(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電動車両の冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20241101BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241101BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20241101BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
F01P7/16 501
B60L3/00 J
B60L9/18 J
B60K11/04 G
(21)【出願番号】P 2021023245
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰史
(72)【発明者】
【氏名】三松 隼太
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-165588(JP,A)
【文献】特開2009-261197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/14
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力する電動モータと、走行用の電力を蓄積する第1バッテリと、前記第1バッテリから電力を受けて前記電動モータを駆動するインバータと、
前記第1バッテリの電圧よりも低い電源電圧を供給する第2バッテリと、前記第1バッテリの電力を受けて前記低い電源電圧を供給するDC/DCコンバータと、発熱部品と、を備える電動車両に搭載される電動車両の冷却装置であって、
前記インバータを冷却する冷却機構と、
前記冷却機構による前記インバータの冷却強度を切替え可能な制御部と、
を備え、
前記冷却機構は、冷却液を前記インバータに沿って流す第1液路と、冷却液を前記DC/DCコンバータに沿って流す第2液路と、冷却液を前記発熱部品に沿って流す第3液路と、前記第1液路、前記第2液路及び前記第3液路を介して流れる冷却液の経路を切り替える切替弁とを有し、
前記制御部は、前記インバータの出力に基づいて、前記冷却機構を第1態様から前記インバータの冷却強度が前記第1態様よりも強い第2態様に切り替え、
前記第1態様は、冷却液が前記第1液路と前記第2液路とに循環する態様であり、
前記第2態様は、冷却液が前記第2液路を介さずに前記第1液路を循環する態様であることを特徴とする電動車両の冷却装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷却機構を前記第1態様から前記第2態様に切り替える際に、前記第3液路の冷却液の温度に基づいて、冷却液が前記第2液路と前記第3液路とに循環する第3態様、又は、冷却液が前記第2液路に循環しない第4態様に切り替えることを特徴とする請求項
1記載の電動車両の冷却装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷却機構を前記第2態様に切り替えた後、前記DC/DCコンバータの温度が閾値を超えた場合に、前記冷却機構を前記第1態様に切り替えることを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載の電動車両の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両においてダウンバータ(コンバータ)とパワードライブユニット(インバータ)とを冷却水を用いて冷却する冷却装置が示される。当該冷却装置においては、ダウンバータの温度、並びに、パワードライブユニットの温度に応じてラジエータのファンの制御が切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行用モータを駆動するインバータの冷却強度を、インバータの温度に従って切り替えていたのでは、高い出力がインバータに要求されたときに冷却が追い付かず、インバータが高温に至ることがある。
【0005】
本発明は、高い出力がインバータに要求されたときにインバータを効率的に冷却できる電動車両の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る電動車両の冷却装置は、
