(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】燃料電池装置、燃料電池システム及び電源管理システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20241101BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241101BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20241101BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241101BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20241101BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241101BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04858
H02J3/14
H02J3/38 170
H02J3/46
H01M8/04 Z
(21)【出願番号】P 2021058691
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
(72)【発明者】
【氏名】山本 明日香
(72)【発明者】
【氏名】松原 未央
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-168275(JP,A)
【文献】特開2008-145073(JP,A)
【文献】特開2004-7977(JP,A)
【文献】特開2000-285941(JP,A)
【文献】特開2011-175742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統に接続される電力線に接続される燃料電池部と、前記燃料電池部の動作を制御する制御部とを備える燃料電池装置であって、
前記制御部は、
所定の制御対象期間に含まれる複数の制御タイミング毎に、前記燃料電池部から前記電力線に供給する出力電力の目標出力値を、前記電力線に接続される電力負荷装置の予測負荷電力に基づいて定まる値に設定するように構成され、一つの前記制御タイミングで設定した前記燃料電池部の前記目標出力値は次の前記制御タイミングまでの間の個別制御期間は変更しないように構成され、
前記個別制御期間での前記電力負荷装置の実際の負荷電力が当該個別制御期間での前記予測負荷電力から乖離した場合、その乖離分に応じて、次の前記個別制御期間での前記燃料電池部の前記目標出力値を変更する燃料電池装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記個別制御期間での前記電力負荷装置の実際の負荷電力が当該個別制御期間での前記予測負荷電力よりも大きくなる乖離が発生した場合、前記乖離分としての増加分だけ、次の前記個別制御期間での前記燃料電池部の前記目標出力値を増加させ、
前記個別制御期間での前記電力負荷装置の実際の負荷電力が当該個別制御期間での前記予測負荷電力よりも小さくなる乖離が発生した場合、前記乖離分としての減少分だけ、次の前記個別制御期間での前記燃料電池部の前記目標出力値を減少させる請求項1に記載の燃料電池装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記乖離分が大きくなるほど前記個別制御期間の長さを短くする請求項1又は2に記載の燃料電池装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の燃料電池装置が前記電力系統に複数台接続されている燃料電池システム。
【請求項5】
複数の前記燃料電池装置のそれぞれで前記制御タイミングが設定されている請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な請求項1~3の何れか一項に記載の燃料電池装置と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部から通信を行うことができる管理装置とを備え、
前記管理装置は、電力の取引市場において電力取引を行うアグリゲーションコーディネーターから当該電力取引によって決まった前記制御対象期間での電力の供出指令を受け取り、当該供出指令に基づいて決定した複数の前記施設のそれぞれに設置される前記燃料電池装置の前記出力電力を定める出力制御指令を複数の前記燃料電池装置に送信し、
