(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
B05B 14/46 20180101AFI20241101BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20241101BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20241101BHJP
B05B 16/20 20180101ALI20241101BHJP
B05B 16/60 20180101ALI20241101BHJP
B05B 12/12 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B05B14/46
F24F3/14
F24F7/06 R
B05B16/20
B05B16/60
B05B12/12
(21)【出願番号】P 2020151474
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(72)【発明者】
【氏名】川上 理亮
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 美志
(72)【発明者】
【氏名】大山 孝政
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美穂
(72)【発明者】
【氏名】中田 拓司
(72)【発明者】
【氏名】谷野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】山内 一正
(72)【発明者】
【氏名】井守 正隆
(72)【発明者】
【氏名】岩下 真輝
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】児島 吉宏
(72)【発明者】
【氏名】平島 利男
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088052(JP,A)
【文献】特開平06-115412(JP,A)
【文献】特開2020-079706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 14/46
F24F 3/14
F24F 7/06
B05B 16/20
B05B 16/60
B05B 12/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に塗料を塗布する塗装工程と、前記塗装工程の後に噴霧装置によってミストを噴霧して前記塗料を回収する塗料回収工程と、前記塗料の塗布後の前記対象物を乾燥させる乾燥工程と、を有する塗装ラインに、空調空気を供給する空調システムであって、
前記塗料回収工程において生じた水分を含んだ空気を、排熱により蓄熱して水分を吸着させることにより放熱を行う蓄熱材に供給し、
前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気を、前記塗装ラインに供給するようにし
、
前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気に対して、少なくとも除湿または加熱する補助装置を有し、
前記補助装置によって、前記塗装ラインに供給する空気を、要求される温湿度の範囲に維持するようにしたことを特徴とする、空調システム。
【請求項2】
対象物に塗料を塗布する塗装工程と、前記塗装工程の後に噴霧装置によってミストを噴霧して前記塗料を回収する塗料回収工程と、前記塗料の塗布後の前記対象物を乾燥させる乾燥工程と、を有する塗装ラインに、空調空気を供給する空調システムであって、
前記塗料回収工程において生じた水分を含んだ空気を、排熱により蓄熱して水分を吸着させることにより放熱を行う蓄熱材に供給し、
前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気を、前記塗装ラインに供給するようにし
、
前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気に対して、加熱する加熱装置を有し、
前記塗装ラインに供給する空気を、前記加熱装置によって、要求される温度の所定範囲に維持するようにしたことを特徴とする、空調システム。
【請求項3】
前記塗料回収工程において生じた水分を含んだ空気を前記蓄熱材に供給するためのファンを有し、
前記ファンを制御することで、前記補助装置を制御する制御装置を有することを特徴とする、請求項
1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記塗料回収工程で生じた水分を含んだ空気を、前記補助装置を有する空調機に導入し、当該導入した空気の一部を取り出して前記蓄熱材に供給し、
前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気と、前記一部を取り出した残りの空気を前記空調機内で合流させ、合流後の空気の絶対湿度と、前記補助装置における除湿及び加熱に要するエネルギーを最小にするための目標絶対湿度との偏差から、前記ファンをPID制御するようにしたことを特徴とする、請求項
