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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】記録装置および記録方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
B41J2/175 309
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020210592
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097167
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 翔大
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-025030(JP,A)
【文献】特開2007-015249(JP,A)
【文献】特開2012-051193(JP,A)
【文献】特開2004-114430(JP,A)
【文献】特開平08-072262(JP,A)
【文献】特開2020-163684(JP,A)
【文献】特開2020-168845(JP,A)
【文献】特開平11-207992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送部と、
インクを貯留する貯留部と、
前記貯留部から供給されたインクを前記記録媒体に吐出して記録を行う記録ヘッドと、
前記貯留部内のインク残量に関連する信号を取得する信号取得部と、
を備え、
前記信号取得部は、前記搬送部による搬送の開始に応じて、前記信号の取得を開始し、前記記録ヘッドによる前記記録媒体への記録と並行して、前記信号の取得を行う
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記信号取得部による前記信号の取得を行う期間と、前記記録ヘッドによる前記記録媒体への記録動作を行う期間とは、少なくとも部分的に互いに重複する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記信号取得部の取得結果に基づいて前記貯留部内のインク残量が基準を満たすか否かを判定する残量判定部を更に備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドによる記録済みの1枚分の記録媒体の排出に応じて、前記残量判定部は、前記判定を行う
ことを特徴とする請求項記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドのインクの吐出量を計測する吐出量計測部を更に備え、
前記残量判定部は、前記吐出量計測部の計測結果に更に基づいて前記判定を行う
ことを特徴とする請求項または請求項記載の記録装置。
【請求項6】
前記貯留部内のインク残量が前記基準を満たさない場合に次の記録媒体への記録の開始を抑制する記録制御部を更に備える
ことを特徴とする請求項から請求項の何れか1項記載の記録装置。
【請求項7】
前記貯留部内のインク残量が前記基準を満たさない場合に前記記録ヘッドによる記録を抑制する第2の記録制御部を更に備える
ことを特徴とする請求項から請求項の何れか1項記載の記録装置。
【請求項8】
前記貯留部内のインク残量が前記基準を満たさない場合に所定の通知を行う通知部を更に備える
ことを特徴とする請求項から請求項の何れか1項記載の記録装置。
【請求項9】
前記所定の通知の内容は、前記貯留部の交換が必要であることをユーザに知らせる内容であることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記所定の通知の内容は、インクの補充が必要であることをユーザに知らせる内容であることを特徴とする請求項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記搬送部は、前記記録ヘッドによる記録媒体への記録の開始前に前記搬送を開始し、前記記録ヘッドによる記録が完了した後に前記搬送を完了とする
ことを特徴とする請求項1から請求項10の何れか1項記載の記録装置。
【請求項12】
前記貯留部内には電極が設けられており、
前記信号取得部は、前記電極に電気信号を供給し、該電極からの応答を、前記インク残量に関連する信号として取得する
ことを特徴とする請求項1から請求項11の何れか1項記載の記録装置。
【請求項13】
記録媒体を搬送する搬送工程と、
インクを貯留する貯留部から供給されたインクを前記記録媒体に吐出して記録を行う記録工程と、
前記貯留部内のインク残量に関連する信号を取得する取得工程と、を含み、
前記取得工程では、前記搬送の開始に応じて前記信号の取得を開始し、前記記録ヘッドによる前記記録媒体への記録と並行して、前記信号の取得を行う
