(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】予兆判定装置、予兆判定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20241101BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20241101BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20241101BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
G01R31/34 A
(21)【出願番号】P 2020102907
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森下 靖
(72)【発明者】
【氏名】園田 隆
(72)【発明者】
【氏名】露木 和弘
(72)【発明者】
【氏名】永渕 尚之
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-181283(JP,A)
【文献】特開2018-128284(JP,A)
【文献】特許第5985099(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/109993(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0013138(US,A1)
【文献】特開2011-215067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 17/00
G01R 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を流れる電流の計測結果を取得する計測結果取得部と、
前記計測結果に基づいて複数の評価パラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記複数の評価パラメータごとに、前記複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定する第1特定部と、
特定される複数の前記評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定する第2特定部と、
特定された前記最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、前記電動機の異常の予兆があるか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記第1特定部は、複数の評価パラメータのうち、側帯波のピークの値でない前記評価パラメータごとに、側帯波のピークの値を特定し、
前記第2特定部は、側帯波のピークの値である前記評価パラメータ及び特定される複数の前記側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する
予兆判定装置。
【請求項2】
予め設定された補正値に基づいて、特定された前記側帯波のピークの値を補正する補正部と、を備え、
前記第2特定部は、側帯波のピークの値である評価パラメータ及び補正された前記側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する、
請求項1に記載の予兆判定装置。
【請求項3】
前記補正値は、前記予兆判定装置が設けられるプラントの運転状況に応じて設定される、
請求項2に記載の予兆判定装置。
【請求項4】
前記補正値は、前記側帯波のピークの値に係る前記評価パラメータごとに、異なる値で設定される、
請求項2又は請求項3に記載の予兆判定装置。
【請求項5】
前記判定部により判定された内容及び特定された前記最大値を出力する出力部と、
を備える請求項1から
請求項4の何れか1項に記載の予兆判定装置。
【請求項6】
電動機を流れる電流の計測結果を取得することと、
前記計測結果に基づいて複数の評価パラメータを取得することと、
前記複数の評価パラメータのうち、側帯波のピークの値でない前記評価パラメータごとに
、側帯波のピークの値を特定することと、
側帯波のピークの値である前記評価パラメータ及び特定される複数の前記側帯波のピークの値のうち、最大値を特定することと、
特定された前記最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、前記電動機の異常の予兆があるか否かを判定することと、
を含む予兆判定方法。
【請求項7】
コンピュータを、
電動機を流れる電流の計測結果を取得することと、
前記計測結果に基づいて複数の評価パラメータを取得することと、
前記複数の評価パラメータのうち、側帯波のピークの値でない前記評価パラメータごとに
、側帯波のピークの値を特定することと、
側帯波のピークの値である前記評価パラメータ及び特定される複数の前記側帯波のピークの値のうち、最大値を特定することと、
特定された前記最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、前記電動機の異常の予兆があるか否かを判定することと、
として実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予兆判定装置、予兆判定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動機の定格電流の基準正弦波信号波形から求められた参照振幅確率密度関数と、電動機の稼働時の電流波形から求められた点検時振幅確率密度関数に基づいて、電動機に異常があるか否かを判定する電動機の異常診断方法の技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、電動機の稼働時の電流信号をサンプリングして、ハイパスフィルターによるフィルター処理を行った後、包絡線処理を行った電流の時系列信号に高速フーリエ変換を行い、スペクトルのピーク群を検出することにより、回転機械系の歯車の軸受又は歯車の噛み合いの異常を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-257362号公報
【文献】特開2015-004694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機を流れる電流に係る単一のパラメータの変化傾向に基づいて、電動機の異常の予兆を判定する技術が知られている。しかし、単一のパラメータの変化傾向から判定できる予兆の態様は限界があり、予め予兆を判定できない電動機の異常が存在していた。
