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特許7580350電圧制御装置、電圧制御方法および電圧制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電圧制御装置、電圧制御方法および電圧制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/12 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
H02J3/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021129978
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023023975
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石本 智之
(72)【発明者】
【氏名】高野 富裕
(72)【発明者】
【氏名】河野 俊介
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121305(JP,A)
【文献】特開2018-14774(JP,A)
【文献】特開2019-047647(JP,A)
【文献】特開2012-175800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/12
H02J 3/18
G05F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統の配電線に設置される自動電圧調整器の送り出し電圧を制御する電圧制御装置であって、
前記配電系統および前記配電線に接続される負荷の電力消費に関連するデータが入力されるデータ入力部と、
前記データ入力部に入力された前記データに基づいて整定値設定方式における整定値を計算する整定値計算部と、
前記整定値計算部で計算された前記整定値に基づいて前記配電線の電圧値を算出し、算出された前記電圧値が前記配電系統の電圧条件を満たしているか否かを判定する制御方式判定部と、
前記制御方式判定部の判定に基づいて制御方式を前記整定値設定方式からタップ直接制御方式に変更することを指令する制御方式変更指令部とを備えたことを特徴とする電圧制御装置。
【請求項2】
前記制御方式判定部は、算出された前記電圧値が前記配電系統の電圧条件を満たしていないと判定した場合に、新たな前記整定値を設定して前記整定値計算部へ出力することを特徴とする請求項1に記載の電圧制御装置。
【請求項3】
前記データ入力部は、前記配電線の複数の位置における電圧値を収集することを特徴とする請求項1または2に記載の電圧制御装置。
【請求項4】
配電系統の配電線に設置される自動電圧調整器と、
前記自動電圧調整器の電圧を制御する請求項1から3のいずれか1項の電圧制御装置とを備えたことを特徴とする電圧制御システム。
【請求項5】
配電系統の配電線に設置される自動電圧調整器の送り出し電圧を制御する電圧制御方法であって、
前記配電系統および前記配電線に接続される負荷の電力消費に関連するデータに基づいて整定値設定方式における整定値を計算する整定値計算ステップと、
前記整定値計算ステップで計算された前記整定値に基づいて前記配電線の電圧値を算出し、算出された前記電圧値が前記配電系統の電圧条件を満たしているか否かを判定する制御方式判定ステップと、
前記制御方式判定ステップの判定に基づいて制御方式を前記整定値設定方式からタップ直接制御方式に変更することを指令する制御方式変更指令ステップとを備えたことを特徴とする電圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電圧制御装置、電圧制御方法および電圧制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
配電系統の電圧は、配電用変電所に設置された負荷時タップ切替変圧器(Load Ratio Control Transformer:以下LRTと記す)、配電線上に設置された自動電圧調整器(Step Voltage Regulator:以下SVRと記す)で制御される。近年、配電線には工場、一般住宅、電気自動車用の急速充電器などの電力を消費する負荷だけでなく、蓄電池、太陽光発電など再生可能エネルギーを利用した電源などの電力を供給する負荷が接続されている。そのため、配電線の電圧変動が大きくなり、配電線の電圧が定格電圧から大きく逸脱する可能性がある。
