IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フルヤ金属の特許一覧

<>
  • 特許-熱電対構造 図1
  • 特許-熱電対構造 図2
  • 特許-熱電対構造 図3
  • 特許-熱電対構造 図4
  • 特許-熱電対構造 図5
  • 特許-熱電対構造 図6
  • 特許-熱電対構造 図7
  • 特許-熱電対構造 図8
  • 特許-熱電対構造 図9
  • 特許-熱電対構造 図10
  • 特許-熱電対構造 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】熱電対構造
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/02 20210101AFI20241101BHJP
【FI】
G01K7/02 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021172692
(22)【出願日】2021-10-21
(65)【公開番号】P2023062618
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2024-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000136561
【氏名又は名称】株式会社フルヤ金属
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】角前 智也
(72)【発明者】
【氏名】森田 健介
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恵一
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-15047(JP,A)
【文献】特開平11-148872(JP,A)
【文献】特開2008-145244(JP,A)
【文献】実開平4-131735(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0225774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/08,7/02-7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線径が0.01~1.0mmの正極素線の一端と線径が0.01~1.0mmの負極素線の一端とが接合された接合部を有する熱電対と、
柱状の長手方向に、少なくとも、前記正極素線を通すための第1貫通穴及び前記負極素線を通すための第2貫通穴を有する多穴石英ガラス管と、
石英ガラス蓋と、
前記第1貫通穴に前記正極素線が通され、前記第2貫通穴に前記負極素線が通され、前記多穴石英ガラス管の一端側に前記接合部が配置され、前記多穴石英ガラス管の他端側から前記正極素線及び前記負極素線が前記多穴石英ガラス管の外側に引き出された配線構造と、
前記多穴石英ガラス管の一端と前記石英ガラス蓋の一端とを突き合わせて前記第1貫通穴及び第2貫通穴の一端側を封止し、かつ、前記接合部を被覆する封止部と、を有していることを特徴とする熱電対構造。
【請求項2】
前記封止部は、前記多穴石英ガラス管の一端側の端面と前記石英ガラス蓋の一端側の端面とで前記接合部を挟持した状態で前記接合部を被覆していることを特徴とする請求項1に記載の熱電対構造。
【請求項3】
前記接合部は、最大厚さが100μm以下の薄型接合部であることを特徴とする請求項2に記載の熱電対構造。
【請求項4】
前記多穴石英ガラス管は、前記一端側の端面に、前記接合部を収容する穴を有し、
前記接合部は前記穴に収められており、
前記封止部は、前記穴に収められた前記接合部を前記石英ガラス蓋で被覆していることを特徴とする請求項1に記載の熱電対構造。
【請求項5】
前記穴が、座ぐり又は前記第1貫通穴の縁と前記第2貫通穴の縁とを切り欠いてつなげた溝であることを特徴とする請求項4に記載の熱電対構造。
【請求項6】
前記多穴石英ガラス管の管径が1~10mmであることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の熱電対構造。
【請求項7】
前記多穴石英ガラス管の管径が1~5mmであり、かつ、前記多穴石英ガラス管が曲げ加工部を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の熱電対構造。
