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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】船舶推進装置、船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 5/16 20060101AFI20241101BHJP
   B63H 1/28 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B63H5/16 C
B63H1/28 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021057913
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154737
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-06-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】細野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】川淵 信
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓慶
(72)【発明者】
【氏名】窪田 雅也
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5607329(US,A)
【文献】特表2013-503784(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0063442(US,A1)
【文献】特開2014-231353(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102632982(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 5/16
B63H 1/28
B63H 5/14- 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶を推進させる船舶推進装置であって、
前記船舶の船体の下方に設けられるとともに、前記船体の前後方向に沿って延在するダクトと、
前記ダクトの内部に回転可能に配置されるプロペラと、を備え、
前記プロペラは、
羽根と、
前記羽根を取り囲む筒状の筒状部材であって、前記羽根の翼端と固定される筒状部材と、を含み、
前記ダクトの延在方向の断面視において、前記ダクトの前縁端と後縁端とを通過する仮想のラインを第1ラインとし、前記ダクトの内周面と外周面の両方に接する内接円の中心を前記ダクトの前記前縁端から前記後縁端まで結んだラインを第2ラインとすると、前記第2ラインは前記第1ラインよりも前記ダクトの前記外周面側に位置し、
前記第1ラインと直交する方向における前記ダクトの前記外周面と前記第1ラインとの距離が最大となる位置は、前記ダクトの前記前縁端側に位置するとともに、前記前後方向において前記羽根の前記翼端の最前方端よりも前方に位置するとともに、
前記ダクトに内蔵され、前記プロペラを回転させるための内蔵モータをさらに備える、
船舶推進装置。
【請求項2】
前記第1ラインは、前記ダクトの前記前縁端から前記後縁端に向かうにつれて前記ダクトの内側に向かうように傾斜している、
請求項1に記載の船舶推進装置。
【請求項3】
前記第2ラインは、前記ダクトの前記前縁端から前記後縁端に亘って、前記第1ラインよりも前記ダクトの前記外周面側に位置する、
請求項1又は2に記載の船舶推進装置。
【請求項4】
前記ダクトの内部に前記プロペラの回転方向と逆方向に回転可能に配置される反転プロペラをさらに備える、
請求項1からの何れか一項に記載の船舶推進装置。
【請求項5】
請求項1からの何れか一項に記載の船舶推進装置を備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶を推進させる船舶推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1~3には、ダクトと、ダクト内に回転可能に配置されるプロペラと、を備える船舶推進装置が開示されている。プロペラは、羽根と、羽根を取り囲むとともに羽根の翼端に固定されるリングと、を含んでおり、羽根の翼端における渦の発生を抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-100013号公報
【文献】実開昭60-044899号公報
