミノ酸(または核酸)の数を最大にした後の、参照配列におけるアミノ酸(または核酸)残基に同一な、候補配列におけるアミノ酸(または核酸)残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸残基の保存的な置換は、同一の残基とみなされてもみなされなくてもよい。アミノ酸(または核酸)の配列同一性パーセントを決定することを目的としたアラインメントは、例えば、BLASTN、BLASTp(アメリカ国立生物工学情報センター(NCBI)のウェブサイトで入手可能であり、また、Altschul S.F.ら、J.Mol.Biol.、215:403~410(1990);Stephen F.ら、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402(1997)も参照されたい)、ClustalW2(欧州バイオインフォマティクス研究所のウェブサイトで入手可能であり、また、Higgins D.G.ら、Methods in Enzymology、266:383~402(1996);Larkin M.A.ら、Bioinformatics(Oxford、England)、23(21):2947~8(2007)も参照されたい)、およびALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているツールを使用して、行われ得る。当業者は、ツールによって提供されるデフォルトパラメータを使用することができるか、または、適切なアルゴリズムを例えば選択することなどによって、パラメータを必要に応じてアラインメントのためにカスタマイズすることができる。
【0032】
[0048]用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、ペプチド結合によって互いに結合されている、ひと続きの少なくとも2つのアミノ酸を意味する。ポリペプチドおよびタンパク質は、アミノ酸(例えばグリコシル化されていてもよい)に加えて複数の部分を含んでいてよく、および/または他の方法で処理もしくは修飾されていてよい。当業者には、「ポリペプチド」または「タンパク質」が、細胞によって産生された通りの完全なポリペプチド鎖(シグナル配列を有していてもいなくてもよい)であり得るか、またはその機能的部分であり得ることが理解されよう。当業者にはさらに、ポリペプチドまたはタンパク質が時として、例えば1つもしくは複数のジスルフィド結合によって結合されたまたは他の手段によって結び付けられた、2つ以上のポリペプチド鎖を含み得ることが理解されよう。この用語はまた、1つまたは複数のアミノ酸が、対応する天然のアミノ酸およびポリマーの化学的類似体である、アミノ酸ポリマーも含む。
【0033】
[0049]表現「薬学的に許容可能な担体」は、本明細書において使用される場合、1つの器官からまたは身体の一部から別の器官へまたは身体の別の部分への対象化合物の運搬または輸送に関与する、薬学的に許容可能な材料、組成物、または媒体、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒カプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、患者に対して無害であるという意味で、「許容可能」でなくてはならない。薬学的に許容可能な担体として機能し得る材料の一部の例としては、ラクトース、グルコース、およびショ糖などの糖;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤用ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、べにばな油、ごま油、オリーブ油、とうもろこし油、および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;アガー;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質を含有しない水;等張生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;pH緩衝済溶液;ポリエステル、ポリカーボネート、および/またはポリ無水物;ならびに薬学的製剤で利用される他の無毒の適合する物質が含まれる。
【0034】
[0050]本明細書において使用される用語「タンパク質凝集物」は、細胞内または細胞外で見られるタンパク質の凝集を指す。一部の実施形態では、タンパク質は、天然変性タンパク質またはミスフォールディングしたタンパク質である。一部の実施形態では、凝集は、タンパク質の濃度がタンパク質の溶解度を超えると生じる。一部の実施形態では、タンパク質の濃度は熱力学的溶解度を超えているが、タンパク質は、ヘテロタイプの相互作用を介する緩衝によって準安定な液体様の状態を維持している。タンパク質の準安定形態の乱れは、タンパク質溶解度の低下を生じさせ、結果としてタンパク質凝集を生じさせる。
【0035】
[0051]用語「組換え」は、ポリペプチド(例えば、抗体、抗原)またはポリヌクレオチドに関して使用される場合、組換え方法によって産生されるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを指す。「組換えポリペプチド」には、組換えポリヌクレオチドから発現されるあらゆるポリペプチドが含まれる。「組換えポリヌクレオチド」には、少なくとも1つの外因性の(すなわち、外来の、典型的には異種の)ヌクレオチドの導入またはポリヌクレオチドの少なくとも1つの天然ヌクレオチド構成要素の改変によって修飾されている、あらゆるポリヌクレオチドが含まれるが、当該ポリヌクレオチドは、コード配列またはコード配列と天然に結び付いている調節エレメントの全てを必ずしも含んでいなくてもよい。「組換えベクター」は、例えば組換えポリヌクレオチド配列を含むベクターを含む、非天然のベクターを指す。
【0036】
[0052]本明細書において使用される場合、用語「対象」は、ヒトまたはあらゆる非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を指す。ヒトは、出生前の形態および出生後の形態を含む。多くの実施形態では、対象は人間である。対象は患者であり得、患者は、疾患の診断または処置のために医療提供者を受診しているヒトを指す。用語「対象」は、本明細書において、「個体」または「患者」と区別せずに使用される。対象は、疾患もしくは障害に悩んでいるかまたは疾患もしくは障害にかかりやすいが、疾患または障害の症候を示していてもいなくてもよい。
【0037】
[0053]状態を「処置する」または状態の「処置」には、本明細書において使用される場合、状態を予防もしくは軽減すること、状態の発病もしくは発症速度を遅らせること、状態の発症リスクを低減させること、状態に伴う症候の発症を予防するもしくは遅延させること、状態に伴う症候を低減させるもしくは終わらせること、状態の完全なもしくは部分的な消退を生じさせること、状態を治癒すること、またはこれらの一部の組合せが含まれる。
【0038】
[0054]本明細書において使用される場合、「ベクター」は、宿主細胞に導入されると、形質転換された宿主細胞を産生する、核酸分子を指す。ベクターは、複製起点などの、宿主細胞におけるベクターの複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターはまた、1つまたは複数の治療用遺伝子および/または選択マーカー遺伝子、ならびに当技術分野において公知の他の遺伝子エレメントも含み得る。ベクターは、細胞に形質導入する、細胞を形質転換する、または細胞に感染することができ、これによって、細胞にとって天然のものではない核酸および/またはタンパク質を細胞に発現させる。ベクターは、場合によって、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質被覆、またはこれらに類するものなどの、細胞内への核酸の侵入の達成に役立つ材料を含む。
【0039】
[0055]タンパク質凝集物を溶解するための組成物
