(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法
(51)【国際特許分類】
B23D 47/00 20060101AFI20241101BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20241101BHJP
B60J 5/04 20060101ALN20241101BHJP
【FI】
B23D47/00 Z
B25J13/00 Z
B60J5/04 M
(21)【出願番号】P 2021012682
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2024-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】飯田 義樹
(72)【発明者】
【氏名】千竈 真
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-313570(JP,A)
【文献】特開平08-141828(JP,A)
【文献】特開平07-285021(JP,A)
【文献】実開昭64-052616(JP,U)
【文献】特開2014-014921(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0088927(KR,A)
【文献】特開昭61-257711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 47/00
B25J 13/00
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の板材が成形されてなる車両用外装部品を丸鋸刃によって切断する車両用外装部品切断装置であって、
回転軸芯を中心として回転可能に前記丸鋸刃を支持する丸鋸刃支持部と、
前記車両用外装部品を保持する部品保持部と、
前記丸鋸刃による前記車両用外装部品の切断中に、前記丸鋸刃支持部と前記部品保持部とを、前記回転軸芯と直交する第1方向と前記回転軸芯及び前記第1方向と直交する第2方向とに相対移動可能な移動部と、
前記車両用外装部品の表面形状に基づいて前記移動部を制御する制御装置と
を備え
、
前記車両用外装部品は、表面の少なくとも一部が外部から視認可能な意匠面であり、
前記制御装置は、前記意匠面の切断時に、前記丸鋸刃の接線と前記意匠面とが成す角度が、予め前記車両用外装部品の前記表面への外観影響を抑制可能であることが確認された品質保持角度範囲に保持されるように前記移動部を制御し、
前記品質保持角度範囲は、45°~60°である
ことを特徴とする車両用外装部品切断装置。
【請求項2】
金属製の板材が成形されてなる車両用外装部品を丸鋸刃によって切断する車両用外装部品切断方法であって、
前記丸鋸刃による前記車両用外装部品の切断中に、前記丸鋸刃を、前記丸鋸刃の回転軸芯と直交する第1方向と前記回転軸芯及び前記第1方向と直交する第2方向とに相対移動させながら前記車両用外装部品を切断
し、
前記車両用外装部品は、表面の少なくとも一部が外部から視認可能な意匠面であり、
前記意匠面の切断時に、前記丸鋸刃の接線と前記意匠面とが成す角度が、予め前記車両用外装部品の前記表面への外観影響を抑制可能であることが確認された品質保持角度範囲に保持されるように、前記丸鋸刃を前記第1方向と前記第2方向とに相対移動させ、
前記品質保持角度範囲は、45°~60°である
ことを特徴とする車両用外装部品切断方法。
【請求項3】
前記車両用外装部品の表面形状に基づいて、前記丸鋸刃による前記車両用外装部品の切断中に、前記丸鋸刃を前記第1方向と前記第2方向とに相対移動させることを特徴とする請求項
2記載の車両用外装部品切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、車両のドア枠には、金属製のサッシュモールが設けられる場合がある。例えば、このようなサッシュモールは、金属製の薄板がロール成形やプレス成形によって成形された成形体からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サッシュモールの製造工程では、上述に金属製の薄板が成形された後に、成形体を予め定められた箇所で切断する。このようなサッシュモール等の車両用外装部品を切断する場合には、一般的に丸鋸刃を有する切断装置が用いられる。また、パワーウィンドウの水かきリップが設けられたアウトサイドモールには、金属製の板材が成形されてなる芯材が設けられる場合がある。このような芯材を有するアウトサイドモールの切断にも上記切断装置が用いることが可能である。このような丸鋸刃を有する切断装置では、成形体を固定し、丸鋸刃を回転軸芯と直交する一方向に直線状に移動させながら成形体を切断する。
【0005】
