(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】かご固定治具
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20241101BHJP
B66B 7/00 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B7/00 K
(21)【出願番号】P 2021129993
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤山 勇太
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-150032(JP,A)
【文献】特開平6-191780(JP,A)
【文献】特開平11-049464(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03502032(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
かごを開閉するかごドアを開閉方向に案内する第1敷居溝と、乗場と昇降路とを開閉可能に仕切る乗場ドアを前記開閉方向に案内する第2敷居溝とを備えるエレベータ装置において、前記かごを前記昇降路に対して固定するためのかご固定治具であって、
前記第1敷居溝に挿入される第1挿入部を含む第1部材と、
前記第2敷居溝に挿入される第2挿入部を含む第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に渡されている渡し部を含む第3部材とを備え、
前記第1挿入部および前記第2挿入部は、前記渡し部に対して同じ方向に突出しており、
前記第3部材は、前記渡し部から前記同じ方向に突出しており、かつ前記かごと前記乗場との間の隙間に挿入される第3挿入部をさらに含む、かご固定治具。
【請求項2】
前記第1部材および前記第2部材は、前記渡し部の延在方向に互いに間隔を空けて配置されており、
前記第3挿入部は、前記延在方向において前記第1挿入部と前記第2挿入部との間に配置されている、請求項1に記載のかご固定治具。
【請求項3】
前記第1部材および前記第2部材の各々は、前記第3部材に対して前記延在方向に相対的に移動するように設けられており、
前記第1挿入部と前記第3挿入部との間の前記延在方向の距離を調整するための第1調整部材と、
前記第2挿入部と前記第3挿入部との間の前記延在方向の距離を調整するための第2調整部材とをさらに備える、請求項2に記載のかご固定治具。
【請求項4】
前記第3部材の前記渡し部に固定されており、前記延在方向に互いに間隔を空けて配置されている第4部材および第5部材をさらに備え、
前記第1部材は、前記第3部材に対して前記延在方向に相対的に移動する際に、前記第4部材と摺動する第1摺動部をさらに含み、
前記第2部材は、前記第3部材に対して前記延在方向に相対的に移動する際に、前記第5部材と摺動する第2摺動部をさらに含み、
前記第1摺動部および前記第2摺動部の各々は、前記渡し部に対して前記同じ方向とは反対方向に配置されている、請求項3に記載のかご固定治具。
【請求項5】
前記第1部材および前記第4部材の一方には、孔軸が前記延在方向に沿って延びる第1貫通孔が形成されており、前記第1部材および前記第4部材の他方には、第1ネジ孔が前記第1貫通孔と同軸上に形成されており、
前記第2部材および前記第5部材の一方には、孔軸が前記延在方向に沿って延びる第2貫通孔が形成されており、前記第2部材および前記第5部材の他方には、第2ネジ孔が前記第2貫通孔と同軸上に形成されており、
前記第1調整部材および前記第2調整部材の各々は、ボルトを含み、
前記第1調整部材の前記ボルトは、前記第1貫通孔に対して前記第1ネジ孔とは反対側に配置されている頭部と、前記第1貫通孔に通されており前記第1ネジ孔と螺合している軸部とを有し、
前記第2調整部材の前記ボルトは、前記第2貫通孔に対して前記第2ネジ孔とは反対側に配置されている頭部と、前記第2貫通孔に通されており前記第2ネジ孔と螺合している軸部とを有している、請求項4に記載のかご固定治具。
【請求項6】