走行用の動力を出力する電動モータと、走行用の電力を蓄積する第1バッテリと、前記第1バッテリから電力を受けて前記電動モータを駆動するインバータと、前記第1バッテリの電圧よりも低い電源電圧を供給する第2バッテリと、前記第1バッテリの電力を受けて前記低い電源電圧を供給するDC/DCコンバータと、発熱部品と、を備える電動車両に搭載される電動車両の冷却装置であって、
前記インバータを冷却する冷却機構と、
前記冷却機構による前記インバータの冷却強度を切替え可能な制御部と、
を備え、
前記冷却機構は、冷却液を前記インバータに沿って流す第1液路と、冷却液を前記DC/DCコンバータに沿って流す第2液路と、冷却液を前記発熱部品に沿って流す第3液路と、前記第1液路、前記第2液路及び前記第3液路を介して流れる冷却液の経路を切り替える切替弁とを有し、
前記制御部は、前記インバータの出力に基づいて、前記冷却機構を第1態様から前記インバータの冷却強度が前記第1態様よりも強い第2態様に切り替え、
前記第1態様は、冷却液が前記第1液路と前記第2液路とに循環する態様であり、
前記第2態様は、冷却液が前記第2液路を介さずに前記第1液路を循環する態様であることを特徴する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、制御部がインバータの出力に基づいてインバータの冷却強度を切り替えるので、インバータから高い出力が行われる際に、インバータの温度が高くなるまえに、冷却強度を高めておくなど、インバータを効率的に冷却できる。したがって、インバータの冷却が追い付かずにインバータが非常に高温になってしまうという事態を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態の冷却装置が搭載された電動車両を示すブロック図である。
【
図2】冷却機構の切り替わりを説明する図であり、(A)は冷却機構の第1切替パターンを示し、(B)は冷却機構の第2切替パターンを示し、(C)は冷却機構の第3切替パターンを示す。
【
図3】制御部が実行する冷却機構の切替処理を示すフローチャートである。
【
図4】走行制御部が実行するインバータの出力制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の冷却装置が搭載された電動車両を示すブロック図である。
図1の電動車両1は、内燃機関であるエンジン4と、走行用の動力を発生する電動モータ7と、を備えるHEV(Hybrid Electric Vehicle)である。
【0010】
さらに、電動車両1は、エンジン4又は電動モータ7により駆動される駆動輪2と、エンジン4を動かすための補機3と、走行用の電力を蓄積し高電圧を供給する第1バッテリ5と、第1バッテリ5の電力を受けて電動モータ7を駆動するインバータ6と、第1バッテリ5の電圧よりも低い電源電圧(例えば12V系の低電圧)を供給する第2バッテリ8と、第1バッテリ5の電力を受けて上記低い電源電圧を供給可能なDC/DCコンバータ9と、エンジン4、インバータ6及びDC/DCコンバータ9を冷却する冷却装置20と、運転操作を受ける運転操作部13と、運転操作部13から出力される信号に基づいて補機3及びインバータ6を動かして駆動輪2に出力される動力を制御する走行制御部15と、備える。第2バッテリ8及びDC/DCコンバータ9から供給される低い電源電圧は、補機3の一部、制御系の構成(走行制御部15、冷却装置20の制御部22等)、並びに、電動モータ7以外の電動機器(冷却装置20の切替弁D1~D4等)に供給される。
【0011】
走行制御部15は、1つのECU(Electronic Control Unit)、あるいは、互いに連携して動作する複数のECUから構成される。走行制御部15は、運転操作部13の操作信号(主にアクセル操作部の操作信号)に応じて要求トルクを計算し、要求トルクが得られるように補機3及びインバータ6を動作させることで、エンジン4、電動モータ7又はこれら両方を駆動する。要求トルクとは、運転操作によって駆動輪2へ出力されるよう要求されるトルクを意味する。
【0012】
