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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】半導体装置およびホイール内蔵システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20241101BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241101BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241101BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241101BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20241101BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
H02K11/33
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020167169
(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公開番号】P2022059427
(43)【公開日】2022-04-13
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 政宏
(72)【発明者】
【氏名】徳山 健
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-073949(JP,A)
【文献】特開2000-315757(JP,A)
【文献】特開2002-314037(JP,A)
【文献】特開2009-212302(JP,A)
【文献】特開2008-016515(JP,A)
【文献】特開2007-281163(JP,A)
【文献】国際公開第2016/140147(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/033295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
H01L 25/07
H02M 7/48
H02K 11/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子と電気的に接続される導体部と、
貫通孔が形成された絶縁性の基板と、
前記半導体素子と前記導体部とを封止するモールド材と、を有する回路体と、
前記基板の第1の面に設けられかつ前記導体部および前記基板に対して断面上それぞれ独立して冷媒を接触させる流路部と、を備え、
前記導体部は、前記基板の第1の面とは反対側の第2の面で前記基板に接続され、
前記回路体は、前記基板の前記第2の面で前記基板に接続して設置され、かつ、前記回路体の一部は前記貫通孔内を通って前記基板の第1の面側に出ており、
前記モールド材は、前記基板の前記第1の面側よりも前記第2の面側の方が前記モールド材の量が多く形成されている
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記基板は、前記第2の面に配置され直流電力を平滑化するコンデンサを有し、
前記流路部は、前記基板に対して垂直方向に前記回路体と対向する位置に設けられる第1流路部と、前記第1流路部とは第1流路壁によって隔てられ、かつ前記コンデンサとは前記基板を間に挟んで対向する位置に設けられる第2流路部と、を含む
半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体装置であって、
前記基板は、前記第2の面であって前記回路体を間に挟んで前記コンデンサとは反対側に配置される交流電力配線を有し、
前記流路部は、前記第1流路部とは第2流路壁により隔てられ、かつ前記交流電力配線と前記基板を間に挟んで対向する位置に設けられる第3流路部と、を含む
半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置であって、
前記第2流路部は、前記第3流路部よりも内部を流れる冷媒の流路面積が大きくなるように形成される
半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置であって、
前記回路体は、前記基板の前記第2の面側に設けられ、かつ前記モールド材から露出する放熱面を有し、
前記流路部は、前記基板の前記第1の面側において、前記回路体の放熱面を冷却するように冷媒の流路を形成する第1流路部と、前記第1流路部とは前記回路体を間に挟んで対向する位置に設けられ、かつ前記放熱面を冷却する冷媒が流れる第4流路部と、を含む
