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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241101BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019215903
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021086964
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-02
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】菅家 篤
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-332091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基体と1対の第1電極及び第2電極とを有し、前記絶縁基体は板状であって絶縁性の基板を載置するための載置面及び前記載置面の反対側の裏面を有し、前記第1電極及び前記第2電極が前記載置面に前記基板を静電吸着するよう前記絶縁基体の内部または前記裏面に設けられてなる静電チャックであって、
前記第1電極は第1主電極と複数の第1副電極とを有し、前記第1主電極は第1の方向に延在し、各第1副電極は基端部及び先端部を有し前記第1主電極に前記第1副電極の基端部で接続して前記第1の方向とは異なる第2の方向に線状に延在し、
前記第2電極は第2主電極と複数の第2副電極とを有し、前記第2主電極は第3の方向に延在し、各第2副電極は基端部及び先端部を有し前記第2主電極に前記第2副電極の基端部で接続して前記第3の方向とは異なる第4の方向に線状に延在し、
各第1副電極及び各第2副電極は0.3~2.0mmの幅を有し、
各第1副電極は隣り合う前記第2副電極と幅方向に0.3~2.5mm離間した状態で対向し、各第1副電極の先端部が前記第2主電極と0.3~2.5mm離間した状態で対向し、
各第2副電極の先端部が前記第1主電極と0.3~2.5mm離間した状態で対向し、
前記第1副電極の幅をW1、長さをL1とし、前記第2副電極の幅をW2、長さをL2としたとき、6.9mm≦W1×L1≦50mm及び6.9mm≦W2×L2≦50mmを満たし、
前記L1及び前記L2は、それぞれ12.6mm≦L1≦23.1mm及び12.6mm≦L2≦23.1mmを満たし、
前記載置面は、直径300mm基板に相当する面積以上であることを、特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記第1電極は前記第1主電極を複数有し、前記第2電極は前記第2主電極を複数有することを、特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第1の方向及び前記第3の方向は同一円の半径方向であり、前記第2の方向及び前記第4の方向は前記同一円の円周に沿った円周方向であり、前記第1主電極及び前記第2主電極は前記円周方向に交互に配置されていることを、特徴とする請求項記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造プロセス等で絶縁性の基板を静電吸着するために用いられる静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着面の反対面に1対の電極が対向して直線状または円周状に配置され、交互に入り組んで設けられた、絶縁性の基板吸着用の静電チャックが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許3805134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラス基板のような絶縁性基板を静電吸着するにはクーロン力及びグレーディエント力を発揮させることが有効であるとされる。その際、クーロン力は絶縁性基板のわずかな導電性に期待して電極と基板間の静電力により吸着せしめるものであり、グレーディエント力は1対の電極によって形成される電界の中におかれた絶縁性基板が分極して電界強度の傾き方向に力が働くとされている。すなわち、絶縁性の高い基板ではクーロン力での吸着は望めない。
【0005】
特許文献1に記載の絶縁性基板吸着用静電チャックの電極パターンでは、グレーディエント力を有効に奏するように電極が配置され、グレーディエント力は主に1対の電極間の離間位置に現れる。例えば、特許文献1の図4に示される電極パターンでは、x-y平面上において、1対の電極の直線状パターン同士が対向する方向に沿ったx軸に対して周期的な力が、1対の電極の直線状パターンの延びる方向に沿ったy軸に対しては一様な力が発現している。
