(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】生分解性短繊維不織布
(51)【国際特許分類】
D21H 13/24 20060101AFI20241101BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20241101BHJP
D04H 1/4382 20120101ALI20241101BHJP
D01F 2/00 20060101ALI20241101BHJP
D01F 6/62 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
D21H13/24
D04H1/425 ZBP
D04H1/4382
D01F2/00 Z
D01F6/62 305Z
(21)【出願番号】P 2021010368
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三好 正明
(72)【発明者】
【氏名】三歩一 真彦
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-200458(JP,A)
【文献】特開平06-346399(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122679(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 13/24
D04H 1/425
D04H 1/4382
D01F 2/00
D01F 6/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系短繊維A、及びポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含有する短繊維Bを含む
生分解性短繊維不織布であり、
前記セルロース系短繊維Aと前記短繊維Bの混合比率は、重量比で、セルロース系短繊維A/前記生分解性短繊維B=50/50~90/10であり、
前記生分解性短繊維不織布は湿式不織布であり、前記湿式不織布の目付が10~300g/m
2
である、生分解性短繊維不織布。
【請求項2】
前記短繊維Bの単繊維繊度が0.1~50dtexである、請求項1に記載の生分解性短繊維不織布。
【請求項3】
前記短繊維Bの平均繊維長が1~10mmである、請求項1又は2に記載の生分解性短繊維不織布。
【請求項4】
前記ポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)のモノマー比率が、モル比で、3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシヘキサノエート=99/1~80/20である、請求項1~3のいずれかに記載の生分解性短繊維不織布。
【請求項5】
前記短繊維Bは、ポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)100重量部に対し、結晶核剤を0.05~12重量部、及び滑剤を0.05~12重量部含有する、請求項1~
4のいずれかに記載の生分解性短繊維不織布。
【請求項6】
前記短繊維Bは、融点が110~165℃である、請求項1~
5のいずれかに記載の生分解性短繊維不織布。
【請求項7】
前記短繊維Bは、引張強度が1.0~6.0cN/dtexである、請求項1~
6のいずれかに記載の生分解性短繊維不織布。
【請求項8】
前記短繊維Bは、重量平均分子量が50,000~3,000,000である、請求項1~
7のいずれかに記載の生分解性短繊維不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性が良好であるとともに、機械的強度及び風合いに優れる生分解性短繊維不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
包装材や容器等の産業資材にはプラスチックが広く使用されている。しかし、プラスチック廃棄物は、生態系への影響、燃焼時の有害ガス発生、大量の燃焼熱量による地球温暖化等、地球環境へ大きな負荷を与える原因となっている。このような問題の解決策の一つとして、生分解性プラスチックを用いることが行われている。例えば、特許文献1には、生分解性を有する熱可塑性重合体からなる短繊維及びセルロース系短繊維を三次元的に交絡させてなる生分解短繊維不織布が提案されている。また、特許文献2には、ポリ-ε-カプロラクトンおよび/またはポリ-β-プロピオラクトンからなる繊維と、天然繊維またはセルロース繊維からなる微生物分解性不織布が提案されている。
【0003】
一方、天然パルプ等のセルロース系短繊維を用いた湿式不織布は、強度を高めるためにバインダー繊維を用いて補強することが行われている。例えば、特許文献3には、ポリエチレンテレフタレート繊維を用いて高強力抄紙を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-200457号公報
【文献】特開平5-214648号公報