前記第3挿入部の側面に固定されている弾性部をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のかご固定治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、かご固定治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置のかごは、昇降路内を昇降する際に、複数のガイドレールにより案内されて位置決めされている。具体的には、かごには、複数のガイドレールの各々と係合する複数のガイドシューが固定されている。複数のガイドシューの各々は、かごが昇降する際に、複数のガイドレールの各々と摺動する。
【0003】
ガイドシューは、ガイドシューとの摺動によりガイドレールが摩耗しにくいように、ガイドレールと比べて摩耗しやすいように設けられている。そのため、複数のガイドシューの各々は、その摩耗量に応じて、適時に交換される。
【0004】
特開平9-156849号公報には、ガイドシューを交換するための交換治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガイドシューの交換時に、1つのガイドシューがかごおよび1本のガイドレールから取り外されると、かごと当該1本のガイドレールとの間には隙間が生じるため、かごは水平方向に動く。
【0007】
この場合、ガイドレールに対するかごの水平方向の相対位置が定まらない状態において、新たなガイドシューがガイドレールと適切に摺動するように当該ガイドシューをかごに固定する必要があるため、かご、ガイドシュー、およびガイドレールの3者の位置関係を調整する作業に時間を要する。そのため、ガイドシューの交換作業には、作業効率に改善の余地がある。
【0008】
本開示の主たる目的は、エレベータ装置のガイドシューの交換作業の効率を改善し得るかご固定治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るかご固定治具は、かごを開閉するかごドアを開閉方向に案内する第1敷居溝と、乗場と昇降路とを開閉可能に仕切る乗場ドアを開閉方向に案内する第2敷居溝とを備えるエレベータにおいて、かごを昇降路に対して固定するためのかご固定治具である。かご固定治具は、第1敷居溝に挿入される第1挿入部を含む第1部材と、第2敷居溝に挿入される第2挿入部を含む第2部材と、第1部材と第2部材との間に渡されている渡し部を含む第3部材とを備える。第1挿入部および第2挿入部は、渡し部に対して同じ方向に突出している。第3部材は、渡し部から同じ方向に突出しており、かつかごと乗場との間の隙間に挿入される第3挿入部をさらに含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、エレベータ装置のガイドシューの交換作業の効率を改善し得るかご固定治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るかご固定治具が使用され得るエレベータ装置の鉛直方向に直交する断面図である。
【
図2】
図1中の矢印IIーIIから視た断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るかご固定治具の正面図である。
【
図4】
図3に示されるかご固定治具の使用方法の一例において、1つの工程(第1状態)を説明するための断面図である。
【
図5】
図3に示されるかご固定治具の使用方法の一例において、
図4に示される工程後の1つの工程(第2状態)を説明するための断面図である。
【
図6】
図5に示される工程でのかご固定治具とかごおよび乗り場との相対的な位置関係を説明するための、エレベータ装置の鉛直方向に直交する断面図である。
【
図7】本実施の形態に係るかご固定治具の変形例を示す断面図である。
【
図8】本実施の形態に係るかご固定治具の変形例の第1状態を説明するための断面図である。
【
図9】
図3に示されるかご固定治具の第2状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、
図1~
図9では、互いに直交するX方向、Y方向、およびZ方向を有する直交座標系が示されている。Z方向は、鉛直方向に沿った方向である。
【0013】
<エレベータ装置の構成>