前記燃料電池装置は、前記管理装置から受けた前記出力制御指令に基づいて前記目標出力値を決定する電源管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に接続される電力線に接続される燃料電池部と、燃料電池部の動作を制御する制御部とを備える燃料電池装置、燃料電池システム及び電源管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統には、従来から有る大規模な発電所だけでなく、住宅や事業所などの施設に設置された燃料電池装置も接続されている。また、施設に設置された電力負荷装置も電力系統に接続されている。そして、燃料電池装置及び電力負荷装置を用いて施設の受電点電力を増減させることで、電力系統での電力の需給バランス調整に貢献することができる。近年では、バーチャルパワープラント(VPP:Virtual Power Plant)という概念の下で、需要家の施設に設置された上述のような燃料電池装置及び電力負荷装置などの需要家側エネルギーリソースの動作を制御することで、発電所と同等の機能を提供することが試みられている。尚、施設の受電点電力という場合、電力系統から施設への受電電力及び施設から電力系統への逆潮流電力の両方が含まれる。
【0003】
施設に設置される電力負荷装置の負荷電力は、装置のオン及びオフの切り換えや、装置の使用状況によって急激に変化する可能性がある。そのため、施設の受電点電力を所望の値に調節するならば、施設に設けられる燃料電池装置の出力電力を電力負荷装置の負荷電力の変化に追従させる必要がある。
【0004】
電力負荷装置の負荷電力の変化に、電源装置の出力電力を追従させる方法として、特許文献1(特開2006-333563号公報)に記載の技術がある。この特許文献1には、複数の分散型電源を組み合わせて負荷追従運転を行う制御方法が記載されている。具体的には、負荷追従の応答特性の異なる複数の分散型電源を用いて、負荷追従運転を行う際に、追従すべき電力変動を、長周期の負荷変動に対してはエンジン発電機で追従し、短周期の負荷変動に対しては電力貯蔵装置で追従し、電力貯蔵装置が追従しきれない急峻な負荷変動を電気二重層キャパシタが補償するような制御方法が記載されている。
【0005】
他の技術として、特許文献2(特開2020-89087号公報)には、電力管理装置から、発電設備等が設けられた施設に対して5分間毎に制御を指令し、その5分間は発電設備等から一定の電力を出力させるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-333563号公報
【文献】特開2020-89087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、負荷追従の応答特性の異なる複数の電源装置を用いるものであり、単一の電源装置のみを用いる場合には適用できない。また、電源装置として燃料電池装置を用いる場合、負荷電力の変動に応じてその出力電力を急激に変動させると、装置の劣化が進行するという問題がある。
【0008】
特許文献2に記載の発明では、5分間は出力電力を一定に保つため、その間に実際の負荷電力と予測負荷電力とに乖離が発生した場合、施設の受電点電力を所望の値に正確に調節できない可能性があるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置の劣化を抑制しつつ、適切な調整力の供出に寄与できる燃料電池装置、燃料電池システム及び電源管理システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池装置の特徴構成は、電力系統に接続される電力線に接続される燃料電池部と、前記燃料電池部の動作を制御する制御部とを備える燃料電池装置であって、
前記制御部は、所定の制御対象期間に含まれる複数の制御タイミング毎に、前記燃料電池部から前記電力線に供給する出力電力の目標出力値を、前記電力線に接続される電力負荷装置の予測負荷電力に基づいて定まる値に設定するように構成され、一つの前記制御タイミングで設定した前記燃料電池部の前記目標出力値は次の前記制御タイミングまでの間の個別制御期間は変更しないように構成され、前記個別制御期間での前記電力負荷装置の実際の負荷電力が当該個別制御期間での前記予測負荷電力から乖離した場合、その乖離分に応じて、次の前記個別制御期間での前記燃料電池部の前記目標出力値を変更する点にある。
上記目的を達成するための本発明に係る電源管理システムの特徴構成は、複数の施設のそれぞれに設置されて電力を出力可能な上記燃料電池装置と、複数の前記燃料電池装置との間で前記施設の外部から通信を行うことができる管理装置とを備え、
前記管理装置は、電力の取引市場において電力取引を行うアグリゲーションコーディネーターから当該電力取引によって決まった前記制御対象期間での電力の供出指令を受け取り、当該供出指令に基づいて決定した複数の前記施設のそれぞれに設置される前記燃料電池装置の前記出力電力を定める出力制御指令を複数の前記燃料電池装置に送信し、
前記燃料電池装置は、前記管理装置から受けた前記出力制御指令に基づいて前記目標出力値を決定する点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、制御部は、一つの制御タイミングで設定した燃料電池部の目標出力値を次の制御タイミングまでの間の個別制御期間は変更しない。その結果、燃料電池部の出力電力が頻繁に変更されることが避けられる。
また、制御部は、個別制御期間での電力負荷装置の実際の負荷電力がその個別制御期間での予測負荷電力から乖離した場合、その乖離分に応じて、次の個別制御期間での燃料電池部の目標出力値を変更する。その結果、複数の個別制御期間を含んで構成される制御対象期間内に燃料電池装置から電力系統に供給される電力量を、所望の電力量に近付けることができる。