ところで、丸鋸刃の接線と車両用外装部品(上記成形体)の表面とが成す角度が90°に近いと、車両用外装部品の表面が小さく欠けるチッピングや丸鋸刃の欠けが生じるといった不具合が生じる場合がある。また、丸鋸刃の接線と車両用外装部品の表面とが成す角度が0°に近いと、車両用外装部品の表面が熱で損傷する焼けや丸鋸刃の摩耗が進行するといった不具合が生じる場合がある。このため、丸鋸刃の接線と車両用外装部品の表面とが成す角度が、上記不具合が生じない角度で丸鋸刃を移動させることが好ましい。
【0006】
しかしながら、車両用外装部品は、薄板が複雑に折り曲げられた断面形状を有している。さらに、丸鋸刃の移動方向は上述のように一方向にのみ直線的に移動されている。このため、車両用外装部品の多くの部位で、上述のような丸鋸刃の接線と車両用外装部品の表面とが成す角度を上記不具合が生じない角度とすることが困難である。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、金属製の板材が成形されてなる車両用外装部品を丸鋸刃によって切断する車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法において、車両用外装部品の外観品質の向上及び丸鋸刃の長寿命化を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
本発明の第1の態様は、金属製の板材が成形されてなる車両用外装部品を丸鋸刃によって切断する車両用外装部品切断装置であって、回転軸芯を中心として回転可能に上記丸鋸刃を支持する丸鋸刃支持部と、上記車両用外装部品を保持する部品保持部と、上記丸鋸刃による上記車両用外装部品の切断中に、上記丸鋸刃支持部と上記部品保持部とを、上記回転軸芯と直交する第1方向と上記回転軸芯及び上記第1方向と直交する第2方向とに相対移動可能な移動部とを備えるという構成を採用する。
【0010】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記車両用外装部品の表面形状に基づいて上記移動部を制御する制御装置を備えるという構成を採用する。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第2の態様において、上記車両用外装部品が、表面の少なくとも一部が外部から視認可能な意匠面であり、上記制御装置が、上記意匠面の切断時に、上記丸鋸刃の接線と上記意匠面とが成す角度が、予め上記車両用外装部品の上記表面への外観影響を抑制可能であることが確認された品質保持角度範囲に保持されるように上記移動部を制御するという構成を採用する。
【0012】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様において、上記品質保持角度範囲が、45°~60°であるという構成を採用する。
【0013】
本発明の第5の態様は、金属製の板材が成形されてなる車両用外装部品を丸鋸刃によって切断する車両用外装部品切断方法であって、上記丸鋸刃による上記車両用外装部品の切断中に、上記丸鋸刃を、上記丸鋸刃の回転軸芯と直交する第1方向と上記回転軸芯及び上記第1方向と直交する第2方向とに相対移動させながら上記車両用外装部品を切断するという構成を採用する。
【0014】
本発明の第6の態様は、上記第5の態様において、上記車両用外装部品の表面形状に基づいて、上記丸鋸刃による上記車両用外装部品の切断中に、上記丸鋸刃を上記第1方向と上記第2方向とに相対移動させるという構成を採用する。
【0015】
本発明の第7の態様は、上記第5または第6の態様において、上記車両用外装部品は、表面の少なくとも一部が外部から視認可能な意匠面であり、上記意匠面の切断時に、上記丸鋸刃の接線と上記意匠面とが成す角度が、予め上記車両用外装部品の上記表面への外観影響を抑制可能であることが確認された品質保持角度範囲に保持されるように、上記丸鋸刃を上記第1方向と上記第2方向とに相対移動させるという構成を採用する。
【0016】
本発明の第8の態様は、上記第7の態様において、上記品質保持角度範囲が、45°~60°であるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、丸鋸刃が回転軸芯と直交する第1方向のみではなく、回転軸芯と第1方向と直交する第2方向にも移動させる。このため、丸鋸刃を直線的のみではなく、回転軸芯と直交する面内において二次元的に移動させることが可能となる。このため、車両用外装部品の表面に沿って丸鋸刃を移動させることが可能となる。したがって、車両用外装部品にチッピングや焼けが生じることが抑制され、丸鋸刃の欠けや摩耗が抑制されるように、丸鋸刃を移動させることが可能となる。よって、本発明によれば、金属製の板材が成形されてなる車両用外装部品を丸鋸刃によって切断する車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法において、車両用外装部品の外観品質の向上及び丸鋸刃の長寿命化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態における車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法によって切断されたサッシュモールを備える車両の概略構成を示す側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法によって切断されるサッシュモールの模式的な断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態における車両用外装部品切断装置の概略構成を示す模式図である。