エレベータ装置100は、昇降路101、かご110、および複数の乗場201を備える。かご110は、昇降路101内をZ方向に移動(昇降)する。複数の乗場201は、Z方向に並んで配置されている。かご110と各乗場201とは、X方向に並んでいる。
【0014】
昇降路101には、かご110をZ方向に案内する複数のガイドレール120が設けられている。かご110には、複数のガイドレール120の各々と係合し、かご110が昇降する際に各ガイドレール120と摺動する複数のガイドシュー121が固定されている。複数のガイドレール120は、例えばY方向においてかご110を挟むように配置されている。複数のガイドシュー121は、例えばかご110の上部に固定されておりY方向に間隔を空けて配置されている1対のガイドシュー121と、かご110の下部に固定されておりY方向に間隔を空けて配置されている1対のガイドシュー121とを含む。複数のガイドシュー121の各々は、例えばかご110のX方向の中央に固定されている。
【0015】
複数のガイドシュー121の各々は、かご110が繰り返し昇降することに伴う摩耗が複数のガイドレール120の各々と比べて生じ易いように設けられている。かご110が繰り返し昇降することにより、複数のガイドシュー121の各々は摩耗する。
【0016】
図1および
図2に示されるように、エレベータ装置100は、複数の第1敷居溝112と、複数の第2敷居溝212とをさらに備える。
【0017】
複数の第1敷居溝112の各々は、かごドア111をY方向(開閉方向)に案内する。かごドア111は、昇降路101と、昇降路101内を昇降するかご110とを開閉可能に仕切っている。複数の第1敷居溝112の各々は、かご110の居室の底面よりも下方に凹んでおり、Y方向に沿って延びている。複数の第1敷居溝112の各々は、互いに平行に、かつX方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第1敷居溝112の各々は、かご110の外周面のうちX方向を向いた前面110Wと間隔を空けて配置されている。
【0018】
複数の第2敷居溝212の各々は、乗場ドア211をY方向(開閉方向)に案内する。乗場ドア211は、複数の乗場201の各々に設けられており、1つの乗場201と昇降路101とを開閉可能に仕切っている。複数の第2敷居溝212の各々は、乗場201の底面よりも下方に凹んでおり、Y方向に沿って延びている。複数の第2敷居溝212の各々は、互いに平行に、かつX方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第2敷居溝212の各々は、昇降路101の内周面のうち、乗場201に停止しているかご110の前面110Wと対向する壁面201Wと間隔を空けて配置されている。
【0019】
第1敷居溝112および第2敷居溝212の各々は、互いに平行に配置されている。複数の第1敷居溝112のうちかご110に対して最も外側に配置されている1つの第1敷居溝112は、複数の第2敷居溝212のうち乗場201に対して最も外側に配置されている1つの第2敷居溝212と、X方向に間隔を空けて配置されている。第1敷居溝112と第2敷居溝212との間には、隙間300が形成されている。隙間300は、かご110と乗場201との間の隙間であり、昇降路101内に形成されている。隙間300は、Y方向に沿って延びている。
【0020】
複数の第1敷居溝112の各々は、例えばX方向において隙間300とは反対側を向いている第1壁面112Wを有している。複数の第2敷居溝212の各々は、例えばX方向において隙間300とは反対側を向いている第2壁面212Wを有している。第1壁面112Wおよび第2壁面212Wは、互いに逆方向を向いている。
【0021】
ガイドシュー121の交換作業時に、1つのガイドシュー121がかご110およびガイドシュー121から取り外された状態では、かご110と当該1本のガイドレール120との間には隙間301(
