(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20241101BHJP
H01L 33/58 20100101ALI20241101BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20241101BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20241101BHJP
【FI】
H01L33/56
H01L33/58
H01L33/54
H01L33/50
(21)【出願番号】P 2020090683
(22)【出願日】2020-05-25
【審査請求日】2023-04-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕介
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-026753(JP,A)
【文献】特開2006-339581(JP,A)
【文献】特開2016-162850(JP,A)
【文献】特表2012-516026(JP,A)
【文献】特開2016-048764(JP,A)
【文献】特開2011-129661(JP,A)
【文献】特開2014-158011(JP,A)
【文献】国際公開第2014/103330(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0329184(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0031393(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/56 - 33/64
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に凹部を有する基板と、
前記凹部の底面に配置された発光素子と、
前記発光素子上に設けられ、前記発光素子が放射する放射光に対して透光性を有する透光部材と、
樹脂材を母材とし、前記母材中に光散乱性を有する散乱粒子及び透光性樹脂からなる粒子である浮遊粒子が分散されており、前記発光素子及び前記透光部材の側面を覆うように前記凹部内に設けられた被覆部材と、を有し、
前記散乱粒子は、金属酸化物からなる粒子であり、
前記浮遊粒子は、熱硬化された熱硬化性又は光硬化された光硬化性の樹脂粒子であり、
前記浮遊粒子の粒径は、前記散乱粒子の粒径の1/2倍以上4倍以下であり、
前記浮遊粒子の比重は、前記母材の比重の0.9倍~1.1倍であ
り、
前記母材は、硬化時の最小粘度が0.5~10Pa・sであるという物性を有することを特徴とする半導体発光装置。
【請求項2】
上面に凹部を有する基板と、
前記凹部の底面に配置された発光素子と、
前記発光素子上に設けられ、前記発光素子が放射する放射光に対して透光性を有する透光部材と、
樹脂材を母材とし、前記母材中に光散乱性を有する散乱粒子及び透光性樹脂からなる粒子である浮遊粒子が分散されており、前記発光素子及び前記透光部材の側面を覆うように前記凹部内に設けられた被覆部材と、を有し、
前記散乱粒子は、金属酸化物からなる粒子であり、
前記浮遊粒子は、熱硬化された熱硬化性又は光硬化された光硬化性の樹脂粒子であり、
前記浮遊粒子の粒径は、前記散乱粒子の粒径の1/2倍以上4倍以下であり、
前記母材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、及びポリイミド樹脂のうちの少なくとも1つを含み、
前記浮遊粒子は、前記母材と同一又は同種の樹脂からなることを特徴とする半導体発光装置。
【請求項3】
前記透光部材の上面は前記被覆部材から露出し、
前記被覆部材は、前記透光部材の側面全体を被覆し、
前記被覆部材の上面は、前記透光部材の側面近傍の領域において、前記透光部材の上面との境界部から離れるにつれて下方に向かうように傾いている、
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記発光素子からの光を遮光する遮光部材であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記透光部材は蛍光体を含むことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記発光素子と前記透光部材との間に設けられて前記発光素子と前記透光部材とを接着する接着部材をさらに有し、
前記透光部材又は前記接着部材の少なくとも一方に蛍光体を含むことを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発光ダイオード(LED)等の半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子の出射面上に透光性の部材を配置し、当該半導体発光素子及び透光性の部材の側面を光反射性の部材で被覆した半導体発光装置が知られている(例えば特許文献1など)。当該光反射性の部材として、透光性の樹脂中に光散乱性の粒子を分散させたいわゆる白樹脂と呼ばれる部材を形成することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような半導体発光装置において、光取り出し効率が高いことに加えて、光を出射させる領域とそれ以外の領域との間で高いコントラストが得られることが期待される。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、光の取り出し効率が高く、コントラストが高い半導体発光装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上面に凹部を有する基板と、前記凹部の底面に配置された発光素子と、前記発光素子上に設けられ、前記発光素子が放射する放射光に対して透光性を有する透光部材と、樹脂を媒質とし、前記媒質中に光散乱性を有する散乱粒子及び樹脂からなる粒子である浮遊粒子が包含されており、前記発光素子及び前記透光部材の側面を覆うように前記凹部内に設けられた被覆部材と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る半導体発光装置の上面図である。
