IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-コモンレール 図1
  • 特許-コモンレール 図2
  • 特許-コモンレール 図3
  • 特許-コモンレール 図4
  • 特許-コモンレール 図5
  • 特許-コモンレール 図6
  • 特許-コモンレール 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】コモンレール
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20241101BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
F02M55/02 350P
F02M55/02 360Z
F02M63/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020103896
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021195923
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】菊池 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】鎗田 章吾
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-265907(JP,A)
【文献】特開平08-284780(JP,A)
【文献】特開2004-169554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/02
F02M 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料が貯留される内部空間(48)と、前記内部空間(48)と連通する複数の分配流路(41、42、43、44、45、46)および吸入流路(47)と、を有するコモンレール本体(40)と、
前記複数の分配流路(41、42、43、44、45、46)から前記コモンレール本体(40)の外部へ流出する燃料の流量を規制する2つのフローリミッター(50、60)と、
を備えたコモンレール(30)であって、
前記複数の分配流路(41、42、43、44、45、46は、前記コモンレール本体(40)の一端側(40a)から他端側(40b)に向けて順に配置されており、
前記吸入流路(47)は、前記複数の分配流路(41、42、43、44、45、46)のうちの2つの分配流路の間に配置され、
前記2つのフローリミッター(50、60)のうちの一方は第1フローリミッター(50)であって、他方は第2フローリミッター(60)であって
前記第1フローリミッター(50)、前記吸入流路(47)から前記一端側(40a)に向かう流路を形成する前記内部空間(48)内に設けられ、
前記第2フローリミッター(60)、前記吸入流路(47)から前記他端側(40b)に向かう流路を形成する前記内部空間(48)内に設けられ、
前記第1フローリミッター(50)は、第1バルブピストン(51)と第1バルブストップ(52)と第1シートブロック(53)と第1バルブスプリング(54)とを備え、
前記第1バルブストップ(52)は、
前記内部空間(48、148)における前記吸入流路(47)の開口部である吸入流路開口部(47a)に対し、前記一端側(40a)の方向に予め定められた第1距離をとって配置され、且つ、前記吸入流路(47)と連通する第1バルブストップ流路(52b)が形成され、
前記第1シートブロック(53)は、
前記吸入流路開口部(47a)に対し、前記一端側(40a)の方向に、前記第1距離よりも長い第2距離をとって配置され、且つ、前記複数の分配流路(41、42、43、44、45、46)のうち、前記一端側(40a)の方向において前記吸入流路(47)に隣り合ういずれかの分配流路の、前記内部空間(48、148)における開口部である分配流路開口部よりも前記他端側(40b)の方向に配置され、
前記第1バルブピストン(51)は、
前記第1バルブストップ(52)と前記第1シートブロック(53)との間の前記内部空間(48、148)内に往復動自在に収容され、第1摺動部(51a)と第1細径部(51b)とを有し、
前記第1摺動部(51a)は、外周面が前記内部空間(48、148)の内周面と摺動し、
前記第1細径部(51b)は、前記第1摺動部(51a)から前記第1シートブロック(53)側に突出し、且つ、前記第1摺動部(51a)よりも外径が小さく、
前記第1バルブピストン(51)には、前記吸入流路(47)と前記第1細径部(51b)の外周側空間とを連通させる第1連通流路(51d)が形成され、
前記第1連通流路(51d)は、第1止まり穴部(51e)と第1オリフィス(51f)とを含み、
前記第1止まり穴部(51e)は、前記吸入流路(47)の側に開口し、
前記第1オリフィス(51f)は、前記第1細径部(51b)の外周側空間と前記第1止まり穴部(51e)とを連通させ、且つ、前記第1止まり穴部(51e)の内径より小さい内径を有し、