従って、装置の劣化を抑制しつつ、適切な調整力の供出に寄与できる燃料電池装置、及び、その燃料電池装置を備える電源管理システムを提供できる。
【0012】
本発明に係る燃料電池装置の別の特徴構成は、前記制御部は、前記個別制御期間での前記電力負荷装置の実際の負荷電力が当該個別制御期間での前記予測負荷電力よりも大きくなる乖離が発生した場合、前記乖離分としての増加分だけ、次の前記個別制御期間での前記燃料電池部の前記目標出力値を増加させ、前記個別制御期間での前記電力負荷装置の実際の負荷電力が当該個別制御期間での前記予測負荷電力よりも小さくなる乖離が発生した場合、前記乖離分としての減少分だけ、次の前記個別制御期間での前記燃料電池部の前記目標出力値を減少させる点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、個別制御期間での電力負荷装置の実際の負荷電力がその個別制御期間での予測負荷電力よりも大きくなる乖離及び小さくなる乖離の何れが発生した場合であっても、複数の個別制御期間を含んで構成される制御対象期間内に燃料電池装置から電力系統に供給される電力量を、所望の電力量に近付けることができる。
【0014】
本発明に係る燃料電池装置の更に別の特徴構成は、前記制御部は、前記乖離分が大きくなるほど前記個別制御期間の長さを短くする点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、乖離分に応じた目標出力値の増加補正又は減少補正は、乖離分が大きくなるほど短い時間間隔で行われる。その結果、目標出力値が増加補正又は減少補正されないままの状態で、即ち、乖離を小さくする対処が行われないままの状態で運転が継続されることが防止される。
【0016】
上記目的を達成するための本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、上記燃料電池装置が前記電力系統に複数台接続されている点にある。
ここで、複数の前記燃料電池装置のそれぞれで前記制御タイミングが設定されていてもよい。
【0017】
上記特徴構成によれば、電力系統に接続される複数台の燃料電池装置を用いて、適切な調整力の供出に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】施設と、管理装置と、アグリゲーションコーディネーターとの関係を示した図である。
【
図3】制御対象期間での目標出力値の例を示す図である。
【
図4】制御対象期間での目標出力値の例を示す図である。
【
図5】制御対象期間での目標出力値の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、燃料電池装置10及び電力負荷装置4が設けられる施設20と、管理装置30と、アグリゲーションコーディネーター40との関係を示した図である。
図2は、施設20の構成例を示す図である。電源管理システムは、複数の施設20のそれぞれに設置されて電力を出力可能な燃料電池装置10と、複数の燃料電池装置10との間で施設20の外部の遠隔地から通信を行うことができる管理装置30とを備える。尚、
図1に記載した管理装置30の数及び施設20の数は適宜変更可能である。
【0020】
管理装置30は、リソースアグリゲーター等とも呼ばれ、VPP(Virtual Power Plant)サービス契約を締結した施設20に対して需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4への制御情報を伝達することで、その需要家側エネルギーリソースの制御を行う事業者である。アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30が制御する電力量を束ね、電気の取引市場等において一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う事業者である。
【0021】
管理装置30は、複数の施設20から、燃料電池装置10の出力電力、電力負荷装置4の負荷電力、施設20での受電点電力などの電力情報を逐次収集して記憶している。尚、本実施形態で「電力負荷装置4の負荷電力」と記載する場合、施設20に設けられている全ての電力負荷装置4の合計の負荷電力のことを意味する。そして、管理装置30は、将来の所定の時間帯に各施設20から供出可能な電力を予測し、アグリゲーションコーディネーター40に伝達する。この供出可能電力は、施設20の受電点電力を上げる能力又は下げる能力といった調整余力である。尚、本実施形態において「受電点電力を上げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を増加させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を減少させることを意味し、「受電点電力を下げる」という場合、電力系統1から電力線2への受電電力を減少させる、又は、電力線2から電力系統1への逆潮流電力を増加させることを意味する。
【0022】