【
図2】実施例に係る半導体発光装置の断面図である。
【
図4】製造工程における散乱粒子の動きを模式的に示す図である。
【
図5】実施例に係る半導体発光装置の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図6】比較例に係る
図3に相当する部分の模式図である。
【
図7】実施例に係る半導体発光装置の輝度分布の一例を示すグラフである。
【
図8】比較例に係る半導体発光装置の輝度分布の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符を付して説明する。
【実施例】
【0009】
図1~
図3を参照しつつ、本発明の実施例に係る半導体発光装置10の構成について説明する。
図1は、本発明の実施例に係る半導体発光装置10を模式的に示す上面図である。
図2は、
図1に示した半導体発光装置10を2-2線で切断した面を模式的に示す断面図である。
図3は、
図2の点線で囲んだA部の拡大図である。
【0010】
[発光装置]
図1及び
図2に示すように、本実施例に係る半導体発光装置10(以降、発光装置10とも称する)は、凹部11Cを有する基板11と、基板11の凹部11Cの底面11Sに載置された半導体発光素子13(以降、発光素子13とも称する)と、発光素子13の上方に載置された透光部材25と、発光素子13の上面と透光部材25の下面とを接着する接着部材37と、基板11の底面11Sと発光素子13及び透光部材25の側面とを被覆する被覆部材27を含んで構成されている。
【0011】
[基板11]
基板11は、上面視において矩形状であり、上面に開口した凹部11Cを有する。凹部11Cは、平坦な底面11S及びその外周部を囲む枠部11Wによって画定されている。基板11の凹部11Cの底面11Sには、アノード配線21とカソード配線29とが設けられており、発光素子13を実装できるように構成されている。また底面11Sと反対側の面には、アノード実装電極33とカソード実装電極31が設けられており、発光装置10を回路基板に実装できる構成となっている。すなわち、基板11は発光素子13の実装面である底面11Sを含む基板基部11Aと枠部11Wからなる。
【0012】
本実施例において、基板11の底面11Sを形成している基板基部11Aと枠部11Wを形成している部分は一体的に形成されている。すなわち、基板11は1の部材からなっている。例えば、基板11はアルミナ、窒化アルミ、窒化珪素等から成るセラミック製である。なお、基板11の底面11Sを含む基板基部11Aと枠部11Wは、別々の部材を接合して構成されていてもよい。例えば、基板11は、セラミック製の平板形状の基板基部11Aと、樹脂製又はセラミック製の枠部11Wが接合されて形成されていてもよい。
【0013】
底面11S上に設けられたカソード配線29とアノード配線21は、金属製の配線電極パターンである。同様に、底面11Sの反対側の面に設けられたカソード実装電極31とアノード実装電極33も金属製の電極パターンである。そして、カソード実装電極31は導通ビア31Hを介してカソード配線29に電気的に接続され、アノード実装電極33は導通ビア33Hを介してアノード配線21に電気的に接続されている。
【0014】
例えば、アノード配線21、カソード配線29、カソード実装電極31及びアノード実装電極33は銀合金であり、表面にニッケル/金(Ni/Au)のメッキが施されている。また導通ビア31H、33Hも銀合金である。
【0015】
[半導体発光素子]
半導体発光素子13は、例えば導電性の支持基板15と、支持基板15上に接合されたn型半導体層、発光層、及びp型半導体層からなる半導体積層体17とからなる。さらに、発光素子13は、支持基板15の半導体積層体17が接合された面と同一面に設けられたアノード素子電極19が設けられ、支持基板15の半導体積層体17が接合された面と反対側の面にカソード素子電極(図示せず)が設けられている。
【0016】
具体的には、アノード素子電極19は、支持基板15上に絶縁層を介して設けられ、p側接合部材(図示せず)を介して、半導体積層体17のp型半導体層に設けられたp側電極(図示せず)に接続されている。すなわち、アノード素子電極19は、半導体積層体17のp型半導体層に電気的に接合され且つ支持基板15から絶縁されている。
【0017】
カソード素子電極(図示せず)は、支持基板15の半導体積層体17が接合された面とは反対側の面、すなわち支持基板15の裏面(発光素子13の下面)に設けられた電極である。当該カソード素子電極は、支持基板15とn側接合部材(図示せず)を介してn型半導体層に設けられたn側電極に接続されている。すなわち、カソード素子電極は、半導体積層体17のn型半導体層に電気的に接続されている。
