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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】成形容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20241101BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B65D85/50 100
B65D1/26 110
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021021448
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2021147107
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2020044075
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】苗村 正
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-108257(JP,A)
【文献】特開2003-335367(JP,A)
【文献】特表2014-514213(JP,A)
【文献】特開2007-267803(JP,A)
【文献】特開2007-099363(JP,A)
【文献】実開平05-062414(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物として油脂含有食品が収容される成形容器であって、
厚さ50~200μmの金属箔層と前記金属箔層の一方の面に積層されている厚さ20~400μmの内側樹脂層と前記金属箔層の他方の面に積層されている厚さ15~50μmの外側樹脂層とを有している積層体を、前記内側樹脂層が前記成形容器の内側となるように成形してなり、
前記成形容器は、底壁および前記底壁の外周縁に連なる周壁を有しており、
前記底壁平坦な外周部と、前記外周部を除く部分前記成形容器の内方に向かって台状に突出するように成形加工されてなる台状成形加工部とを有しており
前記台状成形加工部は、平坦部と、前記平坦部と前記底壁の外周部との間に設けられた平面より見て環状の立ち上がり部とを有しており、
前記平坦部の外周縁が平面より見てオーバル形または円形となされており、
前記平坦部と前記底壁の外周部との高低差が0.1~1.0mmであり、
前記立ち上がり部は、前記平坦部に対して145~178.8°の角度をなすように傾斜させられている、成形容器。
【請求項2】
内容物として油脂含有食品が収容される成形容器であって、
厚さ50~200μmの金属箔層と前記金属箔層の一方の面に積層されている厚さ20~400μmの内側樹脂層と前記金属箔層の他方の面に積層されている厚さ15~50μmの外側樹脂層とを有している積層体を、前記内側樹脂層が前記成形容器の内側となるように成形してなり、
前記成形容器は、底壁および前記底壁の外周縁に連なる周壁を有しており、
前記底壁は、平坦な外周部と、前記外周部を除く部分が前記成形容器の内方に向かって台状に突出するように成形加工されてなる台状成形加工部とを有しており、
前記台状成形加工部は、平坦部と、前記平坦部と前記底壁の外周部との間に設けられた平面より見て環状の立ち上がり部とを有しており、
前記平坦部の外周縁が平面より見てオーバル形または円形となされており、
前記平坦部と前記底壁の外周部との高低差が0.1~1.0mmであり、
前記立ち上がり部は、前記成形容器の内面側の曲率半径が1.5~30mmとなるように横断面円弧状となされている、形容器。
【請求項3】
前記平坦部の外周縁が平面より見て角丸方形であって、前記平坦部の外周縁における4つのコーナー部の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、請求項1または2の成形容器。
【請求項4】
前記平坦部の外周縁が平面より見て楕円形であって、前記平坦部の外周縁における長軸と交差する2つの部分の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、請求項1または2の成形容器。
【請求項5】
内容物として油脂含有食品が収容される成形容器であって、
厚さ50~200μmの金属箔層と前記金属箔層の一方の面に積層されている厚さ20~400μmの内側樹脂層と前記金属箔層の他方の面に積層されている厚さ15~50μmの外側樹脂層とを有している積層体を、前記内側樹脂層が前記成形容器の内側となるように成形してなり、
前記成形容器は、底壁および前記底壁の周縁に連なる周壁を有しており、
前記底壁平坦な外周部と、前記外周部を除く部分前記成形容器の内方に向かってドーム状に突出するように成形加工されてなるドーム状成形加工部とを有しており
前記ドーム状成形加工部の外周縁が、平面より見てオーバル形または円形となされており、
前記ドーム状成形加工部の頂点と前記底壁の外周部との高低差が0.1~0.9mmであり、
前記ドーム状成形加工部は、その頂点における接平面と、前記ドーム状成形加工部の突出高さの2分の1の高さ位置における接平面とが、145~178.8°の角度をなすように湾曲させられており、
また、前記ドーム状成形加工部は、前記成形容器の内面側の曲率半径が10mm以上となされている、成形容器。
【請求項6】
前記ドーム状成形加工部の外周縁が平面より見て角丸方形であって、前記ドーム状成形加工部の外周縁の4つのコーナー部の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、請求項の成形容器。
【請求項7】
前記ドーム状成形加工部の外周縁が平面より見て楕円形であって、前記ドーム状成形加工部の外周縁における長軸と交差する2つの部分の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、請求項の成形容器。
