(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電池構造及びその製造方法、並びに電池展開構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20241101BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241101BHJP
H01M 50/547 20210101ALI20241101BHJP
H01M 50/238 20210101ALI20241101BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/052
H01M50/547
H01M50/238
(21)【出願番号】P 2020106356
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
(72)【発明者】
【氏名】進藤 康裕
(72)【発明者】
【氏名】東 啓一郎
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/052
H01M 50/50
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、
を有するリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池の対応する一組の接続端同士が連結されてなる連結部と、
を備え、
前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、
前記連結部において、隣接する前記リチウムイオン電池の一組の活物質層同士、及び、隣接する前記リチウムイオン電池の一組のセパレータ同士、は分断されている一方で、隣接する前記リチウムイオン電池の端部同士が前記枠部材を介して連結され
、前記枠部材が折り曲げ可能に構成されている、
電池構造。
【請求項2】
前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が接続されることにより、隣接する一組の前記リチウムイオン電池が、電気的に接続される、
請求項1に記載の電池構造。
【請求項3】
前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が接続された隣接する一組の前記リチウムイオン電池
が、等電位の状態となっている、
請求項1又は2に記載の電池構造。
【請求項4】
前記正極集電体及び前記負極集電体は、それぞれ樹脂集電体層を含み、
前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が積層方向に重なった状態で電気的に接続されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電池構造。
【請求項5】
前記連結部において、一方の前記接続端では前記正極集電体の端部が突出し、他方の前記接続端では前記負極集電体の端部が突出している、
請求項1に記載の電池構造。
【請求項6】
前記連結部において、一方の前記接続端では前記正極集電体の端部及び前記負極集電体の端部が共に突出している、
請求項1に記載の電池構造。
【請求項7】
前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が溶着により固定されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電池構造。
【請求項8】
前記連結部において、一方の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とが嵌合して接続されている、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電池構造。
【請求項9】
正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、
を有するリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池に設けられた複数組の接続端と、
を備えた電池展開構造を用いて電池構造を製造する製造方法であって、
前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、
対応する一組の前記接続端における前記枠部材で屈曲することにより立体形状を形成する、
電池構造の製造方法。
【請求項10】
前記対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士を積層方向に重ねた状態で電気的に接続し、立体形状を形成する、
請求項9に記載の電池構造の製造方法。
【請求項11】
対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士を溶着して固定する、
請求項9又は10に記載の電池構造の製造方法。
【請求項12】
一方の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とを嵌合させて接続する、
請求項9~11のいずれか1項に記載の電池構造の製造方法。
【請求項13】
正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、
を有するリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池に設けられた複数組の接続端と、
を備えており、
前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、
対応する一組の前記接続端における前記枠部材で屈曲することにより立体形状に組み立てられる、
電池展開構造。
【請求項14】
対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が積層方向に重なった状態で電気的に接続され、立体形状に組み立てられる、
請求項13に記載の電池展開構造。
【請求項15】
一方の前記接続端において前記正極集電体の端部が突出し、他方の前記接続端において前記負極集電体の端部が突出している、
請求項13に記載の電池展開構造。
【請求項16】
一方の前記接続端の前記接続端では前記正極集電体の端部及び前記負極集電体の端部が共に突出している、
請求項13に記載の電池展開構造。
【請求項17】
一方の前記接続端の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とが嵌合して接続され、立体形状に組み立てられる、
請求項13~16のいずれか1項に記載の電池展開構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池を有する電池構造及びその製造方法、並びに電池展開構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高容量で小型軽量な二次電池として、リチウムイオン電池が注目されている。近年では、リチウムイオン電池として、樹脂集電体を含む電極層が適用され、可撓性を有する樹脂電池が開発され、各種製品への適用が検討されている。例えば特許文献1では、帯状の樹脂電池をヘルメットの帽体の内周に配置し、ヘッドランプ等の電源として用いる技術が開示されている。また、特許文献2では、腕時計のベルトの内部に電源として板状の樹脂電池を配置する技術が開示されている。特許文献3には、飛行体の脚部の内部空間に電源として細長状の樹脂電池を配置する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-75268号公報
【文献】特開2017-4801号公報
【文献】特開2017-4802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1~3の技術では、いずれも、可撓性を有する樹脂電池を、製品の湾曲を要する或いは湾曲した製品部位(湾曲部位)に配置している。詳細には、もともとは平面形状(或いはシート状)の1つの樹脂電池を、その特性(可撓性等)を利用して、製品の湾曲部の空間に対応するように円弧状に折り曲げて配置した構成となっている。つまり、特許文献1~3記載の湾曲させた樹脂電池は、その湾曲部分の一端から他端まで活物資層及びセパレータ等が連続的に繋がった内部構造を有している(例えば特許文献2の
図2、特許文献3の
図1等)。このような構成の場合、樹脂電池の特性を利用して、製品のある程度の湾曲部位に対応するように配置することができるが、所定以上に屈曲した部位(例えばL字形状のような屈曲部位)を有する製品には、前述した内部構造を屈曲させると電池機能に支障を来たすおそれがあるため、適用が難しい。換言すれば、特許文献1~3に記載の技術では、ある程度(例えば特許文献1~3に記載された程度の円弧状)の湾曲部位を有する特定の製品には対応可能であるものの、その適用可能な範囲が限定的であり(すなわち特定の製品のみしか適用できず)、他の製品にも拡張して適用できるような自由度の高い樹脂電池が望まれていた。
【0005】