【0003】
LRT、SVRは、配電系統の電圧低下を補償するためにタップと組み合わされた線路電圧降下補償器(Line Drop Compensator:以下LDCと記す)を有している。このLDCは、SVRから負荷中心点までの線路インピーダンスの整合要素である抵抗およびリアクタンス成分を備えている。そして、LDCは、負荷中心点の電圧が一定になるように、抵抗の抵抗値およびリアクタンス成分のリアクタンス値が設定される。このLDCの抵抗値およびリアクタンス値などは整定値と呼ばれる。そのため、このLDCによる電圧制御方式は、整定値設定方式とも呼ばれる。
【0004】
整定値設定方式においては、配電線の電圧が定格電圧の許容範囲を逸脱しないように適切な整定値が設定される。例えば、従来の整定値設定方式を用いた電圧制御方法として、配電線に設置された計測器から実測データ収集し、この実測データに基づいて予め設定された運用期間において潮流計算を行って配電線の電圧を推定し、その推定された電圧が許容範囲に収まるように整定値を算出する方法が開示されている。そして、次の運用期間においても既に算出された整定値で推定される電圧が許容範囲に収まる場合はその運用期間を延ばしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-70025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電圧制御方法においては、整定値を適切に設定しようとしても推定される電圧が配電線の電圧の許容範囲を逸脱する場合には対応できないという問題があった。そのため、従来の電圧制御装置においては、整定値設定方式で推定される配電線の電圧が許容範囲を逸脱する場合は、新たにSVRを増設する必要があった。
【0007】
本願は、上述の課題を解決するためになされたもので、整定値設定方式で推定される配電線の電圧が許容範囲を逸脱する場合でも、新たにSVRを増設する必要のない電圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の電圧制御装置は、配電系統および配電線に接続される負荷の電力消費に関連するデータが入力されるデータ入力部と、データ入力部に入力されたデータに基づいて整定値設定方式における整定値を計算する整定値計算部と、整定値計算部で計算された整定値に基づいて配電線の電圧値を算出し、算出された電圧値が配電系統の電圧条件を満たしているか否かを判定する制御方式判定部と、制御方式判定部の判定に基づいて制御方式を整定値設定方式からタップ直接制御方式に変更することを指令する制御方式変更指令部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本願の電圧制御装置は、整定値に基づいて配電線の電圧値を算出し、算出された電圧値が配電系統の電圧条件を満たしているか否かを判定する制御方式判定部と、制御方式判定部の判定に基づいて制御方式を整定値設定方式からタップ直接制御方式に変更することを指令する制御方式変更指令部とを備えているので、整定値設定方式で推定される配電線の電圧が許容範囲を逸脱する場合には、制御方式を整定値設定方式からタップ直接制御方式に変更することができる。そのため、本願の電圧制御装置においては、整定値設定方式で推定される配電線の電圧が許容範囲を逸脱する場合でも、新たにSVRを増設する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る電圧制御システムの模式図である。
図2】実施の形態1に係る電圧制御装置の模式図である。
図3】実施の形態1における整定値設定方式の説明図である。
図4】実施の形態1におけるタップ直接制御方式の説明図である。
図5】実施の形態1における電圧制御方法のフローチャートである。
図6】実施の形態1の制御方式判定部における計算例を示す説明図である。
図7】実施の形態2における電圧制御方法のフローチャートである。
図8】実施の形態3に係る電圧制御装置の模式図である。