本開示の目的は、上述した課題を解決する予兆判定装置、予兆判定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る予兆判定装置は、電動機を流れる電流の計測結果を取得する計測結果取得部と、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得するパラメータ取得部と、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定する第1特定部と、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定する第2特定部と、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機の異常の予兆があるか否かを判定する判定部を備える。
【0007】
本開示に係る予兆判定方法は、電動機を流れる電流の計測結果を取得することと、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得することと、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定することと、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定することと、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機の異常の予兆があるか否かを判定することを含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、コンピュータを、電動機を流れる電流の計測結果を取得することと、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得することと、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定することと、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定することと、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機の異常の予兆があるか否かを判定することとして実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、複数のパラメータを所定のパラメータに変換して得られる値の最大値に基づいて、電動機の異常の予兆を判定するため、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る予兆判定システムの構成を示す図である。
【
図2】一実施形態に係る予兆判定装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る予兆判定装置の動作を示すフローチャートである。
【
図4】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〈第1の実施形態〉
《予兆判定システムの構成》
以下、図面を参照しながら実施形態に係る予兆判定システム1の構成について詳しく説明する。予兆判定システム1は、電動機11の異常の予兆を判定する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係る予兆判定システム1の構成を示す図である。
予兆判定システム1は、電力源10と、電動機11と、電線12と、負荷13と、計測器16と、変換器17と、予兆判定装置100を備える。
【0013】
電力源10は電線12を介して電動機11に電流を供給する。
電動機11は電線12を介して電力源10から電流を受け入れる。電流を受け入れた電動機11は、電動機11が備える軸14Aを回転させて、負荷13が備える軸14Bを回転させる。
【0014】
電動機11により軸14Bが回転される。すなわち、負荷13は電動機11により駆動される。また、負荷13は、軸14Bを支持する軸受15A及び軸受15Bを備える。軸受15A及び軸受15Bには潤滑油が供給される。潤滑油は軸受15A及び軸受15Bと軸14Bとの摩擦を低減させる。
【0015】
計測器16は電線12を流れる電流を計測する。すなわち、計測器16は電線12を介して電動機11に流れる電流を計測する。計測器16の例としては、検流器(Current Transducer、CT)が挙げられる。計測器16は、電流を計測してアナログの電流波形を取得する。
【0016】
変換器17は、計測器16で取得したアナログの電流波形をデジタルの電流データに変換する。変換器17は、変換したデジタルの電流データを予兆判定装置100に送信する。すなわち、変換器17は、電動機11を流れる電流の計測結果を予兆判定装置100に送信する。
【0017】
《予兆判定装置の構成》
以下、予兆判定装置100の構成について説明する。
予兆判定装置100は、電動機11の異常の予兆があるか否かを判定する。
電動機11の異常の例としては、軸14Bと軸受15A及び軸受15Bの摩擦による軸14Bの形状変化又は軸受15A及び軸受15Bの形状変化と、電動機11又は負荷13の経時劣化又は錆による軸14Bの形状変化又は軸受15A及び軸受15Bの形状変化と、が挙げられる。
【0018】
図2は、予兆判定装置100の構成を示す概略ブロック図である。
予兆判定装置100は、計測結果取得部101と、パラメータ取得部102と、第1特定部103と、補正部104と、第2特定部105と、判定部106と、出力部107を備える。
【0019】
計測結果取得部101は、変換器17から送信されたデジタルの電流データを取得する。すなわち、計測結果取得部101は電動機11を流れる電流の計測結果を取得する。計測結果とは、デジタルの電流データである。
【0020】
パラメータ取得部102は、計測結果をFFT(Fast Fourier Transform)解析して複数の評価パラメータを取得する。例えば、パラメータ取得部102は、評価パラメータとして、Lpoleパラメータと、Irmsパラメータと、IHDパラメータと、THDパラメータを取得する。
以下、評価パラメータについて詳細に説明する。
【0021】
Lpoleパラメータは、電動機11が備えるロータ(図示しない)の状態を表すパラメータである。Lpoleパラメータは、電流信号を周波数領域変換して得られる周波数スペクトルのうち、電流スペクトルピークを中心として、所定周波数分だけ離れた周波数位置における電流スペクトルの側帯波のピークの値である。Lpoleパラメータに係る側帯波は、電動機11のポール通過周波数に起因して変動する側帯波である。
【0022】