例えば、施設20の受電点電力を上げるためには、燃料電池装置10の出力電力を下げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を上げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を上げる場合の上げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を下げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を上げる余力がどの程度あるかを示す。また、施設20の受電点電力を下げるためには、燃料電池装置10の出力電力を上げること、及び、電力負荷装置4の負荷電力を下げることの少なくとも一方を行えばよいため、施設20の受電点電力を下げる場合の下げ側調整余力は、燃料電池装置10の出力電力を上げる余力がどの程度あるかを示し、電力負荷装置4の負荷電力を下げる余力がどの程度あるかを示す。
【0023】
また、管理装置30は、自身が管理する複数の施設20におけるベースライン受電点電力を決定する。このベースライン受電点電力は、各施設20から調整力等(即ち、送配電事業者に提供する調整力及び小売事業者等に提供する供給力等を含む)を供出させない場合に予測される、各施設20の受電点電力の合計に相当する。
【0024】
アグリゲーションコーディネーター40は、各管理装置30から受け取った供出可能電力を集計し、需給調整市場、卸電力市場、容量市場などの電力の取引市場への入札を行うなどして、一般送配電事業者や小売電気事業者と電力取引を行う。そして、アグリゲーションコーディネーター40は、取引を行った一般送配電事業者や小売電気事業者から、将来の所定の制御対象期間での調整力等の供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各管理装置30に対して分配して伝達する。
【0025】
管理装置30は、アグリゲーションコーディネーター40から供出指令を受け取った場合、その供出指令で指定された調整力等を各施設20に対して分配して伝達する。その結果、各施設20では、将来の所定の制御対象期間において需要家側エネルギーリソースとしての燃料電池装置10及び電力負荷装置4の制御が行われることで、その制御が行われなかった場合と比較して、施設20の受電点電力が増減するという調整力等の供出が行われる。
【0026】
施設20には、燃料電池装置10と、電力負荷装置4とが設けられている。燃料電池装置10及び電力負荷装置4は、電力系統1に連系される電力線2に接続される。電力線2には、施設20の受電点電力を測定する電力メーター3が設置されている。尚、
図1及び
図2には、燃料電池装置10が1台設置されている例を示しているが、燃料電池装置10の設置台数は適宜変更可能である。
【0027】
電力メーター3で測定された受電点電力に関する情報は、ゲートウェイ5及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0028】
電力負荷装置4は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設20に設置される燃料電池装置10及び電力系統1の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0029】
燃料電池装置10は、電力系統1に連系される燃料電池部12と、燃料電池部12の発電電力を所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線2に供給する電力変換部11と、燃料電池部12及び電力変換部11の動作を制御する燃料電池制御部13と、燃料電池装置10で取り扱われる情報を記憶する記憶部14とを備える。また、燃料電池装置10は、燃料電池部12の燃料ガスである水素を生成する燃料改質装置を備えていてもよい。
本実施形態の燃料電池制御部13は、本発明の「制御部」に対応する。
【0030】
燃料電池制御部13は、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池装置10から電力線2への出力電力を調節できる。例えば、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を上限出力電力に維持して連続運転させることができる。また、燃料電池制御部13は、燃料電池装置10の出力電力を、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることもできる。例えば、燃料電池制御部13は、電力測定部8で計測される電力(即ち、電力系統1から供給される電力)がゼロ又はゼロに近い電力になるように燃料電池装置10の出力電力を調節することで、電力負荷装置4の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0031】
燃料電池制御部13は、電力変換部11から電力線2に供給する出力電力についての情報及び電力測定部8での測定電力についての情報を有しているため、電力負荷装置4の負荷電力(=出力電力+測定電力)を導出できる。尚、電力測定部8での測定電力の符号がプラスの場合は負荷電力が燃料電池装置10の出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力測定部8での測定電力の符号がマイナスの場合は燃料電池装置10の出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0032】