半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置を備えるホイール内蔵電動システムであって、
ホイールを回転させるロータと、
ベアリングを介して前記ホイールと接続されるシャフトと、
前記シャフトの径方向において前記ロータの内側に配置されるステータと、
を備え、
前記半導体装置は、前記シャフトの径方向に対して前記ステータの内側に配置され、
前記第1流路部は、前記ステータの内壁面と接続され、
前記第4流路部は、前記シャフトと接続される
ホイール内蔵電動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびホイール内蔵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業機械や車両(例えば、自動車、鉄道車両)において、省エネルギーや精密な運転制御の観点から、動力源の電動化および電子制御化が急速に進展している。また、それに伴って、該動力源の電力制御を行うためのパワーモジュールや該パワーモジュールを用いた電力を変換する電子回路装置について、重要性が高まっている。
【0003】
車両の駆動装置は、半導体装置により変換された電力がモータを駆動させ機能しているが、とりわけ自動車においては、車内にバッテリと半導体装置とモータを搭載した電動車両が存在している。そのため、車内のスペース拡大のため、半導体装置は薄型にすることが望まれており、これに伴い、薄型高密度である半導体装置の冷却性の向上も望まれている。
【0004】
本願発明の背景技術として、下記の特許文献1が知られている。特許文献1では、半導体装置の発熱体を効率よく冷却しようとする試みとして、流路をケースとバスバーで構成し、さらにバスバーとケースを一体で成形したうえで流路に絶縁冷媒を流し込む構成にすることで、効率的に冷却できる半導体装置の冷却構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-315757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された従来の構造では、大電力を扱うために、銅の電極を用いたパワーモジュールの両面を冷却する構造とし、半導体からの放熱の向上を試みている。しかし、回路基板にパワーモジュールを取り付けた場合、パワーモジュール内の半導体からの発熱により銅の電極が加熱し、銅の電極と回路基板との接続部やその接続部周辺まで高温となり、さらなる冷却性の向上が求められる課題がある。
【0007】
したがって、本発明の課題は、実装密度の向上と冷却性の向上とを両立した半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半導体装置は、半導体素子と、前記半導体素子と電気的に接続される導体部と、貫通孔が形成された絶縁性の基板と、前記半導体素子と前記導体部とを封止するモールド材と、を有する回路体と、前記基板の第1の面に設けられかつ前記基板に冷媒を接触させる流路部と、を備え、前記導体部は、前記基板の第1の面とは反対側の第2の面で前記基板に接続され、前記回路体は、前記基板の前記第2の面で前記基板に接続して設置され、かつ、前記回路体の一部は前記貫通孔内を通って前記基板の第1の面側に出ており、前記モールド材は、前記基板の前記第1の面側よりも前記第2の面側の方が前記モールド材の量が多く形成されている。
【発明の効果】
【0009】
実装密度の向上と冷却性の向上とを両立した半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の半導体装置の電気回路図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る、半導体装置を示す斜視図である。
図3図2の半導体装置の上面および側面に、流路形成体を取り付けた図である。
図4図3のA-A’断面図である。
図5図3に示した流路形成体の上面の内部を示した図である。
図6図3に示した流路形成体の下面の内部を示した図である。
図7】第2実施形態に係る、ホイールの分解図である。
図8】第2実施形態に係る、ホイール内部の斜視図である。
図9】第2実施形態に係る、モータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0012】
図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0013】
(第1の実施形態とその構成)
図1は、本発明の半導体装置の電気回路図である。
【0014】
車両に搭載されたバッテリ100は半導体装置101に対して直流電力を供給しており、並列につながれた平滑コンデンサ102によって直流電力が平滑化される。平滑化された直流電力は、半導体装置101によって交流電力に変換され、モータ200へ出力される。