【請求項8】
前記内側樹脂層が1層の合成樹脂フィルム層または2層以上の合成樹脂フィルム層からなり、
前記1層の合成樹脂フィルム層、または、前記2層以上の合成樹脂フィルム層のうち前記成形容器の内面を構成している合成樹脂フィルム層が、ポリプロピレンフィルムからなる、請求項1~のいずれか1つの成形容器。
【請求項9】
前記ポリプロピレンフィルムがホモポリプロピレンフィルムである、請求項8の成形容器。
【請求項10】
内容物として油脂含有食品が充填された成形容器と、前記成形容器に施されて前記内容物を密封する蓋とを備えている包装体であって、
前記成形容器が請求項1~9のいずれか1つの成形容器からなる、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層体を成形してなる成形容器に関し、より詳細には、油脂を含有した加工食品の充填包装に用いられる成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
加工食品を充填包装するための容器として、金属箔とその両面に積層された樹脂フィルムとを有する積層体をカップ状やトレイ状に成形してなる成形容器が知られている(例えば下記の特許文献1参照)。
特に、金属箔としてアルミニウム箔を用いた積層体は、これを絞り成形等によって成形することにより、継ぎ目がなく、軽量でかつコストパフォーマンスに優れた成形容器が得られる。また、上記積層体からなる成形容器は、アルミニウム箔がバリア層として機能することから、レトルト食品等の加工食品を長期保存するための容器として好適に用いられている。
【0003】
ここで、内容物が加工食品である場合、通常、加熱された状態の加工食品が上記成形容器に充填された後、例えばアルミニウム箔等のバリア層を有する積層体からなるシート状の蓋によって成形容器の開口が密封されるため、加工食品を充填した直後は内圧が上昇して成形容器が膨らみ、時間の経過と共に内容物が冷めると内圧が下がって、成形容器が縮むことになる。
このような内圧の変化に伴う成形容器の変形を低減して保形性を確保するため、成形容器の底壁に、成形容器の内方に向かって所定の凸状に成形加工した成形加工部を形成することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第2866916号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、底壁に成形加工部が形成されていると、特に成形に伴う変形の度合いが大きい箇所において、成形容器の内面を構成している樹脂フィルム層に歪みが生じることがある。
そのため、内容物として例えばパスタソース、チキンライスソース、シチュー、デミグラスソース、カレールー、サバ味噌煮等の魚介類加工品、コンビーフ、スパム等の肉加工品、ピーナッツバターといった油脂(動植物油)を含有する加工食品(以下、「油脂含有食品」という。)を上記の成形容器に充填して包装した場合、油脂に溶け込んでいる着色成分が、底壁の成形加工部内面のうち歪が生じている箇所に浸透して、色移りが生じることがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の目的は、金属箔層および樹脂層を有する積層体を成形してなり底壁に成形加工部を有する成形容器として、油脂含有食品よりなる内容物を長期間保存しても成形加工部の内面に色移りが生じ難いものを提供することにある。
【0007】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0008】
1)内容物として油脂含有食品が収容される成形容器であって、
金属箔層と前記金属箔層の一方の面に積層されている内側樹脂層と前記金属箔層の他方の面に積層されている外側樹脂層とを有している積層体を、前記内側樹脂層が前記成形容器の内側となるように成形してなり、
前記成形容器は、底壁および前記底壁の外周縁に連なる周壁を有しており、
前記底壁には、その外周部を除く部分に、前記成形容器の内方に向かって台状に突出するように成形加工された台状成形加工部が設けられており、
前記台状成形加工部は、平坦部と、前記平坦部と前記底壁の外周部との間に設けられた平面より見て環状の立ち上がり部とを有しており、
前記平坦部の外周縁が平面より見てオーバル形または円形となされており、
前記平坦部と前記底壁の外周部との高低差が0.1~1.5mmである、成形容器。
【0009】
2)前記立ち上がり部は、前記平坦部に対して145~178.8°の角度をなすように傾斜させられている、前記1)の成形容器。
【0010】
3)前記立ち上がり部は、前記成形容器の内面側の曲率半径が1.5~30mmとなるように横断面円弧状となされている、前記1)の成形容器。
【0011】
4)前記平坦部の外周縁が平面より見て角丸方形であって、前記平坦部の外周縁における4つのコーナー部の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、前記1)~3)のいずれか1つの成形容器。
【0012】
5)前記平坦部の外周縁が平面より見て楕円形であって、前記平坦部の外周縁における長軸と交差する2つの部分の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、前記1)~3)のいずれか1つの成形容器。
【0013】
6)内容物として油脂含有食品が収容される成形容器であって、
金属箔層と前記金属箔層の一方の面に積層されている内側樹脂層と前記金属箔層の他方の面に積層されている外側樹脂層とを有している積層体を、前記内側樹脂層が前記成形容器の内側となるように成形してなり、
前記成形容器は、底壁および前記底壁の周縁に連なる周壁を有しており、
前記底壁には、その外周部を除く部分に、前記成形容器の内方に向かってドーム状に突出するように成形加工されたドーム状成形加工部が設けられており、