【0018】
本実施例においては、支持基板15が導電性のシリコン(Si)であり、半導体積層体17に窒化インジウムガリウム系(InGaN系)の発光層を含み、ピーク波長(λp)430~460nmの光を放射する発光素子13を例にして説明する。
【0019】
本実施例において発光素子13は、支持基板15の下面に設けられているカソード素子電極と、基板11の凹部11Cの底面11Sに設けられたカソード配線29とが接合部材35を介して電気的に接続されている。また、支持基板15の上面に設けられたアノード素子電極19と、基板11の凹部11Cの底面11Sに設けられたアノード配線21とが、ボンディングワイヤ23を介して電気的に接続されている。
【0020】
[透光部材]
透光部材25は、発光素子13の上方に配置され、上面視において半導体積層体17の輪郭(発光素子13の発光面)とほぼ重なる大きさの板状体である。また、透光部材25のサイズは、上面視において半導体積層体17の輪郭と同サイズ以上、発光素子13の輪郭と同サイズ以下が好ましい。本実施例の透光部材25は、上面視において発光素子13からアノード素子電極19を除くサイズとしている。
【0021】
透光部材25は、発光素子13から放射される光や、後述の波長変換材から放射される光に対して透光性を有する。透光部材25としてガラス、アルミナやイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)などの透光性セラミック、及びシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの透光性の樹脂を用いることができる。なお、本実施例の透光部材25にはガラスを用いている。
【0022】
透光部材25には、発光素子13からの放射光を吸収して、より長波長の光を発する蛍光体等の波長変換材を含んでいてもよい。例えば、波長変換材として、イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶(YAG:Y3Al5O12)にセリウム(Ce)賦活剤を含んだYAG:Ce蛍光体粒子、αサイアロンやβサイアロンにユーロピウム(Eu)賦活材を含んだ蛍光体粒子、金属窒化物や金属硫化物のナノ粒子などを用いることができる。
【0023】
本実施例において、透光部材25は、上面25Tの反対側の面(下面)が、接着部材37によって、発光素子13の上面と接着されている。
【0024】
[接着部材]
接着部材37は、発光素子13から放射される光や、波長変換材から放射される光に対して透光性を有し、発光素子13の上面(出射面)と透光部材25の下面(入射面)を接着する。そして、発光素子13の上面から出射された光を透光部材25の下面へ導く機能を有する。
【0025】
接着部材37は、発光素子13の面上において(より詳細には支持基板15の上面において)半導体積層体17、及びアノード素子電極19の一部または全てを埋設する。例えば、接着部材37は、透光部材25の下面を画定する辺と、支持基板15の上面を画定する辺とを結ぶ側面を有することが好ましい。また、アノード素子電極19とボンディングワイヤ23との接続部が、接着部材37によって覆われていることが好ましい。接着部材37をこのように設けることによって、劣化し易い半導体積層体17を封止し、アノード素子電極19に接続されたボンディングワイヤ23の接続部を固着してワイヤ外れを防止できるからである。
【0026】
なお、接着部材37が支持基板15の側面を覆ってしまうと半導体積層体17から放射された光が、支持基板15に吸収されるので好ましくない。
【0027】
接着部材37には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を用いることができる。また、シリカポリマー、アルミナ・シリカジオポリマーを含む無機ポリマーを用いることもできる。本実施例では、接着部材37としてシリコーン樹脂を用いた。
【0028】
また、接着部材37には、前述した発光素子13からの放射光を吸収して蛍光を発する蛍光体などの波長変換材を含んでいてもよい。なお、波長変換材は、透光部材25又は接着部材37の少なくとも一方に含まれていればよい。本実施例においては、接着部材37に波長変換材としてYAG:Ce蛍光体粒子を含んでいる。
【0029】
[被覆部材]
被覆部材27は、基板11の凹部11Cの底面11Sと、発光素子13の支持基板15と接着部材37と透光部材25の側面及びボンディングワイヤ23を覆い、透光部材25の上面25Tを露出するように基板11の凹部11Cに充填されている。
【0030】
被覆部材27は、発光素子13を封止するとともに発光素子13から放射された光や、波長変換材から放射された光を反射する機能を有する。
【0031】
本実施例の被覆部材27は、発光素子13から放射される光や、波長変換材から放射される光に対して透光性を有する樹脂から成る媒質39と、媒質39と異なる屈折率を有して媒質39中を導波する光を散乱(Mie散乱)する(すなわち、光散乱性を有する)散乱粒子41を含有し、被覆部材27全体として光反射性を備えた部材となっている。さらに、被覆部材27は、媒質39と略同等な比重からなる浮遊粒子43を含んでいる。そして、散乱粒子41と浮遊粒子43は、
図3に示すように、被覆部材27の媒質39中において、所定の濃度で均一に分散されている。
【0032】