【0006】
絶縁性基板を吸着固定する際、基板を歪ませることなく、吸着面上の基板の全体を均一に平面矯正して吸着固定することが望ましいが、特許文献1の静電チャックのように、吸着面において特定の平面内の個所のみに働く力がある場合、基板吸着時に基板が局所的にわずかに歪んで吸着されることがあるという課題があった。特に、特許文献1の静電チャックの電極パターンのように、一対の電極パターンの対向する方向が一様かつ対向する一対の電極パターンが特定の方向に長い場合に、このような歪が認められる場合があった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、基板吸着時に基板が局所的に歪むことを抑制し、平面矯正できる静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る静電チャックは、絶縁基体と1対の第1電極及び第2電極とを有し、前記絶縁基体は板状であって絶縁性の基板を載置するための載置面及び前記載置面の反対側の裏面を有し、前記第1電極及び前記第2電極が前記載置面に前記基板を静電吸着するよう前記絶縁基体の内部または前記裏面に設けられてなる静電チャックであって、前記第1電極は第1主電極と複数の第1副電極とを有し、前記第1主電極は第1の方向に延在し、各第1副電極は基端部及び先端部を有し前記第1主電極に前記第1副電極の基端部で接続して前記第1の方向とは異なる第2の方向に線状に延在し、前記第2電極は第2主電極と複数の第2副電極とを有し、前記第2主電極は第3の方向に延在し、各第2副電極は基端部及び先端部を有し前記第2主電極に前記第2副電極の基端部で接続して第3の方向とは異なる前記第4の方向に線状に延在し、各第1副電極及び各第2副電極は0.3~2.0mmの幅を有し、各第1副電極は隣り合う前記第2副電極と幅方向に0.3~2.5mm離間した状態で対向し、各第1副電極の先端部が前記第2主電極と0.3~2.5mm離間した状態で対向し、各第2副電極の先端部が前記第1主電極と0.3~2.5mm離間した状態で対向し、前記第1副電極の幅をW1、長さをL1とし、前記第2副電極の幅をW2、長さをL2としたとき、5mm≦W1×L1≦50mm及び5mm≦W2×L2≦50mmを満たすことを、特徴とする。
【0009】
本発明に係る静電チャックは、第1電極及び第2電極に外部電源からの電圧を印加することによって機能する。各第1副電極は第2副電極と幅方向に離間した状態で対向し、両者間に電位差が発生する。電極幅及び離間距離を上記所定の範囲に設定することにより載置面に載置された基板にグレーディエント力を効果的に働かせ、静電吸着させることができる。このとき、グレーディエント力は、主に電極幅方向の離間領域で発現する。
【0010】
第1副電極の先端部は第2主電極と上記所定の離間距離で対向しているため、第1副電極の先端部と第2主電極との間に電位差が発生する。また、第2副電極の先端部は第1主電極と上記所定の離間距離で対向しているため、第2副電極の先端部と第1主電極との間にも電位差が発生する。これにより、第1副電極及び第2副電極の先端部の領域にもグレーディエント力が発現する。
【0011】
第1副電極の幅と長さとの積及び第2副電極の幅と長さとの積を上記所定の範囲に設定することにより、第1副電極及び第2副電極の先端部の領域が電極を配置する平面において増加するため、副電極の幅方向に離間した領域のみでなく、先端部領域にもグレーディエント力を効果的に発揮させ、基板全面にグレーディエント力をより均等に働かせることができる。
その結果、基板吸着時に基板が局所的に歪むことを抑制し、基板を均等な力により平面矯正された状態で静電吸着させることができる。
【0012】
本発明に係る静電チャックにおいて、前記第1電極は前記第1主電極を複数有し、前記第2電極は前記第2主電極を複数有することが好ましい。
この場合、副電極の幅方向に離間した領域と先端部の領域とのバランスをとりやすくなるため、基板吸着時の基板の局所的な歪みを生じにくくし、基板をより平面矯正された状態で静電吸着させることができる。
【0013】
本発明に係る静電チャックにおいて、前記第1の方向及び前記第3の方向は同一円の半径方向であり、前記第2の方向及び前記第4の方向は前記同一円の円周に沿った円周方向であり、前記第1主電極及び前記第2主電極は前記円周方向に交互に配置されていることが好ましい。