[0056]タンパク質の凝集は、細胞内または細胞外のいずれかで天然変性タンパク質またはミスフォールディングしたタンパク質が凝集する(すなわち、蓄積し、共に塊となる)、生物学的現象である。タンパク質の構造は、非共有結合による相互作用、および2つのシステイン残基の間のジスルフィド結合によって安定化される。非共有結合による相互作用には、イオン相互作用および弱いファンデルワールス相互作用が含まれる。イオン相互作用は、陰イオンと陽イオンとの間で形成され、タンパク質の安定化を促進する塩架橋を形成する。ファンデルワールス相互作用としては、無極性相互作用および極性相互作用(すなわち、水素結合、双極子間の結合)が含まれる。これらは、タンパク質の二次構造、例えばアルファヘリックスまたはベータシートの形成、および三次構造において、重要な役割を有する。特定のタンパク質におけるアミノ酸残基間の相互作用は、そのタンパク質の最終構造において非常に重要である。
【0040】
[0057]非共有結合による相互作用に変化がある場合、これはアミノ酸配列の変化で起こり得るが、タンパク質は、ミスフォールディングまたはアンフォールディングを起こしやすい。これらのケースにおいて、細胞がタンパク質の再フォールディングを助けないまたはフォールディングしていないタンパク質を分解しない場合、フォールディングしていない/ミスフォールディングしているタンパク質は凝集し得るが、この凝集において、タンパク質の曝露された疎水性部分が他のタンパク質の曝露された疎水性パッチと相互作用し得る。非晶質の凝集物、オリゴマー、およびアミロイド線維という3つの主要なタイプのタンパク質凝集物が形成され得る。ミスフォールディングしたタンパク質凝集物は、疾患と相関していることが多い。例えば、タンパク質凝集物は、ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、およびプリオン病を含む広範な神経変性疾患と関係付けられている。
【0041】
[0058]本開示は、G3BP1などのある特定の天然タンパク質の断片がタンパク質凝集物を溶解し得るという驚くべき発見に基づいている。特に、このような断片は一般に両親媒性であり、すなわち、当該断片は一方の末端に親水性セグメントを含み、他方に疎水性セグメントを含んでいる。本発明者はまた、親水性アミノ酸残基が他の親水性アミノ酸残基で置き換えられている断片のある特定のバリアントがタンパク質凝集物溶解特性を維持していることも見出した。
【0042】
[0059]したがって、本開示は、一態様では、タンパク質凝集物を溶解し得るポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、ポリペプチドは親水性セグメントおよび疎水性セグメントを含み、前記親水性セグメントは10~20アミノ酸残基長を有し、このうちの少なくとも50%はAsp、Glu、Lys、またはArgであり、前記疎水性セグメントは10~20アミノ酸残基長を有し、このうちの少なくとも50%はTyr、Phe、Trp、Leu、Ile、Val、Met、Pro、Ala、またはCysであり、親水性セグメントはN末端にあり、疎水性セグメントはC末端にあり、またはその逆であり、また、ポリペプチドは20~60アミノ酸残基長を有する。
【0043】
[0060]一部の実施形態では、親水性セグメントは、TX1PQX1X1SX1X1X1VX1X1PX1X1X1(配列番号11)、X1LX1X1X1SX1X1X1VX1X1X1QX1X1X1(配列番号12)、X1X1X1VX1X1X1X1X1VX1X1(配列番号13)、およびX1X1SX1VQX1LX1(配列番号14)からなる群から選択される配列を有し、式中、各X1はそれぞれ、Asp、Glu、Lys、またはArgである。
【0044】
[0061]一部の実施形態では、親水性セグメントは、TEPQEESEEEVEEPEER(配列番号15)、TDPQDDSDDDVDDPDDR(配列番号16)、TKPQKKSKKKVKKPKKR(配列番号17)、TRPQRRSRRRVRRPRRR(配列番号18)、ELDEESEDEVEEEQEDR(配列番号19)、KEEVDEDRDVDE(配列番号20)、およびEKSEQDLE(配列番号21)からなる群から選択される配列、またはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、またはこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列を有する。
【0045】
[0062]一部の実施形態では、疎水性セグメントは、TFYDQTVSNDL(配列番号22)、ANSAYYDAHPVTNGI(配列番号23)、PPQTAAREATSIPGFPAEGAIPLPV(配列番号24)、およびEGEVAEEPNSRP(配列番号25)から選択される配列、またはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、またはこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列を有する。
【0046】
[0063]TEPQEESEEEVEEPEERQQTPEVVPDDSGTFYDQTVSNDLE(配列番号1)、TDPQDDSDDDVDDPDDRQQTPDVVPDDSGTFYDQTVSNDLD(配列番号2)、TKPQKKSKKKVKKPKKRQQTPKVVPDDSGTFYDQTVSNDLK(配列番号3)、TRPQRRSRRRVRRPRRRQQTPRVVPDDSGTFYDQTVSNDLR(配列番号4)、ELDEESEDEVEEEQEDRQPSPEPVQENANSAYYDAHPVTNGIE(配列番号8)、KEEVDEDRDVDESSPQDSPPSKASPAQDGRPPQTAAREATSIPGFPAEGAIPLPV(配列番号9)、およびEGEVAEEPNSRPQEKSEQDLE(配列番号10)からなる群から選択される配列、またはこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、またはこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列を有する、請求項1に記載のポリペプチド。
【0047】
[0064]一部の実施形態では、タンパク質凝集物は、神経変性疾患の病因である。一部の実施形態では、タンパク質凝集物は、FUS凝集物、TDP43凝集物、TIA1凝集物、C9orf72凝集物、またはこれらの組合せである。一部の実施形態では、タンパク質凝集物は、ベータアミロイド凝集物、アルファシヌクレイン凝集物、またはハンチンチン凝集物である。
【0048】
[0065]別の態様では、本開示は、本明細書において記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAである。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、一本鎖DNAまたは二本鎖DNAである。
【0049】
[0066]別の態様では、本開示は、本明細書において開示されているポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。典型的には、ベクターは、プロモーター、エンハンサー、ポリA領域などの、ポリペプチドの発現を促進する追加のエレメントをさらに含む。一部の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。一部の実施形態では、AAVベクターは、ITR配列をさらに含む。
【0050】
[0067]別の態様では、本開示は、本明細書において開示されているポリヌクレオチドを含む組換えウイルスを提供する。一部の実施形態では、組換えウイルスは、AAVである。一部の実施形態では、AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAVrh8、AAV9、AAV10、AAVrh10、AAV11、およびAAV12から選択される血清型を有する。
【0051】
[0068]別の態様では、本開示は、本明細書において開示されているポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、本明細書において開示されているポリペプチドを発現させるため、または本明細書において開示されているウイルスを作製するために使用され得る。