【請求項8】
石英ガラス製の温度測定対象物が、前記石英ガラス蓋を兼ねており、前記温度測定対象物の温度を測温することを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の熱電対構造。
【請求項9】
前記温度測定対象物の表面と前記多穴石英ガラス管の一端とが突き合わされて融着されていることを特徴とする請求項8に記載の熱電対構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は熱電対構造に関し、例えば、熱電対素線の熱膨脹及び振動などに起因する測温位置のズレを抑制した熱電対構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、ドリフト現象による測定温度のズレが生じにくく、保護管又は保護膜の表面への付着堆積物による保護管又は保護膜の割れ破壊が生じにくく、さらに、熱電対の振動等による測温接点の移動を防止する構造を有した熱電対構造を提案している(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1は、具体的には、正極素線の一端と負極素線の一端とが接合された熱電対と、1本の柱状ガラス体と、を有し、熱電対の接点を含む正極素線と負極素線とが、熱電対の接点以外は互いに接触することなく並列に柱状ガラス体の長さ方向に沿って埋め込まれた状態となっており、かつ、正極素線の他端側と負極素線の他端側とが柱状ガラス体の外側に引き出されているという熱電対構造を開示している。
【0003】
また、素線部が5.0×10- 6/℃~40×10-6/℃の範囲の熱膨張係数を有するガラスで被覆された熱電対の開示がある(例えば、特許文献2を参照。)。
【0004】
さらに、熱電対の温接点を溶融軟化したガラスで封止した熱電対の開示がある(例えば、特許文献3~5を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】再表2019‐150622号公報
【文献】特開昭59‐58882号公報
【文献】特開昭58‐15132号公報
【文献】実開昭53‐147187号公報
【文献】実開昭53‐118682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の熱電対は、測温接点の移動を防止しうるという点では優れているものの、柱状ガラス柱体を細径化して、測定対象により近づけたいという要望に応えるためには、製造加工に手間がかかり、コストがかかる。
【0007】
特許文献2に記載の熱電対は、測温接点の移動を防止しうるという点では優れているものの、やはり細径化が難しく、測定対象に近づけることが難しい。
【0008】
特許文献3に記載の製法では、一端を封着した石英直管の封着部を溶融させ、測温接点を挿通保持させた石英細管を急速に挿入する方法を取っているが、同文献に書かれているように加工後の測温接点は、石英直管と石英細管の間に埋設される、または封着部の内面に接触した状態になることになり、測温接点位置の製品毎のばらつきを小さくすることが難しい。また、太径の熱電対線が埋設された場合には、埋設部近傍において石英と熱電対素線の線膨張係数の差異により、クラックを生じる恐れがある。
【0009】
特許文献4又は5に記載の製法では、素線を溶融した石英に埋め込む為、石英の軟化点以上、熱電対素線(Pt線)の融点以下での製法のため、断線の恐れがあり難易度が高い。また特許文献3と同様に、太径の熱電対線が埋設された場合には、埋設部近傍において石英と熱電対素線の線膨張係数の差異により、クラックを生じる恐れがある。
【0010】
本開示は、高温下での熱電対素線の熱膨脹及び使用時の振動による測温位置のズレが生じにくく、測定対象への接触測温が可能であり、細径化が容易である熱電対構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、熱電対素線の温接点となる接合部を、2つの石英ガラス部材、すなわち、多穴石英ガラス管と石英ガラス蓋とによって被覆することで、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係る熱電対構造は、線径が0.01~1.0mmの正極素線の一端と線径が0.01~1.0mmの負極素線の一端とが接合された接合部を有する熱電対と、柱状の長手方向に、少なくとも、前記