(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】センシングシステム、情報処理装置、センシング方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2020219382
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】関 晴之
(72)【発明者】
【氏名】小杉 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 元也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊明
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163721(JP,A)
【文献】特開2006-250827(JP,A)
【文献】特開2016-212000(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/068395(JP,A1)
【文献】再公表特許第2019/035306(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/00-G01N21/958
G01V 1/00-G01V99/00
G01J 1/00-G01J11/00
G01N22/00-G01N22/04
G01S 7/00-G01S 7/64
G01S17/00-G01S17/95
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体に設置されるセンシングシステムであって、
前記飛翔体の進行方向に対して下方に第1ピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、
前記第1方向から入射した前記第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、
前記飛翔体の進行方向に対して下方に前記第1ピッチ角と異なる第2ピッチ角をなす第2方向から入射した前記第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサと、
前記順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、当該第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定する判定手段と、
前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、当該第1信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定し、前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、当該第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力する生成手段と、
を有し、
前記第1ピッチ角と前記第2ピッチ角の差は、5°から40°までの範囲に設定される、
を有することを特徴とするセンシングシステム。
【請求項2】
前記第1方向と前記第2方向の角度の差に基づいて、前記順次生成される第1信号及び第3信号のうち、同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第1信号及び第3信号を対応付ける対応付け手段をさらに有し、
前記生成手段は、前記対応付け手段による対応付け結果に基づいて、前記第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号を特定する、
請求項1に記載のセンシングシステム。
【請求項3】
前記飛翔体の位置及び姿勢に関する情報を取得する取得手段をさらに有し、
前記対応付け手段は、前記飛翔体の位置及び姿勢にさらに基づいて、前記第1信号及び前記第3信号を対応付ける、
請求項2に記載のセンシングシステム。
【請求項4】
前記第1波長域は、可視波長域であり、
前記第2波長域は、近赤外波長域である、
請求項1~3の何れか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項5】
前記順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、当該第1信号に対応する電磁波の観測対象での反射率を算出する算出手段をさらに有し、
前記判定手段は、前記反射率に基づいて、前記第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定する、
請求項1~4の何れか一項に記載のセンシングシステム。
【請求項6】
前記第2センサは、さらに前記飛翔体の上方から入射した電磁波を検出可能に設けられ、
前記算出手段は、前記飛翔体の上方から入射した電磁波に応じた第2信号に基づいて、前記観測対象での反射率を補正する、
請求項5に記載のセンシングシステム。
【請求項7】
飛翔体に設置され、且つ、前記飛翔体の進行方向に対して下方に
第1ピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、前記第1方向から入射した前記第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、前記飛翔体の進行方向に対して下方に前記
第1ピッチ角と異なる
第2ピッチ角をなす第2方向から入射した前記第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサと、を有するセンシング装置から、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号を取得する取得手段と、
前記順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、当該第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定する判定手段と、
前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、当該第1信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定し、前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、当該第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力する生成手段と、
を有し、
前記第1ピッチ角と前記第2ピッチ角の差は、5°から40°までの範囲に設定される、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
飛翔体に設置され、且つ、前記飛翔体の進行方向に対して下方に
第1ピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、前記第1方向から入射した前記第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、前記飛翔体の進行方向に対して下方に前記
第1ピッチ角と異なる
