(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】水素残量予測システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20241101BHJP
F17C 11/00 20060101ALI20241101BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
F17C13/02 301A
F17C11/00 C
C01B3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020218010
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000225201
【氏名又は名称】那須電機鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】徳山 榮基
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 一公
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-197248(JP,A)
【文献】特開2019-183862(JP,A)
【文献】特開2008-298217(JP,A)
【文献】特開昭59-146902(JP,A)
【文献】特開2020-067171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0013921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/02
F17C 11/00
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素圧力―組成等温線における、水素固溶相と水素化物相が混在するプラトー領域での最大吸蔵点と最低吸蔵点の圧力差が、0.1MPa以上の傾斜特性を有する水素吸蔵合金が充填されている水素吸蔵合金タンクの水素残量を予測する水素残量予測システムであって、当該システムは、
前記タンクの表面の温度を測定するタンク温度センサーと、
前記タンク内部の圧力を測定する圧力計と、
前記タンク内に吸蔵され、前記タンク内から放出された水素の流量を測定する流量計と、
前記タンク温度センサー、前記圧力計、前記流量計から入力された各測定値に基づき、前記タンク内の水素反応が平衡状態になっていることを検知し、
平衡状態において測定された前記タンク内部の圧力及び平衡状態において測定された前記タンク表面温度から算出された前記タンク内の合金温度により、前記タンク内の水素残量を算出する制御手段を備えたことを特徴とする、水素残量予測システム。
【請求項2】
前記タンク内に、複数の伝熱フィンが放射状に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の水素残量予測システム。
【請求項3】
1個又は複数個の前記タンクを収納する筐体を備え、
前記筐体の長手方向の両端部に開閉自在の開口部が設けられ、
前記筐体の一方の端部内に、ラジエータ及び送風機が設けられ、
前記筐体の外部に、前記筐体の長手方向の両端部をつなげる通気経路が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水素残量予測システム。
【請求項4】
前記筐体内に、当該筐体内の温度を測定する筐体温度センサーが設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の水素残量予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水素を吸蔵・放出できる水素吸蔵合金タンク内の水素残量を予測する水素残量予測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金は、常温・常圧付近の環境下において、液体水素と同等以上の体積密度で水素を貯蔵できる機能性材料である。水素吸蔵合金が、水素を原子状態で金属(結晶)格子中に取り込むことができる特性を有しているからで
ある。
【0003】
水素吸蔵合金の水素吸蔵特性を示すものとして、水素圧力-組成等温線(P-C-T曲線、PCT曲線ともいう。)がある。この曲線は同一温度状態での、圧力と合金中の水素濃度(貯蔵量)との関係を示したものである。P-C-T曲線のイメージ図を、
図15(a)及び(b)に示す。
【0004】
横軸は合金中の水素濃度(貯蔵量)を示し、合金の単位質量あたりの水素貯蔵量を示す単位として質量パーセント(Wt%)で示される。縦軸は、ある貯蔵量で平衡状態となるときの水素圧力(MPa)である。水素の貯蔵量が少ないときは、貯蔵量の増加に伴い圧力の上昇率が大きい。この領域では合金結晶中に水素が固溶される。その後、更に水素貯蔵量が増加すると、圧力の上昇が小さい領域に入るが、この領域では合金の水素固溶相と水素化物相が混在する。さらにその後、水素貯蔵量が増加すると、合金は全て水素化物相となり、以降の領域では、再び水素貯蔵量に対する圧力上昇率が大きくなる。
