(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 13/54 20060101AFI20241101BHJP
H01T 13/20 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 E
(21)【出願番号】P 2021154170
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 大祐
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-096089(JP,A)
【文献】特開2015-113765(JP,A)
【文献】特開2020-177745(JP,A)
【文献】特開2009-270539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
H01T 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(51)が形成されており、
上記噴孔の内周面(511)と上記プラグカバーの内壁面(52)との間の内側角部(53)には、噴孔軸(51L)側に凸の状態にて湾曲した角部曲面(531)が形成され、
上記内側角部の位置によって、上記角部曲面の弧の長さが異なっている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
角度が最小の上記内側角部は、角度が最大の上記内側角部よりも、上記角部曲面の弧の長さが長い、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記噴孔は、プラグ軸方向(Z)から見て、上記噴孔軸が、プラグ径方向に対して傾斜している、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(51)が形成されており、上記噴孔の内周面(511)と上記プラグカバーの内壁面(52)との間の内側角部(53)には、噴孔軸(51L)側に凸の状態にて湾曲した角部曲面(531)が形成され、上記内側角部の位置によって、上記角部曲面の弧の長さが異なっている、内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記ハウジングに取り付ける前の上記プラグカバーに対し、上記噴孔を開口する噴孔形成工程と、
該噴孔形成工程の後に、上記内側角部を、研磨材を含有する研磨流体(F)によって研磨し、上記角部曲面を形成する研磨工程と、を有し、
上記研磨工程においては、上記研磨流体を噴出させる噴出ポート(111)を備えた噴出治具(11)を、上記プラグカバーの基端側開口端に取り付け、上記プラグカバーの上記内壁面のうち上記副燃焼室の外周面に対応する部分に向けて、上記研磨流体を上記噴出治具から噴出させると共に、上記プラグカバーと上記噴出治具とによって囲まれた内側空間(501)から、上記噴孔を介して上記研磨流体を外部へ排出することによって、上記内側角部を研磨する、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項5】
上記噴出治具は先端側に突出した凸部(112)を有し、上記研磨工程においては、該凸部の外周側であって上記プラグカバーの内周側に、上記内側空間が形成されると共に、上記噴孔は上記内側空間に開口している、請求項4に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項6】
上記噴孔は、プラグ軸方向(Z)から見て、上記噴孔軸が、プラグ径方向に対して傾斜しており、該噴孔は、該噴孔を介して上記副燃焼室に気流が導入されることによって該副燃焼室にスワール流が生じるように形成されており、
上記研磨工程において、上記噴出治具は、上記内側空間において、上記研磨流体がプラグ周方向に沿って流動するように、上記研磨流体を噴出させ、プラグ軸方向から見て、該研磨流体の流動方向は、上記スワール流に沿う方向である、請求項4又は5に記載の内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えたスパークプラグが知られている。当該スパークプラグにおいて、副燃焼室を覆うプラグカバーには、複数の噴孔が形成されている。これにより、噴孔を介して副燃焼室から主燃焼室に燃焼ガスを噴出させ、主燃焼室の混合気を燃焼させようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグにおいて、噴孔の内周面とプラグカバーの内壁面との間の内側角部の一部は鋭角となっている。それゆえ、燃焼ガスが噴孔を介して副燃焼室から主燃焼室に噴出する際、燃焼ガスが噴孔の内周面から剥離するおそれがある。そのため、主燃焼室に噴出する燃焼ガスの勢いが弱くなるおそれがある。そのため、着火性向上の観点から、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(51)が形成されており、