3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記補助装置は、冷却除湿装置と加熱装置とを有し、
予め定めた時間で、前記冷却除湿装置の冷熱量が0になるように当該冷熱量を降下させるようにし、
そのときの冷熱量と前記加熱装置の加熱熱量に基づいて、前記ファンをPID制御することを特徴とする、請求項
3に記載の空調システム。
【請求項6】
前記ファンは、周波数制御が可能なファンであり、
前記ファンの定格周波数の中速からの上昇を、初期は一定勾配で上昇させ、その後、PID制御に切り替えることを特徴とする、請求項
4または
5のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項7】
対象物に塗料を塗布する塗装工程と、前記塗装工程の後に噴霧装置によってミストを噴霧して前記塗料を回収する塗料回収工程と、前記塗料の塗布後の前記対象物を乾燥させる乾燥工程と、を有する塗装ラインに、空調空気を供給する空調システムであって、
前記塗料回収工程において生じた水分を含んだ空気を、排熱により蓄熱して水分を吸着させることにより放熱を行う蓄熱材に供給し、
前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気を、前記塗装ラインに供給するようにし
、
前記蓄熱材が能力限界に達したら、前記空調システムにおける当該蓄熱材を他の蓄熱材と切り替えるようにしたことを特徴とする、空調システム。
【請求項8】
前記蓄熱材が能力限界に達したら、前記空調システムにおける当該蓄熱材を他の蓄熱材と切り替えるようにしたことを特徴とする、請求項
1~
6のいずれか一項に記載の空調システム。
【請求項9】
前記能力限界に達した蓄熱材に対して、排熱を供給して能力を回復させるようにしたことを特徴とする、請求項
7または8のいずれか一項に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ラインに空調空気を供給する、空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車などの車両ボディの塗装についていえば、従来から塗装ブースと呼称される塗装室内で対象物に塗料を塗布する塗装工程が行われている。塗ブースでは、作業環境の悪化や、塗料のミストによる塗装の品質低下等に鑑みて、従来から温湿度が調整された空調空気が供給されている。そして塗装工程の後には、雰囲気中に発生した塗料成分、有機溶剤成分を回収するため、噴霧装置によってミストを噴霧して前記塗料を回収する塗料回収工程が行われている。そして塗装工程の後には、塗布した塗料を乾燥させるために、乾燥ブース内に車両ボディを収容して、乾燥に適した温湿度の空気を供給する乾燥工程が行われている。
【0003】
そのように塗装ブースや乾燥ブースなどの所定空間内の温湿度を所望の範囲に維持するためには、冷却器を用いて空気の温度を下げて空気中の水分を除去した後、加熱器で加熱して空気を昇温させることが一般的であるが、それに要する冷却エネルギー及び加熱エネルギーを多く必要とする。
【0004】
また乾燥工程に関しては、エネルギーを多く必要とするガス燃焼による加熱に代えて、遠赤外線放射体を乾燥ブース内に設けて、塗装後の車両ボディを乾燥させることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら前記したように、冷却器を用いて空気の温度を下げて空気中の水分を除去した後、加熱器で加熱して空気を昇温させて、所望の温湿度の空気を塗装ブース、乾燥ブースに供給するのは、エネルギーを多く必要とする。また特許文献1に記載した遠赤外線放射体を乾燥ブース内に設ける方法も、ガスの燃焼と比べると必要なエネルギーが低減させられるが、依然として外部からエネルギーを供給する必要がある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、前記した塗装ラインに所望の温湿度の空調空気を供給するにあたり、従来よりも省エネ効果を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、対象物に塗料を塗布する塗装工程と、前記塗装工程の後に噴霧装置によってミストを噴霧して前記塗料を回収する塗料回収工程と、前記塗料の塗布後の前記対象物を乾燥させる乾燥工程と、を有する塗装ラインに、空調空気を供給する空調システムであって、前記塗料回収工程において生じた水分を含んだ空気を、排熱により蓄熱して水分を吸着させることにより放熱を行う蓄熱材に供給し、前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気を、前記塗装ラインに供給するようにし、前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気に対して、少なくとも除湿または加熱する補助装置を有し、前記補助装置によって、前記塗装ラインに供給する空気を、要求される温湿度の範囲に維持するようにしたことを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、前記塗料回収工程において生じた水分を含んだ空気内の当該水分をいわば原料として、蓄熱材によって当該空気を加熱、除湿することが可能である。しかも当該蓄熱材は、排熱によって蓄熱されたものであるから、高い省エネ効果を実現しつつ、所望の温湿度の空調空気を供給することが可能である。