図6参照)が生じる。そのため、ガイドシュー121の交換作業時にかご固定治具10が使用されない場合、かご110はZ方向に垂直なXY面内を動く。かご110がX方向に動くと、隙間300のX方向の間隔は伸縮する。つまり、かご固定治具10を使用することなく1つのガイドシュー121がかご110およびガイドシュー121から取り外された状態において形成される隙間300のX方向の間隔は、エレベータ装置100の通常運転状態において形成される隙間300のX方向の間隔に対して伸縮する。以下では、エレベータ装置100の通常運転状態での隙間300を基準隙間300とよぶ。基準隙間300のX方向の間隔は、例えば10mm以上30mm以下である。
【0022】
<かご固定治具の構成>
かご固定治具10は、エレベータ装置100のかご110を昇降路101に対して固定するための治具である。
図3に示されるように、かご固定治具10は、第1部材1、第2部材2、第3部材3、第4部材4、第5部材5、第1調整部材6、および第2調整部材7を備える。
【0023】
図3に示されるように、第1部材1は、第1部1A、第2部1B、および第3部1Cを含む。第1部1Aは、第2部1Bに対してZ方向の下方に突出している。第2部1Bは、第1部1Aに対してX方向に突出している。第3部1Cは第2部1Bに対してZ方向の上方に突出している。第1部1Aおよび第3部1Cは、例えばZ方向に連なっている。第1部1Aは、第1敷居溝112に挿入される第1挿入部を成している。以下では、第1部1Aを第1挿入部1Aとよぶ。第2部1Bは、後述する第4部材4と摺動する第1摺動部を成している。以下では、第2部1Bを第1摺動部1Bとよぶ。第1挿入部1Aは、X方向において第2部1B側を向いている第1面1A1を有している。
【0024】
第1挿入部1Aの第1面1A1は、かご固定治具10の使用時に第1敷居溝112の第1壁面112W(
図4参照)と接触することが予定されている面である。第1挿入部1Aの第1面1A1は、例えば第1壁面112Wと面接触するように設けられている。
【0025】
第1部材1には、第3部1CをX方向に貫通する第1貫通孔1Dが形成されている。第1部材1は、例えばY方向から視てT字形状を有している。
【0026】
図3に示されるように、第2部材2は、第4部2A、第5部2B、および第6部2Cを含む。第4部2Aは、第5部2Bに対してZ方向の下方に突出している。第5部2Bは、第4部2Aに対してX方向に突出している。第6部2Cは第5部2Bに対してZ方向の上方に突出している。第4部2Aおよび第6部2Cは、例えばZ方向に連なっている。第4部2Aは、第2敷居溝212に挿入される第2挿入部を成している。第5部2Bは、後述する第5部材5と摺動する第2摺動部を成している。以下では、第4部2Aを第2挿入部2Aとよぶ。第5部2Bは、後述する第5部材5と摺動する第2摺動部を成している。以下では、第5部2Bを第2摺動部2Bとよぶ。第2挿入部2Aは、X方向において第2部1B側を向いている第2面2A1を有している。
【0027】
第2挿入部2Aの第2面2A1は、かご固定治具10の使用時に第2敷居溝212の第2壁面212W(
図4参照)と接触することが予定されている面である。第2挿入部2Aの第2面2A1は、例えば第2壁面212Wと面接触するように設けられている。
【0028】
第2部材2には、第6部2CをX方向に貫通する第2貫通孔2Dが形成されている。第2部材2は、第1部材1とX方向に間隔を空けて配置されている。第2部材2は、例えばY方向から視てT字形状を有している。
【0029】
第1部材1は、第3部材3、および第3部材3に固定されている第4部材4の各々に対してX方向に相対的に移動可能である。第3部材3および第4部材4に対する第1部材1の相対的な位置は、第1調整部材6によって調整され保持される。第2部材2は、第3部材3、および第3部材3に固定されている第5部材5の各々に対してX方向に相対的に移動可能である。第3部材3および第5部材5に対する第2部材2の相対的な位置は、第2調整部材7によって調整され保持される。第1部材1および第2部材2は、例えばかご固定治具10をY方向から視たときに、互いに対称の関係となるように設けられている。
【0030】
図3に示されるように、第3部材3は、渡し部3Aおよび突出部3Bを含む。渡し部3Aは、第1部材1と第2部材2との間に渡されている。渡し部3Aは、X方向に延びている。渡し部3Aは、X方向において第1挿入部1Aと第2挿入部2Aとの間に配置されている。渡し部3Aは、Z方向において第2部1Bおよび第5部2Bの各々よりも下方に配置されている。渡し部3Aは、X方向の一方の端部3A1、他方の端部3A2、および両端部3A1,3A2間を接続する中央部3A3を有している。渡し部3Aは、基準隙間300に挿入されないように設けられている。