前記ドーム状成形加工部の外周縁が、平面より見てオーバル形または円形となされており、
前記ドーム状成形加工部の頂点と前記底壁の外周部との高低差が0.1~1.5mmである、成形容器。
【0014】
7)前記ドーム状成形加工部は、その頂点における接平面と、前記ドーム状成形加工部の突出高さの2分の1の高さ位置における接平面とが145~178.8°の角度をなすように湾曲させられている、前記6)の成形容器。
【0015】
8)前記ドーム状成形加工部の外周縁が平面より見て角丸方形であって、前記ドーム状成形加工部の外周縁の4つのコーナー部の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、前記6)または7)の成形容器。
【0016】
9)前記ドーム状成形加工部の外周縁が平面より見て楕円形であって、前記ドーム状成形加工部の外周縁における長軸と交差する2つの部分の曲率半径がそれぞれ5~20mmである、前記6)または7)の成形容器。
【0017】
10)前記内側樹脂層が1層の合成樹脂フィルム層または2層以上の合成樹脂フィルム層からなり、
前記1層の合成樹脂フィルム層、または、前記2層以上の合成樹脂フィルム層のうち前記成形容器の内面を構成している合成樹脂フィルム層が、ポリプロピレンフィルムからなる、前記1)~9)のいずれか1つの成形容器。
【発明の効果】
【0018】
前記1)の成形容器によれば、底壁に設けられた台状成形加工部の平坦部の外周縁が平面より見てオーバル形または円形となされており、平坦部と底壁の外周部との高低差が0.1~1.5mmであるので、台状成形加工部(特に、平坦部と立ち上がり部との境界部分等)に成形加工に伴う歪が生じ難い。従って、前記成形容器を用いて油脂含有食品を密封包装した状態で長期間保存した場合でも、油脂に溶け込んだ着色成分が底壁の内面を構成している内側樹脂層に浸透し難く、色移りが生じるのが効果的に抑制される。
また、前記2)~5)の成形容器によれば、底壁の内面を構成している内側樹脂層への色移りの発生が、より一層効果的に抑制される。
【0019】
前記6)の成形容器によれば、底壁に設けられたドーム状成形加工部の外周縁が平面より見てオーバル形または円形となされており、ドーム状成形加工部の頂部と底壁の外周部との高低差が0.1~1.5mmであるので、ドーム状成形加工部に成形加工に伴う歪が生じ難い。従って、前記成形容器を用いて油脂含有食品を密封包装した状態で長期間保存した場合でも、油脂に溶け込んだ着色成分が底壁の内面を構成している内側樹脂層に浸透し難く、色移りが生じるのが効果的に抑制される。
また、前記7)~9)の成形容器によれば、底壁の内面を構成している内側樹脂層への色移りの発生が、より一層効果的に抑制される。
【0020】
前記10)の成形容器によれば、成形容器の内面を構成している合成樹脂フィルム層が耐油性に優れたポリプロピレンフィルムであるので、油脂に溶け込んだ着色成分が浸透し難く、色移りの発生をより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の第1の実施形態に係る成形容器と蓋とを用いて油脂含有食品を充填包装してなる包装体を示す斜視図である。
図2】同包装体の一部を拡大して示す垂直断面図である。
図3】同成形容器の平面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う部分拡大断面図である。
図5】この発明の第2の実施形態に係る成形容器の平面図である。
図6図5のVI-VI線に沿う部分拡大断面図である。
図7】この発明の第3の実施形態に係る成形容器と蓋とを用いて油脂含有食品を充填包装してなる包装体を示す斜視図である。
図8】同成形容器の平面図である。
図9図8のIX-IX線に沿う拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態を、図1図9を参照しながら説明する。
【0023】
[第1の実施形態]
図1図4は、この発明による第1の実施形態を示したものである。
図1には、第1の実施形態に係る成形容器を用いて油脂含有食品を充填包装してなる包装体(1A)が示されている。図示の包装体(1A)は、積層体(20)をカップ状に成形してなりかつ内容物(C)として油脂含有食品が充填された成形容器(2A)と、積層体(30)よりなりかつ成形容器(2A)に施されて内容物(C)を密封する蓋(3A)とを備えている。
【0024】
成形容器(2A)は、底壁(21)と、底壁(21)の外周縁に連なって設けられた周壁(22)と、周壁(22)の上端縁から水平方向外方にのびたフランジ(23)とを備えている。成形容器(2A)の各部の形態については、後述する。
【0025】
図2に示すように、成形容器(2A)の材料である積層体(20)は、金属箔層(201)と、金属箔層(201)の一方の面に積層されている内側樹脂層(202)と、金属箔層(201)の他方の面に積層されている外側樹脂層(203)とを有している。そして、この積層体(20)を、例えば絞り成形や張出成形等のプレス成形加工によって、内側樹脂層(202)が成形容器(2A)の内側となるようにカップ状に成形することにより、成形容器(2A)が形成されている。
【0026】
金属箔層(201)は、内容物(C)である油脂含有食品をガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能するものである。
金属箔層(201)を構成する金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔及びニッケル箔が挙げられるが、遮光性やバリア機能、成形性、コスト等を考慮するとアルミニウム箔が好適である。アルミニウム箔としては、軟質(O材)若しくは硬質(H18材)の純アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔が挙げられる。特にJIS H4160で規定されるA1000系またはA8000系の軟質材(O材)は、絞り成形等の冷間成形において成形性に優れるため好ましい。具体的には、例えばA8021H-O材、A8079H-O材、A1N30-O材等が好適である。