【0052】
[0069]別の態様では、本開示は、本明細書において開示されているポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組換えウイルス、または宿主細胞を含む医薬組成物を提供する。このような組成物は、予防有効量または治療有効量のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組換えウイルス、または宿主細胞、および薬学的に許容可能な担体を含む。具体的な実施形態では、用語「薬学的に許容可能な」は、連邦政府もしくは州政府の規制当局によって承認されていること、または米国薬局方もしくは他の一般に認識されている薬局方において動物、特にヒトにおける使用について列挙されていることを意味する。このような薬学的担体は、無菌の液体、例えば、水、および、石油由来、動物由来、植物由来、または合成由来のものを含む油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ごま油、およびこれらに類するものであり得る。水は、医薬組成物が静脈内に投与される場合の特定の担体である。生理食塩水および水性デキストロース溶液およびグリセロール溶液もまた、液体担体として、特に注射可能溶液に利用され得る。他の適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、コムギ、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、およびこれらに類するものが含まれる。
【0053】
[0070]組成物は、必要に応じて、微量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝剤も含有していてよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出製剤、およびこれらに類する形態をとり得る。適切な薬学的薬剤の例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において記載されている。このような組成物は、予防有効量または治療有効量のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組換えウイルス、または宿主細胞を、患者への適正な投与のための形態とするための適切な量の担体とともに含有する。製剤は投与態様に適合しているべきであり、投与態様は、髄腔内投与、静脈内投与、動脈内投与、口腔内投与、鼻腔内投与、噴霧投与、気管支吸入、または機械的換気による送達であり得る。組成物が注射によって投与される場合、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを調製して、成分を投与前に混合することができるようにしてもよい。
【0054】
[0071]本開示の組成物は、中性または塩の形態として製剤され得る。薬学的に許容可能な塩としては、陰イオンと形成された塩、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する塩、および陽イオンと形成された塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する塩が含まれる。
【0055】
[0072]同定方法
[0073]本開示は、別の態様では、タンパク質凝集物を溶解し得るポリペプチドを同定するための方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、変性領域を有する天然変性タンパク質を同定するステップであって、当該変性領域が(a)Glnからなる少なくとも2つのアミノ酸残基、ならびに/または(b)Arg、Lys、Asp、Glu、およびAsnから選択される少なくとも6つの親水性アミノ酸残基、ならびに/または(c)Phe、Cys、Leu、Val、およびIleから選択される少なくとも6つの疎水性アミノ酸残基を含む、ステップ;変性領域から基本的になるポリペプチドを作製するステップ;ポリペプチドをタンパク質凝集物と接触させるステップ;ならびにポリペプチドがタンパク質凝集物を溶解することを判定するステップを含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは20~60アミノ酸残基長を有する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、N末端にある親水性セグメントおよびC末端にある疎水性セグメントを含むか、またはその逆である。一部の実施形態では、タンパク質は、天然の天然変性タンパク質である。
【0056】
[0074]一部の実施形態では、変性領域は、少なくとも3つ、4つ、または5つのGlnアミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、変性領域は、Arg、Lys、Asp、Glu、およびAsnから選択される少なくとも7つ、8つ、9つ、または10個の親水性アミノ酸残基を含む。一部の実施形態では、変性領域は、Phe、Cys、Leu、Val、およびIleから選択される少なくとも7つ、8つ、9つ、または10個の疎水性アミノ酸残基を含む。
【0057】
[0075]天然変性タンパク質は、典型的には他のタンパク質またはRNAなどのその相互作用パートナーの不存在下で、三次元構造が一定でないまたは不規則なタンパク質である。天然変性タンパク質は、全く構造化されていないかまたは部分的にしか構造化されていない場合がある。天然の天然変性タンパク質は、文献またはデータベースを通して当技術分野において公知である。例えば、DisProtデータベースは、文献(Hatos,A.ら、DisProt:Intrinsic protein disorder annotation in 2020、Nucleic Acids Research(2020)48(D1)、269~276)から精選された天然変性タンパク質を集めている。一部の実施形態では、データベース(例えば、DisProtデータベース)は、記載されているような特性を有する変性領域を有する天然変性タンパク質を同定するためにサーチされる。
【0058】
[0076]記載されているような基準を満たす変性領域を同定した後、変性領域から基本的になるポリペプチドが、当技術分野において公知のアプローチを用いて組換えによって作製され得る。このポリペプチドは次いで、タンパク質凝集物、例えばFUS凝集物、TDP43凝集物、TIA1凝集物、およびC9orf72凝集物を溶解するその能力について試験される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、タンパク質凝集物の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%を溶解することができる。
【0059】
[0077]ポリペプチドのバリアントは、バリアントがポリペプチドに対して少なくとも90%同一な配列またはポリペプチドと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列を有するようにポリペプチド内のアミノ酸残基を置き換えることによって、作製され得る。作製されたバリアントは次いで、タンパク質凝集物を溶解するその能力について試験され得る。一部の実施形態では、バリアントは、バリアントの由来源であるポリペプチドと比較して、タンパク質凝集物を溶解する能力が向上している。
【0060】
[0078]使用方法
[0079]別の態様では、本開示は、細胞内のタンパク質凝集物を溶解する方法を提供する。一部の実施形態では、本方法は、本明細書において開示されているポリペプチドを細胞に導入するステップを含む。一部の実施形態では、細胞はニューロンである。一部の実施形態では、タンパク質凝集物は、FUSタンパク質凝集物、TDP-43タンパク質凝集物、TIA1タンパク質凝集物、ベータアミロイドタンパク質凝集物、アルファシヌクレインタンパク質凝集物、またはハンチンチンタンパク質凝集物である。一部の実施形態では、ポリペプチドは、細胞をポリペプチドと接触させることによって細胞に導入される。一部の実施形態では、ポリペプチドは、本明細書において開示されているポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に導入することによって細胞に導入され、こうして、細胞がポリペプチドを発現することが可能となる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを含むベクターもしくはウイルスで細胞を形質転換することまたは当該ベクターもしくはウイルスを細胞にトランスフェクトすることによって、細胞に導入される。