【文献】特開2013-174028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のような短繊維不織布は、引張強度や風合いをさらに改善することが求められている。また、特許文献3に記載のポリエチレンテレフタレート繊維を用いた場合、不織布の生分解性が劣る問題があった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、生分解性が良好であるとともに、機械的強度及び風合いに優れる生分解性短繊維不織布を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1以上の実施形態において、セルロース系短繊維A、及びポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含有する短繊維Bを含む生分解性短繊維不織布に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、生分解性が良好であるとともに、機械的強度及び風合いに優れる生分解性短繊維不織布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた。その結果、セルロース系短繊維A及びポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含有する短繊維Bを併用することで、生分解性及び機械的強度が高く、柔軟な風合いを有する生分解性短繊維不織布が得られること、特に、湿式不織布の場合でも、生分解性及び機械的強度を高い上、風合いに優れることを見出した。
【0010】
(セルロース系短繊維A)
セルロース系短繊維Aは、特に限定されず、天然セルロース繊維であってもよく、再生セルロース繊維であってもよい。
【0011】
天然セルロース繊維は、植物由来のものであってもよく、動物由来のものであってもよい。植物由来のものとしては、例えば植物由来のパルプを用いることができる。植物由来のパルプとしては、例えば、植物原料を化学的、機械的、又は両者を併用してパルプ化したものが挙げられる。植物原料としては、例えば、木材、綿、竹、麻、シュート、ケナフ等が挙げられる。
【0012】
天然セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、水分散性及び短繊維Bとの混和性に優れ、湿式不織布に好適に用いる観点から、平均繊維長が1~10mmであることが好ましく、2~8mmであることがより好ましく、3~7mmであることがさらに好ましい。本発明の1以上の実施形態において、天然セルロース繊維の平均繊維長は、例えばJIS P 8226-2の方法で測定することができる。
【0013】
天然セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、水分散性及び短繊維Bとの混和性に優れ、湿式不織布に好適に用いる観点から、平均繊維径が5~100μmであることが好ましく、10~60μmであることがより好ましく、20~40μmであることがさらに好ましい。本発明の1以上の実施形態において、天然セルロース繊維の平均繊維径は、顕微鏡を用いて一定本数(例えば、20本)の繊維の径を測定し、算術平均することで算出することができる。
【0014】
再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル等が挙げられる。
【0015】
再生セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、水分散性及び短繊維Bとの混和性に優れ、湿式不織布に好適に用いる観点から、平均繊維長が1~10mmであることが好ましく、2~8mmであることがより好ましく、3~7mmであることがさらに好ましい。本発明の1以上の実施形態において、再生セルロース繊維の平均繊維長は、JIS L 1015に準じて測定することができる。
【0016】
再生セルロース繊維は、特に限定されないが、例えば、水分散性及び短繊維Bとの混和性に優れ、湿式不織布に好適に用いる観点から、単繊維繊度が0.5~20dtexであることが好ましく、1~10dtexであることがより好ましく、1~5dtexであることがさらに好ましい。本発明の1以上の実施形態において、再生セルロース繊維の単繊維繊度は、JIS L 1015に準じて測定する。
【0017】
(短繊維B)
短繊維Bは、ポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含有する。本発明の1以上の実施形態において、「ポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含有する」とは、ポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を80重量%以上含むことを意味し、85重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことがより好ましい。短繊維Bは、100重量%のポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)で構成されてもよい。
【0018】