【文献】特開昭59-092296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プロペラにリングが含まれると、船舶の推進中に発生する摩擦損失を増大させてしまう。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、羽根の翼端における渦の発生と船舶の推進中に発生する摩擦損失の増大とを抑制できる船舶推進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る船舶推進装置は、船舶を推進させる船舶推進装置であって、前記船舶の船体の下方に設けられるダクトと、前記ダクトの内部に回転可能に配置されるプロペラと、を備え、前記プロペラは、羽根と、前記羽根を取り囲む筒状の筒状部材であって、前記羽根の翼端と固定される筒状部材と、を含み、前記ダクトの延在方向の断面視において、前記ダクトの前縁端と後縁端とを通過する仮想のラインを第1ラインとし、前記ダクトの内周面と外周面の両方に接する内接円の中心を前記ダクトの前記前縁端から前記後縁端まで結んだラインを第2ラインとすると、前記第2ラインは前記第1ラインよりも前記ダクトの前記外周面側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の船舶推進装置によれば、羽根の翼端における渦の発生と船舶の推進中に発生する摩擦損失の増大とを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る船舶推進装置を備える船舶の構成を概略的に示す図である。
図2】一実施形態に係る船舶推進装置の構成を概略的に示す図である。
図3】一実施形態に係るダクトの構成を説明するための図である。
図4】プロペラ効率とプロペラ荷重度との関係を示すグラフである。
図5】別の一実施形態に係る船舶推進装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態による船舶推進装置について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(船舶の構成)
図1は、一実施形態に係る船舶推進装置1を備える船舶100の構成を概略的に示す図である。図1に示すように、船舶100は、船体102と、船体102に取り付けられ、船舶100を推進させる船舶推進装置1と、を備える。
【0011】
船体102は、船体102の前方に位置する部分である船首部104と、船体102の後方に位置する部分である船尾部106と、船底部108と、を有する。船首部104は、船体102が海水などの流体から受ける抵抗を低減する形状を有している。本開示では、船体102の前後方向Dのうち船尾部106から船首部104に向かう方向を前方向とし、船首部104から船尾部106に向かう方向を後方向としている。
【0012】
船舶推進装置1は、船体102の船尾部106側に位置するように船底部108に取り付けられている。船舶100は、船舶推進装置1が上下方向に沿って延びる軸線Lを中心として回転することで船体102の進行方向が調整されるように構成されている(いわゆる首振り型の船舶推進装置である)。幾つかの実施形態では、不図示であるが、船舶100は、船体102の進行方向を調整するための舵を備える。
【0013】
以下、一実施形態に係る船舶推進装置1の構成について具体的に説明する。
【0014】
(船舶推進装置の構成)
図2は、一実施形態に係る船舶推進装置1の構成を概略的に示す図である。図2に示すように、船舶推進装置1は、船舶100の船体102の下方に設けられるダクト2と、ダクト2の内部に回転可能に配置されるプロペラ4と、を備える。船舶推進装置1は、いわゆるダクトプロペラ型の船舶推進装置である。
【0015】
ダクト2は、前後方向Dに沿って延びている。図2に例示する形態では、ダクト2は、船体102の船底部108から下方に延びるストラット110によって支持されている。ダクト2の具体的な構成については後述する。尚、図2に例示する形態では、ダクト2はストラット110によって支持されていたが、ダクト2が船体102の下方に設けられるのであれば、本開示はこの形態に限定されない。例えば、ダクト2は、回転軸5を回転させる軸(図2において、モータ112と回転軸5とを接続する軸)によって支持されてもよいし、船体102の船底部108に取り付けられてもよい。
【0016】
プロペラ4は、ダクト2の延在方向(前後方向D)に沿って延びる棒状の回転軸5と、羽根6と、羽根6を取り囲む円筒状の筒状部材8(リング)と、を備える。
【0017】