前記第1バルブスプリング(54)は、前記第1バルブピストン(51)を前記第1シートブロック(53)から離れる方向に押圧し、
前記第2フローリミッター(60)は、第2バルブピストン(61)と第2バルブストップ(62)と第2シートブロック(63)と第2バルブスプリング(64)とを備え、
前記第2バルブストップ(62)は、
前記吸入流路開口部(47a)に対し、前記他端側(40b)の方向に予め定められた第3距離をとって配置され、且つ、前記吸入流路(47)と連通する第2バルブストップ流路(62b)が形成され、
前記第2シートブロック(63)は、
前記吸入流路開口部(47a)に対し、前記他端側(40b)の方向に、前記第3距離よりも長い第4距離をとって配置され、且つ、前記複数の分配流路(41、42、43、44、45、46)のうち、前記他端側(40b)の方向において前記吸入流路(47)に隣り合ういずれかの分配流路の、前記内部空間(48、148)における開口部である分配流路開口部よりも前記一端側(40a)の側に配置され、
前記第2バルブピストン(61)は、
前記第2バルブストップ(62)と前記第2シートブロック(63)との間の前記内部空間(48、148)内に往復動自在に収容され、第2摺動部(61a)と第2細径部(61b)とを有し、
前記第2摺動部(61a)は、外周面が前記内部空間(48、148)の内周面と摺動し、
前記第2細径部(61b)は、前記第2摺動部(61a)から前記第2シートブロック(63)側に突出し、且つ、前記第2摺動部(61a)よりも外径が小さく、
前記第2バルブピストン(61)には、前記吸入流路(47)と前記第2細径部(61b)の外周側空間とを連通させる第2連通流路(61d)が形成され、
前記第2連通流路(61d)は、第2止まり穴部(61e)と第2オリフィス(61f)とを含み、
前記第2止まり穴部(61e)は、前記吸入流路(47)の側に開口し、
前記第2オリフィス(61f)は、前記第2細径部(61b)の外周側空間と前記第1止まり穴部(61e)とを連通させ、且つ、前記第2止まり穴部(61e)の内径より小さい内径を有し、
前記第2バルブスプリング(64)は、前記第2バルブピストン(61)を前記第2シートブロック(63)から離れる方向に押圧する、
コモンレール。
【請求項2】
前記第1フローリミッター(50)は、前記吸入流路(47)から、前記一端側(40a、140a)に流れる流量が所定の流量以上になると燃料の流れを停止し、
前記第2フローリミッター(60)は、前記吸入流路(47)から、前記他端側(40b、140b)に流れる流量が所定の流量以上になると燃料の流れを停止する、
請求項記載のコモンレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローリミッターを備えたコモンレールに関する。
【背景技術】
【0002】
コモンレールは、コモンレールシステムにおける主要部品の一つであり、高圧ポンプから供給された高圧燃料を、コモンレールの内部空間に貯留する。また、コモンレールは、内部空間に貯留された高圧燃料を、供給配管を介して各インジェクターに分配して供給する。
【0003】
供給配管の破損等に備え、コモンレールにフローリミッターが取り付けられる場合がある。フローリミッターは、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合に、コモンレールの外部への燃料の流出を停止する機能を有する。これにより、供給配管からの燃料漏れや、インジェクターからの過大な燃料噴射等が発生した場合に、燃料通路を遮断し、燃料の流出を停止することができる。特許文献1には、コモンレール用のフローリミッターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-27966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたコモンレールにおいては、フローリミッターは、コモンレールから突出した状態でコモンレールに取り付けられる。このため、フローリミッターの出っ張りも含めてコモンレールの設置スペースを確保しなければならないという課題があった。また、連結するインジェクターの数と同数のフローリミッターが必要であり、フローリミッターを使用することが大幅なコストアップにつながってしまうという課題もあった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、小型で、搭載性がよく、コストアップを低く抑えることができるフローリミッター付きのコモンレールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、燃料が貯留される内部空間と、前記内部空間と連通する分配流路および吸入流路と、を有するコモンレール本体と、前記分配流路から前記コモンレール本体の外部へ流出する燃料の流量を規制するフローリミッターと、を備えたコモンレールであって、前記分配流路は第1分配流路、第2分配流路、第3分配流路、第4分配流路を含み、前記コモンレール本体の一端側から他端側に向けて、