インバータ6は、走行制御部15によってオンとオフとに切替えられる複数のパワー半導体素子を含み、パワー半導体素子の動作によって電動モータ7に三相交流電力を出力する。走行制御部15は、電動モータ7の回転速度及び位相に応じて、三相交流電力の周波数、位相、実効電流値を変えることで、電動モータ7から出力されるトルクを制御する。
【0013】
インバータ6には、連続出力できる定格電力(最大定格)が予め定められている。また、インバータ6は、定格電力よりも大きな電力を一時的に出力するブースト機能を備える。ブースト機能は、定格電力よりも大きくかつブースト用の最大電力以下の電力を、予め定められた継続時間だけ出力可能とする機能である。定格電力、並びに、ブースト用の最大電力、ブースト機能の継続時間は、インバータ6の劣化が抑えられるように、予め設定されている。
【0014】
したがって、走行制御部15は、通常時、定格電力以下の範囲でインバータ6から電力が出力されるように制御する。また、走行制御部15は、例えば登板走行時、急激な加速要求時など、一時的な電動モータ7の大きな出力が要求される状況が生じた場合に、インバータ6のブースト機能を発動する。ブースト機能の発動とは、走行制御部15が、計時を行いながらインバータ6からブースト電力(定格電力を超える電力)を出力させる動作を意味する。ブースト機能の発動後、走行制御部15は、計時時間が許可された継続時間に達したらブースト電力の出力を終了し、定格電力以下の出力に戻す。
【0015】
冷却装置20は、冷却液を循環させて冷却対象を冷却する冷却機構21と、冷却機構21の冷却液の経路を切り替える制御部22とを備える。
【0016】
冷却機構21は、インバータ6に沿って冷却液を流す第1液路211と、DC/DCコンバータ9に沿って冷却液を流す第2液路212と、エンジン4に沿って冷却液を流す第3液路213と、迂回液路214、215と、これらの液路に流れる冷却液の経路を切り替え可能な切替弁D1~D4と、第1液路211に沿って冷却液を圧送する第1ポンプ216と、第3液路213に沿って冷却液を圧送する第2ポンプ217とを備える。対象物に沿って冷却液を流すとは、ウォータージャケットなどを介して対象物から冷却液へ放熱可能な状態に冷却液を流すことを意味する。
【0017】
さらに、冷却機構21は、第1液路211において冷却液から熱を外気に放出するラジエータ218aと、第3液路213において冷却液から熱を外気に放出するラジエータ218bとを備える。図示では、2つに分断されたラジエータ218a、218bを示しているが、ラジエータ218a、218bは一体的な構成であってもよい。そして、一体的なラジエータ218a、218bに2系統の流路が設けられ、その一方に第1液路211が接続され、もう一方に第3液路213が接続される構成であってもよい。冷却機構21は、さらに、第3液路213の冷却液の温度を検出する温度センサT213を有する。
【0018】
冷却装置20の制御部22は、1つのECU又は互いに連携して動作する複数のECUから構成される。制御部22は走行制御部15と統合されてもよい。制御部22には、温度センサT213の出力と、インバータ6の出力電流を示す値が送られる。さらに、制御部22には、DC/DCコンバータ9の温度と第2バッテリ8の充電残量とを示す情報が送られる。制御部22は、これらの情報に基づいて切替弁D1~D4を切り替えて、エンジン4、インバータ6及びDC/DCコンバータ9の冷却制御を行う。
【0019】
図2は、冷却機構の切り替わりを説明する図であり、(A)は冷却機構の第1切替パターンを示し、(B)は冷却機構の第2切替パターンを示し、(C)は冷却機構の第3切替パターンを示す。第1切替パターンは、本発明に係る冷却機構の第1態様の一例に相当する。第2切替パターンは、本発明に係る冷却機構の第2態様かつ第3態様の一例に相当する。第3切替パターンは、本発明に係る冷却機構の第2態様かつ第4態様の一例に相当する。
【0020】
第1切替パターンでは、切替弁D1、D2の切り替えにより、第1液路211と第2液路212とが連通され、第1ポンプ216の駆動により、第1液路211と第2液路212とを介して冷却液が循環する。さらに、第1切替パターンでは、切替弁D3、D4の切り替えによって、第3液路213が迂回液路215と連通され、第2ポンプ217の駆動により、第3液路213と迂回液路215とを介して冷却液が循環する。あるいは、第1切替パターンにおいて、エンジン4の冷却が必要ない状況においては、第2ポンプ217が停止されてもよい。第1切替パターンでは、インバータ6及びDC/DCコンバータ9が、ラジエータ218aを通る共通の冷却液で冷却され、当該冷却液にDC/DCコンバータ9の熱が放出される。その分、インバータ6の冷却強度は低くなる。
