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特許7580274光走査装置、画像形成装置、制御方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】光走査装置、画像形成装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/12 20060101AFI20241101BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20241101BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
G02B26/12
B41J2/47 101M
H04N1/113
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021001574
(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公開番号】P2022106520
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 和剛
(72)【発明者】
【氏名】遊田 博之
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-262580(JP,A)
【文献】特開平11-240198(JP,A)
【文献】特開2019-132899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0078721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10 - 26/12
B41J 2/47
H04N 1/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、
画像データに基づく目標光量に応じたアナログ信号によって前記レーザ発光部を駆動させるレーザドライバと、
前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部と、
前記対象物上に走査する光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号部と、
前記目標光量とオフセット値との関係について、温度に応じたオフセット値を設定した複数のオフセット調整テーブルを記憶する記憶部と、
温度毎に参照するオフセット調整テーブルを切り換え、前記レーザ発光部の目標光量に基づいて前記切り換えたオフセット調整テーブルから、前記レーザ発光部に入力する目標光量に応じたアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、
決定されたオフセット値の信号を、前記シェーディング補正信号によってシェーディング補正された前記アナログ信号に重ね合わせてオフセットし、シェーディング補正されかつ前記オフセットされた前記目標光量に応じたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、
を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記レーザ発光部の発光量を検出する光量検出部を設け、
前記レーザドライバ制御部は、前記光量検出部が検出した前記レーザ発光部の発光量を目標光量になるように制御するものであり、
前記オフセット値決定部は、前記目標光量に基づきオフセット値を決定することを特徴とする請求項に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記オフセット調整テーブルは、レーザ発光部の光量-電流特性又は根元光量の特性毎にオフセット値を個別に記憶したものであることを特徴とする請求項に記載の光走査装置。
【請求項4】
請求項1からのうちの1項に記載の光走査装置と、
前記光走査部が前記レーザ発光部から出射するレーザ光を走査することによって、表面に静電潜像が形成される像担持体と、
前記像担持体の表面に形成される静電潜像を現像する現像部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、画像データに基づく目標光量に応じたアナログ信号によって前記レーザ発光部を駆動させるレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置の制御方法であって、
前記対象物上に走査する光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号出力工程と、
前記目標光量とオフセット値との関係について、温度に応じたオフセット値を設定した複数のオフセット調整テーブルを記憶する記憶工程と、
温度毎に参照するオフセット調整テーブルを切り換えて、前記切り替えたオフセット調整テーブルから前記目標光量に基づいて前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、
決定されたオフセット値の信号を、前記シェーディング補正信号によってシェーディング補正された前記アナログ信号に重ね合わせてオフセットし、シェーディング補正されかつオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御工程と、
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、画像データに基づく目標光量に応じたアナログ信号によって前記レーザ発光部を駆動用させるレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置のコンピュータが、
前記対象物上に走査する光をシェーディング補正するためのシェーディング補正信号を出力するシェーディング補正信号出力機能と、
