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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021009987
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022113952
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塚越 功二
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135335(JP,A)
【文献】特開2016-174117(JP,A)
【文献】特開2019-140179(JP,A)
【文献】特開2009-135406(JP,A)
【文献】特開2013-004929(JP,A)
【文献】特開2004-319993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0192295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 23/50
B23K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1電極を有する半導体チップと、
支持面とリード底面とリード側面とを有し、前記支持面に第2電極を有するリードと、
前記第1電極と前記第2電極とを接続する金属接合部と、
前記半導体チップと前記リードと前記金属接合部を封止する封止樹脂と、
前記リード底面および前記リード側面に形成され、前記封止樹脂から露出する外部端子と、
を備える半導体装置であって、
前記金属接合部は、金を含有する合金であって、前記合金よりも金含有率の高い第1金リッチ接合層を前記第1電極側に有し、前記合金よりも金含有率の高い第2金リッチ接合層を前記第2電極側に有し、
前記リードは、前記外部端子が形成された前記リード側面に設けられた厚肉領域と、前記厚肉領域から内側に延在する薄肉領域とからなり、前記薄肉領域上に前記半導体チップが搭載されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第2電極側の前記金属接合部の接合面積は前記第1電極側の前記金属接合部の接合面積よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
半導体チップをリードにフリップチップ接合する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップの主面に第1接合下地膜を形成する工程と、
前記リードに厚肉領域と薄肉領域とを形成する工程と、
前記リードの前記薄肉領域の支持面に第2接合下地膜を形成する工程と、
前記第1接合下地膜上に、溶融状態である接続材を塗布し、前記接続材を固化させて金属接合部を形成する工程と、
前記半導体チップの前記主面を前記リードの前記支持面の第2電極に対向させて重ね合わせする工程と、
前記リードを加熱して、前記半導体チップと前記リードとを前記金属接合部を介して接続する工程と、
前記半導体チップと前記リードと前記金属接合部を樹脂封止する工程と、
前記リードに外部端子を設けることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体チップの前記主面を前記リードの前記支持面に対向させて重ね合わせする工程の前に、
前記支持面上の前記第2接合下地膜上に有機溶剤を塗布する工程を設けることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型機器やICカードに搭載される半導体装置には小型化や薄型化が求められている。リード端面をパッケージ端面と面一にしたノンリードタイプとすることにより、半導体装置の実装面積が減少することはよく知られている。
【0003】
特許文献1には、ノンリードタイプの小型・薄型の半導体装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-73120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のノンリードタイプの半導体装置では、各リードの裏面側の周縁部がハーフエッチング加工で削られて窪んだ形状となっており、その窪んだ部分を覆うように封止樹脂が充填されることにより、各リードそれぞれの露出した側面が封止体の側面の一部によって囲まれている。リードのハーフエッチング領域はリードの脱落を防止するものであるが、このハーフエッチング領域は半導体装置の小型化・薄型化を阻害するものである。