ことを特徴とする記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等に代表される記録装置のなかには、インクを貯留する貯留部に電極を設け、該電極に電気信号を加えることにより貯留部内のインク残量を検出するものがある(特許文献1参照)。貯留部内のインク残量が基準を満たさなくなった場合には該貯留部にインクを補充し又は該貯留部を新しいものに交換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-43624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯留部内のインク残量の検出には、例えば数十[msec(ミリ秒)]程度の時間を要する。そのため、複数枚の記録を高速化するのに際して制御面における改善が求められうる。
【0005】
本発明は、複数枚の記録の高速化に有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面は記録装置にかかり、前記記録装置は、
記録媒体を搬送する搬送部と、
インクを貯留する貯留部と、
前記貯留部から供給されたインクを前記記録媒体に吐出して記録を行う記録ヘッドと、
前記貯留部内のインク残量に関連する信号を取得する信号取得部と、
を備え、
前記信号取得部は、前記搬送部による搬送の開始に応じて、前記信号の取得を開始し、前記記録ヘッドによる前記記録媒体への記録と並行して、前記信号の取得を行う
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数枚の記録を高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】記録装置の全体構成の一例を示す模式図。
図2】記録装置の一部の構成例を示す模式図。
図3】記録装置のシステム構成を示すブロック図。
図4】1枚分の記録媒体の記録を行う際の動作内容を示すタイミングチャート。
図5】記録装置の駆動/制御の内容を示すフローチャート。
図6】記録装置の一部の構成の他の例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る記録装置1の全体構成の一例を示す模式図である。図2は、記録装置1の一部の構成例を示す模式図である。記録装置1は、本実施形態においてはインクジェットプリンタであり、載置部11、搬送部12、排出部13、記録部14、検出部15および記録制御部16を備える。
【0011】
載置部11は、シート状の紙材等、所定の記録媒体Shを載置可能となっており、2以上の記録媒体Shを積載することも可能である。載置部11は、載置台、積載部、積載トレー等と表現されてもよいし、記録媒体Shが紙材の場合には給紙部、給紙台、給紙トレー等とも表現されうる。
【0012】
搬送部12は、載置部11上の記録媒体Shを1枚ずつ搬送して記録媒体Shを装置1本体内に取り込み、装置1本体内で搬送する。また、搬送部12により搬送中の記録媒体Shに対して記録部14により後述の記録が行われた後、搬送部12は、該記録された記録媒体Shを排出部13から装置1外に排出する。排出部13は、排出台、排出トレー等と表現されてもよいし、記録媒体Shが紙材の場合には排紙部、排紙台、排紙トレー等とも表現されうる。
【0013】
本実施形態では、搬送部12は、複数のローラ(又はローラ対)12a~12eを含む。ローラ12a~12eの個々は、ピックアップローラ、分離ローラ、搬送ローラ、レジストローラ等、その目的ないし機能に応じた名称で表現され、装置1本体内における対応の位置において個別に駆動可能に設置される。このような構成により、記録媒体Shは、載置部11から装置1本体内に取り込まれた後、装置1本体内にて搬送され、記録部14により記録が行われ、それから、排出部13から装置1外に排出される。
【0014】
尚、ローラ12b及び12c間には、搬送部12による記録媒体Shの搬送経路を調整するためのフラッパ191が設置されてもよい。これにより、記録媒体Shのサイズ(搬送方向における長さ)に応じた搬送経路を形成することも可能となる。
【0015】
記録部14は、本実施形態においてはインクジェット方式で記録を実行可能に構成され、記録ヘッド141および貯留部142を含む。記録ヘッド141は、搬送部12によりプラテンPL上を搬送中の記録媒体Shに対して相対移動しながらインクを吐出することにより記録を行う。記録媒体Sh上にはインクが付与されることにより画像が形成される。尚、画像の概念には、文字、記号、図形、写真等の他、それらの間に形成されうるスペースをも含まれるものとする。
【0016】