【
図4】丸鋸刃とサッシュモールとを模式的に示す拡大図である。
【
図5】サッシュモールと丸鋸刃との位置関係を示す模式図である。
【
図6】丸鋸刃を移動させた場合の回転軸芯の軌跡を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法の一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、車両用外装部品がサッシュモール1である構成について説明する。しかしながら、本発明において切断する車両用外装部品は、サッシュモール1に限定されるものではない。
【0020】
図1は、本実施形態の車両用外装部品切断装置及び車両用外装部品切断方法で切断されるサッシュモール1(車両用外装部品)を備える車両100の概略構成を示す側面図である。
図1に示すように、サッシュモール1は、車両100の一部として設けられた外装部品であり、フロントドア101及びリアドア102の上部に配置されている。
【0021】
図1に示すように、サッシュモール1は、フロントドア101の前部からフロントドア101の上縁部及びリアドア102の上縁部を経由して、リアドア102の後方に配置されたリアサイドガラス103の後部まで設けられた長尺状の部品である。サッシュモール1は、フロントドア101とリアドア102との境界と、リアドア102とリアサイドガラス103との境界との2箇所で切断されている。このようにサッシュモール1が切断されていることで、フロントドア101とリアドア102との開閉が可能となっている。
【0022】
なお、サッシュモール1の形状はこれに限定されるものではない。例えば、サッシュモール1は、フロントドア101の縁部とリアドア102の縁部とに沿って設けられ、フロントドア101とリアドア102の外部に延出されない形状に形成される場合もある。また、サッシュモール1は、フロントドア101に設けられず、リアドア102の縁部とリアサイドガラス103の縁部に沿って設けられた形状に形成される場合もある。
【0023】
また、サッシュモール1の切断箇所は、2箇所である場合に限定されない。例えば、上述のようにサッシュモール1がフロントドア101の縁部とリアドア102の縁部とに沿って設けられ、フロントドア101とリアドア102の外部に延出されない形状に形成される場合には、切断箇所はフロントドア101とリアドア102との境界の1箇所となる。また、上述のようにサッシュモール1がフロントドア101に設けられず、リアドア102の縁部とリアサイドガラス103の縁部に沿って設けられた形状に形成される場合には、切断箇所はリアドア102とリアサイドガラス103との境界の1箇所となる。
【0024】
図2は、サッシュモール1の模式的な断面図である。サッシュモール1は、ステンレス鋼等の金属によって形成されており、板状のステンレス板をロール成形やプレス成形によって成形することで形成された成形体からなる。なお、
図2に示すサッシュモール1の断面形状は一例であって、本発明の車両用外装部品の断面形状は、
図2に示す形状に限定されるものではない。
【0025】
図2を参照して、本実施形態においてのサッシュモール1の具体的な形状について説明する。なお、サッシュモール1の取付け姿勢に関わらず、以下の説明においては、
図2における下側の下方とし、
図2における上側の上方とする。また、後述する意匠部位1aの意匠面1a1が向けられた方向を外側と称し、外側と反対側の方向を内側と称する。
【0026】
図2に示すように、サッシュモール1は、外部から視認可能な意匠面1a1を有する平板状の意匠部位1aを有している。また、サッシュモール1は、意匠部位1aの下端から内側に曲げられた下部湾曲部位1bを有している。この下部湾曲部位1bは、一方側の端部と他方側の端部とのいずれもが上方に向けられるように約180°の範囲で湾曲された部位である。この下部湾曲部位1bの外側に位置する端部は意匠部位1aの下端と接続されている。
【0027】
また、サッシュモール1は、下部湾曲部位1bの他端から上方に直線状に延出する下部端末部位1cを有している。この下部端末部位1cは、
図2に示す断面におけるサッシュモール1の一端部からなる部位であり、意匠部位1aの内壁面に対向配置されている。また、サッシュモール1は、意匠部位1aの上端から内側に曲げられた上部湾曲部位1dを有している。この上部湾曲部位1dは、一方側の端部が意匠部位1aの上端と接続され、他方側の端部が内側かつ水平方向に向けられるように約90°の範囲で湾曲された部位である。
