(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】カード支持装置、カード供給装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/12 20060101AFI20241101BHJP
B65H 5/22 20060101ALI20241101BHJP
B65H 29/56 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B65H3/12 310Z
B65H5/22 B
B65H29/56
(21)【出願番号】P 2021004509
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000110642
【氏名又は名称】シリウスビジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】川上 孝司
(72)【発明者】
【氏名】梨和 淳
(72)【発明者】
【氏名】子猿 伊吹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-143007(JP,A)
【文献】特開平6-271107(JP,A)
【文献】特開2003-95450(JP,A)
【文献】特開2017-200843(JP,A)
【文献】特開2016-218989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/12
B65H 5/22
B65H 29/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード供給装置のマガジンに充填されたカードを底板にて下支えするためのカード支持装置であって、
前記底板を前記マガジン内に挿入したり、前記マガジンから退避させたりするための進退装置と、
前記マガジンから取り出されるカードの枚数に応じて前記底板による支持位置を上昇させる昇降装置と、
を具備してなり、
前記底板の挿入又は退避の際には前記底板の面積を縮小させる一方で、カードを下支えする際には前記底板の面積を拡張させ得るように、
前記底板が複数のパーツによって構成されてなり、各パーツの位置関係を変更することによって、前記底板の面積を拡縮し得る仕組みとなされたことを特徴とするカード支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカード支持装置において、
前記底板を構成するパーツが、前記底板の進退方向に対して直交する方向にスライドすることによって、前記底板の面積を拡縮し得る仕組みとなされたカード支持装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカード支持装置において、
更に、前記マガジンに充填されたカードの最上位のカードの傾きに応じて前記底板の傾きを変える底板傾斜装置を具備してなるカード支持装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカード支持装置と、
マガジンと、
前記マガジンに充填されたカードを最上位のものから順に取り出すカード取り出し機と、
前記カード取り出し機によって取り出されたカードを順次移送する搬送機と、
を具備してなることを特徴とするカード供給装置。
【請求項5】
請求項4に記載のカード供給装置において、
更に、前記マガジン内への前記底板の挿入の前に、前記マガジンに充填されたカードを押し上げて、前記底板を挿入するための空間を形成するためのカード押し上げ装置が備えられてなるカード供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マガジンに充填されたカードを底板にて下支えするカード支持装置、及び、前記カード支持装置を備えたカード供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今では、クレジットカード、プリペイドカード、会員カード、定期券、免許証などの各種カードを一個人が複数枚所持することが普通となっており、カードの生産枚数も年々増加している。
【0003】
この種のカードには、印刷の他、エンボス加工やデボス加工などによる凹凸で表した文字や図形などの情報、或いは、ICチップなどの情報記録媒体が付帯されている。これらの情報や情報記録媒体は所定の位置において正確にカードに付帯されていなければならない。そのため、この種のカードを製造するにあたっては、これらの情報や情報記録媒体が正確に付帯されているか否かを検査する工程が必要となる。
【0004】
現在、この検査工程はCCDカメラ等の撮像手段を用いた画像診断によって実行されることが多く、前記撮像手段にカードを順次移送するための装置(以下、「カード供給装置」と称する。)の併用による自動化が実現されている(例えば、下記特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000‐95380号公報
【文献】特願2019‐153302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に開示されたカード供給装置では、カードを収容するための容器(以下、「マガジン」と称する。)に複数枚のカードを積み重ねて収納したうえで、最上位のカードから順に取り出して移送する仕組みを採用している。
【0007】
しかしながら、カードには凹凸で表した情報やICチップなどの情報記録媒体が付帯されているため、その表面が必ずしも平坦になっていない。そのため、一のカードの上に他のカードを積み重ねると、他のカードにおいて僅かな傾きが生じる。この僅かな傾きはカードを積み重ねることによって加算されていくため、多数のカードをマガジンに積み重ねて収納すると最上位のカードにおいて相当な傾きが生じることになる。その結果、従来のカード供給装置においては最上位のカードに生じた傾きによってカードの取り出しが阻害される場合があった。