前記目標光量とオフセット値との関係について、温度に応じたオフセット値を設定した複数のオフセット調整テーブルを記憶する記憶機能と、
温度毎に参照するオフセット調整テーブルを切り換えて、前記切り替えたオフセット調整テーブルから前記目標光量に基づいて前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定機能と、
決定されたオフセット値の信号を、前記シェーディング補正信号によってシェーディング補正された前記アナログ信号に重ね合わせてオフセットし、シェーディング補正されかつオフセットされた前記目標光量に応じたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御機能と、
を実現するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光走査装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置においては、画像信号に基づく画像を記録用紙(シート状の画像記録媒体)に形成する処理過程で、感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光処理のためにレーザダイオード(発光素子)の発光するレーザ光で感光体ドラムを被走査体として走査する光走査装置が搭載されている。
【0003】
一般に、レーザダイオードは、入力電流を増加させていくと閾値電流で光出力が立ち上がる特性を有している。その特性からレーザ発振の立ち上がり時間の遅れを短くするため常時バイアス電流を流すようにしているのが一般的であった。
【0004】
バイアス電流に関し、バイアス電流を固定せずに、温度変化や計時変化によって生じる閾値電流の変化に追従するため、閾値電流の変化に応じてバイアス電流を自動調整するオートバイアス回路方式の発光素子駆動装置が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、特許文献1のようなオートバイアス回路を採用することなく、固定のバイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザドライバに関する技術がある。
【0006】
固定バイアス電流に関し、特許文献2は、オートバイアス制御機能を有していない光駆動部を用いて光源の射出光量を補正する光走査装置を開示する。
【0007】
特許文献2では、レーザダイオードの光量と電流の特性(PI特性)を温度毎に記憶させたうえで、目標光量に応じてレーザドライバを制御するアナログ信号の電圧値を算出するもののため、次の課題があった。
【0008】
環境やライフ(使用時間)補正等の目標光量の変化に応じて、再度、アナログ信号の電圧値を算出する必要があり、処理に時間を要した。
【0009】
低い目標光量でシェーディングを実施する場合、シェーディングの分解能が悪くなっていた。
【0010】
レーザダイオードのPI特性や根元光量が個別にばらついた場合、目標光量にずれを生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2003-298178号公報
【文献】特開2018-69518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示は、斯かる実情に鑑み、目標光量の変化に応じた処理に時間を要することがなく、シェーディングを行った場合に分解能が維持され、目標光量にずれを生じない光走査装置等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示は、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部と、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部と、決定されたオフセット値の信号を前記アナログ信号に重ね合わせてオフセットし、そのオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御部と、を備えたことを特徴とする光走査装置である。
【0014】
また、本開示は、前記光走査装置と、前記光走査部が前記レーザ発光部から出射するレーザ光を走査することによって、表面に静電潜像が形成される像担持体と、前記像担持体の表面に形成される静電潜像を現像する現像部と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【0015】
また、本開示は、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置の制御方法であって、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定工程と、決定されたオフセット値の信号を前記アナログ信号に重ね合わせてオフセットし、そのオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御工程と、と備えたことを特徴とする制御方法である。
【0016】
また、本開示は、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部と、前記レーザ発光部駆動用のレーザドライバと、前記レーザ発光部から出射するレーザ光を対象物上に走査する光走査部とを備えた光走査装置のコンピュータが、前記レーザ発光部の目標光量に基づき、前記レーザ発光部に入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定機能と、決定されたオフセット値の信号を前記アナログ信号に重ね合わせてオフセットし、そのオフセットされたアナログ信号を前記レーザドライバに入力することによって、前記レーザ発光部の発光量を制御するレーザドライバ制御機能と、を実現するプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
