(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】光学フィルム及びそれを含むシステム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20241101BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/20
(21)【出願番号】P 2020524906
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 IB2018058721
(87)【国際公開番号】W WO2019092598
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-11-05
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,ニーラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,グワーンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィートリー,ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】ソウサ,マシュー イー.
(72)【発明者】
【氏名】スワンソン,ジェレミー オー.
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043586(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/124664(WO,A1)
【文献】特開平03-033173(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171219(WO,A1)
【文献】特開平11-038892(JP,A)
【文献】特開2006-319251(JP,A)
【文献】実開平05-008502(JP,U)
【文献】国際公開第2017/127734(WO,A1)
【文献】Hironobu KUNIOKU, Masanobu HIGASHI, Ryu ABE,Low-Temperature Synthesis of Bismuth Chalcohalides: Candidate Photovoltaic Materials with Easily, Continuously Controllable Band gap,Scientific Reports,6/32664,Nature.com,2016年09月07日,pp.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
G02B 5/20
H01L 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光器又は受光器の一方又は両方と、
前記発光器又は前記受光器の一方又は両方に隣接した光学フィルターと、を備えるシステムであって、前記光学フィルターが、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を備え、前記吸収剤成分が金属カルコゲナイドまたは金属ハロゲン化物のナノ粒子顔料を含むナノ粒子を含有し、前記ナノ粒子が有意な可視および近赤外の散乱を生じず、前記波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる、システム。
【請求項4】
前記光学フィルターが反射層を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
検出可能物体と、
前記検出可能物体に隣接した光学フィルターと、を備えるシステムであって、前記光学フィルターが、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を備え、前記吸収剤成分が金属カルコゲナイドまたは金属ハロゲン化物のナノ粒子顔料を含むナノ粒子を含有し、前記ナノ粒子が有意な可視および近赤外の散乱を生じず、前記波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光学フィルターは、光通信システム、センサ、イメージング、科学及び産業光学機器、並びにディスプレイシステムを含む多種多様の用途において使用されている。光学フィルターは、多くの場合、光を含む入射電磁放射の透過を管理する光学層を含む。光学フィルターは、入射光の一部分を反射又は吸収し、入射光の別の部分を透過させることができる。光学フィルター内の光学層は、波長選択性、光透過率、光学的透明度、光学ヘイズ、屈折率、及び様々な他の特性が異なることがある。
【発明の概要】
【0002】
波長透過選択性層であって、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる波長透過選択性層が本明細書に開示され、波長透過選択性層は、吸収剤成分を含む。
【0003】
発光器又は受光器の一方又は両方と、発光器又は受光器の一方又は両方に隣接した光学フィルターと、を含むシステムが本明細書に開示され、光学フィルターが、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を含み、波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる。
【0004】
光学フィルターを含む物品が本明細書に開示され、光学フィルターは、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を含み、波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる。
【0005】
上記の発明の概要は、本開示の各実施形態を説明することを意図したものではない。本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。本開示の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明は、本発明の様々な実施形態についての下記の詳細な説明を添付の図面と併せて考察することにより、より完全に理解し得る。
【
図1A】本明細書にて開示する光学物品に含まれる再帰反射素子の様々なパターンを示す図である。
【
図1B】本明細書にて開示する光学物品に含まれる再帰反射素子の様々なパターンを示す図である。
【
図1C】本明細書にて開示する光学物品に含まれる再帰反射素子の様々なパターンを示す図である。
【
図1D】本明細書にて開示する光学物品に含まれる再帰反射素子の様々なパターンを示す図である。
【
図1E】本明細書にて開示する光学物品に含まれる再帰反射素子の様々なパターンを示す図である。
【
図2A】光学フィルターを含む例示的な光学システムの概念的略図である。
【
図2B】光学フィルターを含む例示的な光学システムの概念的略図である。
【
図2C】光学フィルターを含む例示的な光学システムの概念的略図である。
【
図2D】光学フィルターを含む例示的な光学システムの概念的略図である。
【
図2E】光学フィルターを含む例示的な光学システムの概念的略図である。
【