燃料電池装置10は、施設20の利用者が燃料電池装置10に対する指令を行う場合に操作するリモコン7と接続されている。そして、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、リモコン7及びルーター6を介して管理装置30に伝達される。例えば、燃料電池装置10が有する出力電力についての情報及び負荷電力についての情報などは、1分毎などの所定のタイミングで管理装置30に伝達される。
【0033】
上述したように、管理装置30は、複数の燃料電池装置10に対して、燃料電池装置10の出力電力を定める出力制御指令を送信できる。そして、燃料電池装置10は、管理装置30から出力制御指令を受け取った場合、出力制御指令の対象となる制御対象期間の間、出力制御指令に基づいて定まる出力電力の供給を目標とする第1運転モードで動作し、制御対象期間から外れる非制御対象期間の間、第1運転モードとは別の第2運転モードで動作する。
【0034】
第2運転モードは、複数の燃料電池装置10において予め設定されている運転モードである。或いは、管理装置30は、複数の燃料電池装置10に対して、第2運転モードを定める運転モード制御指令を送信でき、燃料電池装置10は、管理装置30から受け取った運転モード制御指令に従って第2運転モードを決定する。
【0035】
図3は、制御対象期間と非制御対象期間とを模式的に描いた図であり、制御対象期間での目標出力値の例を示す図である。
図3に示した例では、制御情報(出力制御指令)において、12時~15時の間が制御対象期間に指定されている。そのため、この燃料電池装置10は、12時~15時の制御対象期間は、第1運転モードで動作し、それ以外の非制御対象期間は、第2運転モードで動作する。
【0036】
以下に、第1運転モードの具体例について説明する。
図3に示すように、燃料電池制御部13は、所定の制御対象期間に含まれる複数の制御タイミング毎に、燃料電池部12から電力線2に供給する出力電力の目標出力値を、電力線2に接続される電力負荷装置4の予測負荷電力に基づいて定まる値に設定するように構成され、一つの制御タイミングで設定した燃料電池部12の目標出力値は次の制御タイミングまでの間の個別制御期間は変更しないように構成されている。
【0037】
予測負荷電力は、管理装置30が決定して、その値が各施設20の燃料電池制御部13に伝達されてもよい。或いは、燃料電池制御部13が、予測負荷電力を、上述したように施設20で測定された実際の負荷電力に基づいて決定してもよい。また、決定した予測負荷電力について、基準となる天候(例えば、晴れ等)、基準となる気温(例えば、20℃等)などを定めておき、燃料電池制御部13が、当日の天候、気温などと、基準となる天候、気温などとの相違点に基づいて予測負荷電力を修正してもよい。
【0038】
具体的に説明すると、
図3に示すように、制御対象期間には、複数の制御タイミングが設定されている。燃料電池制御部13は、個別制御期間での、電力負荷装置4の予測負荷電力の平均値を導出する。燃料電池制御部13は、例えば、管理装置30から、予測負荷電力の平均値よりも所定値だけ大きい電力を燃料電池部12から電力線2に供給することで達成できる出力制御指令を受けた場合には、予測負荷電力の平均値よりも上記所定値だけ大きい電力を目標出力値とする。尚、出力制御指令によっては、予測負荷電力の平均値と同じ又はそれよりも小さい目標出力値が決定されることもある。そして、燃料電池制御部13は、一つの制御タイミングで設定した燃料電池部12の目標出力値は次の制御タイミングまでの間の個別制御期間は変更しない。その結果、燃料電池部12の出力電力が頻繁に変更されることが避けられる。その結果、燃料電池装置10の劣化が抑制される。
【0039】
本実施形態では、以上のような構成の燃料電池装置10が電力系統1に複数台接続されている。そして、複数の燃料電池装置10のそれぞれで制御タイミングが設定されている。つまり、複数の施設20に設置される各燃料電池装置10の制御タイミングが同じになることもあるし、制御タイミングが異なることもある。
【0040】
本実施形態において、個別制御期間の長さは一定である。また、個別制御期間の長さを、例えば、制御対象期間の長さ、燃料電池部12の出力の変化可能速度(即ち、燃料電池部12の出力を下限出力電力から上限出力電力まで変化させるのに要する時間)などに基づいて設定できる。
【0041】
例えば、個別制御期間の長さを、制御対象期間の長さに基づいて設定する場合、個別制御期間の長さは、制御対象期間の長さの1/100~1/2の範囲、好ましくは1/30~1/5の範囲に設定される。制御対象期間の長さを30分とした場合、個別制御期間の長さは、0.3分~15分の範囲、好ましくは1分~6分の範囲になる。
【0042】
また、個別制御期間の長さを、燃料電池部12の出力を下限出力電力から上限出力電力まで変化させるのに要する時間に基づいて設定する場合、燃料電池部12の出力を下限出力電力の50Wから上限出力電力の700Wまで変化させるのに要する所要時間が6.5分だと仮定すると、個別制御期間の長さは、上記所要時間の1/20~2.5倍の範囲、好ましくは1/5~1倍の範囲に設定される。この場合、個別制御期間の長さは、0.325分~16.25分の範囲、好ましくは1.3分~6.5分の範囲になる。