正極素線を通すための第1貫通穴及び前記負極素線を通すための第2貫通穴を有する多穴石英ガラス管と、石英ガラス蓋と、前記第1貫通穴に前記正極素線が通され、前記第2貫通穴に前記負極素線が通され、前記多穴石英ガラス管の一端側に前記接合部が配置され、前記多穴石英ガラス管の他端側から前記正極素線及び前記負極素線が前記多穴石英ガラス管の外側に引き出された配線構造と、前記多穴石英ガラス管の一端と前記石英ガラス蓋の一端とを突き合わせて前記第1貫通穴及び第2貫通穴の一端側を封止し、かつ、前記接合部を被覆する封止部と、を有していることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る熱電対構造では、前記封止部は、前記多穴石英ガラス管の一端側の端面と前記石英ガラス蓋の一端側の端面とで前記接合部を挟持した状態で前記接合部を被覆していることが好ましい。接合部を石英ガラス蓋の先端により近づけることができるため、測定対象により近づいて温度測定が可能となる。
【0013】
本発明に係る熱電対構造では、前記接合部は、最大厚さが100μm以下の薄型接合部であることが好ましい。接合部と石英ガラスとの線膨張係数の差により石英ガラスにマイクロクラックが生成しうるところ、薄型接合部とすることで、その展性により線膨張係数の違いを緩和させ、マイクロクラックの生成を予防できる。
【0014】
本発明に係る熱電対構造では、前記多穴石英ガラス管は、前記一端側の端面に、前記接合部を収容する穴を有し、前記接合部は前記穴に収められており、前記封止部は、前記穴に収められた前記接合部を前記石英ガラス蓋で被覆していることが好ましい。接合部が位置ズレしないように固定しつつ、石英ガラスのマイクロクラックの発生が生じにくい熱電対構造を提供できる。
【0015】
本発明に係る熱電対構造では、前記穴が、座ぐり又は前記第1貫通穴の縁と前記第2貫通穴の縁とを切り欠いてつなげた溝であることが好ましい。接合部がより位置ズレしにくくなる。
【0016】
本発明に係る熱電対構造では、前記多穴石英ガラス管の管径が1~10mmであることが好ましい。多穴石英ガラス管及び石英ガラス蓋を石英ガラス保護管でさらに覆う必要がなく、多穴石英ガラス管の管径がそのまま熱電対構造の径となり、細径型の熱電対構造となる。
【0017】
本発明に係る熱電対構造では、前記多穴石英ガラス管の管径が1~5mmであり、かつ、前記多穴石英ガラス管が曲げ加工部を有することが好ましい。測定対象の状況に応じて多穴石英ガラス管を曲げ加工することがより容易となる。
【0018】
本発明に係る熱電対構造では、石英ガラス製の温度測定対象物が、前記石英ガラス蓋を兼ねており、前記温度測定対象物の温度を測温することが好ましい。測定対象物が蓋を兼ねることにより、測定精度がさらに向上するとともに、測定対象物に対する接合部の位置ずれも防止できる。
【0019】
本発明に係る熱電対構造では、前記温度測定対象物の表面と前記多穴石英ガラス管の一端とが突き合わされて融着されていることが好ましい。測定対象物自体に接合部を接触させ、かつ、位置を固定することができるので、測定精度がさらに向上する。
【発明の効果】
【0020】
本開示は、高温下での熱電対素線の熱膨脹及び使用時の振動による測温位置のズレが生じにくく、測定対象への接触測温が可能であり、細径化が容易である熱電対構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の熱電対構造を説明するための概略図であり、多穴石英ガラス管及び石英ガラス蓋ついては縦断面概略図を示した。
図2】A-A断面図である。
図3】B-B断面図である。
図4】C-C断面図である。
図5】第2の熱電対構造を説明するための概略図であり、多穴石英ガラス管及び石英ガラス蓋ついては縦断面概略図を示した。
図6】D-D断面図である。
図7】E-E断面図である。
図8】第3の熱電対構造を説明するための概略図であり、多穴石英ガラス管及び石英ガラス蓋ついては縦断面概略図を示した。
図9】F-F断面図である。
図10】石英ガラス製リング状部材が石英ガラス蓋を兼ねる熱電対構造を説明するための概略図である。
図11】石英ガラス製台座が石英ガラス蓋を兼ねる熱電対構造を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以降、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。本明細書において、複数形態の熱電対構造を示して本実施形態を説明するが、図面において、同じ部材については、同じ符号を付して説明する。