図3A】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイと、を含む例示的なシステムの概念図である。
【
図3B】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイと、を含む例示的なシステムの概念図である。
【
図3C】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイと、を含む例示的なシステムの概念図である。
【
図3D】例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイと、を含む例示的なシステムの概念図である。
【0007】
本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態を用いてもよく、また、構造的変更を行ってもよいことを理解されたい。これらの図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図面で使用されている同様の番号は同様の構成要素を示す。しかし、特定の図中のある構成要素を示す数字の使用は、同じ数字を付した別の図中の構成要素を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において、「紫外線」は、約10nm~約400nmの範囲の波長を指す。本開示において、「可視」は、約400nm~約700nmの範囲の波長を指し、「近赤外」は約700nm~約2000nmの範囲の波長、例えば約800nm~約1200nmの範囲の波長を指す。
【0009】
周囲電磁放射源は、特定の波長の光、又は特定の光源からの光を受光するように構成された受光器、あるいは特定の波長の光を発光するように構成された発光器と干渉し得る。例えば、可視波長は、例えば、受光器内又は発光器内のノイズを増大させることによって、近赤外波長の受光、感知、又は透過に干渉し得る。電磁放射源はまた、意図せずに看者(例えば、可視域を見ている人間の観察者)に明らかとなり得る。例えば、近赤外波長のみを発光するように構成された発光器によって発光された光は視認可能ではないが、発光を担う装置又は構造体、例えば発光器の筐体が視認可能になり得る。カモフラージュ技術は、所望の近赤外波長の透過の阻止、干渉、又は減少を不必要に生じさせ得るため、発光器のマスキング、隠蔽、又は他のカモフラージュ方法は課題を提示し得る。
【0010】
本開示の諸例に係る光学フィルターは、ある特定の波長からの不要な光学干渉を防止し、あるいは電磁放射源を視覚からカモフラージュし、一方で、所望の近赤外波長が発光器によって透過されること、又は受光器によって受光されることを少なくとも部分的に可能にし、あるいは一方で、比較的高い透明度による近赤外波長の透過を可能にするために用いられ得る。例えば、近赤外波長を受光又は感知するよう動作する受光器は可視波長から遮蔽され、可視波長によって生じ得る近赤外波長の受光又は感知との干渉を防止することができる。近赤外波長を透過するよう動作する光透過体は、可視波長を散乱させることによって、視覚に対してカモフラージュされ得る。例えば、散乱された可視波長は、近赤外波長の透過を妨げることなく、光透過体の存在を隠蔽することができる。
【0011】
開示されたシステムは、受光器及び発光器の一方又は両方と、701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させることができ、一方で、他の波長の透過を少なくとも部分的に可能にする波長透過選択性層を含む光学フィルターと、を含むことができる。例えば、波長透過選択性層は、入射可視光の大部分を拡散させることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる層が、701nm~849nmの入射波長の約50%未満を透過し、いくつかの実施形態では、701nm~849nmの入射波長の約40%未満を透過し、いくつかの実施形態では、701nm~849nmの入射波長の約30%未満を透過し、いくつかの実施形態では、701nm~849nmの入射波長の約20%未満を透過し、又はいくつかの実施形態では、701nm~849nmの入射波長の約15%未満を透過する。いくつかの実施形態では、701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる層が、400nm~700nmの波長の少なくとも20%を阻止し、いくつかの実施形態では400nm~700nmの波長の少なくとも50%を阻止し、いくつかの実施形態では、400nm~700nmの波長の少なくとも80%を阻止し、いくつかの実施形態では、400nm~700nmの波長の約100%を阻止し、阻止された波長は、この層によって吸収又は反射される。
【0013】
開示された波長透過選択性層は、吸収剤成分を含み得る。波長透過選択性接着層は、最終的な組立品又は物品において、平面状、非平面状、又は両方であり得る。波長選択性層は、二次元表面、三次元表面、又は両表面の組み合わせ上に配置することができる。波長透過選択性層はまた、エンボス加工、延伸、インモールド加工、同種の製造方法、又はこれらの組み合わせを含む技術を使用して、形成後に変更することもできる。
【0014】
吸収剤成分は、一種類の染料若しくは複数種類の染料、一種類の顔料若しくは複数種類の顔料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。有用な吸収剤成分は、701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させることができ、一方、他の波長の透過を少なくとも部分的に可能にすることができる任意の染料、顔料、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0015】
有用な吸収剤成分としては、溶剤コーティングされた組成物の場合には溶媒に可溶性であるものを含む。有用な吸収剤成分はまた、有意なNIR散乱を引き起こさないものを含むことができる。
【0016】
開示された波長透過選択性層における吸収剤成分として有用であり得る例示的な染料及び顔料としては、可視的に黒色又は着色されているように見えるが、NIR波長に対して透明であるものを挙げることができる。可視染料及び着色剤は、酸性染料、アゾ系着色物質、カップリング成分、及びジアゾ成分のような1つ以上の部類に含まれる。塩基性染料としては、顕色剤、直接染料、分散染料、蛍光増白剤、食用染料、イングレイン染料、皮革染料、媒染染料、天然染料及び顔料、オキシデーションベース、顔料、反応染料、還元剤、溶剤染料、硫化染料、縮合硫化染料、建染染料が挙げられる。染料はまた、光吸収に主に関与する官能基又は部分に基づいて分類することもできる。染料/顔料の主な部類のいくつかとしては、フタロシアニン、シアニン、遷移金属ジチオリン、スクアリリウム、クロコニウム、キノン、アントラキノン、イミニウム、ピリリウム、チアピリリウム、アズレニウム、アゾ、ペリレン、及びインドアニリンが挙げられる。これらの染料及び顔料の多くは、本質的に有機系/有機金属系又は有機金属である。これらの染料のいくつかは、金属錯体であり得る。金属錯体染料の具体的な群は、商標名ORASOL(登録商標)でBASF Color & Effects USA LLC(Florham Park,NJ)から入手可能である。