【0031】
突出部3Bは、渡し部3Aの中央部3A3からZ方向の下方に突出している。突出部3Bは、基準隙間300に挿入される第3挿入部を成している。以下では、突出部3Bを第3挿入部3Bとよぶ。
【0032】
第3挿入部3Bは、X方向において渡し部3Aの一方の端部3A1側を向いている第3面3B1と、X方向において渡し部3Aの他方の端部3A2側を向いている第4面3B2とを有している。第3面3B1は、かご固定治具10の使用時に、かご110の前面110Wと接触することが予定されている面である。第3面3B1は、例えばかご110の前面110Wと接触するように設けられている。第3面3B1の少なくとも一部は、第1面1A1と対向するように設けられている。第4面3B2は、かご固定治具10の使用時に、乗場201の壁面201Wと接触することが予定されている面である。第4面3B2は、例えば壁面201Wと接触するように設けられている。第4面3B2の少なくとも一部は、第2面2A1と対向するように設けられている。
【0033】
渡し部3Aの一方の端部3A1のX方向の長さ、すなわち第1面1A1と第3面3B1との間のX方向の最短距離は、第1敷居溝112と基準隙間300との間のX方向の間隔、すなわち第1壁面112Wと前面110Wとの間のX方向の間隔と同等あるいはそれよりも短い。渡し部3Aの他方の端部3A2のX方向の長さ、すなわち第2面2A1と第4面3B2との間のX方向の最短距離は、第2敷居溝212と基準隙間300との間のX方向の間隔、すなわち第2壁面212Wと壁面201Wとの間のX方向の間隔と同等あるいはそれよりも短い。
【0034】
第3部材3を構成する材料は、例えば金属である。第3部材3は、例えばY方向から視てT字形状を有している。
【0035】
第3挿入部3BのX方向の長さ、すなわち第3面3B1と第4面3B2との間のX方向の距離は、基準隙間300のX方向の間隔と等しい。第3挿入部3BのZ方向の長さ、すなわち渡し部3Aに対する突出量は、例えば第1敷居溝112および第2敷居溝212の各々の深さよりも長い。
【0036】
第3挿入部3BのY方向の長さは、特に制限されない。第3挿入部3BのY方向の長さは、例えば基準隙間300のX方向の間隔よりも長い。第3挿入部3BのY方向の長さは、例えば基準隙間300のX方向の間隔と同等あるいはそれよりも短くてもよい。
【0037】
図3に示されるように、第4部材4は、第7部4Aおよび第8部4Bを含む。第4部材4の第7部4Aは、第3部材3の渡し部3Aの上面に固定されている。第7部4Aは、例えば、渡し部3Aの一方の端部3A1および中央部3A3のうちX方向の一方の端部3A1側に位置する一部分の上面に固定されている。第7部4Aの下面は、例えば渡し部3Aの上記上面に溶接されている。第7部4Aの上面は、第1部材1の第1摺動部1Bの下面と摺動するように設けられている。
【0038】
第8部4Bは、第7部4Aおよび第1部材1の第1摺動部1Bの各々よりも上方に突出している。第8部4Bは、第1部材1の第3部1CとX方向に間隔を空けて配置されている。第8部4Bには、第8部4BをX方向に貫通する第1ネジ孔4Cが形成されている。第1ネジ孔4Cは、第3部1Cの第1貫通孔1Dと同軸上に配置されている。第4部材4は、例えばY方向から視てL字形状を有している。
【0039】
図3に示されるように、第5部材5は、第9部5Aおよび第10部5Bを含む。第5部材5の第9部5Aは、第3部材3の渡し部3Aの上面に固定されている。第9部5Aは、例えば、渡し部3Aの他方の端部3A2および中央部3A3のうちX方向の他方の端部3A2側に位置する一部分の上面に固定されている。第9部5Aの下面は、例えば渡し部3Aの上記上面に溶接されている。第9部5Aの上面は、第2部材2の第2摺動部2Bの下面と摺動するように設けられている。
【0040】
第10部5Bは、第9部5Aおよび第2部材2の第2摺動部2Bの各々よりも上方に突出している。第10部5Bは、第2部材2の第6部2CとX方向に間隔を空けて配置されている。第10部5Bには、第10部5BをX方向に貫通する第2ネジ孔5Cが形成されている。第2ネジ孔5Cは、第6部2Cの第2貫通孔2Dと同軸上に配置されている。第5部材5は、例えばY方向から視てL字形状を有している。