第2ピッチ角をなす第2方向から入射した前記第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサとから、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号を取得し、
前記順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、当該第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定し、
前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、当該第1信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定し、前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、当該第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力する、
ことを含み、
前記第1ピッチ角と前記第2ピッチ角の差は、5°から40°までの範囲に設定される、
ことを特徴とするセンシング方法。
【請求項9】
コンピュータを制御するプログラムであって、
飛翔体に設置され、且つ、前記飛翔体の進行方向に対して下方に
第1ピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、前記第1方向から入射した前記第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、前記飛翔体の進行方向に対して下方に前記
第1ピッチ角と異なる
第2ピッチ角をなす第2方向から入射した前記第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサとから、前記第1信号、前記第2信号及び前記第3信号を取得し、
前記順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、当該第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定し、
前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、当該第1信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定し、前記順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、当該第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、当該第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力する、
ことを前記コンピュータに実行させ、
前記第1ピッチ角と前記第2ピッチ角の差は、5°から40°までの範囲に設定される、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシングシステム、情報処理装置、センシング方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光や近赤外線等の電磁波を用いて、航空機等から地表付近を観測するセンシングシステムが知られている。可視光を用いたセンシングシステムは、地表において反射された太陽光等の光の強度を、飛翔体に搭載された光学センサにより取得することで、地表付近を観測する。例えば、特許文献1には、相対的に移動する観測対象からの電磁波を検出して観測対象を観測するセンシング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、太陽光は地表において様々な方向に拡散されるため、センシングシステムは、拡散された光のうちの一部を光学センサによって検出する。一方で、河川や湖、海等の水面を観測する場合、太陽光が水面によって鏡面反射される場合がある。水面で鏡面反射された光は、川床や海底において拡散された光の強度をはるかに上回る強度を有するため、鏡面反射光が発生した場合、センシングシステムは、正しい観測を実施できない可能性がある。また、地上を観測する場合においても、道路が凍結している場合、又は太陽光パネル等の人工物が設置されている場合等に、同様の問題が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、鏡面反射が発生している場合でも適切に観測することが可能なセンシングシステム、情報処理装置、センシング方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセンシングシステムは、飛翔体に設置されるセンシングシステムであって、飛翔体の進行方向に対して下方に第1ピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、第1方向から入射した第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、飛翔体の進行方向に対して下方に第1ピッチ角と異なる第2ピッチ角をなす第2方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサと、順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、その第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定する判定手段と、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、その第1信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定し、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、その第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力する生成手段と、を有する。
【0007】
また、本発明に係るセンシングシステムにおいて、第1方向と第2方向の角度の差に基づいて、順次生成される第1信号及び第3信号のうち、同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第1信号及び第3信号を対応付ける対応付け手段をさらに有し、生成手段は、対応付け手段による対応付け結果に基づいて、第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号を特定することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係るセンシングシステムにおいて、飛翔体の位置及び姿勢に関する情報を取得する取得手段をさらに有し、対応付け手段は、飛翔体の位置及び姿勢にさらに基づいて、第1信号及び第3信号を対応付けることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係るセンシングシステムにおいて、第1波長域は、可視波長域であり、第2波長域は、近赤外波長域であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係るセンシングシステムにおいて、順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、その第1信号に対応する電磁波の観測対象での反射率を算出する算出手段をさらに有し、判定手段は、反射率に基づいて、第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るセンシングシステムにおいて、第2センサは、さらに飛翔体の上方から入射した電磁波を検出可能に設けられ、算出手段は、飛翔体の上方から入射した電磁波に応じた第2信号に基づいて、観測対象での反射率を補正することが好ましい。