【0061】
[0080]さらに別の態様では、本開示は、タンパク質凝集に関連する疾患または状態を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、タンパク質凝集に関連する疾患または状態は、神経変性疾患である。神経変性疾患は、ニューロンの構造または機能の進行性の喪失、および最終的には細胞死をもたらす。神経変性疾患の例としては、限定はしないが、前頭側頭認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、レビー小体病、運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症、海馬硬化症、封入体ミオパチー、封入体筋炎、パーキンソン病、嗜銀顆粒病、アルツハイマー病、紀伊半島のパーキンソン/認知症複合、進行性核上性麻痺、およびピック病が含まれる。
【0062】
[0081]筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、骨格筋力の低下の段階的な進行という症候を有する、上位運動ニューロン(UMN)および下位運動ニューロン(LMN)の変性を伴う。抗酸化剤酵素Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)をコードする遺伝子におけるミスセンス突然変異が、家族性ALSを有する患者のサブセットで発見された。しかし、SOD1突然変異体の毒性の根底にある病因メカニズムは未だ明らかにされていない。TDP-43およびFUSタンパク質凝集物もまた、一部のケースの疾患に関連付けられており、9番染色体における突然変異(C9orf72)は、孤発性ALSの最も一般的に知られている原因であると考えられている。
【0063】
[0082]アルツハイマー病(AD)は、大脳皮質およびある特定の皮質下構造におけるニューロンおよびシナプスの喪失をもたらす慢性的な神経変性疾患であり、側頭葉における、頭頂葉における、ならびに前頭皮質および帯状回の複数の部分における肉眼的萎縮を生じさせる。ADの病理は、老人斑および神経原線維変化の存在を主に特徴とする。斑は、ベータアミロイド(AベータまたはAβとも記載される)と呼ばれる、典型的には39~43アミノ酸長の小さなペプチドでできている。ベータアミロイドは、ニューロンの膜を通って侵入する膜貫通タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)と呼ばれる、より大きなタンパク質の断片である。APPは、正常なニューロンの成長、生存、および損傷後の修復において役割を有すると考えられる。APPは、ガンマセクレターゼおよびベータセクレターゼなどの酵素によって、より小さな断片に切断される。これらの断片のうちの1つは、老人斑またはアミロイド斑として知られている密な細胞外蓄積物に自己集合し得るベータアミロイドの原線維を生じさせる。
【0064】
[0083]パーキンソン病(PD)は、2番目に一般的な神経変性障害である。これは、典型的には、動作緩慢、強剛、安静時振戦、および姿勢反射障害として現れる。PDは、中脳の一領域である黒質におけるドーパミン作動性ニューロンの死を主に特徴とする。この選択的な細胞死の原因は分かっていない。特に、アルファシヌクレイン-ユビキチンの複合体および凝集物は、罹患したニューロン内のレビー小体に蓄積することが観察されている。RAB1などのタンパク質輸送の機構および調節の欠陥がこの疾患メカニズムの原因であり得ると考えられている。アルファシヌクレインの軸索輸送の障害もまた、レビー小体におけるアルファシヌクレインの蓄積をもたらし得る。実験は、培養ニューロンの軸索を通る、野生型のアルファシヌクレインと家族性パーキンソン病に関連する2つの突然変異体アルファシヌクレインとの両方の輸送速度の低減を明らかにした。
【0065】
[0084]ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン遺伝子(HTT)における突然変異によって生じる、稀な常染色体優性の神経変性障害である。HDは、中型有棘ニューロンの喪失およびアストログリオーシスを特徴とする。大きく影響を受ける第1の脳領域は線条体であり、その後、前頭皮質および側頭皮質の変性が続く。線条体の視床下核は制御シグナルを淡蒼球に送り、淡蒼球は運動を開始させ、調節する。したがって、視床下核からのシグナルが弱まると、動きの開始および調節が低減し、その結果、この障害の特徴的な動き、特に舞踏病が生じる。HDは、突然変異体ハンチンチンを生じさせる、ハンチンチン遺伝子におけるポリグルタミン鎖の伸長によって生じる。突然変異体ハンチンチンの凝集物はニューロンにおいて封入体として形成され、直接的に毒性であり得る。加えて、これらは分子モーターおよび微小管に損傷を与えて、正常な軸索輸送に干渉し得、BDNFなどの重要な運搬物の輸送を弱める。
【0066】
[0085]一部の実施形態では、タンパク質凝集に関連する疾患または状態を処置する方法は、投与を必要とする対象に、治療有効量の本明細書において開示されている医薬組成物を投与するステップを含む。
【0067】
[0086]本明細書において提供される医薬組成物の治療有効量は、当技術分野において公知の様々な因子、例えば、処置対象の疾患のタイプ、対象の体重、年齢、過去の病歴、現在の投薬、健康状態、免疫状態および交差反応の可能性、アレルギー、感受性および副作用、ならびに投与の経路およびタイプ、疾患の重症度および発症、ならびに担当する医師または獣医師の裁量などによって決まる。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、約0.001mg/kg~約100mg/kgを1日当たり1回または複数回(例えば、約0.001mg/kg、約0.3mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約20mg/kg、約25mg/kg、約30mg/kg、約35mg/kg、約40mg/kg、約45mg/kg、約50mg/kg、約55mg/kg、約60mg/kg、約65mg/kg、約70mg/kg、約75mg/kg、約80mg/kg、約85mg/kg、約90mg/kg、約95mg/kg、または約100mg/kgを1日当たり1回または複数回)の治療有効投与量で投与され得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、約50mg/kg以下の投与量で投与され、またある特定の実施形態では、投与量は、20mg/kg以下、10mg/kg以下、3mg/kg以下、1mg/kg以下、0.3mg/kg以下、0.1mg/kg以下、または0.01mg/kg以下、または0.001mg/kg以下である。ある特定の実施形態では、投与量は、処置の過程で変化し得る。例えば、ある特定の実施形態では、最初の投与量がその後の投与量よりも多い場合がある。ある特定の実施形態では、投与量は、対象の反応に応じて処置の過程で変化し得る。
【0068】
[0087]投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整され得る。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、1度でまたは一連の処置にわたって対象に投与される。ある特定の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、疾患のタイプおよび重症度に応じて、1回もしくは複数回の個別の投与によって、または連続注入によって、対象に投与される。
【0069】