上記噴孔の内周面(511)と上記プラグカバーの内壁面(52)との間の内側角部(53)には、噴孔軸(51L)側に凸の状態にて湾曲した角部曲面(531)が形成され、
上記内側角部の位置によって、上記角部曲面の弧の長さが異なっている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【0007】
本発明の他の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる複数の噴孔(51)が形成されており、上記噴孔の内周面(511)と上記プラグカバーの内壁面(52)との間の内側角部(53)には、噴孔軸(51L)側に凸の状態にて湾曲した角部曲面(531)が形成され、上記内側角部の位置によって、上記角部曲面の弧の長さが異なっている、内燃機関用のスパークプラグ(1)を製造する方法であって、
上記ハウジングに取り付ける前の上記プラグカバーに対し、上記噴孔を開口する噴孔形成工程と、
該噴孔形成工程の後に、上記内側角部を、研磨材を含有する研磨流体(F)によって研磨し、上記角部曲面を形成する研磨工程と、を有し、
上記研磨工程においては、上記研磨流体を噴出させる噴出ポート(111)を備えた噴出治具(11)を、上記プラグカバーの基端側開口端に取り付け、上記プラグカバーの上記内壁面のうち上記副燃焼室の外周面に対応する部分に向けて、上記研磨流体を上記噴出治具から噴出させると共に、上記プラグカバーと上記噴出治具とによって囲まれた内側空間(501)から、上記噴孔を介して上記研磨流体を外部へ排出することによって、上記内側角部を研磨する、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【発明の効果】
【0008】
上記スパークプラグにおいて、内側角部には角部曲面が形成されている。それゆえ、噴孔を介して副燃焼室から主燃焼室に噴出する燃焼ガスが、噴孔の内周面から剥離しにくい。それゆえ、噴孔を介して、主燃焼室に燃焼ガスを勢いよく噴出させることができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0009】
上記スパークプラグの製造方法は、内側角部を研磨流体によって研磨し、角部曲面を形成する研磨工程を有する。それゆえ、内側角部に角部曲面を有するスパークプラグを効率的に製造することができる。その結果、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを効率的に製造することができる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面相当図。
【
図3】実施形態1における、内側角部の角度を示す、噴孔付近の拡大断面図。
【
図4】実施形態1における、角部曲面の弧の長さを示す、噴孔付近の拡大断面図。
【
図5】実施形態1における、噴出治具から研磨流体を噴出する様子を示す断面図であって、
図6のV-V線矢視断面相当図。
【
図8】実施形態1における、スパークプラグを取り付けた内燃機関の断面図。
【
図9】比較形態1における、噴出治具から研磨流体を噴出する様子を示す断面図であって、
図10のIX-IX線矢視断面相当図。
【
図11】実施形態2における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図12のXI-XI線矢視断面相当図。
【
図13】実施形態2における、長さD1と長さD2とを示す、噴孔付近の拡大断面図。
【
図14】実施形態2における、各部位の長さを示す、噴孔付近の拡大断面図。
【
図15】実施形態2における、圧縮行程において副燃焼室に形成されたスワール流の向きを説明する、プラグ軸方向から見た説明図。
【
図16】実施形態2における、噴出治具から研磨流体を噴出する様子を示す断面図であって、
図18のXVI-XVI線矢視断面相当図。
【
図18】実施形態2における、研磨流体の流動方向を説明する、プラグ軸方向から見た断面説明図であって、
図16のXVIII-XVIII線矢視断面相当図。
【
図19】実験例1における、D3/D4の値と流量係数との関係を示すグラフ。
【
図20】比較形態2における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図21のXX-XX線矢視断面相当図。