3-ヒドロキシブチレート等の3-ヒドロキシアルカノエートを含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)は、生分解性を有する熱可塑性重合体として広く用いられている。本発明者らは、その中でも、3-ヒドロキシブチレート-と3-ヒドロキシヘキサノエートの共重合体であるポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含有する短繊維Bが、セルロース系短繊維と併用すると、高い生分解性を維持しつつ、バインダー繊維としての補強作用に優れ、不織布特に湿式不織布の機械的強度を向上させることができ、さらに不織布特に湿式不織布に柔軟な風合いを付与し得ることを見出した。
【0019】
ポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下において、単に「P3HB3HH」と記す。)は、繰り返し単位(モノマー構造単位)の組成比は、特に限定されないが、柔軟性と強度のバランスの観点から、モル比で、3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシヘキサノエートが99/1~80/20であることが好ましく、97/3~85/15であることがより好ましい。P3HB3HHは、1種を単独で用いてもよく、3HBの組成百分率が異なるものを2種以上混合したものでもよい。本発明の1以上の実施形態において、P3HB3HHにおけるモノマーの組成比は、下記のとおりに測定することができる。
【0020】
<P3HB3HHにおけるモノマーの組成比>
試料約20mgに2mLの硫酸-メタノール混合液(15:85)と2mLのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することでポリエステル分解物のメチルエステルを得る。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置する。4mLのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上澄み液中のポリエステル分解物のヒドロキシアルカン酸メチルエステルの組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析し、P3HB3HHのモノマーユニットの組成比(モノマー比率)を求める。
【0021】
P3HB3HHは、特に限定されず、公知の方法により製造することができる。P3HB3HHが微生物産生のものである場合、微生物としてアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、カプリアビダス・ネカトール(C.necator)等が知られている。また、P3HB3HHの生産性を上げるために、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)の合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等を用いてもよい。また、P3HB3HHとしては、株式会社カネカ製の生分解性ポリマーPHBH(登録商標)等の市販品を用いてもよい。
【0022】
P3HB3HHは、特に限定されないが、成形性及び強度の観点から、重量平均分子量が50,000~3,000,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましい。本発明の1以上の実施形態において、重量平均分子量は、クロロホルム溶離液を用いたゲルバーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定されたものをいう。当該GPCにおけるカラムとしては、前記分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0023】
P3HB3HHは、特に限定されないが、JIS K 7210-1に準じ、温度165℃、荷重5kg(49N)の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)は0.1~100g/10分であることが好ましく、1~50g/10分であることがより好ましく、10~40g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが低すぎると、溶融樹脂の流動性が不十分で、高すぎると流動性が高すぎ、いずれにおいても繊維の紡糸が難しい傾向がある。
【0024】
短繊維Bは、P3HB3HHを含有する樹脂組成物で構成することができる。上記樹脂組成物は、特に限定されないが、P3HB3HHを80重量%以上含有することが好ましく、より好ましくは85重量%以上含み、さらに好ましくは90重量%以上含む。一方、上限は100重量%であってもよいが、例えば、98重量%以下又は95重量%以下であってもよい。P3HB3HHの含有量を80重量%以上とすることにより、得られる不織布の生分解性がより向上する傾向がある。
【0025】