【0023】
図1図9に示すように、本実施形態に係る熱電対構造100,200,300は、線径が0.01~1.0mmの正極素線3aの一端と線径が0.01~1.0mmの負極素線3bの一端とが接合された接合部4を有する熱電対9と、柱状の長手方向に、少なくとも、正極素線3aを通すための第1貫通穴6a及び負極素線3bを通すための第2貫通穴6bを有する多穴石英ガラス管1と、石英ガラス蓋2と、第1貫通穴6aに正極素線3aが通され、第2貫通穴6bに負極素線3bが通され、多穴石英ガラス管1の一端側に前記接合部4が配置され、多穴石英ガラス管1の他端1e側から正極素線3a及び負極素線3bが多穴石英ガラス管1の外側に引き出された配線構造と、多穴石英ガラス管1の一端1aと石英ガラス蓋の一端2aとを突き合わせて第1貫通穴6a及び第2貫通穴6bの一端側を封止し、かつ、接合部4を被覆する封止部8と、を有していることを特徴とする。本実施形態に係る熱電対構造100,200,300は、封止部8の形態によって、例えば3つの形態が例示できる。
【0024】
(第1の熱電対構造100)
図1図4を参照して、第1の熱電対構造100について説明する。熱電対9は、素線3として、正極素線3aと負極素線3bとを有し、さらに正極素線3aの一端と負極素線3bの一端とが接合された接合部4を有する。熱電対9は、白金又は白金合金からなることが好ましい。例えば、(正極素線3a,負極素線3b)の組み合わせが、(PtRh13%,Pt)、(PtRh10%、Pt)、(PtRh30%、PtRh6%)、(PtRh40%、PtRh20%)である。正極素線3aの線径は0.01~1.0mmであり、0.1~0.5mmであることが好ましい。負極素線3bの線径は0.01~1.0mmであり、0.1~0.5mmであることが好ましい。正極素線3aの線径及び負極素線3bの線径が0.01mm未満であると被覆加工時において熱による素線の断線のおそれがある。正極素線3aの線径及び負極素線3bの線径が1.0mmを超えると石英ガラス製の柱状体を細径化して、測定対象により近づけて測定したい状況において、線径の太さに応じて石英ガラス製の柱状体を太くしなければならないとともに、素線が細径ではないため熱電対の製造コストが高くなるおそれがある。
【0025】
多穴石英ガラス管1は、石英ガラス製の柱状体の内部を長手方向に沿って貫通する、正極素線3aを通すための第1貫通穴6aと負極素線3bを通すための第2貫通穴6bとを少なくとも有し、第1貫通穴6aの開口部は石英ガラス製の柱状体の両端面にあり、第2貫通穴6bの開口部は石英ガラス製の柱状体の両端面にある。多穴石英ガラス管の外形は各種形態をとることができ特に制限はないが、柱状としては、例えば、円柱、楕円柱、多角柱などがある。
【0026】
本実施形態に係る熱電対構造では、多穴石英ガラス管1の管径が1~10mmであることが好ましい。多穴石英ガラス管及び石英ガラス蓋を石英ガラス保護管でさらに覆う必要がなく、多穴石英ガラス管の管径がそのまま熱電対構造の径となり、細径型の熱電対構造となっている。本実施形態に係る熱電対構造では、多穴石英ガラス管1の管径が1~5mmであり、かつ、多穴石英ガラス管1が曲げ加工部を有することが好ましい。測定対象の状況に応じて多穴石英ガラス管を曲げ加工することがより容易となる。曲げ加工部は、熱電対構造を組み立てた後、火炎バーナーなどの加熱によって、多穴石英ガラス管1の石英ガラスを軟化させ、L型などに形状を変形させる。
【0027】
多穴石英ガラス管1を構成するガラスは、外気環境から熱電対を十分に保護することができる保護機能および熱電対の起電力の安定のために電気的絶縁機能が高いことが望まれる。具体的には、非晶質石英ガラスが、熱電対を外部環境から保護する能力が高く、電気的絶縁機能が高く、室温及び高温での機械的信頼性が高いという点で選択される。非晶質石英ガラスの線膨張係数は、約4.5×10-7/℃~約6.0×10-7/℃であり、ガラスの中では低い部類に属する。また、電気抵抗率は、例えば、室温で約1×10-16~5×10-17(Ω・m)であり、軟化点は、約1720℃である。
【0028】