ORASOL(登録商標)金属錯体染料は、強い可視光吸収と共に、比較的高いNIR透過性を示す。例示的な具体的染料としては、全て黒色に見え、有用な溶剤型接着剤中で比較的高い可溶性を有するORASOL(登録商標)X45、X51、及びX55金属錯体染料(BASF Color & Effects USA LLC(Florham Park,NJ)から入手可能)、ペリレン系染料の例であるLumogen IR788 IR染料(BASF Color & Effects USA LLC(Florham Park,NJ)から入手可能)、Excolor IR10A(Nippon Shokubai(Osaka,Japan)から入手可能)、及びフタロシアニン染料及び顔料である、バニジルフタロシアニン染料(Afla-Aesar(Tewksberry,MA)又はSigma-Aldrich(St.Louis,MO)のいずれかから入手可能)が挙げられる。低可溶性を示す着色剤は、接着剤又は他の樹脂マトリックス中で顔料粒子として粉砕及び分散させることができる。有機顔料のいくつかは、モノアゾ、酸染料のアゾ縮合不溶性金属塩、及びジアゾ、ナフトール、アリライド、ジアリライド、ピラゾロン、アセトアリライド、ナフトアニリド、フタロシアニン、アントラキノン、ペリレン、フラバントロン、トリフェノジオキサジン(triphendioxazine)、金属錯体、キナクリドン、ポリピロイル(polypryrrole)などの1つ以上に属する。金属クロム酸塩、モリブデン酸塩、チタン酸塩、タングステン酸塩、アルミン酸塩、フェライトなどの混合金属酸化物は、一般的な顔料の一部である。多くは、鉄、マンガン、ニッケル、チタン、バナジウム、アンチモン、コバルト、鉛、カドミウム、クロムなどのような遷移金属を含有する。バナジン酸ビスマスは非カドミウムイエローである。金属カルコゲナイド及びハロゲン化物も顔料として使用することができる。これらの顔料は、低可視及び/又はNIR散乱が所望される場合に有用であり得る分散ナノ粒子を生成するために粉砕されてもよい。
【0017】
波長透過選択性層を形成する組成物又は溶液中の吸収剤成分の量は、例えば、層を形成する厚さ、特定の吸収剤成分、他の要因、及びこれらの組み合わせを含む多くの要因に依存し得る。染料を利用するいくつかの実施形態では、波長透過選択性層を形成する組成物は、比較的少量の染料を利用し得るように、比較的厚く(例えば、約2mil(約0.051mm))コーティングされる。いくつかの実施形態では、組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、0.2重量%以上、又は0.5重量%以上の染料を有する組成物を利用することができる。いくつかの実施形態では、組成物の総重量に基づいて、10重量%以下、5重量%以上、又は2重量%以上の染料を有する組成物を利用することができる。
【0018】
顔料はまた、接着剤中に十分に分散されることができ、有意なNIR散乱を引き起こさない、有意なNIR吸収を有さない、又はこれらの組み合わせであれば、有用な吸収剤成分であり得る。いくつかの実施形態では、有用な顔料をナノ粒子形態で利用することができる。有機顔料及び無機顔料の両方を利用することができる。いくつかの実施形態では、有用な有機顔料は、市販のインク中で一般的に利用されるいくつかの顔料を含むことができる。利用することができる具体的な例示的な有機顔料としては、例えば、有機キナクリドン顔料である、MICROLITH(登録商標)Magenta 4500J、有機フタロシアニン顔料である、MICROLITH(登録商標)Green 8750K、及び有機フタロシアニン顔料である、MICROLITH(登録商標)Blue 7080KJAを挙げることができ、これらはいずれもBASF Color & Effects USA LLC(Florham Park,NJ)から入手可能である。利用することができる具体的な例示的な無機顔料としては、例えば、セリアナノ粒子(Nyacol(Ashland,MA)から入手可能)を挙げることができる。
【0019】
染料もまた、有用な吸収剤成分であってもよい。異なる染料同士は、異なる吸収係数を有するが、一方で、顔料は吸収及び散乱の両方を呈するため、顔料の光学特性は吸光係数によって説明される。顔料の粒径は、その散乱挙動に強い影響を及ぼす。ナノメートルサイズ範囲内の粒径を有する顔料は、比較的有意に低減した散乱を示す。層を形成する組成物又は層自体中の染料又は顔料(又は組み合わせ)の量は、そのような光学特性を用いて決定することができる。所与のコーティング厚さでは、染料又は顔料の充填は、それらの吸収/吸光係数に反比例する。所与の透過率では、顔料/染料の充填又は濃度は、層の厚さ及び吸光/吸収係数に依存する。吸収係数が既知である場合、ランベルトベールの法則を使用して、所与の透過に必要な濃度を計算することができる。この法則は、希釈溶液では良好に機能するが、散乱、蛍光などのために、より高い濃度での制限を有し得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、波長透過選択性層を形成する組成物は、基材上に分配される(例えば、印刷されるなど)ことができる。印刷は、スクリーン印刷、スロットダイコーティング、及び更にはインクジェット印刷などのプロセスを使用して行うことができる。波長透過選択性層は、組成物を基材上に適用又は分配することによって形成することができる。例示的な有用な基材としては、形成される波長透過選択性層の所望の使用に部分的に応じて、様々な種類の基材を挙げることができる。いくつかの実施形態では、有用な基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルを挙げることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、波長透過選択性層は、701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に可能にする。いくつかの実施形態では、波長透過選択性層は、701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させ、350nm~700nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させ、その結果、波長透過選択性層は、350nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる。
【0022】
いくつかの実施形態では、波長透過選択性層は、701nm~849nmの波長の透過を、少なくとも50%、少なくとも40%、少なくとも30%、少なくとも20%、又は少なくとも15%だけ減少させる。いくつかの実施形態では、波長透過選択性層は、701nm~849nmの全ての波長を同じ量だけ減少させる必要はなく、減少率は、701nm~849nmの吸収剤成分のない波長透過選択性層を通る光の波長に対する701nm~849nmの波長透過選択性層を通る光の波長として分光計によって測定される。
【0023】