回転軸5は、例えば、船体102内に設けられるモータ112と接続されており、このモータ112が発生させる回転動力によって回転するようになっている。羽根6は、翼根6bが回転軸5に固定されるとともに、翼端6aが筒状部材8の内周面8aに固定されている。このため、羽根6及び筒状部材8は、回転軸5の回転に伴って回転軸5を中心として回転するように構成されている。尚、図2に例示する形態では、船舶推進装置1はモータ112から供給される駆動力によって駆動するように構成されているが、本開示はこの形態に限定されない。例えば、船舶推進装置1は、ディーゼルエンジンやガスタービンから供給される駆動力によって駆動してもよい。
【0018】
筒状部材8は、ダクト2の内周面2aに形成されている溝12に収容されている。溝12は、ダクト2の内周面2aの全周に亘って連続している。筒状部材8は、溝12に収容された状態で、回転軸5を中心として回転可能となっている。
【0019】
ダクト2の具体的な構成について説明する。図3は、一実施形態に係るダクト2の構成(ダクト断面)を説明するための図である。ダクト2をダクト2の延在方向(前後方向D)に沿って切断すると、一方のダクト断面と回転軸5を挟んで一方のダクト断面とは反対側に位置する他方のダクト断面とのそれぞれが形成される。一実施形態では、一方のダクト断面および他方のダクト断面は、回転軸5について互いに線対称となっている。図3には、一方のダクト断面及び他方のダクト断面のうちの一方が示されている。尚、本開示は、一方のダクト断面および他方のダクト断面が回転軸5について互いに線対称であることに限定されるものではない。ダクト2は、一方のダクト断面及び他方のダクト断面が回転軸5に対して非対称であるように構成されてもよい。
【0020】
図3に示すように、ダクト断面は、ダクト2の内周面2aと外周面2bとによって形成されており、翼形状を有している。ダクト2の前縁端17と後縁端18とを通過する仮想の直線状のラインを第1ライン20とする。また、ダクト2の内周面2aと外周面2bとの両方に接する内接円Cの中心Oをダクト2の前縁端17から後縁端18まで結んだラインを第2ライン22とする。つまり、第1ライン20はタービン翼などの翼におけるコードラインに相当し、第2ライン22は翼におけるキャンバーラインに相当する。
【0021】
図3に示すように、第2ライン22は第1ライン20よりもダクト2の外周面2b側に位置する。図3に例示する形態では、第1ライン20は、ダクト2の前縁端17から後縁端18に向かうにつれてダクト2の内側に向かうように傾斜している。第2ライン22は、ダクト2の前縁端17から後縁端18に亘って、第1ライン20よりもダクト2の外周面2b側に位置している。
【0022】
図3に例示する形態では、第1ライン20と直交する方向におけるダクト2の外周面2bと第1ライン20との距離dが最大となる位置Pは、ダクト2の前縁端17側に位置する。尚、前後方向Dにおいて、プロペラ4が配置される位置は特に限定されないが、例えば、プロペラ4が位置Pよりも後方に配置されることで、プロペラ4の筒状部材8の径の大きさを小さくし、筒状部材8による摩擦損失を低減することができる。
【0023】
(船舶推進装置の作用・効果)
本開示の一実施形態に係る船舶推進装置1の作用・効果について説明する。一実施形態によれば、プロペラ4は、羽根6を取り囲むとともに、羽根6の翼端6aと固定される筒状部材8を含む。このため、羽根6の翼端6aにおける渦の発生を抑制することができる。
【0024】
船舶100の推進中に発生する摩擦損失のうち筒状部材8による摩擦損失の大きさは、筒状部材8の近傍を流通する流体の速度が支配的である。一実施形態によれば、第2ライン22は第1ライン20よりもダクト2の外周面2b側に位置しているので、ダクト2の内周面2aはダクト2に流入した海水などの流体の速度を遅くする形状を有する。つまり、ダクト2の内周面2aは、翼における圧力面として機能する。このため、筒状部材8の近傍を流通する流体の速度を遅くすることができ、筒状部材8による摩擦損失の大きさを低減することができる。よって、船舶100の推進中に発生する摩擦損失の増大を抑制できる。
【0025】
図4は、プロペラ効率とプロペラ荷重度との関係を示すグラフである。図4において、横軸はプロペラ荷重度であり、縦軸はプロペラ効率を示している。図4において、プロペラ効率の理想値をA1、A1から後方に放出する旋回流による損失を差し引いたプロペラ効率をA2、A2から筒状部材8による摩擦損失を差し引いたプロペラ効率をA3、A3から各種抵抗による損失を差し引いたプロペラ効率をA4、A4から羽根6の最適設計からのずれによる損失を差し引いたプロペラ効率をA5で示している。尚、各種抵抗による損失とは、例えば、ダクト2内に設けられた回転軸5や羽根6が流体から受ける抵抗によって発生する損失や羽根6の表面に発生する流体摩擦などである。
【0026】