[0088]本明細書において提供される医薬組成物は、当技術分野において公知のあらゆる経路、例えば、非経口経路(例えば、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注入を含む静脈内注射、筋肉内注射、皮内注射、もしくは髄腔内注射)また腸管経路(例えば、経口経路、鼻腔内経路、眼内経路、舌下経路、直腸経路、もしくは局所経路)などによって投与され得る。
【0070】
[0089]一部の実施形態では、医薬組成物は、中枢神経系に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、脊髄注射、髄腔内注射、脳室内注射、脳内注射、または海馬内注射を介して投与される。一部の実施形態では、本明細書において提供される医薬組成物は、髄腔内経路によって投与される。本明細書において使用される場合、用語「髄腔内投与」、「髄腔内注射」、「髄腔内送達」、または文法上同等のものは、脊柱管(脊髄の周囲にある髄腔内の空間)への注射を指す。一部の実施形態では、本開示に従った「髄腔内投与」または「髄腔内送達」は、腰椎の区域もしくは領域を介するIT投与もしくは送達(すなわち、腰椎IT投与もしくは送達)または大槽送達(すなわち、頭蓋骨と脊椎頂部との間の開口部を介する、小脳の周辺および下の空間を介する注射)を指す。
【0071】
[0090]以下の実施例は、特許請求の範囲に記載の発明をより良く説明するために提供されており、本発明の範囲を限定するものと決して解釈されるものではない。以下で記載される全ての具体的な組成物、材料、および方法は、全体が、または部分的に、本発明の範囲内に含まれる。これらの具体的な組成物、材料、および方法は、本発明を限定するためのものではなく、本発明の範囲内に含まれる具体的な実施形態を説明するためのものにすぎない。当業者は、発明能力を行使することなく、また本発明の範囲から逸脱することなく、同等な組成物、材料、および方法を開発することができる。本明細書において記載される手順において多くの変更がなされ得るが、これらの変更は依然として本発明の範囲内にあることが理解されよう。本発明者らの意図としては、このような変更は本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0072】
実施例1
[0091]この実施例は、FUSタンパク質、TDP-43タンパク質、TIA1タンパク質、およびC9orf72タンパク質の凝集の溶解に対する、ポリペプチドRJK001~RJK004および対照ポリペプチドRJK005~RJK007の効果を説明する。
【0073】
[0092]インビトロ系を調製し、その中で、FUSタンパク質(濃度10μM)、TDP-43タンパク質(濃度10μM)、TIA1タンパク質(濃度30μM)、およびC9orf72タンパク質(濃度10μM、10%PEG)の凝集物を形成させた。pH7.5の条件下で、10μMのポリペプチドRJK001~RJK004および対照ポリペプチドRJK005~RJK007を系にそれぞれ添加した。共焦点レーザー顕微鏡を使用して、FUSタンパク質、TDP-43タンパク質、TIA1タンパク質、およびC9orf72タンパク質の凝集に対するポリペプチドRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007の効果を観察し、結果を
図2~5に示す。
【0074】
[0093]
図2に示されるように、10μMのポリペプチドRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007を、凝集物を有する7つの同様のFUSタンパク質溶液(pH7.5、10μMのFUS)にそれぞれ添加した。FUSタンパク質の凝集に対するRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007の効果を観察した。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
図2から、FUSタンパク質溶液が、ペプチドRJK001~RJK004を添加してすぐ(0秒)に典型的な凝集(相分離液滴)を示したことが明らかに観察され得る。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した40秒後、FUSタンパク質の凝集は著しく低減した(相分離した液滴が著しく低減した)。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した80秒後、FUSタンパク質の凝集はほとんど消えた(相分離した液滴はほとんどない)。したがって、ポリペプチドRJK001~RJK004は、FUSタンパク質の凝集を著しく溶解し得る。しかし、ポリペプチドRJK005~RJK007を添加した後、FUSタンパク質溶液は依然として、典型的な凝集を示した(相分離液滴)。したがって、ポリペプチドRJK005~RJK007は、FUS凝集物を効果的に溶解することができない。
【0075】
[0094]
図3に示されるように、10μMのポリペプチドRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007を、凝集物を有する7つの同様のTDP-43タンパク質溶液(pH7.5、10μMのTDP-43)にそれぞれ添加した。TDP-43タンパク質の凝集に対するRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007の効果を観察した。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
図3から、TDP-43タンパク質溶液が、ペプチドRJK001~RJK004を添加してすぐ(0秒)に典型的な凝集(相分離液滴)を示したことが明らかに観察され得る。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した40秒後、TDP43タンパク質の凝集は著しく低減した(相分離した液滴が著しく低減した)。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した80秒後、TDP43タンパク質の凝集はほとんど消えた(相分離した液滴はほとんどない)。したがって、ポリペプチドRJK001~RJK004は、TDP43タンパク質の凝集を著しく溶解し得る。しかし、ポリペプチドRJK005~RJK007を添加した後、TDP43タンパク質溶液は依然として、典型的な凝集を示した(相分離液滴)。したがって、ポリペプチドRJK005~RJK007は、TDP43凝集物を効果的に溶解することができない。
【0076】
[0095]
図4に示すように、90μMのポリペプチドRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007を、凝集物を有する7つの同様のTIA1タンパク質溶液(pH7.5、30μMのTIA1)にそれぞれ添加した。TIA1タンパク質の凝集物に対するRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007の効果を観察した。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
図4から、TIA1タンパク質溶液が、ペプチドRJK001~RJK004を添加してすぐ(0秒)に典型的な凝集(相分離液滴)を示したことが明らかに観察され得る。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した40秒後、TIA1タンパク質の凝集は著しく低減した(相分離した液滴が著しく低減した)。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した80秒後、TIA1タンパク質の凝集はほとんど消えた(相分離した液滴はほとんどない)。したがって、ポリペプチドRJK001~RJK004は、TIA1タンパク質の凝集を著しく溶解し得る。しかし、ポリペプチドRJK005~RJK007を添加した後、TIA1タンパク質溶液は依然として、典型的な凝集を示した(相分離液滴)。したがって、ポリペプチドRJK005~RJK007は、TIA1凝集物を効果的に溶解することができない。
【0077】
[0096]