いくつかの実施形態では、波長透過選択性層は、2つ以上の層で作製され得る、又は2つ以上の層を含み得、例えば、多層フィルム又は多層構造体であり得る。いくつかの例では、多層フィルムは、取り扱い及び適用を容易にするのに有利であり得る。例えば、より硬い弾性層をより軟質のより粘稠な層と組み合わせると、物品をダイカットに変換するのを容易にすることができ、又は、インクステップなどの三次元特徴部に隣接させて軟質でより粘稠な層を配置する場合に、そのような三次元特徴部をより容易に被覆することができる。多層フィルムを有利に利用して、フィルムの光学密度をより簡単に修正することもできる(例えば、層の所与の総厚について、透明層を利用して、その透明層の上方又は下方に配置された別の層の光学密度を減少させることができる)、又はフィルムの可視外観をより簡単に修正することもできる(例えば、1つの層が緑色であってもよく、一方、第2の層が青色であり、両色の複合色の外観が得られる)。
【0024】
波長透過選択性層はまた、1つ以上の検出可能物体に隣接して使用することができる。検出可能物体は、例えば、NIR波長を反射するものとすることができる。いくつかの実施形態では、検出可能物体は、その上に衝突する1つ以上の光の波長に応答して、NIR(又は別の方法の)波長を反射する再帰反射体であるものとすることができる。
【0025】
波長透過選択性層は、光学物品内の任意の構成要素に近接して使用することができる。このような光学物品は、光学フィルターと呼ばれることがある。
図1A~
図1Eは、光学フィルターを含む例示的な物品の横断面図である。
【0026】
図1Aは例示的な物品10aの横断面図を示す。物品10aは、基材12と、波長透過選択性層14とを含む。基材12は、ガラス、ポリマー、金属、又は任意の他の適切な硬質、半硬質又は軟質の膜(maters)、及びそれらの組み合わせを含み得る。
図1Aの例示的な物品10aでは基材12が層として示されているが、諸例では、基材12は、平坦な表面、実質的に平坦な表面、又はテクスチャー化表面を有し得る任意の適切な三次元形状を取ることができる。諸例では、基材12は、デバイス、例えば電子デバイスの筐体、スクリーン、又は表面を含み得る。
【0027】
波長透過選択性層14は、701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる。諸例では、波長透過選択性層14は、701nm~849nmの波長の約50%未満を透過し得る。波長透過は選択的である。諸例では、波長透過選択性層14は、701nm~849nmの波長の約50%未満を透過し、700nm未満の波長の約50%未満を透過し得る。諸例では、波長透過選択性層14は700nm未満の波長の約50%超を散乱させることができる。例えば、波長透過選択性層14は、700nm未満の入射波長の約50%超を散乱させることにより、700nm未満の入射波長の約50%未満を透過することができる。
【0028】
図1Bは、例示的な物品10bの横断面図を示す。物品10bは、基材12と、波長透過選択性層14と、反射層16とを含み得る。物品10bにおいては、波長透過選択性層14と基材12との間に反射層16が示されているが、諸例では、物品10bが基材12を含まなくてもよく、波長透過選択性層が反射層16上に配置されていてもよい。諸例では、基材12は、例えば、基材12の主表面に、又は内部内に、反射層16を含み得る。諸例では、反射層16は基材12の下方に配置されていてもよい。諸例では、反射層16は基材12の上方に配置されていてもよい。諸例では、反射層16は穿孔されていてもよい。諸例では、物品10bは可視光の50%未満を反射し、近赤外光の50%超を透過させることができる。諸例では、反射層16は、例えば選択された波長のみを反射する波長選択性であり得る。反射層16は、多層光学フィルム、ダイクロイック反射体、干渉フィルム、無機多層積層体、金属誘電体積層体、研磨された基材、ミラー、反射型偏光子、又は反射金属若しくはガラス表面などの反射表面を含み得る。諸例では、物品10bは、反射層と波長透過選択性層14との間、又は波長透過選択性層14の上方の、又は物品10b内の任意の層に隣接して配置される染料層(図示せず)を含み得る。染料層は、近赤外では透過性又は透明であってよく、可視では吸収性であってよく、それにより、反射層16の可視反射を減少させる、スペクトル選択性染料を含み得る。諸例では、染料層は、少なくとも30%、50%、70%、又は90%の可視光吸収を有し得る。諸例では、染料層は、可視色を有する一方で、近赤外では透過性のままであるように着色されてもよい。
【0029】
図1Cは、例示的な物品10cの横断面図を示す。物品10cは、基材12と波長透過選択性層14とを含み得る。物品10cは、任意選択的に、
図1Cに示すように、反射層16、インク受容層18、印刷パターン層22、及び保護層24のうちの1つ以上を含み得る。
図1Cは物品10c内の層のための特定の配置を示しているが、それぞれの層は任意の適切な構成に再配置されてもよい。例えば、反射層16が存在する場合には、基材12を省略してもよい。保護層24はシーラント層を含み得る。諸例では、インクパターン層22は、インク受容層18上に堆積され得るインク又は顔料の印刷パターンを含む。諸例では、インク受容層は省略されてもよく、インクパターン層22は波長透過選択性層14上に堆積されてもよい。諸例では、保護層24は、インクパターン層22と波長透過選択性層14との間に配置されてもよい。諸例では、2つの保護層24が配置されてもよく、一方はインクパターン層22の上方に、他方は波長透過選択性層14に隣接して配置されてもよい。
【0030】
図1Dは、例示的な物品10dの横断面図を示す。物品10dは、基材12と、波長透過選択性層14と、第1のシーラント層26と、第2のシーラント層28とを含み得る。第1のシーラント層26及び第2のシーラント層28の両方のうちの一方はラテックスコーティングを含み得る。それぞれのシーラント層は、例えば、水分又は他の反応物若しくは崩壊剤の侵入を防止又は低減することによって、波長透過選択性層14の完全性を保護することができる。それぞれのシーラント層は、波長透過選択性層14に対して構造支持及び物理的安定性をも提供し得る。例えば、第1のシーラント層26及び第2のシーラント28の一方又は両方は、波長透過選択性層14が製造基材から剥離又は除去され、その後、製品基材、例えば基材12上に移送され、適用されることを可能にし得る。
【0031】
図1Eは、例示的な物品10eの横断面図を示す。物品10eは、基材12と、基材12に隣接した波長透過選択性層14と、波長透過選択性層14上に堆積されたインクパターン層24とを含み得る。それぞれのセンサセグメント32a、32b、32c、及び32dを含むセンサ層32が、基材12に隣接して配置され得る。諸例では、基材12は省略されてもよく、波長透過選択性層14はセンサ層32上に堆積されてもよい。諸例では、波長透過選択性層14は、それぞれのセンサセグメント32a、32b、32c、及び32dと整列され得る、それぞれの選択散乱セグメント14a、14b、14c、及び14dを含み得る。選択散乱セグメントのうちの1つ以上は省略されてもよく、そのため、波長透過選択性層14は、それぞれのセンサセグメントのうちの少なくとも1つと整列され得る少なくとも1つの穿孔を含み得る。したがって、異なる選択散乱セグメントは、近赤外散乱比、可視ヘイズ率、又はそれぞれの選択散乱セグメントと整列したセンサセグメントの性能を向上させることができる他の光学特性を変更することによって調整され得る。
図1Eの波長散乱層14及びセンサ層32内には、4つのセグメントが表示されているが、諸例では、波長散乱層14及びセンサ層32は任意の適当な数のセグメントを有し得る。