【0028】
また、サッシュモール1は、上部湾曲部位1dの他方側の端部から内側に向けて水平に延出する平板状の上壁部位1eを有している。また、サッシュモール1は、上壁部位1eの内側に向けられた先端から下方に向けて曲げられた上部内側湾曲部位1fを有している。この上部内側湾曲部位1fは、一方の端部が上壁部位1eの先端に接続され、他方の端部が意匠部位1aに向かうように約180°の範囲で湾曲された部位である。また、サッシュモール1は、上部内側湾曲部位1fの他方の端部から意匠部位1aに向けて水平方向に延出する上壁対向部位1gを有している。この上壁対向部位1gは、先端が意匠部位1aに向けられた平板状の部位であり、上壁部位1eの下方にて上壁部位1eに対向配置されている。
【0029】
また、サッシュモール1は、上壁対向部位1gの先端から下方に向けて曲げられた内側湾曲部位1hを有している。この内側湾曲部位1hは、一端が上壁対向部位1gの先端と接続され、他端が内側に向くように斜め下方に向けられるように約120°の範囲で湾曲された部位である。また、サッシュモール1は、内側湾曲部位1hの先端から斜め下方に先端を向けて延出する平板状の斜壁部位1jを有している。また、サッシュモール1は、斜壁部位1jの先端から内側に曲げられた中央湾曲部位1kを有している。この中央湾曲部位1kは、一端が斜壁部位1jの先端と接続され、他端が水平に内側に向けられるように約60°の範囲で湾曲された部位である。
【0030】
また、サッシュモール1は、中央湾曲部位1kの他端から先端が内側に向けて水平に延出された平板状の水平壁部位1mを有している。また、サッシュモール1は、水平壁部位1mの先端から上方に曲げられた水平壁湾曲部位1nを有している。水平壁湾曲部位1nは、一端が水平壁湾曲部位1nの先端に接続され、他端が上方に向けられるように約90°の範囲で湾曲された部位である。
【0031】
また、サッシュモール1は、水平壁湾曲部位1nの他端から先端が上方に向けて延出された平板状の立壁部位1pを有している。また、サッシュモール1は、立壁部位1pの上端から外側に向けて折り曲げられた折曲部位1qを有している。この折曲部位1qは、一端が立壁部位1pの先端に接続され、他端が下方に向けられるように約180°の範囲で湾曲された部位である。また、サッシュモール1は、折曲部位1qの他端から先端が下方に向けて延出された平板状の上部端末部位1rを有している。この上部端末部位1rは、立壁部位1pの外側の面に当接するように、立壁部位1pに対向配置されている。
【0032】
このように、サッシュモール1は、複数の平板状の部位(意匠部位1a 下部端末部位1c、上壁部位1e、上壁対向部位1g、斜壁部位1j、水平壁部位1m 、立壁部位1p、及び上部端末部位1r)と、複数の湾曲された部位(下部湾曲部位1b、上部湾曲部位1d、上部内側湾曲部位1f、内側湾曲部位1h、中央湾曲部位1k、水平壁湾曲部位1n、及び折曲部位1q)とを有する断面形状に形成されている。
【0033】
このようなサッシュモール1は、金属製の薄板をロール成形やプレス成形によって成形体であり、不要部分及び途中部位(上記切断箇所)が車両用外装部品切断装置10によって切断されている。
【0034】
図3は、本実施形態の車両用外装部品切断装置10の概略構成を示す模式図である。
図3に示すように、本実施形態の車両用外装部品切断装置10は、丸鋸刃11と、取付部12(丸鋸刃支持部)と、駆動部13と、ロボットアーム14(移動部)と、固定台15(部品保持部)と、制御装置16とを備えている。丸鋸刃11は、回転軸芯Lを中心として回転可能に支持されており、回転軸芯Lを中心とする径方向の外縁部に対して複数の歯11aが設けられている。これらの歯11aは、回転軸芯Lを中心とする周方向に等間隔で配列されている。これらの歯11aの先端位置は、回転軸芯Lから等距離に配置されている。なお、丸鋸刃11が回転軸芯Lを中心として回転された場合の歯11aの先端の軌跡を丸鋸刃11の円周とする。
【0035】
取付部12は、丸鋸刃11が取り付け可能とされた部位、回転軸芯Lを中心として回転可能なように丸鋸刃11を軸支する。駆動部13は、丸鋸刃11に接続されており、丸鋸刃11を回転駆動するための動力を生成する。このような駆動部13は、例えば、モータと、変速機を備えている。
【0036】
ロボットアーム14は、例えば6軸の産業用ロボットであり、丸鋸刃11、取付部12及び駆動部13を保持する。このロボットアーム14は、取付部12を移動させることによって丸鋸刃11を移動させる。ロボットアーム14は、6軸の産業用ロボットであれば、ロボットアーム14が届く範囲にて、丸鋸刃11の姿勢を自在に変更可能であり、また丸鋸刃11を任意の方向に移動させることが可能である。
【0037】
このようなロボットアーム14は、本実施形態において、丸鋸刃11によるサッシュモール1の切断中に、取付部12を移動させることで、丸鋸刃11を回転軸芯Lと直交する第1方向と回転軸芯L及び第1方向と直交する第2方向とに移動させることが可能である。なお、第1方向及び第2方向は、重力方向に対して特に限定されるものではないが、本実施形態においては、