【0006】
本発明は。上記課題に鑑みなされたもので、さらなる小型・薄型の半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を用いた。
複数の第1電極を有する半導体チップと、
互いに反対側を向く支持面とリード底面とを有し、前記支持面に第2電極を有するリードと、
前記第1電極と前記第2電極とを接続する金属接合部と、
前記半導体チップと前記リードと前記金属接合部を封止する封止樹脂と、
前記リード底面および前記リード底面と交差するリード側面に形成され、前記封止樹脂から露出する外部端子と、を備える半導体装置であって、
前記金属接合部は、金を含有する合金であって、前記合金よりも金含有率の高い第1金リッチ接合層を前記第1電極側に有し、前記合金よりも金含有率の高い第2金リッチ接合層を前記第2電極側に有することを特徴とする半導体装置とした。
また、
【0008】
半導体チップをリードにフリップチップ接合する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップの主面に第1接合下地膜を形成する工程と、
前記リードの支持面に第2接合下地膜を形成する工程と、
前記第1接合下地膜上に、溶融状態である接続材を塗布し、前記接続材を固化させる工程と、
前記半導体チップの前記主面を前記リードの前記支持面に対向させて重ね合わせする工程と、
前記リードを加熱して、前記半導体チップと前記リードとを前記金属接合部を介して接続する工程と、
前記半導体チップと前記リードと前記金属接合部を樹脂封止する工程と、
前記リードに外部端子を設けることを特徴とする半導体装置の製造方法を用いた。
さらに、
【0009】
半導体チップをリードにフリップチップ接合する半導体装置の製造方法であって、
前記半導体チップの主面に第1接合下地膜を形成する工程と、
前記リードに厚肉領域と薄肉領域とを形成する工程と、
前記リードの前記薄肉領域の支持面に第2接合下地膜を形成する工程と、
前記第1接合下地膜上に、溶融状態である接続材を塗布し、前記接続材を固化させる工程と、
前記半導体チップの前記主面を前記リードの前記支持面の第2電極に対向させて重ね合わせする工程と、
前記リードを加熱して、前記半導体チップと前記リードとを前記金属接合部を介して接続する工程と、
前記半導体チップと前記リードと前記金属接合部を樹脂封止する工程と、
前記リードに外部端子を設けることを特徴とする半導体装置の製造方法を用いた。
【発明の効果】
【0010】
上記手段を用いることで、リードの封止樹脂からの脱落を防止しつつ、小型かつ薄型の半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の底面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の接合部の拡大断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
図5図4に続く、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
図6図5に続く、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態である半導体装置について図を用いて説明する。
(第1実施形態)
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態の半導体装置の断面図である。半導体装置10は、半導体チップ1とリード6と金属接合部5と封止樹脂7とを備える構成のフリップチップタイプのノンリード構造のパッケージであり、フリップチップタイプであるためボンディングワイヤやダイパッドを必要としない構造である。リード6は、一様の厚さの銅(Cu)または銅合金からなり、表面に支持面61、表面と反対側の裏面1bにリード底面62を有する。そして、支持面61には半導体チップ1が接続されている。半導体チップ1の主面1aに設けられた電極(図示せず)とリード6の支持面61に設けられた電極(図示せず)とが金(Au)を含有する金属接合部5を介して電気的に接続されているが、半導体チップ1は、その主面1aが下向きとなるように反転して接続されている。
【0014】