本開示の光走査装置等によれば、決定されたオフセット値の信号をアナログ信号に重ね合わせてオフセットし、そのオフセットされたアナログ信号をレーザドライバに入力することによって、レーザ発光部の発光量を制御するので、目標光量の変化に応じた処理に時間を要することがなく、シェーディングを行った場合に分解能が維持され、目標光量にずれを生じないものにできるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る光走査装置を搭載した画像形成装置の外観図である。
図2】画像形成装置及び光走査装置の制御ブロック図である。
図3】光走査装置のレーザ発光部及びレーザドライバの信号伝達経路の回路図である。
図4】オフセット調整テーブルの例の説明図である。
図5】光走査部の機械的構成の説明図である。
図6】光走査装置の処理の流れを説明するフローチャートである。
図7】シェーディング補正値の信号、オフセット値の信号等の説明であって、(a)がBDセンサの検出信号、(b)がシェーディング補正値の信号、(c)がオフセット値の信号、(d)がレーザドライバへの入力信号の各説明図である。
図8】第2実施形態に光走査装置を説明するための、温度によって変化するレーザ発光素子の光-電流特性の例を示す線図である。
図9】(a)~(c)は、温度毎のオフセット調整テーブルの各例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して本開示を実施するための一実施形態について説明する。
【0020】
なお、以下の実施形態は、本開示を説明するための一例であり、特許請求の範囲に記載した発明の技術的範囲が、以下の記載に限定されない。
【0021】
[1. 第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る画像形成装置10の構成について説明する。
【0022】
[1.1 全体構成]
画像形成装置10は、図1に示すように、画像形成装置10の上部に原稿読取部112を備えて原稿の画像を読取り、電子写真方式により画像を出力する情報処理装置である。画像形成装置10には、多機能プリンタ(Multifunction Printer)を例に挙げることができる。
【0023】
画像形成装置10は、図2の制御系図に示すように、主に、制御部100と、画像入力部110と、原稿読取部112と、画像処理部120と、画像形成部130と、操作部140と、表示部150と、記憶部160と、通信部170とを備え、光走査装置200の
機能も有する。
【0024】
[1.2 機能構成]
制御部100は、画像形成装置10の全体を制御するための機能部である。
【0025】
そして、制御部100は、各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、例えば1又は複数の演算装置(例えば、CPU(Central Processing Unit))等により構成されている。
【0026】
画像入力部110は、画像形成装置10に入力される画像データを読み取るための機能部である。そして、画像入力部110は、原稿の画像を読み取る機能部である原稿読取部112と接続され、原稿読取部112から出力される画像データを入力する。
【0027】
また、画像入力部110は、USBメモリや、SDカード等の記憶媒体から画像データを入力してもよい。また、他の端末装置と接続を行う通信部170により、他の端末装置から画像データを入力してもよい。
【0028】
原稿読取部112は、コンタクトガラス(不図示)に載置された原稿を光学的に読み取り、画像処理部120へスキャンデータを渡す機能を有する。
【0029】
画像形成部130は、画像データに基づく出力データを記録媒体(例えば記録用紙)に形成するための機能部である。例えば、図1に示すように、給紙トレイ122から記録用紙を給紙し、画像形成部130において記録用紙の表面に画像が形成された後に排紙トレイ124から排紙される。画像形成部130は、電子写真方式を利用した電子写真プロセスを利用したレーザプリンタにより構成されている。
【0030】
画像形成部130の電子写真プロセスは、後述する光走査装置200によって、感光体ドラム(像担持体)130a(図4参照)表面に画像データに対応するレーザビーム(レーザ光に相当)を走査して静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーによって現像し、現像したトナー像を記録媒体上に転写し及び定着して画像を形成するものである。
【0031】
画像処理部120は、原稿読取部112で読み込まれた画像データに基づき、設定されたファイル形式(TIFF,GIF,JPEG等)に変換する機能を有する。そして、画像処理が施された画像データに基づき出力画像を形成する。
【0032】
操作部140は、ユーザによる操作指示を受け付けるための機能部であり、各種キースイッチや、接触による入力を検出する装置等により構成されている。ユーザは、操作部140を介して、使用する機能や出力条件を入力する。
【0033】
表示部150は、ユーザに各種情報を表示するための機能部であり、例えばLCD(Liquid crystal display)等により構成されている。
【0034】
すなわち、操作部140は、画像形成装置10を操作するためのユーザインターフェースを提供し、表示部150には、画像形成装置の各種設定メニュー画面やメッセージが表示される。
【0035】
なお、画像形成装置10は、図1に示すように、操作部140の構成として、操作パネル141と、表示部150とが一体に形成されているタッチパネルを備えてもよい。この場合において、タッチパネルの入力を検出する方式は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式といった、一般的な検出方式であればよい。
【0036】