【0015】
半導体装置101は、半導体素子を2つ直列接続した1レグパワーモジュール104を三相分備えている。なお、図1では1相分のみを示し、他の2相分については図示を省略する。1レグパワーモジュール104の上下アームの半導体素子23に流れる電流は、制御回路103から出力される制御信号によって、スイッチングのON・OFFが切り替えられている。制御回路103から出力される制御信号は、信号配線を通じゲート抵抗105を介して上下アームの半導体素子23にそれぞれ入力されている。
【0016】
三相の1レグパワーモジュール104は、それぞれ高圧側入力配線106と低圧側入力配線107とに並列に接続されている。また、三相の1レグパワーモジュール104は、それぞれ上下アームで直列接続した半導体素子23の中間点で、モータ200のステータ巻線と接続されている。また、1レグパワーモジュール104と制御回路103とを纏めた三相の1レグインバータ108は、それぞれスイッチングのON・OFFの切り替えをすることで、モータ200へ三相交流を出力している。
【0017】
半導体素子23は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)とダイオードを組み合わせたものや、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)により構成される。
【0018】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る、半導体装置を示す斜視図である。なお、以降の説明ではこの斜視図下方向の面を半導体装置101の下面(第1の面)、上方向の面を半導体装置101の上面(第2の面)とする。
【0019】
半導体装置101は、基板2の両面及び図示されていない内層に存在し互いに平行に配置された低圧側配線と高圧側配線を合わせたDC配線20に、図1のバッテリ100からDC入力端子1a,1bを経由して入力されている電力を、供給している。なお、図2ではDC配線20の一部分のみが図示されており、他の詳細な配線状況については図示を省略している。
【0020】
半導体装置101において、基板2に設けられている貫通孔に配置される3相の1レグパワーモジュール104は、DC配線20を介して入力された直流電力を交流電力に変換し、AC配線12へ三相交流を出力している。変換された三相交流は、AC出力端子13から半導体装置101の外部のモータ200(図1参照)へと出力される。
【0021】
パワーモジュール104での電力変換の際、パワーモジュール104の内部にある半導体素子23が、自身の損失によりリードフレーム(導体部)を加熱する。リードフレームは、DC配線20やAC配線12を初めとした基板2上にあるパワーモジュール104の接続端子と接続しているため、リードフレームが加熱されることで基板2も接続端子を介して加熱され、高温になる課題がある。
【0022】
また、パワーモジュール104において、電力を直流から交流に変換する際に電力変化を吸収する平滑コンデンサ102が吸収した電力によって、平滑コンデンサ102も発熱する。また、パワーモジュール104内の半導体素子23を駆動するための電源である絶縁電源5や、半導体の信号入力を制御するIC(集積回路)6や、制御信号をON・OFFする終端素子7も、モータ駆動時に起こる損失により加熱する。このように、基板2上の配線や部品全般は発熱する課題を持つ。
【0023】
この発熱を抑えるために、基板2の下面(第1の面)には、基板2とパワーモジュール104の底面とで冷媒を流す第1流路部26、第2流路部27、第3流路部28、の3つの流路部(油路)が形成されている。第1流路部26、第2流路部27、第3流路部28は、第1流路形成体8、第2流路形成体9、第3流路形成体10、によって形成され、それぞれ内部に流れる冷媒によって、基板2全体とそこに接続されている電子部品を冷却している。詳細は後述する。
【0024】
図3は、図2に示した半導体装置101の上面および側面に、流路形成体を取り付けた図である。
【0025】
まず、半導体装置101の中央に配置されている前述した3相のパワーモジュール104を覆うように、第4流路形成体14が形成されている。紙面の左側の基板2の側面には、第5流路形成体15が形成されている。第5流路形成体15は、内部に設けられている流路部によって、前述した第2流路形成体9によって形成される第2流路部27と、第4流路形成体14および3つのパワーモジュール104で形成される第4流路部29(後述)と、を接続している。具体的な冷媒の流れ方については後述する。
【0026】