前記第1分配流路、前記第2分配流路、前記第3分配流路、前記第4分配流路の順に配置されており、前記吸入流路は、前記第1分配流路と前記第2分配流路との間、前記第2分配流路と前記第3分配流路との間、前記第3分配流路と前記第4分配流路との間のいずれか1か所に配置されており、前記フローリミッターは第1フローリミッターと第2フローリミッターを含み、前記第1フローリミッターが、前記吸入流路から、前記コモンレール本体の一端側に向かう流路を形成する前記内部空間内に設けられ、前記第2フローリミッターが、前記吸入流路から、前記コモンレール本体の他端側に向かう流路を形成する前記内部空間内に設けられている、コモンレールが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るコモンレールは、小型で、搭載性がよく、コストアップを低く抑えることができるフローリミッター付きのコモンレールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るコモンレールの一例(4つの分配流路)が使用されるコモンレールシステムの構成図である。
図2】本発明の実施形態に係るコモンレールの一例(4つの分配流路)についての全体図である。
図3図2におけるA部の拡大図である。
図4】第1フローリミッター周辺を示す断面図であり、第1インジェクターまたは第2インジェクターから燃料が噴射された際の第1バルブピストンの移動の例を示す図である。
図5】第1フローリミッター周辺を示す断面図であり、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合の第1バルブピストンの移動の例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係るコモンレールの一例(6つの分配流路)が使用されるコモンレールシステムの構成図である。
図7】本発明の実施形態に係るコモンレールの一例(6つの分配流路)についての全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るコモンレールに関する実施形態について具体的に説明する。ただし、この実施形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。
【0011】
(4つの分配流路を有するコモンレール)
図1は、本発明の実施形態に係るコモンレールの一例が使用されるコモンレールシステムの構成図である。この例のコモンレールは4つの分配流路を有する。例えばこのコモンレールは4筒のエンジンに搭載されるコモンレールシステムに用いられる。コモンレールシステム1は、高圧ポンプ3、コモンレール30、4本のインジェクター11、12、13、14及び制御装置90を備えている。尚、例えば、この4つの分配流路を有するコモンレールは、これを2本使うことにより、8筒エンジンに搭載されるコモンレールシステム用として使用することもできる。
【0012】
燃料タンク5に貯蔵された燃料は高圧ポンプ3に供給される。高圧ポンプ3は燃料を加圧して高圧燃料とし、配管20を介してコモンレール30に圧送する。
【0013】
コモンレール30はその内部に高圧燃料を貯留する。当該高圧燃料は配管21、22、23、24をそれぞれ介して各インジェクター11、12、13、14に分配供給される。
【0014】
各インジェクター11、12、13、14は、エンジンの気筒毎に設けられ、高圧燃料を燃焼室に噴射する。また、各インジェクター11、12、13、14は、戻り配管29によって、燃料タンク5と接続されており、各インジェクター11、12、13、14に供給された燃料のうち、燃焼室に噴射されなかった燃料は、戻り配管29を介して燃料タンク5に戻される。また、コモンレール30の両端に設けられた圧力制御弁70、80が開弁した際にコモンレール30内に貯留された燃料を燃料タンク5に戻すレール戻り配管27、28が設けられている。高圧ポンプ3、各インジェクター11、12、13、14、圧力制御弁70、80は制御装置90と電気的に接続しており、制御装置90によって制御される。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係るコモンレール30の全体図であり、両端部を除いて断面図で示す。コモンレール30は、コモンレール本体40、第1フローリミッター50、第2フローリミッター60、第1圧力制御弁70および第2圧力制御弁80を備えている。
【0016】
コモンレール本体40は、燃料を貯留する内部空間48、内部空間48と連通する分配流路41、42、43、44、吸入流路47および圧力センサ取り付け孔49を備える。内部空間48は、例えば円筒状に形成されていてもよい。吸入流路47は、高圧ポンプ3の吐出口と配管20を介して接続されており、高圧ポンプ3から圧送された高圧燃料が吸入流路47から内部空間48に流入する。各分配流路41、42、43、44は各インジェクター11、12、13、14とそれぞれ接続しており、内部空間48内部に貯留された高圧燃料が分配流路から各インジェクター11、12、13、14に供給される。この例のコモンレールの場合、分配流路は、第1分配流路41、第2分配流路42、第3分配流路43、第4分配流路44から構成される。第1分配流路41は第1配管21を介して第1インジェクター11と接続され、第2分配流路42は第2配管22を介して第2インジェクター12と接続され、第3分配流路43は第3配管23を介して第3インジェクター13と接続され、第4分配流路44は第4配管24を介して第4インジェクター14と接続される。