金属箔層(201)の厚さは、特に制限されないが、ピンホールの発生、成形容器(2A)の耐久性、コスト等を考慮して、通常50~200μm程度となされる。
【0027】
金属箔層(201)の両面のうち少なくとも片面には、化成処理による下地層を形成してもよい。下地層は、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、以下の(i)~(iii)のいずれか1つの化成処理液を塗工した後、乾燥させることにより形成することができる。
(i)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを含む水-アルコール溶液
(ii)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂と、クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを含む水-アルコール溶液
(iii)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂と、クロム酸およびクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを含む水-アルコール溶液
ここで、金属箔の化成処理面におけるクロム付着量(片面当たり)は、特に限定されないが、通常は0.1~50mg/m、好ましくは2~20mg/mである。
【0028】
内側樹脂層(202)は、成形容器(2A)の内面を形成するとともに、フランジ(23)の上面を形成して蓋(3A)との熱融着層としても機能するものであり、1層の合成樹脂フィルム層または2層以上の合成樹脂フィルム層によって構成されている。なお、図2は、内側樹脂層(202)が1層の場合を示している。
内側樹脂層(202)を形成する合成樹脂フィルムとしては、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)等のポリエステル系フィルム、ナイロン6フィルム(PA6)等のポリアミド系フィルムといった各種公知の熱融着性樹脂フィルムが用いられる。
内容物(C)と接触する最内層の合成樹脂フィルム層には、ポリプロピレンを主成分とするポリプロピレンフィルムが好適に用いられる。上記フィルムは耐油性に優れているため、内容物(C)の油脂に溶け込んでいる着色成分が成形容器(2A)の内面に浸透するのが低減される。特に、プロピレンのホモポリマーよりなるホモポリプロピレンフィルムを用いれば、上記効果がより顕著に奏される。ホモポリプロピレンフィルムは、延伸型、無延伸型のいずれでもよいが、耐着色性を考慮すると、無延伸型のものが好ましい。
内側樹脂層(202)の厚さは、特に限定されないが、耐着色性や耐熱性、経済性等を考慮すると、通常20~400μmであり、好ましくは40~300μmである。
【0029】
なお、図示は省略したが、金属箔層(201)と内側樹脂層(202)との間に、1層または2層以上のポリオレフィン系フィルムよりなる厚さ20~100μm程度の強化層を介在させてもよく、それによって成形容器(2A)の耐久性や耐衝撃性等をさらに向上させることができる。
【0030】
外側樹脂層(203)は、成形容器(2A)の外面を形成する基材層として機能するものであり、通常、1層または2層以上の合成樹脂フィルムで構成されている。なお、図2は、内側樹脂層(202)が1層である場合を示している。
外側樹脂層(203)を構成する合成樹脂フィルムとしては、例えば、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエチレンフィルム(PE)、ポリスチレンフィルム(PS)、ポリ塩化ビニルフィルム(PVC)、ポリエステルフィルム(PEs)、ナイロン6フィルム(PA6)等のポリアミド系フィルム、ポリカーボネートフィルム(PC)、ポリブチレンテレフタレートフィルム(PBT)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PEN)、ポリブチレンナフタレートフィルム(PBN)等が挙げられる。これらの中でも、成形性や耐水性、さらにコストの観点より、ポリオレフィン系フィルムが好ましく、具対的には、例えば、高密度ポリエチレンフィルム(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、ホモポリプロピレンフィルム(HPP)、エチレン-プロピレンランダム共重合体フィルム(rPP)、エチレン-プロピレンブロック共重合体フィルム(bPP)が挙げられる。上記合成樹脂フィルムには、エラストマーやタルクが含まれていてもよい。
また、外側樹脂層(203)は、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、硝化綿、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の熱硬化性架橋性樹脂よりなるオーバーコート層で構成してもよい。
外側樹脂層(203)の厚さは、特に制限されないが、成形容器(2A)の耐久性、耐衝撃性、耐候性等を考慮すると、通常は15~50μmである。
基材層として機能する外側樹脂層(203)は、熱融着層として機能する内側樹脂層(202)を構成する樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する樹脂を用いるのが好ましく、20℃以上高い融点を有する樹脂を用いるのがさらに好ましい。以上の構成によれば、成形容器(2A)のフランジ(23)に蓋材(3A)をヒートシールすることによるフランジ(23)表面の肌荒れを効果的に抑制できる。但し、シールの熱を蓋材(3A)側のみにかける場合は、この限りではない。