【0008】
この点につき前記特許文献2では、マガジンに充填されたカードの最上位のカードに生じた傾きに応じてカードを下支えする底板の傾きを変える手段を開示している。そして、この手段を備えた新たなカード供給装置によればカードの傾きを好適に是正することができたため、円滑なカードの取り出しが可能となった。
【0009】
ところで、一般的なカード供給装置においては、カードの取り出しによってマガジンが空になった場合、自動的に空になったマガジンを取り外し、カードが充填された新たなマガジンをセットする仕組みが採用されている。従って、この種のカード供給装置に対して、前記特許文献2に開示された手段などの底板に対する新たな付加価値を適用するにあたっては、マガジンの交換作業の邪魔にならないように、空のマガジンの取り外しの際には底板をマガジン内から退避させ、新たなマガジンのセット後に再度底板をマガジン内に挿入させる仕組みを採用する必要が生じる場合がある。この場合、マガジンに対する底板の挿入、退避はマガジンの縦方向に沿って設けられたスリットを通じて実行することになる。
【0010】
しかしながら、マガジンに設けられたスリットの幅寸法はカードの幅より狭く、スリットの幅寸法に合わせて底板の寸法を決定すると、底板の面積がカードの面積に対して小さくなりすぎて、カードの下支えが不十分になる場合があった。
【0011】
本発明は、前記技術的課題に鑑みて完成されたものであり、マガジンに対する底板の挿入、退避ができ、しかもカードの下支えが確実となる新規なカード支持装置、及び前記カード支持装置を備えたカード供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題を解決する本発明のカード支持装置は、カード供給装置のマガジンに充填されたカードを底板にて下支えするためのカード支持装置であって、前記底板を前記マガジン内に挿入したり、前記マガジンから退避させたりするための進退装置と、前記マガジンから取り出されるカードの枚数に応じて前記底板による支持位置を上昇させる昇降装置と、を具備してなり、前記底板の挿入又は退避の際には前記底板の面積を縮小させる一方で、カードを下支えする際には前記底板の面積を拡張させ得るように、前記底板が複数のパーツによって構成されてなり、各パーツの位置関係を変更することによって、前記底板の面積を拡縮し得る仕組みとなされたことを特徴とする(以下、「本発明支持装置」と称する。)。
【0013】
前記本発明支持装置においては、前記底板を構成するパーツが、前記底板の進退方向に対して直交する方向にスライドすることによって、前記底板の面積を拡縮し得る仕組みとなされたものが好ましい態様となる。
【0014】
前記本発明支持装置においては、更に、前記マガジンに充填されたカードの最上位のカードの傾きに応じて前記底板の傾きを変える底板傾斜装置を具備してなるものが好ましい態様となる。
【0015】
前記技術的課題を解決する本発明のカード供給装置は、前記本発明支持装置と、マガジンと、前記マガジンに充填されたカードを最上位のものから順に取り出すカード取り出し機と、前記カード取り出し機によって取り出されたカードを順次移送する搬送機と、を具備してなることを特徴とする(以下、「本発明供給装置」と称する。)。
【0016】
前記本発明供給装置においては、更に、前記マガジン内への前記底板の挿入の前に、前記マガジンに充填されたカードを押し上げて、前記底板を挿入するための空間を形成するためのカード押し上げ装置が備えられてなるものが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、マガジンに対する底板の挿入、退避ができ、しかもカードの下支えが確実となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明供給装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、前記本発明供給装置に備えられた本発明支持装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、前記本発明支持装置における底板の面積を縮小させた状態を示す斜視図であり、
図3(b)は、前記本発明支持装置における底板の面積を拡大させた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4(a)は、前記本発明支持装置における底板をマガジンに対して退避させた状況を一部破断状態で示す斜視図であり、
図4(b)は、前記本発明支持装置における底板をマガジンに対して挿入させた状況を一部破断状態で示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、マガジン内に挿入した底板の面積を拡大させた状況を一部破断状態で示す斜視図であり、
図5(c)は、マガジン内に挿入した底板を傾斜させた状況を一部破断状態で示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<本発明供給装置10>
図1及び
図2に、本発明供給装置10と本発明支持装置1の一実施形態を示す。前記本発明供給装置10は、「本発明支持装置(1)」と、「マガジン(2)」と、「カード取り出し機(3)」と、「搬送機(4)」と、を具備する。なお、本実施形態においては、前記マガジン2、前記カード取り出し機3、及び搬送機4について既存のものを用いている。以下、前記マガジン2、前記カード取り出し機3、及び搬送機4について簡単に説明したうえで、前記本発明支持装置1について詳細に説明する。
【0021】
‐マガジン2‐
前記マガジン2は、複数枚のカードCを平積み状態で充填するための容器である。
