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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 52/00 20230101AFI20241101BHJP
   H10N 52/80 20230101ALI20241101BHJP
【FI】
H10N52/00 A
H10N52/00 U
H10N52/80
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021048068
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022146999
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】挽地 友生
【審査官】渡邊 佑紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-181128(JP,A)
【文献】特開2009-002851(JP,A)
【文献】特開2010-056260(JP,A)
【文献】特開2004-096759(JP,A)
【文献】特開2018-132406(JP,A)
【文献】特開2015-095727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 52/00
H10N 52/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設けられた磁気スイッチを具備する半導体装置であって、
前記磁気スイッチは、少なくとも4個の電極を有するホール素子と、
前記ホール素子を駆動する駆動電流源と、
前記4個の電極のうち、2個の電極から差動出力電圧が供給される入力端子対と、出力端子対と、制御端子と、を有し、前記制御端子に供給される制御信号に基づいて、前記入力端子対と前記出力端子対との結線状態を第1の状態と、第2の状態とに切替可能なスイッチ回路と、
前記スイッチ回路の出力端子対から供給される信号を増幅する増幅器と、
入力される基準同相電圧及び前記制御信号に基づいて、出力する基準電圧を調整可能な基準電圧回路と、
前記増幅器の出力信号及び前記基準電圧との差動入力電圧が入力される比較器と、
前記比較器の出力電圧をラッチするとともに、ラッチ出力信号を前記制御信号とするラッチ回路と、を備え
前記基準電圧回路は、前記ホール素子の磁気オフセットが負の場合、前記第1の状態では、前記基準同相電圧に基づく電圧である前記基準電圧の基準値に対して、前記制御信号に基づく前記基準電圧の調整値を正方向に加えることによって前記基準電圧を調整し、前記第2の状態では、前記基準値に前記調整値を負方向に加えることによって前記基準電圧を調整し、前記ホール素子の磁気オフセットが正の場合、前記第1の状態では、前記基準電圧の基準値に前記調整値を負方向に加えることによって前記基準電圧を調整し、前記第2の状態では、前記基準値に前記調整値を正方向に加えることによって前記基準電圧を調整するように構成され、
前記基準値は、磁気オフセットがゼロである理想的なホール素子の動作点又は復帰点である磁束密度における前記差動入力電圧であり、
前記調整値は、当該磁束密度における、前記理想的なホール素子の前記差動入力電圧と前記磁気スイッチが備える前記ホール素子の前記差動入力電圧との差であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記基準電圧回路は、制御端子と、メモリ回路と、デコーダと、第1の可変電流源と、第2の可変電流源と、抵抗器と、基準同相電圧端子と、出力端子とを有し、
前記抵抗器の一端は、前記基準同相電圧端子に接続され、
前記抵抗器の他端は、前記出力端子に接続され、
前記第1の可変電流源及び前記第2の可変電流源の出力端は、前記出力端子に接続され、
前記メモリ回路は、自然数Nを調整ビット数とするNビットの調整符号信号を出力し、
前記デコーダは、前記調整符号信号と、前記基準電圧回路の制御端子に入力される制御信号とに応じて、電流制御信号を出力し、
前記第1の可変電流源は、前記電流制御信号に基づいて、前記制御信号が第1の論理のときに、出力電流値が零に制御され、前記制御信号が第2の論理のときに、出力電流値が前記調整符号信号に基づく電流値に制御され、
前記第2の可変電流源は、前記電流制御信号に基づいて、前記制御信号が第1の論理のときに、出力電流値が前記調整符号信号に基づく電流値に制御され、前記制御信号が第2の論理のときに、出力電流値が零に制御される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記基準電圧回路は、制御端子と、メモリ回路と、デコーダと、電流源と、抵抗器と、同相電圧端子と、出力端子とを有し、
前記抵抗器の一端は、前記同相電圧端子に接続され、
前記抵抗器の他端は前記出力端子に接続され、
前記電流源の出力端は前記出力端子に接続され、
前記メモリ回路は、自然数Nを調整ビット数とするNビットの調整符号信号を出力し、
前記デコーダは前記調整符号信号と、前記基準電圧回路の制御端子に入力される制御信号とに応じて、抵抗制御信号を出力し、
前記抵抗器は、前記抵抗制御信号に基づいて、前記制御信号が第1の論理のときに、抵抗値が基準抵抗値に制御され、前記制御信号が第2の論理のときに、抵抗値が前記基準抵抗値とは異なる抵抗値に制御される可変抵抗器である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記基準電圧回路は、前記調整値を、複数段階に調整可能に構成される請求項1から3の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数段階は、前記調整値がゼロである段階を含む請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ホール素子は、前記半導体基板の表面に直交する磁場を検出する水平ホール素子又は前記半導体基板の表面に平行な磁場を検出する垂直ホール素子である請求項1から5の何れか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は、磁気センサとして非接触での位置や角度の検出が可能であることから様々な用途に用いられている。ホール素子の用途の一例としては、磁気スイッチがある。磁気スイッチは、例えば、ホール素子と、増幅器や比較器を含む周辺回路とを有し、ホール素子及び周辺回路が半導体チップの上に集積化されて形成されている。磁気スイッチは、磁気の検出方法に着目した分類として、S極とN極との両極の磁界を検出可能な両極磁界検出型や、時間経過と共にS極とN極とが交互に変わる交番磁界を検出可能な交番磁界検出型があることが知られている。