【0031】
上記の積層体(20)は、例えばドライラミネート法や押出しラミネート法、ヒートラミネート法などによって作製できる。ドライラミネート法の場合、これに用いる接着剤としては、例えば、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、エラストマー系接着剤等が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン系接着剤が好ましく、特に二液硬化型のポリエーテル-ウレタン系接着剤および/または二液硬化型のポリエステル-ウレタン系接着剤が好ましい。
【0032】
成形容器(2A)には、その内側および外側のうち少なくとも一方に、顔料または染料を含んだ着色層(図示略)が形成されていてもよい。例えば、成形容器(2A)の内側に着色層を形成する場合、内側樹脂層(202)を複層構造として成形容器(2A)内面を構成する最内層以外の1以上の層に顔料または染料を含有させて同層を着色層としたり、内側樹脂層(202)と金属箔層(201)との間に形成される接着剤層に顔料や染料を含有させて同接着剤層を着色層にする事ができる。また、成形容器(2A)の外側に着色層を形成する場合、外側樹脂層(203)を複層構造として成形容器(2A)外面を構成する最外層以外の1以上の層に顔料または染料を含有させて同層を着色層としたり、外側樹脂層(203)と金属箔層(201)との間に形成される接着剤層に顔料や染料を含有させて同接着剤層を着色層にする他、外側樹脂層(203)の外表面にインキによる印刷を施して着色層を形成してもよい。
【0033】
次に成形容器(2A)の各部の形態について説明する。
図3に示すように、成形容器(2A)の底壁(21)は、平面より見て、オーバル形の一種である角丸正方形となされている。
周壁(22)は、底壁(21)の外周縁からやや外向きに傾斜するように立ち上がっており、底壁(21)の外周縁と相似の角丸正方形の横断面を有している。底壁(21)と周壁(22)との境界部分は、成形容器(2A)の外方に向かって凸円弧状の湾曲面によって構成されている。周壁(22)の上部には、外面側が斜め下向きとなるような環状段差部(221)が形成されており、環状段差部(221)上方の周壁(22)部分の開口面積が、環状段差部(221)下方の周壁(22)部分の開口面積よりも広くなされている。
フランジ(23)は、周壁(22)の上端縁から水平方向外向きに伸びており、その内周縁および外周縁は平面より見て底壁(21)の外周縁と相似の角丸正方形をしている。周壁(22)とフランジ(23)との境界部分は、成形容器(2A)の内方に向かって凸円弧状の湾曲面によって構成されている。
【0034】
底壁(21)には、その外周部(212)を除く部分に、成形容器(2A)の内方、すなわち上方に向かって台状に突出するように成形加工された台状成形加工部(211)が設けられている。台状成形加工部(211)の成形加工は、例えば、ダイス(雌型)およびパンチ(雄型)を有する成形金型で成形容器(2A)を形成する際に、ダイスの底部に設けられた凸部により、底壁(21)の所要部分を、パンチの先端部に設けられた凹部に押し当てて変形させることにより行われる。
台状成形加工部(211)は、平坦部(211a)と、平坦部(211a)と底壁(21)の外周部(212)との間に設けられた平面より見て環状の立ち上がり部(211b)とを有している。
平坦部(211a)の外周縁は、平面より見てオーバル形の一種である角丸正方形となされている。また、立ち上がり部(211b)の外周縁も、平坦部(211a)の外周縁と相似の角丸正方形となされている。
平坦部(211a)と底壁(21)の外周部(212)との高低差(H1)は、0.1~1.5mmであるのが好ましく、より好ましくは0.3mm~0.9mmである。上記高低差(H1)が0.1mm未満であると、加熱された油脂含有食品(C)を成形容器(2A)に充填して蓋(3A)を施した包装体(1A)の内圧変化に伴う底壁(21)の変形を十分に抑制できないおそれがある。一方、上記高低差(H1)が1.5mmを超えると、台状成形加工部(211)の成形加工による内側樹脂層(202)の変形の度合いが大きくなり、特に、平坦部(211a)と立ち上がり部(211b)との境界部分において歪が生じることにより、内容物(C)の油脂から溶け出した着色成分が同部分に浸透して、色移りが発生するおそれがある。
立ち上がり部(211b)は、平坦部(211a)に対して145~178.8°の角度(A)をなすように傾斜させられているのが好ましく、より好ましくは165~178.8°の角度(A)となされる。上記角度(A)が145°未満であると、平坦部(211a)と立ち上がり部(211b)との境界部分を構成している内側樹脂層(202)に成形加工に起因する歪が生じて、内容物(C)の油脂から溶け出した着色成分が同部分に浸透し、色移りが発生するおそれがある。一方、上記角度(A)が178.8°を超えると、加熱された油脂含有食品(C)を成形容器(2A)に充填して蓋(3A)を施した包装体(1A)の内圧変化に伴う底壁(21)の変形を十分に抑制できないおそれがある。上記角度(A)は、底壁(21)の外周部(212)に対する立ち上がり部(211b)の傾斜角度(B)によっても表すことができ、同傾斜角度(B)は0.2~35°であるのが好ましく、より好ましくは0.2~20°である。
平坦部(211a)の外周縁における4つのコーナー部の曲率半径(R1)は、それぞれ5~20mmであるのが好ましく、より好ましくは7~15mmである。上記曲率半径(R1)が5mm未満であると、平坦部(211a)の外周縁のコーナー部を構成している内側樹脂層(202)に成形加工による歪が生じて、内容物(C)の油脂から溶け出した着色成分が同部分に浸透し、色移りが発生するおそれがある。一方、上記曲率半径(R1)が20mmを超えると、成形時の歪の少ない成形容器にするにはある程度大きな面積の底壁を有する成形容器となるため、適用可能なサイズが制限され、特に小型の成形容器に不向きとなる。