上記樹脂組成物は、特に限定されないが、生産性の観点から、さらに結晶核剤を含むことが好ましい。結晶核剤としては、P3HB3HHの結晶化を促進する効果を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、結晶化速度の改善効果や繊維に含有させる観点から、ペンタエリスリトール、糖アルコール化合物、ポリビニルアルコール、キチン、キトサン等が好ましく、ペンタエリスリトールがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記樹脂組成物における結晶核剤の含有量は、特に限定されないが、P3HB3HH100重量部に対し、0.05~12重量部であることが好ましく、0.1~10重量部であることがより好ましく、0.5~8重量部であることがさらに好ましく、特に好ましくは1~5重量部である。結晶核剤の含有量を0.05重量部以上とすることにより、結晶化促進効果が向上し、繊維の生産性が向上する傾向がある。また、結晶核剤の含有量を12重量部以下とすることにより、十分な結晶化速度促進効果を保持しつつ、加工時の粘度低下や繊維物性の低下等を抑制しやすい。
【0027】
上記樹脂組成物は、特に限定されないが、生産性の観点から、さらに滑剤を含むことが好ましい。滑剤としては、P3HB3HHに滑性を付与する効果を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、脂肪酸アミド、アルキレン脂肪酸アミド、グリセリンモノ脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0028】
上記滑剤の中でも、特に外部滑性を付与する効果を有する化合物、具体的には、脂肪酸アミド、グリセリン脂肪酸エステルが好ましい。脂肪酸アミドとしては、脂肪酸のモノアミド、ビスアミド等が挙げられる。脂肪酸アミドを構成する脂肪酸(脂肪酸部分)は、樹脂組成物の融点が適度に高いものとなり、溶融加工時の加工性低下を抑止する観点から、炭素数12~30であることが好ましく、より好ましくは炭素数18~22である。脂肪酸アミドとしては、具体的には、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等が挙げられる。グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンのモノエステル、グリセリンのジエステル、グリセリンのトリエステル(例えば、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノデカノエート等のグリセリンジアセトモノエステル等)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記樹脂組成物における滑剤の含有量は、特に制限はないが、例えば、P3HB3HH100重量部に対し、0.05~12重量部であることが好ましく、0.1~10重量部であることがより好ましく、0.5~8重量部であることがさらに好ましく、特に好ましくは1~5重量部である。滑剤の含有量を0.05重量部以上とすることにより、樹脂組成物と押出機や紡糸機内における金属表面との摩擦が抑制され、せん断発熱によるP3HB3HHの分解が抑制され、ノズルから押し出された繊維同士が互着することも防止されやすい。また、滑剤の含有量を12重量部以下とすることにより、押出機中でP3HB3HHがより効率的に融解し、その結果、繊維が硬くなり過ぎることなく糸切れが抑制され、生産性が一層向上しやすい。
【0030】
上記樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲内で、可塑剤、無機充填剤、有機充填材(セルロース等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料及び顔料等の着色剤、並びに帯電防止剤等の他の成分を含有していてもよい。他の成分の添加量は、100重量部のP3HB3HHに対し、5重量部以下であってもよく、1重量部以下であってもよい。
【0031】
上記樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、P3HB3HH以外の樹脂成分(その他の樹脂成分)を含んでいてもよい。その他の樹脂成分としては、生分解性樹脂、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート等の石油由来樹脂や、デンプン、セルロース等の天然高分子等が挙げられる。その他の樹脂成分の含有量は、樹脂成分の全量(100重量%)に対して、20重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。その他の樹脂成分は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0032】
短繊維Bは、例えば、上記樹脂組成物を溶融紡糸して得られたマルチフィラメントを所定の繊維長にカットすることで作製することができる。
【0033】