図1Eの例では、センサ層32が記載されているが、諸例では、物品10eは、センサセグメントの代わりに光源32a、32b、32c、及び32dを含み得る。
【0032】
図1A~
図1Eは、それぞれの物品10a~10eを、平坦な層を含むように示しているが、様々な例では、物品10a~10eは、任意の好適な形状、周囲又は断面を取り得、物品10a~10eの層は、規則的、不規則、又は複合的な曲率を取り得るか、あるいは異なる領域内では、平坦な、若しくは湾曲した幾何形状を取るか、又はさもなければ、層若しくは物品10a~10eの真下の基材の輪郭に一致し得る。例えば、物品10a~10eは半球状又はレンズ状の形状を取り得る。
【0033】
波長透過選択性接着層を含む光学物品は、例えば光学システムを含む様々なシステムで利用することができる。このような光学フィルターは、光学システムの任意の一部分又は複数の部分に近接して又は隣接して利用することができる。例えば、光学フィルターは、例えば、光源、検出器、検出される物体、又はこれらの任意の組み合わせに近接して利用することができる。検出対象物体に近接して光学物品が使用されるいくつかの実施形態では、反射体が、その光学物品に含まれ得る、又はその光学物品に近接し得る。例示的な反射体としては、鏡面反射体、拡散反射体、半鏡面反射体、再帰反射反射体、又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。例示的な再帰反射体は、ビーズ再帰反射性物品及びキューブコーナー再帰反射性物品の両方を含み、金属バッキングされているか、又は空気バッキングされているかのいずれかである。いくつかの実施形態では、光学フィルターは、例えば光ファイバ又は中空若しくは中実光ガイドを含む光送達デバイスに近接して配置され、一体形成され、又はその両方とすることができる。
【0034】
図2A~
図2Eは、光学フィルターを含む例示的な光学システムの概念的略図である。
図2Aは、光学フィルター10及び受光器40を含む例示的な光学システムの概念的略図である。諸例では、受光器40は、光センサ、カメラ、CCD、又は少なくとも光の所定の波長領域を感知するように構成された任意の他のセンサを含み得る。例えば、受光器40は近赤外センサを含み得る。諸例では、受光器40は、光を受光する物体、例えば、太陽電池、又は入射光を少なくとも部分的に吸収する物体、例えば、太陽熱ヒータ、又は光を受光する任意の他の物体を含み得る。光学フィルター10は、以上において
図1A~
図1Eを参照して説明されたとおりの、波長透過選択性層を含む例示的な光学フィルターのうちの任意のもの、又は本開示に記載の他の例示的な光学フィルターを含み得る。
図2Aに示すように、光学フィルター10は受光器40に隣接して配置されていてもよい。入射近赤外線42aは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44aは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40は可視光線44aから少なくとも部分的に遮蔽され、近赤外線42aを少なくとも部分的に受光する。諸例では、受光器は光学フィルター10によって可視光線44aから実質的に又は完全に遮蔽され得、近赤外線42aの実質的に全てを受光し得る。
【0035】
図2Bは、光学フィルター10、受光器40、発光器46、及び物体48を含む例示的な光学システムの概念的略図である。諸例では、発光器46は、可視波長、近赤外波長、又は紫外波長を含む、光又は電磁放射の任意の好適な波長の発生源を含み得る。諸例では、発光器46は、電球、白熱光源、小型蛍光灯、LED、ライトガイド、又は任意の自然光源若しくは人工光源を含み得る。諸例では、発光器46は光を発生しなくてもよく、光源によって発生された光を反射又は透過させるのみでもよい。光学フィルター10は受光器40と物体48との間に配置されていてもよい。発光器は、光学フィルター10の、受光器40と同じ側に配置されていてもよい。発光器46から透過された近赤外線42bは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10を通して物体48へ実質的に透過され得る。光42bは物体48によって反射され得、反射光は物体48の光学特性によって変更され得る。反射光線42は光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44bは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40及び発光器46の一方又は両方は可視光線44aから少なくとも部分的に遮蔽される。諸例では、受光器は光学フィルター10によって可視光線44bから実質的に又は完全に遮蔽され得、近赤外線42bの実質的に全てを受光し得る。
【0036】
図2Cは、光学フィルター10、受光器40、及び物体48を含む例示的な光学システムの概念的略図である。光学フィルター10は受光器40と物体48との間に配置されていてもよい。入射近赤外線42cは近赤外波長を含んでもよく、物体48及び光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44cは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40は可視光線44cから少なくとも部分的に遮蔽され、近赤外線42cを少なくとも部分的に受光する。諸例では、受光器40は光学フィルター10によって可視光線44cから実質的に又は完全に遮蔽され得、近赤外線42cの実質的に全てを受光し得る。
【0037】
図2Dは、光学フィルター10及び受光器40を含む例示的な光学システムの概念的略図である。光学フィルター10は受光器40に隣接して配置されていてもよい。入射近赤外線42dは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10から受光器40へ実質的に反射され得る。入射可視光線44dは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、これにより、受光器40は可視光線44dを少なくとも部分的に受光し、一方で、近赤外線42dを少なくとも部分的に受光する。
【0038】
図2Eは、光学フィルター10、受光器40、及び発光器46を含む例示的な光学システムの概念的略図である。光学フィルター10は、発光器46と受光器40との間に配置されていてもよい。発光器46から透過された近赤外線42eは近赤外波長を含んでもよく、光学フィルター10を通して受光器40へ実質的に透過され得る。入射可視光線44eは可視波長を含んでもよく、光学フィルター10によって実質的に反射又は散乱され得、そのため、発光器46は可視光線44eから少なくとも部分的に遮蔽される。諸例では、発光器46は、光学フィルター10によって可視光線44eから実質的に又は完全に遮蔽され得る。
図2Eの例示的な光学システムにおいては、受光器40が記載されているが、諸例では、
図2Eの例示的な光学システムは受光器40を含まなくてもよい。例えば、例示的な光学システムは発光器46及び光学フィルター10を含み得、光学フィルター10は、発光器46を、視覚によって見えないように隠蔽し得る。
【0039】