【0035】
蓋(3A)は、積層体(30)を所定形状にカットしてなるシート状のものである。
この実施形態の場合、蓋(3A)の形状は、成形容器(2A)のフランジ(23)の外周縁とほぼ同形同大の角丸正方形となされている。
図示は省略したが、蓋(3A)には、その外周縁の一部から水平方向外方に突出した開封用タブが形成されていてもよい。
【0036】
蓋(3A)を構成する積層体(30)は、例えば、図2に示すように、金属箔層(301)と、金属箔層(301)の下面に積層された熱融着性樹脂層(302)と、金属箔層(301)の上面に積層された保護樹脂層(303)とを備えている。また、金属箔層(301)と熱融着性樹脂層(302)との間に、強化層(図示略)を介在させてもよい。
金属箔層(301)は、成形容器(2A)に収容する油脂含有食品(C)を、ガス、水蒸気、光等から保護するためのバリア層として機能する。同層(301)を形成する金属箔としては、成形容器用積層体(20)の金属箔層(201)を形成する金属箔と同じものや、アルミニウム硬質箔(H18材)を使用できる。金属箔層(301)の片面または両面には、化成処理による下地層を形成してもよく、その場合、前記水溶液(i)~(iii)を使用することができる。金属箔層(301)の厚さは、特に制限されないが、バリア性やシール性の観点より、通常5~40μmである。
熱融着性樹脂層(302)は、成形容器(2A)のフランジ(23)上面を構成する内側樹脂層(202)にヒートシールされる層であり、1層または2層以上の熱可塑性樹脂フィルムで構成される。具体的には、例えば、低密度ポリエチレンフィルム(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)、アイオノマー樹脂フィルム、アクリル系共重合樹脂フィルムが挙げられる。また、該熱可塑性樹脂フィルムには、エラストマーやタルクが含まれていてもよい。熱融着性樹脂層(302)の厚さは、特に制限されないが、通常10~100μmである。
保護樹脂層(303)は、蓋(3A)の最外面を形成する層であり、例えば1層または2層以上の合成樹脂フィルムによって構成される。具体的には、例えば、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等の延伸フィルム等が挙げられる。また、保護樹脂層(303)は、成形容器用積層体(20)の外側樹脂層(203)と同様にオーバーコート層で構成してもよい。保護樹脂層(303)の厚さは、特に制限されないが、包装体(1A)の耐久性、耐衝撃性、耐候性等の観点より、通常1~30μm、好ましくは2~20μmである。
保護樹脂層(303)は、熱融着性樹脂層(302)を構成する樹脂の融点より10℃以上高い融点を有する樹脂を用いるのが好ましく、20℃以上高い融点を有する樹脂を用いるのがさらに好ましい。以上の構成によれば、成形容器(2A)のフランジ(23)に蓋材(3A)をヒートシールすることによる蓋材(3A)表面の肌荒れを効果的に抑制できる。
上記積層体(30)の作製は、例えば、ドライラミネート法、押出しラミネート法、ヒートラミネート法等によって行うことができる。また、ドライラミネート法の場合には、前記積層体(20)と同様の接着剤を使用できる。
【0037】
内容物(C)として成形容器(2A)に収容される油脂含有食品としては、例えば、パスタソース、チキンライスソース、シチュー、デミグラスソース、カレールー、鯖味噌煮等の魚介類加工品、コンビーフ・スパム等の肉加工品、ピーナッツバターといった、油脂(動植物油)を含有する半固形状または固形状の加工食品が挙げられる。
【0038】
包装体(1A)の製法は特に限定されないが、一般的には、加熱された状態の油脂含有食品(C)を成形容器(2A)に所定量充填した後、成形容器(2A)のフランジ(23)上面に蓋(3A)を重ねてヒートシールすることにより、包装体(1A)が得られる。
【0039】
[第2の実施形態]
図5および図6には、この発明の第2の実施形態に係る成形容器が示されている。
この実施形態の成形容器(2A)は、以下の点を除いて、図1図4に示す第1の実施形態の成形容器(2A)と実質的に同じである。
すなわち、図示の成形容器(2A)において、底壁(21)に設けられた台状成形加工部(211)の立ち上がり部(211b)は、横断面円弧状となされている。したがって、平坦部(211a)と立ち上がり部(211b)との境界部分は、なだらかな曲面となされており、稜線が表れない。
上記立ち上がり部(211b)は、成形容器(2A)の内面側(上面側)の曲率半径(R3)が1.5~30mmとなされているのが好ましく、より好ましくは、2~10mmである。上記曲率半径(R3)が1.5mm未満であると、平坦部(211a)と立ち上がり部(211b)との境界部分を構成している内側樹脂層(202)に成形加工による歪が生じて、内容物の油脂(C)から溶け出した着色成分が同部分に浸透し、色移りが発生するおそれがある。一方、上記曲率半径(R3)が30mmを超えると、加熱された油脂含有食品(C)を成形容器(2A)に充填して蓋(3A)を施した包装体(1A)の内圧変化に伴う底壁(21)の変形を十分に抑制できないおそれがある。
【0040】
[第3の実施形態]
図7図9は、この発明による第3の実施形態を示したものである。
図7には、第3の実施形態に係る成形容器を用いて油脂含有食品を充填包装してなる包装体(1B)が示されている。図示の包装体(1B)は、積層体(20)をカップ状に成形してなりかつ内容物(C)として油脂含有食品が充填された成形容器(2B)と、積層体(30)よりなりかつ成形容器(2B)に施されて内容物(C)を密封する蓋(3B)とを備えている。
【0041】
成形容器(2B)は、以下の点を除いて、第1の実施形態の成形容器(2A)と実質的に同じである。