【
図22】実験例2における、比較形態2のスパークプラグの噴孔から燃焼ガスが噴出したときの解析図。
【
図23】実験例2における、実施形態2のスパークプラグの噴孔から燃焼ガスが噴出したときの解析図。
【
図24】実施形態3における、噴出治具から研磨流体を噴出する様子を示す断面図。
【
図25】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図。
【
図26】実施形態4における、噴出治具から研磨流体を噴出する様子を示す断面図。
【
図27】実施形態5における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法に係る実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1、
図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。
【0013】
プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる複数の噴孔51が形成されている。噴孔51の内周面511とプラグカバー5の内壁面52との間の内側角部53には、噴孔軸51L側に凸の状態にて湾曲した角部曲面531が形成されている。内側角部53の位置によって、角部曲面531の弧の長さが異なっている。
【0014】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。
図8に示すごとく、ハウジング2の外周面に形成したネジ部21を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。
【0015】
内燃機関10は、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。また、内燃機関10には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。
【0016】
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室101に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、
図1、
図2に示すごとく、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。
【0017】
図8に示すごとく、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室101とを連通させている。
【0018】
本形態において、プラグカバー5は、
図1に示すごとく、周壁部54と底壁部55と角部56とを有する。周壁部54は、副燃焼室50の外周側の一部を覆う略円筒形状の部分である。底壁部55は、副燃焼室50の先端側を覆う部分である。角部56は、周壁部54の先端と底壁部55の外周とを曲面状に繋ぐ部分である。周壁部54の基端部は、ハウジング2の先端部に接合されている。噴孔51は、角部56に形成されている。
【0019】
噴孔51は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。噴孔51は、噴孔軸51Lに直交する断面形状が略円形状となるように形成されている。また、本形態において、噴孔51は、
図1、
図2に示すごとく、噴孔軸51Lが、実質的にプラグ中心軸Cを通過するように形成されている。
【0020】
噴孔51の内側開口部512の周囲には、内側角部53が、内側開口部512に隣接するように形成されている。本形態においては、内側開口部512の周囲において、より基端側に位置する内側角部53ほど、角度が小さくなっている。ここで、内側角部53の角度は、
図3に示すごとく、噴孔軸51Lを含む断面において、噴孔51の内周面511の延長線511Lと、プラグカバー5の内壁面52の延長線52Lとが互いに交差する角度を意味する。
【0021】
内側角部53の最小の角度を角度θ1とし、内側角部53の最大の角度を角度θ2とする。本形態においては、
図3に示すごとく、噴孔軸51Lを含むと共にZ方向に沿った断面において、噴孔軸51Lよりも基端側の内側角部53の角度が、角度θ1となっており、噴孔軸51Lよりも先端側の内側角部53の角度が、角度θ2となっている。本形態において、角度θ1は鋭角である。
【0022】
また、内側角部53には、角部曲面531が形成されている。角部曲面531は、内側開口部512に隣接するように形成されている。本形態において、角部曲面531は、内側開口部512の周囲の全体において、内側開口部512に隣接するように形成されている。