【0010】
そして前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気に対して、少なくとも除湿または加熱する補助装置を有し、前記補助装置によって前記塗装ラインに供給する空気を、要求される温湿度の範囲に維持するようにしているので、前記蓄熱材の放熱能力の低下に伴って性能が低下するケースでは、前記補助装置を稼働させて前記要求される温湿度の範囲に維持するようにしてもよい。
【0011】
前記補助装置を備えることで、最適な制御の下で省エネ等に配慮した所定の温湿度の範囲に維持することが可能である。またこの種の蓄熱材は運転時間の経過に伴って放熱能力が低下する傾向があるが、補助装置を設けることで、当該放熱能力の低下を補って、要求される温湿度の空気を塗装ラインに供給することが可能である。
【0012】
また前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気に対して、加熱する加熱装置を有し、前記塗装ラインに供給する空気を、前記加熱装置によって、要求される温度の所定範囲に維持するようにしてもよい。また前記蓄熱材の放熱能力の低下に伴い、前記加熱装置を動作させるようにしてもよい。
【0013】
例えば乾燥工程においては、一般的に高温乾燥空気を供給されるが、加熱装置を設けることで、当該蓄熱材の放熱能力の低下や能力不足を補って、要求される温度の空気を塗装ラインに供給することが可能である。
【0014】
また前記塗料回収工程において生じた水分を含んだ空気を前記蓄熱材に供給するためのファンを有し、当該ファンを制御することで、前記補助装置を制御する制御装置を有するようにしてもよい。
【0015】
蓄熱材の放熱量が低下すれば、ファンによって蓄熱材に供給する原料空気の量を増加させることで、所望の温湿度の範囲の空調空気を得ることが可能であり、また補助装置に要するエネルギーを必要最小限とすることが可能である。
【0016】
前記塗料回収工程で生じた水分を含んだ空気を、前記補助装置を有する空調機に導入し、当該導入した空気の一部を取り出して前記蓄熱材に供給し、前記蓄熱材を経て除湿、昇温された空気と、前記一部を取り出した残りの空気を前記空調機内で合流させ、合流後の空気の絶対湿度と、前記補助装置における除湿及び加熱に要するエネルギーを最小にするための目標絶対湿度との偏差から、前記ファンをPID制御するようにしてもよい。
【0017】
目標絶対湿度としては、例えば前記補助装置で温湿度調整をする際に要するエネルギーが最小となる温湿度を採用することができる。
またPID制御する場合、当該PID制御の設定偏差を最初は大きくし、その後次第に小さくして、合流後の空気の絶対湿度を前記目標絶対湿度に近づけるようにしてもよい。
このようにPID制御の設定偏差を最初は大きくし、その後次第に小さくすることで、蓄熱材の起動を早くし、補助装置での消費エネルギーを小さくすることができる。
設定偏差を次第に小さくするには、例えば段階的にステップ状に小さくしたり、あるいはなだらかに線形に小さくするようにしてもよい。
【0018】
前記補助装置は、冷却除湿装置と加熱装置とを有し、予め定めた時間で、前記冷却除湿装置の冷熱量が0になるように当該冷熱量を降下させるようにし、そのときの冷熱量と前記加熱装置の加熱熱量に基づいて、前記ファンをPID制御するようにしてもよい。
【0019】
このように補助装置での必要エネルギーを最小限に設定してそれに追従させるようにしてファンをPID制御することで、補助装置で消費するエネルギーを抑えることができる。
【0020】
なおかかる場合、冷却除湿装置と加熱装置に各々熱量計を設け、冷却除湿装置に使用される冷水の熱量、加熱装置で使用される温水の熱量のうち、小さい方を選定し、当該小さい熱量の方に合わせて除湿ファンの制御をするようにしてもよい。こうすることで、ファンの制御が不安定となることを防止できる。
なお冷却除湿装置の冷熱源としては、冷水の他に冷媒を使用することができ、また加熱装置の熱源としては、温水の他に、蒸気、電気ヒータ、バーナーを使用することができる。
【0021】
前記ファンとしては、例えば周波数制御が可能なファンを用いることができる。かかる場合、前記ファンの定格周波数の中速からの上昇を、初期は一定勾配で上昇させ、その後、PID制御に切り替えるようにしてもよい。これによってファンを素早く立ち上げつつ、以降安定したファンの作動が可能になる。
【0022】
蓄熱材が能力限界に達したら、空調システムにおける当該蓄熱材を他の蓄熱材と切り替えるようにしてもよい。蓄熱材を使用しているとやがて能力が低下するが、使用している蓄熱材が能力限界に達したら、これを新しい、他の蓄熱材に切り替えることにより、空調システムを継続して運転することが可能である。かかる場合、例えば複数の蓄熱材を並列に接続しておき、各々に出入りする流路を切り替えたり、あるいは他の蓄熱材を、例えばスライドさせて、能力限界に達した蓄熱材と置き換えるようにしてもよい。