例えば、本実施例の被覆部材27は、媒質39となる硬化前の流動性を有する樹脂材料(以降、「硬化前の流動性を有する樹脂材料」を「前駆体樹脂材料」とも言う)に、散乱粒子41と浮遊粒子43を均一に分散させた後に硬化させることで形成できる。詳細は後述するが、浮遊粒子43は、被覆部材27を形成する過程において、媒質39の前駆体樹脂材料中に分散された散乱粒子41の沈降を防止する働きを有する。
【0033】
このように、浮遊粒子43を分散した被覆部材27は、散乱粒子41が均一に分散されている状態を維持するので、発光素子13の光出射面(半導体積層体17の上面)から出射されて透光部材25に入射した光のうち、透光部材25の側面から被覆部材27へ入射する光を、均一に反射して透光部材25へ戻すことができる。
【0034】
よって、発光素子13の光出射面から出射し透光部材25へ入射して上面25Tから出射する直接光と、透光部材25の側面を覆う被覆部材27で反射されて上面25Tから出射する間接光が合わさり、透光部材25の上面25Tから出射する光の光出力を高くすることができる。また透光部材25の上面25Tの周囲部分(例えば、被覆部材27の上面27T)に対して高いコントラストが得られる。
【0035】
被覆部材27の媒質39としては、例えば、シリコーン樹脂(比重0.99)、エポキシ樹脂(比重1.11~1.40)、アクリル樹脂(比重1.17~1.20)、ポリカーボネイト樹脂(比重1.1~1.6)、ポリイミド樹脂(比重1.33~1.43)等の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を用いることができる。散乱粒子41としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、アルミナ(Al2O3)等の金属酸化物の粒子を用いることができる。浮遊粒子43としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリイミド樹脂等の硬化済みの樹脂粒子を用いることができる(媒質39の硬化温度において液化しない樹脂の粒子を用いることができる)。
【0036】
本実施例においては、被覆部材27の媒質39として、比重0.99、屈折率1.41であって、発光素子13の青色光(波長430nm~460nm)に対して黄変等を起こさない耐光性のあるシリコーン樹脂を用いた。
【0037】
また、散乱粒子41として、比重4.0、屈折率2.52、粒径250nmである球状のアナターゼ型の酸化チタン(TiO2)粒子を用いた。例えば、波長430nmの光は媒質39中において305nm(媒質中の波長=真空中の波長/媒質の屈折率:430nm/1.41)であり、散乱粒子の粒径は波長の0.82倍(250nm/305nm)となる。また、波長780nmの光は媒質39中において553nm(780nm/1.41)であり、散乱粒子の粒径は波長の0.45倍(250nm/553nm)となる。このように、散乱粒子41の粒径が媒質39中の波長の1/4~2倍の領域においては、Mie散乱領域であり、高い反射率が得られる。
【0038】
また、散乱粒子41の添加量は25wt%(重量パーセント濃度)とした。添加量は8wt%~40wt%とできるが、8wt%より小さいと反射率が低く、また40wt%超では被覆部材27に樹脂割れを起こすことがあるので好ましくない。
【0039】
また、浮遊粒子43として、比重0.99、屈折率1.41、粒径800nmである球状の硬化済みシリコーン樹脂を用いた。浮遊粒子43の添加量は2wt%とした。浮遊粒子43の添加量は1wt%~6wt%が好ましいが、1wt%より小さいと散乱粒子41の沈降を防止する効果が弱く、また6wt%超では沈降を防止する効果が飽和する。浮遊粒子43を、6wt%を超えて添加しても良いが、硬化前の被覆部材27の液体量の減少による流動阻害が起きない程度の添加量に留めておくことが望ましい。例えば、浮遊粒子43の添加量は、18wt%以下が好ましい。尚、硬化前の被覆部材27の流動阻害を考慮するならば、浮遊粒子43の添加量は散乱粒子41の添加量より少ないことが好ましい(浮遊粒子43の添加量<散乱粒子41の添加量)。
【0040】
次に、
図2及び
図3に示すように被覆部材27の上面27Tは、発光装置10の断面視において、透光部材25の上面25Tよりも低くなっている。このような被覆部材27の形状は、媒質39の前駆体樹脂材料が硬化の際に若干収縮することで起きる。しかしながら、浮遊粒子43は予め硬化された樹脂粒子なので硬化における収縮を起こさない。よって、被覆部材27の上面27Tが低くなることを抑制できる。特に、透光部材25の上面25Tの周囲と被覆部材27の上面27Tの境界部のスロープを緩やかにできる。
【0041】
例えば、境界部のスロープが急峻な場合、透光部材25の上面25T付近の側面を覆う被覆部材27が薄くなりコントラストを低下させる。浮遊粒子43の添加は、境界部のスロープを緩やかにするのでコントラストの低下を防止することができる。
【0042】
[浮遊粒子の機能]
次に、浮遊粒子43の機能について説明する。被覆部材27に添加する浮遊粒子43は、製造時において媒質39となる前駆体樹脂材料が硬化されるまでの間、散乱粒子41の沈降を防止する。換言すれば、媒質39中に散乱粒子41を均一に分散された状態を維持する機能を有する。
【0043】
図4は、後述する発光装置10の製造工程における散乱粒子41と浮遊粒子43の動きを模式的に示す図である。具体的には、被覆部材27を形成する際に、媒質39となる前駆体樹脂材料が硬化されるまでの散乱粒子41と浮遊粒子43の動きについて示している。