半導体チップ1とリード6と金属接合部5の周囲は封止樹脂7によって被覆されているが、リード底面62とリード側面63は封止樹脂7から露出している。半導体装置10は、断面視的に矩形であって、リード底面62は、封止樹脂7の樹脂底面72と面一であり、リード側面63は、封止樹脂7の樹脂側面73と面一である。そして、リード底面62およびリード側面63には基板実装のための外部端子11が被着されている。外部端子11は、リード底面62側やリード側面63側からニッケル(Ni)膜と金(Au)膜が順に被着している積層膜である。または、ニッケル(Ni)膜とパラジウム(Pd)膜と金(Au)膜が順に被着している積層膜である。
【0015】
図2は、本発明の第1実施形態の半導体装置の底面図である。図2では、理解の便宜上、封止樹脂7を透視して図示している。半導体装置10は、4つのリード6を有するノンリード構造のパッケージであって、各リード6のおのおの一端は互いに離間して配置され、リード6の他端の端面は封止樹脂7の外囲と同一面をなしている。矩形の封止樹脂7の中央に半導体チップ1(破線で図示)が配置され、半導体チップ1の四隅がリード6のそれぞれと重畳している。半導体チップ1の四隅には電極が配置されるが、電極上には金属接合部5(破線で図示)があり、この金属接合部5を介して半導体チップ1とリード6とが接続されている。そして、半導体チップ1の四隅に配置された金属接合部5の平面領域はリード6の平面領域に含まれる形状である。
【0016】
図3は、半導体チップとリードの接合部の拡大断面図である。金属接合部5は、金(Au)を含有する合金であって、例えば金錫(AuSn)合金によって構成され、半導体チップ1側の金リッチ接合層5aを介して半導体チップ1側の電極3aと接続している。また、リード6側においても金リッチ接合層5bを介してリード6側の電極3bと接続している。電極3a、3bはバリア膜であるニッケル(Ni)膜4a、4bからなる。金リッチ接合層5a、5bのAu/Snの成分比率は金属接合部5のAu/Snの成分比率よりも高い、すなわち金(Au)含有率が高いものである。また、その金リッチ接合層5a、5b内での成分は一様ではなく、ニッケル膜4aに距離的に近いほどその比率は高いものである。半導体チップ1側の金属接合部5および金リッチ接合層5aの平面積に比べ、リード6側の金属接合部5および金リッチ接合層5bの平面積は大きくなっている。本図では、リード6の支持面61上の限定された一部の領域にニッケル膜4bを設けているが、支持面の全ての領域にバリア膜であるニッケル膜4bを被着させてもよい。
金属接合部5とニッケル膜4aとの間に位置する金リッチ接合層5a、5bは金属接合部5の構成成分が拡散して形成されたもので、形成される接合領域は強固なものである。また、半導体チップ1とリード6との厚さ方向の間隔は3~5μmであって極めて小さいものである。上述のように、半導体チップ1とリード6は強固に接続されているため、容易に剥離することはない。したがって、半導体チップ1は、その周囲が封止樹脂7によって完全に覆われているが、リード6の引き抜き強度が低下してリード6が封止樹脂7から脱落するといった懸念は無く、封止樹脂7からの脱落防止のための薄肉部を形成するというアンカー加工などは不要となる。このため、リード6にはアンカー加工に必要な厚みや幅が無くてもよく、リード6の板厚を薄く、小面積にすることができる。これにより、半導体装置の薄型化(低背化)、かつ小型化を実現することができる。また、アンカー加工という付加的な工程も必要とせず、製造における工数を減じることができる。
【0017】
図4図7を用いて、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
まず、図4に示す半導体チップ1を用意する。図は、リード6と接続する前の半導体チップ1の上面図とパッド部の断面拡大図である。図4(a)に示すように、本例では、矩形の半導体チップ1の主面1aの四隅のおのおのにパッド2を覆うように4つの接合下地膜4が設けられている。図4(b)はパッド部の断面構造を示しており、半導体チップ1の主面1aにパッド2としてアルミ(Al)膜が形成されている。パッド2であるアルミ膜は半導体チップ1の最上層配線と同一層である。パッド2の上には接合下地膜4としてニッケル(Ni)膜4aと金(Au)膜44aが順に積層されている。ニッケル膜4aはバリア膜としての役目をし、金膜44aは濡れ性改善の役目を有する。空気中では酸化や腐食を発生し易いアルミ膜だが、その表面にニッケル膜4aと金膜44aを形成することによって酸化や腐食の発生し難い表面状態としている。なお、ニッケル膜4aと金膜44aは湿式のメッキ法(ニッケルメッキ、金フラッシュメッキ)によって形成されるのが好適である。パラジウム(Pd)膜を含む3層積層膜の場合は、ニッケルめっきとパラジウムめっきと金フラッシュめっきを順に施すことでパッド2上の接合下地膜4の形成が終了する。