【0017】
各分配流路41、42、43、44は、コモンレール本体40の一端側40aから他端側40bに向けて、第1分配流路41、第2分配流路42、第3分配流路43、第4分配流路44の順に配置されている。図2において、吸入流路47は、第2分配流路42と第3分配流路43との間に配置されているが、これに限らない。例えば、吸入流路47は、第1分配流路41と第2分配流路42との間に配置されていてもよいし、第3分配流路43と第4分配流路44との間に配置されていてもよい。すなわち、吸入流路47は、第1分配流路41と第2分配流路42との間、第2分配流路42と第3分配流路43との間、または、第3分配流路43と第4分配流路44との間のいずれか1か所に配置されていればよい。また、圧力センサ取り付け孔49は吸入流路47と同じ軸方向の位置であって、吸入流路47と径方向で異なる位置に配置されている。圧力センサ取り付け孔49には圧力センサ85が取り付けられる。圧力センサ85は内部空間48内の圧力を測定し、測定信号を制御装置90に送る。
【0018】
コモンレール本体40の一端側40aには、第1圧力制御弁70が設けられ、コモンレール本体40の他端側40bには、第2圧力制御弁80が設けられている。第1圧力制御弁70および第2圧力制御弁80は電気的に駆動される弁であり、制御装置90により駆動される。第1圧力制御弁70が開弁すると、内部空間48がレール戻り配管27に連通し、第2圧力制御弁80が開弁すると、内部空間48がレール戻り配管28に連通するように構成されている。
【0019】
図3は、図2のA部の拡大図である。第1フローリミッター50は、吸入流路47から、コモンレール本体40の一端側40aに向かう流路を形成する内部空間48内に設けられている。図3においては、第1フローリミッター50は内部空間48内であって、吸入流路47と第2分配流路42との間に配置されている。前述の通り、吸入流路47の配置は第2分配流路42と第3分配流路43との間に限られないので、第1フローリミッター50は内部空間48内であって、吸入流路47と、コモンレール本体40の一端側40aに向かう方向で吸入流路47の隣の分配流路と、の間に配置されると言える。
【0020】
第1フローリミッター50は、第1バルブピストン51と、第1バルブストップ52と、第1シートブロック53と、第1バルブスプリング54とを備えている。
【0021】
第1バルブストップ52は、内部空間48における吸入流路47の開口部である吸入流路開口部47aに対して、コモンレール本体40の一端側40a方向に適当な距離をとって配置されている。第1バルブストップ52の外周部は、内部空間48の内周面で固定されている。第1バルブストップ52は、第1バルブピストン51と対向する側に第1バルブストップ面52aを有する。また、第1バルブストップ52は、第1バルブストップ面52aからその反対側の面に貫通する第1バルブストップ流路52bを有している。
【0022】
図3においては、第1シートブロック53は、内部空間48における第2分配流路42の開口部である第2分配流路開口部42aに対して、コモンレール本体40の他端側40b方向に適当な距離をとって配置されている。前述の通り、吸入流路47の配置は第2分配流路42と第3分配流路43との間に限られないので、第1シートブロック53の配置に関する上記表現において、“第2分配流路42の開口部である第2分配流路開口部42a”は、“コモンレール本体40の一端側40aに向かう方向における吸入流路47の隣の分配流路の開口部である分配流路開口部”としてもよい。第1シートブロック53の外周部は、内部空間48の内周面で固定されている。
【0023】
第1シートブロック53は、第1バルブピストン51と対向する側に第1シートブロック面53aを有し、第1シートブロック面53aから反対側の面に貫通する第1シートブロック流路53bを有している。第1シートブロック流路53bは、第1シートブロック面53aからに反対側の面に向かって直径が小さくなるテーパ形状の第1テーパ面53cを備えている。第1シートブロック面53aと第1テーパ面53cの境界部が第1シート部53dを構成し、後述する第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座する。
【0024】
第1バルブピストン51は、第1バルブストップ52と第1シートブロック53との間の内部空間48内に往復動自在に収容されている。第1バルブピストン51は、外周面が内部空間48の内周面と摺動する、例えば円筒状の第1摺動部51aを備えている。また、第1バルブピストン51は、第1摺動部51aから第1シートブロック53側に突出する第1細径部51bを備えているとともに、第1バルブストップ52に対向する面に第1バルブピストン端部51cを備えている。第1細径部51bは第1摺動部51aよりも細い外径を有している。