図2に示されるように、本実施形態では、記録ヘッド141は、記録媒体Shに対して、搬送部12の搬送方向と交差(実質的に直交)する方向にキャリッジ192により往復移動しながら記録を行うシリアルヘッドとする。キャリッジ192は、ベルト機構193によりガイド194に沿って摺動可能となっており、このような構成により記録ヘッド141を往復移動させる。尚、他の実施形態として、記録ヘッド141は、記録媒体Shに対して、搬送方向と交差する方向の全域に亘って一度に記録を行うラインヘッドであってもよい。
【0017】
貯留部142はインクを貯留可能に構成されたインクタンク、カラー印刷対応の記録装置1の場合には複数(例えばY(イエロー)、M(マゼンダ)、C(シアン)、K(ブラック)等)の貯留部142が設けられる。貯留部142は、流路管195を介して記録ヘッド141にインクを供給可能となっている。流路管195にはチョーク弁196が設けられ、これにより流路管195内の内圧を制御可能となっている。
【0018】
また、詳細については後述とするが、貯留部142内には電極143が設けられており、電極143に電気信号を供給可能となっている。本実施形態では一対の電極143が設けられ、其れらは、貯留部142の内壁において貯留部142の上方部から下方に延設されているものとする。一対の電極143の下方側端部の位置が、検知したい液面の高さに相当する。なお、図2では一対の電極143の両電極が同じ長さとなっているが、一方の電極が長く、他方の電極が短い構成でもよい。この場合は、短いほうの電極の下方側端部の位置が検知したい液面の高さに相当する。
【0019】
上記記録部14によれば、記録ヘッド141は、貯留部142からインクを受け取り、搬送部12により搬送中の記録媒体Shに対して該インクを吐出することにより記録を行う。換言すると、搬送部12は、記録ヘッド141による記録媒体Shへの記録の開始前に搬送を開始し、記録媒体Shを記録の開始位置まで搬送する。また、記録ヘッド141による記録が完了した後においては、搬送部12は、記録媒体Shを排出部13まで搬送して該搬送を完了することとなる。
【0020】
また、装置1本体内にはキャップユニット197、ポンプ198および吸収体199が設置され、記録ヘッド141(のインク吐出口)に対して吸引処理ないし回復処理を行うことも可能となっている。
【0021】
検出部15は、記録媒体Shの搬送経路に1以上設置され、本実施形態では検出部15a及び15bを含むものとする。例えば、検出部15a及び15bの其々は、記録媒体Shの下流側(搬送部12による搬送方向の側)/上流側(該搬送方向とは反対の側)の端部が通過したか否かを検出する。このような構成により、記録媒体Shは、搬送部12による搬送が適切に実現されているか否かを検出可能となっている。
【0022】
記録制御部16は、記録装置1の記録動作が適切に実現されるように装置1が備える個々の要素を駆動/制御し、記録制御を行う。例えば、記録制御部16は、記録を行うためのジョブ(印刷ジョブ)を、例えば外部のホスト装置9から通信インタフェース17を介して受け取った場合、搬送部12および記録部14を駆動/制御して、記録媒体Shへの記録を実現する。
【0023】
ここで、記録制御部16は、典型的には、1以上のCPU(Central Processing Unit)及び1以上のメモリを備え、所定の演算処理を行う。即ち、記録制御部16の機能は、メモリ上に展開されたデータないし情報を用いてプロセッサであるCPUが所定のプログラムを実行することにより実現可能である。なお、プロセッサとしては、CPU以外のプロセッサ(例えば、MPUやGPU)でもよい。記録制御部16の機能は、代替的/付随的に、ASIC(特定用途向け集積回路)等、半導体装置により実現されてもよく、即ち、ハードウェア及びソウフトウェアの何れによっても実現可能である。
【0024】
図3は、記録装置1のシステム構成を示すブロック図である。記録装置1は、信号出力部31、信号取得部32、残量判定部33および通知部34を更に備える。なお、信号出力部31、信号取得部32、残量判定部33および通知部34はそれぞれ、典型的には、1以上のCPU(Central Processing Unit)及び1以上のメモリを備え、所定の演算処理を行う。このことは、記録制御部16同様であるため説明を省略する。
【0025】
信号出力部31は、検出部15の検出結果および記録部14での信号の処理結果に基づいて、1枚分の記録媒体Shへの記録が行われる印刷タスクの完了を示す信号(或いは、其れに付随する信号)を出力する。例えば、Nを2以上の整数とし、Kを1~(N-1)の整数として、第Kの記録媒体Shに対する印刷タスクが完了した場合には、信号出力部31は、第Kの記録媒体Shに対する印刷タスクの完了を示す信号を出力する。これに応じて、第(K+1)の記録媒体Shに対する記録が開始されるよう搬送部12および記録部14を駆動/制御することとなる。なお、本開示においては、1枚分の記録を行うための信号群をタスクと表現し、複数のタスクを纏めて印刷ジョブと表現するものとする。