【0018】
次に、半導体チップ1のパッド2上に、金(Au)を含み2種以上の金属からなる合金である接続材9を溶融状態でディスペンス(滴下塗布)する。図5は、パッド2上に接続材9をディスペンスする前後の状態を示す図である。図5(a)には、半導体チップ1と加熱ポッド12を図示している。加熱ポッド12は、加熱手段と脱気手段とディスペンス手段を有し、加熱ポッド12内に溶融した状態の接続材9が蓄えられている。接続材9は、金錫合金であって、例えば、Au/Sn=80/20、もしくはAu/Sn=78/22という成分比である。加熱手段によって加熱ポッド12は300~320℃に制御され、溶融状態の接続材9内の微小な気泡は脱気手段によって除去されている。また、有機物なども十分に脱媒されてる。加熱ポッド12の下端にはディスペンス手段が設けられ、その周囲は窒素パージされて、周囲の温度は室温である。半導体チップ1も加熱されることなく室温状態に保たれている。
【0019】
図5(b)に示すように、溶融した接続材9が半導体チップ1のパッド2上の接合下地膜4の上にディスペンスされると溶融状態の接続材9は一定の表面張力を有するため、接合下地膜4上で一定の曲率を有する形状となっている。また、このときディスペンスされる接続材9のサイズは半導体チップ1のパッド2の大きさよりも小さいサイズである。
【0020】
なお、半導体チップ1上に接続材9をディスペンスする際、半導体チップ1は半導体ウェハからイシングして個片化したものが望ましい。ダイシング前の半導体チップ1に接続材9をディスペンスするほうが効率的であるが、ディスペンス後にダイシングをするとそのときに発生するカットゴミや水分に曝されることになる。これを回避するするためにダイシングの後に接続材9をディスペンスするという方法が好ましい。
【0021】
図5(c)では、半導体チップ1のパッド2上の接合下地膜4の上に接続材9がディスペンスされた後に、パッド2で固化された状態を示している。310~320℃でディスペンスされた溶融状態の接続材9はパッド2上の接合下地膜4と溶融したのち、室温に冷却されて以下の構造となる。すなわち、パッド2の上にはニッケル膜4aが積層され、ニッケル膜4aの上には金リッチ接合層5aが形成されている。金リッチ接合層5aは金属接合部5が金膜44aに拡散したものであり、その金リッチ接合層5aのAu/Snの成分比率は金属接合部5のAu/Snの成分比率よりも高い、すなわち金(Au)含有率が高いものである。また、その金リッチ接合層5a内での成分は一様ではなく、ニッケル膜4aに距離的に近いほどその比率は高いものである。
【0022】
以上のような、個々のパッド2上の接合下地膜4の上に接続材9である溶融金錫をディスペンスすることを半導体チップ1上のすべてのパッド2に対し行うことで、金属接合部5と半導体チップ1との接続は完了する。このような方法によって得られる半導体チップ1と金属接合部5との接続は、従来の接続方法に比べ工数の少ない工程で行うことができる。例えば、バンプを形成するという従来の方法であれば、バンプ形成のためのレジストによるパターン形成工程やメッキ工程やレジスト除去工程、そしてリフロー工程というように数多くの工程を経ることになるが、本製造方法においては、予め溶融した接続材9をパッド2上の接合下地膜4の上にディスペンスするだけという極めて少ない工程で接続が完了する。また、特許文献1に示す従来の半導体装置における接続温度に比べ高温であるため、本製造方法によって得られる半導体チップ1と金属接合部5との接続は、ボイドの少ない強固な接続となる。
【0023】
次に、図6に示すように、金属接合部5が設けられた半導体チップ1をリード6に接続する。図6(a)は、接続前の状態を図示するもので、リード6の上方に半導体チップ1が待機している。半導体チップ1の裏面1b側がコレット13を用いてピックアップされていて、金属接合部5が形成された半導体チップ1の主面1aが下向きに反転してリード6の支持面61に対向している。対向するリード6の支持面61の所定の箇所には、接合下地膜4としてニッケル(Ni)膜4bと金(Au)膜44bが順に積層されている。あるいは、ニッケル(Ni)膜とパラジウム(Pd)膜と金(Au)膜が順に積層されている。接合下地膜4の成膜方法は湿式のメッキ法によるものである。そして、半導体チップ1側に形成される接合下地膜4の平面積に比べ、リード6側の接合下地膜4の平面積は大きく形成されている。
【0024】