【0025】
第1バルブピストン51には、第1連通流路51dが形成されている。第1連通流路51dは内部空間48内において、第1摺動部51aよりも第1バルブストップ52側の空間と、第1摺動部51aよりも第1シートブロック53側の空間とを連通するものである。第1連通流路51dは、例えば第1止まり穴部51eと第1オリフィス51fとで構成されている。第1止まり穴部51eは第1バルブピストン端部51cに開口し、第1細径部51bの先端近傍まで延びている。第1オリフィス51fは、第1細径部51bの外周側空間と第1止まり穴部51eとを連通するものである。また、第1細径部51bの先端部には、先端にいくほど直径が細くなるテーパ面を有する第1バルブピストン弁部51gが形成されている。第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座する際には、第1バルブピストン弁部51gのテーパ面が第1シート部53dに一周接するように形成されている。第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座することにより、着座部を境界として、内部空間内の燃料の流れが遮断される。
【0026】
第1バルブスプリング54は、第1バルブピストン51を第1シート部53dから離れる方向に押圧するものである。第1バルブスプリング54は、圧縮された状態で、第1シートブロック53と第1摺動部51aとの間に配置されている。
【0027】
第2フローリミッター60は、吸入流路47から、コモンレール本体40の他端側40bに向かう流路を形成する内部空間48内に設けられている。図3においては、第2フローリミッター60は内部空間48内であって、吸入流路47と第3分配流路43との間に配置されている。前述の通り、吸入流路47の配置は第2分配流路42と第3分配流路43との間に限られないので、第2フローリミッター60は内部空間48内であって、吸入流路47とコモンレール本体40の他端側40bに向かう方向で吸入流路47の隣の分配流路との間に配置されると言える。
【0028】
第2フローリミッター60は、第2バルブピストン61と、第2バルブストップ62と、第2シートブロック63と、第2バルブスプリング64とを備えている。
【0029】
第2バルブストップ62は、内部空間48における吸入流路47の開口部である吸入流路開口部47aに対して、コモンレール本体40の他端側40b方向に適当な距離をとって配置されている。第2バルブストップ62の外周部は、内部空間48の内周面で固定されている。第2バルブストップ62は、第2バルブピストン61と対向する側に第2バルブストップ面62aを有する。また、第2バルブストップ62は、第2バルブストップ面62aからその反対側の面に貫通する第2バルブストップ流路62bを有している。
【0030】
図3においては、第2シートブロック63は、内部空間48における第3分配流路43の開口部である第3分配流路開口部43aに対して、コモンレール本体40の一端側40a方向に適当な距離をとって配置されている。前述の通り、吸入流路47の配置は第2分配流路42と第3分配流路43との間に限られないので、第2シートブロック63の配置に関する上記表現において、“第3分配流路43の開口部である第3分配流路開口部43a”は、“コモンレール本体40の他端側40bに向かう方向における吸入流路47の隣の分配流路の開口部である分配流路開口部”としてもよい。第2シートブロック63の外周部は、内部空間48の内周面で固定されている。
【0031】
第2シートブロック63は、第2バルブピストン61と対向する側に第2シートブロック面63aを有し、第2シートブロック面63aから反対側の面に貫通する第2シートブロック流路63bを有している。第2シートブロック流路63bは、第2シートブロック面63aからに反対側の面に向かって直径が小さくなるテーパ形状の第2テーパ部63cを備えている。第2シートブロック面63aと第2テーパ部63cの境界部が第2シート部63dを構成し、後述する第2バルブピストン弁部61gが第2シート部63dに着座する。
【0032】
第2バルブピストン61は、第2バルブストップ62と第2シートブロック63との間の内部空間48内に往復動自在に収容されている。第2バルブピストン61は、外周面が内部空間48の内周面と摺動する、例えば円筒状の第2摺動部61aを備えている。また、第2バルブピストン61は、第2摺動部61aから第2シートブロック63側に突出する第2細径部61bを備えているとともに、第2バルブストップ62に対向する面に第2バルブピストン端部61cを備えている。第2細径部61bは第2摺動部61aよりも細い外径を有している。
【0033】