【0023】
そして能力限界に達した蓄熱材に対して、排熱を供給して能力を回復させるようにしてもよい。かかる場合、例えば空調システムの設置場所の近傍にある工場排熱を用いて蓄熱材の能力を回復するようにすれば、回復のための熱源を新たに用意する必要がない。その他、コージェネの排熱や、蓄熱式脱臭装置(RTO)からの排熱、太陽熱を利用するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、塗装ラインに所望の温湿度の空調空気を供給するにあたり、従来よりも省エネ効果を高くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態にかかる空調システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【
図2】
図1の空調システムの制御例のフローチャートである。
【
図3】
図1の空調システムの制御例による制御対象の動作の経時変化を示すグラフである。
【
図4】
図1の空調システムの他の制御例のフローチャートである。
【
図5】
図1の空調システムの他の制御例による制御対象の動作の経時変化を示すグラフである。
【
図6】他の実施の形態にかかる空調システムの構成の概略を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について説明すると、
図1は、実施の形態にかかる空調システム1の構成の概略を示しており、この空調システム1は、自動車のボディ2に対して塗装を行う塗装ラインの所定空間に、所望の温湿度の空調空気を供給するように構成されている。
【0027】
塗装ラインは、例えば一次塗装を行う有人塗装ブース10、有人塗装ブース10の後段側に設けられて二次塗装を行う無人塗装ブース20、無人塗装ブース20の後段側に設けられた乾燥ブース30を有している。この実施の形態が適用された塗装ラインは、前記したように有人塗装ブース10と無人塗装ブース20を有しているが、もちろん本発明が適用される塗装ラインは、塗装ブースが有人か無人かを問わないものである。
【0028】
有人塗装ブース10では、通気性のある底板11の上側の空間12でボディ2に対して作業員が塗装を行う。底板11の下側の空間13には、スプレーノズルなどの噴霧装置14が設けられており、有人塗装ブース10内の塗料成分、溶剤成分は噴霧された水のミストによって回収される。すなわち有人塗装ブース10では、空間12内で塗装工程が行われ、空間13内で塗料回収工程が行われる。有人塗装ブース10には、空間12内の雰囲気の温湿度を検出する温湿度センサ15が設けられている。
【0029】
有人塗装ブース10の下側の空間13内の、ミストによって多湿になった空気は、排気ファン16によって空間13から排気され、供給ファン17によって空調装置40の入口側へと導入される。
【0030】
無人塗装ブース20では、通気性のある底板21の上側の空間22で、有人塗装ブース10で一次塗装が終了したボディ2に対して、例えばロボットなどによって塗装が行なわれる。底板21の下側の空間23には、スプレーノズルなどの噴霧装置14が設けられており、無人塗装ブース20内の塗料成分、溶剤成分は噴霧されたミストによって回収される。すなわち、無人塗装ブース20では空間22内で塗装工程が行われ、空間23内で塗料回収工程が行われる。無人塗装ブース20には、空間22内の雰囲気の温湿度を検出する温湿度センサ25が設けられている。
【0031】
無人塗装ブース20の上側の空間22には、前記空調装置40の出口側に設けられた給気ファン41によって、空調装置40で温湿度が調整された空調空気が供給される。また無人塗装ブース20の下側の空間23内の、ミストによって多湿になった空気は、排気ファン26によって空間23から排気され、系外へと排出される。
【0032】
乾燥ブース30では、無人塗装ブース20で二次塗装が終了したボディ2に対してブース内の空間31内で乾燥工程が行われる。ブース内の空間31には、温度調整装置(例えば加熱用のヒーター)32で所定の温度に調整された乾燥空気が、給気ファン33によって供給される。乾燥ブース30の空間31内の雰囲気は、その一部が流路36を経て還気として戻されて給気に合流し、残りの一部は排気ファン34によって空間31から排気されて、系外へと排出される。乾燥ブース30には、空間31内の温湿度を検出する温湿度センサ35が設けられている。
【0033】
空調装置40は、ケーシング42を有し、ケーシング42内には入口側から順に、フィルタ43、冷却器としての冷却コイル44、加熱器としての加熱コイル45が設けられている。これら冷却コイル44と加熱コイル45は補助装置を構成している。冷却コイル44は、冷水源(図示せず)からの冷水が、往管44aから冷却コイル44へと供給され、熱交換によって昇温した冷水は、還管44bから導出される。往管44aには、制御バルブ44cが設けられ、開閉、流量制御が行われる。加熱コイル45は、温水源(図示せず)からの温水が、往管45aから加熱コイル45へと供給され、熱交換によって降温した温水は、還管45bから導出される。往管45aには、制御バルブ45cが設けられ、開閉、流量制御が行われる。