【0005】
上述した「合金の水素固溶相と水素化物相が混在する領域」は、圧力の変化は小さい一方、水素貯蔵量が吸蔵・放出と可逆的に変化する領域として「プラトー領域」と呼ばれている。このプラトー領域は合金によって様々であり、
図15(a)に示すように、圧力が殆ど変わらないプラトー特性(プラトー領域における特性)が平坦なものから、
図15(b)に示すように、圧力差が生じプラトー特性が斜め傾斜しているものもある。
【0006】
この水素吸蔵合金を使用した水素貯蔵システムの課題の1つは、水素残量の評価が困難な点にある。特に、従来市場で多く利用されている水素吸蔵合金は、
図15(a)に示すように、プラトー特性が平坦なため、圧力値から水素残量が評価できなかった。
【0007】
水素残量評価の最も一般的な方法は、水素流量計を用いて、積算流量を測定し続ける方法である。詳しくは、水素の吸蔵・放出収支の累計値を算出し続けることで、水素残量を把握する。
【0008】
この方法が、最も単純であるが、長期間連続運転を行うシステムでは、流量計による誤差が積み重なり、結果として、誤差が大きくなるという問題があった。また、システムが停止し、流量計による継続的な測定が停止してしまうと、残量評価ができなくなるという問題があった。
【0009】
また、水素吸蔵合金の中には、
図15(b)に示すように、P-C-T曲線について、斜め傾斜のプラトー特性を有するものもある。斜め傾斜のプラトー特性を有する水素吸蔵合金であれば、圧力値から水素残量を予測することができる。
【0010】
しかしながら、このP-C-T曲線は、合金の温度によって大きく変化するため、合金温度に対する補正をどのように行うか、また、タンク内に充填された合金全体の温度をどのように測定するかという点に課題があった。
【0011】
そのため例えば、特許文献1では、温度を変化させて求めたP-C-T曲線を3~4パターン用意し、測定された温度に応じて、用いるP-C-T曲線を選択する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、この特許文献1の構成では、温度変化に対して、離散的に選択したP-C-T曲線により処理を行うため、誤差が生じる要因になる。また、平衡状態におけるタンク内の圧力値と合金温度をどのように求めるかが、タンク内の水素残量の予測の精度を高める上で、重要な点であるが、特許文献1では、タンク配管内のガス温度を合金温度と想定する、あるいは、圧力計周辺の温度を合金温度と想定する構成になっている。また特に、特許文献1では、水素を吸蔵・放出する際の合金自体の反応熱については、一切考慮されていない。従って、特許文献1の構成では、精度の高い、水素残量の予測はできない。
【0014】
また通常、P-C-T曲線は、合金の基礎特性を得るために求めるものであり、その際には、通常数グラムの合金を対象として、測定室を一定温度に保った状態で、長時間かけて平衡状態となる水素圧力を測定し、P-C-T曲線を求める。従って、数十キロ単位の合金タンクを対象として、かつ外気や水素吸蔵放出量が変化する環境の中で、P-C-T曲線と照合できるような平衡状態での合金温度及び水素圧力を測定するのは、難しい。
【0015】
更に、合金の温度を測るには、タンク内部に温度センサーを設置する必要があるが、タンク内にセンサーを設置するためには、水素ガスの漏洩を防止する措置を講じる必要が生じ、機器が複雑化・高コスト化してしまう。また、タンク内部全体の積分量としての合金温度が測定できないと、当該合金温度を、タンク内の水素残量予測には、利用できない。即ち、タンク内部をスポット的に測定した測定結果は利用できないため、タンク内部に複数の合金測定点を設ける必要がある。
【0016】
そこで、上記問題点に対処するため、タンク内部にセンサーを設けることなく、精度良くタンク内部の水素残量予測を行うことのできる、水素残量予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
水素圧力―組成等温線における、水素固溶相と水素化物相が混在するプラトー領域での最大吸蔵点と最低吸蔵点の圧力差が、0.1MPa以上の傾斜特性を有する水素吸蔵合金が充填されている水素吸蔵合金タンクの水素残量を予測する水素残量予測システムであって、当該システムは、
前記タンクの表面の温度を測定するタンク温度センサーと、
前記タンク内部の圧力を測定する圧力計と、
前記タンク内に吸蔵され、前記タンク内から放出された水素の流量を測定する流量計と、
前記タンク温度センサー、前記圧力計、前記流量計から入力された各測定値に基づき、前記タンク内の水素反応が平衡状態になっていることを検知し、
平衡状態において測定された前記タンク内部の圧力及び平衡状態において測定された前記タンク表面温度から算出された前記タンク内の合金温度により、前記タンク内の水素残量を算出する制御手段を備えた、水素残量予測システムとした。
【0018】
また、請求項2に係る発明は、
前記タンク内に、複数の伝熱フィンが放射状に設けられている、請求項1に記載の水素残量予測システムとした。