【0003】
交番検出型の磁気スイッチや両極検出型の磁気スイッチでは、S極側閾値とN極側閾値との間の対称性が重要である。一方、ホール素子そのもの並びにホール素子の後段に配設される増幅器及び比較器が持つオフセット電圧の影響によって非対称性が発生する。
【0004】
磁気スイッチには、ゼロ磁場印加時に内在及び外乱ノイズによる出力信号のチャタリングを防止する観点から、ヒステリシス幅が設定されることがある。ヒステリシス幅はS極側閾値である動作点とN極側閾値である復帰点との差分で定義される。動作点と復帰点との平均値で定義されるのが磁気オフセットである。磁気オフセットは、磁極間における感度の対称性を表す尺度として用いられ、理想的にはゼロである。
【0005】
動作点と復帰点の絶対値にズレを生じている場合、交番磁界検出の用途では、出力パルス信号のデューティ比や位相のズレが拡大する。出力パルス信号のデューティ比や位相のズレは、交番検出型磁気スイッチが主に用いられるBL(ブラシレス)DCモーターにおいて、回転数ゆらぎ及び振動の原因となるため、好ましくない。
【0006】
また、両極検出型磁気スイッチでは、組み合わせて使用する磁石の極性管理がなされていない場合、検出機構の検出距離バラツキへとつながり、オフセット電圧が生じ得る。オフセット電圧を除去する手法の一つとしてスピニングカレント法が知られている。スピニングカレント法を用いてホール素子と後段の増幅器のオフセット電圧を除去しつつ、さらに比較器のオフセット電圧に起因する非対称性を除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-2851号公報
【文献】特開2015-95727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に記載される技術のような2方向駆動のスピニングカレント法を用いた技術では、磁気スイッチにおける磁電変換特性の対称性が確保できない場合がある。より具体的に説明すれば、2方向駆動のスピニングカレント法を用いた技術は、ホール素子のオフセット電圧の絶対値が電流駆動方向間で異なる場合、オフセット電圧が残ってしまう。すなわち、磁気スイッチの磁電変換特性が非対称になる場合が起こり得る。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑み、磁電変換特性の対称性を改善可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板に設けられた磁気スイッチを具備する半導体装置であって、前記磁気スイッチは、少なくとも4個の電極を有するホール素子と、第1の電源端子及び第2の電源端子と、前記ホール素子を駆動する駆動電流源と、前記4個の電極のうち、2個の電極から差動出力電圧が供給される入力端子対と、出力端子対と、制御端子と、を有し、前記制御端子に供給される制御信号に基づいて、前記入力端子対と前記出力端子対との結線状態を第1の状態と、第2の状態とに切替可能なスイッチ回路と、前記スイッチ回路の出力端子対から供給される信号を増幅する増幅器と、入力される基準同相電圧及び前記制御信号に基づいて、出力する基準電圧を調整可能な基準電圧回路と、前記増幅器の出力信号及び前記基準電圧との差動入力電圧が入力される比較器と、前記比較器の出力電圧をラッチするとともに、ラッチ出力信号を前記制御信号とするラッチ回路と、を備え、前記基準電圧回路は、前記ホール素子の磁気オフセットが負の場合、前記第1の状態では、前記基準同相電圧に基づく電圧である前記基準電圧の基準値に対して、前記制御信号に基づく前記基準電圧の調整値を正方向に加えることによって前記基準電圧を調整し、前記第2の状態では、前記基準値に前記調整値を負方向に加えることによって前記基準電圧を調整し、前記ホール素子の磁気オフセットが正の場合、前記第1の状態では、前記基準電圧の基準値に前記調整値を負方向に加えることによって前記基準電圧を調整し、前記第2の状態では、前記基準値に前記調整値を正方向に加えることによって前記基準電圧を調整するように構成され、前記基準値は、磁気オフセットがゼロである理想的なホール素子の動作点又は復帰点である磁束密度における前記差動入力電圧であり、前記調整値は、当該磁束密度における、前記理想的なホール素子の前記差動入力電圧と前記磁気スイッチが備える前記ホール素子の前記差動入力電圧との差であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁電変換特性の対称性を改善可能な半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る半導体装置の概略図である。
図2】第1の実施形態に係る半導体装置における基準電圧回路の一例を示す概略図である。
図3】上記基準電圧回路における電流源回路のより詳細な構成例を示す回路図である。
図4第1の実施形態に係る半導体装置におけるデコーダの構成例を示す回路図である。
図5第1の実施形態に係る半導体装置におけるデコーダの動作を示す真理値表である。
図6】本実施形態における半導体装置において、ホール素子の磁気オフセットが負(BOS<0)かつ無調整の場合の磁電変換特性を説明する説明図である。
図7】本実施形態における半導体装置において、ホール素子の磁気オフセットが負(BOS<0)かつ調整実施時の磁電変換特性を説明する説明図である。
図8】本実施形態における半導体装置において、ホール素子の磁気オフセットが正(BOS>0)かつ無調整の場合の磁電変換特性を説明する説明図である。