対向するリード6の接合下地膜4の表面には有機溶剤14が点状に塗布されている。有機溶剤14が塗布される箇所は半導体チップ1が接続される位置にあたり、半導体チップ1をリード6に接続するときのセルフアライメントおよび仮固定の役目をする。このとき、半導体チップ1とリード6は、共に室温雰囲気に置かれている。
【0025】
次に、半導体チップ1とともにコレット13を下降させ、半導体チップ1の金属接合部5を有機溶剤14が点状に塗布された箇所に当接するように重ね合わせする。このとき半導体チップ1とリード6の重ね合わせが多少ずれていたとしても有機溶剤14のセルフアライン効果を利用して半導体チップ1が微動して適正な位置へ補正配置されることになる。仮止め用の有機溶剤14としては、室温にて液体で加熱したときに蒸発するものがよく、イソプロピルアルコール(IPA)などのアルコール類やメチルエチルケトン(MEK)などのケトン類が好適である。以上では、有機溶剤14を用いた例にて説明したが、必ずしも有機溶剤14にて仮止めする工程は必須ではないが、本工程を用いることで、精度の高い重ね合わせが実現でき、より小型の半導体装置10とすることができる。
【0026】
その後、半導体チップ1を搭載したリード6を窒素雰囲気の加熱ステージに移動させ、リード6の裏面側から加熱する。本工程における加熱温度は半導体チップ1と金属接合部5の接続の時の温度よりも低いほうが良く、295~305℃が好適である。
【0027】
図6(b)に示すように、加熱によって有機溶剤14が蒸発するとともに金属接合部5が溶融して接合下地膜4と接続する。金属接合部5は接合下地膜4を構成する金膜44bに溶け込んで金リッチ接合層5bを形成し、半導体チップ1とリード6とを強固に接続する(図3参照)。なお、接続前の金属接合部5の表面は極めて薄い酸化膜で覆われているが、本方法によれば、従来のバンプ法と比較して高温での接続となるため、酸化膜除去と活性化を目的とするフラックス等を必要とせずとも非常に良好な濡れ広がりを得ることができる。
【0028】
次に、半導体チップ1とリード6と金属接合部5とを封止樹脂7を被覆したのちに、必要に応じてリード6を成形する。リード底面62およびリード側面63の表面に外部端子11を形成する。外部端子11がニッケル(Ni)膜と金(Au)膜の積層膜の場合は、ニッケルめっきと金フラッシュめっきを順に施すことで外部端子11を形成できる。パラジウム(Pd)膜を含む3層積層膜の場合は、ニッケルめっきとパラジウムめっきと金フラッシュめっきを順に施すことで外部端子11を形成できる。以上の工程を経て、図1に示すような半導体装置10が完成する。
【0029】
特許文献1に示す従来の半導体装置では、金バンプをリードに接合する場合の温度は250℃程度であって、金バンプとリードとの間に形成される接合層は薄く島状である。このような従来の半導体装置をプリント基板へ実装する際にリフローを行うが、そのときの熱処理温度は255~265℃であって金バンプとリードとの接続温度よりも高い。そのためプリント基板実装によって金バンプからリード脱落する可能性があり、これを防止するためにリードの裏面側の周縁部にハーフエッチング領域(アンカー部)を設けている。これに対し、以上の工程を経て得られた半導体装置10の金属接合部5の熱処理温度(295℃以上)はプリント基板実装温度255~265℃よりも高く、プリント基板実装によって、金属接合部5が溶融して半導体チップ1とリード6との接続が弱くなってリード6が封止樹脂7から脱落する懸念はない。つまり、従来の半導体装置では必要とされたハーフエッチング領域を設けることなくリード脱落を防止できることになる。リードの周縁部にハーフエッチング領域を不要とすることで、リードが小さくなり半導体装置の小型化に貢献できる。また、ハーフエッチング領域は強度確保の点から所定の厚さを必要とするが、これを不要とすることからリードの厚さを減じることが可能となる。リードの厚さの薄型化は半導体装置の薄型化に貢献するものである。以上のように、ハーフエッチング領域を必要としない本発明の半導体装置ではさらなる小型化および薄型化が可能となる。
【0030】
なお、これまでは、金属接合部5や接続材9として金錫合金を用いた例について説明しているが、金錫合金に代えて金ゲルマニウム合金を用いた場合でも同様の効果が得られる。