本発明は、製品の単純な湾曲部位等への適用のみならず、従来の電池構造では適用困難な製品部位にも対応可能な高い自由度を確保することができ、製品適用範囲を拡張することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記のような知見に基づいて鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
【0007】
本発明の一態様に係る電池構造は、
正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する枠部材と、
を有するリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池の対応する一組の接続端同士が連結されてなる連結部と、
を備え、
前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、
前記連結部において、隣接する前記リチウムイオン電池の一組の活物質層同士、及び、隣接する前記リチウムイオン電池の一組のセパレータ同士、は分断されている一方で、隣接する前記リチウムイオン電池の端部同士が前記枠部材を介して連結されている。
【0008】
上記態様では、前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が接続されることにより、隣接する一組の前記リチウムイオン電池が電気的に接続されてもよい。
【0009】
前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が接続された隣接する一組の前記リチウムイオン電池が、実質的に等電位の状態となっていてもよい。
【0010】
上記態様では、前記正極集電体及び前記負極集電体は、それぞれ樹脂集電体層を含み、前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が積層方向に重なった状態で電気的に接続されていてもよい。
【0011】
上記態様では、前記連結部において、一方の前記接続端では前記正極集電体の端部が突出し、他方の前記接続端では前記負極集電体の端部が突出していてもよい。
【0012】
上記態様では、前記連結部において、一方の前記接続端では前記正極集電体の端部及び前記負極集電体の端部が共に突出していてもよい。
【0013】
上記態様では、前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が溶着により固定されていてもよい。
【0014】
上記態様では、前記連結部において、一方の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とが嵌合して接続されていてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る電池構造の製造方法は、
正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、
を有するリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池に設けられた複数組の接続端と、
を備えた電池展開構造を用いて電池構造を製造する製造方法であって、
前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、
対応する一組の前記接続端における前記枠部材で屈曲することにより立体形状を形成する。
【0016】
上記態様に係る製造方法では、前記対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士を積層方向に重ねた状態で電気的に接続し、立体形状を形成してもよい。
【0017】
上記態様に係る製造方法では、対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士を溶着して固定してもよい。
【0018】
上記態様に係る製造方法では、一方の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とを嵌合させて接続してもよい。
【0019】
本発明の別の一態様に係る電池展開構造は、
正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、
負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、
前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、
を有するリチウムイオン電池と、
前記リチウムイオン電池に設けられた複数組の接続端と、
を備えており、
前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、
対応する一組の前記接続端における前記枠部材で屈曲することにより立体形状に組み立てられる。
【0020】
対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が積層方向に重なった状態で電気的に接続され、立体形状に組み立てられてもよい。
【0021】
上記別の一態様では、一方の前記接続端において前記正極集電体の端部が突出し、他方の前記接続端において前記負極集電体の端部が突出してもよい。
【0022】
上記別の一態様では、一方の前記接続端の前記接続端では前記正極集電体の端部及び前記負極集電体の端部が共に突出してもよい。
【0023】
上記別の一態様では、一方の前記接続端の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とが嵌合して接続され、立体形状に組み立てられてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、製品の単純な湾曲部位等への適用のみならず、従来の電池構造では適用困難な製品部位にも対応可能な高い自由度を確保することができ、製品適用範囲を拡張することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1の実施形態による電池展開構造を示す模式図である。
【
図2】第1の実施形態による電池展開構造の他の例を示す概略断面図である。
【
図3】第1の実施形態による電池展開構造に適用されるリチウムイオン二次電池の他の例を示す概略断面図である。
【
図4】第1の実施形態による電池構造を示す模式図である。
【
図5】第1の実施形態による箱型の電池構造を内蔵する、いわゆる通い箱を示す概略断面図である。
【
図6】第2の実施形態による電池構造を示す模式図である。
【
図7】第2の実施形態によるによる筒型の電池構造がモータの補助電源として使用される様子を示す概略斜視図である。
【
図8】第3の実施形態による電池構造をその製造方法と共に示す模式図である。
【
図9】第3の実施形態による半球殻型の電池構造を内蔵するヘルメットを一部破断して示す模式図である。
【
図10】第4の実施形態による電池構造を内蔵する飛行体の一例である無人飛行機を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の諸実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の各図において、図示の便宜上、電池構造の厚みを強調しており、実際の厚みとは異なる。
【0027】
[第1の実施形態]
第1の実施形態では、リチウムイオン電池を備えた電池展開構造、及びこの電池展開構造を用いて構成される電池構造を開示する。
【0028】
(電池展開構造の構成)
図1は、本実施形態による電池展開構造を示す模式図であり、(a)が集電体の一部を切り欠いた概略平面図、(b)が(a)のI-I'に沿った概略断面図、(c)が(a)のII-II'に沿った概略断面図である。
【0029】
本実施形態による電池展開構造は、展開状態の平面態様とされており、箱型に組み立てられるものである。電池展開構造10は、例えば5つの矩形状部分10A~10Eが連結されて平面状に一体形成されている。
【0030】
各矩形状部分は、
図1(b)~(c)に示すように、リチウムイオン二次電池1を有している。各リチウムイオン二次電池1は、
図1に示すようにシート状の単電池である。
リチウムイオン二次電池1は、正極電極11及び負極電極13がセパレータ12を介して積層されている。正極電極11は、正極集電体21及び正極活物質層22が積層されてなる。負極電極13は、負極集電体23及び負極活物質層24が積層されてなる。リチウムイオン二次電池1は、正極活物質層22、セパレータ12、及び負極活物質層24の外周部を取り囲み封止するシール部14が設けられ、封止された内部に電解液が封入されて構成されている。
【0031】
電池展開構造10では、正極集電体21及び負極集電体23が矩形状部分10A~10Eの全体に亘ってそれぞれ一枚のシート状に一体形成されている。正極集電体21及び負極集電体23は、矩形状部分10A~10Eの各々に共有され、並列接続されている。正極活物質層22及び負極活物質層24は、矩形状部分ごとに矩形状に分割して設けられている。