図5に示されるように、90μMのポリペプチドRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007を、凝集物を有する7つの同様のGR50-GFP(非コード遺伝子C9orf72から翻訳された)タンパク質溶液(pH7.5、10μM)にそれぞれ添加した。GR50-GFPタンパク質の凝集に対するRJK001~RJK004およびRJK005~RJK007の効果を観察した。左側の画像は、ポリペプチドを添加した直後の画像である。中央の画像は、ポリペプチドを40秒間添加した場合の顕微鏡画像である。右側の画像は、ポリペプチドを80秒間添加した場合の顕微鏡画像である。
図5から、GR50-GFPタンパク質溶液が、ペプチドRJK001~RJK004を添加してすぐ(0秒)に典型的な凝集(相分離液滴)を示したことが明らかに観察され得る。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した40秒後、GR50-GFPタンパク質の凝集は著しく低減した(相分離した液滴が著しく低減した)。ポリペプチドRJK001~RJK004を添加した80秒後、GR50-GFPタンパク質の凝集はほとんど消えた(相分離した液滴はほとんどない)。したがって、ポリペプチドRJK001~RJK004は、TIA1タンパク質の凝集を著しく溶解し得る。しかし、ポリペプチドRJK005~RJK007を添加した後、GR50-GFPタンパク質溶液は依然として、典型的な凝集を示した(相分離液滴)。したがって、ポリペプチドRJK005~RJK007は、GR50-GFP凝集物を効果的に溶解することができない。
【0078】
[0097]したがって、上記の観察結果に従うと、ポリペプチドRJK001~RJK004は、FUSタンパク質、TDP-43タンパク質、TIA1タンパク質、およびC9orf72タンパク質のインビトロでの凝集に対して明らかな溶解効果を有しており、一方、E残基がQに突然変異しているポリペプチドRJK005~RJK007は、溶解効果を有していなかった。
【0079】
実施例2
[0098]この実施例は、SH-SY5Y細胞モデルの調製を説明する。
[0099]FUS-GFPタンパク質またはTDP-43-mCherryタンパク質を過剰発現するSH-SY5Y細胞モデルを、以下のステップを使用して作製した。
【0080】
[00100]SH-SY5Y細胞の培養
[00101]SH-SY5Y細胞を、37℃、5%二酸化炭素のインキュベーター内で、10%ウシ胎児血清を含有するDMEM/F12培地で培養した。細胞のコンフルエンスが80%に達した後、真空ポンプまたはピペットを使用して培養培地を除去した。細胞をPBSで1回洗浄した。トリプシン-EDTA(0.05%)を培養ディッシュに添加し、これを37℃の細胞インキュベーター内で1分間インキュベートした。所定量の培養培地を2回添加して消化を停止させ、細胞に穏やかに息を吹きかけて、細胞を均一な細胞懸濁液に懸濁させた。細胞懸濁液を15mLの遠心管に添加し、1200rpmで3分間遠心分離した。上清を廃棄し、細胞を新鮮な完全培地に再懸濁した。細胞を培養ディッシュに再び添加し、細胞を1:6から1:4で継代した。
【0081】
[00102]SH-SY5Y細胞のトランスフェクション
[00103]FUSプラスミドをトランスフェクトされたSH-SY5Y細胞モデルを作製するために、3ugのpCMV7.1-FUS-GFPプラスミドおよび6ugのリポソームを100ulのNaClでそれぞれ溶解した。リポソーム溶液をDNAに添加し、良く混合し、そして室温で15~30分間置いた。上記の液体を培養細胞に添加し、良く混合した。細胞培養物を24時間後に観察した。
[00104]pCMV7.1-TDP43-mCherryプラスミドのトランスフェクション操作は、上記と同一である。
【0082】
実施例3
[00105]この実施例は、細胞におけるFUSタンパク質、TIA1タンパク質、およびTDP-43タンパク質の凝集に対するRJK001ポリペプチドの溶解効果を説明する。
【0083】
[00106]実施例2に従ったFUSプラスミドをトランスフェクトされたSH-SY5Y細胞モデル(37℃で最初に培養された)を42℃のインキュベーターに1時間置いて熱ショック処理を行って、FUSタンパク質の凝集を生じさせた。1μgのRJK001ポリペプチド-プラスミドをRJK001実験群の細胞に添加した。RJK005~RJK007ポリペプチド-プラスミドを対照群の細胞に添加した。1時間後、細胞を取り出し、膜を固定し、そしてSH-SY5Yで標識されたストレス顆粒タンパク質G3BP1を、従来の免疫蛍光染色手順に従って免疫蛍光染色した。レーザー共焦点蛍光顕微鏡を使用して、SH-SY5Y細胞における過剰発現したFUSの蓄積を観察した。
図6に示すように、42℃での1時間の熱ショック処理の後、RJK001群におけるFUSタンパク質およびTIA1タンパク質の相分離した液滴の数は、RJK005~RJK007対照群における数よりも著しく少なかった。
【0084】
[00107]実施例2に従って調製されたTDP-43プラスミドをトランスフェクトされたSH-SY5Y細胞モデル(37℃で最初に培養された)を42℃のインキュベーターに1時間置いて熱ショック処理を行って、TDP43タンパク質を分離および凝集させた。1μgのRJK001ポリペプチド-プラスミドをRJK001実験群の細胞に添加した。RJK005~RJK007ポリペプチド-プラスミドを対照群の細胞に添加した。1時間後、細胞を取り出し、膜を固定し、そしてSH-SY5Yで標識されたタンパク質を、従来の免疫蛍光染色手順に従って免疫蛍光染色した。レーザー共焦点蛍光顕微鏡法を使用して、SH-SY5Y細胞におけるTDP-43および細胞内因性G3BP1の蓄積を観察した。
図7に示すように、42℃での1時間の熱ショック処理の後、実験群におけるTDP-43タンパク質の相分離した液滴の数は、対照群における数よりも著しく少なかった。
【0085】
[00108]したがって、上記の観察結果に従うと、SH-SY5Y細胞モデルにおいて、RJK001ポリペプチドは、FUSタンパク質、TIA1タンパク質、およびTDP-43タンパク質の凝集に対して顕著な溶解効果を有している。
【0086】
実施例4
[00109]この実施例は、ALSラット運動ニューロンモデルの調製を説明する。
[00110]FUS-GFPタンパク質およびSOD1(G93A)タンパク質を過剰発現させるために使用され得るALSラット運動ニューロンモデルを、以下のステップを使用して作製した。
【0087】
[00111]ラット運動ニューロンの単離および培養
[00112]E13.5ラットを麻酔した後、腹腔を開き、子宮を10cmのディッシュに取り出す。HBSSを添加し、ハサミおよびピンセットを使用して胚を新たな10cmのディッシュに取り出す。胚の頭部と胴体を分け、ステレオスコープの下で解剖学上の脊髄に移動する。胴体を上向きにして、後肢を超小型の鉗子で固定する。半透明の脊椎が見つかったら、別の超小型鉗子を使用して皮膚を前方および上方へ引き上げ、次いで、脊椎の脇にある結合部を開く。脊椎を尾の方から引き上げる。背側を上向きにして脊椎の頭部を固定し、膜を引き上げる。腹部が上になるよう裏返し、膜を剥がし、DRGのほとんどを除去した。脊髄に付着しているDRGを除去し、新たな6cmのディッシュに移す。マイクロピンセットを使用して脊髄を5mlの遠心管に移し、ピンセットを使用して脊髄を1mmのサイズにつぶし、1×トリプシン(HBSSによって希釈されている)を添加し、そして37℃のインキュベーター内に25~30分間置く。1mlのピペットチップを使用して、予熱した3mlのMN培地に組織塊を吸い込み、そして組織塊を吹いてばらばらにする。40umのフィルターに通し、細胞を5mlの遠心管に移し、400gで5分間遠心分離して、上清を除去する。細胞を3mlのMN培地中で再懸濁し、10ulを取り出し、計数する。1.05×106個の細胞を小型の共焦点ディッシュ、700ulのMN培地に植え、30分間から1時間にわたり壁に接着させ、800ulの培地を添加する。細胞を播種する前に、遠心分離のために細胞を2つの遠心管に移す。1つの細胞遠心管を800ulのエレクトロポレーション溶液で再懸濁し、4つのプラスミド群に分け、次いで、Lonza 2bをエレクトロトランスフェクトする。エレクトロトランスフェクションの後、1mlのMN培地にできるだけ早く移して、エレクトロトランスフェクトされなかったものを作る。細胞を次いで、小型の共焦点ディッシュに移し、インキュベーター内に2時間置いて壁に接着させ、次いで、MN培地を交換して、エレクトロポレーション液をできるだけ多く除去する。