諸例では、光学フィルター10は、少なくとも1つの取り外し可能又は再配置可能な層を含み得るか、あるいは光学フィルター10は全体として取り外し又は再配置可能であり、そのため、光学フィルター10は、光学フィルター10の下の、又はそれに隣接した基材に対して取り外し又は再配置可能である。諸例では、光学フィルター10の周囲は、発光器46又は受光器40の一方又は両方の周囲を越えて延びていてもよく、あるいは光学フィルター10の主表面の面積は、発光器46又は受光器40の一方又は両方の表面積よりも大きいか小さくてもよい。諸例では、光学フィルター10は、電子機器、回路、基板、センサ、送信機などの他の構成要素を、光学フィルターによってこれらの構成要素を視覚から遮蔽することによって、カモフラージュするように構成され得る。諸例では、2つ以上の発光器46又は受光器40、例えばアレイを、光学フィルター10に隣接して配置することができるであろう。諸例では、発光器46又は受光器40の一方又は両方は、光学フィルター10から、例えば、少なくとも1cm、又は10cm、又は1m、又は10m、又は100m、又は1km、相対的に離れているか、あるいはなお更に離れていてもよい。
図2A~
図2Eでは、例えば、発光器46及び受光器40の一方又は両方と光学フィルター10との間の、光の直接経路が示されているが、諸例では、発光器46及び受光器40の一方又は両方と光学フィルター10との間の光は、光学的に導かれた経路、反射経路、又は屈折若しくはフィルタリングを含む光学的操作を含む経路、又は異なる光学媒体を通って進む経路を含む、非直接的経路をたどり得る。
【0040】
このように、諸例では、光学フィルター10は、受光器40を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し、一方で、受光器40が近赤外波長を受光することを実質的に可能にするように構成され得る。諸例では、光学フィルター10は、例えば可視波長を散乱させることによって、受光器40又は発光器46の一方又は両方を視覚からカモフラージュするように構成され得る。
【0041】
図3A~
図3Dは、例示的な光学フィルターと、視認可能なパターン及び不可視の近赤外パターンを表示する電子ディスプレイとを含む例示的なシステムの概念図である。電荷結合素子(charge-coupled device、CCD)などの撮像センサは近赤外領域内で検出するため、可視的に反射可能なグラフィックを含む標示を生成することが可能であろう。標示は、カメラによって検出可能である不可視画像を隠蔽することができるであろう。例えば、画像は、例えば、バーコード、2Dバーコード、又はQRコード(登録商標)などの、信号又は情報を符号化する所定のパターンを含むことができるであろう。QRコード(登録商標)の物理的サイズは、それらが包含し得る情報量を制限することがある。しかし、不可視QRコード(登録商標)は、可視グラフィックを乱したり、又は損なったりすることなく、標示と同じ物理的大きさを有することができるであろう。一例では、電子ディスプレイ60は、ディスプレイ60の背後に隠蔽されたそれぞれの可視及び近赤外発光器によって放射された可視及び近赤外光パターンを同時に表示する能力を有し得る。電子ディスプレイ60は、上記において
図1A~
図1Eを参照して説明された例示的な光学フィルターで被覆されていてもよい。例えば、電子ディスプレイ60は、
図3Bに示すように、視認可能であるパターン62と不可視の近赤外パターン64とを同時に表示し得る。パターン62は、相対的により小さいQRコード(登録商標)、又は相対的により小さい表示フットプリントを有する他のインダイシア(indicia)を含み得、パターン64は、相対的により大きいQRコード(登録商標)、又は相対的により大きなフットプリントを有する他のインダイシアを含み得る。パターン62は、光学フィルター(図示されていない)による可視波長の反射又は散乱の結果、視認可能になり得る。
図3Aにおいて見られるように、パターン62のみが視認可能であり、パターン64は、近赤外波長において比較的高い透明度で提示されている一方で、視覚に対して不可視のままであり得る。それゆえ、近赤外波長を感知する能力を有するカメラは、十分な解像度で、例えば、パターン64内に包含され得る情報を復号するのに十分な解像度で、パターン64を感知することができる。
図3Cに示す例では、所定のパターンのみがディスプレイ60上で視認可能であり、一方で、
図3Dに示すように、近赤外カメラによってのみ検出可能な不可視の近赤外パターンがディスプレイ60上に同時に表示され得る。それゆえ、3A、3B、3C、及び3Dのそれぞれの例示的なシステムでは、例示的な光学フィルターを用いて、所定の可視パターンのみを見せつつ、近赤外パターンの発生源を隠蔽又はカモフラージュすることができる。一部の例では、不可視の近赤外パターン64を用いて秘匿情報を符号化することができ、一方で、視認可能なパターン62を用いて、視認可能な情報、又は少なくとも、符号化可能であるが符号化しても視認可能な情報を提示することができる。例えば、パターン62は、ウェブサイトなどの、情報の第1のセットを符号化することができ、一方で、パターン64は、ディスプレイ60の位置などの、情報の第2のセットを符号化することができる。諸例では、電子ディスプレイ60は、可視パターン、不可視パターン、又はその両方を表示し得る。諸例では、電子ディスプレイ60は複数のパターンを表示し得る。諸例では、電子ディスプレイは、静的パターン又は動的パターンを表示し得る。それゆえ、例示的な光学フィルターは、高透明度の近赤外透過を有するカモフラージュをもたらし得る。
【0042】
図4は例示的な技術のフローチャートである。例示的な技術は、発光器46又は受光器40の一方又は両方に隣接して光学フィルター10を配置すること(52)を含み得る。光学フィルター10は、以上において
図1A~
図1E及び
図2A~
図2Eを参照して説明されたとおりの、波長透過選択性層を含む。例示的な技術は任意選択的に、光学フィルター10と発光器46又は受光器40の一方又は両方との間に反射層16を配置すること(54)を更に含み得る。光学フィルター10は任意選択的に、発光器46又は受光器40の一方又は両方をカモフラージュし得る(56)。光学フィルター10は任意選択的に、発光器又は受光器の一方又は両方を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し得る(58)。
【0043】
このように、本開示による例示的なシステム、物品、及び技術は、例えば可視波長を選択的に散乱、吸収、又は反射させることによって可視波長の透過を減少させながら近赤外光を比較的高い透明度で透過させる例示的な波長透過選択性層を含む例示的な光学物品を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される全ての科学用語及び技術用語は、別途明記しない限り、当該技術分野で通常使用される意味を有する。本明細書で与えられる定義は、本明細書で頻繁に用いる特定の用語の理解を助けるためのものであり、本開示の範囲の限定を意図するものではない。
【0045】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。