【0019】
また、請求項3に係る発明は、
1個又は複数個の前記タンクを収納する筐体を備え、
前記筐体の長手方向の両端部に開閉自在の開口部が設けられ、
前記筐体の一方の端部内に、ラジエータ及び送風機が設けられ、
前記筐体の外部に、前記筐体の長手方向の両端部をつなげる通気経路が設けられている、請求項1又は2に記載の水素残量予測システムとした。
【0020】
また、請求項4に係る発明は、
前記筐体内に、当該筐体内の温度を測定する筐体温度センサーが設けられている、請求項3に記載の水素残量予測システムとした。
【発明の効果】
【0021】
請求項1~4の発明は、タンク内部に合金温度を測定する温度センサーを設けることなく、合金温度を特定することができ、また、水素の吸蔵・放出を行っているシステム運転中に、タンク内の水素反応の平衡状態を検知することができるため、タンク内の水素残量を精度良く予測することができる。
【0022】
また、請求項2の発明は、伝熱フィンにより、タンク内部の合金の反応熱が速やかにタンクの胴体部に伝えられる。詳しくは、タンク内部に充填されている合金の水素反応熱の平均成分が、タンク胴体の外周に均一に伝達される。また、伝熱フィンにより、大気からの熱も、タンク内部の合金充填層の内部中央まで、均一に伝達される。そのため、タンク内部の合金の反応熱の積分量を、タンク表面の温度に基づき算出することができる。即ち、タンク表面の温度を測定するだけで、タンク内部の合金の温度の代表的な値と相関の強い値を算出することができる。
【0023】
また、請求項3の発明は、タンクを筐体内に収納し、タンクを大気に対して断熱・密閉状態に保たせることで、タンク内合金の水素反応の平衡状態を速やかに作り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の実施の形態例1の水素残量予測システムの概略構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の水素残量予測システムの端面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の水素残量予測システムの平面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の水素残量予測システムの筐体の断面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の筐体の開口部自動開閉シャッターを開けた状態を示す要部図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の筐体の開口部自動開閉シャッターを閉めた状態を示す要部図である。
【
図7】この発明の実施の形態例1の筐体の開口部自動開閉シャッター構造のスライドパネル及びパネル固定枠を取り外した状態の筐体側面正面図である。
【
図8】この発明の実施の形態例1の筐体の開口部自動開閉シャッター構造のスライドパネルを閉めた状態のスライドパネル及びパネル固定枠の一部縦断面図である。
【
図9】この発明の実施の形態例1の筐体の開口部自動開閉シャッター構造のスライドパネルを閉めた状態のスライドパネル及びパネル固定枠の他の例の一部縦断面図である。
【
図10】この発明の実施の形態例1の水素吸蔵合金タンクの断面図である。
【
図11】この発明の実施の形態例1の制御コントローラの全体的な構成を例示的に示す概念図である。
【
図12】この発明の実施の形態例1の制御コントローラ50の動作の流れを示す流れ図である。
【
図13】この発明の実施の形態例1の制御コントローラ50の動作の流れを示す流れ図である。
【
図14】この発明の実施の形態例1の制御コントローラ50の動作の流れを示す流れ図である。
【
図15】P-C-T曲線のイメージ図であって、(a)はプラトー特性(プラトー領域における特性)が平坦なものを示しており、(b)はプラトー特性(プラトー領域における特性)が傾斜しているものを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態例1)
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態例1を詳細に説明する。ただし、本実施の形態例に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
図1は、本実施の形態例1に係る水素残量予測システムの概略構成図である。水素残量予測システムを構成する機器は、水素吸蔵合金タンクカードルAに収納されている。
【0026】
<水素残量予測システムの構成>
水素吸蔵合金タンクカードルAは、中空密閉式の筐体1から構成されている。そして、
図2に示すように、当該筐体1内に、多数の水素吸蔵合金タンク2が、相互に間隔を空けて収納されている。これらの多数の各水素吸蔵合金タンク2は、任意の大気温度環境下で外部熱源なしに水素を吸蔵・放出可能である。
【0027】