紙面右側の基板2の側面に形成されている第6流路形成体16は、内部に設けられている流路部によって、パワーモジュール上面の第4流路部29(後述)とパワーモジュール下面の第1流路部26とを接続している。具体的な冷媒の流れ方については後述する。
【0027】
第7流路形成体17と第8流路形成体18は、第5流路形成体15と第6流路形成体16の側面をそれぞれ覆っており、第1流路部26、第2流路部27、第3流路部28、第4流路部29を密閉している。また、流路入口3および流路出口4が、第8流路形成体18に設けられている。これにより、流路入口3から流入した冷媒は、第1流路部26、第2流路部27、第3流路部28、第4流路部29すべてに導通し、流路出口4から外部に排出される。
【0028】
図4は、図3のA’-A断面図である。
【0029】
DC配線20a,20bとAC配線12は、ビア19により基板2の上下面の内層や外層に接続されている。基板2は絶縁性の基板であり、基板2の面の中心部分には貫通孔33が設けられている。
【0030】
基板2に設置されるパワーモジュール104について説明する。回路体であるパワーモジュール104は、基板2の貫通孔33を跨ぐように設置されている。パワーモジュール104は、リードフレーム21a,21b,はんだ22,半導体素子23,フィン24,封止樹脂25,で構成されている。
【0031】
パワーモジュール104のリードフレーム21a,21bは、半導体素子23とはんだ22を介して電気的に接続される導体部である。リードフレーム21a,21bからは、端子部が基板2に向かって延びて、はんだ22を介して基板2と接続されている。これにより、リードフレーム21a,21bは、基板2の一方の面(第2の面)で基板2に接続されている。また、リードフレーム21a,21bは第1流路部26および第4流路部29に対してそれぞれ放熱面を持ち、放熱面上には、フィン24が設けられている。フィン24は、リードフレーム21a,21bから出る熱を第1流路部26および第4流路部29内に流れる冷媒にそれぞれ放熱する役割を持つ。封止樹脂25は、半導体素子23とリードフレーム21a,21bと端子部とを封止するモールド材である。
【0032】
第1流路形成体8、第2流路形成体9、第3流路形成体10は、基板2の紙面下方向の面である第1の面に設けられ、それぞれ基板2の面とともに第1流路部26、第2流路部27、第3流路部28を形成している。第1流路部26は、前述したようにリードフレーム21bに設けられたフィン24を通して、内部を流れる冷媒によりパワーモジュール104の放熱をする役割がある。また、第1流路部26は、基板2に対して垂直方向にパワーモジュール104と対向する位置に設けられている。
【0033】
第2流路部27、第3流路部28は、内部に流通する冷媒が基板2に直接接触されるように形成されている。また、第2流路部27は、第1流路部26とは第1流路形成体8の側壁である第1流路壁81によって隔てられている。同様に、第3流路部28は、第1流路部26とは第1流路形成体8の側壁である第2流路壁82によって隔てられている。
【0034】
なお、基板2の下面(第1の面)の第1流路形成体8、第2流路形成体9、第3流路形成体10を3つに分けている構成として本発明を説明しているが、一体で形成されていてもよい。
【0035】
交流電力配線であるAC配線12は、基板2の設置面において、パワーモジュール104を間に挟んで平滑コンデンサ102と対向する位置に配置されている。
【0036】
パワーモジュール104は、基板2の第1の面とは反対側の第2の面に設置されているが、パワーモジュール104の一部(リードフレーム21b、封止樹脂25の一部)は、貫通孔33内を通って基板2の第1の面に出ている。
【0037】
ここで封止樹脂25は、基板2を境界にして、基板2の第2の面側に形成されている樹脂量が、第1の面側に形成されている樹脂量よりも多く形成されている。これにより、基板2の第1の面側に形成されている第2流路形成体9、第3流路形成体10および第2流路部27、第3流路部28を、封止樹脂25が少なく設けられている分だけ、基板2に対しての設置面を大きく設けることができる。これにより、冷媒の流量を増大させることが可能になり、さらに冷媒の基板2に対する接触面積、つまり放熱面積を大きくすることができるため冷却性能が向上する。
【0038】
なお、材質上の問題で封止樹脂25を冷却することに問題があるようであれば、第2流路形成体9、第3流路形成体10および第2流路部27,第3流路部28の大きさを、第2流路部27、第3流路部28と封止樹脂25が紙面垂直方向で重ならないように小さくして、調整してもよい。
【0039】
直流電力を平滑化する平滑コンデンサ102は、基板2において、パワーモジュール104と同じ面(第1の面)に設けられる。また、平滑コンデンサ102は、基板2を間に挟んで、第2流路部27と対向する位置に設置される。
【0040】