すなわち、図8に示すように、成形容器(2B)の底壁(21)は、平面より見てオーバル形の一種である楕円形となされている。また、これに対応して、周壁(22)の横断面、フランジ(23)の内外周縁も、それぞれ平面より見て楕円形となされている。周壁(22)の上部には、環状段差部が形成されていないが、第1の実施形態と同様に形成しても構わない。
【0042】
底壁(21)には、その外周部(212)を除く部分に、成形容器(2A)の内方、すなわち上方に向かってドーム状に突出するように成形加工されたドーム状成形加工部(211X)が設けられている。ここで、「ドーム状」には、表面のほぼ全体がなだらかに連なる曲面によって構成された形状が含まれるものとする。
ドーム状成形加工部(211X)の外周縁は、平面より見てオーバル形の一種である楕円形となされており、底壁(21)の平面形状と相似形である。
ドーム状成形加工部(211X)の頂部と底壁(21)の外周部(212)との高低差(H2)は、0.1~1.5mmであるのが好ましく、より好ましくは0.3mm~0.9mmである。上記高低差(H2)が0.1mm未満であると、加熱された油脂含有食品(C)を成形容器(2A)に充填して蓋(3A)を施した包装体(1A)の内圧変化に伴う底壁(21)の変形を十分に抑制できないおそれがある。一方、上記高低差(H2)が1.5mmを超えると、ドーム状成形加工部(211X)の成形加工による内側樹脂層(202)の変形の度合いが大きくなって歪が生じる箇所が出来ることにより、内容物(C)の油脂から溶け出した着色成分が同部分に浸透し、色移りが発生するおそれがある。
ドーム状成形加工部(211X)の外周縁における長軸と交差する2つの部分の曲率半径(R4)は、それぞれ5~20mmであるのが好ましく、より好ましくは7~15mmである。上記曲率半径(R4)が5mm未満であると、ドーム状成形加工部(211X)の外周縁における長軸と交差する2つの部分の付近を構成している内側樹脂層(202)に成形加工による歪が生じて、内容物(C)の油脂から溶け出した着色成分が同部分に浸透し、色移りが発生するおそれがある。一方、上記曲率半径(R4)が20mmを超えると、成形時の歪の少ない成形容器にするにはある程度大きな面積の底壁を有する成形容器となるため、適用可能なサイズが制限され、特に小型の成形容器に不向きとなる。
また、ドーム状成形加工部は、その頂点における接平面と、ドーム状成形加工部の突出高さの2分の1の高さ位置における接平面とが、145~178.8°の角度(D)をなすように湾曲させられていることが好ましく、より好ましくは165~178.8°である。上記角度(D)が145°未満であると、ドーム状成形加工部(特にその頂点部)を構成している内側樹脂層(202)に成形加工に起因する歪が生じて、内容物(C)の油脂から溶け出した着色成分が同部分に浸透し、色移りが発生するおそれがある。一方、上記角度が178.8°を超えると、加熱された油脂含有食品(C)を成形容器(2A)に充填して蓋(3A)を施した包装体(1A)の内圧変化に伴う底壁(21)の変形を十分に抑制できないおそれがある。
また、ドーム状成形加工部(211X)は、成形容器(2A)の内面側(上面側)の曲率半径(R5)が10mm以上となされているのが好ましく、より好ましくは、30mm以上である。上記曲率半径(R5)が10mm未満であると、ドーム状成形加工部(211X)を構成している内側樹脂層(202)に成形加工による歪が生じる箇所が出来て、内容物(C)の油脂から溶け出した着色成分が同箇所に浸透し、色移りが発生するおそれがある。
【0043】
蓋(3B)は、成形容器(2B)のフランジ(23)の形状に合わせて楕円形となされているが、それ以外は、第1の実施形態の蓋(3A)と実質的に同一である。
また、上記成形容器(2B)および蓋(3B)を用いて油脂含有食品よりなる内容物(C)を充填包装してなる包装体(1B)およびその製法についても、第1の実施形態のそれらと実質的に同一である。
【0044】
なお、上記の各実施形態において、この発明による成形容器の底壁に形成される成形加工部の態様を示したが、これらはあくまでも例示に過ぎず、例えば、成形加工部の平面形状は、角丸方形や楕円形以外のオーバル形(例えば、角丸長方形)や円形であってもよく、また、これらの平面形状を台状成形加工部およびドーム状成形加工部のいずれに適用するかも適宜変更可能である。
【実施例
【0045】
[成形容器用積層体の作製]
金属箔層の材料として、JIS H4160で規定されたA8079-O材よりなる厚さ120μmのアルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を用い、片面当たり10mg/mのクロム付着量の化成被膜を形成したものを用意した。
内側樹脂層の材料として、Tダイ法により作製された厚さ300μmの無延伸ホモポリプロピレンフィルム(HPP)を用意した。
また、外側樹脂層の材料として、厚さ4.5μmのエチレン-プロピレンランダム共重合体フィルム(rPP)と、厚さ21μmのエチレン-プロピレンブロック共重合体フィルム(bPP)と、厚さ4.5μmのエチレン-プロピレンランダム共重合体フィルム(rPP)とで構成される三層共押出しフィルムを用意した。
そして、アルミニウム箔の一方の化成処理面に、二液硬化型のポリエステルポリウレタン系接着剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗工して、その面に上記無延伸ホモポリプロピレンフィルム(HPP)を貼り合わせるとともに、アルミニウム箔の他方の化成処理面に、二液硬化型のポリエステルポリウレタン系接着剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗工して、その面に三層共押出しフィルムを貼り合わせた後、40℃の環境下で8日間ヒートエージング処理した。こうして、金属箔層、内側樹脂層および外側樹脂層よりなる成形容器用積層体を得た。