【0012】
本発明に係る情報処理装置は、飛翔体に設置され、且つ、飛翔体の進行方向に対して下方に所定のピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、第1方向から入射した第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、飛翔体の進行方向に対して下方に所定のピッチ角と異なるピッチ角をなす第2方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサと、を有するセンシング装置から、第1信号、第2信号及び第3信号を取得する取得手段と、順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、その第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定する判定手段と、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、その第1信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定し、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、その第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力する生成手段と、を有する。
【0013】
本発明に係るセンシング方法は、コンピュータが、飛翔体に設置され、且つ、飛翔体の進行方向に対して下方に所定のピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、第1方向から入射した第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、飛翔体の進行方向に対して下方に所定のピッチ角と異なるピッチ角をなす第2方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサとから、第1信号、第2信号及び第3信号を取得し、順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、その第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定し、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、その第1信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定し、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、その第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力することを含む。
【0014】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを制御するプログラムであって、飛翔体に設置され、且つ、飛翔体の進行方向に対して下方に所定のピッチ角をなす第1方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成する第1センサと、第1方向から入射した第1波長域と異なる第2波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成する第2センサと、飛翔体の進行方向に対して下方に所定のピッチ角と異なるピッチ角をなす第2方向から入射した第1波長域の電磁波を検出可能に設けられ、検出した電磁波に応じた第3信号を順次生成する第3センサとから、第1信号、第2信号及び第3信号を取得し、順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、その第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定し、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、その第1信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定し、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、その第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定することにより、出力画像を生成して出力することをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るセンシングシステム、情報処理装置、センシング方法及びプログラムは、観測対象において鏡面反射が発生している場合でも適切に観測することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】センシングシステム1の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】センシング装置2内部の構成を説明するための模式図である。
【
図3】センシング装置2に入射される光について説明するための模式図である。
【
図4】センシング装置2の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】センサデータDのデータ構造の一例を示す図である。
【
図6】解析装置3の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】解析処理の流れの一例を示すフロー図である。
【
図8】(a)、(b)は、対応付けについて説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶことに留意されたい。
【0018】
図1は、本発明に係るセンシングシステム1の概略構成の一例を示す図である。センシングシステム1は、センシング装置2と、解析装置3とを有する。センシング装置2は、観測対象を観測するための光学センサ等の複数のセンサと、各センサを内蔵する筐体とから構成されるプラットフォームである。センシング装置2は、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)又はヘリコプター等の飛翔体4に搭載されて設置される。センシング装置2は、飛翔体4があらかじめ設定された高度で直線状の飛行経路に従って飛行している間に、飛翔体4の下方の観測対象からの可視光又は近赤外線等の電磁波を検出し、センサデータを生成する。なお、本実施形態では、センシング装置2は、可視波長域及び近赤外波長域の電磁波を検出する。本実施形態において、可視波長域及び近赤外波長域は、それぞれ340nm~850nm及び700nm~2500nmの波長帯をいうものとする。可視波長域及び近赤外波長域は、それぞれ第1波長域及び第2波長域の一例である。
【0019】