まず、上記樹脂組成物を溶融混練して得られたペレット状の樹脂組成物を、溶融押出機を用いて溶融し、紡糸口金(紡糸ダイスとも称される。)から連続的に押出して繊維を形成することで紡糸フィラメントを作製することができる。溶融紡糸温度は、例えば、145~190℃であることが好ましく、より好ましくは150~190℃、さらに好ましくは150~180℃である。溶融紡糸温度を145℃以上とすることにより、十分に樹脂組成物を溶解させることができるために、紡糸が安定化しやすい。また、紡糸温度を190℃以下とすることにより、P3HB3HHの熱分解が抑制され、紡糸が安定化しやすく、得られる繊維の物性がより向上する傾向がある。なお、溶融紡糸温度とは、樹脂組成物が繊維化される間に加えられる温度のうち、最も高い温度域の温度をいう。
【0034】
上記樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、成形性及び強度の観点から、重量平均分子量が50,000~3,000,000であることが好ましく、100,000~1,500,000であることがより好ましい。
【0035】
上記樹脂組成物は、特に限定されないが、例えば、JIS K 7210-1に準じ、温度165℃、荷重5kg(49N)の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)は0.1~100g/10分であることが好ましく、1~50g/10分であることがより好ましく、10~40g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが低すぎると、溶融樹脂組成物の流動性が不十分で、高すぎると流動性が高すぎ、いずれにおいても繊維の紡糸が難しい傾向がある。
【0036】
紡糸口金から押し出す雰囲気温度は、特に限定されず、例えば、5~40℃の範囲で適宜調整可能である。紡糸口金から押し出された繊維(紡糸フィラメント)には、整流風を与えることが好ましい。整流風は、クエンチエアとも呼ばれ、糸条の流れを安定化させる働きがある。また、クエンチエアとして冷却した気体を用いることで紡糸フィラメントを冷却することも可能である。クエンチエアの温度は、5~40℃であることが好ましく、より好ましくは10~30℃である。5℃より低い場合は、繊維に残留応力が生じ、繊維が捲縮する場合がある。40℃より高い場合は、樹脂の固化が不十分となり、繊維が固着する恐れがある。クエンチエアの風速は、0.1~3.0m/秒であることが好ましい。0.1m/秒より低い場合、整流の効果が低くなりやすく、3.0m/秒より高い場合は、クエンチ風が強すぎ、逆に糸条の乱れの原因となり、繊維同士の固着や糸切れが発生する恐れがある。
【0037】
次に、紡糸フィラメントを牽引細化し、目的の繊度の延伸フィラメント(マルチフィラメント)を得ることができる。空気延伸による紡糸速度は、好ましくは200~7000m/分であり、より好ましくは500~7000m/分、さらに好ましくは700~5000m/分、特に好ましくは700~3000m/分である。延伸する前に、必要に応じて油剤を付与してもよい。
【0038】
短繊維Bは、特に限定されないが、例えば、水分散性及びセルロース短繊維Aとの混和性に優れ、湿式不織布に好適に用いる観点から、単繊維繊度が0.1~50dtexであることが好ましく、0.5~25dtexであることがより好ましく、1.0~10dtexであることがさらに好ましい。本発明の1以上の実施形態において、短繊維Bの単繊維繊度は、JIS L 1015に準じて測定する。
【0039】
短繊維Bは、特に限定されないが、例えば、水分散性及びセルロース短繊維Aとの混和性に優れ、湿式不織布に好適に用いる観点から、平均繊維長が1~10mmであることが好ましく、2~8mmであることがより好ましく、3~7mmであることがさらに好ましい。本発明の1以上の実施形態において、短繊維Bの平均繊維長は、JIS L 1015に準じて測定することができる。
【0040】
短繊維Bは、特に限定されないが、例えば、融点が110~165℃であることが好ましく、より好ましくは120~155℃であり、さらに好ましくは130~150℃である。短繊維Bの融点が110℃以上であると、生分解性短繊維不織布の機械的強度が向上する。短繊維Bの融点が165℃以下であると、バインダーとしての機能を発揮しやすい上、柔軟な風合いを有する生分解性短繊維不織布を得やすくなる。本発明の1以上の実施形態において、短繊維Bの融点は、示差走査熱分析(DSC,Differential Scannning Calorimetry)により測定する。なお、本発明の1以上の実施形態において、短繊維Bの融点は、マルチフィラメントの融点を測定することで確認してもよい。
【0041】
短繊維Bは、特に限定されないが、例えば、引張強度が1.0~6.0cN/dtexであることが好ましく、より好ましくは1.5~6.0cN/dtexであり、さらに好ましくは2.0~6.0cN/dtexである。短繊維Bの引張強度が上述した範囲内であると、生分解性短繊維不織布の機械的強度と柔軟性が向上する。本発明の1以上の実施形態において、短繊維Bの引張強度は、JIS L 1015に準じて測定する。
【0042】
短繊維Bは、特に限定されないが、例えば、重量平均分子量が50,000~3,000,000であることが好ましく、より好ましくは100,000~3,000,000であり、さらに好ましくは100,000~1,500,000である。短繊維Bの重量平均分子量が上述した範囲内であると、生分解性短繊維不織布の機械的強度が向上する。短繊維Bの重量平均分子量は、短繊維Bを構成する樹脂組成物の平均分子量を測定することで確認してもよい。