図9】本実施形態における半導体装置において、ホール素子の磁気オフセットが正(BOS>0)かつ調整実施時の磁電変換特性を説明する説明図である。
図10】第1の実施形態に係る半導体装置の制御信号と調整用電流、基準電圧、磁気オフセットの関係を説明する概略図である。
図11】第2の実施形態に係る半導体装置における基準電圧回路の一例を示す回路図である。
図12】第2の実施形態に係る半導体装置におけるデコーダの構成を示す回路図である。
図13】第2の実施形態に係る半導体装置におけるデコーダの動作を示す真理値表である。
図14】第2の実施形態に係る半導体装置の制御信号と調整用電流、基準電圧、磁気オフセットの関係を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る半導体装置を、図面を参照して説明する。実施形態に係る半導体装置は、半導体基板に設けられた磁気スイッチを備えている。なお、説明に際し、半導体基板に作用する磁束密度からアナログ信号への変換特性を「磁電変換特性」と呼称し、当該磁束密度から論理信号への変換特性を「磁電変換スイッチング特性」と呼称する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置1Aの構成を示す概略図である。
【0015】
半導体装置1Aは、半導体基板2に設けられた磁気スイッチ10Aを備えている。磁気スイッチ10Aは、第1の電源端子5と、第2の電源端子6と、ホール素子30と、スイッチ回路80と、電流源41と、増幅器50と、比較器60と、基準電圧回路70Aと、ラッチ回路100と、を備えている。
【0016】
ホール素子30は、4個の電極30a乃至30dを有し、駆動電流IDRVと、半導体基板2に対して垂直な磁束密度Binとに応じた差動出力電圧VHを得る磁気検出素子である。電極30a乃至30dは、半導体基板2の不純物拡散層やウェル層で形成される抵抗体に設けられており、例えば、正方形の頂点となる位置、すなわち対角位置に配設される。
【0017】
駆動電流源としての電流源41は、電極30aに接続された第1端411と、電圧VDDを供給する第1の電源端子5に接続された第2端412と、を有する。電流源41は、ホール素子30が所望の磁電変換作用を得られるように、所定の電流である駆動電流IDRVを供給するように構成される。
【0018】
スイッチ回路80は、入力端子80a,80bからなる入力端子対と、出力端子80c,80dからなる出力端子対と、制御端子80eと、を有する、いわゆるチョッパースイッチ回路である。スイッチ回路80は、制御端子80eに入力される論理レベルに応じて、入力端子対と出力端子対との接続状態を、第1の状態(ストレート結線状態)と、第2の状態(クロス結線状態)とに、切替可能に構成される。ここで、第1の状態(ストレート結線状態)は、入力端子80a及び入力端子80bから入力される差動出力電圧VHが、それぞれ、出力端子80c及び出力端子80dに伝達される接続状態である。第2の状態(クロス結線状態)は、入力端子80a及び入力端子80bから入力される差動出力電圧VHが、それぞれ、出力端子80d及び出力端子80cに伝達される接続状態である。
【0019】
増幅器50は、二つの入力端子である正相入力端子50a及び逆相入力端子50bと、出力基準同相電圧が入力される基準端子50cと、正相入力端子50a及び逆相入力端子50bから入力された二つの信号の差を増幅して出力する出力端子50OTと、を有する差動増幅回路で構成されている。
【0020】
基準電圧回路70Aは、制御端子70cと、基準同相電圧端子70bと、出力端子70OTを有し、基準同相電圧端子70bに入力された基準同相電圧VCMを基準として、制御端子70cに入力された論理信号に応じて、出力端子70OTから基準電圧701を出力するように構成される。
【0021】
比較器60は、増幅器出力信号501が入力される正相入力端子60aと、基準電圧701が入力される逆相入力端子60bと、出力端子60OTと、を有する。比較器60は、増幅器出力信号501と基準電圧701との大小を比較し、比較結果に応じた2値の論理信号を比較器出力信号601として出力するように構成される。
【0022】
ラッチ回路100は、比較器出力信号601が入力される信号入力端子と、ラッチクロック信号706が入力されるクロック入力端子と、ラッチ出力信号としての制御信号702が出力される出力端子と、を有している。ラッチ回路100は、いわゆるデータラッチ動作するように構成されている。ラッチ回路100の出力端子は、磁気スイッチ10Aの出力端子OUTに接続されている。
【0023】
図2は、基準電圧回路70Aの概略図である。基準電圧回路70Aの構成について図を用いて説明する。
【0024】
基準電圧回路70Aは、第1の抵抗器704と、電流源42,43,44と、基準電圧701を出力する出力端子70OTと、制御端子70cと、基準同相電圧端子70bと、を備えている。電流源42(具体的には後述する第1端421)と、電流源43(具体的には後述する第2端432)と、電流源44(具体的には後述する第1端441)と、第1の抵抗器704(具体的には後述する他端)と、出力端子70OTとは、節点N1で接続されている 。
【0025】
第1の抵抗器704は、所定の抵抗値を有する単一または複数の抵抗素子で構成され、その一端が基準同相電圧端子70bに、他端が出力端子70OTに接続されている。
【0026】
電流源42,43は、連続的に可変な二値に設定され、制御端に与えられる制御信号に基づいて、設定された二値の何れか一方に切り替え可能に構成される可変電流源である。電流源42は、第1の抵抗器704の他端及び出力端子70OTに接続される第1端421と、第1の電源端子5に接続される第2端422とに加えて、制御端子70cと接続される制御端を有している。
【0027】
電流源43は、電圧VSSを供給する第2の電源端子6に接続される第1端431と、節点N1に接続される第2端432と、を有し、さらに、制御端を有している。
【0028】
電流源44は、所定の固有電流値をもつ電流を供給する定電流源として構成される。電流源44は、節点N1に接続される第1端441と、第1の電源端子5に接続される第2端442と、を有する。
【0029】