解析装置3は、サーバ又はPC(Personal Computer)等の情報処理装置である。解析装置3は、センシング装置2が生成した出力画像を受信して表示し、利用者による使用を可能とする。
【0020】
図2は、センシング装置2内部の構成を説明するための模式図である。センシング装置2は、第1レンズ201、第2レンズ202、拡散器203、光ファイバ束204、第3レンズ205、スイングミラー206、第1分光器207、第2分光器208、第1センサ209、第2センサ210及び第3センサ211等を有する。
図2において、矢印A1、A2、A3は、それぞれ飛翔体4の進行(前後)方向、左右方向、上下方向を示す。
【0021】
第1レンズ201及び第2レンズ202は、集光レンズであり、上下方向A3における下方から入射した電磁波(光)を光ファイバ束204に向けて集光する。第1レンズ201及び第2レンズ202は、望遠レンズである。第1レンズ201及び第2レンズ202は、左右方向A2において相互に異なる位置からの電磁波を集光可能に設けられる。第1レンズ201及び第2レンズ202として、左右方向A2に延伸するシリンドリカルレンズ、又は、光軸が平行になるように左右方向A2に沿って配置された複数のレンズが用いられる。第1レンズ201は、飛翔体4の進行方向A1に対して下方に第1ピッチ角をなす第1方向から入射した電磁波を集光可能に設けられる。第2レンズ202は、飛翔体4の進行方向A1に対して下方に第1ピッチ角と異なる第2ピッチ角をなす第2方向から入射した電磁波を集光可能に設けられる。
【0022】
例えば、第1ピッチ角は90°に設定され、第2ピッチ角は50°から85°又は95°から130°までの範囲に設定される。この場合、第1方向は、略鉛直方向であり、第2方向は、鉛直方向に対して前方又は後方に傾いた方向である。第1ピッチ角と第2ピッチ角の差が小さすぎると第1レンズ201及び第2レンズ202の両方に鏡面反射光が入射し、観測結果の欠損が補正されない可能性がある。また、第1ピッチ角と第2ピッチ角の差が大きすぎると第1レンズ201と第2レンズ202の間で観測対象の見え方が異なり、各レンズから入射した電磁波が適切に対応しない可能性がある。したがって、第1ピッチ角と第2ピッチ角の差は5°から40°までの範囲に設定されることが好ましい。
【0023】
拡散器203は、コサインコレクタであり、飛翔体4の上方、特に飛翔体4の進行方向A1に対して上方に90°をなす方向を中心とする180°の視野角から入射した電磁波を収集し、光ファイバ束204に出射する。拡散器203として、例えばCCSA1(ソーラボ社製)等のコサインコレクタが利用される。
【0024】
光ファイバ束204は、多芯ファイバであり、複数の光ファイバ204a~tを含む。各光ファイバ204a~tの一端は、第3レンズ205のレンズ面と対向するように配置される。光ファイバ204a~jの一端及び光ファイバ204k~tの一端は、それぞれ左右方向A2に沿って並べて配置される。各光ファイバ204k~tの一端は、上下方向A3において各光ファイバ204a~jの下側に並べて配置される。
【0025】
光ファイバ204a~d、f~iの他端は、第1レンズ201のレンズ面と対向するように、左右方向A2に沿って並べて配置される。光ファイバ204a~d、f~iは、第1レンズ201から入射された電磁波を導き、第3レンズ205に向けて出射する。同様に、光ファイバ204k~n、p~sの他端は、第2レンズ202のレンズ面と対向するように、左右方向A2に沿って並べて配置される。光ファイバ204k~n、p~sは、第2レンズ202から入射された電磁波を導き、第3レンズ205に向けて出射する。第1レンズ201から入射された電磁波を第3レンズ205に向けて出射する光ファイバの数、及び、第2レンズ202から入射された電磁波を第3レンズ205に向けて出射する光ファイバの数は、8に限られず、任意の数でよい。左右方向A2について光ファイバの数を多くすることにより測定の分解能を高くすることが可能となる。また、光ファイバをアレイ状に並べて光ファイバの数を多くすることにより進行方向A1における1回の測定での測定範囲を大きくして測定効率を向上させることも可能となる。ミラーは金属製反射体で構成してもよいし、発泡樹脂反射体(例えば古河電工製の超微細発泡光反射板(MCPET))で構成してもよい。なおスイングミラーに代えて正多角柱形状(光ファイバの数が8である実施形態においては正八角柱形状)のポリゴンミラーを用いることもできる。
【0026】
光ファイバ204j、tの他端は、拡散器203のレンズ面と対向するように配置される。光ファイバ204j、tは、拡散器203から入射された電磁波を導き、第3レンズ205に向けて出射する。光ファイバ204eの他端は、第1分光器207と対向するように配置される。光ファイバ204eは、第3レンズ205から入射された電磁波を導き、第1分光器207に向けて出射する。光ファイバ204oの他端は、第2分光器208と対向するように配置される。光ファイバ204oは、第3レンズ205から入射された電磁波を導き、第2分光器208に向けて出射する。
【0027】
第3レンズ205は、集光レンズであり、光ファイバ204a~d、f~n、p~tの一端側から入射された電磁波をスイングミラー206に向けて集光する。第3レンズ205は、平凸レンズである。
【0028】
スイングミラー206は、第3レンズ205を介して光ファイバ束204と対向するように配置される。スイングミラー206は、後述するモータにより、上下方向A3を揺動軸(回転軸)として、所定範囲内で揺動(回転)可能に設けられる。スイングミラー206は、反射面が、光ファイバ束204の一方の端部に配置された光ファイバ204a、kの一端からの電磁波を光ファイバ204e、oの一端に向けて反射させる第1位置から、光ファイバ束204の他方の端部に配置された光ファイバ204j、tの一端からの電磁波を光ファイバ204e、oの一端に向けて反射させる第2位置まで揺動可能に設けられる。スイングミラー206は、一定周期毎に、第1位置から第2位置への揺動(回転)と、第2位置から第1位置への揺動(回転)とを交互に繰り返す。
【0029】
第1分光器207は、入射した電磁波を可視波長域の電磁波と、近赤外波長域の電磁波とに分光し、それぞれ第1センサ209及び第2センサ210に向けて出射する。第2分光器208は、入射した電磁波を可視波長域の電磁波と、近赤外波長域の電磁波とに分光し、可視波長域の電磁波を第3センサ211に向けて出射する。即ち、第1分光器207及び第2分光器208から出射される各波長域の電磁波には、飛翔体4の下方から入射した電磁波及び飛翔体4の上方から入射した電磁波が含まれる。
【0030】
第1センサ209は、第1分光器207から出射された可視波長域の電磁波を検出可能に設けられ、一定周期毎に、検出した電磁波に応じた第1信号を順次生成し、出力する。第1センサ209は、検出した電磁波の強度が大きいほど信号値が大きくなるように第1信号を生成する。第2センサ210は、第1分光器207から出射された近赤外波長域の電磁波を検出可能に設けられ、一定周期毎に、検出した電磁波に応じた第2信号を順次生成し、出力する。第2センサ210は、検出した電磁波の強度が大きいほど信号値が大きくなるように第2信号を生成する。第3センサ211は、第2分光器208から出射された可視波長域の電磁波を検出可能に設けられ、一定周期毎に、検出した光に応じた第3信号を順次生成し、出力する。第3センサ211は、検出した電磁波の強度が大きいほど信号値が大きくなるように第3信号を生成する。
【0031】