【0088】
[00113]ラット運動ニューロンのトランスフェクション
[00114]DIV7にカルシウムを移し、ディッシュの底部区域、ならびにCaCl2およびHBSの量を計算する。培地中の液体を、予熱したNeurobasalで置き換え、古い培地を使用のために回収する。500ngのプラスミドを、12.5ulの0.3MのCaCl2に添加し、20~30回素早くピペッティングし、良く混合する。12.5ulのHBS(pH6.95~7.0)を遠心管に添加し、これを-20のアリコートで保管する。pHに注意しながら、素早く吸い込み、混合する。液体を各穴に添加し、手首を回転させて培養培地をニューロンに混合し、これをインキュベーター内に戻して60分間置くと、小さな粒子をディッシュの底部で見ることができる。CO2を15分間通して、Neurobasal培地を、それが黄色くなりそれ以上色が変わらなくなるまで予め泡立てる。後の使用のために、0.22umのフィルターで濾過する。ニューロン上の培養培地を除去し、CO2で飽和したNeurobasalを添加し、これをインキュベーターに戻して15分間置いて、ディッシュ内の小さな粒子が消えることを観察する。古い培地を濾過し、新たな培地を1:1で添加し、そしてディッシュ内のNeurobasalを1:1の培地で置き換える。インキュベーターに戻す。
【0089】
実施例5
[00115]この実施例は、ラット運動ニューロンにおけるALSの病原性タンパク質であるFUSタンパク質の凝集物に対するRJK001ポリペプチドの溶解効果を説明する。
【0090】
[00116]ALSの病原性FUSタンパク質凝集物のラット運動ニューロンモデルを実施例4に従って調製した。RJK001ポリペプチド(20μM)を実験群のモデルに添加し、RJK005ポリペプチドを対照群に添加した。運動ニューロン内のタンパク質凝集物に対するポリペプチドの溶解効果を、レーザー共焦点蛍光顕微鏡を使用してライブイメージで記録した。
図8は単一細胞の顕微鏡画像を示しており、この図において、上部のパネルは実験群(RJK001)であり、下部のパネルは対照群(RJK005)である。各画像パネルにおいて、左端の画像は、インビトロ培養の10日目の運動ニューロンおよびタンパク質凝集の画像である。左から2~3枚の画像は、ポリペプチドを添加してすぐ(0分)の顕微鏡画像である。中間の画像は、ポリペプチドを添加した後の異なる時点(30分、60分、90分)での顕微鏡画像であり、右端の画像は、ポリペプチドを添加して120分後の顕微鏡画像である。
【0091】
[00117]
図8に示すように、実験群におけるALSの病原性タンパク質の凝集は、ポリペプチドRJK001を添加して90分後に顕著に溶解し始め、120分後に基本的に溶解したが、凝集物の溶解は対照群では生じなかった。したがって、RJK001ポリペプチドは、ラット運動ニューロンモデルにおいてFUSタンパク質凝集物に対する顕著な溶解効果を有している。
【0092】
実施例6
[00118]この実施例は、ラット運動ニューロンにおけるALSの病原性タンパク質であるSOD1(G93A)タンパク質の凝集物に対するRJK001ポリペプチドの溶解効果を説明する。
【0093】
[00119]ALSの病原性SOD1(G93A)タンパク質凝集物のラット運動ニューロンモデルを実施例4に従って調製した。RJK001ポリペプチド(20μM)を実験群のモデルに添加し、RJK005ポリペプチドを対照群に添加した。運動ニューロン内のタンパク質凝集物に対するポリペプチドの溶解効果を、レーザー共焦点蛍光顕微鏡を使用してライブイメージで記録した。
図9は単一細胞の顕微鏡画像を示しており、この図において、左側のパネルは実験群(RJK001)であり、右側のパネルは対照群(RJK005)である。各画像パネルにおいて、左側の画像は、ポリペプチドを添加してすぐ(0分)の画像である。右側の画像は、ポリペプチドを添加して24時間後の顕微鏡画像である。
【0094】
[00120]
図9に示されるように、実験群におけるALSの病原性タンパク質の凝集は、ポリペプチドRJK001を添加して24時間後に顕著に溶解したが、対照群では凝集物は溶解しなかった。したがって、RJK001ポリペプチドは、ラット運動ニューロンモデルにおいてALSの病原性SOD1(G93A)タンパク質の凝集物に対する顕著な溶解効果を有している。
【0095】
実施例7
[00121]この実施例は、RJK001ポリペプチドを含むAAV2-9血清型を有するウイルスを髄腔内注射することにより、ALSの病原性タンパク質であるSOD1(G93A)タンパク質のインビボでの凝集が溶解したことを説明する。
【0096】
[00122]hSOD1(G93A)トランスジェニックマウスをJackson Laboratory(Bar Harbor、ME、USA)から購入し、遺伝子型を確認した。マウスを8週齢で3つの群にランダムに分け、第1の群には麻酔後に10ulの通常生理食塩水を髄腔内注射し、第2の群(RJK001実験群)にはAAV2-9血清型RJK001を髄腔内注射し、第3の群(RJK005対照群)にはAAV2-9血清型RJK005を髄腔内注射した。
【0097】
[00123]注射の6週間後、オープンフィールド実験をマウスで行い、歩行スコアを単位距離当たりの所要時間として記録した。時間が長いほど、運動能力は悪い。
図10に示されるように、通常生理食塩水およびRJK005対照群と比較すると、実験群のマウスの運動能力は著しく改善した。
【0098】
実施例8
[00124]この実施例は、FUSタンパク質の凝集の溶解に対するポリペプチドRJG001~RJG003の効果を説明する。
【0099】
[00125]インビトロ系を用意し、その中で、FUSタンパク質(濃度10μM)の凝集物を形成させた。pH7.5の条件下で、30μMのポリペプチドRJG001~RJG003および対照ポリペプチドRJK005を系にそれぞれ添加した。共焦点レーザー顕微鏡を使用して、FUSタンパク質の凝集に対するポリペプチドRJG001~RJG003およびRJK005の効果を観察し、結果を
図11に示す。
【0100】
[00126]
図11に示されるように、FUSタンパク質溶液は、ポリペプチドRJG001~RJG003を添加してすぐ(0秒)に典型的な凝集(相分離液滴)を示した。ポリペプチドを添加した40秒後、FUSタンパク質の凝集は低減した(相分離した液滴が低減した)。ポリペプチドRJG001~RJG003を添加した80秒後、FUSタンパク質の凝集は著しく低減した。したがって、ポリペプチドRJG001~RJG003は、FUSタンパク質の凝集を著しく溶解し得る。しかし、ポリペプチドRJK005を添加した後、FUSタンパク質溶液は依然として、典型的な凝集を示した(相分離液滴)。したがって、ポリペプチドRJG001~RJG003はFUS凝集物を効果的に溶解することができない。
【0101】
実施例9
[00127]この実施例は、細胞におけるFUSタンパク質の凝集に対するRJG001~RJG003ポリペプチドの溶解効果を説明する。
【0102】
[00128]実施例2に従ったFUSプラスミドをトランスフェクトされたSH-SY5Y細胞モデル(37℃で最初に培養された)を42℃のインキュベーターに1時間置いて熱ショック処理を行って、FUSタンパク質の凝集を生じさせた。1μgのRJG001、RJG002、またはRJG003ポリペプチド-プラスミドを実験群の細胞に添加した。RJK005ポリペプチドを対照群の細胞に添加した。1時間後、細胞を取り出し、膜を固定し、そしてSH-SY5Yで標識されたストレス顆粒タンパク質G3BP1を、従来の免疫蛍光染色手順に従って免疫蛍光染色した。レーザー共焦点蛍光顕微鏡を使用して、SH-SY5Y細胞における過剰発現したFUSの蓄積を観察した。
【0103】
[00129]