第2バルブピストン61には、第2連通流路61dが形成されている。第2連通流路61dは内部空間48内において、第2摺動部61aよりも第2バルブストップ62側の空間と、第2摺動部61aよりも第2シートブロック63側の空間とを連通するものである。第2連通流路61dは、例えば第2止まり穴部61eと第2オリフィス61fとで構成されている。第2止まり穴部61eは第2バルブピストン端部61cに開口し、第2細径部61bの先端近傍まで延びている。第2オリフィス61fは、第2細径部61bの外周側空間と第2止まり穴部61eとを連通するものである。また、第2細径部61bの先端部には、先端にいくほど直径が細くなるテーパ面を有する第2バルブピストン弁部61gが形成されている。第2バルブピストン弁部61gが第2シート部63dに着座する際には、第2バルブピストン弁部61gのテーパ面が第2シート部63dに一周接するように形成されている。第2バルブピストン弁部61gが第2シート部63dに着座することにより、着座部を境界として、内部空間内の燃料の流れが遮断される。
【0034】
第2バルブスプリング64は、第2バルブピストン61を第2シート部63dから離れる方向に押圧するものである。第2バルブスプリング64は、圧縮された状態で、第2シートブロック63と第2摺動部61aとの間に配置されている。
【0035】
本発明の実施形態に係るコモンレールの動作について説明する。図3に示す吸入流路47が第2分配流路42と第3分配流路43との間に配置されている場合において、第1フローリミッター50および第2フローリミッター60の挙動を含めてコモンレールの動作について説明する。
【0036】
図4及び図5は、コモンレール30における第1フローリミッター50周辺を示す断面図であり、バルブピストン51の位置が図3の状態と異なっている。
【0037】
第1インジェクター11および第2インジェクター12から燃料が噴射されていない状態においては、内部空間48内における第1バルブピストン51周囲の圧力に差は無く、したがって、第1バルブピストン51は、第1バルブスプリング54に押圧されて、第1バルブストップ52と接触した位置となる(図3参照)。
【0038】
第1インジェクター11または第2インジェクター12から燃料が噴射されると、内部空間48内において高圧燃料は、第1バルブピストン51の第1連通流路51dを通過し、分配流路41、42の方向に流出する。高圧燃料が第1連通流路51d、特に、第1オリフィス51fを通過する際に、減圧されるので、第1バルブピストン51に対して、第1シートブロック53側の圧力が、第1バルブストップ52側の圧力に比べ低くなる。図4に示すように、この圧力差に応じて第1バルブピストン51に作用する力が第1バルブスプリング54の押圧力と釣り合う位置まで、第1バルブピストン51は、第1シートブロック53側へ移動する。ここで、インジェクター11または12から燃料が噴射される際の第1バルブピストン51に作用する圧力差は、第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座しない程度に第1バルブスプリング54の押圧力等が調整されている。
【0039】
インジェクターによる燃料噴射が終了すると、第1連通流路51dを通過する燃料の流出も終了する。これに伴って第1バルブピストン51周囲の圧力差は無くなり、第1バルブピストン51が第1バルブスプリング54よって第1バルブストップ52側へ戻される(図3参照)。
【0040】
第1配管21または第2配管22が破損等し、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合には、第1連通流路51dをこの規定流量以上の燃料が通過しようとする。このため、第1バルブピストン51に作用する圧力差も大きくなり、第1バルブピストン51は、第1バルブスプリング54の押圧力に抗して移動し、第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座する(図5参照)。これにより、着座部を境界として、内部空間48内の燃料の流れが遮断されるので、第1分配流路41および第2分配流路42への燃料供給が停止し、破損した配管等からの燃料の流出を抑えることができる。
【0041】
この例の場合、第3分配流路43に接続する第3配管23または第4分配流路44に接続する第4配管24が破損等し、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合、第2フローリミッター60において、第2バルブピストン弁部61gが第2シート部63dに着座する。これにより、第3分配流路43および第4分配流路44への燃料供給が停止され、破損した配管等からの燃料の流出を抑えることができる。
【0042】
以上、吸入流路47が第2分配流路42と第3分配流路43との間に配置されている場合について述べたが、以下、吸入流路47の配置がこれとは異なる場合について述べる。
【0043】
吸入流路47が第3分配流路43と第4分配流路44との間に配置されている場合には、第1フローリミッター50は第3分配流路43と吸入流路47との間に配置される。第1分配流路41に接続する第1配管21または第2分配流路42に接続する第2配管22または第3分配流路43に接続する第3配管23が破損等し、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合、第1フローリミッター50において、第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座する。これにより、第1分配流路41、第2分配流路42および第3分配流路43への燃料供給が停止され、破損した配管等からの燃料の流出を抑えることができる。