【0023】
また、角度が最小の内側角部53は、角度が最大の内側角部53よりも、角部曲面531の弧の長さが長い。ここで、角部曲面531の弧の長さは、噴孔軸51Lを含む断面における、角部曲面531の輪郭線の長さを意味する。
【0024】
つまり、本形態においては、
図4に示すごとく、噴孔軸51Lを含むと共にZ方向に沿った断面において、角度が最小の内側角部53に形成された角部曲面531の輪郭線の長さD1は、角度が最大の内側角部53に形成された角部曲面531の輪郭線の長さD2よりも長くなっている。
【0025】
本形態において、内側角部53は、角度が小さいほど、角部曲面531の弧の長さが長くなっている。
【0026】
また、本形態において、接地電極6は、
図1、
図2に示すごとく、プラグカバー5に固定されている。接地電極6は、
図1に示すごとく、プラグカバー5に固定された固定端部から基端側に向けて、副燃焼室50に突出している。
【0027】
また、中心電極4の先端部には、チップ41が接合されている。そして、チップ41と接地電極6との間に放電ギャップGが形成されている。本形態において、放電ギャップGは、中心電極4と接地電極6とが、互いにプラグ径方向に対向することにより、形成されている。チップ41は、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
【0028】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1の製造方法は、噴孔形成工程と研磨工程とを有する。噴孔形成工程においては、ハウジング2に取り付ける前のプラグカバー5に対し、噴孔51を開口する。研磨工程においては、噴孔形成工程の後に、内側角部53を、研磨材を含有する研磨流体Fによって研磨し、角部曲面531を形成する。
【0029】
研磨工程においては、
図5に示すごとく、研磨流体Fを噴出させる噴出ポート111を備えた噴出治具11を、プラグカバー5の基端側開口端に取り付ける。そして、プラグカバー5の内壁面52のうち副燃焼室50の外周面に対応する部分に向けて、研磨流体Fを噴出治具11から噴出させる。そして、プラグカバー5と噴出治具11とによって囲まれた内側空間501から、噴孔51を介して研磨流体Fを外部へ排出することによって、内側角部53を研磨する。
【0030】
噴孔形成工程においては、例えば、パンチを用いたプレス加工、又はドリルによる切削加工によって、ハウジング2に取り付ける前のプラグカバー5に対し噴孔51を開口する。そして、プラグカバー5に噴孔51を開口することにより、内側角部53が形成される。
【0031】
また、研磨工程においては、研磨流体Fに対し、例えば、数メガパスカルの圧力をかけることにより、内側空間501内に研磨流体Fを噴出させると共に、噴孔51を介して研磨流体Fを外部に排出させる。
【0032】
研磨流体Fに含有される研磨材は、例えば、酸化ケイ素からなる。そして、研磨流体Fは、例えば、流体媒体としてのオイルに、酸化ケイ素等からなる研磨材を添加したものとすることができる。
【0033】
また、噴出治具11は、プラグカバー5の基端側開口端の全体を覆うように、プラグカバー5に対し、取り付けられている。つまり、噴出治具11は、プラグカバー5の基端側開口端を塞ぐように、取り付けられている。
【0034】
本形態において、噴出治具11は、内壁面52における噴孔51の基端側に向けて、研磨流体Fを噴出させる。つまり、噴出治具11には、
図7に示すごとく、噴孔51の数に合わせて、4つの噴出ポート111が形成されている。そして、4つの噴出ポート111は、
図5、
図6に示すごとく、それぞれ、別々の噴孔51の基端側に向けて研磨流体Fを噴出する。
【0035】
また、Z方向から見たとき、噴出ポート111の開口部と噴孔51の内側開口部512とが互いに重なるように、プラグカバー5に対し噴出治具11が取り付けられている(図示略)。
【0036】
また、噴出治具11は先端側に突出した凸部112を有する。研磨工程においては、凸部112の外周側であってプラグカバー5の内周側に、内側空間501が形成される。また、噴孔51は内側空間501に開口している。
【0037】
本形態において、凸部112は、
図5に示すごとく、Z方向における、噴出ポート111の開口部の位置から、先端側に突出している。また、凸部112は、Z方向における、プラグカバー5の基端の位置から、先端側に突出している。凸部112は、先端側に向かうほど縮径するように、形成されている。
【0038】
本形態において、凸部112の先端面は、底壁部55の内壁面52と当接している。つまり、内側空間501は、環状に形成されている。