【0044】
図4に示す散乱粒子41に付した一点鎖線の矢印は、散乱粒子41の沈降する様子を示している。また、浮遊粒子43に付した破線の矢印は、散乱粒子41が浮遊粒子43の横を通過する前から通過中の浮遊粒子43の動きを示している。また、浮遊粒子43に付した実線の矢印は、散乱粒子41が浮遊粒子43の横を通過中から通過後の浮遊粒子の動きを示している。
【0045】
本実施例において散乱粒子41としての酸化チタン粒子の比重は4.00で、媒質39としてのシリコーン樹脂の比重0.99より約4倍大きい。また媒質39となる前駆体樹脂材料であるシリコーン樹脂は、加熱硬化の際に、硬化以前の昇温過程において流動性が高くなる(粘度が低下する)。そのため、前駆体樹脂材料であるシリコーン樹脂中の散乱粒子41は、上面27Tから基板11の底面11S方向(
図4中、上方から下方)へ沈降しようとする。
【0046】
一方、浮遊粒子43は、媒質39となる前駆体樹脂材料であるシリコーン樹脂と同じ樹脂を硬化した粒子なので比重が同じである。従って浮遊粒子43は、媒質39となる前駆体樹脂材料であるシリコーン樹脂の流動性が高い状態であっても沈降も浮上もしない。換言すれば、シリコーン樹脂中において浮遊している。
【0047】
まず
図4に示すように、散乱粒子41が沈降するには媒質39となるシリコーン樹脂を押しのける必要がある。このとき、散乱粒子41の周囲においてシリコーン樹脂の流動をともなう。シリコーン樹脂の流動速度は散乱粒子41の近傍で速く、遠方で遅い。このような流動体の中において、固体の浮遊粒子43は速度差のあるシリコーン樹脂の流動を妨げる。その結果、散乱粒子41の沈降抵抗が大きくなり、散乱粒子41の沈降が抑制される。
【0048】
次に、浮遊粒子43は、
図4中の破線の矢印で示すように、散乱粒子41によってシリコーン樹脂が押しのけられる際に横方向に移動する。例えば、回転しつつ横方向に移動することも考えられる。換言すれば、散乱粒子41が下方に向かって進むためにはシリコーン樹脂を押しのけつつ浮遊粒子43を移動させることが必要となる。この場合においても、固体の浮遊粒子43は速度差のあるシリコーン樹脂の流動を妨げる(速度差のある流れを妨げることで浮遊粒子は回転する)。その結果、散乱粒子41の沈降抵抗が大きくなり、散乱粒子41の沈降が抑制される。
【0049】
また、散乱粒子41が下方へ移動することで生じるスペースはシリコーン樹脂に置き換わる。この場合においても、前述と同様に、固体の浮遊粒子43は速度差のあるシリコーン樹脂の流動を妨げる。その結果、散乱粒子41の沈降抵抗が大きくなり、散乱粒子41の沈降が抑制される。
【0050】
このように、媒質39となる前駆体樹脂材料のシリコーン樹脂中に、散乱粒子41とともに浮遊粒子43を添加すると、散乱粒子41の沈降抵抗を大きくでき、散乱粒子41の沈降を抑制できる。
【0051】
換言すれば、媒質39となる前駆体樹脂材料のシリコーン樹脂中で固体粒状体であるとともに、沈降も浮上もしない浮遊粒子43は、シリコーン樹脂の流れを妨げ、散乱粒子41の沈降を抑制する。
【0052】
一方、浮遊粒子43が、媒質39となる前駆体樹脂材料中で沈降する場合、散乱粒子41は沈降する。また浮遊粒子43が、媒質39となる前駆体樹脂材料中で浮上する場合、散乱粒子41の沈降を助長する。しかるに、浮遊粒子43は媒質39となる前駆体樹脂材料のシリコーン樹脂中で浮遊していることが望ましい。
【0053】
本方法によれば、媒質39となるシリコーン樹脂の化学的特性を変えることがなく、被覆部材27としての封止性能や密着性を損なうことがない。
【0054】
例えば、散乱粒子41の沈降を防止する方法として、媒質39に、水素結合や反応により無機ポリマーとなるシリカやアルミナ、又はゲル化剤や界面活性剤を加えて、増粘性やチクソトロピー性を付与させる方法がある。しかし、これらの方法は、被覆部材27の充填性、封止性能や密着性を損なうことがある。
【0055】
浮遊粒子43が、媒質39となる前駆体樹脂材料中で浮遊して散乱粒子41の沈降を防止できる比重の範囲は、媒質39がシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの樹脂材料においては比較的広い。
【0056】
浮遊粒子43による散乱粒子41の沈降を抑制する時間は、被覆部材27を発光装置10の凹部11Cに充填してから硬化するまでの約30分から2時間程度でよい。また、被覆部材27の媒質39であるシリコーン樹脂やエポキシ樹脂の比重は0.9~1.3程度と小さく(密度が低い)、対して、硬化前の粘度は0.5~10Pa・s(例えば、水の粘度は1mPa・sである)と比較的大きい。そのため、媒質39に対する浮遊粒子43の比重(浮遊粒子の密度/媒質の密度、又は、浮遊粒子の比重/媒質の比重)である相対比重が0.7以上1.3以下の範囲でよい。また、相対比重が0.9~1.1ならば、前述の硬化までの時間において、浮遊粒子43は実質的に沈降も浮上もしない(例えば、浮遊粒子の粒径程度の移動)ので更に好ましい。相対比重が約1ならば好適である。
【0057】
本明細書において、媒質39及び浮遊粒子43に用いる樹脂は、その樹脂を構成する主骨格(樹脂の種別を決定する分子骨格)、及び置換基(同一樹脂種別において特性を変化させる基)が同じである場合を同一の樹脂と称し、主骨格が同じで置換基が異なる場合を同種の樹脂と称する。
【0058】