【0032】
矩形状部分10Aと矩形状部分10Bとの間、矩形状部分10Aと矩形状部分10Cとの間、矩形状部分10Aと矩形状部分10Dとの間、及び矩形状部分10Aと矩形状部分10Eとの間において、シール部14が一体とされている。正極集電体21及び負極集電体23は可撓性を有しており、矩形状部分10Aと矩形状部分10Bとの間、矩形状部分10Aと矩形状部分10Cとの間、矩形状部分10Aと矩形状部分10Dとの間、及び矩形状部分10Aと矩形状部分10Eとの間でそれぞれ屈曲自在とされている。
【0033】
矩形状部分10B,10Cの一組の側面部分(接続端10aと言う)では、それぞれシール部14に凸部14aが形成されており、当該シール部14が第1の連結部材とされている。各接続端10aでは、正極集電体21の端部及び負極集電体23の端部がシール部14から突出している。矩形状部分10D,10Eの一組の側面部分(接続端10bと言う)では、それぞれシール部14に凹部14bが形成されており、当該シール部14が第2の連結部材とされている。
【0034】
ここで、
図1とは逆に、矩形状部分10D,10Eの接続端10bにおいて正極集電体21の端部及び負極集電体23の端部がシール部14から突出している構成としても良い。また、
図2(a),(b)に示すように、矩形状部分10B,10Cの接続端10aでは正極集電体21の端部のみがシール部14から突出し、矩形状部分10D,10Eの接続端10bでは負極集電体23の端部のみがシール部14から突出するようにしても良い。また、
図2とは逆に、矩形状部分10B,10Cの接続端10aでは負極集電体23の端部のみがシール部14から突出し、矩形状部分10D,10Eの接続端10bでは正極集電体21の端部のみがシール部14から突出するようにしても良い。
【0035】
(正極集電体)
正極集電体を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス、鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。
【0036】
また、集電体は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体であることが好ましい。集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0037】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、導電性高分子や、樹脂に必要に応じて導電剤を添加したものを用いることができる。導電性高分子材料を構成する導電剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0038】
正極集電体21としては、導電性フィラーとマトリックス樹脂とを含むことが好ましい。マトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0039】
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。
具体的には、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。これらの導電性フィラーは1種単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。また、これらの合金又は金属酸化物を用いても良い。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、更に好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとしては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電性フィラーの材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでも良い。
【0040】
導電性フィラーの平均粒子径は、特に限定されるものではないが、電池の電気特性の観点から、0.01μm~10μmであることが好ましく、0.02μm~5μmであることがより好ましく、0.03μm~1μmであることが更に好ましい。なお、本明細書中において、「粒子径」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0041】
導電性フィラーの形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であっても良く、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されている形態であっても良い。
【0042】
導電性フィラーは、その形状が繊維状である導電性繊維であっても良い。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性の良い金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。また、グラフェンを練りこんだポリプロピレン樹脂も好ましい。導電性フィラーが導電性繊維である場合、その平均繊維径は0.1μm~20μmであることが好ましい。
【0043】
樹脂集電体中の導電性フィラーの重量割合は、5重量%~90重量%であることが好ましく、20重量%~80重量%であることがより好ましい。特に、導電性フィラーがカーボンの場合、導電性フィラーの重量割合は、20重量%~30重量%であることが好ましい。
【0044】
樹脂集電体は、マトリックス樹脂及び導電性フィラーの他に、その他の成分(分散剤、架橋促進剤、架橋剤、着色剤、紫外線吸収剤、可塑剤等)を含んでいても良い。また、複数の樹脂集電体を積層して用いても良く、樹脂集電体と金属箔とを積層して用いても良い。
【0045】
正極集電体21の厚さは特に限定されないが、5μm~150μmであることが好ましい。複数の樹脂集電体を積層して正極集電体として用いる場合には、積層後の全体の厚さが5μm~150μmであることが好ましい。
【0046】
正極集電体21は、例えば、マトリックス樹脂、導電性フィラー及び必要により用いるフィラー用分散剤を溶融混練して得られる導電性樹脂組成物を公知の方法でフィルム状に成形することにより得ることができる。導電性樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、Tダイ法、インフレーション法及びカレンダー法等の公知のフィルム成形法が挙げられる。なお、正極集電体21は、フィルム成形以外の成形方法によっても得ることができる。
【0047】
(正極活物質層)
正極活物質層22は、正極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。ここで、非結着体とは、正極活物質層中において正極活物質の位置が固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質同士及び正極活物質と集電体とが不可逆的に固定されていないことを意味する。
【0048】
正極活物質層22が非結着体である場合、正極活物質同士は不可逆的に固定されていないため、正極活物質同士の界面を機械的に破壊することなく分離することができ、正極活物質層22に応力がかかった場合でも正極活物質が移動することで正極活物質層22の破壊を防止することができ好ましい。非結着体である正極活物質層22は、正極活物質層13を、正極活物質と電解液とを含みかつ結着剤を含まない正極活物質層22にする等の方法で得ることができる。
【0049】
なお、本明細書において、結着剤とは、正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない薬剤を意味し、デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の公知の溶剤乾燥型のリチウムイオン電池用結着剤等が挙げられる。これらの結着剤は溶剤に溶解又は分散して用いられ、溶剤を揮発、留去することで表面が粘着性を示すことなく固体化するので正極活物質同士及び正極活物質と集電体とを可逆的に固定することができない。
【0050】
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO2、LiNiO2、LiAlMnO4、LiMnO2及びLiMn2O4等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO4、LiNi1-xCoxO2、LiMn1-yCoyO2、LiNi1/3Co1/3Al1/3O2及びLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMaM'bM”cO2(M、M'及びM”はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO4、LiCoPO4、LiMnPO4及びLiNiPO4)、遷移金属酸化物(例えばMnO2及びV2O5)、遷移金属硫化物(例えばMoS2及びTiS2)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用しても良い。なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであっても良い。