【0034】
空調装置40のケーシング42内におけるフィルタ43と冷却コイルと44との間の空間Z内の空気の一部は、取り出し部42aから取り出されて蓄熱装置50の往路51を経て、2つの蓄熱材収容体52a、52b内の各蓄熱材Hに供給される。蓄熱材Hによって昇温、除湿された空気は、還路53を経て戻し部42bから空間Zへと戻される。戻し部42bはケーシング42内の空間Zにおいて、取り出し部42aの下流側に位置している。
【0035】
往路51には、上流側から順に、入口側の温湿度センサ61、入口ダンパ62、ファン63が設けられている。ファン63はインバータ制御が可能である。また還路53には、蓄熱材収容体52の出口側から順に、フィルタ64、風量センサ65、出口側の温湿度センサ66、出口ダンパ67が設けられている。
【0036】
ファン63によって送風された空気は、分岐して、各々蓄熱材収容体52a、52bへと切り替え導入することが可能である。すなわち、蓄熱材収容体52a、52bの各入口側流路にはダンパD1、D2が設けられ、蓄熱材収容体52a、52bの各出口側流路にはダンパD3、D4が各々設けられている。したがってこれらダンパD1~D4を適宜切り替え操作することで、ファン63から供給される空気を、蓄熱材収容体52a、52bのいずれかの蓄熱材Hに供給することが可能になっている。
【0037】
蓄熱材収容体52a、52b内の各蓄熱材Hは、通気性のある収容部(図示せず)内に収容されている。蓄熱材Hとしては、例えば、造粒された蓄熱材を使用している。この蓄熱材には、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性粘土からなる複合体、例えばハスクレイ(登録商標)や、高分子収着機能を有する低温再生型蓄熱材を用いることができる。もちろんこれに限らず、水分を吸着して放熱可能な蓄熱機能を有する蓄熱材は本発明に使用できる。
【0038】
そして蓄熱材収容体52a、52b内の蓄熱材Hは、専用の再生熱源によって加熱されたものではなく、排熱によって加熱されて蓄熱しているものが使用されている。ここで排熱とは、例えば工場排気から排出される熱や、適宜の加熱炉などから放出され、そのまま大気中に放熱している熱などであり、いわばそのまま捨て去られている熱である。また蓄熱場所、排熱回収場所は、塗装ラインの近くであってもよく、また塗装ラインから離れている場所でもよい。
【0039】
そして実施の形態にかかる空調システム1は、制御装置100によって制御が可能である。本実施の形態にかかる空調システム1では、蓄熱装置50についていえば、入口側の温湿度センサ61、出口側の温湿度センサ66の温湿度信号、風量センサ65の検出結果に基づいて、ファン63の発停及びインバータ制御、入口ダンパ62、出口ダンパ67の開閉、開度調整、ダンパD1~D4の切り替え操作が、制御装置100によって制御可能である。また空調装置40における入口側の湿度センサ46、無人塗装ブース20の温湿度センサ25、さらには前記した蓄熱装置50の出口側の温湿度センサ66の検出結果に基づいて、冷却コイル44の制御バルブ44c、加熱コイル45の制御バルブ45cの制御が制御装置100によって制御が可能である。また制御装置100には、これら制御を実行するプログラム、並びにタイマーなどを有している。
【0040】
実施の形態にかかる空調システム1は、以上の構成を有しており、この空調システム1によれば、有人塗装ブース10の塗装工程の後に、下側の空間13で行われる塗料回収工程において生じた水分を含んだ低温多湿の空気が、排気ファン16、供給ファン17によって空調装置40の入口側へと導入される。そして導入された低温多湿の空気の一部は、空間Zから取り出されて、例えば蓄熱材収容体52a内の蓄熱材Hへと供給される。
【0041】
蓄熱材Hは、供給された低温多湿の空気の水分を吸着し、放熱する。これによって、蓄熱材Hから導出される空気は、除湿されかつ昇温し、高温乾燥空気となっている。この高温乾燥空気は、空間Zへと流入し、給気ファン41から塗装ラインにある無人塗装ブース20の上側の空間22へと供給される。この場合、例えば無人塗装ブース20の上側の空間22では、塗装に適した温湿度雰囲気とする必要がある。そのため例えば温湿度センサ25によって検出される温湿度が所定の温湿度となるように制御装置100では必要な制御が行われる。たとえば必要に応じて、空間Zの下流側に位置する冷却コイル44で必要な冷却除湿を行なったり、冷却コイル44で降温した空気に対して、さらに必要に応じて加熱コイル45で所定温度となるように加熱される。これによって無人塗装ブース20の上側の空間22には所望の温湿度に調整された空気が供給される。
【0042】
もちろん、蓄熱装置50から空調装置40の空間Zへと戻ってきた高温乾燥空気によって、空間Zで混合された後の空気が、無人塗装ブース20の上側の空間22における所望の温湿度の範囲を維持している場合には、冷却コイル44、加熱コイル45による温湿度調整は不要である。