図1示すように、上記水素吸蔵合金タンク2の長手方向に沿った筐体1の一端部には、タンク配管の集管部であるヘッダー3が設けられている。そして、筐体1のヘッダー3側の一端部の左右側板に夫々、第1自動開閉シャッター4が設けられている。また、上記水素吸蔵合金タンク2の長手方向に沿った筐体1の他端部には第2自動開閉シャッター5が設けられている。そのため、大気等による冷風又は温風は、第2自動開閉シャッター5側が上流となり、第1自動開閉シャッター4側が下流となって流れる。また、第1自動開閉シャッター4及び第2自動開閉シャッター5は自動開閉式となっている。なお、上記第1自動開閉シャッター4や上記第2自動開閉シャッター5は、筐体1の一端部の左右側板ではなく、筐体1の一端部の上下の側板に夫々設ける構成としても良い。
【0028】
また、筐体1の上記他端部の内部であって、前記水素吸蔵合金タンク2の端部にはラジエータチャンバー6が設けられ、当該ラジエータチャンバー6内にラジエータ7及び送風ファン8が収納されている。このラジエータ7及び送風ファン8により、冷風又は温風が筐体1内に流れるようになっており、前記ラジエータ7内に、燃料電池の排熱水、又は外部機器である冷・温水機の循環水等を供給できるようになっている。
【0029】
また、
図1に示すように、筐体1の上部には、当該筐体1の上記一端部と他端部、即ち送風の下流側と上流側を、筐体1の外部でつなぐダクト9が設けられている。当該ダクト9は、筐体1の長手方向両端部の上面に夫々、孔を開け、当該各孔に両端を接続したものである。また、このダクト9はカバー10で被われている。
【0030】
図4に示すように、前記筐体1内には、前記多数の水素吸蔵合金タンク2が三段のタンク支持材11によって分けて支持され、各段に3個の水素吸蔵合金タンク2が間隔を空けて並べられている。各タンク支持材11には、冷風又は温風の流れ性を向上させるため、台形断面の剛性平板からなり、前記各水素吸蔵合金タンク2の長手方向に間隔を空けて、長手方向に直角な方向に並べられている。これにより冷風又は温風の流れに対して、障害物の投影面積を低減している。
【0031】
次に、前記第1自動開閉シャッター4及び第2自動開閉シャッター5について
図5~
図9に基づいて、詳しく説明する。
【0032】
図5及び
図6は第1及び第2自動開閉シャッター4、5の双方を示すもので、
図5は第1及び第2自動開閉シャッター4、5が開口部15を開いた状態を示し、
図6は第1及び第2自動開閉シャッター4、5が開口部15を閉じた状態を示す。
【0033】
第1及び第2自動開閉シャッター4、5は断熱性能を有する材質からなるスライドパネル16から成り、筐体1の側板1aの四辺形の前記開口部15を閉塞可能となっている。従って、スライドパネル16は開口部15の四辺より大きい四辺を有する構成となっている。なお、断熱構成は、従来の自動開閉シャッターで用いられるような数mm厚の鉄板に対して少なくとも数十倍以上の熱抵抗値を有するものとし、例えば樹脂(ソリッド)材や発泡樹脂材や、グラスウールやロックウールなどの繊維材などが使われる。
【0034】
そして、当該開口部15及び当該開口部15に隣接する側板1aの上方、下方にパネル固定枠17が設けられ、こられのパネル固定枠17に前記スライドパネル16の上下縁を嵌めて、当該上下のパネル固定枠17に沿って摺動自在となっている。
【0035】
前記パネル固定枠17は、
図8に示すように、断面L字型を成し、その内面に低摩擦材18を設けている。また、
図7に示すように、当該パネル固定枠17と対向する筐体1の側板1aにもパネル固定枠17に沿って低摩擦材18aが貼られており、さらに、前記開口部15の周縁の側板1aにも前記低摩擦材19が貼られている。
【0036】
図8に示すように、前記スライドパネル16と接するパネル固定枠17の内周面及び開口部15を閉じた状態で当該スライドパネル16の内側面が接する前記筐体1の側板1aにそれぞれ低摩擦材18、18a、19を設けることで、スライドパネル16のスライドにおける摺動力の軽減が行え、摺動機構部の簡素化が行える。また、当該接触面の経年的な摩擦も低減できるといった効果もある。これらの低摩擦材には、ポリテトラフルオロエチレンといったフッ素系樹脂や自己潤滑性のあるポリアミド系樹脂やポリアセタール系樹脂などが挙げられる。
【0037】
また、前記パネル固定枠17は、
図5~
図6及び
図8で示すように、その両端部をボルト20aとナット20bにより側板1aに固定されており、当該ボルト20aに、ナット20bを締め付けることにより、スライドパネル16を筐体1の側板1aに押し付ける構成となっている。パネル固定枠17が筐体1に対してボルト20aとナット20bで固定されているため、ボルト20a又はナット20bの締め付け具合により、パネル固定枠17によるスライドパネル16の筐体1への押し付け度合いを調整し易い。
【0038】
従って、前記開口部15をスライドパネル16で塞いだ際、スライドパネル16の内側面は低摩擦材19に圧接し、密閉される。しかもスライドパネル16の摺動時はパネル固定枠17の内周面の低摩擦材18及び当該パネル固定枠17に対向する筐体1の側板1aの低摩擦材18aにスライドパネル16の上下端縁が接触するため、スライドが容易となっている。また、スライドパネル16はエアーシリンダー21により駆動する構成となっている。なお、当該エアーシリンダー21は、これに限らず、電動シリンダー等、他の駆動機器でもよい。このように、エアーシリンダー21等を用いて、スライドパネル16を駆動させる構成であるため、開閉制御しやすい。