【0039】
また、噴出ポート111の開口部は、プラグ径方向において、凸部112よりも外側に形成されている。
【0040】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1において、内側角部53には角部曲面531が形成されている。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50から主燃焼室に噴出する燃焼ガスが、噴孔51の内周面511から剥離しにくい。それゆえ、噴孔51を介して、主燃焼室に燃焼ガスを勢いよく噴出させることができる。その結果、着火性を向上させることができる。
【0041】
本形態のスパークプラグ1は、放電ギャップGに放電を生じさせることにより、副燃焼室50内の混合気を着火させ、燃焼ガスを生じさせる。そして、副燃焼室50内にて生じた燃焼ガスを、噴孔51を介して、主燃焼室に噴出させる。これにより、主燃焼室に火炎を伝播させて混合気を燃焼させる。ここで、燃焼ガスは、常温の空気と比較し、粘度が高くなりやすい。そのため、仮に、内側角部が角部曲面を有さない場合、角度が鋭角となった内側角部を起点として、燃焼ガスが噴孔の内周面から剥離するおそれがある。それゆえ、主燃焼室に噴出する燃焼ガスの勢いが弱くなりやすく、主燃焼室内での着火範囲が狭くなりやすい。一方、本形態においては、内側角部53に角部曲面531が形成されている。それゆえ、燃焼ガスは、噴孔51の内周面511から剥離しにくい。そのため、燃焼ガスを主燃焼室に勢いよく噴出させることができる。それゆえ、主燃焼室内での着火範囲が広がることにより、燃焼速度が速くなりやすい。その結果、着火性を向上させることができると共に、燃費の向上も期待できる。
【0042】
また、内側角部53の位置によって、角部曲面531の弧の長さが異なっている。それゆえ、内側角部53全体において、角部曲面531の弧の長さが同じ場合と比べ、研磨加工量及び研磨時間を少なくしやすい。つまり、燃焼ガスの噴出方向に応じて、内側角部53における角部曲面531の弧の長さを異ならせることで、燃焼ガスの勢いを保ちつつ、研磨流体Fによる研磨加工量等を少なくしやすい。それゆえ、着火性を向上させることができるスパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0043】
また、角度が最小の内側角部53は、角度が最大の内側角部53よりも、角部曲面531の弧の長さが長い。それゆえ、燃焼ガスが、噴孔51の内周面511から確実に剥離しにくい。その結果、噴孔51を介して、主燃焼室に燃焼ガスを確実に勢いよく噴出させることができる。
【0044】
また、本形態において、内側角部53は、角度が小さいほど、角部曲面531の弧の長さが長くなっている。それゆえ、燃焼ガスが、噴孔51の内周面511から、より確実に剥離しにくい。その結果、着火性を、より確実に向上させることができる。
【0045】
上記スパークプラグ1の製造方法は、内側角部53を研磨流体Fによって研磨し、角部曲面531を形成する研磨工程を有する。それゆえ、内側角部53に角部曲面531を有するスパークプラグ1を効率的に製造することができる。その結果、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0046】
図9、
図10に示す比較形態1のように、仮に、プラグカバー5の中心部に向かって噴出治具119から研磨流体Fを噴出させた場合、研磨流体Fは底壁部55の内壁面52に衝突した後、噴孔51に向かうこととなる。それゆえ、研磨流体Fは、底壁部55の内壁面52に沿って噴孔51に向かうと共に、主に、角度が大きい内側角部53付近を通って、噴孔51から外部へと排出されやすい。そのため、角度が大きい内側角部53付近を通る研磨流体Fの速度と比較し、角度が小さい内側角部53付近を通る研磨流体Fの速度は遅くなりやすい。それゆえ、角度が小さい内側角部53を充分に研磨するための加工時間が長くなりやすく、スパークプラグ1を効率的に製造しにくい。一方、本形態の研磨工程においては、
図5に示すごとく、プラグカバー5の内壁面52のうち副燃焼室50の外周面に対応する部分に向けて、研磨流体Fを噴出治具11から噴出させる。そのため、角度が大きい内側角部53付近を通る研磨流体Fの速度と比較し、角度が小さい内側角部53付近を通る研磨流体Fの速度を速くすることができる。それゆえ、角度が小さい内側角部53を効率的に研磨することができる。その結果、着火性を向上させることができるスパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0047】