図3に示すように、水平方向を第1方向とし鉛直方向を第2方向とする。つまり、本実施形態においては、ロボットアーム14は、丸鋸刃11によるサッシュモール1の切断中に、回転軸芯Lと直交する水平方向と鉛直方向とに丸鋸刃11を移動させることが可能である。
【0038】
固定台15は、切断前のサッシュモール1を保持する台部である。この固定台15は、ロボットアーム14によって移動される丸鋸刃11と干渉しない形状とされており、サッシュモール1の切断する箇所に当接せずにサッシュモール1を保持する。
【0039】
制御装置16は、ロボットアーム14を制御する。本実施形態においては、制御装置16に対して予め切断前のサッシュモール1の形状データが格納されている。制御装置16は、サッシュモール1の形状データに基づいて、ロボットアーム14の制御を行う。
【0040】
続いて、
図4~
図6を参照して、本実施形態の車両用外装部品切断装置10の動作(車両用外装部品切断方法)について説明する。
【0041】
図4は、丸鋸刃11とサッシュモール1とを模式的に示す拡大図である。この図に示すように、丸鋸刃11の円周の接線とサッシュモール1の表面とが成す角度を切断角αと称する。この切断角αによって、切断によってサッシュモール1の表面に与える影響と丸鋸刃11の歯11aに与える影響が変化する。例えば、切断角αが90°に近いと、サッシュモール1の表面が小さく欠けるチッピングや丸鋸刃11の歯11aに欠けが生じるといった不具合が生じる場合がある。また、切断角αが0°に近いと、サッシュモール1の表面が熱で損傷する焼けや丸鋸刃11の歯11aの摩耗が進行するといった不具合が生じる場合がある。一方で、切断角αが45°~60°の範囲(品質保持角度範囲)であると、サッシュモール1の表面に不具合が生じることなく、また丸鋸刃11の歯11aへのダメージも抑制することが可能となる。
【0042】
このため、本実施形態の車両用外装部品切断装置10において制御装置16は、ロボットアーム14を制御することによって丸鋸刃11をサッシュモール1の表面に沿って移動させ、切断角αが45°~60°に保持されるように制御を行う。
【0043】
図5は、サッシュモール1の各部位に対する切断角αを主として45°とした場合におけるサッシュモール1と丸鋸刃11との位置関係を示す模式図である。
図5に示すように、本実施形態によれば、切断中に丸鋸刃11の位置を水平方向及び鉛直方向に移動させることによって、切断角αを45°に保持することができる。
【0044】
図6は、
図5に示すように丸鋸刃11を移動させた場合の回転軸芯Lの軌跡を示す模式図である。例えば、
図6に示すように、サッシュモール1の意匠部位1aの表面(意匠面1a1)が丸鋸刃11の切断前位置側であってかつ斜め上方に向かうようにサッシュモール1が固定されているとする。この状態で、
図5に示すように切断角αが主として45°を保持するように丸鋸刃11を移動させた場合には、
図6に示すように、回転軸芯Lは凡そサッシュモール1の表面に沿った軌跡で移動される。
【0045】
なお、上述のようにサッシュモール1は、複数の湾曲された部位(下部湾曲部位1b、上部湾曲部位1d、上部内側湾曲部位1f、内側湾曲部位1h、中央湾曲部位1k、水平壁湾曲部位1n、及び折曲部位1q)を有している。このため、サッシュモール1の全ての表面において切断角αを品質保持角度範囲に保持することが困難な場合も考えられる。このような場合には、少なくともサッシュモール1の複数の平板状の部位(意匠部位1a 下部端末部位1c、上壁部位1e、上壁対向部位1g、斜壁部位1j、水平壁部位1m 、立壁部位1p、及び上部端末部位1r)では、切断角αを品質保持角度範囲に保持するように制御する。
【0046】
以上のような本実施形態の車両用外装部品切断装置10は、金属製の板材が成形されてなるサッシュモール1を丸鋸刃11によって切断する。このような本実施形態の車両用外装部品切断装置10は、回転軸芯Lを中心として回転可能に丸鋸刃11を支持する取付部12と、サッシュモール1を保持する固定台15とを備える。また、本実施形態の車両用外装部品切断装置10は、丸鋸刃11によるサッシュモール1の切断中に、取付部12を、回転軸芯Lと直交する水平方向と回転軸芯L及び水平方向と直交する鉛直方向とに移動可能なロボットアーム14を備えている。
【0047】
また、本実施形態の車両用外装部品切断方法は、金属製の板材が成形されてなるサッシュモール1を丸鋸刃11によって切断する。このような本実施形態の車両用外装部品切断方法では、丸鋸刃11によるサッシュモール1の切断中に、丸鋸刃11を、丸鋸刃11の回転軸芯Lと直交する水平方向と回転軸芯L及び水平方向と直交する鉛直方向とに移動させながらサッシュモール1を切断する。
【0048】