電流源42及び電流源43は、制御信号702に応じて、内部調整(詳細は後述する)された電流値IDACP及びIDACNを第1の抵抗器704に供給する。IDACPは第1の抵抗器704に流入する方向、IDACNは第1の抵抗器704から流出する方向である。また、電流源44の電流値nIREFは制御信号702に関係なく、第1の抵抗器704に流入する。結果として、第1の抵抗器704には、nIREF+IDACPまたはnIREF-IDACNの電流が流入することとなる。第1の抵抗器704の一端は基準同相電圧端子70bに接続されているので、基準同相電圧VCMを基準として、第1の抵抗器704の抵抗値と、nIREF+IDACPまたはnIREF-IDACNの電流の積で決まる基準電圧701を発生する。
【0030】
図3は、電流源41及び基準電圧回路70Aにおける電流源42,43,44の、より詳細な構成例、具体的には、電流源41~44を含む電流源回路の構成例を示す回路図である。
【0031】
図3の電流源回路は、第1の電源端子5から第2の電源端子6へ向けて基準電流を供給する基準電流源40と、第1乃至第3のトランジスタT1乃至T3と、電流源トランジスタT41,T42A~T42C,T43A~T43Cと、第1乃至第6の電流スイッチSC1乃至SC6と、メモリ回路93Aと、デコーダ94Aとを備えている。
【0032】
基準電流源40は電流値IREFの電流源として構成され、一端が第2の電源端子6に接続され、他端が第1のトランジスタT1のドレイン端子及びゲート端子に接続されている。
【0033】
第1のトランジスタT1はPchトランジスタであり、ソース端子が第1の電源端子5に接続され、ドレイン端子が基準電流源40と共通接続されるので、電流値IREFなるドレイン電流が流れている。
【0034】
第2のトランジスタT2は第1のトランジスタと等しい(W/L)比を有するPchトランジスタであり、ソース端子が第1の電源端子5に接続され、ゲート端子が第1のトランジスタT1のゲート端子と共通接続され、ドレイン端子が第3のトランジスタT3のゲート端子及びドレイン端子と共通接続され、カレントミラー回路を構成するので、電流値IREFなるドレイン電流が流れている。
【0035】
第3のトランジスタT3はNchトランジスタであり、ソース端子が第2の電源端子6と共通接続され、ドレイン端子が第2のトランジスタT2のドレイン端子と共通接続されるので、電流値IREFなるドレイン電流が流れている。
【0036】
電流源トランジスタT41は、第1のトランジスタT1に対しm倍の(W/L)比を有するPchトランジスタとして構成され、ゲート端子が第1のトランジスタT1のゲート端子と共通接続され、ソース端子が第1の電源端子5に接続され、カレントミラー回路を構成するため、電流値mIREFなるドレイン電流が流れている。このドレイン電流はホール素子30の駆動電流IDRVである(図1を参照)。
【0037】
電流源トランジスタT42A~T42Cは、第1のトランジスタT1に対し各々4倍、2倍、1倍の(W/L)比を有するPchトランジスタとして構成され、ゲート端子が第1のトランジスタT1のゲート端子と共通接続され、ソース端子が第1の電源端子5に接続され、カレントミラー回路を構成するため、各々電流値4IREF、2IREF、IREFに重みづけされたドレイン電流を供給可能に構成される。電流源トランジスタT42A~T42Cのドレイン端子は各々第1乃至第3電流スイッチSC1乃至SC3の一端に接続される。第1乃至第3電流スイッチSC1乃至SC3の他端は、第1端421に共通接続され、その開閉状態に応じて第1端421に電流源トランジスタT42A~T42Cのドレイン電流を供給するか否かが制御される。
【0038】
ここで、第1乃至第3電流スイッチSC1乃至SC3が全て短絡状態ならば、電流源トランジスタT42A~T42Cから電流源42の第1端421に供給されるドレイン電流は合計7IREFとなり、第1乃至第3電流スイッチSC1乃至SC3が全て開放状態ならば、電流源トランジスタT42A~T42Cから第1端421に供給されるドレイン電流は零となる。第1乃至第3電流スイッチのSC1乃至SC3の個別の開閉状態に応じて、電流源トランジスタT42A~T42Cから第1端421に供給されるドレイン電流は、0~7IREFの範囲で、電流値IREFの分解能で制御可能である。
【0039】
電流源トランジスタT43A~T43Cは、第3のトランジスタT3に対し各々4倍、2倍、1倍の(W/L)比を有するNchトランジスタとして構成され、ゲート端子が第3のトランジスタT3のゲート端子と共通接続され、ソース端子が第2の電源端子6に接続され、カレントミラー回路を構成するため、各々電流値4IREF、2IREF、IREF重みづけされたドレイン電流を供給可能に構成される。電流源トランジスタT43A~T43Cのドレイン端子は各々第4乃至第6電流スイッチSC4乃至SC6の一端に接続される。第4乃至第6電流スイッチSC4乃至SC6の他端は、電流源43の第1端431に共通接続され、その開閉状態に応じて、第1端431に電流源トランジスタT43A~T43Cのドレイン電流を供給するか否か制御される。
【0040】
ここで、第4乃至第6電流スイッチSC4乃至SC6が全て短絡状態ならば、電流源トランジスタT43A~T43Cから第1端431に供給されるドレイン電流は合計-7IREFとなり、第4乃至第6電流スイッチSC4乃至SC6が全て開放状態ならば、電流源トランジスタT43A~T43Cから第1端431に供給されるドレイン電流は零となる。第4乃至第6の電流スイッチSC4乃至SC6の個別の開閉状態に応じて、電流源トランジスタT43A~T43Cから電流源43の第1端431に供給されるドレイン電流は、-7IREF~0の範囲で、電流値IREFの分解能で制御可能である。
【0041】
電流源トランジスタT44は、第1のトランジスタT1に対しn倍の(W/L)比を有するPchトランジスタとして構成され、ゲート端子が第1のトランジスタT1のゲート端子と共通接続され、ソース端子が第1の電源端子5に接続され、カレントミラー回路を構成するため、電流値nIREFなるドレイン電流が流れている。このドレイン電流は、制御信号702の状態に関係なく、第1の抵抗器704を常時駆動している電流である(図2を参照)。
【0042】