この場合、円形の載置面で、副電極の幅方向に離間した領域と先端部の領域とのバランスをとりやすくなるため、円形の載置面で基板吸着時の基板の局所的な歪みを生じにくくし、基板をより平面矯正された状態で静電吸着させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基板吸着時に基板が局所的に歪むことを抑制し、平面矯正できる静電チャックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態の静電チャックの概略構成を示す(A)平面図、(B)縦断面図である。
図2図1に示す静電チャックの電極パターンの一部を示す平面図である。
図3図2に示す電極パターンの(A)好適例及び(B)不適例1、(C)不適例2を示す説明図である。
図4図1に示す静電チャックの他の電極パターンを示す平面図である。
図5】静電チャックの従来例の電極パターンの一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態の静電チャックは、絶縁基体1と1対の第1電極2及び第2電極3とを有している。絶縁基体1は、円板状の基盤11の上に絶縁層12を設けて成っている。絶縁基体1は、絶縁性の基板を載置するための載置面1a及び載置面1aの反対側の裏面1bを有している。第1電極2及び第2電極3は、端子4により直流電源または交流電源に接続されている。第1電極2及び第2電極3は、載置面1aに基板を静電吸着するよう絶縁基体1の内部または裏面1bに設けられている。
【0017】
第1電極2は、複数の第1主電極21と複数の第1副電極22とを有している。第1主電極21は、円板状の絶縁基体1の外周に沿った同心円の中心から半径方向(第1の方向)に線状に延在している。各第1副電極22は、基端部22a及び先端部22bを有し、第1主電極21の幅方向の両側に第1副電極22の基端部22aで接続して第1の方向とは異なる第2の方向に線状に延在している。第2の方向は、円板状の絶縁基体1の外周に沿った同心円である同一円の円周に沿った円周方向である。
【0018】
第2電極3は、複数の第2主電極31と複数の第2副電極32とを有している。第2主電極31は、第1主電極21と同様に、円板状の絶縁基体1の外周に沿った同心円の中心から半径方向(第3の方向)に線状に延在している。各第1主電極21及び各第2主電極31は、同一円の円周方向に交互に等間隔で配置されている。
【0019】
各第2副電極32は、基端部32a及び先端部32bを有している。各第2副電極32は、第2主電極31の幅方向の両側に第2副電極32の基端部32aで接続して第3の方向とは異なる第4の方向に線状に延在している。第4の方向は、円板状の絶縁基体1の外周に沿った同心円である同一円の円周に沿った円周方向である。各第1副電極22及び各第2副電極32は、同一円の半径方向に交互に等間隔で配置されている。
【0020】
各第1副電極22及び各第2副電極32は、0.3~2.0mmの幅を有している。各第1副電極22は、隣り合う第2副電極32と幅方向に0.3~2.5mm離間した状態で対向している。各第1副電極22は、先端部22bが第2主電極31と0.3~2.5mm離間した状態で対向している。各第2副電極32は、先端部32bが第1主電極21と0.3~2.5mm離間した状態で対向している。第1副電極22の幅をW1、長さをL1とし、第2副電極32の幅をW2、長さをL2としたとき、5mm≦W1×L1≦50mm及び5mm≦W2×L2≦50mmを満たしている。
【0021】
次に、作用について説明する。
静電チャックは、第1電極2及び第2電極3に外部電源からの電圧を印可することによって機能する。各第1副電極22は各第2副電極32と幅方向に離間した状態で対向し、両者間に電位差が発生する。電極幅及び離間距離を上記所定の範囲に設定することにより載置面1aに載置された基板にグレーディエント力を効果的に働かせ、静電吸着させることができる。このとき、グレーディエント力は、第1副電極22と第2副電極32との間の離間領域で発現する。
【0022】
第1副電極22の先端部22bは第2主電極31と上記所定の離間距離で対向しているため、第1副電極22の先端部22bと第2主電極31との間に電位差がする。また、第2副電極32の先端部32bは第1主電極21と上記所定の離間距離で対向しているため、第2副電極32の先端部32bと第1主電極21との間にも電位差が発生する。これにより、第1副電極22及び第2副電極32の先端部22b,32bと第1主電極21及び第2主電極31との間の離間領域にもグレーディエント力が発現する。
【0023】
