(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】半導体装置、半導体装置の製造方法、および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20241101BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20241101BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241101BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20241101BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20241101BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L23/30 D
H01L29/06 301G
H01L29/91 F
H01L29/91 B
(21)【出願番号】P 2021142277
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中田 洋輔
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-118218(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033216(WO,A1)
【文献】特開2021-093496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 29/872
H01L 23/29
H01L 29/06
H01L 21/329
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流が流れる活性領域であるセル領域、前記セル領域よりも外周側に設けられ耐圧保持時に電界の発生が制限される分離領域、および前記分離領域よりも外周側に設けられたガードリング領域と前記ガードリング領域よりも外周側に設けられ前記耐圧保持時に空乏層が伸びることが制限される余剰領域とを有する終端領域が規定された半導体基板と、
前記分離領域と前記終端領域において前記半導体基板の上面を覆う絶縁層と、
前記セル領域と前記分離領域において前記半導体基板の上面と前記絶縁層の上面の一部に設けられた表面電極と、
前記絶縁層における前記表面電極から露出する部分を覆う防水層と、を備え、
前記防水層は、前記表面電極から離間して
、前記ガードリング領域と前記余剰領域のうち少なくとも前記空乏層が伸びる領域の上側を覆うように設けられた、半導体装置。
【請求項2】
前記防水層は、上面視にて前記絶縁層の端縁よりも内側に収まるように設けられた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記セル領域と、前記分離領域と、前記終端領域とにおいて前記半導体基板の上面を覆う保護膜をさらに備え、
前記保護膜は、前記表面電極と、前記防水層と、前記絶縁層とを覆う、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記防水層は、シリコン窒化膜を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記保護膜は、ポリイミドまたはポリアミドを含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板は、シリコンカーバイドを含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置を製造する半導体装置の製造方法であって、
前記防水層を形成する際、少なくとも2回に分けて成膜する、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体装置を有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記半導体装置を駆動する駆動信号を前記半導体装置に出力する駆動回路と、
前記駆動回路を制御する制御信号を前記駆動回路に出力する制御回路と、
を備えた、電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、半導体装置の製造方法、および電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に実装された半導体素子の終端部から内部に向かって水分が浸入することで、半導体装置の耐圧が低下することが確認されている。この問題を解消するための構造として、例えば特許文献1には、半導体基板の終端領域に設けられた絶縁層と金属電極(表面電極に相当する)に、水分の透過率の低いシリコン窒化膜(防水層に相当する)を被覆し、水分に起因した金属電極の腐食を防止する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば銀焼結接合など、半導体素子への押圧を伴う加圧接合工程で半導体素子が実装される半導体装置では、半導体素子への押圧時に金属電極が変形しやすい。金属電極が変形すると、金属電極の上に乗り上げたシリコン窒化膜の部分において、変形に追従できない薄いシリコン窒化膜が割れ、その割れは終端領域を覆う絶縁層まで広がる。