【0021】
第2切替パターン及び第3切替パターンでは、切替弁D1、D2の切り替えにより、第1液路211が迂回液路214と連通される一方、第1液路211と第2液路212とが遮断される。そして、第1ポンプ216の駆動により、第1液路211に冷却液が循環する。第1液路211においては冷却液にインバータ6の熱が吸収され、当該熱はラジエータ218aを介して外気に放出される。第2切替パターン及び第3切替パターンにおいては、インバータ6を冷却する冷却液には、DC/DCコンバータ9の熱が放出されないので、第1切替パターンと比較してインバータ6の冷却強度が高くなる。
【0022】
したがって、制御部22は、冷却機構21の冷却液の経路を、第1切替パターンと、第2切替パターン又は第3切替パターンとに切り替えることで、インバータ6の冷却強度を切り替えることができる。
【0023】
第2切替パターンと第3切替パターンとでは、エンジン4及びDC/DCコンバータ9の冷却態様が異なる。第2切替パターンでは、切替弁D3、D4の切り替えにより、第2液路212と第3液路213とが連通され、第2ポンプ217の駆動により、第2液路212と第3液路213とを介して冷却液が循環する。第2切替パターンでは、DC/DCコンバータ9とエンジン4とが、ラジエータ218bを通る共通の冷却液で冷却される。エンジン4の通常動作可能な上限温度(例えば100℃)は、DC/DCコンバータ9の通常動作可能な上限温度(例えば65℃)よりも高い。したがって、第2切替パターンでは、エンジン4の温度が高い場合にDC/DCコンバータ9を冷却できない。
【0024】
第3切替パターンでは、切替弁D3、D4の切り替えにより、第3液路213が迂回液路215と連通される一方、第3液路213と第2液路212とが遮断される。第3切替パターンでは、第2ポンプ217の駆動により第3液路213に冷却液が循環することでエンジン4が冷却されるが、第2液路212の冷却液は循環せず、DC/DCコンバータ9の冷却強度は低くなる。
【0025】
図3は、冷却装置の制御部が実行する冷却機構の切替処理を示すフローチャートである。冷却装置20の制御部22は、初期状態として、切替弁D1~D4を第1切替パターンに切り替え(ステップS1)、この切り替えによって、冷却機構21で通常の冷却動作が行われる。次に、制御部22は、インバータ6の出力電流を示す信号を監視し、ブースト機能の電流が出力されたか否かを判別する(ステップS2)。そして、当該出力が開始されるまで、ステップS2の判別処理を繰り返す。
【0026】
その結果、ブースト機能の電流が出力されて、ステップS2の判別結果がYESになると、制御部22は、まず、第3液路213の冷却液の温度(エンジン4の冷却液温度)が閾値以下か否かを判別する(ステップS3)。当該閾値は、DC/DCコンバータ9が通常動作可能な上限温度(例えば65℃)に基づいて設定され、DC/DCコンバータ9を上限温度よりも低く冷却できるか否かの境目となる値(例えば65℃±余裕値)に設定される。したがって、ステップS3では、エンジン4が高温で冷却液の温度がDC/DCコンバータ9の上限温度よりも高い(例えば80℃)場合にはNOと判別され、エンジン4が低温で冷却液の温度がDC/DCコンバータ9の上限温度よりも低い(例えば50℃)場合にはYESと判別される。
【0027】
そして、ステップS3でYESと判別したら、制御部22は、切替弁D1~D4を第2切替パターンに切り替える(ステップS4)。この切り替えにより、前述したようにインバータ6の冷却強度が高くなる。
【0028】
一方、ステップS3でNOと判別したら、制御部22は、DC/DCコンバータ9の温度が上限温度(本発明に係る閾値の一例に相当)以下か否かを判別し(ステップS5)、上限温度以下であれば、切替弁D1~D4を第3切替パターンに切り替える(ステップS6)。この切り替えによっても、前述したようにインバータ6の冷却強度が高くなる。
【0029】
ステップS3でYESと判別されてステップS4で第2切替パターンに制御された場合には、インバータ6のブースト機能の開始から時間が経過した後でも、制御部22は、ステップS3の判別を繰り返し行い、第3液路213の温度が上昇したら、ステップS3でNOと判別し、処理をステップS5に進める。