【0026】
信号取得部32は、貯留部142内のインク残量に関連する信号(以下「インク残量信号」という。)を取得(検知)することができる。詳細については後述とするが、本実施形態では、信号取得部32は、一対の電極143に電気信号(例えば定電圧あるいは定電流)を供給し、該一対の電極143からの応答をインク残量信号として取得する(検知する)。
【0027】
残量判定部33は、信号取得部32の取得結果(即ちインク残量信号)に基づいて、貯留部142内のインク残量が基準を満たすか否かを判定可能とする。例えば、一対の電極143間に定電流が加わった場合、信号取得部32は、其れらの間の電位差をインク残量信号として取得する。或いは、一対の電極143間に定電圧が加わった場合、信号取得部32は、其れらの間に流れる電流値をインク残量信号として取得する。残量判定部33は、このインク残量信号に基づいて上記判定を行う。
【0028】
通知部34は、貯留部142内のインク残量が基準を満たさない場合に通知信号を出力することが可能であり、即ち、残量判定部33の判定結果に基づいて所定の通知を行う。この通知の例としては、装置1本体に設けられた光源を発光させるために通知信号を出力してもよく、音声で通知するために通知信号を出力してもよい。また、装置1本体の表示部に表示を行わせるよう通知信号を出力してもよく、ホスト装置9側の表示部に表示を行わせるよう通知信号を出力してもよい。通知の内容としては、貯留部142の交換もしくはインクの補充が必要であることをユーザに知らせる内容であることが好ましい。
【0029】
上述の信号出力部31、信号取得部32、残量判定部33および通知部34は、記録制御部16と信号を授受可能に構成される。例えば、記録制御部16は、第Kの記録媒体Shに対する印刷タスクが完了した場合、該印刷タスクの完了を示す信号を信号出力部31から受け取り、それに応じて、第(K+1)の記録媒体Shに対する記録が開始されるように搬送部12および記録部14を駆動/制御する。
【0030】
また、例えば、記録制御部16は、残量判定部33の判定結果(貯留部142内のインク残量が基準を満たすか否かを示す信号)を受け取る。記録制御部16は、貯留部142内のインク残量が基準を満たさない場合には、記録ヘッド141による記録を抑制し、及び/又は、次の記録媒体Shへの記録の開始を抑制する(典型的には、次の記録媒体Shへの記録動作が行われないよう搬送部12及び記録部14を制御する)。これと共に、記録制御部16は、通知部34によりユーザに対して、貯留部142の交換あるいはインクの補充が必要であることを示す通知を行うこともできる。
【0031】
尚、信号取得部32、残量判定部33および通知部34は、本実施形態では理解の容易化のため記録制御部16から独立して示されるが、他の実施形態として、これらの全部/一部は記録制御部16に含まれてもよい。
【0032】
その他、ここでは説明の簡易化のため説明を省略するが、記録装置1は、上述の各要素を動作させるためのドライバ、電動モータ、エンコーダ等を更に備えうる。
【0033】
図4は、1枚分の記録媒体Shの記録を行う際の動作内容を示すタイミングチャートである。図4の横軸は時間軸を示す。図4では、印刷ジョブ内には1枚分の記録をおこなうための印刷タスクが含まれるものとする。
【0034】
時刻t10では、1枚分の記録を行うための印刷タスクが開始されるものとする。時刻t20では、搬送部12が駆動され、記録媒体の搬送が開始され、これに続いて記録部14が付随的に駆動される。その後、時刻t30では、排出部13から記録媒体Shが排出され、搬送部12による搬送が完了する。そして、時刻t40では、1枚分の印刷タスクの完了を示す信号が信号出力部31により出力される。なお、複数枚の記録を行う場合、上述したとおり、1枚分の記録を行うための信号群をタスクと表現し、複数のタスクを纏めて印刷ジョブと表現する。よって、図4の例では、印刷ジョブ内に1枚の印刷タスクのみが含まれる例を示しているため、印刷タスクの完了は印刷ジョブの完了と同じ意味となる。なお、本開示において、印刷タスクの完了とは、記録媒体の搬送を開始(給紙の開始)してから、記録(インク吐出)、排紙のための搬送、インク残量の判定までが完了することを示す。
【0035】
尚、複数枚の記録を行うための印刷ジョブが記録装置1に入力されている場合には、上記1枚分の印刷タスクの完了後、次(後続)の印刷タスクが開始されることとなる。
【0036】
ここで、前述のとおり、信号取得部32は、一対の電極143に電気信号を供給し、該一対の電極143からの応答をインク残量信号として取得する。インク残量信号の取得には一対の電極143間の通電が所定時間に亘って必要である。例えば、或る1種類のインクについてインク残量信号を取得するのに要する時間を45[msec(ミリ秒)]とした場合、4種類のインクについてインク残量信号を順に取得するのに要する時間(以下、「信号取得所要時間」という。)Twは、180[msec]となる。信号取得所要時間Twは、単に所要時間等と表現されてもよいし、或いは、応答時間等と表現されてもよい。