【0043】
(生分解性短繊維不織布)
生分解性短繊維不織布はセルロース系短繊維A、及び短繊維Bを含有する。生分解性短繊維不織布において、機械的強度、風合い、及び柔軟性の観点から、セルロース系短繊維Aと短繊維Bの混合比率は、重量比で、セルロース系短繊維A/短繊維Bが50/50~90/10であることが好ましく、50/50~85/15であることがより好ましい。生分解性短繊維不織布は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、セルロース系短繊維A及び短繊維Bに加えて、他の生分解性繊維を含んでもよい。
【0044】
本発明の1以上の実施形態において、特に限定されないが、例えば、コスト及び生産性の観点から、生分解性短繊維不織布は、湿式不織布であってもよい。
【0045】
生分解性短繊維不織布は、用途や目的等に応じて、引張強度を適宜決めればよいが、湿式不織布の場合、機械的強度を高める観点から、JIS L 1085の不織布しん地試験法に準じて測定した引張強度は、50g/5cm/g/m2以上であることが好ましく、55g/5cm/g/m2以上であることがより好ましく、60g/5cm/g/m2以上であることがさらに好ましく、65g/5cm/g/m2以上であることが特に好ましい。
【0046】
生分解性短繊維不織布は、用途や目的等に応じて、圧縮特性を決めればよいが、湿式不織布の場合、圧縮時のソフトな風合いの観点から、目付が40±2g/m2である試料を用い、圧縮試験機KES-FB3(カトーテック(株)製)にて、センサの圧縮速度が50mm/secの条件下で測定した、圧縮特性の測定項目RC(圧縮に対する弾性(%))は、35%以上であることが好ましい。
【0047】
生分解性短繊維不織布は、用途や目的等に応じて、曲げ特性を決めればよいが、湿式不織布の場合、曲げ時の柔軟な風合いの観点から、目付が40±2g/m2である試料を用い、圧縮試験機KES-FB3(カトーテック(株)製)にて、試料(有効長さ20cm、幅1cm)の一端を固定し、他端を移動させて、曲率K=±2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/秒)の条件下で行った純曲げ試験によって測定した曲げ剛性Bが0.06gf・cm2/cm以下、かつ曲げヒステリシス2HBが0.30g・cm/cm以下であることが好ましい。
【0048】
本発明の1以上の実施形態において、生分解性短繊維不織布は、生分解性が良好であり、例えば、25~30℃において、微生物活性化した土中に生分解性短繊維不織布10gを5か月間埋めた後、重量測定または外観観察を行った際、生分解性短繊維不織布が完全に分解していることが好ましい。
【0049】
生分解性短繊維不織布は、用途や目的等に応じて、目付を決めればよいが、湿式不織布の場合、機械的強度、風合い、及び柔軟性の観点から、5~500g/m2であることが好ましく、10~300g/m2であることがより好ましく、20~200g/m2であることがさらに好ましい。
【0050】
生分解性短繊維不織布は、用途や目的等に応じて、厚みを決めればよいが、湿式不織布の場合、機械的強度、風合い、及び柔軟性の観点から、0.05~3mmであることが好ましく、0.1~2mmであることがより好ましく、0.2~1mmであることがさらに好ましい。
【0051】
生分解性短繊維不織布は、用途や目的等に応じて、通気度を決めればよいが、湿式不織布の場合、柔軟性及び通気性の観点から、JIS L 1096に記載のフランジール法に準じて測定した通気度が、30~800cm3/cm2/秒であることが好ましく、50~500cm3/cm2/秒であることがより好ましい。
【0052】
本発明の1以上の実施形態において、生分解性短繊維不織布は、機械的強度に優れるとともに、圧縮時及び曲げ時の柔軟性が良好であることから、産業資材、生活資材、農業資材等の各種資材に好適に用いることができる。特に、湿式不織布の場合、紙分野に広く用いることができる。具体的には、封筒、農業用袋(葡萄袋・びわ袋・桃袋等)、飲料用の紙パック、食品用包装材、お菓子、パン及びケーキ類の食品パック、紙製コップ、紙製カップ、紙製アイスクリーム容器、並びにマスク等に適宜用いることができる。
【0053】
生分解性短繊維不織布及びそれを用いた各種資材は、使用後、微生物が存在する環境中に放置すれば生分解するため、特別な廃棄処理を必要とせず、地球環境に優しい。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例及び比較例で用いた測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
(1)不織布の引張強度
JIS L 1085の不織布しん地試験法に準じ、幅5cm、長さ20cmの試料片を用い、つかみ間隔10cm、引張り速度30cm/分で測定した破断時の荷重値(g)を単位面積あたりの重量(g/m2)で除して縦方向と横方向の平均値を算出し、引張強度とした。