【0043】
また仮に冷却コイル44、加熱コイル45によって温湿度調整した場合であっても、従来一般的な冷却器を用いた冷却除湿とヒーターなどで加熱した場合と比べると、必要なエネルギーは大幅に少なくて済む。また蓄熱材H自体は、既述したように排熱によって蓄熱されたものであるから、省エネ効果は極めて高い。
【0044】
しかも前記した実施の形態では、空調装置40へと導入するいわば原料空気は、有人塗装ブース10における塗料回収工程からの低温多湿の空気であり、その由来は、噴霧装置14によって噴霧されたミストである。したがって、実施の形態にかかる空調システム1では、塗料回収用に噴霧した水のミストを利用して、蓄熱材Hによって当該原料空気に対して除湿と加熱を行うようにしているので、システム全体としては極めて効率がよく、無駄のないものとなっている。
【0045】
次に本実施の形態にかかる空調システム1の制御の一例を
図2、
図3に基づいて説明する。なお
図3のグラフ中、cは冷水熱量、hは温水熱量、fはファン63の周波数を表わしている。
【0046】
まず、有人塗装ブース10が運転中であることを確認し、例えば蓄熱材収容体52aについて起動させる(ステップS1)。すなわち、ダンパD1、D3を開放し、ダンパD2、D4を閉鎖する。次いでファン63を起動させ、入口ダンパ62、出口ダンパ67を開放する(ステップS2)。ファン63は、スロースタートさせ、定格の中速、例えば30Hzに制御する。
【0047】
次いで制御装置100によるファン63のPID制御に必要な設定を行ない、当該設定に基づいてファン63のPID制御を実施する。この例では、まず空調機40内の合流点Pでの絶対湿度と目標絶対湿度との偏差を設定し、当該偏差に基づいて、制御装置100によるファン63のPID制御を行う。ここで合流点とは、
図1における戻し部42bからの空気と、供給ファン17からケーシング42内に供給された空気のうち、取り出し部42aから取り出された残りの空気とが合流する地点のことである。
【0048】
合流点Pの絶対湿度は、供給ファン17から空調機40のケーシング42内に供給された空気の風量と、湿度センサ46によって測定される湿度と、蓄熱材収容体52aを出て風量センサ65、温湿度センサ66によって測定される戻し部42bからの空気の風量、湿度とによって計算によって算出される。また目標絶対湿度は、例えば合流点Pの下流側の空気を所望の温湿度に維持するために、冷却除湿装置としての冷却コイル44に供給される冷水の冷熱量と加熱コイル45に供給される温水の熱量が最小となるように設定される湿度である。
【0049】
そしてまずファン63をスタートから中速に調整した後は(
図3のt1~t2)、回転が安定するまでしばらくこれを維持し(
図3のt2~t3)、その後は、合流点Pの絶対湿度偏差を相対的に大きく設定し(ステップS3)、当該大きい偏差の下でファン63をPID制御する。これによって、冷却コイル44で必要とされる冷水量、加熱コイル45で必要される温水量は各々急激に低下していく(
図3のt3~t4)。
【0050】
次いで合流点Pの絶対湿度偏差を相対的に小さく設定する(ステップS4)。この場合、偏差は、次第に小さくなるように設定される。次いで絶対湿度偏差を相対的に小さく設定した下で、ファン63がPID制御される。これによって、ファン63の周波数の変動幅は次第に小さくなっていき、やがて安定する(
図3のt4~t5)。それに伴って冷却コイル44で必要とされる冷水量、加熱コイル45で必要される温水量も低下し、やがて冷水量は殆どゼロとなる。一方で温水量も殆どゼロに近づく。温水量がゼロにならないのは、湿度調整は補助装置を構成する冷却コイル44のみで行っているが、温度調整は冷却コイル44と加熱コイル45の流量の双方で温度調節を行なっている関係上、温水量をゼロにしないで流量を絞って僅かでも加熱する方が安定した温度を維持するために有利だからである。
【0051】
その後蓄熱材Hの除湿能力が限界に達したと判断されると(ステップS5)、ファン63を停止させる。除湿能力が限界に達したことの判断は、例えば温湿度センサ66が検出する絶対湿度が、所定値以下になったら能力限界と判断するようにしてもよい。また蓄熱材Hの稼働時間を予め定めておき、当該稼働時間に達したら、能力限界と判断するようにしてもよい。また両者を併用してもよい。
【0052】
なおファン63を停止させるにあたっては、周波数制御によって徐々に回転数を減じていき、一旦中速(例えば30Hz)まで減じていき(
図3のt5~t6)、しばらく当該周波数を維持し(
図3のt6~t7)、その後徐々に周波数を減じていく(
図3のt7~t8)。こうすることで、ファン63に過大な負荷をかけずに性能維持に資することができ、安定した制御が可能である。
【0053】
このように前記した運転例によれば、当初は目標絶対湿度との偏差を相対的に大きくし、その後当該偏差を相対的に小さくしてファン63をPID制御するようにしたので、蓄熱材Hによる除湿、放熱効果を速やかに得ることができる。
【0054】