記憶部160は、画像形成装置10の動作に必要な制御プログラムを含む各種プログラムや、読み取りデータを含む各種データやユーザ情報が記憶されている機能部である。記憶部160は、例えば、不揮発性のROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。また、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)を備えてもよい。
【0037】
通信部170は、外部の装置と通信接続を行う。通信部170としてデータの送受信に用いられる通信インターフェース(通信I/F)が設けられている。通信I/Fにより、画像形成装置10でのユーザによる操作によって、画像形成装置10の記憶部に格納されるデータを、ネットワークを介して接続される他のコンピュータ装置へデータの送受信をすることができる。
【0038】
[1.3 光走査装置200]
図2に示すように、画像形成装置10には光走査装置200が搭載されている。
【0039】
図3は、光走査装置200におけるレーザドライバ周辺の信号伝達経路の具体的な回路図を示す。図5は、光走査装置200の機械的構成を示す。
【0040】
光走査装置200は、図2図3に示すように、バイアス電流からの超過分の電流が入力されたアナログ信号に比例して増減するレーザ発光部(LD:Laser Device)200aと、レーザ発光部駆動用のレーザドライバ210と、レーザ発光部200aから出射するレーザビーム(レーザ光)を対象物の感光体ドラム130a上に走査する光走査部220と、対象物上に走査する光をシェーディング補正するためのシェーディング補正値の信号(Vshade)を出力するシェーディング補正信号部230と、レーザ発光部200aの目標光量(Vref)に基づき、レーザ発光部200aに入力するアナログ信号のオフセット値を決定するオフセット値決定部240と、決定されたオフセット値の信号(Voffset)をアナログ信号(シェーディング補正値の信号(Vshade))に重ね合わせてオフセットし、そのオフセットされたアナログ信号のシェーディング補正信号(Vsw)をレーザドライバ(LD Driver)210に入力することによって、レーザ発光部(LD)200aの発光量を制御するレーザドライバ制御部250と、を備えている。
【0041】
シェーディング補正信号部230の出力するシェーディング補正値(Vshade)は、光走査装置200の調整工程で算出され、記憶部160のROM等に記憶される。シェーディング補正値の読み出しは、主走査方向における感光体ドラム130a表面に対するレーザビームの照射位置に応じて当該記憶部160から順次読み出される。
【0042】
図3に示すように、シェーディング補正値の信号(Vshade)は抵抗r1を介した経路s1を経由し、また、オフセット値の信号(Voffset)は抵抗r2を介した経路s2を経由して、接続部c1で重ね合わせされてシェーディング補正信号がオフセットされた状態のアナログ信号(Vsw)がレーザドライバ210に入力される。なお、接続部c1には大地(G)との間に抵抗r3が設けられている。
【0043】
また、光走査装置200は、レーザ発光部200aの発光量を検出する光量検出部260を有しており、レーザドライバ制御部250は、光量検出部260が検出したレーザ発光部200aの発光量を目標光量になるように制御するものである。
【0044】
具体的には、レーザドライバ制御部250は、例えばレーザダイオード(レーザ発光部200a)に内蔵されたフォトダイオード(PD:Photo Diode)からなる光量検出部260によってレーザダイオードの光出力(光パワー)をモニタし、その光出力が目標光量になるように基準電圧信号(Vref)によって、レーザダイオードの駆動電流を制御するAPC(Automatic Power Control)の制御方式を採用したものである。
【0045】
オフセット値決定部240は、APC制御時のレーザドライバ制御部250の目標光量の信号(基準電圧信号(Vref))に基づきオフセット値(信号Voffset)を決定するものである。記憶部160が、目標光量とオフセット値との関係が設定されたオフセット調整テーブル240aを記憶しており、オフセット値決定部240は、記憶されたオフセット調整テーブル240aを参照して、目標光量に基づいてオフセット値を決定する。
【0046】
実施形態においては、図4に1例を示すようなオフセット調整テーブル240aを記憶部160のROM(:Read Only Memory)に記憶する。図4に示す、オフセット調整テーブル240aは、目標光量の信号(基準電圧信号(Vref))とオフセット値(信号Voffset)との関係が設定されたものになっている。
【0047】
記憶部160にオフセット調整テーブル240aの形で一旦記憶しておくことによって、環境やライフ補正等の目標光量の変化に応じて、レーザドライバ210へのアナログ信号の設定値を再度算出する必要がなく、処理に時間を要しない。
【0048】
また、オフセット値(信号Voffset)が温度に応じて変化するのに対処するため、記憶部160に、後述の図9に示すように、温度に応じた複数のオフセット調整テーブル240aを記憶することができる。
【0049】
図5は、光走査装置200の光走査部220の機械的構成を示す。
【0050】
図5に示すように、光走査部220は、レーザ光を感光体ドラム130a上に走査して感光体ドラム130a上に静電潜像を形成するものである。
【0051】
光走査装置200は、図5に示すように、レーザビーム(レーザ光)を発生するレーザ発光部200aを備え、該レーザ発光部200aから出射されるレーザビームの出射方向には、入射されたレーザビームを平行ビームに変換するコリメータレンズ200bと、略中央部に開口200c1が形成された板状部材により構成されたアパーチャ200cと、後述するレーザビームを走査方向に拡大するfθレンズ200dとの組み合わせにより入射されたレーザビームを拡大する凹レンズ200eと、シリンドリカルレンズ200fと、入射ビーム折返しミラー200gとが順次配設されたものである。
【0052】