本発明においては、媒質39と浮遊粒子43が同種の樹脂であることが好ましく、好適には同一の樹脂であることが良い。例えば、同一又は同種の樹脂である場合、浮遊粒子43が媒質39中で凝集せずに分散するからである。また、硬化後は媒質39と同化するので浮遊粒子43の添加による被覆部材27の特性変化が起こらないからである。
【0059】
対して、異種の樹脂である場合、浮遊粒子43が媒質39中で凝集することがある。このような場合、浮遊粒子43の表面に媒質39と親液性の良い被覆膜を被覆することで解消できる。
【0060】
浮遊粒子43のサイズは、散乱粒子41の沈降(移動)によって発生する媒質39となる流動性を有する樹脂の流れを阻害できるサイズが好ましい。概ね、浮遊粒子43の粒径が散乱粒子41の粒径の1/2倍~4倍が好ましい。ここで、浮遊粒子43の粒径と散乱粒子41の粒径とを比較する際には、例えば、レーザ回折・散乱法によって測定した粒径分布から算出した体積平均粒子径によって比較してもよく、メディアン径(50%径)によって比較してもよい。浮遊粒子43の粒径が1/2倍より小さいと、浮遊粒子43は散乱粒子41が起こす速い流れと遅い流れの各々に同化して動き、大きな抵抗を発生しない。また4倍を超えると、浮遊粒子43は静置物として働き、散乱粒子41は浮遊粒子43の縁に沿って沈降(移動)するだけで、大きな抵抗を発生しないからである。特に好ましい、浮遊粒子43の粒径は、浮遊粒子43の重量が散乱粒子41の重量と同等程度となる粒径である。
【0061】
例えば、散乱粒子41の粒径が250nmならば、浮遊粒子43の好ましい粒径は125nm~1000nmである。特に好ましい粒径は、散乱粒子41の比重が4、浮遊粒子43の比重が1の場合、浮遊粒子43の体積が散乱粒子41の体積の4倍になる粒径400nm程度である。
【0062】
浮遊粒子43の形状は、散乱粒子41の沈降(移動)によって発生する媒質39となる流動性のある樹脂の流れを阻害できる形状ならばよい。例えば、球形、楕円形、円盤状、円柱状など、さまざまな形状とすることができる。
【0063】
本実施例の発光装置10は、発光素子13から放射する青色光と、接着部材37に添加した蛍光体が青色光の一部を吸収して放射する橙色光とが、透光部材25で混色されて上面25Tから白色光を出射する。なお、発光装置10の発光色は、波長変換材の添加の有無、また添加量を調整することで、発光素子13の放射光色から、波長変換材の放射光色まで任意に調整可能である。
【0064】
以上より、本実施例の発光装置10は、媒質39に散乱粒子41に加え浮遊粒子43を添加した被覆部材27を用いることにより、媒質39中の散乱粒子41を沈降させることなく所定の濃度に均一に分散させることができ、透光部材25側から被覆部材27へ入射する光を、均一に反射できるので、透光部材25の上面25Tから放射される光出力(発光輝度)を高くでき、また上面25Tから放射される光のコントラストを高くできる。
【0065】
[実施例の発光装置の製造方法]
次に、本実施例の発光装置10の製造方法について
図5を参照して説明する。
図5は、発光装置10の製造工程を記載したフローチャートである。なお、
図5に示した製造方法は、発光装置10の1つの製造方法にすぎず、これに限定されるものではない。
【0066】
[部材準備工程]
部材準備工程S11は、予め配線及び電極形成済みの基板11及び発光素子13を準備する工程である。例えば、
図2に示すようなアノード配線21、カソード配線29、カソード実装電極31及びアノード実装電極33が形成されたアルミナ製の基板11と、シリコン(Si)製の支持基板15を備えた発光素子13を準備する。
【0067】
[ダイボンディング工程]
ダイボンディング工程S12は、基板11の底面11Sに備えた配線上に発光素子13を実装する工程である。
【0068】
まず、カソード配線29上に金錫(AuSn)合金からなる粉末を含むゾルダーペーストを塗布する。次に、当該ゾルダーペースト上に発光素子13のカソード素子電極面を接するように載置する。その後、リフロー装置で約300℃まで加熱して、AuSn合金からなる接合部材35を形成しつつ、発光素子13をカソード配線29上に接合して、固定及び電気的に接続する。なお、ソルダーペーストに含まれるフラックスは接合の際に揮発する。
【0069】
[ワイヤボンディング工程]
ワイヤボンディング工程S13は、発光素子13のアノード素子電極19とアノード配線21をボンディングワイヤ23で接続する工程である。
【0070】
まず、ワイヤボンディング装置にダイボンディング工程S12を終えた基板11をセットする。次に、金(Au)製のボンディングワイヤ23の一端をアノード配線21に接合(ファーストボンディング)し、続けてボンディングワイヤ23の他端を発光素子13のアノード素子電極19に接合(セカンドボンディング)して電気的に接続する。
【0071】
[透光部材接着工程]
透光部材接着工程S14は、基板11に接合した発光素子13の半導体積層体17上に、接着部材37を介して透光部材25を接着する工程である。
【0072】
まず、接着部材37となる液状のシリコーン樹脂を半導体積層体17面上に適量滴下する。次に、透光部材25を液状のシリコーン樹脂上に載置し、押圧して支持基板15の上面と透光部材25の下面がシリコーン樹脂で覆われるように仮接着する。最後に、150℃で3分加熱してシリコーン樹脂を硬化して発光素子13と透光部材25を接着する。また同時に接着部材37を形成する。
【0073】
本実施例においては、接着部材37に粒径15nm~30nmの黄色蛍光体(YAG:Ce)を50wt%添加している。また透光部材25は、アノード素子電極19を除く支持基板15の上面と略同等な形状とした厚さ200μmのガラス板を用いた。