その後に入口ダンパ62、出口ダンパ67を閉鎖し(ステップS7)、蓄熱材収容体52aの出入り口となるダンパD1、D3を閉鎖して、蓄熱材Hの稼働を停止させる(ステップS8)。次いで連続運転する場合には、蓄熱材収容体52bの出入り口となるダンパD2、D4を開放し、蓄熱材収容体52b内の蓄熱材Hの稼働を開始し、既出したステップS1~ステップS8を順次行う。
【0055】
一方、蓄熱材収容体52a内の蓄熱材Hについては、蓄熱材収容体52b内の蓄熱材Hによって運転している間に、例えば工場排気などの排熱によって、能力の回復を実施すればよい。以後同様に、蓄熱材収容体52a、52b内の各蓄熱材Hについて、一方の蓄熱材Hを稼働させている間に、他方の蓄熱材Hに対して排熱供給による能力回復を実施することで、空調システム1全体として、ほぼ連続して運転を行うことが可能である。また能力回復時間と運転時間との間に差があるときには、適宜蓄熱材収容体52の台数を増加させることで、運転の空白時間を極力抑えることができる。
【0056】
なお前記した例では、ダンパD1~D4の切り替え操作によって、蓄熱材Hに出入りする空気の流路を切り替えるようにしていたが、蓄熱材H自体を他の蓄熱材と置き換えるようにして、稼働させる蓄熱材を能力が十分確保されている他の蓄熱材と交換するようにしてもよい。この場合、例えば蓄熱材収容体52aまたは蓄熱材収容体52bに、蓄熱材Hをスライドさせるガイド、レールなどを設けておき、これらガイド、レール利用して、能力限界に達した蓄熱材を所定位置から離脱させ、その後他の蓄熱材を所定位置にセットするようにしてもよい。このような方式では流路を2系統用意する必要はない。
【0057】
次に他の実施の形態にかかる空調システムの運転例について、
図4、
図5に基づいて説明する。この運転例は、予め定めた時間で、冷却コイル44の冷熱量が0となるように、制御装置100によって冷水の流量を、例えば当該冷熱量を降下させるように制御バルブ44c、さらには加熱コイル45の制御バルブ45cを制御し、そのときの冷熱量と加熱熱量に基づいて、ファン63をPID制御するようにしたものである。なお
図5のグラフ中、なお同グラフ中、cは冷水熱量、csは冷水熱量設定値、hは温水熱量、hsは温水熱量設定値、fはファン63の周波数を表わしている。
【0058】
以下、説明すると、既述した運転例と同様、有人塗装ブース10が運転中であることを確認し、ダンパD1、D3を開放し、ダンパD2、D4を閉鎖して例えば蓄熱材収容体52aを起動させる(ステップS11)。次いでファン63を起動させ、入口ダンパ62、出口ダンパ67を開放する(ステップS12)。ファン63は、スロースタートさせ、定格の中速、例えば30Hzに制御する。
【0059】
そして冷却コイル44については、まず初期冷水熱量を、制御装置100内に設けられている冷水熱量調節計の設定値に格納し(ステップS13a)、冷水熱量をファン63の周波数でPID制御する(ステップS14a)。次いで冷水熱量調節計の設定値を、初期冷水熱量と下降時間で算出した下降勾配で下降させる(ステップS15a)。冷水熱量調節計とは、冷却コイル44に投入される冷水の熱量を測定計算する装置であり、冷水の流量、及び往管44aからの冷水の冷却コイル44への導入時の温度と、冷却コイル44から還管44bへの冷水の導出時の温度の温度差から投入冷熱量が計算される。冷水の流量は、往管44aに設けられた制御バルブ44cによって制御される。
【0060】
一方加熱コイル45については、このような冷却コイル44の制御と並行して、初期温水熱量を、温水熱量調節計の設定値に格納し(ステップS13b)、温水熱量をファン63の周波数でPID制御する(ステップS14b)。次いで温水熱量調節計の設定値を、初期温水熱量と下降時間で算出した下降勾配で下降させる(ステップS15b)。温水熱量調節計とは、加熱コイル45に投入される温水の熱量を測定計算する装置であり、温水の流量、及び往管45aからの温水の加熱コイル45への導入時の温度と、加熱コイル45から還管45bへの温水の導出時の温度の温度差から投入熱量が計算される。温水の流量は、往管45aに設けられた制御バルブ45cによって制御される。
【0061】
そしてこれら冷却コイル44についての冷水熱量調節計の設定値、加熱コイル45についての温水熱量調節計の設定値が修正されたら、冷水、温水に対するPID制御の出力値の小さい方を選択して、ファン63の周波数を設定する(ステップS16)。かかる場合、例えばt4を予め定めた所定時刻とすると、t4に達するまでの間に、冷水熱量c、温水熱量hがゼロとなるように、冷水熱量設定値cs、温水熱量設定値hsの下降勾配を設定し(初期冷水熱量、初期温水熱量と下降時間(t4―t3)で算出した下降勾配)、いずれか小さい方の設定値に基づいて、それに追従するようにファン63の周波数設定する(ステップS16)。
【0062】
このようにして空調装置40、蓄熱装置50を運転し続け、設定した冷水熱量、温水熱量が下限に到達したら(ステップS17a、ステップS17b)、各々の設定値の下降を停止する(ステップS18a、ステップS18b)。以後、ファン63は定速運転が実施され、一方冷水熱量設定値csはゼロ、温水熱量設定値hsはゼロ+αと一定にされたまま、運転が実施される。αは必要加熱量である。