【0031】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態の半導体装置の断面図である。図1に示した第1の実施形態の半導体装置においてはリード6の厚さは一様であったが、本実施形態の半導体装置20においてはリード側面63におけるリード厚さt1と半導体チップがリード6と接合する支持面61におけるリード厚さt2を異なる厚さとし、支持面61におけるリード厚さt2をリード側面63におけるリード厚さt1に比べ薄くしている。すなわち、リード6はリード側面63側、つまり、リード6の周縁側を厚肉領域66とし、半導体チップ1と接合する部分を薄肉領域67とする構造である。厚肉領域66および薄肉領域67の裏面は樹脂底面72とともに同一面を成し、厚肉領域66および薄肉領域67の上表面との間には段差部65が配置され、段差部65は順テーパの傾斜面である。そして、半導体チップ1は段差部65よりも内側、つまりリード6の薄肉領域67上に配置されている。また、このときの半導体チップ1の主面1aの樹脂底面72からの高さh1の値は、リード厚さt1の値よりも小さく、リード厚さt2の値よりも大きいものである。なお、本例における薄肉領域67は、第1の実施形態の半導体装置のような一様の厚さであるリードを上方から部分的にプレス加工やハーフエッチング加工して支持面61を形成することが可能である。ここでプレス加工等を施さない部分など、相対的にリードの厚さが厚い部分が厚肉領域66に相当する。
【0032】
以上のように、リード6を厚肉領域66と薄肉領域67を有する形状とし、薄肉領域67の上に金属接合部5を介して半導体チップ1を搭載することで、プリント基板に対する半導体装置10の実装性を損なうことなく、半導体装置10の薄型化(低背化)を実現することができる。通常、プリント基板へ実装する際の接続領域は半導体装置10の外部端子11に相当するが、半導体装置10を薄型化すると、それに応じてリードの厚さが薄くなり、リード側面63に被着した外部端子11の面積が小さくなる。それに対応してプリント基板への半導体装置10の接続強度は小さくなる。これに対し、本実施形態の半導体装置20においてはリード6に厚肉領域66を設け、そこにリード側面63を形成しているため、リード側面63に被着している外部端子11の面積は小さくならず、プリント基板への接続強度が小さくなることはない。さらに、リード6の薄肉領域67に半導体チップ1を搭載する構造としているため、半導体装置10の薄型化を実現できる。また、半導体チップ1とリード6は強固な接続となっているため、リード6が封止樹脂7から脱落することを防止することができる。
【0033】
また、本半導体装置10の製造においては、半導体チップ1をリード6に接合する際に、図6で説明した有機溶剤14による仮止めを利用することになるが、この有機溶剤14の塗布範囲外に半導体チップ1の金属接合部5が置かれたとしてもリード6に設けられた段差部65によって誘導されて半導体チップ1が薄肉領域67に位置補正され、さらに、有機溶剤14によるセルフアラインによって位置を微調されることになる。このように、半導体チップ1をリード6上の適正な位置へ誘導する効果もあるため半導体装置のさらなる小型化へ貢献することができる。
【0034】
図7においては、半導体チップ1の主面1aの反対側である裏面1bの樹脂底面72からの高さh2が、リード厚さt1の値よりも大きい、すなわち、リード6の厚肉領域66の上面の樹脂底面72からの高さよりも大きい場合を図示しているが、半導体チップ1の厚さをさらに薄くすること、例えば半導体チップ1の裏面1bの樹脂底面72からの高さh2をリード6の厚肉領域66の上面の樹脂底面72からの高さよりも小さくすることで半導体装置10がさらに薄型化できることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明による半導体装置は、携帯玩具、ヘルスケア商品、ウェアラブル端末、携帯端末、カード端末、家電製品等から、使用環境の厳しい車載用途、屋外用途への応用も可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 半導体チップ
1a 主面
1b 裏面
2 パッド
3a、3b 電極
4 接合下地膜
4a、4b ニッケル膜(バリア膜)
44a、44b 金膜
5 金属接合部
5a、5b 金リッチ接合層
6 リード
61 支持面
62 リード底面
63 リード側面
65 段差部
66 厚肉領域
67 薄肉領域
7 封止樹脂
72 樹脂底面
73 樹脂側面
9 接続材
10、20 半導体装置
11 外部端子
12 加熱ポッド
13 コレット
14 有機溶剤
t1、t2 リード厚さ
h1、h2 樹脂底面からの高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7