図12に示されるように、42℃での1時間の熱ショック処理の後、実験群におけるFUSタンパク質の相分離した液滴の数は、RJK005対照群における数よりも著しく少なかった。したがって、RJG001~RJG003は、SH-SY5Y細胞モデルにおけるFUSタンパク質の凝集を著しく溶解し得る。
【0104】
[00130]本発明は特に、具体的な実施形態(そのうちの一部は好ましい実施形態である)を参照して示され、記載されてきたが、当業者には、本明細書において開示されている本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、前記具体的な実施形態において形態および詳細の様々な変更がなされ得ることが理解される。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]親水性セグメント及び疎水性セグメントを含むポリペプチドであって、該親水性セグメントが10~20アミノ酸残基長を有し、このうちの少なくとも50%がAsp、Glu、Lys、又はArgであり、
該疎水性セグメントが10~20アミノ酸残基長を有し、このうちの少なくとも50%がTyr、Phe、Trp、Leu、Ile、Val、Met、Pro、Ala、又はCysであり、
親水性セグメントがN末端にあり、疎水性セグメントがC末端にあり、又はその逆であり、
ポリペプチドが20~60アミノ酸残基長を有し、
ポリペプチドがタンパク質凝集物を溶解し得る、上記ポリペプチド。
[態様2]親水性セグメントが、
TX1PQX1X1SX1X1X1VX1X1PX1X1X1(配列番号11)、
X1LX1X1X1SX1X1X1VX1X1X1QX1X1X1(配列番号12)、
X1X1X1VX1X1X1X1X1VX1X1(配列番号13)、及び
X1X1SX1VQX1LX1(配列番号14)
から選択される配列を有し、
X1がそれぞれ、Asp、Glu、Lys、又はArgである、態様1に記載のポリペプチド。
[態様3]親水性セグメントが、
TEPQEESEEEVEEPEER(配列番号15)、
TDPQDDSDDDVDDPDDR(配列番号16)、
TKPQKKSKKKVKKPKKR(配列番号17)、
TRPQRRSRRRVRRPRRR(配列番号18)、
ELDEESEDEVEEEQEDR(配列番号19)、
KEEVDEDRDVDE(配列番号20)、及び
EKSEQDLE(配列番号21)
から選択される配列、
又はこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、又はこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列
を有する、態様1に記載のポリペプチド。
[態様4]疎水性セグメントが、
TFYDQTVSNDL(配列番号22)、
ANSAYYDAHPVTNGI(配列番号23)、
PPQTAAREATSIPGFPAEGAIPLPV(配列番号24)、及び
EGEVAEEPNSRP(配列番号25)
から選択される配列、
又はこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、又はこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列
を有する、態様1に記載のポリペプチド。
[態様5]TEPQEESEEEVEEPEERQQTPEVVPDDSGTFYDQTVSNDLE(配列番号1)、
TDPQDDSDDDVDDPDDRQQTPDVVPDDSGTFYDQTVSNDLD(配列番号2)、
TKPQKKSKKKVKKPKKRQQTPKVVPDDSGTFYDQTVSNDLK(配列番号3)、
TRPQRRSRRRVRRPRRRQQTPRVVPDDSGTFYDQTVSNDLR(配列番号4)、
ELDEESEDEVEEEQEDRQPSPEPVQENANSAYYDAHPVTNGIE(配列番号8)、
KEEVDEDRDVDESSPQDSPPSKASPAQDGRPPQTAAREATSIPGFPAEGAIPLPV(配列番号9)、及び
EGEVAEEPNSRPQEKSEQDLE(配列番号10)
から選択される配列、
又はこれらに対して少なくとも90%の同一性を有する配列、又はこれらと1、2、3、4、もしくは5アミノ酸残基の違いを有する配列
を有する、態様1に記載のポリペプチド。
[態様6]タンパク質凝集物が、FUS凝集物、TDP43凝集物、TIA1凝集物、C9orf72凝集物、又はこれらの組合せである、態様1に記載のポリペプチド。
[態様7]態様1~6のいずれか1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
[態様8]DNA又はRNAである、態様7に記載のポリヌクレオチド。
[態様9]態様7又は8に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[態様10]ウイルスベクターである、態様9に記載のベクター。
[態様11]AAVベクターである、態様10に記載のベクター。
[態様12]態様7又は8に記載のポリヌクレオチドを含む組換えウイルス。
[態様13]AAVである、態様12に記載の組換えウイルス。
[態様14]態様7又は8に記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
[態様15](1)態様1~6のいずれか1に記載のポリペプチド、態様7もしくは8に記載のポリヌクレオチド、態様9~11のいずれか1に記載のベクター、態様12もしくは13に記載の組換えウイルス、又は態様14に記載の宿主細胞、及び(2)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
[態様16]態様1~6のいずれか1に記載のポリペプチドを細胞に導入するステップを含む、細胞内のタンパク質凝集物を溶解するための方法。
[態様17]細胞が神経細胞である、態様16に記載の方法。
[態様18]タンパク質凝集物がFUS凝集物であり、細胞が運動ニューロンである、態様16に記載の方法。
[態様19]細胞がインビトロ又はインビボである、態様16に記載の方法。
[態様20]神経変性疾患の処置を必要とする対象における、神経変性疾患を処置するための方法であって、治療有効量の態様15に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、上記方法。
[態様21]神経変性疾患が、前頭側頭認知症、筋萎縮性側索硬化症、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、ハンチントン病、レビー小体病、運動ニューロン疾患、前頭側頭葉変性症、海馬硬化症、封入体ミオパチー、封入体筋炎、パーキンソン病、嗜銀顆粒病、アルツハイマー病、紀伊半島のパーキンソン/認知症複合、進行性核上性麻痺、及びピック病から選択される、態様20に記載の方法。
[態様22]医薬組成物が中枢神経系に投与される、態様20に記載の方法。
[態様23]医薬組成物が、脊髄注射、髄腔内注射、脳室内注射、脳内注射、又は海馬内注射を介して投与される、態様22に記載の方法。
[態様24]タンパク質凝集物を溶解し得るポリペプチドを同定する方法であって、
変性領域を有するタンパク質を同定するステップであって、該変性領域が、
(a)Glnからなる少なくとも2つのアミノ酸残基、
(b)Arg、Lys、Asp、Glu、及びAsnから選択される少なくとも6つの親水性アミノ酸残基、ならびに
(c)Phe、Cys、Leu、Val、及びIleから選択される少なくとも6つの疎水性のアミノ酸残基
を含む、ステップ;
変性領域からなるポリペプチドを作製するステップ;
ポリペプチドをタンパク質凝集物と接触させるステップ;ならびに
ポリペプチドがタンパク質凝集物を溶解することを判定するステップ
を含む、上記方法。
[態様25]ポリペプチドが20~60アミノ酸残基長を有する、態様24に記載の方法。
[態様26]ポリペプチドが、N末端にある親水性セグメント及びC末端にある疎水性セグメントを含むか、又はその逆である、態様24に記載の方法。
[態様27]タンパク質が、天然の天然変性タンパク質である、態様24に記載の方法。
[態様28]タンパク質凝集物が、FUS凝集物、TDP43凝集物、TIA1凝集物、C9orf72凝集物である、態様24に記載の方法。
【配列表】