【0037】
尚、互いに異なる2種類のインクについての信号取得所要時間Twは互いに異なる場合もあり、また、インクの残量によって信号取得所要時間Twが変動する場合もあるが、ここでは理解の容易化のため信号取得所要時間Twは固定値とする。
【0038】
上述のとおり、インク残量信号を取得するのに信号取得所要時間Twが発生する。そのため、複数枚の記録を行う場合、例えば連続する2つの印刷タスクの間および其の近傍のタイミングにて信号取得部32によるインク残量信号の取得が行われる方法では、複数枚分の印刷タスクの完了に要する時間が長くなってしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、信号取得部32によるインク残量信号の取得は、少なくとも、1枚分の印刷タスクの完了を示す信号が信号出力部31により出力される時刻t40以前に完了するように、開始される。
【0039】
信号出力部31による印刷タスクの完了と同時に、通知部34による通知(貯留部142の交換あるいはインクの補充が必要であることを示す通知)を行う場合には、信号取得部32によるインク残量信号の取得は時刻t40前に完了している必要がある。そのため、信号取得部32によるインク残量信号の取得は、時刻t40前の時点である時刻t35以前に完了するように、開始されるとよい。
【0040】
上記駆動態様によれば、搬送部12による搬送が完了となる時刻t30から、1枚分の印刷タスクの完了を示す信号が信号出力部31により出力される時刻t40までの時間を短くすることが可能となる。この場合、信号取得部32によるインク残量信号の取得を時刻t35に完了させるため、該取得は時刻t25に開始されうる。よって、信号取得部32によるインク残量信号の取得は時刻t20~t25の間に開始されればよい、と云える。
【0041】
記録制御の観点では、印刷ジョブが入力されたことに応じて、記録媒体Shの搬送が開始され(時刻t20)、該搬送が完了し(時刻t30)、その間(時刻t20~t30の間)に記録ヘッド141による記録が行われ、印刷ジョブが完了する(時刻t40)。これら一連の動作において、本実施形態によれば、インク残量信号の取得は、時刻t20~t30の間、より好適には時刻t20~t25の間、に開始されればよい。
【0042】
以上、本実施形態によれば、信号取得部32は、搬送部12による搬送の開始(時刻t20)以後かつ該搬送の完了(時刻t30)以前にインク残量信号の取得を開始する。より詳細には、本実施形態では、搬送部12による記録媒体の搬送開始を条件(トリガー)に、インク残量信号の取得のための処理を開始する。これにより、残量判定部33は、信号取得部32の取得結果に基づいて、搬送動作の完了(排紙完了)のタイミングで、効率よくインク残量の判定処理を行うことができる。また、複数枚の記録を行う場合には其れらの完了に要する時間が長くなることもなく、複数枚の記録が順に速やかに行われうる。よって、本実施形態によれば、複数枚の記録を高速化させることが可能となる。
【0043】
図5は、上記駆動態様に基づくフローチャートである。本フローチャートは、1枚分の記録を行うための印刷ジョブが入力されたことに基づいて、主に記録制御部16により行われる。その概要は、搬送部12による搬送の開始以後かつ該搬送の完了以前に(搬送中の記録媒体への記録と並行して)インク残量信号の取得を開始し、搬送動作の完了後に、インク残量信号に基づいて、インク残量が基準を満たすか否かの判定を行う、というものである。
【0044】
ステップS1010(以下、単に「S1010」という。後述の他のステップについても同様とする。)では、1枚目の記録媒体Shを搬送部12により所定位置まで搬送開始(給紙)する。より詳細には、記録媒体Shは、ピックアップローラにより載置部11上から記録装置1本体内に取り込まれ(給紙され)、記録部14による記録の開始位置まで搬送される。
【0045】
S1020では、記録ヘッド141により給紙された記録媒体Shへの記録を行う。前述のとおり、記録ヘッド141はシリアルヘッドであるため、ここでは一例として、1枚分の記録媒体Shへの記録として1走査分の記録(キャリッジ192の1往復分の記録)が行われるものとする。
【0046】
S1030では、1枚分の記録が完了したか否かを判定する。記録が完了している場合にはS1040に進み、そうでない場合には再度S1030へ進む。
【0047】
S1040では、記録媒体Shを搬送部12により搬送して排出部13に排出(排紙)する。なお、S1020からS1040までの動作が記録動作及びその後の搬送動作に対応する。