メモリ回路93Aは、例えばヒューズROMやEEPROM等の4ビット長の不揮発性メモリとして構成され、デコーダ94Aに接続される2値信号D0~D3を出力する。2値信号D0~D3は、磁電変換特性を調整するために必要な電流調整量に応じて規定される2進調整符号BinCodeに準して予め製造工程で設定される。
【0043】
デコーダ94Aは、制御信号702及び2値信号D3~D0が入力され、それらの2値信号に応じて、第1乃至第6電流スイッチSC1乃至SC6の2値制御信号941~946を出力する2値制御信号941~946が“1”のとき、対応する第1乃至第6電流スイッチSC1乃至SC6は導通し、電流源トランジスタT42A~T42C及び電流源トランジスタT43A~T43Cのドレイン電流が、電流源42の第1端421及び電流源43の第1端431にそれぞれ流れることとなる。2値制御信号941~946が“0”のとき、対応する第1乃至第6電流スイッチSC1乃至SC6は遮断し、電流源トランジスタT42A~T42C及び電流源トランジスタT43A~T43Cのドレイン電流は、それぞれ遮断される。
【0044】
図4はデコーダ94Aの詳細な構成の一例、図5はデコーダ94Aの真理値表である。図4を参照して、デコーダ94Aの詳細な構成例について説明する。
【0045】
デコーダ94Aは種々の論理ゲートIV1、IV2、AN1~AN10、OR1、OR2を有し、制御信号702と2値信号D3(極性ビット)の組合せ論理信号で、2値信号D2~D0(絶対値ビット)をイネーブルして2値制御信号941~946に出力するように構成されている。より詳細には図5に示すような真理値表に従って、第1乃至第6電流スイッチSC1乃至SC6の2値制御信号941~946を出力している。
【0046】
図5の真理値表に示す通り、制御信号702の符号に応じて、2値信号D[3:0]に対する2値制御信号941~946の割り当てが切り替わり、2値信号D[3:0]に対するIDACの符号が逆転するように構成されている。この例では、D[3:0]=0000bのとき及びD[3:0]=1000bのときを0(ゼロ)、すなわち調整幅が0(ゼロ)又は磁気オフセット調整を実施しない場合に該当する。
【0047】
続いて、半導体装置1Aの作用について説明する。
図6及び図7は、ホール素子30の磁気オフセットが負のときの半導体装置1Aの磁電変換特性を説明する説明図である。図6は無調整時の磁電変換特性、図7は本実施形態の半導体装置で最適に調整をかけた場合の磁電変換特性をそれぞれ示している。
【0048】
図6及び図7において、横軸は、半導体装置1Aの検出軸に印加される磁束密度Binを表し、縦軸は、比較器60の差動入力電圧である電圧VSIG及び比較器60の出力電圧である電圧VOUTをそれぞれ表す。まず、無調整(調整不実施)の場合における動作(図6)について説明する。ホール素子30が理想的な磁電変換特性を有する場合、N極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第1の状態(ストレート結線状態)であるため、直線Lsiに沿った磁電変換特性を有し、S極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第2の状態(クロス結線状態)であるため、直線Lciに沿った磁電変換特性を有する。
【0049】
一方、ホール素子30が負の磁気オフセットBOSを有する場合、N極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第1の状態(ストレート結線状態)であるため、直線Lsiを負にBOS平行移動させた直線Lsに沿った磁電変換特性を有し、S極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第2の状態(クロス結線状態)であるため、直線Lciを負にBOS平行移動させた直線Lcに沿った磁電変換特性を有する。
【0050】
ホール素子30が理想的な磁電変換特性を有する場合、直線Lsiと基準電圧の基準値VREFの交点でS極強磁場が検出され、直線Lciと基準値VREFの交点でN極強磁場が検出される。各々の交点に対応する磁束密度BOPid、BRPidが理想的な動作点、復帰点を示している。一方、ホール素子30が負の磁気オフセットBOSDPを有する場合、各々の交点も直線Ls、Lc同様に負にBOSDP分だけ平行移動するため、各々の交点に対応する磁束密度BOP、BRPが動作点、復帰点となる。BOPid、BRPid、BOP、BRP、BOSDPの関係は以下の式(1)乃至(2)で表される。
BOP=BOPid-|BOSDP| (1)
BRP=BRPid-|BOSDP| (2)
【0051】
続いて、調整実施時の動作(図7)について説明する。図6との違いは比較器60供給される基準電圧(以下、「比較器基準電圧」とする)を、基準値VREFに対して、基準電圧の調整値ΔV(ΔV>0)を正方向に加えた比較器基準電圧VREF+ΔV又はΔVを負方向に加えた比較器基準電圧VREF-ΔVに切替可能な点である。基準電圧VREFは図6と同一であり、比較器基準電圧VREF+ΔV及びVREF-ΔVは、それぞれ基準電圧VREFから正負に調整値ΔV分を平行移動させた電圧となっている。磁電変換特性を表す直線Ls、Lsi、Lc、Lciについては、図6と同一であるので、説明を省略する。
【0052】
図7においては、ホール素子30が理想的な磁電変換特性を有する場合、直線Lsと比較器基準電圧VREF+ΔVの交点でS極磁場が検出され、直線Lcと比較器基準電圧VREF-ΔVの交点でN極磁場が検出される。よって、ΔVが適切な値に設定されていれば、直線Lsと比較器基準電圧VREF+ΔVとの交点で表される動作点BOPは理想的な動作点BOPidと一致し、直線Lcと比較器基準電圧VREF-ΔVとの交点で表される復帰点BRPは理想的な復帰点BRPidと一致させることができる。
【0053】
図8及び図9は、ホール素子30の磁気オフセットが正のときの半導体装置1Aの磁電変換特性を説明する説明図である。図8は無調整時の磁電変換特性、図9は本実施形態で最適に調整をかけた場合の磁電変換特性をそれぞれ示している。
【0054】