【0051】
正極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01μm~100μmであることが好ましく、0.1μm~35μmであることがより好ましく、2μm~30μmであることが更に好ましい。
【0052】
正極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆正極活物質であっても良い。正極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、正極の体積変化が緩和され、正極の膨張を抑制することができる。
【0053】
被覆材を構成する高分子化合物としては、特開2017-054703号公報及び国際公開第2015-005117号等に活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0054】
被覆材には、導電剤が含まれていても良い。導電剤としては、正極集電体21に含まれる導電性フィラーと同様のものを好適に用いることができる。
【0055】
正極活物質層22には、粘着性樹脂が含まれていても良い。粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着剤として用いられる溶液乾燥型の電極用バインダは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。従って、上述した結着剤(溶液乾燥型の電極用バインダ)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0056】
正極活物質層22には、電解質と非水溶媒を含む電解液が含まれていても良い。電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(FSO2)2及びLiClO4等の無機酸のリチウム塩、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2及びLiC(CF3SO2)3等の有機酸のリチウム塩等が挙げられ、LiN(FSO2)2(LiFSIともいう)が好ましい。
【0057】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0058】
ラクトン化合物としては、5員環(γ-ブチロラクトン及びγ-バレロラクトン等)及び6員環のラクトン化合物(δ-バレロラクトン等)等を挙げることができる。
【0059】
環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート及びブチレンカーボネート等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネート、エチル-n-プロピルカーボネート及びジ-n-プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0060】
鎖状カルボン酸エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及びプロピオン酸メチル等が挙げられる。環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジメトキシメタン及び1,2-ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0061】
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリクロロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)、2-エトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン、2-トリフルオロエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン及び2-メトキシエトキシ-1,3,2-ジオキサホスホラン-2-オン等が挙げられる。ニトリル化合物としては、アセトニトリル等が挙げられる。アミド化合物としては、DMF等が挙げられる。スルホンとしては、ジメチルスルホン及びジエチルスルホン等が挙げられる。非水溶媒は1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0062】
非水溶媒のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、更に好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル及び鎖状炭酸エステルであり、特に好ましいのは環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルの混合液である。最も好ましいのはエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合液、又は、エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)の混合液である。
【0063】
正極活物質層22には、導電助剤が含まれていても良い。導電助剤としては、正極集電体11に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0064】
正極活物質層22における導電助剤の重量割合は、3重量%~10重量%であることが好ましい。
【0065】
正極活物質層22は、例えば、正極活物質及び電解液を含むスラリーを正極集電体21又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。基材の表面に正極活物質層22を形成した場合、転写等の方法によって正極活物質層22を正極集電体21と組み合わせれば良い。上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂が含まれていても良い。また、正極活物質は被覆正極活物質であっても良い。
【0066】
正極活物質層22の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150μm~600μmであることが好ましく、200μm~450μmであることがより好ましい。
【0067】
(負極集電体)
負極集電体23としては、正極集電体21で記載した構成と同様のものを適宜選択して用いることができ、同様の方法により得ることができる。負極集電体23の厚さは特に限定されないが、5μm~150μmであることが好ましい。
【0068】
(負極活物質層)
負極活物質層24は、負極活物質を含む混合物の非結着体であることが好ましい。負極活物質層が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である負極活物質層23を得る方法等は、正極活物質層22が非結着体であることが好ましい理由、及び非結着体である正極活物質層22を得る方法と同様である。
【0069】
負極活物質としては、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。上記負極活物質のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施しても良い。
【0070】
これらの中でも、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましく、炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素が更に好ましく、珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体が更に好ましい。
【0071】
負極活物質の体積平均粒子径は、電池の電気特性の観点から、0.01μm~100μmが好ましく、0.1μm~20μmであることがより好ましく、2μm~10μmであることが更に好ましい。
【0072】
本明細書において、負極活物質の体積平均粒子径は、マイクロトラック法(レーザー回折・散乱法)によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径(Dv50)を意味する。マイクロトラック法とは、レーザー光を粒子に照射することによって得られる散乱光を利用して粒度分布を求める方法である。なお、体積平均粒子径の測定には、日機装(株)製のマイクロトラック等を用いることができる。
【0073】
負極活物質は、その表面の少なくとも一部が高分子化合物を含む被覆材により被覆された被覆負極活物質であっても良い。負極活物質の周囲が被覆材で被覆されていると、負極の体積変化が緩和され、負極の膨張を抑制することができる。
【0074】
被覆材としては、被覆正極活物質を構成する被覆材と同様のものを好適に用いることができる。