また、入射ビーム折返しミラー200gによるレーザビームの反射方向には、fθレンズ200d及び複数の反射面を外周面に備えたポリゴンミラー200hが順に配設されており、ポリゴンミラー200hの反射面によるレーザビームの反射方向には、fθレンズ200d、反射ミラー200i、ポリゴンミラー200hの面倒れ補正を行う出射ビーム折返しミラー200j、感光体ドラム130aが配設されている。
【0053】
反射ミラー220iに反射した反射光は、ビームディテクトセンサ(BDセンサ)200kで検出する。BDセンサ200kは、レーザビームの受光量の大きさに応じた検出信号を出力する光センサである。BDセンサ200kは、レーザビームの主走査領域(感光体ドラム130aの軸方向に沿った走査領域)の始端側からの反射光を検知する機能を有し、感光体ドラム130aに静電潜像を書き込むタイミングの制御に用いるものである。
【0054】
また、レーザ発光部200aは、そのレーザ出射量を検出するPD(フォトダイオード)を備えた光量検出部260を近傍に備えている。
【0055】
[1.4 処理の流れ]
図6は、光走査装置の処理の流れを説明するフローチャートである。各ステップ~は「S~」と略記する。図6は、オフセット調整テーブル240aの具体例を示す。
【0056】
光走査装置200の電源がオンか否か(S100)を判定し、電源がオンの場合(S100:Yes)、レーザドライバ210の電源がオンになったか否かを判定する(S110)。レーザドライバ210の電源がオンであれば(S110:Yes)、レーザ発光部200aの発光量を光量検出部260によって検出する(S120)。
【0057】
次いで、レーザドライバ制御部250は、光量検出部260が検出したレーザ発光部200aの発光量が目標光量(Vref信号)になるように制御(APC制御)する(S130)。
【0058】
次いで、シェーディング補正するモードであるか否かを判定し(S140)、シェーディング補正するモードであれば(S140:Yes)、記憶部160に記憶されたオフセット調整テーブル240aを参照して、目標光量(の信号Vref)に基づいてオフセット値(の信号Voffset)を決定する(S150)。具体的には、図4に示すように、オフセット調整テーブル240aは、目標光量(の信号Vref)が0~255(dec)に対して、オフセット値(の信号Voffset)が192~32(dec)の範囲で設定されており、目標光量が増大するとオフセット値が減少する関係になっている。
なお、シェーディング補正するモードでなければ(S140:No)、S170に進む。
【0059】
次いで、シェーディング補正値の信号(Vshade)をアナログ信号のオフセット値の信号(Voffset)に重ね合わせてシェーディング補正信号をオフセットしたアナログ信号(Vsw)を生成する(S160)。
【0060】
次いで、アナログ信号(Vsw)をレーザドライバ(LD Driver)210に入力することによって、レーザ発光部(LD)200aの発光量を制御する(S170)。
【0061】
次いで、制御を終了するか否かを判定し(S180)、制御を終了しない(S180:No)ならば、S110に戻り制御を繰り返す。制御の終了(S180:Yes)で終わる。
【0062】
[1.5 動作例]
図7は、シェーディング補正値の信号(Vshade)、オフセット値の信号(Voffset)、オフセットされたシェーディング補正信号(レーザドライバ入力信号:Vsw)の例を示す。いずれの信号もアナログの電圧信号である。なお、BD信号は、ビームディテクトセンサ(BDセンサ)200kで検出された主走査領域の始端側からの検出信号である。
【0063】
図7に示すように、シェーディング補正値の信号(Vshade)には、0レベルに近い部分があるが、オフセット値の信号(Voffset)で重ね合わせて持ち上がり、オフセットされたシェーディング補正信号(Vsw)では0レベルから離れている。このオフセット状態のシェーディング補正信号(Vsw)のアナログ信号をレーザドライバ210に入力する。
【0064】
[1.6 効果]
実施形態の光走査装置によれば、APC制御時のレーザドライバ制御部250の目標光量の信号(基準電圧信号(Vref))と連動したオフセット値の信号(Voffset)をシェーディング補正値の信号(Vshade)に合成することで、オフセットされた状態のシェーディング補正信号(Vsw)を生成し、オフセット調整する。
【0065】
したがって、シェーディング補正値をオフセットするだけであるので、環境やライフ補正等の目標光量の変化に応じて、再度、全セグメント分、シェーディング補正値を算出・設定する必要がなく、算出等する場合に比較して、計算や制御の負荷が軽減する。
【0066】
また、低い目標光量でシェーディングを実施しても、シェーディングの分解能が維持される。
【0067】
オフセット値をオフセット調整テーブル240aによってROM等の記憶部160に記憶するため、環境やライフ変化等の目標光量の変化に応じてアナログ信号の設定値を再度算出する必要がないため、処理に時間を要しない。また、処理のために費やされるCPUの処理が不要となるためCPUの使用負荷を軽減できる。
【0068】
また、オフセット値を目標光量に対応して個別に記憶させるため、レーザ発光素子(レーザ発光部200a)のPI(光-電流)特性や根本光量がばらついても目標光量にずれが生じない。
【0069】
[2. 第2実施形態]
第2実施形態は、光走査装置200のオフセット調整テーブル240aを温度毎に設定したものである。図8は温度によって変化するレーザ発光素子のPI(光-電流)特性例、図9(a)~(c)は、温度毎のオフセット調整テーブルの例を示す。
【0070】
図8に示すように、レーザ発光素子は動作電流Iが発振開始電流(閾値)Ithを超えたら駆動して発光するものであり、レーザ発光素子の温度に応じて、発振開始電流Ith(
Ith1、Ith2、Ith3…)と動作電流Iとレーザ発光量Pが変化する。
【0071】