プロペラが羽根を含むが筒状部材を含まないオープンプロペラである場合、羽根は翼端部(翼端及び翼端付近を含む)の荷重が小さくなるように設計される。羽根の翼端部の荷重を小さくすることで、羽根の翼端から発生する渦を小さくし、各種抵抗による損失を小さくすることができる。しかしながら、羽根はプロペラ効率を理想的な値にするための最適設計からずれた設計となり、最適設計からのずれによる損失が発生する。上述した一実施形態によれば、プロペラ4が筒状部材8を含むことで、羽根6の翼端6aにおける渦の発生を抑制することができる。このため、羽根6の設計を最適設計に近づけることができる。つまり、図4におけるA4とA5との差を小さくし、実際のプロペラ効率をA1に近づけることができる。
【0027】
また、上述した一実施形態によれば、ダクト2の内周面2aは、翼における圧力面として機能するので、ダクト2の内周面2aが翼における圧力面として機能しない場合と比較して、筒状部材8による摩擦損失の大きさを低減することができる。つまり、図4におけるA2とA3との差を小さくし、実際のプロペラ効率をA1に近づけることができる。
【0028】
一実施形態によれば、第1ライン20は、ダクト2の前縁端17から後縁端18に向かうにつれてダクト2の内側に向かうように傾斜している。このため、ダクト2の内周面2aは、第1ライン20がダクト2の前縁端17から後縁端18に向かうにつれてダクト2の外側に向かうように傾斜している場合と比較して、ダクト2に流入した流体の速度を効果的に遅くすることができる。
【0029】
一実施形態によれば、ダクト断面は翼形状を有し、ダクト2の内周面2aは、翼における圧力面として機能している。このため、筒状部材8の近傍を流通する流体の速度を遅くすることができ、筒状部材8による摩擦損失の大きさを低減することができる。
【0030】
従来のダクトプロペラ型の船舶推進装置は、前方に向かうスラスト力を発生させるため、ダクト断面を翼形状とし、ダクトの内周面が翼における負圧面として機能するように構成されることが多い。しかしながら、プロペラが羽根と羽根を取り囲む筒状部材(リング)とを含む場合、ダクトの内周面が負圧面として機能することで、リングの近傍を流通する流体の速度が速くなり、筒状部材8による摩擦損失の大きさが大きくなる。これに対して、一実施形態に係る船舶推進装置1によれば、ダクト2の内周面2aが圧力面として機能することで、スラスト力の発生は抑制されるものの、筒状部材8による摩擦損失の大きさを低減することができる。この結果、一実施形態に係る船舶推進装置1は、従来の船舶推進装置と比較して、プロペラ効率を高くすることができる。
【0031】
一実施形態によれば、位置Pがダクト2の前縁端17側に位置するので、ダクト2の前縁端17側でダクト2に流入した流体の速度を遅くし、ダクト2の延在方向の長さを抑制することができる。
【0032】
ところで、図2に例示して説明した一実施形態では、船舶推進装置1は、回転軸5の回転に伴って羽根6及び筒状部材8が回転する軸駆動型のプロペラ4を備えていたが、本開示はこの形態に限定されない。図5は、別の一実施形態に係る船舶推進装置1の構成を概略的に示す図である。
【0033】
図5に示すように、別の一実施形態では、船舶推進装置1は、ダクト2に内蔵され、プロペラ4を回転させるための内蔵モータ21を備える。具体的には、内蔵モータ21から供給される回転動力によって筒状部材8が回転するように構成されている。そして、羽根6は、この筒状部材8の回転に伴って回転する。このような構成によれば、ダクト2内に回転軸5を配置しなくて済むので、ダクト2内に配置される構造物が流体から受ける抵抗によって発生する損失を低減することができる。
【0034】
図5に例示する形態では、船舶推進装置1は、ダクト2の内部に配置される反転プロペラ23と、ダクト2に内蔵され、反転プロペラ23をプロペラ4の回転方向と逆方向に回転させるための内蔵モータ28と、を備える。反転プロペラ23は、内蔵モータ21から供給される回転力によって回転可能に構成される筒状の筒状部材26と、筒状部材26に取り囲まれ、翼端が筒状部材26の内周面に固定される羽根24と、を含む。このような構成によれば、反転プロペラ23がプロペラ4の逆転流を発生させ、二重反転効果によって船舶推進装置1の推進効率を向上させることができる。尚、幾つかの実施形態では、反転プロペラ23は、回転軸5の回転によって、羽根24と筒状部材26とが回転するように構成されてもよい。つまり、反転プロペラ23は軸駆動型に構成されてもよい。
【0035】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0036】
[1]本開示に係る船舶推進装置(1)は、
船舶(100)を推進させる船舶推進装置であって、
前記船舶の船体(102)の下方に設けられるダクト(2)と、