第1センサ209及び第3センサ211として、例えば可視光域に対応した分光輝度計であるC12880MA(浜松ホトニクス社製)が利用される。第2センサ210として、例えば近赤外域に対応した分光輝度計であるC14486GA(浜松ホトニクス社製)が利用される。
【0032】
図3は、センシング装置2に入射する光について説明するための模式図である。第1レンズ201には、観測対象F上において、センシング装置2に対して第1方向に延伸する直線上に位置する、左右方向A2に延伸した領域S1で反射した太陽光が入射する。第1レンズ201と対向する光ファイバ204a~d、f~iには、それぞれ領域S1内の対応する領域S11~S18で反射した太陽光が集光されて入射される。同様に、第2レンズ202には、観測対象F上において、センシング装置2に対して第2方向に延伸する直線上に位置する、左右方向A2に延伸した領域S2で反射した太陽光が入射される。第2レンズ202と対向する光ファイバ204k~n、p~sには、それぞれ領域S2内の対応する領域S21~S28で反射した太陽光が集光されて入射される。
【0033】
各領域S1、S2の大きさは、レンズから観測対象Fまでの距離とレンズの焦点距離とに基づいて定まる。第1方向が鉛直方向であり、第2方向が鉛直方向に対して傾いた方向であり、且つ、観測対象Fが平面である場合、第2レンズ202から領域S2までの距離は、第1レンズ201から領域S1までの距離よりも大きい。後述するように、第2レンズ202から集光した電磁波は、第1レンズ201から集光した電磁波に応じて生成される第1信号を置換するために使用される。したがって、領域S2の大きさは、領域S1の大きさと同一となるように定められる必要がある。領域S2の大きさを領域S1の大きさと同一にするために、第2レンズ202の焦点距離は、第1レンズ201の焦点距離のcosθ倍となるように定められる。ここで、θは第1ピッチ角θ1と第2ピッチ角θ2の差、即ち第1方向と第2方向とがなす角の大きさである。
【0034】
一方、
図2に示すように、拡散器203には太陽光が入射され、光ファイバ204j、tには、拡散器203で収集された太陽光が入射される。
【0035】
光ファイバ204a~d、f~j、k~n、p~tから出射した電磁波は、第3レンズ205によりスイングミラー206に向けて集光される。上記したように、各光ファイバ204k~tの一端は、上下方向A3において各光ファイバ204a~jの下側に並べられ、スイングミラー206は、上下方向A3を揺動軸として揺動する。スイングミラー206の揺動に伴って、上下方向A3に並ぶ光ファイバ204a~d、f~jと光ファイバ204k~n、p~tの各ペアの中の何れかのペアからの電磁波が、選択的に光ファイバ204e及び光ファイバ204oに向けて反射される。
【0036】
光ファイバ204e及び光ファイバ204oから出射した電磁波は、それぞれ第1分光器207及び第2分光器208に入射され、可視波長域の電磁波と、近赤外波長域の電磁波とに分光される。第1分光器207により分光された可視波長域の電磁波及び近赤外波長域の電磁波は、それぞれ第1センサ209及び第2センサ210に入射され、第2分光器208により分光された可視波長域の電磁波は、第3センサ211に入射される。これにより、第1センサ209及び第2センサ210には、領域S11、領域S12、領域S13、領域S14、領域S15、領域S16、領域S17、領域S18又は拡散器203からの可視波長域及び近赤外波長域の電磁波が選択的に順次入射される。また、第3センサ211には、第1センサ209に入射される電磁波に対応する領域に対応する領域S2内の領域又は拡散器203からの可視波長域の電磁波が選択的に順次入射される。第1センサ209、第2センサ210及び第3センサ211には、スイングミラー206が第1位置と第2位置の間で揺動する間に各領域及び拡散器203からの電磁波が順次入射され、スイングミラー206が第1位置と第2位置の間で揺動するたびに各領域及び拡散器203からの電磁波が繰り返し入射される。
【0037】
即ち、第1センサ209は、第1方向から入射した可視波長域の電磁波を検出可能に設けられる。第2センサ210は、第1方向から入射した近赤外波長域の電磁波を検出可能に設けられる。第3センサ211は、第2方向から入射した可視波長域の電磁波を検出可能に設けられる。
【0038】
図4は、センシング装置2の概略構成を示すブロック図である。センシング装置2は、前述した構成に加えて、モータ221、GPS(Global Positioning System)センサ222、6軸センサ223、第1通信部224、第1記憶部225及び第1処理部230等をさらに有する。
【0039】
モータ221は、第1処理部230からの制御信号に従ってスイングミラー206を揺動させる。
【0040】
GPSセンサ222は、GPS衛星からの電波を受信するためのアンテナ及び受信回路を備える。GPSセンサ222は、アンテナを介して受信されたGPS衛星からの電波を受信回路において受信して、センシング装置2の位置を示す位置情報及び絶対時刻を示す時刻情報を生成し、第1処理部230に供給する。
【0041】
6軸センサ223は、相互に直交する3軸方向に対応する加速度センサ及びジャイロセンサを備える。6軸センサ223は、所定の周期で3軸方向のセンシング装置2の加速度及び角速度を取得して、センシング装置2の姿勢に関する姿勢情報(姿勢変化量)及び移動ベクトル(相対位置)を生成し、第1処理部230に供給する。
【0042】
第1通信部224は、センシング装置2を解析装置3と通信可能にするために、例えば有線LAN(Local Area Network)又はUSB(Universal Serial Bus)等の通信インタフェース回路を備える。第1通信部224は、第1処理部230から供給されたデータを解析装置3に送信し、解析装置3から受信したデータを第1処理部230に供給する。
【0043】
第1記憶部225は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリを備える。第1記憶部225は、第1処理部230による処理に用いられるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。第1記憶部225は、データとして、センサデータ等を記憶する。センサデータの詳細については後述する。
【0044】
第1処理部230は、例えばCPU(Central Processing Unit)を備える。第1処理部230は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。第1処理部230は、第1センサ209、第2センサ210、第3センサ211、モータ221、GPSセンサ222、6軸センサ223、第1通信部224及び第1記憶部225等と接続され、これらの各部を制御する。第1処理部230は、第1記憶部225に記憶されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従って動作することにより、取得手段231、対応付け手段232、算出手段233、判定手段234、出力手段235及び生成手段236として機能する。
【0045】
図5は、第1記憶部225に記憶されるセンサデータDのデータ構造の一例を示す図である。センサデータDは、時刻、位置、姿勢、第1信号値、第2信号値、第3信号値等を相互に関連付けて記憶する。センサデータDは、センシング装置2を搭載する飛翔体4が飛行している間に各センサから所定の周期で第1処理部230に供給される各情報を、第1処理部230が相互に関連付けて第1記憶部225に記憶することにより生成される。