図2に示すように、前記マガジン2には、充填されたカードCの残存量を視認するためのスリット21が縦方向にわたって設けられている。なお、本実施形態において前記マガジン2は、カードCの取り出しによって空になれば、自動的に空になったマガジン2が取り外され、カードCが充填された新たなマガジン2がセットされる仕組みとなされている。
【0022】
‐カード取り出し機3‐
前記カード取り出し機3は、前記マガジン2に充填されたカードCを最上位のカードCから順に取り出す役割を担う。本実施形態においては、前記カード取り出し機3として、吸着コンベアによって最上位のカードCを順次吸着して前記マガジン2から取り出し、取り出したカードCを送り方向に向かって順に送り出す仕組みのものを用いた。
【0023】
‐搬送機4‐
前記搬送機4は、前記カード取り出し機3によって取り出されたカードCを順次移送する役割を担う。本実施形態においては、前記搬送機4としてローラーコンベアを用いた。
【0024】
<本発明支持装置1>
前記本発明支持装置1は、前記マガジン2に充填されたカードCを「底板(11)」にて下支えする役割を担う。
図2に示すように、前記本発明支持装置1は、「進退装置(12)」と、「昇降装置(13)」と、を具備する。又、本実施形態に係る前記本発明支持装置1においては、更に「底板傾斜装置(14)」を具備する。
【0025】
‐底板11‐
前記底板11は、前記マガジン2に充填されたカードCを下支えする役割を担う。本実施形態における前記底板11は、支柱111によって揺動可能な状態で支持されている。又、
図3に示すように、前記底板11は、その上面を構成する二枚のパーツ(板材)がスライドすることによってその面積を拡縮し得る仕組みとなされている。本実施形態においては、拡縮用シリンダ112のロッドを伸縮させることによって、前記底板11を拡縮させる仕組みを構築している。
【0026】
‐進退装置12‐
前記進退装置12は、前記底板11を前記マガジン2内に挿入したり、前記マガジン2から退避させたりする役割を担う。
図4に示すように、本実施形態においては、進退用シリンダのロッドを伸縮させることによって、前記底板11を前記マガジンに対して挿入/退避させる仕組みを構築している。なお、このマガジン2に対する前記底板11の挿入、退避は前記マガジン2に設けられたスリット21を通じて実行される。又、マガジン2に前記底板11を挿入する際には、まずカード押し上げ装置5にて、前記マガジン2に充填されたカードCを押し上げることによって空間を形成し(
図4(a)参照)、係る空間に向かって前記底板11を挿入する。そして、前記マガジン2に対する前記底板11の挿入又は退避の際には、前記底板11の面積を縮小させる(
図3(a)参照)。一方、カードCを下支えする際には、前記底板11の面積を拡張させる(
図3(b)参照)。
【0027】
‐昇降装置13‐
前記昇降装置13は、前記マガジン2から取り出されるカードCの枚数に応じて前記底板11による支持位置を上昇させる役割を担う。本実施形態においては、縦方向に沿って配された昇降用ガイドに沿って前記本発明支持装置1を昇降させることによって、前記底板11の支持位置を変位させる仕組みを構築している。
【0028】
‐底板傾斜装置14‐
前記底板傾斜装置14は、前記マガジン2に充填されたカードCの最上位のカードCの傾きに応じて前記底板11の傾きを変える役割を担う。
図5に示すように、本実施形態においては、前記底板傾斜装置14として油圧シリンダを用い、上下方向に伸縮可能となされたロッドの先端を前記底板11の下面に当接させ、前記ロッドを伸縮させることによって、前記底板11の傾きを変える仕組みを構築している。
【0029】
前記構成を有する本発明供給装置10は、前記マガジン2に充填された複数枚のカードCを、前記カード取り出し機3にて最上位のカードCから順に取り出し、取り出したカードCを前記搬送機4にて順次搬送するための装置である。前記本発明供給装置10では、カードCの取り出しによって前記マガジン2が空になると、自動的に空になったマガジン2が取り外され、カードCが充填された新たなマガジン2がセットされる仕組みが採用されている。マガジン2の交換作業の際、前記本発明支持装置1の底板11は空になったマガジン2内から退避させられ、新たなマガジン2のセット後に再度マガジン2内に挿入される。前記マガジン2に充填されたカードCの最上位のカードCに傾きが生じていれば、前記底板傾斜装置14が、その傾きに応じて前記底板11の傾きを変え、最上位のカードCの傾きを許容範囲内に収める。
【0030】
そして、前記本発明支持装置1は、前記マガジン2に対する前記底板11の挿入又は退避の際に前記底板11の面積を縮小させる一方で、カードCを下支えする際には前記底板11の面積を拡張させ得る仕組みとなされているから、前記スリット21を通じた前記底板11の挿入/退避が円滑であり、又、前記マガジン2内においてカードCを十分な面積にて下支えすることができる。
【0031】
特に、本実施形態に係る本発明供給装置(本発明支持装置1)10のように、前記マガジン2に充填されたカードCの最上位のカードCの傾きに応じて前記底板11の傾きを変える前記底板傾斜装置14が備えられたものに在っては、前記底板11による支持面積をカードCの面積に対して十分な大きさとすることができるため、前記底板11の傾きの変化が積み上げられたカードに速やかに伝達され、もって、カードCの傾きを好適に是正することができる。
【0032】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、カードを自動的に供給する手段として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0034】
1 本発明支持装置(カード支持装置)
11 底板
12 進退装置
13 昇降装置
14 底板傾斜装置
2 マガジン
21 スリット
3 カード取り出し機
4 搬送機
5 カード押し上げ装置
10 本発明供給装置(カード供給装置)
C カード