図8では、温度が10℃では発振開始電流Ith1と動作電流Iが小さくても、レーザ発光量Pが大きいが、25℃(発振開始電流Ith2)から40℃(発振開始電流Ith3)と温度が上昇するに伴って、10℃と同じレーザ発光量Pを得るのに発振開始電流Ithと動作電流Iが大きくなることが見て取れる。
【0072】
第2実施形態では、図9に示すように、温度帯域別のオフセット調整テーブルを記憶部160のROMに記憶させ、温度毎に参照するテーブルを切り換えるものである。図9の(a)が温度帯域5~15℃、(b)が温度帯域15~30℃、(c)が温度帯域30~45℃の各オフセット調整テーブルである。
【0073】
図9(a)、(b)、(c)に示す各オフセット調整テーブルを比較すれば理解されるように、温度が上がるにつれて目標光量の信号(Vref)に対するオフセット値の信号(Voffset)が大きくなっており、これによって、シェーディング補正値が温度上昇に応じて大きくするようにオフセットするものである。すなわち、温度が上がると同じ駆動電流に対するレーザ発光素子の発光量が少なくなるためオフセット値を大きくして駆動電流を大きくし、これによって発光量を目標光量に近づけようとする。
【0074】
第2実施形態によれば、図9に一例を示すように、オフセット値を温度別に記憶させることによってレーザ発光素子(レーザ発光部200a)のPI(光-電流)特性が温度でばらついても目標光量にずれが生じないという顕著な作用効果を奏する。
【0075】
なお、第2実施形態においてオフセット値を温度別に記憶しているが、本開示のオフセット値の記憶は温度以外の事象に応じたオフセット値を記憶することができる。
【0076】
例えばレーザ発光部の光量-電流特性(PI特性)又は根元光量の特性毎にオフセット値を個別に記憶したものとすれば、レーザ素子の個々の特性に応じた最適なオフセット値を選択して、目標光量になるようなアナログ信号をレーザドライバに入力することが可能である。
【0077】
従来は、目標光量に応じたアナログ信号の電圧設定値を算出し、目標光量に近づける手法における問題点、すなわち、環境やライフ補正等の目標光量の変化に応じて、再度、算出する必要性があること、低い目標光量でシェーディングを実施する際にシェーディングの分解能が悪くなること、レーザ素子のPI特性や根元光量が個別にばらついた場合、目標光量にずれが生じること等の問題点に対して、本開示によれば、オフセット値を記憶しておくことでアナログ入力にオフセットをかけるだけで簡易かつ計算を要せずに確実に解消することができる。
【0078】
また、オフセット値でオフセットする信号はレーザドライバへのアナログ信号であればシェーディング補正信号に限定されず、目標光量(Vref)信号や画像入力信号等様々なアナログ信号に適用することができる。これによって、バイアス電流からの超過分の電流がアナログ信号に比例して増減するレーザドライバを用いた光走査装置において目標光量に近づけるため、アナログ信号に対して、目標光量の応じたオフセットをかけることができる。
【0079】
以上、実施形態について説明してきたが、具体的な構成は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
【0080】
また、実施形態において、各装置で動作するプログラムは、上述の実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えばRAM)に蓄積され、その後、各種ROMやHDDの記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行われる。
【0081】
ここで、プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えばROMや不揮発性メモリカード等)、光記録媒体・光磁気記録媒体(例えば、DVD(Digital Versataile Disc)、MO(magneto Optical Disc)、(MD(Mini Disc)、CD(Compact Disc)、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の非一時的記録媒体であればいずれでもよい。
【0082】
また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述の実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示の基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本開示の機能が実現される場合もある。
【0083】
また、プログラムを市場に流通させる場合、過般型の記憶装置にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されるサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれるのはもちろんである。
【0084】
また、上述した実施形態に置ける各装置の一部又は全部を典型的には集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現してもよい。各装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部又は全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路又は汎用プロセッサーで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0085】
10 画像形成装置
100 制御部
130 画像形成部
130a 感光体ドラム
160 記憶部
200 光走査装置
200a レーザ発光部
200k BDセンサ
210 レーザドライバ
220 光走査部
230 シェーディング補正信号部
240 オフセット値決定部
240a オフセット調整テーブル
250 レーザドライバ制御部
260 光量検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9