研磨工程においては、凸部112の外周側であってプラグカバー5の内周側に、内側空間501が形成されると共に、噴孔51は内側空間501に開口している。つまり、凸部112は、プラグカバー5によって囲われた空間の内側に配置されている。それゆえ、研磨流体Fを通過させる必要のない空間を小さくすることができる。それゆえ、研磨流体Fは、効率的に噴孔51から外部へと排出されやすく、内側角部53付近の通過速度が早くなりやすい。それゆえ、内側角部53を一層効率的に研磨しやすい。その結果、スパークプラグ1を一層効率的に製造することができる。
【0048】
また、噴出ポート111の開口部は、プラグ径方向において、凸部112よりも外側に形成されている。それゆえ、角度が小さい内側角部53の近くから、研磨流体Fを噴出させることができる。それゆえ、角度が小さい内側角部53付近を通過する研磨流体Fの速度が、より一層速くなりやすい。その結果、スパークプラグ1を、より一層効率的に製造することができる。
【0049】
以上のごとく、本形態によれば、着火性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ1及びその製造方法を提供することができる。
【0050】
(実施形態2)
本形態は、
図11~
図18に示すごとく、実施形態1に対し、噴孔51の開口方向を変更した形態である。
すなわち、噴孔51は、噴孔51を介して副燃焼室50に気流が導入されることによって副燃焼室50にスワール流が生じるように形成されている。
【0051】
内燃機関に設置されたスパークプラグ1において、プラグカバー5に形成された噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室とを連通させている。内燃機関の圧縮行程等においては、噴孔51を通じて主燃焼室から副燃焼室50へ、気流が導入される。そして、噴孔51を通じて副燃焼室50に導入される気流によって、副燃焼室50にスワール流(
図15の破線矢印A参照)が形成される。
【0052】
具体的には、
図12に示すごとく、噴孔51は、プラグ軸方向Zから見て、噴孔軸51Lが、プラグ径方向に対して傾斜している。つまり、本形態において、噴孔51は、Z方向から見たとき、噴孔51とプラグ中心軸Cとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VL1に対して、噴孔軸51Lが鋭角の角度をもって傾斜している。噴孔51は、各噴孔51における仮想直線VL1に対する噴孔軸51Lの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。なお、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。
【0053】
このような噴孔51の形成態様により、
図15に示すごとく、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流によって、副燃焼室50にスワール流Aが形成される。本形態の場合、スワール流Aは、プラグ中心軸Cの周りに、
図15における反時計回りの螺旋状に生じる。
【0054】
本形態においては、
図12に示すごとく、Z方向から見たとき、噴孔軸51Lに対しスワール流の下流側に位置する内側角部53よりも、噴孔軸51Lに対しスワール流の上流側に位置する内側角部53の方が、角度が鋭角となっている範囲が広い。
【0055】
また、本形態において、角度が最小の内側角部53は、内側開口部512の基端に隣接する内側角部53と、Z方向から見て、スワール流の最も上流側に位置する内側角部53と、の間に位置している。また、角度が最大の内側角部53は、内側開口部512の先端に隣接する内側角部53と、Z方向から見て、スワール流の最も下流側に位置する内側角部53と、の間に位置している。
【0056】
図13に示すごとく、噴孔軸51Lを含むと共に、角度が最小の内側角部53と角度が最大の内側角部53とを通る断面において、弧の長さD1は、最も長い角部曲面531の弧の長さとなっている。
【0057】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
研磨工程において、噴出治具11は、
図18に示すごとく、内側空間501において、研磨流体Fがプラグ周方向に沿って流動するように、研磨流体Fを噴出させる。プラグ軸方向Zから見て、研磨流体Fの流動方向は、スワール流に沿う方向である。
【0058】
本形態において、噴出治具11に形成された噴出ポート111は、