Irmsパラメータは、負荷13を監視するためのパラメータである。Irmsパラメータは、各サンプリングタイミングにおける電流値の二乗和をサンプリングタイミング数で除算し、その平方根を求めることで得ることができる、電流実効値である。
【0023】
IHDパラメータは、電流信号の最大高調波成分と電源周波数成分の比率である。IHDパラメータは、電流信号から高調波成分を抽出し、高調波成分の予め設定した次数内にある最大値を、電源周波数実効値で除算することで得ることができる。
【0024】
THDパラメータは、電流信号の全高調波成分と電源周波数成分の比率である。THDパラメータは、電流信号から高調波成分を抽出し、予め設定した次数内における各高調波成分の二乗和の平方根を、電流信号の電源周波数実効値で除算することで得ることができる。
【0025】
上記のIHDパラメータおよびTHDパラメータは、いずれも電力源10の品質を表すパラメータである。
【0026】
第1特定部103は、複数の評価パラメータのうち、側帯波のピークの値でない評価パラメータごとに、側帯波のピークの値を特定する。側帯波のピークの値の例としては、Lshaftパラメータと、Lpoleパラメータが挙げられる。側帯波のピークの値は、評価パラメータに相当する値の一例である。
例えば、第1特定部103は、Lpoleパラメータでない評価パラメータであるIrmsパラメータと、IHDパラメータと、THDパラメータのそれぞれのLpoleパラメータを特定する。
【0027】
補正部104は、予め設定された補正値に基づいて、第1特定部103により特定された側帯波のピークの値を補正する。上記補正値は、予兆判定システム1が設けられるプラントの運転状況により設定される。
例えば、補正部104は、第1特定部103が特定したIrmsパラメータのLpoleパラメータと、IHDパラメータのLpoleパラメータと、THDパラメータのLpoleパラメータと、補正値とを演算することにより、それぞれのLpoleパラメータを補正する。ここで、補正値は評価パラメータごとに異なる値で設定される。また、補正値は計測結果取得部101が取得した計測結果により異なる値で設定される。また、補正値は、経時劣化による異常の予兆と、突発的に発生する異常の予兆とが分類できるように、設定される。
【0028】
第2特定部105は、側帯波のピークの値である評価パラメータ及び補正された側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する。例えば、第2特定部105はLpoleパラメータと、補正されたIrmsパラメータのLpoleパラメータと、補正されたIHDパラメータのLpoleパラメータと、補正されたTHDパラメータのLpoleパラメータのうち、最大値を特定する。
【0029】
判定部106は、第2特定部105により特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機11の異常の予兆があるか否かを判定する。例えば、判定部106は、特定された最大値が閾値以上である場合、電動機11の異常の予兆があると判定する。他方、判定部106は、特定された最大値が閾値以上でない場合、電動機11の異常の予兆がないと判定する。閾値は、計測結果取得部101が取得する計測結果により異なる値であっても良い。例えば、閾値は周波数ごとに異なる値であっても良い。
【0030】
出力部107は、判定部106により判定された内容及び第2特定部105により特定された最大値を、予兆判定システム1が備える報知装置(図示しない)に出力する。報知装置の例としては、ディスプレイ装置と、スピーカとが挙げられる。出力部107が出力する信号の例としては、画像を示す信号と、音声に係る信号が挙げられる。ディスプレイ装置は、判定された内容及び特定された最大値を、予兆判定システム1のユーザに表示する。これにより、予兆判定システム1のユーザは、判定された内容を確認することができる。加えて、予兆判定システム1のユーザは、特定された最大値を確認することができる。これにより、予兆判定システム1のユーザは、最大値に基づいて電動機11を評価することができる。
【0031】
《予兆判定システムの動作》
以下、予兆判定システム1の動作について説明する。
図3は、予兆判定システム1の動作を示すフローチャートである。
【0032】
計測器16は電流を計測してアナログの電流波形を取得する(ステップS1)。
変換器17はステップS1で取得したアナログの電流波形を、デジタルのデータに変換する(ステップS2)。
【0033】
計測結果取得部101は変換器17からデジタルのデータである計測結果を取得する(ステップS3)。
パラメータ取得部102は、ステップS3の計測結果をFFT解析することにより評価パラメータを取得する(ステップS4)。
例えば、パラメータ取得部102は、Lpoleパラメータでない評価パラメータであるIrmsパラメータと、IHDパラメータと、THDパラメータを取得する。
【0034】
第1特定部103は、ステップS4で取得した評価パラメータのうち、側帯波のピークの値でない評価パラメータごとに、側帯波のピークの値を特定する(ステップS5)。
例えば、第1特定部103は、Lpoleパラメータでない評価パラメータであるIrmsパラメータと、IHDパラメータと、THDパラメータのそれぞれのLpoleパラメータを特定する。
【0035】
補正部104は、予め設定された補正値に基づいて、ステップS5で特定された側帯波のピークの値を補正する(ステップS6)。
例えば、補正部104は、ステップS5で特定したIrmsパラメータのLpoleパラメータと、IHDパラメータのLpoleパラメータと、THDパラメータのLpoleパラメータと、補正値とを演算することにより、それぞれのLpoleパラメータを補正する。
【0036】
第2特定部105は、側帯波のピークの値である評価パラメータ及び補正された側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する(ステップS7)。
例えば、第2特定部105はLpoleパラメータと、補正されたIrmsパラメータのLpoleパラメータと、補正されたIHDパラメータのLpoleパラメータと、補正されたTHDパラメータのLpoleパラメータのうち、最大値を特定する。
【0037】
判定部106は、第2特定部105により特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機11の異常の予兆があるか否かを判定する(ステップS8)。
例えば、判定部106は、特定された最大値が閾値以上である場合、電動機11の異常の予兆があると判定する。他方、判定部106は、特定された最大値が閾値以上でない場合、電動機11の異常の予兆がないと判定する。
【0038】