【0039】
また、
図8の前記パネル固定枠17の内周に低摩擦材18及び当該パネル固定枠17に対向する筐体1の側板1aに低摩擦材18aを貼る構成に代えて、
図9に示すように、スライドパネル16の筐体1の側板1aと接する内側面及びパネル固定枠17に接する箇所に低摩擦材22を貼ることによりスライドパネル16の摺動を容易にすることもできる。さらに、スライドパネル16自体を低摩擦素材から構成してもよい。このように、スライドパネル16が接する筐体1外面及びパネル固定枠17の内面を低摩擦材で構成している、あるいは、スライドパネル16の全面が低摩擦材で被われている構成であるため、筐体1の各開口部15の開閉の際、スライドパネル16がスムーズに動き、自動開閉を安易かつ確実に行うことができる。
【0040】
また、
図8及び
図9に示すように、前記筐体1の内周には、15mm程の断熱材である発泡材23を貼り、また、前記ダクト9の外周にも断熱材(図示省略)を被覆する。
【0041】
以上の通り、筐体1の開口部15を開閉させるシャッター構造を摺動自在なスライドパネル16とし、当該スライドパネル16を筐体1の外面に押圧する構成となっているため、開口部15を閉じた際の密閉性を極めて高くすることができる。また、スライドパネル16であるため当該パネルの厚さや材質によって熱抵抗を容易に調整でき、筐体1の熱抵抗に合わせることができる。従って、筐体1内部の温度を保持し易い。そして、筐体1の両端の開口部を開閉するシャッター4、5を自動開閉機構としながら、筐体1内の温度と大気との温度差を13°C以上として外部からの熱供給なしに5時間以上保持できる。従って、このように、密閉性を高く、大気熱遮断性を向上させることにより、水素吸蔵合金タンク2を収納する筐体1に冷風又は温風を効率的に供給することができる。
【0042】
なお。上記実施の形態例1ではパネル固定枠17は断面L字型の構成を示したが、この構成に限定されるわけではなく、例えば、断面U字型、V字型でもよい。さらに、細長い板体でもよく、その場合、筐体1の側板1aに対して下端縁のみを当接させ、当該下端縁から斜め上方に上端縁が伸び、両端部が折れ曲がって当該両端部のみを前記側板1aに当接させて、当該箇所で側板1aに固定する構成でも良い。
【0043】
また、上記実施の形態例1では筐体1の側板1aの開口部15の上下にパネル固定枠17を設け、スライドパネル16を左右方向に摺動させる構成を示したが、パネル固定枠17を開口部15の左右方向に設け、スライドパネル16を上下方向に摺動させる構成としても良い。
【0044】
次に、水素吸蔵合金タンク2の構造について、詳しく説明する。
【0045】
【0046】
この水素吸蔵合金タンク2に使用するタンク本体24は、一端が塞がれた筒体からなり、他端の開口部を図外の蓋で被い、内部を密閉するものである。また、タンク本体24は鉄、アルミ、ステンレス等、種々の材質のものがある。
【0047】
またこのタンク本体24には、例えば、銅製の放射フィン26が嵌め入れられている。
図10に示すように、放射フィン26は、芯材27の外周から放射状に多数のフィン28が突出し、各フィン28が芯材27の軸方向に伸びている。
【0048】
各フィン28の外端縁はタンク本体24の内周壁面に近接している。そして、この放射フィン26の各フィン28に区切られた小室29に水素吸蔵合金粉末30が充填されている。なお、水素吸蔵合金粉末30は、P-C-T曲線におけるプラトー領域での最大吸蔵点と最低吸蔵点の圧力差が、常温(25℃)環境下0.1MPa(メガパスカル)以上で、プラトー特性が傾斜している。
【0049】
このようにして、水素吸蔵合金粉末30と銅製の放射フィン26との接触面積を広くすることで、合金反応熱をより速やかに水素吸蔵合金タンク2表面に伝達させて、水素吸蔵合金タンク2外への放熱を促進させ、その結果、高速な水素吸蔵・放出を可能にする。更に、放射フィン26を銅製としたため、放熱性がより優れ、水素の吸蔵及び放出の速度が一段と向上する。
【0050】
なお、本実施の形態例1では、放射フィン26を銅製のものとしたが、この構成に限定されるわけではなく、放射フィン26を鉄やアルミ製とし、少なくともその外周層に銅又は銅と同程度の熱伝導率のものを設けたものでもよい。
【0051】
<測定器の構成>
図1に示すように、筐体1には、筐体1内の温度を測定する筐体温度センサー41(
図1中には、「CT」とも記載されている)、水素吸蔵合金タンク2表面の温度を測定するタンク温度センサー42(
図1中では、「T」とも記載され、3個設けられている)、水素吸蔵合金タンク2内部の圧力を測定する圧力計43(
図1中には、「P」とも記載されている)、水素吸蔵合金タンク2内に吸蔵された水素の流量を測定する、吸蔵側の流量計44a(
図1中には、「Fa」とも記載されている)、水素吸蔵合金タンク2内から放出された水素の流量を測定する、放出側の流量計44b(