(2)圧縮特性
圧縮試験機KES-FB3(カトーテック(株)製)を用いて不織布の圧縮特性を測定した。センサの圧縮速度は50mm/secとした。
圧縮特性の測定項目RC(圧縮に対する弾性(%))が、35%以上の場合、不織布がソフトな風合いを保有していると評価した。
(3)曲げ特性
圧縮試験機KES-FB3(カトーテック(株)製)を用いて不織布の曲げ特性を評価した。試料(有効長さ20cm、幅1cm)の一端を固定し、他端を移動させて、曲率K=±2.5cm-1の範囲で等速度(変形速度0.5cm-1/秒)の純曲げ試験を行い、曲げ剛性B(gf・cm2/cm)と曲げヒステリシス2HB(g・cm/cm)を算出した。
曲げ剛性Bが0.06gf・cm2/cm以下、かつ曲げヒステリシス2HBが0.30g・cm/cm以下の場合は、不織布の柔軟性が良好であると評価した。
(4)生分解性試験
微生物活性化した土に不織布10gを5か月間保管した後、重量測定または外観観察を行い、生分解性能を下記基準で評価した。評価温度は25℃~30℃である。
良好:完全に分解している。
普通:一部のみが分解しており、完全には分解していない。
不良:ほとんど分解していない。
(5)融点
示差走査熱量計DSC[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いた。具体的には、試料5~6mgを、10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温して融解させ、その後、10℃/分の降温速度で220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/分の昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られる、2回目昇温時のDSC曲線における融解ピーク温度を融点とした。
(6)重量平均分子量(Mw)
試料10mgを用い、クロロホルム10mLに溶解させた後、不溶物を濾過により除いた。得られた溶液(濾液)を、「Shodex K805L(300x8mm、2本連結)」(昭和電工社製)を装着した島津製作所製GPCシステムを用い、クロロホルムを移動相として分子量測定に付した。分子量標準サンプルには、市販の標準ポリスチレンを用いた。
(7)ポリ-(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)の組成比
試料約20mgに2mLの硫酸-メタノール混合液(15:85)と2mLのクロロホルムを添加して密栓し、100℃で140分間加熱することでポリエステル分解物のメチルエステルを得た。冷却後、これに1.5gの炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えて中和し、炭酸ガスの発生がとまるまで放置した。4mLのジイソプロピルエーテルを添加してよく混合した後、遠心して、上澄み液中のポリエステル分解物のヒドロキシアルカン酸メチルエステルの組成をキャピラリーガスクロマトグラフィーにより分析し、P3HB3HHのモノマーユニットの組成比(モノマー比率)を求めた。ガスクロマトグラフは島津製作所社製GC-17A、キャピラリーカラムはGLサイエンス社製NEUTRA BOND-1(カラム長25m、カラム内径0.25mm、液膜厚0.4μm)を用いた。温度条件は、初発温度100℃~200℃まで8℃/分の速度で昇温、さらに200℃~290℃まで30℃/分の速度で昇温した。
(8)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210-1に準じ、温度165℃、荷重5kg(49N)の条件下で測定した。
(9)繊維の単繊維繊度及び引張強度
JIS L 1015に準じて測定した。
【0056】
(製造例1)
P3HB3HHとして、3HB単位/3HH単位のモル組成比が95/5、Mwが32万、MFR(165℃、5kg)が3g/10分の共重合樹脂(株式会社カネカ製、「X131A」)を100重量部と、結晶核剤として、ペンタエリスリトール(日本合成化学社製、「ノイライザーP」)を1重量部と、滑剤として、エルカ酸アミド0.5重量部及びベヘン酸アミド0.5重量部とをドライブレンドし、押出機を用いて、150℃で溶融混練してペレット化し、ペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレット状の樹脂組成物は、Mwが30万であり、MFR(165℃、5kg)が16.7g/10分であった。
得られた樹脂組成物(ペレット)を、スクリュー径25mmの1軸押出機で溶融し、ギアポンプで流量を調整し、溶融紡糸温度170℃で、紡糸ノズル(孔径0.3mm、吐出孔の形状:円形)から、14℃、1.0m/sの空気(クエンチエア)を吹き付ける空間(クエンチングファーム)に押出し、油剤を付与し、60℃に加熱されたロールで紡糸速度540m/分で引き取り、連続して70℃に加熱されたロールで1.8倍に延伸し、室温(約23℃)にて5%の緩和を行い、マルチフィラメントを得た。このマルチフィラメントは、単繊維繊度が2.0dtex、引張強度が2.0cN/dtex、融点が150℃であった。