これにより、平滑コンデンサ102は基板2に接触する面積部分全体を冷却することができる。また、平滑コンデンサ102は、第2流路部27の基板2に対する放熱面積が大きく設けられることで、パワーモジュール104に隣接して設置することも可能になる。これにより半導体装置101の小型化にも貢献できる。
【0041】
パワーモジュール104の上下面のフィン24を覆うように第1流路形成体8、第4流路形成体14が設けられている。また、基板2の下面(第1の面)を覆うように第2流路形成体9、第3流路形成体10が設けられている。これにより、第1流路部26、第2流路部27、第3流路部28、第4流路部29が形成されている。
【0042】
パワーモジュール104のリードフレーム21a,21bと基板2上の配線の接続面、平滑コンデンサ102やパワーモジュール104の制御用の絶縁電源5や前述したIC6は、すべて基板2の上面(第2の面)に設置される。
【0043】
このように、リードフレーム21a,21bの接続面が基板2の上面(第2の面)に集中することで、リードフレーム21bの直下にあたる部分、つまり基板2の下面側(第1の面側)全体に広い流路部を設けることができる。また部品がすべて上面にあることで基板2上の電子部品の実装密度を向上させることができる。
【0044】
第1流路部26、第4流路部29は内部を流れる冷媒によって、フィン24を介してリードフレーム21a,21bと、リードフレーム21a,21bとはんだ22を介して接続されている半導体素子23と、を冷却する。第2流路部27および第3流路部28の内部を導通する冷媒は、基板2やDC配線20a,20b、AC配線12、基板2上の平滑コンデンサ102を冷却する。
【0045】
第4流路部29は、パワーモジュール104のリードフレーム21a,21bが有する放熱面上に設けられる。この放熱面は、封止樹脂25に覆われずに露出しており、放熱面上にフィン24が設けられ、第4流路部29内を流れる冷媒が接触する。
【0046】
第1流路部26と第4流路部29は、パワーモジュール104を間に挟んで対向する位置に設けられている。これにより、パワーモジュール104のリードフレーム21a,21bは両面から冷却される。こうすることで、半導体装置101の冷却効率の向上を図ることができる。
【0047】
リードフレーム21a,21bの下部に基板2の上下の配線を接続するためのビア19が紙面手前及び奥方向に並んで設置されている。ビア19が第2流路部27、第3流路部28の上部にあることで、ビア19を介してリードフレーム21a,21bからの煽り熱を効率よく第2流路部27および第3流路部28を流れる油に移動させることができる。こうすることで、半導体装置101の冷却性能を高めることができる。
【0048】
半導体装置101の冷却性能を高めることで、基板2やDC配線20a,20bから平滑コンデンサ102への煽り熱を低減できる。またそれに伴い、平滑コンデンサ102下部の基板2に流路部27を作ることで、平滑コンデンサ102の熱を冷媒(油)へ移動することができる。そのため、リードフレーム21a,21b下部や基板2の下部に流路部がない構成と比較して、平滑コンデンサ102の温度をより下げることができる。また、平滑コンデンサ102とリードフレーム21a,21bをより近くに配置することができるために、基板2の面積を小さくすることができる。
【0049】
さらに、AC配線12側にゲート信号用の絶縁電源5やゲート制御用IC6がある場合にも同様に、リードフレーム21a,21b下部や基板2下部から冷却をすることで、絶縁電源5やIC6側に伝わる煽り熱を低減できる。それに伴い、絶縁電源5やIC6の下部も冷却し温度を低減できる。また、各部品を近くに配置できるため基板2の面積を低減することができる。
【0050】
冷媒が流路内を流れる速度は、流路部ごとに高さを変更することで、流路部の断面積を調節することができ、それに伴い流速も調整できる。これを用いて、第2流路部27について、第3流路部28よりも流速を大きくさせる構成を採用してもよい。このようにすることで、第3流路部28では流速による圧損を低減しつつ、第2流路部27では流速を大きくすることで、基板2の表面での熱の移動を大きくし、熱伝達率を向上させることができる。また、このような構成にすることで、損失により加熱され、温度が上昇しやすい平滑コンデンサ102の温度を優先的に下げることが可能になり、圧損を調節しつつ高密度な実装にすることができる。
【0051】
図5は、図3に示した流路形成体の上面の内部を示した図である。
【0052】
第4流路部29は、第4流路形成体14と3つのパワーモジュール104に囲われて第4流路部29を形成している。より具体的には、3つのパワーモジュール104は、放熱面のフィン24が直列に並ぶように設けられ、そのフィン24を覆うように第4流路部29が形成されて内部を冷媒が通過する流路を、直線に形成している。これにより、3つのパワーモジュールを順に冷却することができる。冷媒の流れ11については図6の説明で後述する。