図1中には、「Fb」とも記載されている)が設けられている。
【0052】
<制御コントローラ50の構成>
また、これらの測定器から測定結果を受信して、冷風や温風の供給を制御する制御コントローラ(制御手段)50が設けられている。詳しくは、当該制御コントローラ50は、測定器から受信した測定結果に基づき、前記第1自動開閉シャッター4及び第2自動開閉シャッター5の開閉を行うと共に、外部機器である冷・温水機からの冷・温水又は燃料電池の排熱水の筐体1内への導入を制御したり、送風ファン8の稼働を制御する情報処理装置である。また、制御コントローラ50は、水素吸蔵合金タンク2の水素残量の予測を行う。
【0053】
制御コントローラ50は、
図11に示すように、CPU51(=Central Processing Unit、制御手段の一例)と、RAM52(=Random Access Memory)、ROM53(=Read Only Memory)、HD54(=Hard Disk、記憶手段の一例)、表示手段55、計時手段56、インタフェイス57、これらの機器を接続するバス58を有している。
【0054】
CPU51は、HD54等に記憶されているアプリケーションプログラム、オペレーティングシステム(OS)や制御プログラム等を実行し様々な機能を実現する。また、RAM52にプログラムの実行に必要な情報、ファイル等を一時的に記憶させる。
【0055】
RAM52は各種データ、プログラム等を一時的に記憶するためのものであり、CPU51の主メモリ、ワークエリア等として機能する。ROM53は、内部に基本I/Oプログラム等のプログラム、基本処理において使用する各種データ等を記憶する。
【0056】
HD54は補助記憶装置であり、大容量メモリとして機能する。HD54には、アプリケーションプログラム、OS、制御プログラム、関連プログラム等を記憶する。
【0057】
また、HD54内には、ステータス情報記憶領域541と、数式情報記憶領域542が設けられている。
【0058】
ステータス情報記憶領域541には、水素を水素吸蔵合金タンク2に吸蔵している「吸蔵状態」であるのか、水素吸蔵合金タンク2から水素を放出している「放出状態」であるのかといったステータス情報が記憶されている。なお、CPU51は、ステータスを判定すると、当該最新のステータス情報を、ステータス情報記憶領域541に記憶されている過去のステータス情報に上書きして記憶する。
【0059】
数式情報記憶領域542には、水素吸蔵合金タンク2の表面温度と水素吸蔵合金タンク2内部の水素吸蔵合金粉末30の温度の差と、水素吸蔵流量・放出流量の関係式(タンク内部の熱伝達性を示す設計式)に係る以下の数1と、合金の温度変化に対するP-C-T曲線変化式(P-C-T関数)における圧力の補正に係る以下の数2と、P-C-T関数に係る以下の数3が記憶されている。また、数式情報記憶領域542には、積算補正式に係る以下の数4が記憶されている。
【0060】
水素吸蔵合金は、水素の吸蔵で発熱反応、水素の放出で吸熱反応となる。よって水素流量が合金からの熱出力に相当し、合金からの熱出力を水素流量で表すことができる。
【0061】
数1は、合金からの熱出力が、タンク容器(タンク表面)に輸送される際の平衡状態おける、タンク表面温度と合金温度との関係を示したものである。なお、この数1は、当該タンクの実験データから導かれた、経験式である。
【0062】
【0063】
FLa=実際の水素吸蔵流量測定値、FLd=実際の水素放出流量測定値、
T0=実際のタンク表面温度測定値、ΔT=タンク表面と合金の温度差
T=合金温度 ※ACとDCは経験定数が入る。
【0064】
水素吸蔵・放出時の水素吸蔵合金の平衡圧力は、熱力学におけるVan’t Hoffの式により、温度の関数として扱うことができる。
【0065】
数2は、合金温度が温度(T2)を基準としたときの任意の合金温度(T)の変化による平衡圧力の変化割合をtermとして示したものである。このP0をtermで除することにより、任意の温度における合金の水素吸蔵または放出における平衡圧力Pが求まる。式中のA1には合金の水素吸蔵・放出におけるエンタルピーの変化を示す定数が入り、A2には水素吸蔵・放出におけるエントロピーの変化を示す定数が入る。このA1とA2は、基準合金温度T2下における、当該合金のP-C-T曲線の測定結果から導かれる。
【0066】
【0067】
「吸蔵」の場合と「放出」の場合で式は2種類。
上記数2のT以外の記号には、経験定数が入る。
【0068】
数3は、基準合金温度T2により実測したP-C-T曲線データから、近似式として定式化したものである。低圧、中圧、高圧と合金平衡圧力を3分類し、それぞれの圧力範囲で、近似式を構築した。なお中圧の範囲が、プラトー領域を意味する。更に各圧の中で「吸蔵」と「放出」の場合とで2つに分けられているため、式は6種類となる。なお、この数3は、本実施形態例1での一例であり、基準合金温度T2によるP-C-T曲線を十分近似できるものであれば、どのような関数でも良い。
【0069】
【0070】
Fh=水素貯蔵量、P=合金の平衡圧力(吸蔵圧、放出圧)