【0046】
時刻は、センサデータDに示される各情報が取得された時刻であり、GPSセンサ222によって生成される時刻情報に基づいて算出される。位置は、GPSセンサ222によって生成される位置情報及び6軸センサ223によって生成される移動ベクトルに基づいて算出される、各時刻におけるセンシング装置2の位置を示すデータであり、例えば緯度及び経度を含む。姿勢は、6軸センサ223によって生成される姿勢情報に基づいて算出される、各時刻におけるセンシング装置2の姿勢を示すデータであり、3軸方向の加速度及び角速度を含む。第1信号値は、各時刻において、第1センサ209により、各光ファイバ204a~d、f~jからの可視波長域の電磁波に応じて生成された各第1信号の信号値のセットである。第2信号値は、各時刻において、第2センサ210により、各光ファイバ204a~d、f~jからの近赤外波長域の電磁波に応じて生成された各第2信号の信号値のセットである。第3信号値は、各時刻において、第3センサ211により、各光ファイバ204k~n、p~tからの可視波長域の電磁波に応じて生成された各第3信号の信号値のセットである。
【0047】
図6は、解析装置3の概略構成を示すブロック図である。解析装置3は、第2通信部324、第2記憶部325、表示部326及び第2処理部330等を備える。
【0048】
第2通信部324は、解析装置3をセンシング装置2と通信可能にするために、例えば有線LAN又はUSB等の通信インタフェース回路を備える。第2通信部324は、第2処理部330から供給されたデータをセンシング装置2に送信し、センシング装置2から受信したデータを第2処理部330に供給する。
【0049】
第2記憶部325は、例えば半導体メモリを備える。第2記憶部325は、第2処理部330による処理に用いられるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。コンピュータ読み取り可能なCD-ROM、DVD-ROM等の可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。
【0050】
表示部326は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等から構成されるディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有する。表示部326は、第2処理部330からの指示に従って、各種の情報をディスプレイに表示する。
【0051】
第2処理部330は、例えばCPUを備える。第2処理部330は、LSI、ASIC、DSP、FPGA等を備えてもよい。第2処理部330は、第2通信部324、第2記憶部325及び表示部326等と接続され、これらの各部を制御する。
【0052】
図7は、センシング装置2によって実行される観測処理の流れの一例を示すフロー図である。観測処理は、センシング装置2が飛翔体4に搭載されて飛行している間に定期的に実行される。
【0053】
最初に、取得手段231は、モータ221を駆動してスイングミラー206を揺動させ、第1センサ209、第2センサ210及び第3センサ211から、各光ファイバからの電磁波に応じて生成された第1信号、第2信号及び第3信号をそれぞれ取得する。また、取得手段231は、GPSセンサ222及び6軸センサ223から位置情報、時刻情報、姿勢情報及び移動ベクトルをそれぞれ取得する。取得手段231は、取得した各信号の信号値を、位置情報、時刻情報、姿勢情報及び移動ベクトルから算出される現在時刻、現在位置及び現在姿勢と関連付けてセンサデータDとして第1記憶部225に記憶する(S101)。
【0054】
スイングミラー206が第1位置と第2位置の間で揺動する時間は、GPSセンサ222が位置情報及び時刻情報を生成する周期より短い。取得手段231は、GPSセンサ222が位置情報を生成するたびに、スイングミラー206の揺動タイミングを、GPSセンサ222が位置情報及び時刻情報を生成するタイミングに同期させる。取得手段231は、GPSセンサ222から取得した最新の時刻情報に示される時刻に、その時刻情報を取得してからスイングミラー206を揺動させた回数とスイングミラー206が第1位置と第2位置の間で揺動する時間との乗算値を加算した加算値を現在時刻として算出する。
【0055】
また、6軸センサ223が姿勢情報及び移動ベクトルを生成する周期は、GPSセンサ222が位置情報及び時刻情報を生成する周期より短い。取得手段231は、GPSセンサ222が位置情報を生成するたびに、6軸センサ223が姿勢情報及び移動ベクトルを生成するタイミングを、GPSセンサ222が位置情報及び時刻情報を生成するタイミングに同期させる。取得手段231は、GPSセンサ222から取得した最新の位置情報に示される位置から、その時刻情報を取得してから6軸センサ223から取得した移動ベクトル分だけ移動した位置を算出する。また、取得手段231は、6軸センサ223が移動ベクトルを最後に生成してから次に生成するまでの間、センシング装置2が等速運動を行っているとみなす。取得手段231は、算出した位置から現在時刻までにセンシング装置2が移動した現在位置を、現在時刻の前後に生成された移動ベクトルの線形補間又はカルマンフィルタ等による内挿によって推定する。
【0056】
また、センシング装置2は、離陸時にセンシング装置2の姿勢の初期値を設定し、初期値に、6軸センサ223が現在までに生成した姿勢情報に示される姿勢変化量を順次加算して姿勢を算出する。また、取得手段231は、6軸センサ223が姿勢情報を最後に生成してから次に生成するまでの間、センシング装置2が等速運動を行っているとみなす。取得手段231は、算出した姿勢から現在時刻までに変化した現在姿勢を、現在時刻の前後に生成された姿勢情報の線形補間又はカルマンフィルタ等による内挿によって推定する。
【0057】
次に、対応付け手段232は、第1記憶部225に記憶された第1信号及び第3信号の対応付けを行う(ステップS102)。対応付け手段232は、第1方向と第2方向の角度の差に基づいて、順次生成される第1信号及び第3信号のうち、同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第1信号及び第3信号を対応付ける。第2方向が第1方向に対して前方に傾いた方向である場合、対応付け手段232は、新たに取得した第1信号を、過去に取得していた第3信号と対応付ける。一方、第2方向が第1方向に対して後方に傾いた方向である場合、対応付け手段232は、新たに取得した第3信号を、過去に取得していた第1信号と対応付ける。
【0058】
図8(a)、(b)は、対応付けについて説明するための模式図である。
図8(a)は、第2方向が第1方向に対して後方に傾いており、飛翔体4(センシング装置2)が所定の高度hで観測対象Fと平行に飛行している例を示す。この場合、観測対象F上の所定位置Pは、時刻t1にセンシング装置2に対して第1方向に位置しており、その所定時間後の時刻t2にセンシング装置2に対して第2方向に位置している。したがって、時刻t1に第1センサ209により生成された第1信号と、時刻t2に第3センサ211により生成された第3信号は、同一の地上位置からの電磁波に応じて生成される。