そのため、絶縁層まで広がった割れから水分が浸入し半導体装置の耐圧を低下させるという問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、加圧接合工程で半導体素子が実装される際に、防水層が割れることを抑制し、半導体装置の耐圧低下を抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、電流が流れる活性領域であるセル領域、前記セル領域よりも外周側に設けられ耐圧保持時に電界の発生が制限される分離領域、および前記分離領域よりも外周側に設けられたガードリング領域と前記ガードリング領域よりも外周側に設けられ前記耐圧保持時に空乏層が伸びることが制限される余剰領域とを有する終端領域が規定された半導体基板と、前記分離領域と前記終端領域において前記半導体基板の上面を覆う絶縁層と、前記セル領域と前記分離領域において前記半導体基板の上面と前記絶縁層の上面の一部に設けられた表面電極と、前記絶縁層における前記表面電極から露出する部分を覆う防水層とを備え、前記防水層は、前記表面電極から離間して、前記ガードリング領域と前記余剰領域のうち少なくとも前記空乏層が伸びる領域の上側を覆うように設けられたものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、防水層は表面電極から離間して設けられており、防水層には、防水層の割れ起点となる表面電極の上に乗り上げた部分がないため、加圧接合工程で半導体素子が実装される際に、防水層が割れることを抑制できる。これにより、半導体装置の耐圧低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置が備える半導体素子の終端構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置が備える半導体素子の終端構造に関する電界分布のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図である。
【
図4】実施の形態2に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の各実施の形態で説明される特徴は例示であり、すべての特徴は必ずしも必須ではない。また、以下に示される説明では、複数の実施の形態において同様の構成要素には同じまたは類似する符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。また、以下に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「表」または「裏」などの特定の位置及び方向は、実際の実施時の位置及び方向とは必ず一致しなくてもよい。
【0010】
<実施の形態1>
実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施の形態1に係る半導体装置50(
図3(e)参照)が備える半導体素子10の終端構造を模式的に示す断面図である。
図2は、実施の形態1に係る半導体装置50(
図3(e)参照)が備える半導体素子10の終端構造に関する電界分布のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【0011】
図1に示すように、半導体装置50(
図3(e)参照)が備える半導体素子10は、半導体基板1と、絶縁層11と、表面電極12と、防水層13と、保護膜14とを備えている。
【0012】
半導体基板1は、n型半導体基板であり、セル領域2と、分離領域3と、終端領域6とが規定されている。セル領域2は電流が流れる活性領域であり、セル領域2にはp型半導体部が設けられている。分離領域3は、セル領域2よりも外周側に隣接してセル領域2を覆うように設けられ、耐圧保持時に電界の発生が制限される領域である。また、分離領域3には、p型半導体部が設けられている。
【0013】
終端領域6は、ガードリング領域4と、余剰領域5とを有している。ガードリング領域4は、分離領域3よりも外周側に隣接して分離領域3を覆うように設けられ、ガードリング領域4には、離散的な複数のp型半導体部が設けられている。
【0014】
余剰領域5は、ガードリング領域4よりも外周側に隣接してガードリング領域4を覆うように設けられている。余剰領域5は、n型半導体で構成され、耐圧保持時に空乏層が伸びることが制限される領域である。
【0015】
セル領域2には、例えば、図示しないダイオードが内蔵された半導体スイッチング素子、および、ダイオードの少なくとも1つが配置されている。以下では、セル領域2にはダイオードが内蔵された半導体スイッチング素子が配置されている構成を例にして説明する。そのような構成では、半導体スイッチング素子がオン状態のときにセル領域2が通電し、半導体スイッチング素子がオフ状態のときに分離領域3と終端領域6が耐圧を保持する。
【0016】
半導体基板1は、シリコンカーバイドを主たる材料として構成されたn型半導体で形成されている。p型半導体部は、例えば、シリコンカーバイドを主たる材料として構成された半導体にアルミをイオン注入して拡散することで、形成することができる。
【0017】
絶縁層11は、分離領域3と終端領域6において半導体基板1の上面を覆うように設けられている。具体的には、絶縁層11は、上面視にて分離領域3および終端領域6の端縁部分を除く領域において半導体基板1の上面に設けられている。
【0018】
表面電極12は、セル領域2と分離領域3において半導体基板1の上面と絶縁層11の上面の一部に設けられている。具体的には、表面電極12は、セル領域2と分離領域3において半導体基板1の上面の一部と、分離領域3において絶縁層11の上面の一部に設けられている。また、表面電極12は、半導体基板1の上面から絶縁層11の上面の一部に跨るように設けられている。