【0046】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、用語「又は」は、内容が別途明示しない限り、「及び/又は」を含む意味で通常用いられる。用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0047】
本明細書で用いる場合、「有する(have)」、「有する(having)」、「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」などは、オープンエンドの意味で用いられ、通常、「含むが、これらに限定されない」という意味である。「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」などは、「含む(comprising)」などに包含されることが理解されるであろう。例えば、銀「を含む」組成物は、銀「からなる」組成物であってもよく、又は銀「から本質的になる」組成物であってもよい。
【0048】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、ある組成物、装置、システム、及び方法などに関する場合、その組成物、装置、システム、及び方法などの構成成分が、列挙された構成成分と、その組成物、装置、システム、及び方法などの基本的特性及び新規の特性に対して実質的に影響を及ぼさない任意の他の構成成分とに限定されることを意味する。
【0049】
「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、ある特定の状況においてある特定の利益を供し得る実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、特許請求の範囲を含む本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0050】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含み、又は10以下は、10、9.4、7.6、5、4.3、2.9、1.62、0.3などを含む)。値の範囲が特定の値「まで」である場合、その値は、その範囲内に含まれる。
【0051】
上の記載及び以下の特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」などの使用は、必ずしも、列挙された数の物体が存在するのを示すことを意図するものではない。例えば、「第2の」基材は、単に、別の基材(例えば「第1の」基材など)から区別することを意図するものでしかない。また、上の記載及び以下の特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」などの使用は、必ずしも、一方が他方よりも時間的に早く現れるのを示すことを意図するものではない。
【0052】
本開示に係る例示的な物品及び技法を、以下の非限定的な実施例によって例示する。
【0053】
【0054】
試験方法
全可視及び拡散可視(400~700nm)並びにNIR(800~1000nm)透過は、分光計(Hunterlab Ultrascan Pro)を使用して5nm間隔で測定された。実施例1~7について、365nm、475nm、525nm、650nm、700nm、750nm、800nm、850nm、875nm、900nm、940nm、及び975nmにおける透過率(%T)を、以下の表2に報告する。
【0055】
コーティング溶液
コーティング溶液1:9gmのNazdar NSC61を7グラムのThinner/screen wash RE195 Nazdarで希釈して、希釈スクリーンインク又はコーティング溶液1を作製した。
【0056】
コーティング溶液2:210グラムのParaloid B66を、密閉したガラス瓶内で60℃で210グラムのMEK中に溶解した。75gmのOrasol Black X55を300グラムのMEK中に溶解した。Orasol Black X55溶液を、MEK中のParaloid B66溶液(上記のように作製)に添加して、コーティング溶液2を調製した。
【0057】
コーティング溶液3:トルエン中に溶解した1gmの10重量%のIR 788を2gmのコーティング溶液2に添加して、コーティング溶液3を作製した。
【0058】
実施例1
コーティング溶液1を、#20メイヤーロッドを用いて着色PET(YS-7)フィルム上にコーティングした。コーティングされた試料をオーブン内で70℃で5分間乾燥させた後、1日間空気乾燥させた。
【0059】
実施例2
コーティング溶液1を、#20メイヤーロッドを用いて着色PETフィルム(YS-35)上にコーティングした。コーティングされた試料をオーブン内で70℃で5分間乾燥させた後、1日間空気乾燥させた。
【0060】
実施例3
コーティング溶液1を、#20メイヤーロッドを用いて着色PETフィルム(CP-20)上にコーティングした。コーティングされた試料をオーブン内で70℃で5分間乾燥させた後、1日間空気乾燥させた。
【0061】
実施例4~6
コーティング溶液2を、コータでYS-7フィルム(幅5インチ)に、コーティング幅4インチで3つの異なるコーティング重量12cc/分、8cc/分、及び4cc/分でコーティングした。コーティングされたウェブを、華氏100度、華氏110度、及び華氏140度の一連のオーブンで乾燥させた。実施例4、5、及び6のコーティングされたフィルムの光学密度は、それぞれ5.4、4.5、及び3.4と測定された。
【0062】
実施例7
コーティング溶液3を、#20メイヤーロッドを用いて着色PETフィルム(YS-7)上にコーティングした。コーティングされた試料をオーブン内で70℃で5分間乾燥させた後、1日間空気乾燥させた。
【0063】
実施例1~6のコーティングされたフィルムの全透過及び拡散透過を、Hunterlab Ultrascan Pro分光計を使用して測定した。940nmでの全透過に対する拡散透過の比率により、940nmでのIR散乱比を計算した。
図5は、コーティングされた試料の全透過スペクトルを示す。表2は、940nmでの正透過(specular transmission)及び940nmでのIR散乱比(パーセント)を示す。測定値は、フィルムが、高い可視光遮断、高いNIR透過(これは調節可能である)を呈することを示しており、940nmでの拡散透過/全透過のNIR散乱比が1%未満であることから明らかなように、940nmでは非常に低い拡散NIR散乱となる。
【0064】
【0065】
このように、光学物品及びそれを含むシステムの実施形態が開示されている。上記の実施及び他の実施が、以下の請求項の範囲内にある。当業者であれば、本開示は開示されている実施形態以外の実施形態で実践できることを理解するであろう。開示された実施形態は例示目的で提示されており、限定を目的とするものではない。以下、例示的実施形態を示す。
[1]
発光器又は受光器の一方又は両方と、
前記発光器又は前記受光器の一方又は両方に隣接した光学フィルターと、を備えるシステムであって、前記光学フィルターが、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を備え、前記波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる、システム。
[2]
前記波長透過選択性層が、701nm~849nm以外の波長の透過を少なくとも部分的に可能にする、[1]に記載のシステム。