図9】実施の形態1から3に係る電圧制御装置のハードウェアの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る電圧制御装置および電圧制御システムについて、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電圧制御システムの模式図である。図1に示すように、本実施の形態の電圧制御システム10は、配電系統の配電線1に設置された複数のSVR2と、SVR2を制御する電圧制御装置3とで構成されている。配電線1には、配電用変電所に設けられたLRT4から電力が送られている。配電系統の目標電圧は、例えば6600Vに設定されている。SVR2は、タップと組み合わされたLDCを有している。配電線1には、複数の負荷5が接続されている。複数の負荷5としては、電力を消費する負荷だけでなく電力を供給する負荷も含まれている。電力を消費する負荷としては、例えば工場、一般住宅、電気自動車用の急速充電器などがある。電力を供給する負荷としては、例えば蓄電池、太陽光発電など再生可能エネルギーを利用した電源などがある。また、配電線1には、複数のセンサ内蔵型開閉器6が設置されている。センサ内蔵型開閉器6は、設置された位置の配電線1の電圧を電圧制御装置3に送信する。
【0013】
図2は、本実施の形態に係る電圧制御装置3の模式図である。図2に示すように、本実施の形態の電圧制御装置3は、データ入力部31、整定値計算部32、制御方式判定部33および制御方式変更指令部34を有している。データ入力部31には、外部のデータベース7から必要なデータが入力される。外部のデータベース7は、負荷データベース71および系統データベース72を有している。
【0014】
負荷データベース71には、配電線1に接続されている負荷5に関するデータが保存されている。負荷データベース71に保存されているデータとしては、例えば負荷が工場であれば1週間の時間毎の消費電力などであり、負荷が太陽光発電であれば天気に応じた発電電力などである。系統データベース72には、配電線インピーダンス、配電系統トポロジー、LRT4、SVR2およびセンサ内蔵型開閉器6から送られてくる計測情報、SVR2のタップ幅など仕様、設定されているLDCの整定値などが保存されている。
【0015】
データ入力部31は、データベース7から必要なデータを入手する。データ入力部31は、データベース7から入手したデータを整定値計算部32に出力する。整定値計算部32は、データ入力部31から入力されたデータに基づいて、LDCの整定値を算出する。ここで、LDCの整定値とは、基準電圧、LDCの抵抗値およびリアクタンス値である。制御方式変更指令部34が整定値計算部32により計算されたLDCの整定値をSVR2へ指令した場合、LDCの整定値を受信したSVR2は、常時計測している送り出し電圧および通過電流と抵抗値およびリアクタンス値とから負荷中心点の電圧を推定し、負荷中心点の電圧が基準電圧に近づくように送り出し電圧を制御する。
【0016】
図3は、本実施の形態における整定値設定方式の電圧を示す説明図である。図3において、横軸は2つのSVR2間の配電線の位置、縦軸は配電線の電圧である。図3において、実線は理想の送り出し電圧による電圧分布である。ここで、理想の送り出し電圧とは、SVR2間の電圧降下に対し、電圧上限および下限までの裕度がそれぞれ等しくなる送り出し電圧である。配電線の電圧の許容幅を400V、2つのSVR2の間での最大電圧幅を300V、不感帯幅を198V、LDC推定誤差を50Vとする。2つのSVR2の間での最大電圧幅とは、2つのSVR2の間の配電線1の電圧の最大変動幅である。不感帯幅とは、電圧制御において瞬間的な電圧変動に対して不要な電圧制御動作を行わないよう設けられる電圧であり、通常は目標電圧に対して±1.5%に設定されている。本実施の形態では、配電系統の目標電圧を6600Vとしているので、不感帯幅は198Vとなる。LDC推定誤差とは、理想の送り出し電圧とLDCによって計算された送り出し電圧との誤差であり、2つのSVR2間の設置された負荷5などの条件によって決まる。
【0017】
図3に示すように、2つのSVR2の間での最大電圧幅が300Vの場合、不感帯幅およびLDC推定誤差を考慮すると、整定値計算部32で設定された送り出し電圧では配電線の電圧の許容範囲を逸脱する可能性がある。制御方式判定部33は、整定値計算部32で推定された理論上の送り出し電圧に対して不感帯幅を加えた電圧が配電線の電圧の許容範囲を逸脱するか否かを判定する。制御方式変更指令部34は、制御方式判定部33において整定値計算部32で推定された理論上の送り出し電圧では配電線の電圧の許容範囲を逸脱すると判定された場合には、電圧の制御方式を整定値設定方式からタップ直接制御方式に変更することをSVR2に指令する。なお、制御方式判定部33は、整定値計算部32で推定された理論上の送り出し電圧では配電線の電圧の許容範囲を逸脱しないと判定した場合は、整定値計算部32で算出された整定値である基準電圧、LDCの抵抗値およびリアクタンス値をSVR2に通知する。
【0018】