図8(a)に示すように、時刻t1における飛翔体4の位置と、時刻t2における飛翔体4の位置との間の距離はh・tanθとなる。対応付け手段232は、位置情報を参照し、センサデータDの中から、上記関係が成り立つ第1信号及び第3信号を抽出し、相互に対応付ける。このように、対応付け手段232は、飛翔体4の位置に基づいて、第1信号及び第3信号を対応付ける。これにより、対応付け手段232は、飛翔体4の飛行位置(高さ)が飛行中に変化した場合であっても、第1信号及び第3信号を適切に対応付けることができる。
【0059】
なお、対応付け手段232は、姿勢情報にさらに基づいて、第1信号及び第3信号を対応付けてもよい。
図8(b)は、第2方向が第1方向に対して後方に傾いており、飛翔体4(センシング装置2)が所定の高度hで観測対象Fに対して傾いて飛行している例を示す。この場合、時刻t1における飛翔体4の位置と、時刻t2における飛翔体4の位置との間の距離はh・(tan(θ+φ2)-tanφ1)となる。ここで、φ1は時刻t1における第1方向を基準としたピッチ角であり、φ2は時刻t2における第1方向を基準としたピッチ角である。対応付け手段232は、姿勢情報を参照し、各センサデータDについて、上記ピッチ角φ1及びφ2を算出する。対応付け手段232は、位置情報を参照し、センサデータDの中から、上記関係が成り立つ第1信号及び第3信号を抽出し、相互に対応付ける。このように、対応付け手段232は、飛翔体4の姿勢にさらに基づいて、第1信号及び第3信号を対応付ける。これにより、対応付け手段232は、飛翔体4の姿勢が飛行中に変化した場合であっても、第1信号及び第3信号を適切に対応付けることができる。
【0060】
また、対応付け手段232は、画像処理技術を利用して、第1信号及び第3信号を対応付けてもよい。例えば、対応付け手段232は、複数の第1信号の第1信号値を画素値とする画素を含む画像と、複数の第3信号の第3信号値を画素値とする画素を含む画像とでパターンマッチング処理を実行し、相互に合致する画素に対応する第1信号及び第3信号を対応付ける。このような画像処理技術を利用した対応付けは、観測対象に地物等の特徴点が含まれる地上での観測で用いられることが好適である。
【0061】
次に、算出手段233は、順次生成される第1信号に対応する第2信号に基づいて、その第1信号に対応する電磁波の観測対象での反射率を算出する(S103)。算出手段233は、新たに第3信号と対応付けられた第1信号について、反射率を算出する。算出手段233は、第1記憶部225に記憶された第2信号値を正規化することにより反射率を算出する。反射率Rは、次の式(1)により算出される。
R=(S-Sd)/(Sw-Sd) (1)
ここで、Sは第2信号値であり、Sdは暗電流値であり、Swは、電磁波が観測対象Fに設置された標準白色板で反射されたときの第2信号値(以下、基準値と称する場合がある)である。
【0062】
暗電流値Sdとして、例えば、事前に第1レンズ201及び第2レンズ202から光が入らない状態(例えば、第1レンズ201及び第2レンズ202にキャップを装着した状態)で検出された第2信号値が用いられる。また、基準値Swとして、飛翔体4の飛行開始時等に、事前に観測対象F上に標準白色板を設置して測定された第2信号値が用いられる。
【0063】
なお、基準値Swは、飛行している飛翔体4の上方からの光の強度に基づいて補正されてもよい。基準値Swは、標準白色板への入射光(主として上方からの太陽光)の強度に応じて変化する。したがって、基準値Swは、観測対象Fの第2信号値Sと同時に測定されることが好ましい。しかし、そのためには飛翔体4の飛行経路に沿って、観測対象Fの広範囲にわたって標準白色板を設置する必要があり、実現が困難である。そこで、算出手段233は、事前に測定された基準値Swを、観測対象Fからの電磁波と同時に測定された、拡散器203から入射された、飛翔体4の上方からの電磁波に応じた第2信号値に基づいて補正する。
【0064】
基準値Swは、次の式(2)により補正される。
Sw=Sw0×(Sz/Sz0) (2)
ここで、Sw0は事前に測定された基準値であり、Sz0は事前にSw0と同時に測定された、飛翔体4の上方からの電磁波に応じた第2信号値であり、Szは観測対象Fからの電磁波と同時に測定された第2信号値である。即ち、算出手段233は、飛翔体4の上方からの電磁波に応じた第2信号値に基づいて観測対象での反射率を補正する。これにより、算出手段233は、飛翔体4の飛行中に天候等が変化して太陽光の強度が変化した場合であっても、電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを精度良く判定することができる。
【0065】
次に、判定手段234は、算出手段233により算出された反射率に基づいて、第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定する(S104)。判定手段234は、反射率が所定閾値以上である場合、第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定し、反射率が所定閾値未満である場合、第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定する。通常、観測対象Fにおいて(鏡面反射ではなく)拡散された光の反射率は、標準白色板の反射率よりもはるかに小さいのに対し、鏡面反射された光の反射率は標準白色板の反射率を上回ることがある。そこで、所定閾値は、例えば1に設定される。
【0066】
近赤外波長域の電磁波は、可視波長域の電磁波と比較すると水に吸収されやすい。したがって、センシング装置2は、鏡面反射の判定に近赤外域の波長帯を用いることにより、水中における拡散や川床、海底における反射の影響を受けることなく、より正確な判定をすることが可能となる。特に、センシング装置2は、近赤外域の電磁波として700nm~800nm又は1500nm~1600nmの波長域の電磁波を用いることによって、電磁波が鏡面反射によるものであるか否かをより正確に判定することができる。
【0067】
第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合(S104-No)、出力手段235は、その第1信号を出力する(S105)。出力手段235は、例えば、その第1信号を、その第1信号に対応する位置情報と対応付けて第1記憶部225に記憶することにより、出力する。
【0068】
一方、第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合(S104-No)、出力手段235は、その第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号を出力する(S106)。出力手段235は、ステップS102における対応付け手段232による対応付け結果に基づいて、その第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号を特定する。出力手段235は、その第3信号を、その第1信号に対応する位置情報と対応付けて第1記憶部225に記憶することにより、出力する。
【0069】
次に、第1処理部230は、所定数の第1信号について処理が実行されたか否かを判定する(S107)。まだ所定数の第1信号について処理が実行されていない場合(S107-No)、第1処理部230は、S101~S107の処理を繰り返す。
【0070】