【0041】
図3に示されるように、第4部材4および第5部材5は、例えばかご固定治具10をY方向から視たときに、互いに対称の関係となるように設けられている。
【0042】
図3に示されるように、第1調整部材6は、例えばボルトとして構成されている。第1調整部材6は、第1頭部6Aおよび第1軸部6Bを含む。第1頭部6Aおよび第1軸部6Bの各々の中心軸線はX方向に沿っている。第1調整部材6は、第1軸部6Bのみが第1貫通孔1Dおよび第1ネジ孔4Cの各々に挿入されるように設けられている。第1頭部6Aは第1貫通孔1Dおよび第1ネジ孔4Cの各々に挿入されないように設けられている。第1頭部6Aは、第1部材1の第3部1Cに対して第4部材4とは反対側に配置されている。第1軸部6Bは、第1貫通孔1Dに通されて、かつ第1ネジ孔4Cに螺合するように設けられている。第1軸部6BのX方向の長さは、第1部材1の第1摺動部1B、第4部材4の第7部4A、および第3部材3の一方の端部3A1の各々のX方向の長さよりも長い。第1軸部6BのX方向の長さは、第1敷居溝112と基準隙間300との間のX方向の間隔よりも長い。
【0043】
図3に示されるように、第2調整部材7は、例えばボルトとして構成されている。第2調整部材7は、第2頭部7Aおよび第2軸部7Bを含む。第2頭部7Aおよび第2軸部7Bの各々の中心軸線はX方向に沿っている。第2調整部材7は、第2軸部7Bのみが第2貫通孔2Dおよび第2ネジ孔5Cの各々に挿入されるように設けられている。第2頭部7Aは第2貫通孔2Dおよび第2ネジ孔5Cの各々に挿入されないように設けられている。第2頭部7Aは、第2部材2の第6部2Cに対して第5部材5とは反対側に配置されている。第2軸部7Bは、第2貫通孔2Dに通されて、かつ第2ネジ孔5Cに螺合するように設けられている。第2軸部7BのX方向の長さは、第2部材2の第2摺動部2B、第5部材5の第9部5A、および第3部材3の他方の端部3A2の各々のX方向の長さよりも長い。第2軸部7BのX方向の長さは、第2敷居溝212と基準隙間300との間のX方向の間隔よりも長い。
【0044】
図3に示されるように、第1調整部材6および第2調整部材7は、例えばかご固定治具10をY方向から視たときに、互いに対称の関係となるように設けられている。
【0045】
<かご固定治具10の使用方法>
次に、かご固定治具10の使用方法の一例を説明する。エレベータ装置100では、上述した理由により、ガイドシュー121の交換作業が行われる。この交換作業では、まず、1つのガイドシュー121がかご110およびガイドシュー121から取り外された状態が実現される前に、かご固定治具10がエレベータ装置100に固定される。
【0046】
具体的には、
図4に示されるように、第1挿入部1Aが第1敷居溝112に挿入され、第2挿入部2Aが第2敷居溝212に挿入され、かつ第3挿入部3Bが基準隙間300に挿入される。これにより、渡し部3Aの一方の端部3A1の下面がかご110の前面110Wと第1敷居溝112との間の部分の上面と接触し、渡し部3Aの他方の端部3A2の下面が乗場201の壁面201Wと第2敷居溝212との間の部分の上面と接触し、第3挿入部3Bの第3面3B1が前面110Wと接触し、さらに第3挿入部3Bの第4面3B2が壁面201Wに接触した状態(以下、第1状態とよぶ)が実現される。
【0047】
挿入時において、第1調整部材6は、例えば、第1挿入部1Aが第1敷居溝112の第1壁面112Wおよび第1壁面112Wと対向する他の壁面と摺動しないように、第1部材1を第3部材3および第4部材4に対して相対的に位置決めしている。同様に、挿入時において、第2調整部材7は、例えば、第2挿入部2Aが第2敷居溝212の第2壁面212Wおよび第2壁面212Wと対向する他の壁面と摺動しないように、第2部材2を第3部材3および第5部材5に対して相対的に位置決めしている。
【0048】
次に、作業者が第1調整部材6を締めることにより、第1部材1が第1状態の上記位置からX方向の第4部材4側に移動する。同様に、作業者が第2調整部材7を締めることにより、第2部材2が第1状態の上記位置からX方向において第5部材5側に移動する。第1摺動部1Bの下面は、第4部材4の第7部4Aの上面と摺動する。第2摺動部2Bの下面は、第5部材5の第9部5Aの上面と摺動する。これにより、