図4は、本実施の形態におけるタップ直接制御方式の電圧を示す説明図である。図4において、横軸は2つのSVR2間の配電線の位置、縦軸は配電線の電圧である。図4において、実線は理論上の送り出し電圧による電圧分布である。電圧制御装置3は、SVR2にタップ直接制御方式に変更することを指令した場合は、複数のセンサ内蔵型開閉器6で検知された配電線1の電圧に基づいてSVR2のタップを直接制御する。図4に示すように、タップの刻み幅を例えば100Vとした場合、整定値計算部32で推定された理論上の送り出し電圧に対してSVR2はタップ刻み幅の±100Vの幅で電圧を設定することができる。このように制御することで配電線の電圧が許容範囲を逸脱することを防ぐことができる。
【0019】
図5は、本実施の形態における電圧制御方法の手順を示すフローチャートである。電圧制御装置3の整定値計算部32は、ステップS1において、電圧制御の運用期間を設定する。運用期間としては、例えば30分単位、時間単位、日単位、週単位、月単位、年単位などである。また、整定値計算部32は、運用期間に応じて時刻断面に分割する分割時間を設定する機能を有していてもよい。分割時間としては、例えば1分、10分などである。次に、整定値計算部32は、ステップS2において、任意の整定値を設定する。ここで、整定値は、基準電圧、LDCの抵抗値およびリアクタンス値である。なお、ステップS2で設定される整定値は任意ではあるが、データ入力部31に入力されたデータに基づいて決定される。次に、整定値計算部32は、ステップS3において、各時刻断面において、理論上の送り出し電圧Vを算出する。Vは次の(1)式で計算される。
【0020】
=Vref+(R×ir+X×ii) (1)
【0021】
ここで、Vrefは、基準電圧すなわち系統の目標電圧である。RおよびXは、それぞれLDCの抵抗値およびリアクタンス値である。また、irおよびiiは、それぞれ時刻断面tにおける通過電流の実部および虚部である。
【0022】
ここで、SVR間に接続された負荷の数をNとし、nをそれぞれの負荷に対応する1からNまでの任意の整数とする。次に、制御方式判定部33は、ステップS4において、各時刻断面における理論上の送り出し電圧Vに各負荷までの電圧変化幅ΔVnと不感帯幅とを加えた判定電圧Vnを算出する。図6は、本実施の形態の制御方式判定部33における計算例を示す説明図である。図6に示す例では、時刻断面は1分間隔である。irおよびiiは、各時刻断面で変化する。また、SVR間の最大電圧幅Vstも各時刻断面で変化する。Vref、RおよびXは、各時刻断面で一定とする。なお、図6には示していないが、不感帯幅も各時刻断面で一定である。次に、制御方式判定部33は、ステップS5において、全時刻断面において、判定電圧Vnが配線電圧の上限または下限を超過するか否かを判定する。
【0023】
ステップS5において全時刻断面における判定電圧Vnが配線電圧の上限または下限を超過しないと判定された場合(NO)、制御方式判定部33は、ステップS6において、電圧制御方法として整定値設定方式を選択する。一方、ステップS5において全時刻断面における判定電圧Vnが配線電圧の上限または下限を超過すると判定された場合(YES)、制御方式判定部33は、ステップS7において、電圧制御方法としてタップ直接制御方式を選択する。ステップS7において、電圧制御方法としてタップ直接制御方式が選択されたときは、制御方式変更指令部34は、電圧制御方法を整定値設定方式からタップ直接制御方式に変更するようにSVR2に指令する。
【0024】
このように構成された電圧制御装置においては、整定値設定方式で推定される配電線の電圧が許容範囲を逸脱する場合でも、電圧制御方法を整定値設定方式からより大きい電圧変動にも対応できるタップ直接制御方式に変更することができるので、新たにSVRを増設する必要がない。なお、タップ直接制御方式は、整定値設定方式に比べて通信量が多い。本実施の形態の電圧制御装置は、整定値設定方式で推定される配電線の電圧が許容範囲を逸脱しない場合は、通信量の少ない整定値設定方式で配線電圧を制御し、整定値設定方式で推定される配電線の電圧が許容範囲を逸脱した場合のみタップ直接制御方式に変更しているので、通信量の増加も最小限に抑えることができる。さらに、配電線に接続される負荷が増加するなどの系統条件の変化に応じて適切な電圧制御方式に切り替えることができるので、新たにSVRを増設することなく電圧の許容範囲の逸脱を回避することができる。
【0025】
なお、整定値計算部32における整定値の初期値は、過去の実績データ、予測値などでもよい。また、判定電圧を算出するときに不感帯幅を加えているが、それ以外に三相不平衡誤差、計測誤差などを加えてもよい。
【0026】
実施の形態2.