【0030】
ステップS6で第3切替パターンに切り替えたら、次に、制御部22は、第2バッテリ8の充電残量が閾値残量以上か判別し(ステップS7)、以上であれば、DC/DCコンバータ9の出力を停止する(ステップS8)。そして、制御部22は、処理をステップS7に戻す。DC/DCコンバータ9の出力は、第2バッテリ8の出力を補うものなので、第2バッテリ8の充電残量が十分にあれば、DC/DCコンバータ9の出力を停止しても、電動車両1の動作に支障が生じないためである。
【0031】
一方、第2バッテリ8から低電圧機器に電力供給が行われることでステップS7の判別結果がNOとなると、制御部22は、DC/DCコンバータ9を動作させる(ステップS9)。その後、制御部22は、DC/DCコンバータ9の温度が上限温度(本発明に係る閾値の一例に相当)以下か判別する処理(ステップS10)を繰り返す。その結果、上限温度を超えたら、制御部22は、処理をステップS1に戻して、切替弁D1~D4を初期状態である第1切替パターンに戻す。
【0032】
また、制御部22は、ステップS5の判別処理においてDC/DCコンバータ9の温度が上限温度を超えたと判別した場合も、処理をステップS1に戻して、切替弁D1~D4を初期状態である第1切替パターンに制御する。
【0033】
<ブースト機能時の冷却動作-エンジン4の冷却液の温度が低いとき>
上記の冷却機構21の切替処理によれば、インバータ6のブースト機能が開始されて、エンジン4の冷却液の温度が低いときには、冷却機構21が第1切替
パターン(
図2(A))から第2切替パターン(
図2(B))に切り替えられて、インバータ6の冷却強度が高くされる(ステップS2~S4)。よって、ブースト機能発動時のインバータ6の温度上昇率を低くすることができる。また、このときにDC/DCコンバータ9は、第3液路213を循環していた低い温度の冷却液によって十分に冷却される。
【0034】
その後、エンジン4の発熱等により第2液路212と第3液路213とを循環する冷却液の温度が閾値
を超えた場合には、冷却機構21が第3切替パターン(
図2(C))に切り替えられ、低電圧機器の電力に余裕がある場合には、DC/DCコンバータ9が停止される(ステップS3のNO、S5~S8)。よって、動作停止によりDC/DCコンバータ9が上限温度を超えないようにしつつ、インバータ6の冷却強度を高い状態に維持できる。
【0035】
更にその後、低電圧機器の電力の余裕が少なくなって、DC/DCコンバータ9を動作させることで、DC/DCコンバータ9の冷却が不足した場合(上限温度
を超えた場合)には、冷却機構21が第1切替パターン(
図2(A))に戻され、インバータ6とDC/DCコンバータ9とが通常の強度で冷却される(ステップS7のNO、ステップS9、S10のNO、S1)。
【0036】
このように、ブースト機能の発動時にエンジン4の冷却液の温度が低いときには、冷却機構21が第2切替パターンに切り替えられてから第1切替パターンに戻されるまでに、十分に長い時間を確保でき、その間、インバータ6の冷却強度が高くなる。したがって、ブースト機能時におけるインバータ6の高い発熱を効率的に冷却し、インバータ6が高温になることを抑制できる。
【0037】
<ブースト機能時の冷却動作-エンジン4の冷却液の温度が高いとき>
図3の冷却機構21の切替処理によれば、インバータ6のブースト機能が開始されて、エンジン4の冷却液の温度が高いときには、冷却機構21が第1切替
パターン(
図2(A)から第3切替
パターン(
図2(C))に切り替えられて、インバータ6の冷却強度が高くされる(ステップS2、S3のNO、S
5、S
6)。よって、ブースト機能発動時のインバータ6の温度上昇率を低くすることができる。
【0038】
その後、低電圧機器の電力に余裕がある場合には、DC/DCコンバータ9が停止される一方、低電圧機器の電力の余裕が少なくなってきたら、DC/DCコンバータ9が動作する(ステップS7~S9)。そして、当該動作により、DC/DCコンバータ9の冷却が不足した場合(上限温度
を超えた場合)には、冷却機構21が第1切替パターン(
図2(A))に戻され、インバータ6とDC/DCコンバータ9とが通常の強度で冷却される(ステップS10のNO、S1)。