【0075】
負極活物質層24は、電解質と非水溶媒を含む電解液を含有する。
電解液の組成は、正極活物質層22に含まれる電解液と同様の電解液を好適に用いることができる。
【0076】
負極活物質層24には、導電助剤が含まれていても良い。導電助剤としては、正極活物質層22に含まれる導電性フィラーと同様の導電性材料を好適に用いることができる。
【0077】
負極活物質層24における導電助剤の重量割合は、2重量%~10重量%であることが好ましい。
【0078】
負極活物質層24には、粘着性樹脂が含まれていても良い。粘着性樹脂としては、正極活物質層22の任意成分である粘着性樹脂と同様のものを好適に用いることができる。
【0079】
負極活物質層24は、例えば、負極活物質及び電解液を含むスラリーを負極集電体23又は基材の表面に塗布し、余分な電解液を除去する方法によって作製することができる。基材の表面に負極活物質層24を形成した場合、転写等の方法によって負極活物質層24を負極集電体23と組み合わせれば良い。上記スラリーには、必要に応じて、導電助剤や粘着性樹脂等が含まれていても良い。また、負極活物質は被覆負極活物質であっても良い。
【0080】
負極活物質層24の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150μm~600μmであることが好ましく、200μm~450μmであることがより好ましい。
【0081】
(セパレータ)
セパレータ12としては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、上記多孔性フィルムの積層フィルム(多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム等)、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン単電池に用いられるセパレータが挙げられる。
【0082】
リチウムイオン二次電池1は、正極活物質層22及び負極活物質層24の外周を封止することで電解液が封入された構成である。正極活物質層22及び負極活物質層23の外周を封止する方法としては、例えば、シール部14を用いて封止する方法が挙げられる。シール部14は、正極集電体21及び負極集電体23の間に配置されており、セパレータ12の外周を封止する機能を有する。
【0083】
シール部14としては、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料が好ましく、熱硬化性高分子材料がより好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0084】
リチウムイオン二次電池1の製造方法としては、例えば、正極集電体21、正極活物質層22、セパレータ12、負極活物質層24、及び負極集電体23をこの順に重ね合わせた後、電解液を注入し、正極活物質層22及び負極活物質層24の外周をシール部14で封止することで得ることができる。正極活物質層22及び負極活物質層24の外周をシール部14で封止する方法としては、液状の封止材を塗布し硬化して封止する方法が挙げられる。
【0085】
また、シール部14は、上述した電解液に対して耐久性のある高分子材料からなり、正極活物質層22又は負極活物質層24を収容する貫通孔を有する枠体であっても良い。シール部14が枠体である場合には、正極集電体21又は負極集電体23を枠体の一方の枠面に接合して貫通孔の一端を封止し、枠体の他方の枠面上にセパレータを挿入した状態で枠体同士を接着して封止する方法でリチウムイオン二次電池1を得ることができる。
【0086】
(外装フィルム)
本実施形態の電池展開構造10は、リチウムイオン二次電池1の少なくとも一部を覆うように外装フィルム(不図示)を設けるようにしても良い。外装フィルムは、可撓性を有する絶縁材料からなり、電池に用いられている公知の材質を用いることが可能であり、好ましくはラミネートフィルムである。ラミネートフィルムとしては、外側にナイロンフィルム、中心にアルミニウム箔、内側に変性ポリプロピレン等の接着層を有した3層ラミネートフィルムを好ましく用いることができる。電池展開構造10は、リチウムイオン二次電池1及びこれを覆う外装フィルムが共に可撓性を有するため、全体としても可撓性を有する。
【0087】
(単電池)
以上、
図1及び2を参照しながらリチウムイオン二次電池1(単電池)の構成の例を説明したが、本実施形態に係る単電池は、図示の態様に限定されない。例えば、
図3(a)に示す態様の単電池1も、本実施形態に含まれる。
図3(a)に示す単電池1は、以上説明した構成と同様に、正極集電体21と、正極活物質層22と、セパレータ12と、負極集電体23と、負極活物質層24と、シール部14(枠部材)と、を有する。一方で、以上説明した単電池1の構成と異なり、
図3(a)に示す接続端10aでは、正極集電体21の端部及び負極集電体23の端部がシール部14から突出していない。詳細には、正極集電体21の端部及び負極集電体23の端部は、積層方向から視たときに、シール部14の端部と実質的に同一位置となっている。このような態様の単電池1を複数用意し(不図示)、積層方向と直交する方向(面方向)に並置させ、隣接する単電池1の接続端10aに位置するシール部14同士を接着(例えばヒートシールにより接着)することにより、隣接する1組の単電池1を連結させた電池構造を得ることができる。
【0088】
図示は省略するが、隣接する単電池1の接続端10aに位置するシール部14(枠部材)同士の接着を容易にするために、シール部14の端部を、正極集電体21の端部及び負極集電体23の端部よりも、面方向外側に突出させた構成としてもよい。このようにシール部14の端部を集電体よりも突出させた構成とすることにより、隣接する単電池1の接続端10a同士を接着(例えばヒートシールにより接着)する際に、シール部14を介して接着し易くすることができる。その結果、樹脂製の枠部材を接着材料として容易に隣接する単電池1を連結することができ、製造プロセス上、容易に電池構造を製造することができる。その他、正極集電体21と負極集電体23との間に配置されるシール部14は前述した封止する機能(正極活物質層22、負極活物質層24及びセパレータ12を封止する機能)を有していれば、その形状や設置位置(部材間の相互の位置を含む)等を適宜変形することが可能である。
【0089】
なお、本実施形態におけるリチウムイオン二次電池は、電解質に液体材料を使用した電池を含み、電解質に固体材料を使用した電池(いわゆる全固体電池)を含む。また本実施形態におけるリチウムイオン電池は、集電体として金属箔(金属集電箔)を有する電池を含み、金属箔に代わって導電性材料が添加された樹脂から構成される、いわゆる樹脂集電体を有する電池を含む。当該樹脂集電体を、後述するバイポーラ電極用樹脂集電体として用いる場合には、当該樹脂集電体の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成して双極型電極を構成したものであってもよい。なお、本実施形態におけるリチウムイオン電池は、バインダを用いて正極または負極活物質等を正極用または負極用集電体にそれぞれ塗布して電極を構成したものを含み、双極型の電池の場合には、集電体の一方の面にバインダを用いて正極活物質等を塗布して正極層を、反対側の面にバインダを用いて負極活物質等を塗布して負極層を有する双極型電極を構成したものを含む。
【0090】
(組電池)
以上説明したリチウムイオン二次電池1を複数積層し、
図3(b)に示す組電池2(積層電池)として用いてもよい。
図3(b)に示す例では、積層方向に隣接するリチウムイオン二次電池1の負極集電体の上面と、正極集電体の下面と、が隣接するように積層されている。この場合、リチウムイオン二次電池1は、直列接続されている。本実施形態における組電池2は、このように、各々のリチウムイオン二次電池1が複数積層されて直列接続されるものを含むが、平面状電池(単電池ユニット)を、電気的接続はないが物理的に接触するよう複数積層したものも含まれる。また、前述した集電体は、集電体の一方の面に正極が形成され他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極用樹脂集電体として用いることもできる。したがって、本実施形態における組電池2は、集電体(バイポーラ電極用樹脂集電体)の一方の面に正極を形成し、もう一方の面に負極を形成して双極型電極を作製し、双極型電極をセパレータと積層してなる積層体(双極型電池)を含む。
【0091】
(電池構造の構成)
図4は、本実施形態による電池構造を示す模式図であり、(a)が概略斜視図、(b)が(a)のI-I'に沿った概略断面図、(c)が(a)のII-II'に沿った概略断面図である。
【0092】
本実施形態による電池構造100は、展開状態の平面態様とされている電池展開構造10を立体形状(箱状)に組み立てることにより得られる。