数3のFh以外の記号には、経験定数が入る。
【0071】
水素残量の予測値が算出されたら、次の予測のタイミングまで、流量計44からの離散的平均流量値を積算してゆくことで、水素残量を表示手段55上等に、随時表示できるようにする。数4のFiは吸蔵放出流量の離散平均値であり、Sはその平均値のデータセット時間(min)である。この平均値にデータセット時間をかけることで、各データセットにおける水素量が求まり、この水素量を予測値に積算することで、次の予測タイミングまでの貯蔵量を求めることができる。なおFiは吸蔵時はプラス値、放出時はマイナス値とすることで、積算から水素残量を求めることができる。
【0072】
【0073】
Qi=最終予測値(L)、Qe=P-C-T予測値(L)、
Fi=流量離散平均値(L/min)、S=時定数(min)
【0074】
表示手段55は、例えば液晶ディスプレイ、ドットマトリクスディスプレイであり、算出された水素残量予測値等を表示するものである。
【0075】
計時手段56は、現在時刻を計測するリアルタイムクロックとしての役割と、所定の時間を計測するタイマとしての役割を果たす。
【0076】
57はインタフェイスであり、このインタフェイス57を介して、制御コントローラ50は、筐体温度センサー41、第1自動開閉シャッター4等の他の装置との情報や命令のやり取りを行う。バス58は、制御コントローラ50内の情報・命令の流れを司るものである。
【0077】
<CPU51の動作:水素吸蔵合金タンク2の水素残量の予測>
次に、水素吸蔵合金タンク2の水素残量の予測を実行する際の、制御コントローラ50に係るCPU51の動作について説明する。最初に、水素を水素吸蔵合金タンク2に吸蔵しておらず、水素吸蔵合金タンク2から水素を放出してもいない、つまり、水素の流量がゼロ状態における、水素吸蔵合金タンク2の水素残量の予測を実行する際の動作を、
図12を使用して説明する。
【0078】
CPU51は、吸蔵側の流量計44aと、放出側の流量計44bの測定結果に基づき、現在、水素を水素吸蔵合金タンク2に吸蔵している「吸蔵状態」であるか、水素吸蔵合金タンク2から水素を放出している「放出状態」であるかといったステータスを判定する(ステップS121)。CPU51は、このステータス判定を常時行い、判定結果をステータス情報記憶領域541に記憶する。
【0079】
CPU51は、上記判定の結果、水素吸蔵合金タンク2への吸蔵又は水素吸蔵合金タンク2からの放出が所定の流量以下(例えば、2L/min以下)になったと判断すると、第1自動開閉シャッター4及び第2自動開閉シャッター5を閉めさせ、また、外部機器である冷・温水機の循環水等のラジエータ7への供給を停止させ、断熱状態をつくる(ステップS122)。
【0080】
CPU51は、吸蔵側の流量計44aおよび放出側の流量計44bの測定値を参照し、吸蔵状態ないし放出状態に移行しないこと(測定値が所定の値以下であること)を監視しながら、所定(一定)の時間(例えば、1時間)の経過を待つ(ステップS123)。この待機は、各機器の顕熱が平衡状態になるのを待っているのである。平衡状態では、「水素吸蔵合金タンク2の表面温度≒水素吸蔵合金粉末30の温度」となるので、合金温度の変化によるP-C-T曲線変化式(P-C-T関数)により、水素吸蔵合金タンク2内の水素残量を算出(予測)できる。なお、各機器の顕熱が平衡状態になったか否かは、上記の方法の代わりに、あるいは、上記の方法に加えて、筐体温度センサー41で測定しているカードル内温度とタンク表面温度との温度差により、CPU51が判断する方法としても良い。この温度差が所定値(例えば1℃)未満になったら、CPU51は、各機器の顕熱が平衡状態になったと判断する。
【0081】
CPU51は、タンク温度センサー42に水素吸蔵合金タンク2表面の温度の測定を実行させ、また、圧力計43に水素吸蔵合金タンク2内部の圧力の測定を実行させる(ステップS124)。そして、各測定結果を出力させて、受信する。
【0082】
次に、水素残量の算出を行う(ステップS125)。以下、詳しく説明する。CPU51は、水素吸蔵合金タンク2への吸蔵及び水素吸蔵合金タンク2からの放出が所定の流量以下になる直前のステータス情報(=「吸蔵状態」、あるいは「放出状態」)を、ステータス情報記憶領域541から呼び出す。その後、CPU51は、数式情報記憶領域542から、圧力補正に係る数2(本実施の形態例1では「吸蔵」と「放出」の2種類)の中から適切な圧力補正式を呼び出して、圧力計43からの圧力測定値(圧力値)に対して、温度測定値を使って補正を行う。
【0083】
吸蔵状態ないし放出状態のステータス情報と、補正後の圧力値に基づき、数式情報記憶領域542に格納されている数3(本実施の形態例1では6種類)から適切なP-C-T関数を選択して呼び出す。そして、CPU51は、呼び出したP-C-T関数を使用して、水素吸蔵合金タンク2の水素残量(水素貯蔵量)を予測(算出)する(P-C-T予測値)。
【0084】
次に、水素を水素吸蔵合金タンク2に吸蔵している、あるいは水素吸蔵合金タンク2から水素を放出している、つまり、水素の流量が発生している状態における、水素吸蔵合金タンク2の水素残量の予測を実行する際のCPU51の動作を、