【0048】
次に、搬送開始を条件に、記録動作及びその後の搬送動作と並行して行われるインク残量信号の取得処理について説明する。
【0049】
S1050では、一対の電極143への電気信号の供給を開始し、その応答をインク残量信号として一対の電極143から受け取る。本実施形態では、一対の電極143間に定電流を加えるものとするが、他の実施形態として、一対の電極143間に定電圧を加えてもよい。
【0050】
S1060では、信号取得部32によるインク残量信号の取得が終了したか否かを判定する。インク残量信号の取得が終了した場合にはS1070に進み、そうでない場合には再度S1060に進む。
【0051】
S1070では、一対の電極143への電気信号の供給を終了する。
【0052】
S1080では、記録済みの記録媒体Shの排出が完了したことに応答して、S1050からS1070までの間で得られたインク残量信号を、信号取得結果として取得する。具体的には、排紙の完了を示す信号に応答して、インク残量信号を取得する。
【0053】
S1090では、S1080において得られたインク残量信号に基づいて、貯留部142内のインク残量が基準を満たすか否かを判定する。インク残量が基準を満たす場合にはS1100へ進み、そうでない場合にはS1110に進む。なお、インク残量が基準を満たす場合というは、インク残量が所定の閾値より多い場合を示す。一方、インク残量が基準を満たさない場合というのは、インク残量が所定の閾値より少ない場合を示す。
【0054】
S1100では、S1090にてインク残量が基準を満たすと判定されたことに応じて、印刷ジョブ内の印刷タスクが残っているか判定する。例えば、1枚目の印刷タスクの実行時には、2枚目以降の印刷タスクが存在する場合は、印刷タスクありと判定される。S1100にてYESと判定された場合、S1010へ戻り、2枚目の記録媒体Shの給紙が行われ、搬送を開始する。なお、S1100にてYESと判定された場合、1枚目の印刷タスクの完了を示す信号を出力するとよい。この信号に応じて、2枚目の記録媒体Shの給紙が行われる。S1100にてNOと判定された場合は、印刷ジョブがすべて終了したとして本フローを終了する。
【0055】
S1110では、S1090にてインク残量が基準を満たさないと判定されたことに応じて、記録を中断するべきことを示す信号を出力すると共に、通知部34による通知(貯留部142の交換あるいはインクの補充が必要であることを示す通知)を行う。
【0056】
S1120では、上記通知に対応する措置(貯留部142の交換あるいはインクの補充)が行われたか否かを判定する。措置が行われた場合にはS1100へ進み、そうでない場合には処理を終了する。
【0057】
本フローチャートによれば、搬送部12による搬送の開始(給紙)に応答して、記録媒体への記録と並行して、インク残量信号の取得を行う。これにより記録媒体の排紙後に効率よく、インク残量が基準を満たすか否かの判定を行うことが可能となる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態は、主に、S1090の判定に際して、インク消費量を考慮する、という点で前述の第1実施形態と異なる。
【0059】
図6は、第2実施形態に係る記録装置1の構成例を示す。記録装置1は、吐出量計測部61を更に備える。吐出量計測部61は、記録ヘッド141のインクの吐出量(即ち、記録ヘッド141でのインク消費量)を計測する。吐出量計測部61は、例えば、個々のインク吐出口の駆動回数に基づいてインク消費量を計測することができる。吐出量計測部61は、記録部14の一部であってもよい。
【0060】
本実施形態では、残量判定部33は、S1090(図5参照)において、信号取得部32の取得結果(即ちインク残量信号)に加えて吐出量計測部61の計測結果(即ちインク消費量)に基づいて、貯留部142内のインク残量が基準を満たすか否かを判定する。即ち、本実施形態によれば、S1090の判定に際して、今までの記録の実行中におけるインク消費量(累積)が考慮されることとなる。
【0061】
一対の電極143からの信号応答を用いる方法では、電極にインクが接しているか否かで信号出力の値が異なることを基に、インク残量が閾値より多いか否かを判定することができるが、詳細なインク残量を求めることは難しい。つまり、電極143からの信号応答によりインク残量が所定の閾値(例えば、インク残量が30%)未満であるか否かは判定できるが、0~30%のうちいずれの残量かの判定はできない。よって、本実施形態では、インク吐出量(ドットカウント)を用いることにより、より詳細にインク残量を求めることが可能となる。例えば、電極143からの信号応答によりインク残量が所定の閾値(例えば、インク残量が30%)未満であることが判定され、ドットカウントを用いた判定でインク残量が25%と判定することができる。
【0062】