5mm≦W1×L1≦50mm及び5mm≦W2×L2≦50mmの式において、第1副電極22の長さL1または第2副電極32の長さL2が小さくなると、第1副電極22及び第2副電極32の先端部22b,32bの領域の数が絶縁基体1の全体で増加する。これにより、各副電極22,32の先端部22b,32bとその延長線上で対向する第1主電極21または第2主電極31との離間領域にグレーディエント力が数多く発現し、静電吸着力が強くなる。
【0024】
しかし、第1副電極22の長さL1と幅W1との積または第2副電極32の長さL2と幅W2との積(すなわち、電極面積に相当)が50mmを超えて大きくなると、クーロン力による効果が大きくなる一方、グレーディエント力は相対的に小さくなってしまい、絶縁性の基板の吸着には好ましくない。
また、第1副電極22の幅W1または第2副電極32の幅W2が大きすぎると、隣り合って対向する第1副電極22と第2副電極32との間の離間領域の数自体が絶縁基体1の全体で少なくなる。これにより、グレーディエント力自体が十分に働かず、基板を十分に静電吸着することができなくなる。
【0025】
図3(A)に、本発明の実施の形態の静電チャックの好適例を示す。図3(A)~(C)で、破線領域5は第1副電極22及び第2副電極32の幅方向の離間領域を示し、破線領域6は第1副電極22及び第2副電極32の先端部22b,32bの離間領域を示す。図3(A)に示すように、第1副電極22の幅と長さとの積及び第2副電極32の幅と長さとの積を上記所定の範囲に設定することにより、第1副電極22及び第2副電極32の先端部22b,32bの領域が電極を配置する平面において増加するため、副電極22,32の幅方向に離間した領域のみでなく、先端部22b,32bの領域にもグレーディエント力を効果的に発揮させ、基板全面にグレーディエント力をより均等に働かせることができる。
その結果、基板吸着時に基板が局所的に歪むことを抑制し、基板を均等な力により平面矯正された状態で静電吸着させることができる。
【0026】
これに対し、図3(B)に示す不適例1では、第1副電極22及び第2副電極32の幅方向の離間領域(破線領域5)及び第1副電極22及び第2副電極32の先端部と第1主電極21及び第2主電極31との間の離間領域(破線領域6)のバランスが悪いため、局所的な歪を生じやすい。また、図3(C)に示す不適例2では、第1副電極22及び第2副電極32の幅が広すぎるため、グレーディエント力が働く領域の数自体が少なくなり、静電吸着力が弱い。
【0027】
本発明の実施の形態の静電チャックでは、特に、第1電極2は第1主電極21を複数有し、第2電極3は第2主電極31を複数有するので、隣り合う第1副電極22と第2副電極32との間の離間領域と先端部22b,32bと第1主電極21及び第2主電極31との間の領域とのバランスをとりやすくなるため、基板吸着時の基板の局所的な歪みを生じにくくし、基板をより平面矯正された状態で静電吸着させることができる。
【0028】
また、第1主電極21及び第2主電極31の延在する方向(第1の方向、第3の方向)は同一円の半径方向であり、第1副電極22及び第2副電極32の延在する方向(第2の方向、第4の方向)は同一円の円周に沿った円周方向であり、第1主電極21及び第2主電極31は円周方向に交互に配置されているので、円形の載置面1aで、副電極22,32の間の離間領域と先端部22b,32b及び主電極21,31の間の離間領域とのバランスをとりやすくなっている。このため、円形の載置面1a上での基板吸着時の基板の局所的な歪みを生じにくくし、基板をより平面矯正された状態で静電吸着させることができる。
【0029】
なお、図4に示すように、複数の第1主電極21同士を接続する接続線23及び/または複数の第2主電極31同士を接続する接続線33を有していてもよい。
また、電極パターンは、図2及び図4に示すパターンに限らず、他のパターンであってもよい。
第1副電極22及び/または第2副電極32は、円弧状のほか、直線状、屈曲形状またはさらに分岐した形状であってもよい。
第1主電極21、第2主電極31、第1副電極22及び第2副電極32は、形状にかかわらず、載置面1aの領域と略同一の領域に略均等に配置されることが好ましい。
【実施例
【0030】
(グリーンシート成形法による製法)
例えば特開2008-147549に示されるセラミックスグリーンシート成形法により、静電チャックを作製した。
セラミックスグリーンシートは、Al、AlNを主成分とすることが好適である。本実施例では、純度99.5%のAlを原料粉として使用した。Alとバインダーと可塑剤と分散剤と溶剤とをスラリー化してドクターブレードによりグリーンシートを成形した。成形するグリーンシートの厚みは0.5~2mmが好適である。本実施例では、厚み0.65mmとした。
【0031】