このような本実施形態の車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法においては、丸鋸刃11が回転軸芯Lと直交する水平方向のみではなく、回転軸芯Lと水平方向と直交する鉛直方向にも移動させる。このため、丸鋸刃11を直線的のみではなく、回転軸芯Lと直交する面内において二次元的に移動させることが可能となる。このため、サッシュモール1の表面に沿って丸鋸刃11を移動させることが可能となる。したがって、サッシュモール1にチッピングや焼けが生じることが抑制され、丸鋸刃11の欠けや摩耗が抑制されるように、丸鋸刃11を移動させることが可能となる。よって、車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法によれば、サッシュモール1の外観品質の向上及び丸鋸刃11の長寿命化を可能にする。
【0049】
また、本実施形態の車両用外装部品切断装置10は、サッシュモール1の表面形状に基づいてロボットアーム14を制御する制御装置16を備えている。また、本実施形態の車両用外装部品切断方法は、サッシュモール1の表面形状に基づいて、丸鋸刃11によるサッシュモール1の切断中に、丸鋸刃11を水平方向と鉛直方向とに相対移動させる。このような本実施形態の車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法によれば、サッシュモール1の表面形状に基づいて、丸鋸刃11が移動されるため、作業員が目視等で丸鋸刃11を移動させる必要がない。
【0050】
また、本実施形態の車両用外装部品切断装置10においては、サッシュモール1が、表面の少なくとも一部が外部から視認可能な意匠面1a1であり、制御装置16が、意匠面1a1の切断時に、丸鋸刃11の接線と意匠面1a1とが成す角度(切断角α)が、予めサッシュモール1の表面への外観影響を抑制可能であることが確認された品質保持角度範囲に保持されるようにロボットアーム14を制御する。また、本実施形態の車両用外装部品切断方法においては、サッシュモール1が、表面の少なくとも一部が外部から視認可能な意匠面1a1であり、意匠面1a1の切断時に、切断角αが、予めサッシュモール1の表面への外観影響を抑制可能であることが確認された品質保持角度範囲に保持されるように、丸鋸刃11を水平方向と鉛直方向とに相対移動させる。このような本実施形態の車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法によれば、サッシュモール1の意匠面1a1の外観品質をより確実に保持することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態の車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法においては、例えば、品質保持角度範囲は、45°~60°とする。このような本実施形態の車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法によれば、より確実にサッシュモール1の外観品質の向上及び丸鋸刃11の長寿命化を可能にする。
【0052】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法によって、サッシュモール1を切断する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、金属製の芯材を有するアウトサイドモールを車両用外装部品切断装置10及び車両用外装部品切断方法によって切断することも可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては、丸鋸刃11を回転可能に支持する取付部12をロボットアーム14によって移動することで丸鋸刃11をサッシュモール1に対して移動させる構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、サッシュモール1を保持する固定台15をロボットアーム14やその他の移動機構によって移動させる構成を採用しても良い。また、取付部12及び固定台15との両方を移動させる構成を採用することも可能である。つまり、本発明においては、取付部12及び固定台15との少なくとも一方を移動部によって移動させることで丸鋸刃11とサッシュモール1とを相対移動可能とする構成を採用することが可能である。
【0055】
また、上記実施形態においては、ステンレス鋼によって形成されたサッシュモール1を切断する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、アルミニウムやアルミニウム合金によって形成された車両用外装部品を切断する構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1……サッシュモール(車両用外装部品)、1a1……意匠面、10……車両用外装部品切断装置、11……丸鋸刃、11a……歯、12……取付部(丸鋸刃支持部)、13……駆動部、14……ロボットアーム(移動部)、15……固定台(部品保持部)、16……制御装置、100……車両、L……回転軸芯、α……切断角