石英ガラス蓋2は、多穴石英ガラス管1の一方の端面に融着されて、端面にある第1貫通穴6aの開口部と第2貫通穴6bの開口部とを塞ぐ形状であれば、いかなる形状を取りうることができる。例を挙げるとすれば、石英ガラス片であり、例えば、円柱、楕円柱、多角柱である。多角柱のうち4角柱の場合には板状となる。多穴石英ガラス管1の外径及び外形をそろえれば、多穴石英ガラス管1と石英ガラス蓋2との境界部で段差の少ない形状となる。多穴石英ガラス管1と石英ガラス蓋2とは、共に石英ガラス製であるため、線膨張係数に差異がなく、融着することで一体となる。融着させる際には、残留応力が残らないようにアニール等を行うことが好ましい。融着は、火炎バーナーなどの加熱によって、石英ガラスを軟化させて行う。
【0029】
次に熱電対構造100における配線構造について説明する。図1に示すように、第1貫通穴6aに正極素線3aが通され、第2貫通穴6bに負極素線3bが通され、多穴石英ガラス管1の一端1a側に接合部4が配置され、多穴石英ガラス管1の他端1e側から正極素線3a及び負極素線3bが多穴石英ガラス管1の外側に引き出されている。正極素線3aと負極素線3bとが並列に配置され、接合部4以外は相互に接触することがない。多穴石英ガラス管1の他端1e側から引き出された正極素線3a及び負極素線3bは、それぞれ石英ガラス管、セラミック管、絶縁セラミック繊維チューブ、樹脂チューブなどの絶縁管5(5a,5b)に通される。
【0030】
正極素線3aと負極素線3bの他端側は、多穴石英ガラス管1の他端1e側にて固定されることなく引き出されている形態と固定されて引き出されている形態とがある。固定されない場合には、正極素線3a又は負極素線3bと多穴石英ガラス管1との間で線膨張係数の差が大きくても正極素線3a又は負極素線3bの伸び縮みにストレスがかかることが少なく、好ましい。一方、固定される場合には、例えば、絶縁テープ、絶縁セメント等の固定手段で固定する。このとき、第1貫通穴6a又は第2貫通穴6bの孔内にて正極素線3a又は負極素線3bの伸び縮みが生じても、図4に示すように、第1貫通穴6a又は第2貫通穴6bの孔径を正極素線3a又は負極素線3bの線径よりも大きくすることでたわみを吸収できる。あるいは、径の太い異径管を接合してたわみ吸収部としてもよい。
【0031】
次に封止部8について説明する。図1図3に示すように、封止部8は、多穴石英ガラス管1の一端1aと石英ガラス蓋の一端2aとを突き合わせて第1貫通穴6a及び第2貫通穴6bの一端側を封止し、かつ、接合部4を被覆する。熱電対構造100では、多穴石英ガラス管1は、一端1a側の端面に、接合部4を収容する穴1bを有し、接合部4は穴1bに収められており、封止部8は、穴1bに収められた接合部4を石英ガラス蓋2で被覆していることが好ましい。接合部4が位置ズレしないように固定しつつ、石英ガラスのマイクロクラックの発生が生じにくい熱電対構造を提供できる。より具体的には、熱電対構造100では、穴1bが座ぐりであることが好ましい。接合部4がより位置ズレしにくくなる。図2に示すように、多穴石英ガラス管1の一端1aの端面に穴1bとして座ぐりが設けられている。座ぐりは接合部4を入れるための収容空間を有している。図1に示すように接合部4は、石英ガラス蓋の一端2aの端面と接触してもよいが、接合部4の天頂部と石英ガラス蓋の一端2aの端面との間にわずかに隙間があってもよい。多穴石英ガラス管1の柱状の長手方向における接合部4の動く範囲は、座ぐりの中の狭い範囲に限定されるため、測温位置ズレの防止が達成される。
【0032】
座ぐりは、例えばダイヤモンド電着砥石や、メタルボンドダイヤモンド砥石等の研削工具で形成する。
【0033】
(第2の熱電対構造200)
第2の熱電対構造200は、第1の熱電対構造100と比較して、封止部8の構造が異なり、それ以外は同様の構造を有している。封止部8について説明する。図5図7に示すように、封止部8は、多穴石英ガラス管1の一端1aと石英ガラス蓋の一端2aとを突き合わせて第1貫通穴6a及び第2貫通穴6bの一端側を封止し、かつ、接合部4を被覆する。熱電対構造200では、多穴石英ガラス管1は、一端1a側の端面に、接合部4を収容する穴1dを有し、接合部4は穴1dに収められており、封止部8は、穴1dに収められた接合部4を石英ガラス蓋2で被覆していることが好ましい。接合部4が位置ズレしないように固定しつつ、石英ガラスのマイクロクラックの発生が生じにくい熱電対構造を提供できる。より具体的には、熱電対構造200では、穴1dが、第1貫通穴6aの縁と第2貫通穴6bの縁とを切り欠いてつなげた溝であることが好ましい。接合部4がより位置ズレしにくくなる。図6に示すように、多穴石英ガラス管1の一端1aの端面に穴1dとして第1貫通穴6aの縁と第2貫通穴6bの縁とを切り欠いてつなげた溝が設けられている。