【0046】
[成形容器の作製]
上記の成形容器用積層体を絞り成形することにより、図1~4に示す成形容器と同一の基本形態を有し、かつ、底壁に以下の表1にそれぞれ示す台状成形加工部またはドーム状成形加工部が設けられた実施例1~9および比較例1の成形容器を作製した。
ここで、各成形容器は、開口部(フランジの内周縁)を、縦横の幅が各66mmであり、コーナー部の曲率半径が18mmである平面視角丸正方形とし、底壁を、縦横の幅が各60mmであり、コーナー部の曲率半径が10mmである平面視角丸正方形とし、高さを20mmとし、フランジの幅を10mmとした。
また、各成形容器において、台状成形加工部またはドーム状成形加工部の成形に用いたダイスの底面の凸部のサイズを、下記の表1に併せて記す。
【0047】
【表1】
【0048】
[蓋の作製]
金属箔層の材料として、JIS H4160で規定されたA8021-H18材よりなる厚さ12μmのアルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を用い、片面当たり10mg/mのクロム付着量の化成被膜を形成したものを用意した。
熱融着性樹脂層の材料として、厚さ50μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を用意した。
また、保護樹脂層の材料として、厚さ25μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用意した。
そして、アルミニウム箔の一方の化成処理面に、二液硬化型のポリエステルポリウレタン系接着剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗工して、その面に上記直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)を貼り合わせるとともに、アルミニウム箔の他方の化成処理面に、二液硬化型のポリエステルポリウレタン系接着剤を乾燥膜厚が3μmとなるように塗工して、その面に上記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を貼り合わせた後、40℃の環境下で8日間ヒートエージング処理した。こうして、金属箔層、熱融着性樹脂層および保護樹脂層よりなる蓋用積層体を得た。
そして、得られた蓋用積層体を縦横各120mmの正方形にカットすることにより、蓋を作製した。
【0049】
[包装体サンプルの作製]
実施例1~9および比較例1の成形容器を2個ずつ用意し、その一方に市販のレトルトカレールー(ハウス食品(株)製 プロクオリティビーフカレー(登録商標) 中辛)から具材を除いたものを20g充填した。ついで、同成形容器のフランジに蓋を配置して、190℃に加熱した環状シーラー(外径84mmφ、内径72mmφ、幅6mm)を、フランジ上面に0.2MPaの加圧力で2秒間押し付けることにより、蓋をヒートシールし、カレールー入りの包装体サンプルAを作製した。
また、他方の成形容器に水20mlを充填し、そのフランジに上記と同様の方法および条件で蓋をヒートシールすることにより、水入りの包装体サンプルBを作製した。
【0050】
[耐着色性の検証]
実施例1~9および比較例1の各成形容器を使用したカレールー入りの包装体サンプルAを、常温で4週間放置した後、各包装体サンプルAの蓋を剥離開封して、成形容器からカレールーを取り出した。そして、成形容器の内部を水で洗浄して布巾で拭った後、成形容器内面を目視で観察し、着色(色移り)の有無を確認した。
結果を以下の表2に示す。
【0051】
[密封性および保形性の検証]
実施例1~9および比較例1の各成形容器を使用した水入りの包装体サンプルBを、レトルト釜に投入して、温度125℃で20分間熱水処理した後、ヒートシール部を目視で観察し、デラミネーションやヒートシール部の剥がれ等の有無を確認した。
また、熱水処理の直後に、各包装体サンプルBを水平な台の上に静置し、内圧の上昇による成形容器の底壁の膨らみに起因するガタつきの有無を確認した。
これらの結果についても、以下の表2に併せて示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の結果から明らかなように、まず、耐着色性(色移り)については、実施例1,3~6,8,9の成形容器の場合、その底壁内面の台状成形加工部に着色は見られなかった。また、実施例2,7の成形容器についても、その底壁内面の台状成形加工部にわずかに薄い着色が認められたが、問題のない範囲であった。これに対して、比較例1の成形容器では、その底壁内面の台状成形加工部に濃い着色が見られた。
次に、密封性に関しては、実施例1~9および比較例1の各成形容器を使用した水入りの包装体サンプルBのいずれにおいても、デラミネーションやヒートシール部の剥がれ等は見られず、問題なかった。
また、保形性につき、実施例5の成形容器を使用した水入りの包装体サンプルBにおいて、ややガタつきが見られたものの、問題のない範囲であり、その他の包装体サンプルBではガタつきは見られず、安定して静置されていた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明の成形容器は、パスタソース、シチュー、カレールー等の油脂含有食品の長期保存に適している。
【符号の説明】
【0055】
(1A)(1B):包装体
(2A)(2B):成形容器
(20):積層体
(201):金属箔層
(202):内側樹脂層
(203):外側樹脂層
(21):底壁
(211):台状成形加工部
(211a):平坦部
(211b):立ち上がり部
(211X):ドーム状成形加工部
(212):外周部
(22):周壁
(3A)(3B):蓋
(C):内容物(油脂含有食品)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9