具体的には、矩形状部分10Aと矩形状部分10Bとの間、矩形状部分10Aと矩形状部分10Cとの間、矩形状部分10Aと矩形状部分10Dとの間、及び矩形状部分10Aと矩形状部分10Eとの間で折り曲げる。電池構造100においては、正極集電体21及び負極集電体23が矩形状部分10A~10Eの全体に亘ってそれぞれ一枚のシート状に一体形成され、正極活物質層22及び負極活物質層24が矩形状部分ごとに矩形状に分割して設けられている。上記の折り曲げ部分には、正極活物質層22及び負極活物質層24は設けられておらず(またセパレータも設けられておらず)、可撓性に優れた正極集電体21及び負極集電体23及びシール部14のみが設けられていることから、電池機能に支障を来たすことなく折り曲げ部分で箱形状に適合させて自在に折り曲げることができる。
【0093】
なお、リチウムイオン電池の対応する一組の接続端同士が連結されてなる連結部(折り曲げ部分)において、正極集電体の端部同士及び負極集電体の端部同士が積層方向に重なっていなくてもよい。すなわち、連結部において、正極集電体の端部同士及び負極集電体の端部同士が接触していればよく、これにより隣接するリチウムイオン電池の電気的な導通が確保される。
【0094】
このように本実施形態では、連結部(折り曲げ部分)において、隣接するリチウムイオン電池の一組の活物質層同士、及び、隣接するリチウムイオン電池の一組のセパレータ同士、は分断されている一方で、隣接するリチウムイオン電池の端部同士が枠部材を介して連結されている。これにより、電池機能に支障を来たすことなく樹脂製の枠部材の部分で自在に折り曲げて箱形状に適合させることができる。その結果、製品の単純な湾曲部位等への適用のみならず、従来の電池構造では適用困難な製品部位(例えば、L字形状に屈曲した屈曲部位を含む立体構造)にも対応可能な高い自由度を確保することができ、製品適用範囲を拡張することができる。
【0095】
この折り曲げと共に、矩形状部分10Bの接続端10aと矩形状部分10Dの接続端10b、矩形状部分10Bの接続端10aと矩形状部分10Eの接続端10b、矩形状部分10Cの接続端10aと矩形状部分10Dの接続端10b、及び矩形状部分10Cの接続端10aと矩形状部分10Eの接続端10bをそれぞれ隣接させる。各接続端10aの凸部14aを各接続端10bの凹部14bに嵌合させて機械的に接続させると共に、各接続端10aで突出した正極集電体21の端部と各接続端10bの正極集電体21の端部、及び各接続端10aで突出した負極集電体23の端部と各接続端10bの負極集電体23の端部をそれぞれ重ね合わせる。
【0096】
この状態で、電池展開構造10を所定温度でアニール処理する。これにより、重畳された正極集電体21の端部同士及び負極集電体23の端部同士が溶着し、電気的に接続される。このようにして、接続端10a,10bで機械的接続及び電気的接続が得られ、連結部10abが形成される。
以上のようにして、本実施形態による箱型の電池構造100が得られる。
【0097】
上記のように、本実施形態による電池構造100は、展開状態の1枚の電池展開構造10から所望の立体形状(箱状)に容易に組み立てられる。このようにして組み立てられた電池構造100では、連結部において違和感なくスムーズな表面状態で接続が得られており、簡素で確実な電気的接続が実現する。
【0098】
更に、電池構造100では、連結部において一方の端部の凸部が他方の端部の凹部に嵌合することにより、連結部の確実な機械的接続が得られ、これにより上記の電気的接続がサポートされている。
【0099】
(電池構造の用途)
図5は、本実施形態による箱型の電池構造を内蔵する、いわゆる通い箱を示す概略断面図である。
【0100】
この通い箱101は、電池構造100を内蔵しており、ペルチェ素子111及びこれと接続された放熱板112、コントローラ113が設けられている。通い箱101は、必要に応じて上蓋114が付設され、電池構造100を電源とした冷蔵・温蔵装置として機能する。コントローラ113は、所定の液晶表示部が設けられ、ペルチェ素子111の制御による箱内の温度制御機能、外部との通信機能、及びGPS機能等を有しており、収納物(図示の例では種々の果物)や納期、現在位置や電池残量等の情報をコントローラ113の液晶表示部に適宜したり、外部と通信したりすることができる。
【0101】
本実施形態による箱型の電池構造は、例えば上記した通い箱101及びこれを運搬するためのドローンや無人搬送車等に適用することも可能である。この場合、電池構造100は、通い箱101の温度調節用の電源であるとともに、ドローン又は無人搬送車を操作するための電源にも利用される。
【0102】
[第2の実施形態]
図6は、本実施形態による電池構造を示す模式図であり、(a)が概略斜視図、(b)が(a)の各矩形状部分を示す概略斜視図、(c)が(a)の連結部の近傍の概略断面図である。
【0103】
この電池構造200は、複数(図示の例では12個)の矩形状部分20が連結されて筒状とされている。複数の矩形状部分20が連結されてなる筒状の表面、ここでは全面を覆うように、可撓性を有する絶縁材料からなる外装フィルム(不図示)が設けられても良い。各矩形状部分20は、第1の実施形態による電池展開構造10の矩形状部分10A~10Eと同様に、リチウムイオン二次電池1を有している。なお、第1の実施形態と同様に、組電池構成のリチウムイオン二次電池2としても良い。
【0104】
各矩形状部分20において、一組の側面部分のうちの一方(接続端20aと言う)には、それぞれシール部14に凸部14aが形成されており、当該シール部14が第1の連結部材とされている。各接続端20aでは、正極集電体21の端部がシール部14から突出している。一組の側面部分のうちの他方(接続端20bと言う)には、それぞれシール部14に凹部14bが形成されており、当該シール部14が第2の連結部材とされている。各接続端20bでは、負極集電体23の端部がシール部14から突出している。
【0105】
ここで、接続端20aにおいて、正極集電体21の端部及び負極集電体23の端部の双方をシール部14から突出させ、接続端20bでは突出部分を有しない構成にしても良い。
【0106】
本実施形態による電池構造200は、シート状態様とされている各矩形状部分20を立体形状(筒状)に組み立てることにより得られる。
具体的には、2つの矩形状部分20に着目した場合、一方の矩形状部分20の接続端20aを他方の矩形状部分20の接続端20bに隣接させる。各接続端20aの凸部14aを各接続端20bの凹部14bに嵌合させて機械的に接続させると共に、接続端20aで突出した正極集電体21の端部と接続端20bの正極集電体21の端部、及び接続端20bで突出した負極集電体23の端部と接続端20aの負極集電体23の端部をそれぞれ重ね合わせる。
【0107】
この状態で、所定温度でアニール処理する。これにより、重畳された正極集電体21の端部同士及び負極集電体23の端部同士が溶着し、電気的に接続される。このようにして、接続端20a,20bで機械的接続及び電気的接続が得られ、連結部20abが形成される。
以上のようにして、本実施形態による筒型の電池構造200が得られる。
【0108】
上記のように、本実施形態による電池構造200は、シート状である複数枚の矩形状部分20から所期の立体形状(筒状)に容易に組み立てられ、隣接する矩形状部分20の接続端の連結部で正極集電体21の端部同士及び負極集電体23の端部同士が積層方向に重なった状態で接続される。このようにして組み立てられた電池構造200では、連結部において違和感なくスムーズな表面状態で接続が得られており、簡素で確実な電気的接続が実現する。
【0109】
更に、電池構造200では、連結部において一方の端部の凸部が他方の端部の凹部に嵌合することにより、連結部の確実な機械的接続が得られ、これにより上記の電気的接続がサポートされている。
【0110】
(電池構造の用途)
図7は、本実施形態による筒型の電池構造がモータの補助電源として使用される様子を示す概略斜視図である。
【0111】
モータ201の筐体面に、本実施形態による筒型の電池構造200が付設される。電池構造200には、複数の矩形状部分20が連結されてなる筒状の全面を覆うように外装フィルム202が設けられている。図示の例では、外装フィルム202の一部を切り欠いて示している。電池構造200をモータ201の補助電源として用いて、モータ201の起動時にモータ201をアシストすることにより、モータ201への電力線を細くしたり、電力線を簡略化したりすることができる。
【0112】
なお、電池構造200を、モータ201の筐体面上ではなく、筐体と一体としてモータ201内に組み込むようにしても良い。
【0113】
本実施形態による電池構造200を、各矩形状部分20を台形状に形成して、例えば一方の径が他方の径と異なる形状とし、傘型又は笠型のものとしても良い。この電池構造200は、例えばランプの笠部分に内蔵する等の利用が考えられる。
【0114】
[第3の実施形態]
図8は、本実施形態による電池構造をその製造方法と共に示す模式図であり、(a)が概略平面図、(b)が連結部近傍を示す概略断面図、(c)が立体形状とされた様子を示す概略斜視図、(d)が成形時の概略断面図、(e)が完成した電池構造を示す概略斜視図である。
【0115】
本実施形態による電池構造を製造するには、先ず
図8(a)に示すように、シート状の複数(図示の例では6個)の扇状枠体30aが放射状に一体化されてなる枠状部材30Aを用意する。枠状部材30Aには、各扇状枠体30aに穴30a1及びこれに対応した突起部30a2が設けられている。