【0039】
このように、エンジン4の冷却液の温度が高かったときでも、低電圧機器の電力に余裕がある場合には、冷却機構21が第3切替パターンに切り替えられてから第1切替パターンに戻されるまでに、比較的に長い時間を確保でき、その間、インバータ6の冷却強度が高くなる。したがって、ブースト機能時のインバータ6の高い発熱を効率的に冷却し、インバータ6が高温になることを抑制できる。
【0040】
また、低電圧機器の電力に余裕がなかった場合、あるいは、DC/DCコンバータ9が上限温度を超えた場合には、インバータ6の冷却強度が通常に戻されることで、DC/DCコンバータ9及び低電圧機器の電力供給に異常が生じることが回避される。
【0041】
<ブースト処理>
図4は、走行制御部が実行するインバータのブースト処理を示すフローチャートである。電動車両1の走行中、走行制御部15は、運転操作部13の操作信号、並びに、電動車両1の各部の状態(エンジン4及び電動モータ7の出力、第1バッテリ5の充電残量、温度等)を示す情報を入力し、これらに基づき要求トルクを計算し、かつ、電動モータ7から大きなトルクを得るために、インバータ6のブースト機能を発動するか否かを判別する。さらに、走行制御部15は、ブースト機能が発動可能な状態にあるか判別する。ブースト機能が短い期間に連続して行われないよう、前回のブースト機能から予め定められた時間間隔が経過していないと、ブースト機能が発動不可となる。その結果、ブースト機能が発動可能で、ブースト機能を発動すると判別された場合に、走行制御部15は、
図4のブースト処理を開始する。
【0042】
ブースト処理が開始されると、走行制御部15は、インバータ6からブースト電力の出力を開始させ(ステップS21)、さらに、計時処理を開始する(ステップS22)。次に、走行制御部15は、冷却装置20の制御部22から冷却機構21の切替パターンの情報を取得し(ステップS23)、第2切替パターン又は第3切替パターンか、第1切替パターンであるか判別する(ステップS24)。そして、第2切替パターン又は第3切替パターンであればブースト機能の継続可能時間を第1時間とし(ステップS25)、第1切替パターンであればブースト機能の継続可能時間を第1時間よりも短い第2時間とする(ステップS26)。第1時間及び第2時間は、試験等により各冷却状態のときにインバータ6の劣化を抑制できるブースト機能の継続時間のワースト値等から予め設定される。さらに、走行制御部15は、計時時間が継続可能時間に達したか判別し(ステップS27)、達してなければ、処理をステップS23に戻し、達したらインバータ6からブースト電力の出力を終了させる(ステップS28)。そして、走行制御部15はブースト処理を終了する。
【0043】
このようなブースト処理によれば、冷却機構21がインバータ6を効率的に冷却できる第2切替パターン又は第3切替パターンに切り替え可能なときには、ブースト機能の発動時間を延ばすことができる。また、DC/DCコンバータ9の状態等により、ブースト機能の発動時に第2切替パターン又は第3切替パターンに切り替えられない場合には、あるいは、短い時間で第1切替パターンに戻ったときには、ブースト機能をインバータ6に異常が生じない短い時間の継続とすることができる。
【0044】
なお、ブースト機能の継続時間を変化させる制御は、上記の方法に限られない。例えば、走行制御部15は、インバータ6の温度の計測値又はインバータ6を冷却する冷却液の温度の計測値に基づいて、温度が低い場合に継続時間が長くなるように、ブースト機能の継続時間を変化させてもよい。
【0045】
以上のように、本実施形態の電動車両1の冷却装置20によれば、制御部22は、インバータ6の出力に基づいて、冷却機構21を切り替え、インバータ6の冷却強度を切り替える。したがって、インバータ6の出力が大きくなって発熱量が増加する場合に、インバータ6の温度が高くなるのを待たずに、インバータ6の冷却強度が高められ、インバータ6を効率的に冷却することができる。よって、インバータ6の冷却が追い付かずにインバータ6が非常に高温になってしまうという事態を抑制できる。
【0046】
なお、インバータ6の出力に基づきインバータ6の冷却強度を切り替えるという制御には、インバータ6の出力の計測値に基づく制御だけでなく、例えば、インバータ6の出力が出力要求に紐づけられている場合には、インバータ6の出力要求に基づく制御も含まれる。