【0074】
[被覆部材充填工程]
被覆部材充填工程S15は、透光部材接着工程S14の実行後に、基板11の凹部11Cと発光素子13と接着部材37と透光部材25の側面で画定された隙間を被覆部材27で充填する工程である。
【0075】
まず、媒質39となる前駆体樹脂材料のシリコーン樹脂に、散乱粒子41として粒径250nmの酸化チタン(TiO2)粒子を25wt%と、浮遊粒子43として粒径800nmの硬化済シリコーン樹脂粒子2wt%を加えて均一に分散(混合)する。続いて、脱気処理を行い被覆部材27となる前駆体を用意する。次に、基板11の凹部11Cと発光素子13と接着部材37と透光部材25の側面で画定された隙間に被覆部材27の前駆体を充填する。被覆部材27の前駆体は、透光部材25の上面25Tの高さと略同一となる高さに充填する。
【0076】
[被覆部材硬化工程]
被覆部材硬化工程S16は、基板11の凹部11Cと発光素子13と接着部材37と透光部材25の側面に充填した被覆部材27の前駆体を加熱および硬化して密着封止する工程である。
【0077】
まず、被覆部材充填工程S15後の被覆部材27の前駆体が充填された基板11を熱硬化炉に入れ、30分静置して媒質39となるシリコーン樹脂を基板11の底面11Sと、発光素子13と接着部材37と透光部材25の側面に馴染ませる。次に、90分を掛けて180℃まで加熱して被覆部材27の前駆体を硬化して被覆部材27を形成する。
【0078】
このとき、媒質39となるシリコーン樹脂が硬化に至るまでの間、浮遊粒子43が散乱粒子41の沈降を防ぐ。特に、シリコーン樹脂の硬化直前における流動性が高くなる(粘度が低くなる)温度域では、散乱粒子41である酸化チタン粒子の比重が大きく沈降し易い。本実施例においては、シリコーン樹脂中に浮遊粒子43として硬化済のシリコーン樹脂粒子を添加してあるので、散乱粒子41の沈降が抑制され、媒質39中に散乱粒子41が所定の濃度で均一に分散された被覆部材27が形成される。
【0079】
以上の工程によって、本実施例の発光装置10は製造される。このように製造された発光装置10の透光部材25の上面25Tからの出射する光の光出力は高く、また周囲の被覆部材27の上面27Tに対して高いコントラストを有する。
【比較例】
【0080】
次に、比較例の半導体発光装置について説明する。
【0081】
比較例の半導体発光装置50(以降、発光装置50とも称す)は、被覆部材27に代えて被覆部材51を有する他は発光装置10と同様に構成されている。
図6は、比較例の発光装置50について、
図2の点線で囲んだA部に相当する部分を模式的に示した図である。
【0082】
被覆部材51は、浮遊粒子43を含まず、媒質39中に散乱粒子41が分散されて構成されている。そのため、被覆部材51中において散乱粒子41は沈降し、散乱粒子41の濃度は、上面51T付近で薄く、基板11の底面11S方向で濃くなる。具体的に言えば、散乱粒子41の濃度は、透光部材25の側面で薄く、発光素子13の側面で濃くなる。従って、透光部材25側から被覆部材51側へ入射する光の反射率が所定の反射率より低下する。
【0083】
更に、
図6に示すように、被覆部材51の上面51T付近において、特に散乱粒子41の濃度が薄い部分が形成される。具体的には、
図6中の破線で囲んだ散乱粒子41の濃度が低い領域Bが形成される。
【0084】
この領域Bにおいて、透光部材25から被覆部材51に入射した光は、透光部材25側へ反射されることなく、領域Bを伝搬しつつ被覆部材51内で減衰する。又は、領域Bにおいて、透光部材25から被覆部材51に入射した光は、当該領域の下方の散乱粒子41よって反射されて上面51Tへ向かい出射する。
【0085】
以上によって、半導体発光装置50の透光部材25の上面25Tから出射する光の光出力は低下する。また、透光部材25の上面25Tから出射する光の被覆部材51に対するコントラストも低下する。同時に、被覆部材51に入射した光が上面51Tから出射することで迷光も発生する。
【0086】
[比較例の発光装置の製造方法]
比較例の発光装置50の製造方法は、本実施例の発光装置10の製造方法に対して、被覆部材27に浮遊粒子43が添加されてない、被覆部材51を用いた点が異なるだけで、それ以外の製造工程は全て同じなので、異なる部分だけを説明する。
【0087】
比較例の発光装置50の被覆部材51は、被覆部材充填工程S15において、基板11の凹部11Cに被覆部材51の前駆体を充填した時点から、被覆部材51中で散乱粒子41の沈降が始まり、被覆部材硬化工程S16で被覆部材51の前駆体が硬化するまで散乱粒子41は沈降する。従って、被覆部材51の媒質39中において、散乱粒子41の密度(濃度)は、上面51T近傍で低くなり、基板11の底面11Sで高くなる。すなわち、散乱粒子41の密度は不均化する。
【0088】
[発光装置の発光特性]
本実施例の発光装置10と比較例の発光装置50の発光特性について、
図7及び
図8を参照しつつ以下に説明する。
【0089】
図7は、
図1の2-2線に沿って半導体発光装置10の輝度を測定した輝度分布を示したグラフである。
図7に示すグラフの横軸は、透光部材25の上面25Tの中心を0mmとして
図2-2線に沿った位置を示している。
図7に示すグラフの縦軸は、最大輝度を1とした規格化輝度を示している。また、
図7に示すグラフ中の「R1」は、半導体発光装置10の発光面、すなわち透光部材25の上面25Tに対応する領域を示している。
【0090】