よって、本実施形態を用いることにより、S1090の判定において、インク残量の基準を、電極143からの信号応答で検出できる閾値の基準と異なる基準とすることが可能となる。例えば、S1090における基準を20%とし、電極143からの信号応答によってインク残量が所定の閾値より小さいと判定されたとしても、ドットカウントを用いた判定により20%未満と判定されるまでは、S1090でYESに進むようにすることもできる。また、例えば、電極143からの信号応答によってインク残量が所定の閾値より小さいと判定された場合と、ドットカウントを用いた判定により20%未満と判定された場合とで、S1110での通知内容を変更することもできる。
【0063】
なお、一般に、記録装置1は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等、不図示の記憶装置を更に備える。記録装置1は、この記憶装置を、信号取得部32の取得結果を保持する情報保持部および吐出量計測部61の計測結果を保持する情報保持部として活用可能である。
【0064】
(応用例)
第1~第2実施形態では、印刷ジョブの完了までの間、例えば、記録の実行中にユーザが記録装置1のメンテナンス用カバーを開閉すること等、何らかの目的でユーザが装置1内へアクセスすることはないものとした。
【0065】
しかしながら、実際には、ユーザが装置1内に何らかのアクセス(カバーの操作等)を行う場合もあり、そのような場合、記録は一般に中断されうる。そして、ユーザによるアクセスが終了して記録が再開される際、S1050~S1070同様のインク残量信号の取得(以下、説明の簡易化のため「信号取得」という。)、並びに、S1090同様のインク残量が基準を満たすか否かの判定が行われうる。これにより記録の再開が可能な状態の下で該記録が再開されることとなる。
【0066】
よって、ユーザによるアクセスがあった場合には、1枚分の記録の際に行われるべき1回目の信号取得と、上記アクセスに起因して行われる2回目の信号取得とが、少なくとも部分的に重複して行われてしまう可能性がある。このような場合、1回目の信号取得が完了してから2回目の信号取得が開始されればよい。即ち、2回目の信号取得は、ユーザによる上記アクセスの終了に応じて開始されるのではなく、1回目の信号取得の完了以後に開始されればよい。
【0067】
(プログラム)
本発明は、上記実施形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、該システム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理により実現されてもよい。例えば、本発明は、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によって実現されてもよい。
【0068】
(その他)
上述の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置1を例に挙げて説明したが、記録方式は上述の態様に限られるものではない。また、記録装置1は、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0069】
また、本明細書でいう「記録」は広く解釈されるべきものである。従って、「記録」の態様は、記録媒体上に形成される対象が文字、図形等の有意の情報であるか否かを問わないし、また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わない。
【0070】
また、「記録媒体」は、上記「記録」同様広く解釈されるべきものである。従って、「記録媒体」の概念は、一般的に用いられる紙の他、布、プラスチックフィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能な如何なる部材をも含みうる。
【0071】
更に、「インク」は、上記「記録」同様広く解釈されるべきものである。従って、「インク」の概念は、記録媒体上に付与されることによって画像、模様、パターン等を形成する液体の他、記録媒体の加工、インクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)等に供され得る付随的な液体をも含みうる。この観点で、記録装置1は、液体吐出装置、画像形成装置等と換言されてもよい。同様に、記録ヘッド141は、液体吐出ヘッド、吐出ヘッドあるいは単にヘッド等と換言されてもよい。
【0072】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0073】
1:記録装置、12:搬送部、14:記録部、141:記録ヘッド、142:貯留部、31:信号取得部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6