図5に示されるように、第1挿入部1Aが第1敷居溝112の第1壁面112Wに接触し、かつ第2挿入部2Aが第2敷居溝212の第2壁面212Wに接触した状態(以下、第2状態とよぶ)が実現される。
【0049】
第2状態では、第1挿入部1Aと第3挿入部3Bとがかご110の前面110Wと第1敷居溝112の第1壁面112Wとの間に位置する部分を挟持し、さらに第2挿入部2Aと第3挿入部3Bとが乗場201の壁面201Wと第2敷居溝212の第2壁面212Wとの間に位置する部分を挟持している。その結果、かご固定治具10は、第2状態において、乗場201に対するかご110のX方向およびY方向の相対的な位置を決める。
【0050】
また、第2状態においても、第1状態と同様に、渡し部3Aの一方の端部3A1の下面がかご110の前面110Wと第1敷居溝112との間の部分の上面と接触し、渡し部3Aの他方の端部3A2の下面が乗場201の壁面201Wと第2敷居溝212との間の部分の上面と接触している。さらに、第1摺動部1Bの下面が第4部材4の第7部4Aの上面と接触し、第2摺動部2Bの下面が第5部材5の第9部5Aの上面と接触している。
【0051】
図6に示されるように、上記交換作業では、複数(例えば2つ)のかご固定治具10が使用されてもよい。この場合、複数のかご固定治具10は、Y方向に互いに間隔を空けて配置される。1つのかご固定治具10Aは、Y方向に間隔を空けて配置されている1対のガイドシュー121のうち第1のガイドシュー121Aに近い位置に配置され、他の1つのかご固定治具10Bは、1対のガイドシュー121のうち第2のガイドシュー121Bに近い位置に配置される。
【0052】
なお、上記交換作業では、1つのかご固定治具10のみが使用されてもよい。この場合、1つのかご固定治具10は、1対のガイドシュー121のうち交換されるガイドシュー121に近い位置に配置されるのが好ましい。例えば、上記交換作業で1対のガイドシュー121の各々が交換される場合、はじめに、かご固定治具10が第2のガイドシュー121Bよりも第1のガイドシュー121Aに近い位置に固定され、当該第1のガイドシュー121Aの交換作業が行われる。次に、かご固定治具10が第1のガイドシュー121Aよりも第2のガイドシュー121Bに近い位置に固定され、当該第2のガイドシュー121Bの交換作業が行われる。このようにすれば、かご固定治具10は、一対のガイドシュー121のうち交換されないガイドシュー121を中心とする周方向へのかご110の回転をより効果的に抑制できる。
【0053】
<効果>
かご固定治具10がガイドシュー121の交換時に使用されることにより、上記第2状態が実現され得る。第2状態では、かご固定治具10がかご110を乗場201に対して水平方向に位置決めしているため、1つのガイドシュー121がかご110および1本のガイドレール120から取り外されても、かご110が水平方向に移動しない。そのため、かご固定治具10を用いたガイドシュー121の交換作業では、ガイドレール120に対するかご110の水平方向の相対位置が定められた状態において、新たなガイドシュー121がガイドレール120と適切に摺動するように当該ガイドシュー121をかごに固定できる。その結果、かご固定治具10を用いたガイドシュー121の交換作業では、かご固定治具10を用いないガイドシューの交換作業と比べて、かご110、ガイドシュー121、およびガイドレール120の3者の位置関係を調整する作業に要する時間を大幅に短縮でき、作業効率が大幅に改善され得る。
【0054】
かご固定治具10では、第1部材1および第2部材2の各々は、第3部材3に対してX方向に相対的に移動するように設けられている。第1調整部材6が第1挿入部1Aと第3挿入部3Bとの間のX方向の距離を調整し、第2調整部材7が第2挿入部2Aと第3挿入部3Bとの間のX方向の距離を調整する。このようなかご固定治具10は、第1敷居溝112と隙間300との間のX方向の間隔および第2敷居溝212と隙間300との間のX方向の間隔の少なくともいずれかが異なる複数種のエレベータ装置100に適用可能である。
【0055】