図7に示すように、半導体発光装置10の規格化輝度は、発光面R1内において高い輝度を保つ高輝度領域を形成している。また、発光面R1の外側の両領域において、中心から離れるに従い急峻に輝度減衰する輝度減衰領域を形成している。このように発光装置10の輝度分布は、明瞭に高輝度領域と輝度減衰領域になっており、高いコントラストが得られている。
【0091】
図8は、
図7と同様に測定した、比較例の半導体発光装置50の輝度分布を示したグラフである。
【0092】
図8に示すように、半導体発光装置50の規格化輝度は、発光面R1内において輝度の窪みはあるものの高輝度領域を形成している。また、発光面R1の外側の両領域において、中心から離れるに従い急峻に輝度減衰する輝度減衰領域を形成している。しかし、減衰領域の端に(図中、一点鎖線で囲まれた部分)に、規格化輝度の減衰が鈍化する、又は上昇する迷光部を生じている。このように、浮遊粒子43を含まない発光装置50のコントラストは迷光によって低下することがある。また、透光部材25の上面25Tから放射する光出力は迷光として損失した分だけ低下する。
【0093】
このように、浮遊粒子43を含んだ被覆部材27を用いた半導体発光装置10は、透光部材25の上面25Tから放射する光出力が高く、また透光部材25の上面25Tを囲む被覆部材27の上面27Tに対して高いコントラストを有している。これは、透光部材25の側面を覆う被覆部材27に含まれる散乱粒子41が均一に分散しているからである。
【0094】
一方、浮遊粒子43を含まない被覆部材51を用いた半導体発光装置50は、透光部材25の上面25Tから放射する光出力は高いが、被覆部材51の上面51Tから迷光を出射している。換言すれば、透光部材25の側面から被覆部材51へ光が漏れているに他ならない。また、この迷光によりコントラストも低下している。これは、透光部材25の側面を覆う被覆部材51に含まれる散乱粒子41が沈降して不均化しているからである。特に、
図6の領域Bに示すように、被覆部材51の上面51Tにおいて散乱粒子41の濃度が薄くなることによる。
【0095】
以上で説明したように、本発明の半導体発光装置は、発光素子と、発光素子の発光面上に設けられ、発光素子が放射する放射光に対して透光性を有する透光部材と、発光素子及び透光部材の側面を覆うように設けられた被覆部材を有している。そして被覆部材は、樹脂を媒質とし、樹脂とは屈折率が異なり、光散乱性を有する散乱粒子と、同樹脂からなる浮遊粒子とを含んでいる。
【0096】
被覆部材に浮遊粒子が添加されていることで、媒質の前駆体である流動性を有する樹脂中において、散乱粒子が沈降することなく均一に分散している。従って、発光素子から出射された光が透光部材を通って被覆部材に入射しても、所定の反射率で反射されて透光部材に戻される。従って、透光部材の上面から出射する光出力が高く、また高いコントラストが得られる半導体発光装置を提供することができる。
【0097】
また、本発明による半導体発光装置は、被覆部材中で散乱粒子が沈降して生じる被覆部材の上面付近に形成される散乱粒子の濃度が薄い領域が生じ難い。従って、発光素子から放射された光が、透光部材から被覆部材へ導波することによる光出力の低下、及びコントラストの低下も防止することができる。
【0098】
なお、上記実施例において、発光素子13が支持基板15を有する発光素子である場合について説明したが、これに限られることはない。発光素子13は、基板11の底面11Sと反対側の面である上面を発光面とする半導体発光素子であればよい。例えば、発光素子13として、透光性の成長基板を備えたフリップチップ型の発光素子を用いてもよい。
【0099】
また、本発明による半導体発光装置は、複数の発光素子を含んで構成されてもよい。例えば、上記実施例の発光素子13、透光部材25及び接着部材37を含む単位を発光構造体とし、基板11の底面11S上に、複数の発光構造体を、所定の間隔をおいてマトリクス状に配列してもよい。この場合、基板11の凹部11C、発光素子13の各々の側面、接着部材37の各々の側面及び透光部材25の各々側面によって画定された隙間に被覆部材27の前駆体を充填して加熱硬化し、被覆部材27を形成する。
【0100】
このような構成により、各々の透光部材25と隣接する透光部材25との間には、散乱粒子41が均一に分散した被覆部材27が存在する。これによって、各々の発光構造体から隣接する発光構造体への光漏れが防止され、クロストークを防止することができる。従って、例えば複数の発光構造体の配列によって文字や数字を表す場合に、鮮明に表示することができる。また、例えば、接着部材37への波長変換材の添加量を増減させることによって、複数の発光構造体の各々の発光色を互いに異ならせることができる。この場合にも、発光構造体の各々について高いコントラストが得られ、隣接する発光構造体間での色の混合も防止することができ、設計通りの色分けを実現することができる。
【0101】
また上述した実施例及び製造方法における構成は例示に過ぎず、用途等に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0102】
10 半導体発光装置
11 基板
11S 底面
13 発光素子
15 支持基板
17 半導体積層体
19 アノード素子電極
21 アノード配線
23 ボンディングワイヤ
25 透光部材
25T 上面
27、51 被覆部材
31 カソード実装電極
33 アノード実装電極
35 接合部材
37 接着部材
39 媒質
41 散乱粒子
43 浮遊粒子