【0019】
防水層13は、絶縁層11における表面電極12から露出する部分を覆うように、絶縁層11における表面電極12から露出する部分の上面に設けられている。また、防水層13は、表面電極12の上に乗り上げないように、表面電極12から離間して設けられている。すなわち、防水層13は、加圧接合工程の際に半導体素子10が押圧されたときに殆ど変形しない絶縁層11の上面のみに形成されている。
【0020】
保護膜14は、表面電極12の一部と、防水層13と、絶縁層11とを覆うように、セル領域2の一部と、分離領域3と、終端領域6とにおいて半導体基板1の上面に設けられている。
【0021】
図2に示すように、半導体素子10に電圧を印可した際、セル領域2から外周側に向かって空乏層Dが伸びていくが、このとき分離領域3では電界は発生せず、離散的な複数のp型半導体が設けられたガードリング領域4で電界は発生する。ガードリング領域4からさらに外周側に位置する余剰領域5では空乏層Dが伸びたところまで電界は発生する。基本的には、余剰領域5は、実際の使用耐圧において空乏層Dが伸びると想定される長さよりも長く設けられている。つまり、余剰領域5では途中から電界は発生しなくなる。
【0022】
そのため、ガードリング領域4と余剰領域5のうち少なくとも空乏層Dが伸びる領域に、水分が浸入することを抑制できれば、半導体素子10は十分な効果を発揮することができる。これにより、防水層13を表面電極12から離間させたとしても、半導体素子10は十分な効果を発揮することができるため、半導体素子10の信頼性を確保することができる。
【0023】
絶縁層11は、例えば、シリコン酸化膜を主たる材料として構成され、保護膜14は、例えば、ポリイミドまたはポリアミドを主たる材料として構成されている。また、防水層13は、例えば、シリコン窒化膜を主たる材料として構成されている。シリコン窒化膜に若干の導電性を与えて、ガードリング領域4の電界分布を平準化する手法が採られることもあるが、本実施の形態における防水を目的としたシリコン窒化膜は、導電性を持っていない方が望ましい。
【0024】
防水層13を形成する際、例えば、少なくとも2回に分けて成膜すると、防水層13の防水機能をさらに向上させることができる。これは、1回目の成膜時にピンホールが発生しても、2回目以降の成膜時にピンホールが埋まるからである。
【0025】
図1に示すように、防水層13の一端側は、半導体基板1の分離領域3において表面電極12から離間する箇所に対向し、防水層13の他端側は、半導体基板1の余剰領域5に対向している。このように、防水層13は、空乏層Dが伸びる方向の端を含む領域に対向する絶縁層11の部分を覆うことで、高電界部に水分が浸入することを抑制できるため、THB(Temperature Humidity Bias)試験における寿命を向上させることができる。ここで、空乏層Dが伸びる方向とは、
図1における右方向である。なお、防水層13の一端側は、
図2において双方向の矢印15で示された範囲内で、表面電極12から離間させることが可能である。
【0026】
また、防水層13は、上面視にて絶縁層11の端縁よりも内側に収まるように設けられている。防水層13が上面視にて絶縁層11の端縁からはみ出ている場合、防水層13が絶縁層11の端縁の段差に乗り上げることで、局所的に防水層13が薄くなる箇所が生じる。加圧接合工程で半導体素子10が実装される際に、防水層13が薄くなる箇所が割れの起点となるが、防水層13が上面視にて絶縁層11の端縁よりも内側に収まっているため、防水層13が薄くなる箇所が生じず、防水層13における加圧接合時の割れの起点が発生することを回避できる。
【0027】
次に、
図3を用いて、半導体装置50の製造工程について説明する。
図3(a)~(e)は、実施の形態1に係る半導体装置50の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0028】
半導体素子10について高温で動作させたときの信頼性を高めるために、焼結接合により半導体素子10を接合する場合を考える。まず、
図3(a)に示すように、絶縁層16aの裏面と表面にそれぞれ回路パターン16b,16cが設けられた絶縁基板16を準備し、回路パターン16cの上面に接合材17を配置する。接合材17として、例えば銀または銅を主たる材料として構成された接合材が用いられる。
【0029】
次に、
図3(b)に示すように、絶縁基板16上に接合材17を介して半導体素子10を載置し、後の工程である加圧接合工程では高温環境下で圧力をかけて焼結接合が行われる。
【0030】
図3(c)に示すように、加圧接合工程において半導体素子10の損傷を防止するために、加圧治具18と半導体素子10との間に、テフロン(登録商標)シートなどの緩衝材19が設けられる。
【0031】
図3(d)に示すように、加圧接合工程において焼結接合により絶縁基板16と半導体素子10との電気的および熱的接続を行った後、
図3(e)に示すように、半導体素子10の表面の電極(図示せず)にワイヤボンド21を接続することで、大電流通電を行うことができる。
【0032】
そして、外部との電気的接続を行うための端子(図示せず)が一体形成されたケース20を回路パターン16cに接合する。ケース20の内部にゲルなどの封止材22を充填し、半導体素子10の周囲を封止材22で被覆することで、防汚性を高めた半導体装置50が完成する。
【0033】
次に、防水層13が表面電極12に乗り上げている場合の問題点と、実施の形態1に係る半導体装置50の効果について説明する。