【0044】
この場合、第2フローリミッター60は第4分配流路44と吸入流路47との間に配置される。第4分配流路44に接続する第4配管24が破損等し、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合、第2フローリミッター60において、第2バルブピストン弁部61gが第2シート部63dに着座する。これにより、第4分配流路44への燃料供給が停止され、破損した配管等からの燃料の流出を抑えることができる。
【0045】
また、吸入流路47が第1分配流路41と第2分配流路42との間に配置されている場合には、第1フローリミッター50は第1分配流路41と吸入流路47との間に配置される。第1フローリミッター50は第1分配流路41に接続する第1配管21が破損等し、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合、第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座する。これにより、第1分配流路41への燃料供給が停止され、破損した配管等からの燃料の流出を抑えることができる。
【0046】
この場合、第2フローリミッター60は第2分配流路42と吸入流路47との間に配置される。第2分配流路42に接続する第2配管22または第3分配流路43に接続する第3配管23または第4分配流路44に接続する第4配管24が破損等し、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合には、第2フローリミッター60において、第2バルブピストン弁部61gが第2シート部63dに着座する。これにより、第2分配流路42、第3分配流路43および第4分配流路44への燃料供給が停止され、破損した配管等からの燃料の流出を抑えることができる。
【0047】
(6つの分配流路を有するコモンレール)
本願発明の実施に係るコモンレールは6つの分配流路を有していてもよい。図6は、本発明の実施形態に係るコモンレールの一例(6つの分配流路を有するコモンレール)が使用されるコモンレールシステムの構成図である。例えばこのコモンレールは6筒のエンジンに搭載されるコモンレールシステムに用いられる。6筒のエンジンに搭載されるコモンレールシステム101は、高圧ポンプ3、コモンレール130(6つの分配流路を有するコモンレール)、第1インジェクター11、第2インジェクター12、第3インジェクター13、第4インジェクター14、第5インジェクター15、第6インジェクター16及び制御装置190を備えている。
【0048】
図7は、本発明の実施形態の係る6つの分配流路を有するコモンレール130の全体図であり、両端部を除いて断面図で示す。コモンレール130は、コモンレール本体140、第1フローリミッター50、第2フローリミッター60、第1圧力制御弁70および第2圧力制御弁80を備えている。
【0049】
コモンレール本体140は燃料を貯留する、内部空間148、内部空間148と連通する第1分配流路41、第2分配流路42、第3分配流路43、第4分配流路44、第5分配流路45、第6分配流路46、吸入流路47および圧力センサ取り付け孔49を備える。内部空間148は、例えば円筒状に形成されていてもよい。吸入流路47は、高圧ポンプ3の吐出口と配管20を介して接続されており、高圧ポンプ3から圧送された高圧燃料が吸入流路47から内部空間148に流入する。また、第1分配流路41は第1配管21を介して第1インジェクター11と接続され、第2分配流路42は第2配管22を介して第2インジェクター12と接続され、第3分配流路43は第3配管23を介して第3インジェクター13と接続され、第4分配流路44は第4配管24を介して第4インジェクター14と接続され、第5分配流路45は第5配管20を介して第5インジェクター15と接続され第6分配流路46は第6配管26を介して第6インジェクター16と接続される。
【0050】
各分配流路は、一端側140aから他端側140bに向けて第1分配流路41、第2分配流路42、第3分配流路43、第4分配流路44、第5分配流路45および第6分配流路46の順に配置されており、図7においては、吸入流路47は、第3分配流路43と第4分配流路44との間に配置されている。しかしながら、吸入流路47も配置は、これに限られるものではなく、吸入流路47は、1分配流路41と第2分配流路42との間、第2分配流路42と第3分配流路43との間、第3分配流路43と第4分配流路44との間、第4分配流路44と第5分配流路45との間、第5分配流路45と第6分配流路46との間のいずれか1か所に配置されていればよい。
【0051】