[3]
前記波長透過選択性層が、701nm~849の波長の約50%未満を透過し、701nm~849の波長の約40%未満を透過し、701nm~849の波長の約30%未満を透過し、701nm~849の波長の約20%未満を透過し、又は701nm~849の波長の約15%未満を透過する、[1]又は[2]に記載のシステム。
[4]
前記波長透過選択性層が、350nm~701nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる、[1]~[3]のいずれか一項に記載のシステム。
[5]
前記波長透過選択性層が、350nm~701の波長の約50%未満を透過し、350nm~701の波長の約40%未満を透過し、350nm~701の波長の約30%未満を透過し、350nm~701の波長の約20%未満を透過し、又は350nm~701の波長の約15%未満を透過する、[1]~[4]のいずれか一項に記載のシステム。
[6]
前記波長透過選択性層が、850nm以上の波長の約50%超を透過する、[1]~[5]のいずれか一項に記載のシステム。
[7]
前記吸収剤成分が、染料、顔料、又はこれらの組み合わせから選択される、[1]~[5]のいずれか一項に記載のシステム。
[8]
前記染料が、可視的に黒色又は着色されているが、近IR波長に対して透明である、[7]に記載のシステム。
[9]
前記染料が金属錯体染料である、[8]に記載のシステム。
[10]
前記吸収剤成分が顔料である、[7]に記載のシステム。
[11]
前記顔料がナノ粒子顔料である、[10]に記載のシステム。
[12]
前記顔料が、有機顔料、無機顔料、又はこれらの組み合わせである、[10]又は[11]に記載のシステム。
[13]
前記発光器又は前記受光器の一方又は両方が近赤外域内の動作波長を有する、[1]~[12]のいずれか一項に記載のシステム。
[14]
前記光学フィルターが表面光学微細構造を含む、[1]~[13]のいずれか一項に記載のシステム。
[15]
前記発光器が近赤外LED又は近赤外レーザを含む、[1]~[14]のいずれか一項に記載のシステム。
[16]
前記受光器が、近赤外カメラ、又は近赤外受光帯域を有する光センサを含む、[1]~[15]のいずれか一項に記載のシステム。
[17]
前記光学フィルターが反射層を含む、[1]~[16]のいずれか一項に記載のシステム。
[18]
前記光学フィルターがビーズ拡散層を含む、[1]~[17]のいずれか一項に記載のシステム。
[19]
前記光学フィルターが、前記受光器を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し、一方で、前記受光器が近赤外波長を受光することを実質的に可能にするように構成されている、[1]~[18]のいずれか一項に記載のシステム。
[20]
前記光学フィルターが、前記受光器又は前記発光器の一方又は両方を視覚からカモフラージュするように構成されている、[1]~[19]のいずれか一項に記載のシステム。
[21]
前記光学フィルターが、可視波長を吸収することによって前記受光器又は前記発光器の一方又は両方を視覚から少なくとも部分的にカモフラージュするように構成されている、[20]に記載のシステム。
[22]
前記光学フィルターが黒色に見える、[1]~[21]のいずれか一項に記載のシステム。
[23]
光学フィルターを備える物品であって、前記光学フィルターが、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を備え、前記波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる、物品。
[24]
前記波長透過選択性層が、701nm~849nm以外の波長の透過を少なくとも部分的に可能にする、[23]に記載の物品。
[25]
前記波長透過選択性層が、701nm~849の波長の約50%未満を透過し、701nm~849の波長の約40%未満を透過し、701nm~849の波長の約30%未満を透過し、701nm~849の波長の約20%未満を透過し、又は701nm~849の波長の約15%未満を透過する、[23]又は[24]に記載の物品。
[26]
前記波長透過選択性層が、350nm~701nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる、[23]~[25]のいずれか一項に記載の物品。
[27]
前記波長透過選択性層が、350nm~701の波長の約50%未満を透過し、350nm~701の波長の約40%未満を透過し、350nm~701の波長の約30%未満を透過し、350nm~701の波長の約20%未満を透過し、又は350nm~701の波長の約15%未満を透過する、[23]~[26]のいずれか一項に記載の物品。
[28]
前記波長透過選択性層が、850nm以上の波長の約50%超を透過する、[23]~[27]のいずれか一項に記載の物品。
[29]
前記吸収剤成分が、染料、顔料、又はこれらの組み合わせから選択される、[23]~[28]のいずれか一項に記載の物品。
[30]
前記染料が、可視的に黒色又は着色されているが、近IR波長に対して透明である、[29]に記載の物品。
[31]
前記染料が金属錯体染料である、[30]に記載の物品。
[32]
前記吸収剤成分が顔料である、[31]に記載の物品。
[33]
前記顔料がナノ粒子顔料である、[32]に記載の物品。
[34]
前記顔料が、有機顔料、無機顔料、又はこれらの組み合わせである、[32]又は[33]に記載の物品。
[35]
前記光学フィルターが表面光学微細構造を含む、[23]~[34]のいずれか一項に記載の物品。
[36]
前記光学フィルターが反射層を含む、[23]~[35]のいずれか一項に記載の物品。
[37]
前記光学フィルターがビーズ拡散層を含む、[23]~[36]のいずれか一項に記載の物品。
[38]
前記光学フィルターが、前記受光器を可視波長から少なくとも部分的に遮蔽し、一方で、前記受光器が近赤外波長を受光することを実質的に可能にするように構成されている、[23]~[37]のいずれか一項に記載の物品。
[39]
前記光学フィルターが、前記受光器又は前記発光器の一方又は両方を視覚からカモフラージュするように構成されている、[23]~[38]のいずれか一項に記載の物品。
[40]
前記光学フィルターが黒色に見える、[23]~[39]のいずれか一項に記載の物品。
[41]
前記接着剤が、スクリーン印刷可能又はインクジェット印刷可能である、[23]~[40]のいずれか一項に記載の物品。
[42]
光学フィルターを備える物品であって、前記光学フィルターが、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を備え、前記波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させ、前記光学フィルターが、近赤外(NIR)波長を反射する物体に隣接して配置される、物品。
[43]
検出可能物体と、
前記検出可能物体に隣接した光学フィルターと、を備えるシステムであって、前記光学フィルターが、吸収剤成分を含む少なくとも1つの波長透過選択性層を備え、前記波長透過選択性層が、その上に入射した701nm~849nmの波長の透過を少なくとも部分的に減少させる、システム。