上記で得られたマルチフィラメントを、繊維長が5mmとなるように切断して、P3HB3HH系短繊維1(単繊維繊度2.0dtex)を得た。
【0057】
(製造例2)
P3HB3HHとして、3HB単位/3HH単位のモル組成比が89/11、Mwが80万、MFR(165℃、5kg)が3g/10minの共重合樹脂(株式会社カネカ製、「X151A」)を使用した以外は、製造例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物を得た。得られたペレット状の樹脂組成物は、Mwが30万であり、MFR(165℃、5kg)が8.1g/10minであった。
得られた樹脂組成物(ペレット)を用いて、溶融紡糸温度を145℃に設定した以外は、製造例1と同様の方法で繊維化し、マルチフィラメントを作製した。このマルチフィラメントは、単繊維繊度が2.0dtex、引張強度が1.9cN/dtex、融点が128℃であった。
上記で得られたマルチフィラメントを、繊維長が5mmとなるように切断して、P3HB3HH系短繊維2(単繊維繊度2.0dtex)を得た。
【0058】
(製造例3)
ポリ乳酸(以下においてPLAと記す)樹脂(Nature Works社製、「3251D」、MFR(165℃、5kg)が29g/10分、融点が170℃)をスクリュー径25mmの1軸押出機で溶融し、ギアポンプで流量を調整し、溶融紡糸温度190℃で、紡糸ノズル(孔径0.4mm、吐出孔の形状:円形)から、20℃、1.0m/sの空気(クエンチエア)を吹き付ける空間(クエンチングファーム)に押出し、油剤を付与し、室温にて紡糸速度700m/分で引き取り、連続して70℃に加熱されたロールで2.5倍に延伸し、120℃にて5%の緩和を行い、マルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを、繊維長が5mmとなるように切断して、PLA短繊維を得た。PLA短繊維は、単繊維繊度が2.0dtex、引張強度が2.5cN/dtex、融点が172℃であった。
【0059】
(実施例1)
湿式抄紙法で不織布を作製した。セルロース系短繊維Aとしてパルプ(平均繊維長4mm、平均繊維径28μm)を80重量%、生分解性短繊維BとしてP3HB3HH系短繊維1を20重量%の割合で混合し、混合繊維を繊維濃度が0.03重量%になるように水中に分散させ、抄紙機(熊谷理機工業(株)製、攪拌式角型シートマシン)にて抄紙した。次いで100℃で乾燥し、その後120℃の熱ロールを通して繊維同士を熱接着し、目付40g/m2の短繊維不織布を得た。
【0060】
(実施例2)
生分解性短繊維BとしてP3HB3HH系短繊維2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして目付40g/m2の短繊維不織布を得た。
【0061】
(実施例3)
混合の割合を、パルプ/P3HB3HH系短繊維2が50重量%/50重量%になるように変更したこと以外は、実施例2と同様にして目付42g/m2の短繊維不織布を得た。
【0062】
(比較例1)
生分解性短繊維Bを用いず、パルプを100重量%用いたこと以外は、実施例1と同様にして目付40g/m2の短繊維不織布を得た。
【0063】
(比較例2)
P3HB3HH系短繊維1の代わりに製造例3で得られたPLA短繊維を用いた以外は、実施例1と同様にして目付41g/m2の短繊維不織布を得た。
【0064】
(実施例4)
パルプの代わりにレーヨン繊維(単繊維繊度2dtex、平均繊維長5mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして目付41g/m2の短繊維不織布を得た。
【0065】
(比較例3)
生分解性短繊維Bを用いず、レーヨン繊維を100重量%用いたこと以外は、実施例4と同様にして目付41g/m2の短繊維不織布を得た。
【0066】
(比較例4)
P3HB3HH系短繊維1の代わりに低融点ポリエステル系短繊維(株式会社クラレ製、「N701Y」、繊度5.6dtex、繊維長5mm、融点130℃)を用いた以外は、実施例4と同様にして目付40g/m2の短繊維不織布を得た。
【0067】
実施例及び比較例において、短繊維不織布の引張強度、圧縮特性、曲げ特性及び生分解性を上述したとおりに測定・評価し、その結果を下記表1及び2に示した。下記表1及び2の曲げ特性の欄において、Bは曲げ剛性であり、2HBは曲げヒステリシスである。
【0068】
【0069】
【0070】
表1及び表2のデータから分かるように、セルロース系短繊維及びP3HB3HH系短繊維を含む実施例1~4の不織布は、生分解性が良好であり、引張強度が高く、圧縮特性及び曲げ特性で示される柔軟な風合いを有する。
【0071】
一方、セルロース系短繊維を含むが、P3HB3HH系短繊維を含まない比較例1及び3の不織布は、生分解性は良好であるが、引張強度が低かった。また、セルロース系短繊維及びPLA短繊維を含む比較例2の不織布は、生分解性、引張強度及び風合いのいずれも、実施例の不織布に比べて劣っていた。また、セルロース系短繊維及び低融点ポリエステル系短繊維を含む比較例4の不織布は、生分解性が格段に劣る上、圧縮特性で示される風合いが不良であった。