図13を使用して説明する。
【0085】
CPU51は、吸蔵側の流量計44aと、放出側の流量計44bの測定結果に基づき、現在、水素を水素吸蔵合金タンク2に吸蔵している「吸蔵状態」であるか、水素吸蔵合金タンク2から水素を放出している「放出状態」であるかといったステータスを判定する(ステップS131)。CPU51は、このステータス判定を常時行い、判定結果をステータス情報記憶領域541に記憶する。
【0086】
CPU51は、「吸蔵状態」、あるいは「放出状態」が、所定の時間(例えば、1時間)連続していると判断すると、この連続した時間のうちの所定の時間(例えば、30分)の水素吸蔵合金タンク2の表面温度の値、水素吸蔵合金タンク2内部の圧力の値、吸蔵側の流量計44aの値(あるいは、放出側の流量計44bの値)の移動平均値を、平衡状態における値とみなす(ステップS132)。
【0087】
CPU51は、数式情報記憶領域542から、「水素吸蔵流量・放出流量」と「タンク表面と内部合金の温度差」の関係式に係る数1(本実施の形態例1では「吸蔵」と「放出」の2種類)の中から適切な関係式を呼び出して、当該関係式に基づき、水素吸蔵合金タンク2内部の水素吸蔵合金粉末30の温度を算出する(ステップS133)。
【0088】
CPU51は、圧力計43に水素吸蔵合金タンク2内部の圧力の測定を実行させる。そして、測定結果を出力させて、受信する。
【0089】
そして、CPU51は、合金温度の変化によるP-C-T曲線変化式(P-C-T関数)により、水素吸蔵合金タンク2内の水素残量を算出(予測)する(ステップS134)。以下、詳しく説明する。
【0090】
CPU51は、数式情報記憶領域542から、圧力補正に係る数2(本実施の形態例1では「吸蔵」と「放出」の2種類)の中から適切な圧力補正式を呼び出して、圧力計43からの圧力測定値(圧力値)に対して、温度測定値を使って補正を行う。
【0091】
CPU51は、吸蔵側の流量計44aと、放出側の流量計44bの測定結果により判定したステータス情報(=「吸蔵状態」、あるいは「放出状態」)を、ステータス情報記憶領域541から呼び出して、当該ステータス情報と、補正後の圧力値に基づき、数式情報記憶領域542に格納されている数3(本実施の形態例1では6種類)から適切なP-C-T関数を選択して呼び出す。そして、CPU51は、呼び出したP-C-T関数を使用して、水素吸蔵合金タンク2の水素残量(水素貯蔵量)を予測(算出)する(P-C-T予測値)。
【0092】
次に、水素残量の予測値を算出した(ステップS141)後のCPU51の動作について、
図14を使用して説明する。
【0093】
CPU51は、数式情報記憶領域542から積算補正式に係る数4を呼び出し、呼び出した積算補正式を使用して、水素残量の予測値(P-C-T予測値)を表示手段55にて表示させる(ステップS142)。以下、詳しく説明する。水素残量の予測値(P-C-T予測値)は、前述の2種類のどちらかの予測条件が満たされたタイミングで算出され表示されるが、どちらの条件も満たされない期間は、予測自体を行えない。そこで、予測が行えたら、次の予測が行えるまでの期間に限り、予測結果に吸蔵側の流量計44aと放出側の流量計44bの値の差を積算することで予測値を補完し、その値を表示手段55上に表示させる(ステップS142)。これを積算補正という。CPU51は、新たなP-C-T予測値の算出の準備が完了するまで、積算補正を繰り返す。
【0094】
新たなP-C-T予測値の算出の準備が完了した時点で、積算補正を停止する(ステップS143)。
【0095】
新たなP-C-T予測値が算出されると、その値を表示手段55上に表示させる(ステップS144)。その後、予測条件が満たされない期間になると、新たに算出された水素残量の予測値に吸蔵側の流量計44aと放出側の流量計44bの値の差を積算することで予測値を補完し、その値を表示手段55上に表示させる(ステップS142)。CPU51は、新たなP-C-T予測値の算出の準備が完了するまで、この積算補正を繰り返す。
【符号の説明】
【0096】
A:水素吸蔵合金タンクカードル
1:筐体、1a:側板、2:水素吸蔵合金タンク、3:ヘッダー、4:第1自動開閉シャッター、5:第2自動開閉シャッター、6:ラジエータチャンバー、7:ラジエータ、8:送風ファン、9:ダクト、10:カバー、11:支持材、15:開口部、16:スライドパネル、17:パネル固定枠、18:低摩擦材、18a:低摩擦材、19:低摩擦材、20a:ボルト、20b:ナット、21:エアーシリンダー、22:低摩擦材、23:発泡材、24:タンク本体、26:放射フィン、27:芯材、28:フィン、29:小室、30:水素吸蔵合金粉末、41:筐体温度センサー、42:タンク温度センサー、43:圧力計、44a:吸蔵側の流量計、44b:放出側の流量計、50:制御コントローラ、51:CPU、52:RAM、53:ROM、54:HD、541:ステータス情報記憶領域、542:数式情報記憶領域、55:表示手段、56:計時手段、57:インタフェイス、58:バス