【0053】
図6は、図3に示した流路形成体の下面の内部を示した図である。
【0054】
冷媒の流れ11について図6および前述した図5を用いて説明する。第2流路部27において、内部を流れる冷媒は、図3で前述した流路入口3から第2流路部27の内部に流入する。つづいて冷媒は、冷媒の流れ11に示す矢印のように進み、図4に示したDC配線20aの下面を通って、第7流路形成体17の側面に当たる。第7流路形成体17の側面にたどり着いた冷媒は、第7流路形成体17の側面を通って、第2流路部27から第4流路部29への流路口151から、図5に示した第4流路部29へ流れていく。
【0055】
つづいて冷媒は、図5に示した半導体装置101の上面にある第4流路部29に移動する。さらに、図5の第4流路部29では、前述したように3つのパワーモジュール104の上面を冷媒が通る。これによりパワーモジュール104が直接冷却される。つづいて冷媒は、図5の第8流路形成体18の側面に当たり、その側面に沿って第4流路部29から第1流路部26への流路口141から、図6に示した第1流路部26に流れていく。
【0056】
図6では、第4流路部29から第1流路部26への流路口141から流入した冷媒は、第1流路部26ではパワーモジュール104下面を通って流れ進む。そのあと冷媒は第7流路形成体17の側面に当たり、その側面に沿って第3流路部28に移動する。第3流路部28では図4に示したAC配線12の下を通り、第3流路部28の流路出口4から半導体装置101の外部へと冷媒が排出される。これにより、冷媒を一通させて実装密度を向上させた半導体装置101全体を冷却させることができる。
【0057】
以上説明した本発明の第1の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0058】
(1)半導体装置101は、半導体素子23と、半導体素子23と電気的に接続される導体部21a,21bと、導体部21a,21bから貫通孔33を形成する絶縁性の基板2に延びる端子部と、半導体素子23と導体部21a,21bと端子部を封止するモールド材25と、を有する回路体104と、基板2の第1の面に設けられかつ基板2に冷媒を直接接触させる流路部と、を備え、端子部は、基板2の第1の面とは反対側の第2の面で基板2に接続され、回路体104は、基板2の第2の面で基板2に接続して設置され、かつ、回路体104の一部は貫通孔33内を通って基板2の第1の面側に出ており、モールド材25は、基板2の第1の面側よりも第2の面側の方が前記モールド材の量が多く形成されている。このようにしたので、実装密度の向上と冷却性の向上とを両立した半導体装置を提供できる。
【0059】
(2)基板2は、第2の面に配置され直流電力を平滑化するコンデンサ102を有し、流路部は、基板2に対して垂直方向に回路体104と対向する位置に設けられる第1流路部26と、第1流路部26とは第1流路壁81によって隔てられ、かつコンデンサ102とは基板2を間に挟んで対向する位置に設けられる第2流路部27と、を含む。このようにしたので、基板を間に挟んで熱を帯びやすいコンデンサを集中的に冷却させることができる。
【0060】
(3)基板2は、第2の面であって回路体104を間に挟んでコンデンサ102とは反対側に配置される交流電力配線12を有し、流路部は、第1流路部26とは第2流路壁82により隔てられ、かつ交流電力配線12と基板2を間に挟んで対向する位置に設けられる第3流路部28と、を含む。このようにしたので、基板の一方の面において一面に流路を形成し、基板全体を冷却させることができる。
【0061】
(4)半導体装置101の第2流路部27は、第3流路部28よりも内部を流れる冷媒の流路面積が大きくなるように形成される。このようにしたので、冷媒の流量が多い流路側に、発熱の影響が大きい電子部品を設置することで、冷却効率を向上させることができる。
【0062】
(5)回路体104は、基板2の第2の面側に設けられ、かつモールド材25から露出する放熱面を有し、流路部は、基板2の第1の面側において、回路体104の放熱面を冷却するように冷媒の流路を形成する第1流路部26と、第1流路部26とは回路体104を間に挟んで対向する位置に設けられ、かつ放熱面を冷却する冷媒が流れる第4流路部29と、を含む。このようにしたので、回路体104の両方向から冷却できるため、冷却効率を向上させることができる。
【0063】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る、ホイールの分解図である。
【0064】
モータ200は、車両のホイールを回転させるロータ31と、ベアリングを介してホイールと接続されるシャフト32と、シャフト32の径方向においてロータ31の内側に配置されるステータ30と、が備えられている。