【0116】
続いて、
図8(a),(b)に示すように、各扇状枠体30a内に、正極活物質層22、セパレータ12、及び負極活物質層24をこの順に重ね合わせた後、電解液を注入し、正極活物質層22を覆う正極集電体21、及び負極活物質層24を覆う負極集電体23をそれぞれ積層する。ここで、扇状枠体30Aがシール部となり、正極活物質層22及び負極活物質層24の外周が扇状枠体30aで封止される。以上により、扇状枠体30aごとに、第1の実施形態と同様のリチウムイオン二次電池1が形成される。なお、第1の実施形態と同様に、組電池構成のリチウムイオン二次電池2としても良い。
【0117】
本実施形態では、扇状枠体30aのリチウムイオン二次電池1において、正極集電体21の端部21aが突出しており、端部21aが隣接する扇状枠体30aのリチウムイオン二次電池1の正極集電体21と重ね合わせられる。当該リチウムイオン二次電池1において、負極集電体23の端部23aが突出しており、端部23aが(上記の端部21aの場合とは逆方向で)隣接する扇状枠体30aのリチウムイオン二次電池1の負極集電体23と重ね合わせられる。以上により、電池展開構造30が得られる。
【0118】
この状態で、電池展開構造30を所定温度でアニール処理する。これにより、重畳された端部21aと正極集電体21、及び端部23aと負極集電体23が溶着し、電気的に接続される。このようにして、全ての扇状枠体30aの正極集電体21及び全ての扇状枠体30aの負極集電体23がそれぞれ電気的に接続される。
【0119】
なお、負極集電体24の端部24aを、端部21aと同一箇所に設けるようにしても良い。この場合には、当該リチウムイオン二次電池1の端部21aが隣接する扇状枠体30Aのリチウムイオン二次電池1の正極集電体21と、端部24aが負極集電体24とそれぞれ重ね合わせられ、溶着される。
【0120】
続いて、
図8(c)に示すように、シート状態様の電池展開構造30を各扇状枠体30aの連結部分で折り曲げ、穴30a1に突起部30a2を係合させて固定し、立体形状(6角錐状)に組み立てる。
【0121】
続いて、
図8(d)に示すように、6角錐状に組み立てられた電池展開構造30を所定の成形機301に設置し、接触面が半球面状の押圧部材302を用いて電池展開構造30に矢印の方向に圧力を印加しながらアニール処理する。これにより、
図8(e)に示すように、電池展開構造30が押圧部材302の半球面状に倣って略半球殻状に成形され、本実施形態による電池構造300が得られる。電池構造300は、少なくともリチウムイオン二次電池1の部分を覆うように、可撓性を有する絶縁材料からなる外装フィルム(不図示)が設けられるようにしても良い。
【0122】
上記のように、本実施形態による電池構造300は、複数枚の扇状枠体30aから所期の立体形状(略半球殻状)に容易に組み立てられ、隣接する扇状枠体30aの接続端の連結部で正極集電体21の端部同士及び負極集電体23の端部同士が積層方向に重なった状態で接続される。このようにして組み立てられた電池構造300では、連結部において違和感なくスムーズな表面状態で接続が得られており、簡素で確実な電気的接続が実現する。
【0123】
(電池構造の用途)
図9は、本実施形態による半球殻型の電池構造を内蔵するヘルメットを一部破断して示す模式図である。
【0124】
ヘルメット400は、通常のヘルメットと同様に、帽体401と、帽体401の裏側において環ヒモ402で帽体401に固定されたハンモック403と、ハンモック403に接続されたヘッドバンド404と、ヘッドバンド404に接続された耳ヒモ405と、耳ヒモ405に接続されたアゴヒモ406とを有しており、更にヘッドライト407及び無線通信機408を備えている。
【0125】
ヘルメット400は、帽体401内に半球殻型の電池構造300が内蔵されている。電池構造300は、ヘッドライト407及び無線通信機408の電源として用いられる。
【0126】
[第4の実施形態]
以上説明した実施形態では、電池構造100は、通い箱101の温度調節用の電源であるとともに、ドローン又は無人搬送車を操作するための電源にも利用されるが、この態様に限定されず、例えば、
図10に示す無人飛行機に適用してもよい。
図10は、本実施形態の電池構造を内蔵する飛行体の一例である無人飛行機を示す概略斜視図である。
【0127】
無人飛行機Dは、飛行性能を有する無人飛行機本体部520と、この無人飛行機本体部520の下部に着脱自在に取り付けられた脚部521とを備える。
【0128】
無人飛行機本体部520は、無人飛行機Dの全体を制御する制御部が内部に備えられた外形略直方体状の基部522と、この基部522から四方に延出する4本の支持腕部523と、それぞれの支持腕部523の先端部に設けられたプロペラ部524とを備える。
【0129】
基部522の
図10において左前面にはカメラ部が設けられている。無人飛行機Dは、通常、
図10において左斜め下方向に飛行するように設定されており、このカメラ部は、無人飛行機Dの飛行方向前方の風景を撮像する。カメラ部により撮像された画像は、基部522内の制御部内で処理されることで無人飛行機Dが自身の飛行経路を決定、修正し、また、制御部に備えられた無線通信部を介して無人飛行機Dの外部に転送される。
【0130】
プロペラ部524は、無人飛行機Dに飛行力を生じさせるプロペラと、このプロペラを回転駆動するモータとを備えている。制御部は、無人飛行機Dに備えられた4つのプロペラを独立に駆動し、これにより、無人飛行機Dを所定の方向及び速度で飛行させる。
【0131】
一方、脚部521は、無人飛行機本体部520の基部522の
図10において下面に着脱自在に取り付けられる図略の取付部と、この取付部から下方にかつ四方に延出する4本の支持脚525と、この4本の支持脚525のうち2本の支持脚525の先端部を連結する外形矩形板状の支持部526とを備える。本実施形態の電池構造が適用される無人飛行機Dは、
図10に詳細を示すように、脚部521の支持部526の間に荷物527が配置され、好ましくは、図略の固定具により荷物527は支持部526又は支持脚525に固定され、この状態で無人飛行機Dが目的位置まで飛行することにより、荷物527が運搬可能とされている。
【0132】
無人飛行機Dの支持脚525は断面略矩形を有する四角柱状に形成され、
図10に示すように、先端に向かうに従って下方に湾曲して形成されている。この支持脚525の内部には、断面略矩形の空洞部が、支持脚525の長手方向に延在して形成されている。そして、本実施形態の電池構造は、無人飛行機Dの筐体の一部を構成する構造体である支持脚525の内部に収納されている。
【0133】
例えば、この支持脚525の空洞部である内部空間にはセパレータが配置され、この内部空間を正極室及び負極室に区分している。本実施形態の電池構造では、セパレータは、複数の平板を互いに所定角度をなすように組み合わせることで、少なくとも2方向の異なった方向に面を向けた、表面が複数の平面を有するセパレータとし、全体として三角波状に形成されている。ここで、本明細書において、表面が複数の平面を有するセパレータとは、セパレータの表面が、少なくとも2方向の異なった方向に面を向けた複数の平面を有する状態にあるセパレータを意味する。
【0134】
支持脚525の内面には、この支持脚525の内面から内方に突出する固定部が形成されている。この固定部の先端部には、支持脚525の長手方向に延びる三角波状の溝が形成され、この溝にシール部材を介してセパレータが嵌合されることで、セパレータが支持脚525の内部空間内に固定されている。
【0135】
内部空間内には、この内部空間の内面に沿うように、略矩形板状の正極集電体及び負極集電体が相対向した状態で、正極室及び負極室内にそれぞれ配置されている。そして、これら正極及び負極集電体が正極室及び負極室内に配置された状態で、正極及び負極活物質が正極室及び負極室にそれぞれ充填され、これら正極及び負極活物質が支持脚内に封止されている。
【0136】
本実施形態では、例えば、4本の支持脚525のうちの隣接する2本同士、又は対向する2本同士において、電池構造同士が上端の連結部で電気的及び機械的に接続されるようにしても良い。例えば、一方の支持脚525内の電池構造に
図6(c)の接続端20aのような接続端を、他方の支持脚525内の電池構造に
図6(c)の接続端20bのような接続端をそれぞれ設け、連結部20abを形成することが考えられる。更には、接続された一方の2本の支持脚525と、接続された他方の2本の支持脚525とを、連結部同士で接続することも考えられる。以上のようにして、本実施形態の電池構造が構成される。
【0137】
なお、正極活物質及び負極活物質の充填に当たっては、例えば支持脚525に、それぞれ正極室及び負極室に連通する貫通孔を2つ形成し、これら貫通孔から正極及び負極活物質をそれぞれ正極室及び負極室にそれぞれ充填した後、貫通孔を封止すればよい。
【0138】
ここで、「充填された」とは、正極活物質粒子及び負極活物質粒子が正極室及び負極室にそれぞれ収納されている状態を意味し、好ましくは、この正極活物質粒子及び負極活物質粒子と電解質とが正極室及び負極室にそれぞれ収納されている状態を意味する。更に好ましくは、正極活物質粒子及び負極活物質粒子と電解質とが混合された状態を意味する。