出力部107は、ステップS8で判定された内容及びステップS7で特定された最大値を、予兆判定システム1が備える報知装置(図示しない)に出力する(ステップS9)。報知装置は、判定された内容及び特定された最大値を、予兆判定システム1のユーザに知らせる。
【0039】
《作用・効果》
本開示に係る予兆判定装置100は、電動機11を流れる電流の計測結果を取得する計測結果取得部101と、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得するパラメータ取得部102と、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定する第1特定部103と、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定する第2特定部105と、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機の異常の予兆があるか否かを判定する判定部106を備える。
【0040】
予兆判定装置100は、複数のパラメータを所定のパラメータに変換して得られる値の最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0041】
また、予兆判定装置100の第1特定部103は、複数の評価パラメータのうち、側帯波のピークの値でない評価パラメータごとに、側帯波のピークの値を特定し、第2特定部105は、側帯波のピークの値である評価パラメータ及び特定される複数の側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する。
【0042】
予兆判定装置100は、複数の側帯波のピークの値のうち、最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0043】
また、予兆判定装置100は、予め設定された補正値に基づいて、特定された側帯波のピークの値を補正する補正部104と、を備え、第2特定部105は、側帯波のピークの値である評価パラメータ及び補正された側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する。
【0044】
予兆判定装置100は、複数の補正された値のうち、最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、補正されていない評価パラメータにより予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0045】
また、予兆判定装置100の補正値は、予兆判定装置100が設けられるプラントの運転状況に応じて設定される。
これにより、予兆判定装置100のユーザなどは、プラントの運転状況に応じて補正値を設定することができ、より精度高く予兆を判定することができる。
【0046】
また、予兆判定装置100の補正値は、側帯波のピークの値に係る評価パラメータごとに、異なる値で設定される。
これにより、予兆判定装置100のユーザなどは、各評価パラメータに応じて補正値を設定することができ、より精度高く予兆を判定することができる。
【0047】
また、予兆判定装置100のパラメータ取得部102は、計測結果をFFT解析して複数の評価パラメータを取得する。
予兆判定装置100は、FFTにより取得した複数のパラメータの最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0048】
また、予兆判定装置100は、判定部106により判定された内容及び特定された最大値を出力する出力部107を備える。
予兆判定装置100のユーザは、出力された判定部106により判定された内容及び特定された最大値を確認することができる。これにより、予兆判定装置100のユーザは電動機11の状態を評価することができる。
【0049】
本開示に係る予兆判定方法は、電動機11を流れる電流の計測結果を取得することと、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得することと、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定することと、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定することと、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機11の異常の予兆があるか否かを判定することを含む。
【0050】
予兆判定方法のユーザは予兆判定方法を用いることで、取得した複数のパラメータの最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定方法のユーザは、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0051】
本開示に係るプログラムは、コンピュータを、電動機11を流れる電流の計測結果を取得することと、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得することと、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定することと、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定することと、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機11の異常の予兆があるか否かを判定することとして実行させる。
【0052】
プログラムのユーザはプログラムを実行させることで、取得した複数のパラメータの最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、プログラムのユーザは、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0053】
〈コンピュータ構成〉
図4は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ1100は、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、インタフェース1140を備える。