【0063】
そうすると、蓄熱材Hの能力が次第に低下していくため、それを補填するために、冷水熱量c、温水熱量hが徐々に上昇していく(t4~t5)。そして蓄熱材Hの除湿能力が限界に達したと判断されると(ステップS19。
図5のグラフのt5)、その後にファン63を停止させる。除湿能力が限界に達したことの判断は、前記した運転例と同様、例えば温湿度センサ66が検出する絶対湿度が、所定値以下になったら能力限界と判断するようにしてもよい。また蓄熱材Hの稼働時間を予め定めておき、当該稼働時間に達したら、能力限界と判断するようにしてもよい。また両者を併用してもよい。
【0064】
またファン63を停止させる場合も、前記運転例と同様、周波数制御によって徐々に回転数を減じていき、一旦中速(例えば30Hz)まで減じていき(
図5のt5~t6)、しばらく当該周波数を維持し(
図5のt6~t7)、その後徐々に周波数を減じていく(
図5のt7~t8)。こうすることで、ファン63に過大な負荷をかけずに性能維持に資することができ、安定した制御が可能である。
【0065】
そしてファン63を停止し(ステップS20)、その後に入口ダンパ62、出口ダンパ67を閉鎖し(ステップS21)、蓄熱材収容体52aの出入り口となるダンパD1、D3を閉鎖して、蓄熱材Hの稼働を停止させる(ステップS22)。次いで連続運転する場合には、蓄熱材収容体52bの出入り口となるダンパD2、D4を開放し、蓄熱材収容体52b内の蓄熱材Hの稼働を開始し、既出したステップS11~ステップS22を順次行う。
【0066】
このような制御によれば、当初は予め定めた時間で、冷却コイル44、加熱コイル45による冷却除湿、加熱に要するエネルギーをゼロとすべく、冷却コイル44、加熱コイル45を制御し、それに合わせてファン63を制御するようにし、その後に冷却コイル44、加熱コイル45に対する投入エネルギーが最小限に到達した後は、ファン63のPID制御によって、空調機40から無人塗装ブース20に供給される空気の温湿度を調整する。したがって、冷却除湿、加熱に要するエネルギーを抑えて無人塗装ブース20に対して所定の温湿度の空気を供給するにあたり、高い省エネ効果を得ることができる。
【0067】
なお能力限界に達した蓄熱材Hの切り替え、交換については前記した運転例と同様である。また能力限界に達したことの判断についても、予め定めた蓄熱材Hの稼働時間や、温湿度センサ66によって検出される絶対湿度の所定値などによって判断してもよい。
【0068】
なお前記した
図1に示した空調システム1では、有人塗装ブース10からの低温多湿の空気を原料として、空調装置40、蓄熱装置50で温湿度調整した後に、二次塗装工程を行う無人塗装ブース20に供給し、乾燥ブース30には温度調整装置32で温湿度が調整された空気を供給するようにしていたが、これに限らず、
図6に示したように、空調装置40、蓄熱装置50と同一の構成を有する、別の空調装置72、蓄熱装置74を用意して、乾燥ブース30に対しても、これら空調装置72、蓄熱装置74で温湿度調整した空気を供給するようにしてもよい。
【0069】
すなわち、この
図6に示した空調システムでは、無人塗装ブース20からの低温多湿空気を原料として、排気ファン26、供給ファン71によって、空調装置72に供給し、その一部を原料空気として蓄熱装置74で除湿加熱を行い、空調装置72で温湿度調整した後に、乾燥ブース30に供給するようにしたものである。これによって、乾燥ブース30での乾燥工程においても、省エネを図ることが可能である。
【0070】
もちろん乾燥ブースでの乾燥工程に鑑み、排気ファン26からの低温多湿の空気を、直接蓄熱装置74に供給し、除湿加熱された後の高温乾燥空気を、直接乾燥ブース30に供給するようにしてもよい。これによって、乾燥のための加熱エネルギー源を別途用意することはなく、無人塗装ブース20からの多湿の空気を原料として、これを除湿加熱して、乾燥ブースに供給することが可能である。もちろん遠赤外線放射体を用意する必要はなく、また乾燥ブース30自体を格別改造する必要はない。
【0071】
かかる場合、無人塗装ブース20における噴霧装置24の噴霧量が低下したり、あるいは停止した場合には、蓄熱装置74における蓄熱材の放熱能力は低下するので、これに対処するため、蓄熱装置74の出口側に、加熱不足分を補うための、加熱装置を設ければよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、塗装ブースなど、排気中に多くの水分を含有した空気を排出する状況下で、所定の温湿度雰囲気の給気を必要とする領域の空調に有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 空調システム
2 自動車のボディ
10 有人塗装ブース
14、24 噴霧装置
20 無人塗装ブース
30 乾燥ブース
40 空調装置
42 ケーシング
44 冷却コイル
45 加熱コイル
50 蓄熱装置
51 往路
52a、52b 蓄熱材収容体
53 還路
62 入口ダンパ
63 ファン
67 出口ダンパ
100 制御装置
D1~D4 ダンパ
H 蓄熱材
P 合流点
Z 空間