実施の形態2に係る電圧制御装置の構成は、実施の形態1の電圧制御装置の構成と同じである。本実施の形態の電圧制御装置においては、制御方式判定部の動作が実施の形態1と異なっている。
【0027】
図7は、本実施の形態における電圧制御方法の手順を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートにおいて、ステップS1からステップS6までの電圧制御装置の動作は実施の形態1と同じであるため、その説明を省略する。
【0028】
ステップS5において全時刻断面において判定電圧Vnが配線電圧の上限または下限を超過すると判断された場合(YES)、制御方式判定部33は、ステップS8に進む。制御方式判定部33は、ステップS8において、全時刻断面においてVnが配線電圧の上限または下限を超過しないように新たな整定値を探索するか否かを判断する。ステップS8において新たな整定値を探索しないと判断された場合(NO)、制御方式判定部33は、ステップS7において、電圧制御方法としてタップ直接制御方式を選択する。一方、ステップS8において新たな整定値を探索すると判断された場合(YES)、制御方式判定部33は、ステップS9において、新たな整定値を設定して整定値計算部32へ送る。ここで、新たな整定値の決定方法としては、例えば、最適化問題として定式化し、線形計画法、タブーサーチなどのメタヒューリスティックのような探索ロジックを用いる方法を採用することができる。また、ステップS8の新たな整定値を探索しない条件としては、探索回数があらかじめ決められた上限回数に到達した場合、整定値を更新してもVnaの上限または下限からの最大違反量が決められた回数以上連続で改善しなかった場合などが考えられる。なお、新たな整定値の決定方法および新た整定値の探索条件は、これらの方法に限定されない。整定値計算部32は、ステップS3において、新たな整定値を用いて各時刻断面における理論上の送り出し電圧Vを再度算出する。
【0029】
このように構成された電圧制御装置においては、可能な限り整定値設定方式を用いて電圧制御を行うことができるので、通信量の増加をさらに抑えることができる。
【0030】
実施の形態3.
図8は、実施の形態3に係る電圧制御装置の模式図である。本実施の形態に係る電圧制御装置の構成は、実施の形態1の電圧制御装置の構成から整定値計算部を除き、計測データ収集部35が追加されたものである。計測データ収集部35は、センサ内蔵型開閉器6で計測された配電線1の電圧値をリアルタイムまたはある一定の時間間隔毎に収集する。データ入力部31は、計測データ収集部35で収集された配電線1の電圧値をデータベース7から入力されたデータに加えて制御方式判定部33出力する。
【0031】
制御方式判定部33で電圧制御方式を選択する手順は、実施の形態1または実施の形態2と同様である。
【0032】
このように構成された電圧制御装置においては、リアルタイムまたはある一定の時間間隔毎の実際の配電線の電圧に基づいて電圧制御方式を選択しているので、配電線に想定外の電圧変動が発生した場合でも配線電圧の上限または下限を超過することを防ぐことができる。
【0033】
なお、本実施の形態において、計測データ収集部35が収集する配電線の電圧はセンサ内蔵型開閉器6で計測されている。配電線の電圧の計測には必ずしもセンサ内蔵型開閉器を用いる必要はなく、安価な電圧センサなどを用いてもよい。
【0034】
実施の形態1から3に係る電圧制御装置3は、ハードウェアの一例を図9に示すように、プロセッサ100と記憶装置101から構成される。記憶装置101は、図示していないが、ランダムアクセスメモリなどの揮発性記憶装置と、フラッシュメモリなどの不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ100は、記憶装置101から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ100にプログラムが入力される。また、プロセッサ100は、演算結果などのデータを記憶装置101の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0035】
本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0036】
1 配電線、2 SVR、3 電圧制御装置、4 LRT、5 負荷、6 センサ内蔵型開閉器、7 データベース、10 電圧制御システム、31 データ入力部、32 整定値計算部、33 制御方式判定部、34 制御方式変更指令部、35 計測データ収集部、71 負荷データベース、72 系統データベース、100 プロセッサ、101 記憶装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9