前記ダクトの内部に回転可能に配置されるプロペラ(4)と、を備え、
前記プロペラは、
羽根(6)と、
前記羽根を取り囲む筒状の筒状部材であって、前記羽根の翼端(6a)と固定される筒状部材(8)と、を含み、
前記ダクトの延在方向の断面視において、前記ダクトの前縁端(17)と後縁端(18)とを通過する仮想のラインを第1ライン(20)とし、前記ダクトの内周面(2a)と外周面(2b)の両方に接する内接円(C)の中心(O)を前記ダクトの前記前縁端から前記後縁端まで結んだラインを第2ライン(22)とすると、前記第2ラインは前記第1ラインよりも前記ダクトの前記外周面側に位置する。
【0037】
上記[1]に記載の構成によれば、プロペラは羽根を取り囲むとともに、羽根の翼端と固定される筒状部材を含むので、翼端における渦の発生を抑制することができる。
【0038】
また、上記[1]に記載の構成によれば、内接円の中心をダクトの前縁端から後縁端まで結んだ第2ラインは、ダクトの前縁端と後縁端とを通過する第1ラインよりもダクトの外周面側に位置している。つまり、ダクトの内周面はダクトに流入した流体の速度を遅くする形状(いわゆる圧力面)を有する。このため、筒状部材の近傍を流通する流体の速度を遅くし、筒状部材による摩擦損失を低減することができる。よって、船舶の推進中に発生する摩擦損失の増大を抑制できる。
【0039】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記第1ラインは、前記ダクトの前記前縁端から前記後縁端に向かうにつれて前記ダクトの内側に向かうように傾斜している。
【0040】
上記[2]に記載の構成によれば、ダクトの内周面は、第1ラインがダクトの前縁端から後縁端に向かうにつれてダクトの外側に向かうように傾斜している場合と比較して、ダクトに流入した流体の速度を効果的に遅くすることができる。
【0041】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記第2ラインは、前記ダクトの前記前縁端から前記後縁端に亘って、前記第1ラインよりも前記ダクトの前記外周面側に位置する。
【0042】
上記[3]に記載の構成によれば、ダクトの内周面を、タービン翼などの翼における圧力面として機能させることができる。このため、筒状部材の近傍を流通する流体の速度を遅くし、筒状部材による摩擦損失を低減することができる。
【0043】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記第1ラインと直交する方向における前記ダクトの前記外周面と前記第1ラインとの距離(d)が最大となる位置(P)は、前記ダクトの前記前縁端側に位置する。
【0044】
上記[4]に記載の構成によれば、ダクトの前縁端側でダクトに流入した流体の速度を遅くし、ダクトの延在方向の長さを抑制することができる。
【0045】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[4]の何れか1つに記載の構成において、
前記ダクトに内蔵され、前記プロペラを回転させるための内蔵モータ(21)をさらに備える。
【0046】
上記[5]に記載の構成によれば、内蔵モータは、ダクト内に配置されず、ダクトに内蔵されているので、内蔵モータが抵抗となることを抑制できる。
【0047】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記ダクトの内部に前記プロペラの回転方向と逆方向に回転可能に配置される反転プロペラ(23)をさらに備える。
【0048】
上記[6]に記載の構成によれば、反転プロペラがプロペラの逆転流を発生させ、二重反転効果によって船舶推進装置の推進効率を向上させることができる。
【0049】
[7]幾つかの実施形態に係る船舶は、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の船舶推進装置を備える。
【0050】
上記[7]に記載の構成によれば、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の船舶推進装置を備える船舶を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 船舶推進装置
2 ダクト
2a ダクトの内周面
2b ダクトの外周面
4 プロペラ
6 羽根
6a 羽根の翼端
8 筒状部材
8a 筒状部材の内周面
12 溝
17 ダクトの前縁端
18 ダクトの後縁端
20 第1ライン
21 内蔵モータ
22 第2ライン
23 反転プロペラ
100 船舶
102 船体
C 内接円
O 内接円の中心
P 位置

図1
図2
図3
図4
図5