【0034】
半導体装置50に対して高湿の条件下で高バイアス電圧が印可された状態が維持されたとき、電界が発生しているガードリング領域4に、水分が封止材22を透過して外部環境から半導体素子10の表面に到達することがある。
【0035】
シリコンを主たる材料として構成された半導体素子と比べて、シリコンカーバイドを主たる材料として構成された半導体素子10は、一般的にガードリング領域4の幅が狭く、絶縁層11上に発生する電界ピークが高い。そのため、ガードリング領域4では水分が移動しやすく、水分の透過が発生したときにp型半導体部に変質を起こしやすい。ガードリング領域4に対向する絶縁層11の部分に到達した水分が絶縁層11を透過すると、ガードリング領域4のp型半導体部が変質し、半導体装置50の耐圧を低下させるという問題があった。
【0036】
この問題を解消するためには、シリコン酸化膜よりも水分を透過させ難いシリコン窒化膜を主たる材料として構成された防水層13で絶縁層11を保護する方法があった。しかし、加圧接合工程において半導体素子10の表面への押圧により半導体素子10が実装された場合、表面電極12など圧力変形しやすい材料の上に乗り上げた防水層13が割れ、その割れが終端領域6を覆う絶縁層11まで広がる。そのため、絶縁層11まで広がった割れから水分が浸入し半導体装置50の耐圧を低下させるという問題があった。
【0037】
これに対して、実施の形態1に係る半導体装置50は、電流が流れる活性領域であるセル領域2、セル領域2よりも外周側に設けられ耐圧保持時に電界の発生が制限される分離領域3、および分離領域3よりも外周側に設けられたガードリング領域4とガードリング領域4よりも外周側に設けられ耐圧保持時に空乏層Dが伸びることが制限される余剰領域5とを有する終端領域6が規定された半導体基板1と、分離領域3と終端領域6において半導体基板1の上面を覆う絶縁層11と、セル領域2と分離領域3において半導体基板1の上面と絶縁層11の上面の一部に設けられた表面電極12と、絶縁層11における表面電極12から露出する部分を覆う防水層13とを備え、防水層13は、表面電極12から離間して設けられている。
【0038】
したがって、防水層13は表面電極12から離間して設けられており、防水層13には、防水層13の割れ起点となる表面電極12の上に乗り上げた部分がないため、加圧接合工程で半導体素子10が実装される際に、防水層13が割れることを抑制できる。これにより、半導体装置50の耐圧低下を抑制することができる。以上より、半導体装置50の耐久性を向上させることが可能となる。
【0039】
また、防水層13は、上面視にて絶縁層11の端縁よりも内側に収まるように設けられている。したがって、防水層13が薄くなる箇所が生じず、防水層13における加圧接合時の割れの起点が発生することを回避できる。これにより、絶縁層11の段差を起点として防水層13が割れることを抑制できる。
【0040】
また、半導体素子10は、セル領域2と、分離領域3と、終端領域6とにおいて半導体基板1の上面を覆う保護膜14をさらに備え、保護膜14は、表面電極12と、防水層13と、絶縁層11とを覆っている。したがって、加圧接合工程の際に防水層13および絶縁層11が破損することを抑制できる。
【0041】
また、防水層13は、シリコン窒化膜を含むため、防水層13の防水機能をさらに向上させることができる。
【0042】
また、保護膜14は、ポリイミドまたはポリアミドを含むため、加圧接合工程の際に防水層13および絶縁層11よりも変形しやすく、保護膜14の変形により半導体素子10への押圧に対する応力を吸収することが可能となる。これにより、防水層13および絶縁層11が割れることを抑制できる。
【0043】
また、防水層13を形成する際、少なくとも2回に分けて成膜するため、1回目の成膜時にピンホールが発生しても、2回目以降の成膜時にピンホールが埋まることから、防水層13の防水機能をさらに向上させることができる。
【0044】
<実施の形態2>
本実施の形態は、上述した実施の形態1に係る半導体装置50を電力変換装置に適用したものである。実施の形態1に係る半導体装置50の適用は特定の電力変換装置に限定されるものではないが、以下、実施の形態2として、三相のインバータに実施の形態1に係る半導体装置50を適用した場合について説明する。
【0045】
図4は、実施の形態2に係る電力変換装置200を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【0046】
図4に示す電力変換システムは、電源100、電力変換装置200、負荷300から構成される。電源100は、直流電源であり、電力変換装置200に直流電力を供給する。電源100は種々のもので構成することが可能であり、例えば、直流系統、太陽電池、蓄電池で構成することができるし、交流系統に接続された整流回路やAC/DCコンバータで構成することとしてもよい。また、電源100を、直流系統から出力される直流電力を所定の電力に変換するDC/DCコンバータによって構成することとしてもよい。
【0047】
電力変換装置200は、電源100と負荷300の間に接続された三相のインバータであり、電源100から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷300に交流電力を供給する。電力変換装置200は、
図4に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201の各スイッチング素子を駆動する駆動信号を出力する駆動回路202と、駆動回路202を制御する制御信号を駆動回路202に出力する制御回路203とを備えている。