図17に示すごとく、Z方向から見たとき、中心軸111Lが、プラグ径方向に対して傾斜している。つまり、噴出ポート111は、Z方向から見たとき、噴出ポート111とプラグ中心軸Cとを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線VL2に対して、中心軸111Lが鋭角の角度をもって傾斜している。噴出ポート111は、各噴出ポート111における仮想直線VL2に対する中心軸111Lの傾斜方向が、プラグ周方向における同じ側となっている。
【0059】
また、基端側から見たときの仮想直線VL2に対する噴出ポート111の中心軸111Lの傾斜方向は(図示略)、
図12に示すように、基端側から見たときの仮想直線VL1に対する噴孔軸51Lの傾斜方向と、反対側となっている。これにより、Z方向から見たとき、研磨流体Fの流動方向を、スワール流に沿う方向とすることができる。
【0060】
また、本形態においては、
図16に示すごとく、凸部112の先端面と底壁部55の内壁面52との間には、隙間が形成されている。つまり、凸部112の先端面と底壁部55の内壁面52とは、互いに当接していない。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0061】
噴孔51は、プラグ軸方向Zから見て、噴孔軸51Lが、プラグ径方向に対して傾斜している。これにより、噴孔51を介して副燃焼室50に導入される気流によって、副燃焼室50内にスワール流を形成することができる。それゆえ、放電によって形成された初期火炎は、スワール流によって、副燃焼室50内に広がりやすい。それゆえ、副燃焼室50内の燃焼が促進されやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0062】
研磨工程において、噴出治具11は、内側空間501において、研磨流体Fがプラグ周方向に沿って流動するように、研磨流体Fを噴出させる。また、プラグ軸方向Zから見て、研磨流体Fの流動方向は、スワール流Aに沿う方向である。それゆえ、Z方向から見てスワール流Aの上流側に位置する内側角部53付近の、研磨流体Fの流速を速くすることができる。それゆえ、角度が鋭角となった内側角部53を効率的に研磨することができる。その結果、着火性を向上させることができるスパークプラグ1を効率的に製造することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0063】
(実験例1)
本例では、基本構造を実施形態2と同様としつつ、角部曲面の弧の長さが互いに異なる複数のスパークプラグを用意し、
図19のグラフに示すように、角部曲面の弧の長さと、オリフィスの流量計算式における流量係数との関係を解析した。具体的には、噴孔軸51Lを含むと共にZ方向に沿った断面において、鋭角となった内側角部53に形成された角部曲面の弧の長さD3(
図14参照)を噴孔の直径D4(
図14参照)で割った値と、噴孔をオリフィスとみなしたときの流量係数との関係を解析した。
【0064】
図19のグラフに示すように、D3/D4の値が大きくなるほど、流量係数も大きくなることが分かる。つまり、D3/D4の値が大きくなるほど、噴孔を通過する燃焼ガスの質量流量が増加すると考えられる。したがって、D3/D4の値が大きくなるほど、噴孔を通過する燃焼ガスの運動量が大きくなり、主燃焼室に燃焼ガスを勢いよく噴出させることができると考えられる。つまり、角度が鋭角となった内側角部に形成された角部曲面の弧の長さを長くするほど、噴孔を介して、主燃焼室に燃焼ガスを勢いよく噴出させることができると考えられる。
【0065】
(比較形態2)
本形態は、
図20、
図21に示すごとく、実施形態2に対し、内側角部53に角部曲面が形成されていない形態である。
その他は、実施形態2と同様である。
【0066】
(実験例2)
本例では、
図22、
図23に示すごとく、内燃機関に設置されたスパークプラグから噴出する燃焼ガスCGの速度について、CFD解析(「Computational Fluid Dynamics解析」の略)を行った。具体的には、比較形態2のスパークプラグ9と、実施形態2のスパークプラグ1とを用いて、噴孔51を介して副燃焼室50から主燃焼室101に噴出する燃焼ガスCGの速度を解析した。
図22は、内燃機関90に設置された比較形態2のスパークプラグ9の解析図を示し、
図23は、内燃機関10に設置された実施形態2のスパークプラグ1の解析図を示す。
【0067】