かご固定治具10では、第1調整部材6および第2調整部材7の各々がボルトとして構成されている。第1調整部材6の第1軸部6Bが、第1貫通孔1Dに通されて、かつ第1ネジ孔4Cに螺合するように設けられている。第2調整部材7の第2軸部7Bが、第2貫通孔2Dに通されて、かつ第2ネジ孔5Cに螺合するように設けられている。そのため、作業者は、第1調整部材6を第4部材4に対して締めるあるいは緩めることにより、第1挿入部1Aと第3挿入部3Bとの間のX方向の距離を容易に調整し得る。同様に、作業者は、第2調整部材7を第5部材5に対して締めるあるいは緩めることにより、第2挿入部2Aと第3挿入部3Bとの間のX方向の距離を容易に調整し得る。
【0056】
<変形例>
かご固定治具10は、少なくとも第2状態において他の部材と接触する部分に固定されている弾性部8をさらに備えていてもよい。
図7に示されるように、かご固定治具10は、第3部材3の第3面3B1に固定された弾性部8Aと、第4面3B2に固定された弾性部8Bとを備えていてもよい。弾性部8Aは、第3部材3の第3面3B1と対向しかつ接続されている内面と、かご110の前面110Wと接触することが予定されている外面を有している。弾性部8Bは、第3部材3の第4面3B2と対向しかつ接続されている内面と、乗場201の壁面201Wと接触することが予定されている外面を有している。弾性部8A,8Bを構成する材料は、粘弾性を有する任意の材料であればよいが、例えばシリコンゴムである。弾性部8A,8Bは、第2状態において第3部材3の第3挿入部3Bがかご110および乗場201に対してY方向およびZ方向に滑ることを防止する滑り止め部材として作用し得る。
【0057】
かご固定治具10は、第1挿入部1Aの第1面1A1および第2挿入部2Aの第2面2A1の各々に固定された弾性部をさらに備えていてもよい。また、かご固定治具10は、第3部材3の渡し部3Aの一方の端部3A1および他方の端部3A2の各々の下面に固定された弾性部をさらに備えていてもよい。
【0058】
かご固定治具10の第3挿入部3BのX方向の長さは、基準隙間300のX方向の間隔以下であればよい。
図8および
図9に示されるように、第3挿入部3BのX方向の長さは、基準隙間300のX方向の間隔よりも短くてもよい。この場合、基準隙間300に挿入された第3挿入部3Bの第3面3B1はかご110の前面110Wと間隔を空けて配置され、第4面3B2は乗場201の壁面201Wと間隔を空けて配置される。このようにしても、かご固定治具10は、1つのガイドシュー121がかご110およびガイドシュー121から取り外された状態において、かご110のX方向への移動距離を、第3挿入部3BのX方向の長さと基準隙間300のX方向の間隔との差分以下に制限し得る。その結果、
図8および
図9に示されるかご固定治具10は、第2状態においてかご110のX方向への移動距離が制限されない場合と比較して、エレベータ装置のガイドシューの交換作業の効率を改善し得る。
【0059】
以上のように本開示の実施の形態について説明を行なったが、上述の実施の形態を様々に変形することも可能である。また、本開示の範囲は上述の実施の形態に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 第1部材、1A 第1部(第1挿入部)、1A1 第1面、1B 第2部(第1摺動部)、1C 第3部、1D 第1貫通孔、2 第2部材、2A 第4部(第2挿入部)、2A1 第2面、2B 第5部(第2摺動部)、2C 第6部、2D 第2貫通孔、3 第3部材、3A 渡し部、3A1,3A2 端部、3A3 中央部、3B 突出部(第3挿入部)、3B1 第3面、3B2 第4面、4 第4部材、4A 第7部、4B 第8部、4C 第1ネジ孔、5 第5部材、5A 第9部、5B 第10部、5C 第2ネジ孔、6 第1調整部材、6A 第1頭部、6B 第1軸部、7 第2調整部材、7A 第2頭部、7B 第2軸部、8,8A,8B 弾性部、10,10A,10B かご固定治具、100 エレベータ装置、101 昇降路、110 かご、110W 前面、111 かごドア、112 第1敷居溝、112W 第1壁面、120 ガイドレール、121 ガイドシュー、201 乗場、201W 壁面、211 乗場ドア、212 第2敷居溝、212W 第2壁面、300 基準隙間、301 隙間。