【0048】
負荷300は、電力変換装置200から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷300は特定の用途に限られるものではなく、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、鉄道車両、エレベーター、もしくは、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0049】
以下、電力変換装置200の詳細を説明する。主変換回路201は、スイッチング素子と還流ダイオードを備えており(図示せず)、スイッチング素子がスイッチングすることによって、電源100から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷300に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に係る主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのスイッチング素子とそれぞれのスイッチング素子に逆並列された6つの還流ダイオードから構成することができる。主変換回路201の各スイッチング素子には、上述した実施の形態1に係る半導体装置50を適用する。6つのスイッチング素子は2つのスイッチング素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷300に接続される。
【0050】
駆動回路202は、主変換回路201のスイッチング素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のスイッチング素子の制御電極に供給する。具体的には、後述する制御回路203からの制御信号に従い、スイッチング素子をオン状態にする駆動信号とスイッチング素子をオフ状態にする駆動信号とを各スイッチング素子の制御電極に出力する。スイッチング素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、スイッチング素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はスイッチング素子の閾値電圧以下の電圧信号(オフ信号)となる。
【0051】
制御回路203は、負荷300に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のスイッチング素子を制御する。具体的には、負荷300に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各スイッチング素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてスイッチング素子のオン時間を変調するPWM制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきスイッチング素子にはオン信号を、オフ状態となるべきスイッチング素子にはオフ信号が出力されるよう、駆動回路202に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路202は、この制御信号に従い、各スイッチング素子の制御電極にオン信号又はオフ信号を駆動信号として出力する。
【0052】
本実施の形態に係る電力変換装置200では、主変換回路201のスイッチング素子として実施の形態1に係る半導体装置50を適用するため、加圧接合工程で半導体素子10を実装した場合でも、水分透過率の低い防水層13が割れることを抑制し、半導体装置50の耐圧低下を抑制することができる。これにより、電力変換装置200の信頼性が低下することを抑制できる。
【0053】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに実施の形態1に係る半導体装置50を適用する例を説明したが、実施の形態1に係る半導体装置50の適用は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルやマルチレベルの電力変換装置であっても構わないし、単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに実施の形態1に係る半導体装置50を適用しても構わない。また、直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータやAC/DCコンバータに実施の形態1に係る半導体装置50を適用することも可能である。
【0054】
また、実施の形態1に係る半導体装置50を適用した電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機やレーザー加工機、又は誘導加熱調理器や非接触給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムや蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0055】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 半導体基板、2 セル領域、3 分離領域、4 ガードリング領域、5 余剰領域、6 終端領域、11 絶縁層、12 表面電極、13 防水層、14 保護膜、50 半導体装置、200 電力変換装置、201 主変換回路、202 駆動回路、203 制御回路、D 空乏層。