図8及び図9において、横軸及び縦軸は、図6と同一であるので、その説明を省略する。まず、無調整(調整不実施)の場合における動作(図8)について説明する。ホール素子30が理想的な磁電変換特性を有する場合、N極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第1の状態(ストレート結線状態)であるため、直線Lsiに沿った磁電変換特性を有し、S極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第2の状態(クロス結線状態)であるため、直線Lciに沿った磁電変換特性を有する。
【0055】
一方、ホール素子30が正の磁気オフセットBOSDPを有する場合、N極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第1の状態(ストレート結線状態)であるため、直線Lsiを正にBOSDP平行移動させた直線Lsに沿った磁電変換特性を有し、S極磁場が検出された際にはスイッチ回路80は第2の状態(クロス結線状態)であるため、直線LciをにBOSDP平行移動させた直線Lcに沿った磁電変換特性を有する。
【0056】
ホール素子30が理想的な磁電変換特性を有する場合の説明は図6と重複するので省略する。ホール素子30が正の磁気オフセットBOSDPを有する場合、各々の交点も直線Ls、Lc同様に正にBOSDP分だけ平行移動するため、各々の交点に対応する磁束密度BOP、BRPが動作点、復帰点となる。BOPid、BRPid、BOP、BRP、BOSDPの関係は以下の式(3)乃至(4)で表される。
BOP=BOPid+BOSDP (3)
BRP=BRPid+BOSDP (4)
【0057】
続いて、調整実施時の動作(図9)について説明する。図8との違いは比較器60の基準電圧がVREF+ΔV及びVREF-ΔVに切替可能な点である。直線Ls、Lsi、Lc、Lciについては図8と同一であるので説明を省略する。図9においては、ホール素子30が理想的な磁電変換特性を有する場合、直線Lsと比較器基準電圧VREF-ΔVの交点でS極強磁場が検出され、直線Lcと比較器基準電圧VREF+ΔVの交点でN極強磁場が検出される。よって、調整値ΔVが適切な値に設定されていれば、直線Lsと比較器基準電圧VREF-ΔVとの交点で表される動作点は、理想的な動作点である磁束密度BOPidと一致し、直線Lcと比較器基準電圧VREF+ΔVとの交点で表される復帰点を理想的な復帰点である磁束密度BRPidと一致させることができる。
【0058】
続いて、本実施形態の磁気オフセット調整の原理について図を用いて説明する。図10は、4ビット(正負各3ビット)の2進調整符号BinCode、すなわち後述する調整ビット数N(設計定数)=4の2進調整符号BinCodeに対する基準電流IDAC、基準電圧VREF及び磁気オフセット調整量ΔBOSの例を示す。
【0059】
2進調整符号BinCodeは、0000b~1111bの計16通りであり、MSBが調整量の符号、下位ビットが調整量の絶対値に対応している。基準電流IDACはD[3:0]=0111bのときIDAC=-7ΔI、D[3:0]=1111bのときIDAC=+7ΔIとなるように構成される。同様に、基準電圧VREFはD[3:0]=0111bのときVREF=VREF-7ΔV、D[3:0]=1111bのときVREF=VREF+7ΔVとなるように構成される。
【0060】
結果として、磁気オフセット調整量ΔBOSは、D[3:0]=0111bのときΔBOS=-7ΔB、D[3:0]=1111bのときΔBOS=+7ΔBとなる。基準電流IDACの調整分解能ΔI(設計定数)と第1の抵抗器704の抵抗値RREF(設計定数)とホール素子の磁電変換係数KHと増幅器50のゲインGを用いて、磁気オフセット調整分解能ΔBは以下の式(5)で表される。
ΔB=ΔV/(KH×G)=(RREF×ΔI)/(KH×G) (5)
【0061】
また、磁気オフセットの調整範囲Brngは、磁気オフセット調整分解能ΔBと調整ビット数N(設計定数)を用いて以下の式(6)で表される。
Brng=ΔB×2^(N-1) (6)
ここで、2^(N-1)は、2の(N-1)乗を表している。
【0062】
このように、磁気オフセット調整分解能ΔBと調整範囲Brngは、設計定数によりホール素子30の磁気オフセットのバラツキ範囲と磁気スイッチとして要求される精度を鑑みた制御が可能である。
【0063】
本実施形態によれば、動作点である磁束密度BOP及び復帰点である磁束密度BRPの判定に用いる基準電圧VREFを、比較器60の出力レベルに応じた制御信号702を用いて切り替えることによって、ホール素子30の磁気オフセットBOSDPが動作点及び復帰点に及ぼす影響を補正することができる。すなわち、本実施形態によれば、ホール素子30の磁気オフセットBOSDPの影響を抑圧可能な磁電変換スイッチング特性を得ることができる。
【0064】
本実施形態によれば、事前の調整作業によって動作点及び復帰点の最適化が可能になる。例えば、検査工程にて磁気オフセットBOSが測定可能な場合、測定されたBOSの初期値に応じて、調整後のBOSが零に近づくように、電流源42,43の電流値を最適な電流値に調整されるように2値信号D[3:0]を設定すればよい。また、磁気オフセットBOSがシステマティックな偏りを持つ場合、調整後の磁気オフセットBOSが零に近づくように電流源42,43の電流値を最適な電流値に調整されるように、2値信号D[3:0]を設定すればよい。
【0065】
上述した第1の実施形態において、電流源42,43は正負各3ビット調整可能に構成されているが、任意の調整ビット数Nで構成されてもよい。この場合、調整ビット数Nに応じた磁気オフセットBOSの調整範囲及び調整分解能を得ることができる。
【0066】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態について、第1の実施形態との違いに着目して、図を用いて説明する。
第2の実施形態に係る半導体装置1Bは、図1に例示される半導体装置1Aに対して、基準電圧回路70Aの代わりに基準電圧回路70Bを備えている点で相違するが、その他の点は同様である。すなわち、図1に付された符号1A及び70Aを、それぞれ、1B及び70Bに読み替えれば、半導体装置1Bの構成を示す概略図となる。そこで、本実施形態では、基準電圧回路70Bを中心に説明し、半導体装置1Aと重複する説明については省略する。