上述の予兆判定装置100は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0054】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0055】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース1140または通信回線を介してコンピュータに接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ1130は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0056】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0057】
〈付記〉
各実施形態に記載の予兆判定装置100は、例えば以下のように把握される。
【0058】
(1)本開示に係る予兆判定装置100は、電動機11を流れる電流の計測結果を取得する計測結果取得部101と、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得するパラメータ取得部102と、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定する第1特定部103と、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定する第2特定部105と、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機の異常の予兆があるか否かを判定する判定部106を備える。
【0059】
予兆判定装置100は、取得した複数のパラメータの最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0060】
(2)また、予兆判定装置100の第1特定部103は、複数の評価パラメータのうち、側帯波のピークの値でない評価パラメータごとに、側帯波のピークの値を特定し、第2特定部105は、側帯波のピークの値である評価パラメータ及び特定される複数の側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する。
【0061】
予兆判定装置100は、複数の側帯波のピークの値のうち、最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0062】
(3)また、予兆判定装置100は、予め設定された補正値に基づいて、特定された側帯波のピークの値を補正する補正部104と、を備え、第2特定部105は、側帯波のピークの値である評価パラメータ及び補正された側帯波のピークの値のうち、最大値を特定する。
【0063】
予兆判定装置100は、複数の補正された値のうち、最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、補正されていない評価パラメータにより予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0064】
(4)また、予兆判定装置100の補正値は、予兆判定装置100が設けられるプラントの運転状況に応じて設定される。
これにより、予兆判定装置100のユーザなどは、プラントの運転状況に応じて補正値を設定することができ、より精度高く予兆を判定することができる。
【0065】
(5)また、予兆判定装置100の補正値は、側帯波のピークの値に係る評価パラメータごとに、異なる値で設定される。
これにより、予兆判定装置100のユーザなどは、各評価パラメータに応じて補正値を設定することができ、より精度高く予兆を判定することができる。
【0066】
(6)また、予兆判定装置100のパラメータ取得部102は、計測結果をFFT解析して複数の評価パラメータを取得する。
予兆判定装置100は、FFTにより取得した複数のパラメータの最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定装置100は、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0067】
(7)また、予兆判定装置100は、判定部106により判定された内容及び特定された最大値を出力する出力部107を備える。
予兆判定装置100のユーザは、出力された判定部106により判定された内容及び特定された最大値を確認することができる。これにより、予兆判定装置100のユーザは電動機11の状態を評価することができる。
【0068】
(8)本開示に係る予兆判定方法は、電動機11を流れる電流の計測結果を取得することと、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得することと、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定することと、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定することと、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機11の異常の予兆があるか否かを判定することを含む。
【0069】
予兆判定方法のユーザは予兆判定方法を用いることで、取得した複数のパラメータの最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、予兆判定方法のユーザは、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【0070】
(9)本開示に係るプログラムは、コンピュータを、電動機11を流れる電流の計測結果を取得することと、計測結果を周波数解析して複数の評価パラメータを取得することと、複数の評価パラメータごとに、複数の評価パラメータに含まれる1つの評価パラメータに相当する値を特定することと、特定される複数の評価パラメータに相当する値のうち、最大値を特定することと、特定された最大値を、予め設定された閾値に照らし合わせて、電動機11の異常の予兆があるか否かを判定することとして実行させる。
【0071】
プログラムのユーザはプログラムを実行させることで、取得した複数のパラメータの最大値に基づいて、電動機11の異常の予兆を判定する。これにより、プログラムのユーザは、単一のパラメータのみで予兆を判定した場合に比べて、精度高く予兆を判定することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 予兆判定システム
10 電力源
11 電動機
12 電線
13 負荷
14 軸
15 軸受
16 計測器
17 変換器
100 予兆判定装置
101 計測結果取得部
102 パラメータ取得部
103 第1特定部
104 補正部
105 第2特定部
106 判定部
107 出力部
1100 コンピュータ
1110 プロセッサ
1120 メインメモリ
1130 ストレージ
1140 インタフェース