【0047】
さらに、本実施形態の電動車両1の冷却装置20によれば、制御部22は、インバータ6のブースト機能の発動に基づいて、冷却機構21を第2切替パターン又は第3切替パターンに切り替えることで、インバータ6の冷却強度を高くする。したがって、インバータ6の発熱量が多くなるブースト機能を安定的に発動させることができる。また、その際、冷却強度が高まった場合にブースト機能の継続可能時間が長く設定されてもよく、この場合、ブースト機能の継続時間を延ばすことができる。
【0048】
さらに、本実施形態の電動車両1の冷却装置20によれば、冷却機構21が、インバータ6に沿って冷却液が流れる第1液路211と、DC/DCコンバータ9に沿って冷却液が流れる第2液路212と、エンジン4に沿って冷却液が流れる第3液路213とを含む。そして、制御部22は、第1液路211と第2液路212とに冷却液が循環する態様から、第2液路212を介さずに第1液路211の冷却液が循環する態様へと切り替えることで、インバータ6の冷却強度を高める。DC/DCコンバータ9は、例えば第2バッテリ8の充電残量が多いときには比較的に長い時間停止可能であるなど、一時的に冷却強度を弱めても、電動車両1の動作に支障を与えないことが多い。したがって、上記のようにDC/DCコンバータ9の冷却態様を切り替えることでインバータ6の冷却強度を切り替える構成により、インバータ6の冷却強度を切り替えるために、冷却機構21の総合的な冷却能力を無駄に高めるなどの高コストな構成を要さず、低コスト化を図ることができる。
【0049】
さらに、本実施形態の電動車両1の冷却装置20によれば、制御部22は、冷却機構21を第1切替パターンから、第2切替パターン又は第3切替パターンに切り替える際、第3液路213の冷却液の温度に基づいて、第2切替パターンと第3切替パターンとのどちらに切り替えるかを判別する。したがって、第3液路213の冷却液によってDC/DCコンバータ9が加熱されることを避け、かつ、DC/DCコンバータ9が上限温度を超えて、インバータ6の高い冷却強度を元に戻さねばならない状況を減らすことができる。
【0050】
さらに、本実施形態の電動車両1の冷却装置20によれば、冷却機構21を第2切替パターン又は第3切替パターンに切り替えた後、DC/DCコンバータ9が上限温度を超えた場合には、制御部22は、冷却機構21を第1切替パターンに戻す。したがって、インバータ6の冷却強度を高めることと引き換えに冷却強度が低減されたDC/DCコンバータ9が上限温度を超える状況を続けるといった事態を抑制できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態においては、第3液路213で冷却される構成として内燃機関であるエンジン4を適用した例を示したが、第3液路213は例えば第1バッテリ5など他の発熱部品を冷却するための液路であってもよい。この場合、電動車両は、内燃機関であるエンジンを搭載しないEV(Electric Vehicle)であってもよい。また、上記実施形態においては、インバータ6のブースト機能の発動に基づいて、インバータ6の冷却能力を高める構成を示したが、インバータ6からブースト機能以外の高い出力が行われる際に、インバータ6の冷却強度を高めるように構成されてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、インバータ6を冷却する構成として、冷却液の液路を有する冷却機構21を示したが、冷却ファンなど、他の構成が採用されてもよい。また、インバータ6を冷却する構成として、冷却液の液路を有する構成が採用される場合でも、液路及び切替え弁の構成、液路を切り替える条件の温度等は、実施形態の構成に限られず、様々に変更可能である。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 電動車両
2 駆動輪
3 補機
4 エンジン
5 第1バッテリ
6 インバータ
7 電動モータ
8 第2バッテリ
9 DC/DCコンバータ
13 運転操作部
15 走行制御部
20 冷却装置
21 冷却機構
211 第1液路
212 第2液路
213 第3液路
T213 温度センサ
214、215 迂回液路
216 第1ポンプ
217 第2ポンプ
218a、218b ラジエータ
D1~D4 切替弁
22 制御部