【0067】
図11は、半導体装置1Bにおける基準電圧回路70Bの構成を示す回路図である。
基準電圧回路70Bは、メモリ回路93Bと、デコーダ94Bと、第1乃至第7の抵抗セグメント705A~705Gとから構成される第2の抵抗器705と、電流源44と、第1乃至第6の短絡スイッチSS1~SS6とを備えている。
【0068】
第2の抵抗器705は、第1乃至第7の抵抗セグメント705A~705Gが直列接続されて構成され、その一端が基準同相電圧端子70bに接続され、他端が基準電圧701に接続される。
【0069】
第1の短絡スイッチSS1は第2の抵抗セグメント705Bの両端に、第2の短絡スイッチSS2は第3の抵抗セグメント705Cの両端に、第3の短絡スイッチSS3は第4の抵抗セグメント705Dの両端に、第4の短絡スイッチSS4は第5の抵抗セグメント705Eの両端に、第5の短絡スイッチSS5は第6の抵抗セグメント705Fの両端に、第6の短絡スイッチSS6は第7の抵抗セグメント705Gの両端にそれぞれ接続される。第1乃至第6の短絡スイッチSS1~SS6は、閉状態(導通状態)における抵抗値は、第1乃至第7の抵抗セグメント705A~705Gの抵抗値に対し、相対的に十分小さく、その開閉状態に応じて、並列接続された第1乃至第7の抵抗セグメント705A~705G各々が有効化もしくは無効化されるように切り替え制御される。
【0070】
第1の抵抗セグメント705Aは第1乃至第6の短絡スイッチSS1乃至SS6が全て短絡状態であるときに第2の抵抗器705の抵抗値を規定するための基準抵抗器であり、その抵抗値は例えばR-7ΔRになるように設定される。第2乃至第7の抵抗セグメント705B乃至705Gは重み付けされた抵抗器である。例えば、第2乃至第3の抵抗セグメント705B乃至705Cは4ΔRに、第4乃至第5の抵抗セグメント705D乃至705Eは2ΔRに、第6乃至第7の抵抗セグメント705F乃至705GはΔRになるようにそれぞれ構成される。その場合、第1乃至第6の短絡スイッチSS1乃至SS6が全て開状態(遮断状態)であるときに、第2の抵抗器705の抵抗値はR+7ΔRとなる。このように、第1乃至第6の短絡スイッチSS1乃至SS6の状態に応じて、第2の抵抗器705の抵抗値は最小値R-7ΔR、最大値R+7ΔRの間のΔR刻みの抵抗値へと、制御信号941B~946Bによって任意に設定可能に構成されている。
【0071】
電流源44は、第1端441が基準電圧701に接続され、第2端442が第1の電源端子に接続される。電流源44は基準電圧回路70Aと同様に、切替え制御される必要はなく、その出力電流の電流値IREFは固定値でよい。
【0072】
メモリ回路93Bは、メモリ回路93Aと同様に2進調整符号BinCodeを構成する4ビット信号D20~D23を出力し、デコーダ94Bに入力する。
【0073】
デコーダ94Bは制御信号702及び4ビット信号D20~D23に応じて、第1乃至第6の短絡スイッチSS1乃至SS6の開閉状態を制御するための信号線941B乃至946Bに制御信号を出力する。信号D20は2進調整符号BinCodeのLSB(最下位ビット)、信号D23は2進調整符号BinCodeのMSB(最上位ビット)をそれぞれ表している。
【0074】
次に、基準電圧回路70Bの動作について説明する。抵抗値R±ΔnR(nは0~7の整数)を有する第2の抵抗器705に注入される基準電流の電流値IREFは、以下の式(7)で表される基準電圧VREFを発生する。
VREF=VCM+(R±nΔR)×IREF (7)
調整符号が[3:0]=0000b及びD[3:0]=1000bのときn=0、D2[3:0]=0001bのときn=-1、D2[3:0]=0111bのときn=-7、D2[3:0]=1001bのときn=+1、D2[3:0]=1111bのとき、n=+7となる。上述した例に従えば、調整符号に応じて段階的に変化するVREF±nΔVを生成することができる。
【0075】
図12はデコーダ94Bの詳細な構成の一例を示す回路図である。図13はデコーダ94Bの動作を示す真理値表である。
【0076】
図12を参照してデコーダ94Bの構成例について説明する。デコーダ94Bは種々の論理ゲートIV3、IV4、AN11~AN19、OR3、OR4、NR1、NR2、ND1を有し、制御信号702と2値信号D23~D20をデコードして2値制御信号941B~946Bに出力するように構成されている。より詳細には図13に示すような真理値表に従って、第1乃至第6の短絡スイッチSS1乃至SS6の開閉状態制御信号941B~946Bを出力している。図13の真理値表に示す通り、制御信号702の符号に応じて、2値信号D2[3:0]に対する2値制御信号941B~946Bの割り当てが切り替わり、2値信号D2[3:0]に対するRDACの中心値Rからの偏差(±nΔR)の符号が逆転するように構成されている。
【0077】
続いて、本実施形態の磁気オフセット調整について説明する。
図14は、2進調整符号BinCodeに対する第2の抵抗器705の抵抗値RDAC、基準電圧VREF及び磁気オフセット調整量ΔBOSの例を示す概略図である。
【0078】
調整符号であるD2[3:0]は0000b~1111bの計16通りであり、MSB(D23)が調整の極性符号、下位ビット(D22~D20)が調整量の絶対値に対応している。抵抗値RDACはD2[3:0]=0111bのとき、RDAC=R-7ΔR、D[3:0]=1111bのとき、RDAC=R+7ΔRとなるように構成される。基準電圧VREF及び磁気オフセット調整量ΔBOSは図10と同様となるので説明を省略する。
【0079】
このように構成される半導体装置1Bの図14で表される2進調整符号BinCodeに対するΔBOS特性は、図10と同様であるので、半導体装置1Aと同様にBOSを調整するように作用させることができる。すなわち、半導体装置1Aと同様の作用が得られることによって、半導体装置1Aと同様の効果が得られる。
【0080】