セラミックスグリーンシートにスクリーンマスクを用いてW(タングステン)ペーストを印刷し層状の1対の電極を形成した。印刷するパターンは、図2に示すパターンとなるよう、適宜スクリーンマスクのデザインを調整した。
また、比較のため、図5に示すように、従来例の電極パターンで印刷したものを作製した。従来例の電極パターンは、円の中心側から半径方向に互いに反対側に伸びる第1主電極41及び第2主電極51を有し、中心が共通する複数の同心円の一部を切り欠いた円弧形状の第1副電極42及び第2副電極52を第1主電極41及び第2主電極51に交互に接続した形状のパターンである。
【0032】
1対の電極が2つのセラミックスグリーンシートの間に挟まれるように、作製したセラミックスグリーンシートを他のセラミックスグリーンシート(ビア導体となるWペーストが充填されたビアホールを含む)と積層した積層体を形成した。必要に応じて、積層体の裏面にビア導体を介して電極と導通する端子を挿入するための止まり穴の加工及び当該穴を画定する表面にWペーストを塗布した。その後、還元雰囲気下、1600℃で3時間焼成してセラミックス焼結体を得た。その後、外形を機械加工した。
セラミックス焼結体の裏面の止まり穴に、外部電源との端子(コバール製)を挿入した状態で、電極と端子とを銀ロウ付けにより接合し、静電チャックを完成させた。このとき、静電チャックの電極パターンの最外周の中心線直径は300mm、絶縁層の厚みは0.1mm、載置面の表面粗さRaは0.1μmとした。
【0033】
従来例の電極パターンでは、12時方向に伸びた主電極41より副電極42が分岐している。また、主電極41とは反対側の6時方向に延びた主電極51より副電極52が分岐している。副電極42,52の長さは、概ね円周の1/2程度である。グレーディエント力は、主に電極間の離間領域に発現する。そのため、グレーディエント力は、半径方向に周期的に偏在することになる。
【0034】
本実施例では、円の中心から半径方向に伸びる12本の第1主電極21と12本の第2主電極31とが円周方向に交互に配置されている。第1副電極22及び第2副電極32は、中心が共通する複数の同心円の円周に沿ってそれぞれ第1主電極21及び第2主電極31から両側に伸び、同一円の半径方向に交互に等間隔で配置されている。第1副電極22及び第2副電極32のパターンは、複数の同心円をそれぞれ24分割したような円弧形状である。半径方向に伸びた主電極21,31より副電極22,32は、円周方向に分岐している。副電極22,32の長さは、概ね円周を24分割した円弧長さ程度である。グレーディエント力は、主に電極間の離間領域に発現する。
【0035】
図2に示す本実施例の電極パターンでは、図5に示す従来の電極パターンに比較して、副電極22,32の分岐した位置(基端部22a,32a)から一方の先端部22b,32bまでの長さLが短く、副電極22,32の一方の先端部22b,32bの個所数が増加している。副電極22,32の一方の先端部22b,32bは、対向する電極に囲まれるようになり、副電極22,32の先端部22b,32bの電界は主に副電極先端部の延長線上に存在する対向電極(第2主電極31,第1主電極21)との間で形成され、グレーディエント力が発現する。
【0036】
5mm≦W1×L1≦50mm及び5mm≦W2×L2≦50mmの式を満足させることにより、副電極22,32の先端部22b,32bと副電極の先端部の延長線上に存在する対向電極(第2主電極31,第1主電極21)との離間箇所の数を増やすことができるため、グレーディエント力の発現箇所を従来より均質化でき、その結果、絶縁性基板をより歪なく吸着することができるようになる。
【0037】
(評価)
作製した本実施例の静電チャックと従来例の静電チャックについて、1対の端子に±3kVの直流電圧を印可し、無アルカリガラス基板(直径300mm、厚み0.7mm)を静電吸着させてその結果を観察した。
以下、実施例1~10、比較例1~7は副電極長さLと副電極幅Wを変えて評価した結果である。なお、下表の副電極長さはパターン内の最長のものとした。
【0038】
【表1】
表1のとおり、副電極長さLと副電極幅Wの積が50mm以下であると、静電吸着された基板の平面度が3μm未満となり、基板の局所的な平面度が改善されていることが示された。
なお、比較例4は吸着力が小さく、比較例5は電極間の絶縁不良が生じたため平面度の矯正を行うことができず、平面度の測定を行うことができなかった。
【符号の説明】
【0039】
1 絶縁基体
2 第1電極
3 第2電極
11 基盤
12 絶縁層
1a 載置面
1b 裏面
4 端子
21 第1主電極
22 第1副電極
22a 基端部
22b 先端部
31 第2主電極
32 第2副電極
32a 基端部
32b 先端部
図1
図2
図3
図4
図5