コモンレール130に設けられる第1フローリミッター50は、吸入流路47から、コモンレール本体140の一端側140aに向かう流路を形成する内部空間148内に設けられている。詳しくは、コモンレール130の第1フローリミッター50は内部空間148内であって、吸入流路47とコモンレール本体140の一端側140aに向かう方向で吸入流路47の隣の分配流路との間に配置される。
【0052】
コモンレール130の第1フローリミッター50は、基本的な構造はコモンレール30の第1フローリミッター50と同じである。
【0053】
コモンレール130に設けられる第2フローリミッター60は、吸入流路47から、コモンレール本体140の他端側140bに向かう流路を形成する内部空間48内に設けられている。詳しくは、コモンレール130の第1フローリミッター50は内部空間48内であって、吸入流路47とコモンレール本体140の他端側140bに向かう方向で吸入流路47の隣の分配流路との間に配置される。
【0054】
コモンレール130の第2フローリミッター60は、基本的な構造はコモンレール30の第2フローリミッター60と同じである。
【0055】
コモンレール130の第1フローリミッター50は、第1フローリミッター50に対してコモンレール本体140の一端側140aに位置する分配流路に接続された配管が破損等し、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合、第1バルブピストン弁部51gが第1シート部53dに着座する。これにより、第1フローリミッター50に対してコモンレール本体140の一端側140aに位置する分配流路への燃料供給が停止され、破損した配管からの燃料の流出を抑えることができる。
【0056】
コモンレール130の第2フローリミッター60は、第2フローリミッター60に対してコモンレール本体140の他端側140bに位置する分配流路に接続された配管が破損等、コモンレールの外部へ流出する燃料の流量が規定流量以上となった場合、第2バルブピストン弁部61gが第2シート部63dに着座する。これにより、第2フローリミッター60に対してコモンレール本体140の他端側140bに位置する分配流路への燃料供給が停止され、破損した配管からの燃料の流出を抑えることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態の例として分配流路が4つと6つのコモンレールについて取り上げ説明したが、本発明の実施形態のコモンレールが有する分配流路の数は、これらに限らず、例えば、3つ、5つ、7つ、8つであってもよい。
【0058】
以上のように、本発明によれば、コモンレールはフローリミッターを内部空間内に有するので、小型で、搭載性がよいコモンレールを提供することができる。また、従来型のコモンレールでは分配流路の数と同数のフローリミッターを必要としたが、本願発明によれば、フローリミッターの数を二つとすることができる。したがって、コストの安いフローリミッター付きのコモンレールを提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 コモンレールシステム、3 高圧ポンプ、5 燃料タンク、11 第1インジェクター、12 第2インジェクター、13 第1インジェクター、14 第4インジェクター、15 第5インジェクター、16 第6インジェクター、20 配管、21 第1配管、22 第2配管、23 第3配管、24 第4配管20 第5配管、26 第6配管、27 28 レール戻り配管、29 戻り配管、30 コモンレール、40 コモンレール本体、40a 一端側、40b 他端側、41 第1分配流路、42 第2分配流路、43 第3分配流路、44 第4分配流路、45 第5分配流路、46 第6分配流路、47 吸入流路、48 内部空間、49 圧力センサ取り付け孔、50 第1フローリミッター、51 第1バルブピストン、51a 第1摺動部、51b 第1細径部、51c 第1バルブピストン端部、51d 第1連通流路、51e 第1止まり穴部、51f 第1オリフィス、51g 第1バルブピストン弁部、52 第1バルブストップ、52a 第1バルブストップ面、52b 第1バルブストップ流路、53 第1シートブロック、53a 第1シートブロック面、53b 第1シートブロック流路、53c 第1テーパ面、53d 第1シート部、60 第2フローリミッター、61 第2バルブピストン、61a 第2摺動部、61b 第2細径部、61c 第2バルブピストン端部、61d 第2連通流路、61e 第2止まり穴部、61f 第2オリフィス、61g 第2バルブピストン弁部、62 第2バルブストップ、62a 第2バルブストップ面、62b 第2バルブストップ流路、63 第2シートブロック、63a 第2シートブロック面、63b 第2シートブロック流路、63c 第2テーパ面、63d 第2シート部、70 第1圧力制御弁、80 第2圧力制御弁、85 圧力センサ、90 制御装置、101 コモンレールシステム、130 コモンレール、140 コモンレール本体、140a 一端側、140b 他端側、148 内部空間。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7