このように、本実施形態によれば、比較器基準電圧VREF±ΔVの生成に用いる第2の抵抗器705の抵抗値の切り替えによって、S極とN極とで対称な磁電変換スイッチング特性を得ることができ、第1の実施形態と同様の効果を得ることがきる。
【0081】
上述した第2の実施形態において、第2の抵抗器705は正負各3ビット調整可能に構成されているが、任意の調整ビット数Nで構成されてもよい。この場合、調整ビット数Nに応じたBOS調整範囲とBOS調整分解能を得ることができる。
【0082】
以上のように本発明の実施形態に係る半導体装置の構成と作用について、図を参照して説明した。
【0083】
上述した半導体装置1A乃至1Bが具備する磁気スイッチは、いわゆる交番検出型の磁気スイッチであるが、両極検出型や片極検出型の磁気スイッチとして構成されてもよい。半導体装置1A乃至1Bが両極検出型の磁気スイッチとして構成される場合、比較器60の後段に適切な論理回路を追加して、状態遷移が適切に制御されるように構成すればよい。
【0084】
なお、半導体装置1A乃至1Bを両極検出型の磁気スイッチとして形成する場合、組み合わされる磁石の極性管理がなされていなくとも、本半導体装置が組み込まれる磁性体検出機構の検出距離のバラツキを低減することができる。また、半導体装置1A乃至1Bを片極検出型の磁気スイッチとして形成する場合、対象の極性の磁気感度の精度を改善することができるため、本半導体装置が組み込まれる磁性体検出機構の検出距離のバラツキを低減することができる。
【0085】
半導体装置1A乃至1Bにおいて、ホール素子30に駆動電流IDRVを供給する入力端子及びホール素子30から差動出力電圧VHを出力する出力端子となる電極30a~30dを切り替えるスイッチ回路網がさらに設けられていてもよい。
【0086】
上述した実施形態において、ホール素子30は、正方形の拡散領域の四隅に形成された電極30a乃至30dを有しており、半導体基板2の表面に対して直交する磁場を検出する、いわゆる水平ホール素子の構成が例示されているが(例えば、図1参照)、これに限定されない。例えば、半導体基板2の表面に対して平行な磁場を検出する、5端子垂直ホール素子として構成されていてもよい。5端子垂直ホール素子は、その両端の電極を短絡して等価的に4端子素子として扱われる。
【0087】
上述した実施形態において、デコーダ94A,94Bは、それぞれ、図4及び図12に例示される論理ゲート素子を用いた回路構成に限定されない。上述した入力信号が入力された場合に、等価な論理演算結果が得られる構成であれば、使用する論理ゲート素子及び回路構成は問わない。
【0088】
また、上述した実施形態において、電流源42,43の電流値や第2の抵抗器705の抵抗値を切り替える手段の一例として、スイッチ回路を説明したが、電流値や抵抗値を切り替える手段は、これに限定されない。スイッチSC1乃至SC6及びSS1乃至SS6は、例えば、MEMSによる機械式スイッチ、トランジスタ等の電子式スイッチ、又はこれらの組み合わせでもよい。
【0089】
また、上述した実施形態におけるメモリ回路93A,93Bは所要ビット数の2値信号を出力可能に構成されていれば、その種類を問わない。メモリ回路93A,93Bは、例えば、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性メモリでもよいし、ヒューズROMのような1回のみ書き込みが可能な不揮発性メモリでもよい。また、電源起動時に自己診断結果に基づいてビットを設定するように構成されている場合には、SRAMのような揮発性メモリでもよい。
【0090】
上述した実施形態において、ホール素子30は単一のホール素子である場合を説明しているが、磁気オフセットBOSDPの絶対値とバラツキを抑える観点から、複数のホール素子セルを並列接続した構成を採用してもよい。無調整時の動作点及び復帰点の設計値からのズレ分を抑制できるため、調整回路に必要な調整範囲と調整分解能を少なくすることができ、回路規模を縮小することができる。
【0091】
上述した実施形態では、差動入力単相出力型の増幅器50及び単相入力型の比較器60の構成例が説明されている。しかしながら、増幅器50及び比較器60は、この例に限定されず、半導体装置1A乃至1Bにおいて、差動入出力型の増幅器50及び差動入力型の比較器60が適用されてもよい。この場合、電源等から重畳する同相雑音に対して、相対的にロバストな磁気スイッチを具備する半導体装置1A乃至1Bを提供することができる。
【0092】
上述した実施形態では、磁気オフセット調整量ΔBOSが、D[3:0]又はD2[3:0]=0000bのとき及びD[3:0]又はD2[3:0]=1000bのときを0、すなわち磁気オフセット調整量が0(ゼロ)の場合を含めて正負に7段階の調整幅を持つ磁気オフセット調整量ΔBOSを設定した例を説明したが、この例に限られない。例えば、磁気オフセット調整量ΔBOSが0の場合を排除して正負に8段階の調整幅を持つ磁気オフセット調整量ΔBOSを設定してもよい。なお、本実施形態において、磁気オフセット調整量が0の場合は、磁気オフセット調整が無い場合に相当するので、半導体装置1A乃至1Bは、磁気オフセットの調整の有無を切替可能な磁気スイッチを具備する半導体装置と解することもできる。
【0093】
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1A,1B 半導体装置
2 半導体基板
5 第1の電源端子
6 第2の電源端子
30 ホール素子
30a~30d 電極
41~44 電流源
50 増幅器
501 増幅器出力信号
60 比較器
601 比較器出力信号
70A,70B 基準電圧回路
70b 基準同相電圧端子
704 第1の抵抗器
705 第2の抵抗器
80 スイッチ回路
801 チョッパー出力信号
100 ラッチ回路
705A~705G 第1乃至第7の抵抗セグメント
SC1~SC6 第1乃至第6の電流スイッチ
SS1~SS6 第1乃至第6の短絡スイッチ
T1~T3 第1乃至第3のトランジスタ
T42A~T42C 電流源トランジスタ
T43A~T43C 電流源トランジスタ
T44 電流源トランジスタ
93A、93B メモリ回路
94A、94B デコーダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14