【0139】
本実施形態において、正極室及び負極室に正極活物質と電解液とを含む正極電極組成物及び負極活物質と電解液とを含む負極電極組成物が充填された状態にするには、粉体状の正極活物質粒子及び負極活物質粒子を直接正極室及び負極室にそれぞれに入れても良く、正極活物質又は負極活物質粒子と非水溶媒とを含むスラリーを正極室及び負極室にそれぞれ入れても良く、正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含む正極電極組成物のスラリー及び負極電極組成物のスラリーを正極室及び負極室にそれぞれ入れることで行っても良い。粉体状の正極活物質及び負極活物質粒子を直接正極室及び負極室に入れた場合、その後電解液を入れることで正極室及び負極室のそれぞれに正極電極組成物及び負極電極組成物が充填される。
【0140】
正極活物質又は負極活物質粒子と非水溶媒とを含むスラリー状物質を正極室及び負極室にそれぞれ入れた場合、その後加圧又は減圧して活物質粒子と非水溶媒とを分離可能な膜を透過させて非水溶媒を除去し、更に電解液を入れることで正極室及び負極室のそれぞれに正極電極組成物及び負極電極組成物が充填される。正極活物質又は負極活物質粒子と電解液とを含むスラリー状の正極電極組成物及び負極電極組成物を正極室及び負極室にそれぞれ入れた場合、更に加圧又は減圧して活物質粒子と電解液とを分離可能な膜を透過させて電解液の一部を除去して正極電極組成物及び負極電極組成にそれぞれ含まれる正極活物質及び負極活物質の含有量を高める工程を行っても良い。
【0141】
活物質粒子と非水溶媒又は電解液とを分離可能な膜としては、活物質粒子と非水溶剤溶媒又は電解液とを分離可能な膜であれば制限はないが、集電体及び/又はセパレータとして設けられた膜であることが好ましい。
【0142】
正極、負極活物質粒子を正極室及び負極室に充填する際には、支持脚525に振動、衝撃を与えることで、正極、負極活物質粒子を正極室及び負極室に均一に充填することが好ましい。
【0143】
また、正極、負極活物質粒子と電解液又は非水溶媒とを混合した物質は、通常スラリー状であるが、正極、負極活物質粒子と電解液との重量比によってはゲル状物質や粉体に近い物質になることもある。
【0144】
そして、支持脚25内を減圧脱気した後、この支持脚525の開口部をシール部材等を用いて封止することにより、本実施形態の電池構造の一例を製造することができる。
【0145】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る電池構造は、正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、を有するリチウムイオン電池と、前記リチウムイオン電池の対応する一組の接続端同士が連結されてなる連結部と、を備え、前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、前記連結部において、隣接する前記リチウムイオン電池の一組の活物質層同士、及び、隣接する前記リチウムイオン電池の一組のセパレータ同士、は分断されている一方で、隣接する前記リチウムイオン電池の端部同士が前記枠部材を介して連結されている。
【0146】
上記一実施形態では、前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が接続されることにより、隣接する一組の前記リチウムイオン電池が、電気的に接続されてもよい。
【0147】
上記一実施形態では、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が接続された隣接する一組の前記リチウムイオン電池が、実質的に等電位の状態となっていてもよい。
【0148】
上記一実施形態では、前記正極集電体及び前記負極集電体は、それぞれ樹脂集電体層を含み、前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が積層方向に重なった状態で電気的に接続されてもよい。
【0149】
上記一実施形態では、前記連結部において、一方の前記接続端では前記正極集電体の端部が突出し、他方の前記接続端では前記負極集電体の端部が突出してもよい。
【0150】
上記一実施形態では、前記連結部において、一方の前記接続端では前記正極集電体の端部及び前記負極集電体の端部が共に突出してもよい。
【0151】
上記一実施形態では、前記連結部において、前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が溶着により固定されてもよい。
【0152】
上記一実施形態では、前記連結部において、一方の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とが嵌合して接続されてもよい。
【0153】
以上説明した、本発明の一実施形態に係る電池構造の製造方法は、正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、を有するリチウムイオン電池と、前記リチウムイオン電池に設けられた複数組の接続端と、を備えた電池展開構造を用いて電池構造を製造する製造方法であって、前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、対応する一組の前記接続端における前記枠部材で屈曲することにより立体形状を形成する。
【0154】
上記一実施形態に係る電池構造の製造方法では、前記対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士を積層方向に重ねた状態で電気的に接続し、立体形状を形成してもよい。
【0155】
上記一実施形態における製造方法では、対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士を溶着して固定してもよい。
【0156】
上記一実施形態における製造方法では、一方の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とを嵌合させて接続してもよい。
【0157】
以上説明したように、本発明の別の一実施形態に係る電池展開構造は、正極集電体及び該正極集電体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体及び該負極集電体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されるセパレータと、前記正極集電体と前記負極集電体との間に配置され、前記正極活物質層、前記負極活物質層及び前記セパレータを封止する樹脂製の枠部材と、を有するリチウムイオン電池と、前記リチウムイオン電池に設けられた複数組の接続端と、を備えており、前記枠部材は、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の外周、及び、前記セパレータの外周を囲むように配置され、対応する一組の前記接続端における前記枠部材で屈曲することにより立体形状に組み立てられる。
【0158】
上記別の一実施形態では、対応する一組の前記接続端の前記正極集電体の端部同士及び前記負極集電体の端部同士が積層方向に重なった状態で電気的に接続され、立体形状に組み立てられてもよい。
【0159】
上記別の一実施形態では、一方の前記接続端において前記正極集電体の端部が突出し、他方の前記接続端において前記負極集電体の端部が突出してもよい。
【0160】
上記別の一実施形態では、一方の前記接続端の前記接続端では前記正極集電体の端部及び前記負極集電体の端部が共に突出してもよい。
【0161】
上記別の一実施形態では、一方の前記接続端の前記接続端の第1の連結部材と他方の前記接続端の第2の連結部材とが嵌合して接続され、立体形状に組み立てられてもよい。
【0162】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0163】
1,2 リチウムイオン二次電池
10,30 電池展開構造
10A~10E,20 矩形状部分
10a,10b,20a,20b 接続端
10ab,20b 連結部
11 正極電極
12 セパレータ
13 負極電極
14 シール部
14a 凸部
14b 凹部
21 正極集電体
22 正極活物質層
23 負極集電体
24 負極活物質層
30A 枠状部材
30a 扇状枠体
30a1 穴
30a2 突起部
100,200,300 電池構造
101 通い箱
111 ペルチェ素子
112 放熱板
113 コントローラ
114 上蓋
201 モータ
202 外装フィルム
301 成形機
302 押圧部材
400 ヘルメット
401 帽体
402 環ヒモ
403 ハンモック
404 ヘッドバンド
405 耳ヒモ
406 アゴヒモ
407 ヘッドライト
408 無線通信機
520 無人飛行機本体部
521 脚部
522 基部
523 支持腕部
524 プロペラ部
525 支持脚
526 支持部
527 荷物
D 無人飛行機