図22に示すごとく、比較形態2の場合、噴孔51から燃焼ガスCGが噴出した際、噴孔51の内周面511に沿って、燃焼ガスCGの剥離領域SEが確認された。ここで、高温の燃焼ガスCGは、常温の空気と比較し、粘度が高くなりやすい。そのため、内側角部53に角部曲面が形成されていない比較形態2の場合、燃焼ガスCGが噴出した際、角度が鋭角となった内側角部53を起点として、燃焼ガスCGの剥離が生じたと考えられる。なお、剥離領域SEは、主燃焼室101に燃焼ガスCGが噴出した際、噴孔51の内側に形成された、噴孔51の内側の他の領域と比較し流速が大幅に低い、又は流速がほとんどない領域を意味する。
【0068】
一方、
図23に示すごとく、実施形態2の場合、噴孔51から燃焼ガスCGが噴出した際に、燃焼ガスCGの剥離はほとんど確認されなかった。特に、角度が鋭角となった内側角部53に、弧の長さが長い角部曲面531が形成されていることにより、燃焼ガスCGの剥離がほとんど生じなかったと考えられる。そのため、燃焼ガスCGを勢いよく主燃焼室101に噴出させることができると考えられる。
【0069】
(実施形態3)
本形態は、
図24に示すごとく、実施形態2に対し、噴出治具11における噴出ポート111の形成位置を変更した形態である。
すなわち、噴出ポート111は、噴出治具11の凸部112にも形成されている。
【0070】
噴出ポート111は、Z方向に沿って形成された軸方向ポート113と、軸方向ポート113から各噴孔51の基端側に向かって開口された噴孔側ポート114とを有する。噴出治具11において、噴孔側ポート114は、噴孔51の数に対応するように、4つ形成されている。また、内側空間501に開口する噴孔側ポート114の開口部は、凸部112の側面に形成されている。
その他は、実施形態2と同様である。
【0071】
本形態において、内側空間501に開口する噴孔側ポート114の開口部は、凸部112の側面に形成されている。それゆえ、噴孔側ポート114の開口部を内側角部53に近づけやすい。それゆえ、内側角部53付近を通過する研磨流体Fの流速を速くしやすい。その結果、内側角部53を効率的に研磨することができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0072】
(実施形態4)
本形態は、
図25、
図26に示すごとく、プラグカバー5に軸方向噴孔513が形成された形態である。
【0073】
軸方向噴孔513は、
図25に示すごとく、Z方向に沿って、副燃焼室50と外部とを連通するように形成されている。軸方向噴孔513は、プラグ中心軸Cに沿うように形成されている。軸方向噴孔513は、底壁部55に形成されている。
【0074】
軸方向噴孔513は、Z方向における副燃焼室50側において、基端側に向かうほど拡径する拡径部を有する。軸方向噴孔513の拡径部は、例えば、拡径部を形成する前の軸方向噴孔に対し、切削加工を行うことによって形成することができる。
【0075】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
図26に示すごとく、研磨工程において、凸部112の先端面は、底壁部55の内壁面52と当接している。そして、凸部112は、その先端面が、軸方向噴孔513の副燃焼室側の開口部全体を塞ぐように配置されている。つまり、研磨工程において、軸方向噴孔513は、内側空間501に開口していない。そのため、研磨流体Fは、軸方向噴孔513を通過しない。
その他は、実施形態2と同様である。
【0076】
凸部112は、その先端面が、軸方向噴孔513の副燃焼室側の開口部全体を塞ぐように配置されている。それゆえ、研磨流体Fは、軸方向噴孔513を通過することなく、他の噴孔51を通って外部へと流出しやすい。そのため、所望の噴孔51のみに対し、角部曲面531を形成することができる。その結果、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0077】
(実施形態5)
本形態は、
図27に示すごとく、実施形態2に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0078】
本形態において、接地電極6は、ハウジング2に固定されている。接地電極6は、
図27に示すごとく、ハウジング2に固定された固定端部から、プラグ中心軸Cに向かって突出している。接地電極6は、突出端部61に近づくほど、先端側に向かうように、Z方向に対して傾斜している。そして、接地電極6の基端面と中心電極4の先端部との間に放電ギャップGが形成されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態2と同様である。
【0079】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、51L…噴孔軸、511…内周面、52…内壁面、53…内側角部、531…角部曲面、6…接地電極、G…放電ギャップ