【0043】
図4にも、制御対象期間での目標出力値の例を示す。この例では、燃料電池制御部13は、個別制御期間での電力負荷装置4の実際の負荷電力がその個別制御期間での予測負荷電力から乖離した場合、その乖離分に応じて、次の個別制御期間での燃料電池部12の目標出力値を変更する補正を行う。例えば、燃料電池制御部13は、個別制御期間での電力負荷装置4の実際の負荷電力がその個別制御期間での予測負荷電力よりも大きくなる乖離が発生した場合、乖離分としての増加分だけ、次の個別制御期間での燃料電池部12の目標出力値を増加させ、個別制御期間での電力負荷装置4の実際の負荷電力がその個別制御期間での予測負荷電力よりも小さくなる乖離が発生した場合、乖離分としての減少分だけ、次の個別制御期間での燃料電池部12の目標出力値を減少させる。
【0044】
図4に示す例では、燃料電池制御部13は、個別制御期間T1では、電力負荷装置4の予測負荷電力の平均値に基づいて定まる目標出力値の電力を燃料電池部12から出力させる。但し、この個別制御期間T1での電力負荷装置4の実際の負荷電力の平均値は、個別制御期間T1での予測負荷電力の平均値よりも大きくなる乖離が発生している。そのため、燃料電池制御部13は、乖離分としての増加分だけ、次の個別制御期間T2での燃料電池部12の目標出力値を、補正していない目標出力値から補正した目標出力値へと増加させる。その結果、複数の個別制御期間を含んで構成される制御対象期間内に燃料電池装置10から電力系統1に供給される電力量を、所望の電力量に近付けることができる。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態は、個別対象期間の長さが変更される点で上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の燃料電池装置10及び燃料電池システムについて説明するが上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0046】
本実施形態において、燃料電池制御部13は、上述した乖離分が大きくなるほど個別制御期間の長さを短くする。例えば、燃料電池装置10の記憶部14には、乖離分の大きさと個別制御期間の長さ又は個別制御期間の短縮幅との関係が記憶されている。そのため、燃料電池制御部13は、乖離分の大きさに応じて、次の個別制御期間の長さを決定できる。
【0047】
図5は、制御対象期間での目標出力値の例である。図示するように、燃料電池制御部13は、個別制御期間T3では、電力負荷装置4の予測負荷電力の平均値に基づいて定まる目標出力値の電力を出力するように動作する。但し、この個別制御期間T3での電力負荷装置4の実際の負荷電力の平均値は、個別制御期間T3での予測負荷電力の平均値よりも大きくなる乖離が発生している。そのため、燃料電池制御部13は、次の個別制御期間T4の長さを、個別制御期間T3よりも短く設定する。
【0048】
このように、乖離分に応じた目標出力値の増加補正又は減少補正は、乖離分が大きくなるほど短い時間間隔で行われる。その結果、目標出力値が増加補正又は減少補正されないままの状態で、即ち、乖離を小さくする対処が行われないままの状態で運転が継続されることが防止される。例えば、本実施形態の
図5に示した例では、制御対象期間内での2番目の個別制御期間T4の終了タイミングは、
図4に示した2番目の個別制御期間T2の終了タイミングよりも早く到来する。そのため、次の個別制御期間での目標出力値の増加補正が早く実施されるという利点がある。
【0049】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、本発明の燃料電池装置及び燃料電池システムの構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
【0050】
<2>
上記実施形態では、出力電力、負荷電力、制御対象期間の長さ、個別制御期間の長さなどについて具体的な数値を例示して説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり、適宜変更可能である。
【0051】
<3>
上記実施形態では、予測負荷電力の決定方法、予測負荷電力を天候、気温等に応じて修正する方法などについて説明したが、それらの方法は適宜変更可能である。
【0052】
<4>
上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用でき、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、装置の劣化を抑制しつつ、適切な調整力の供出に寄与できる燃料電池装置、燃料電池システム及び電源管理システムに利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 電力系統
2 電力線
4 電力負荷装置
10 燃料電池装置
12 燃料電池部
13 燃料電池制御部(制御部)