一方、所定数の第1信号について処理が実行された場合(S107-Yes)、生成手段236は、出力手段235により出力された第1信号及び第3信号に基づいて、出力画像を生成し(S108)、一連のステップを終了する。生成手段236は、各第1信号に対応する位置情報に対応する複数の画素を含む出力画像を生成する。生成手段236は、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものでないと判定された場合、その第1信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定する。一方、生成手段236は、順次生成される第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであると判定された場合、その第1信号に対応する電磁波と同一の地上位置からの電磁波に応じて生成された第3信号に基づいて、その第1信号に対応する画素の画素値を設定する。
【0071】
例えば、生成手段236は、第1信号値又は第3信号値を所定の階調範囲内におさまるように正規化(変換)した値を各画素の画素値に設定する。なお、生成手段236は、S103の処理と同様にして、第1信号値又は第3信号値を暗電流値、基準値及び飛翔体4の上方からの電磁波に応じた信号値に基づいて補正した上で、所定の階調範囲内におさまるように正規化(変換)した値を各画素の画素値に設定してもよい。
【0072】
生成手段236は、飛翔体4の飛行が完了したときに、生成した各出力画像を、第1通信部224を介して解析装置3に送信することにより出力する。解析装置3は、第2通信部324を介してセンシング装置2から出力画像を受信し、受信した出力画像を表示部326に表示し、又は、第2通信部324を介して他の装置に送信することにより出力する。
【0073】
なお、S103の処理が省略され、S104において、判定手段234は、第2信号値が所定閾値を超えているか否かに基づいて、第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを判定してもよい。その場合、判定手段234は、所定閾値を飛翔体4の上方からの電磁波に応じて生成された第2信号値に基づいて設定してもよい。例えば、判定手段234は、上方からの電磁波の強度が大きいほど大きくなるように所定閾値を設定する。これにより、センシング装置2は、反射率を算出することなく、第1信号に対応する電磁波が鏡面反射によるものであるか否かを精度良く判定することができる。
【0074】
また、S104及びS105において、出力手段235は、第1信号及び第3信号を、第1通信部224を介して外部装置に送信することにより出力してもよい。その場合、外部装置が、出力された第1信号及び第3信号に基づいて出力画像を生成する。
【0075】
上述した説明では、センシング装置2が解析処理を実行するものとしたが、解析処理は解析装置3により実行されてもよい。その場合、解析装置3の第2処理部330が、センシング装置2の第1処理部230が有する各部を有する。センシング装置2の第1処理部230は、飛翔体4による飛行中に
図7のS101の処理を実行し、飛翔体4による飛行が完了したときに時刻、位置、姿勢、第1信号、第2信号及び第3信号を含むセンサデータDを、第1通信部224を介して解析装置3に送信する。一方、
図7のS101で取得手段231は、飛翔体4による飛行が完了したセンシング装置2から、第2通信部324を介して、時刻、位置、姿勢、第1信号、第2信号及び第3信号を含むセンサデータDを取得し、第2記憶部325に記憶する。第2処理部330は、取得した各センサデータDについて、時刻が古いセンサデータDから順にS102~S108の処理を順次実行する。生成手段236は、生成した出力画像を表示部326に表示し、又は、第2通信部324を介して他の装置に送信することにより出力する。
【0076】
また、解析装置3は、飛翔体4に搭載されているセンシング装置2と無線通信可能に接続され、飛翔体4が飛行している間に順次センサデータを取得し、取得したデータに対して観測処理を実行してもよい。また、解析装置3は、センシング装置2と通信可能に接続された状態で飛翔体4に搭載され、飛翔体4が飛行している間に順次センサデータを取得し、取得したデータに対して観測処理を実行してもよい。
【0077】
また、上述した説明では、第2方向から可視光波長域の電磁波を検出する光学系が1セットであり、1つの方向に係る第3信号を取得する例を示した。しかしながら、センシング装置2は、第2方向を互いに異なる複数の方向に定めて、その方向の数だけ光学系のセットを備え、各方向に係る信号を含んだ第3信号を取得してもよい。その場合、センシング装置2は、例えば、オブリークカメラとして機能するように、第2方向を前後左右の4方向に定めて各方向にレンズを向けた4セットの光学系で4方向の第3信号を取得してもよい。これにより、センシング装置2は、より確実に第1信号を置換することができる。
【0078】
また、上述した説明では、位置を時刻とともに取得する測位手段としてGPSを利用するGPSセンサ222を例示したが、GPS222センサに代えてGLONASS(GLObal'naya NAvigatsionnaya Sputnikovaya Sistema)等の他のGNSSを利用するセンサで測位手段を構成してもよいし、二種類以上のGNSSを複合的に利用するセンサで測位手段を構成してもよい。
【0079】
以上説明したように、センシングシステム1は、入射した電磁波が鏡面反射によるものである場合、その電磁波に応じて生成された信号を、その電磁波と異なる方向から入射した電磁波に応じて生成された信号に置換して出力画像を生成する。これにより、センシングシステム1は、観測対象において鏡面反射が生じている場合でも適切な出力画像を生成することが可能となる。
【0080】
すなわち、鏡面反射光が第1センサ209に入射した場合、観測対象において拡散された電磁波が鏡面反射光に埋もれてしまうため、第1信号を観測結果として用いることはできず、観測結果の欠損が生ずる。センシングシステム1は、この場合に第1信号に代えて観測対象上の同一地点に対応する第3信号を利用することにより、観測結果の欠損が生ずることを防止できる。
【0081】
空中撮影において太陽光の鏡面反射は、観測対象が水平である時点に鉛直下方からのみ生じ得ると想定される。そのため、鉛直下方から入射した電磁波が鏡面反射によるものであっても、その電磁波と異なる方向から入射した電磁波は鏡面反射によるものでない可能性が高い。したがって、センシングシステム1は、観測対象において鏡面反射が生じている場合でも適切な出力画像を生成することが可能となる。
【0082】
なお、第1信号から鏡面反射成分を推定して鏡面反射成分を差し引く補正も考えられるが、その場合、大気中の水蒸気やエアゾルの状態等が変動するため、鏡面反射成分を高精度に推定することは困難である。一方、センシングシステム1は、実際に鏡面反射光を含まない観測結果で置換を行うため、正しい出力画像を高精度に生成することができる。
【0083】
また、第1センサ209及び第2センサ210は、第1レンズ201及び第2レンズ202に入射した電磁波をそれぞれ検出する。第1レンズ201及び第2レンズ202は光軸が相互に傾くように設けられるため、通常、第1レンズ201及び第2レンズ202の両方に鏡面反射光が入射することは生じない。したがって、センシングシステム1は、観測結果の欠損が生ずることを、より確実に防止できる。
【0084】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
2 センシング装置
209 第1センサ
210 第2センサ
211 第3センサ
231 取得手段
232 対応付け手段
233 算出手段
234 判定手段
235 出力手段
236 生成手段
3 解析装置