【0065】
半導体装置101は、ホイール内蔵電動システムとして、モータ200において、シャフト32の径方向に対してステータ30の内側に差し込まれるように配置され、電力変換装置として機能する。
【0066】
半導体装置101は、シャフト32に対して上面を向け、半導体装置101の下面はステータ30と接するように配置する。これにより、半導体装置101の下面の流路部(第1流路部26、第2流路部27、第3流路部28)が半導体装置101の基板2の全体を冷却して、ステータ30と半導体装置101とを熱絶縁をさせることができる。
【0067】
図8は第2の実施形態に係る、ホイール内部の斜視図である。
【0068】
前述したように、半導体装置101は、ステータ30と下面が接するように設置されている。そのため、半導体装置101の三相のAC配線とステータ30の三相巻き線とを接続して、モータ200に三相交流電流を流している。これにより、ステータ30の外側にあるロータ31を回転させている。
【0069】
ステータ30に備えられている三相巻き線は通電により加熱している。この過熱状態からステータ30を強制冷却するため、ステータ30の内壁面に備えた流路部の入り口と前述した図3および図6に示した半導体装置101の第3流路部の流路出口4とを接続する。このようにすることで、半導体装置101とステータ30との間で冷媒を導通させて、半導体装置101とステータ30を同時に冷却することができる。
【0070】
図9は、第2の実施形態に係る、モータの断面図である。
【0071】
モータ200のロータ31は、シャフト32との間に図示していないベアリングを設けている。ベアリングでの摩擦熱による煽り熱により、シャフト32の温度が上昇するが、半導体装置101の対向流路部の1つにあたる第4流路形成体14とシャフト32とを接触させている。このようにすることで、第4流路部29の冷媒に熱を吸収させてシャフト32を冷却することができる。なおこの時、冷却性能向上のため、シャフト32の形状に合わせて第4流路形成体14を変形し、接触面を増やして冷却効果をさらに向上させるようにしてもよい。
【0072】
以上説明した本発明の第2の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0073】
(6)半導体装置101を備えるホイール内蔵電動システムは、ホイールを回転させるロータ31と、ベアリングを介してホイールと接続されるシャフト32と、シャフト32の径方向においてロータ31の内側に配置されるステータ30と、を備え、半導体装置101は、シャフト32の径方向に対してステータ30の内側に配置され、第1流路部26は、ステータ30の内壁面と接続され、第4流路部29は、シャフト32と接続される。このようにしたので、冷媒を一通でホイールと半導体装置101に流すことが可能になり、実装密度の向上と冷却性の向上とを両立させることができる。
【0074】
上述した実施形態は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態の構成の一部について、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1a,1b・・・ DC入力端子
2・・・ 基板
3・・・ 流路入口
4・・・ 流路出口
5・・・ 絶縁電源
6・・・ IC(集積回路)
7・・・ 終端素子
8・・・ 第1流路形成体
81・・・第1流路壁
82・・・第2流路壁
9・・・ 第2流路形成体
10・・・ 第3流路形成体
11・・・ 冷媒(油)の流れ
12・・・ AC配線
13・・・ AC出力端子
14・・・ 第4流路形成体
141・・・ 第4流路部から第1流路部への流路口
15・・・ 第5流路形成体
151・・・ 第2流路部から第4流路部への流路口
16・・・ 第6流路形成体
17・・・ 第7流路形成体
18・・・ 第8流路形成体
19・・・ ビア
20,20a,20b・・・ DC配線
21a,21b・・・ リードフレーム
22・・・ はんだ
23・・・ 半導体素子
24・・・ フィン
25・・・ 封止樹脂
26・・・ 第1流路部
27・・・ 第2流路部
28・・・ 第3流路部
29・・・ 第4流路部
30・・・ ステータ
31・・・ ロータ
32・・・ シャフト
33・・・ 貫通孔
100・・・ バッテリ
101・・・ 半導体装置
102・・・ 平滑コンデンサ
103・・・ 制御回路
104・・・ パワーモジュール
105・・・ ゲート抵抗
106・・・ 高圧側入力配線
107・・・ 低圧側入力配線
108・・・ 1レグインバータ
200・・・ モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9