溝は接合部4を入れるための収容空間を有している。図5に示すように接合部4は、石英ガラス蓋の一端2aの端面と接触してもよいが、接合部4の天頂部と石英ガラス蓋の一端2aの端面との間にわずかに隙間があってもよい。多穴石英ガラス管1の柱状の長手方向における接合部4の動く範囲は、溝の中の狭い範囲に限定されるため、測温位置ズレの防止が達成される。接合部4は、第1の熱電対構造100の接合部4よりも小さく形成してもよい。第1貫通穴6aの縁と第2貫通穴6bの縁とを切り欠いてつなげた溝の幅は、第1貫通穴6aの穴径又は第2貫通穴6bの穴径に依存し、好ましくは、第1貫通穴6aの穴径又は第2貫通穴6bの穴径以下とする。この場合、接合部4は、最大幅が第1貫通穴6aの穴径又は第2貫通穴6bの穴径以下であることが好ましい。接合部4を前記溝の中に容易に入れることができる。このとき測温接点の位置精度をより安定させることができる。さらに接合部4は素線3の線径相当に小さく形成してもよい。この場合、素線3の線径は、第1貫通穴6aの穴径又は第2貫通穴6bの穴径以下であるため、前記溝の中に容易に入れることができる。この形態においても測温接点の位置精度をより安定させることができる。なお、図5におけるC-C断面図は、図4と同じである。
【0034】
第1貫通穴6aの縁と第2貫通穴6bの縁とを切り欠いてつなげた溝は、例えばダイヤモンド電着砥石や、メタルボンドダイヤモンド砥石等の研削工具で形成する。
【0035】
(第3の熱電対構造300)
第3の熱電対構造300は、第1の熱電対構造100と比較して、封止部8の構造が異なり、それ以外は同様の構造を有している。封止部8について説明する。図8図9に示すように、封止部8は、多穴石英ガラス管1の一端1a側の端面と石英ガラス蓋2の一端2a側の端面とで接合部4を挟持した状態で接合部4を被覆していることが好ましい。接合部を石英ガラス蓋の先端により近づけることができるため、測定対象により近づいて温度測定が可能となる。より具体的には、接合部4は、最大厚さが100μm以下の薄型接合部であることが好ましい。接合部4は、最大厚さが80μm以下の薄型接合部であることがより好ましい。接合部と石英ガラスとの線膨張係数の差により石英ガラスにマイクロクラックが生成しうるところ、最大厚さが100μm以下の薄型接合部とすることで、その展性により線膨張係数の違いを緩和させ、マイクロクラックの生成を予防できる。接合部4の厚さの下限は、断線リスクを考慮して例えば20μmである。接合部4は、多穴石英ガラス管1の一端1a側の端面に配置する前にあるいは配置した後に押し潰しによって接合部4を薄肉化する。接合部4は押し潰しによって、薄肉化するとともに広がるが、図9に示すように、多穴石英ガラス管1の一端1a側の端面が接合部4の周囲を囲むように露出させる。多穴石英ガラス管1の一端1a側の端面を接合部4がはみ出る場合には、カットする。多穴石英ガラス管1の一端1a側の端面と石英ガラス蓋2の一端2a側の端面と融着させると、接合部4を完全に閉じ込めることが可能となる。また、接合部4の最大厚さが100μm以下であれば、前記端面同士を融着させるときに、前記端面が接合部4を取り込むように軟化変形するので、石英ガラスに残留応力を残さずに熱処理すれば、接合部4が原因で石英ガラスに亀裂が生じることが抑制される。なお、図8におけるC-C断面図は、図4と同じである。
【0036】
(石英ガラス製の温度測定対象物が、石英ガラス蓋を兼ねる形態)
本実施形態では、石英ガラス蓋2は石英ガラス片であるのみならず、何らかの石英ガラス部材であってもよい。例えば、本実施形態に係る熱電対構造では、石英ガラス製の温度測定対象物が、石英ガラス蓋2を兼ねており、温度測定対象物の温度を測温することが好ましい。測定対象物が蓋を兼ねることにより、測定精度がさらに向上するとともに、測定対象物に対する接合部の位置ずれが防止できる。この形態は、第1の熱電対構造~第3の熱電対構造のいずれにおいても、適用できる。石英ガラス製の温度測定対象物が、石英ガラス蓋を兼ねる形態の具体例は次のとおりである。例えば、図10に示す熱電対構造400では、温度測定対象物である石英ガラス製リング状部材12が石英ガラス蓋2を兼ねており、石英ガラス製リング状部材12の側面と多穴石英ガラス管1の一方の端面とが融着している。また、図11に示す熱電対構造500では、温度測定対象物である石英ガラス製台座22が石英ガラス蓋2を兼ねており、石英ガラス製台座22の天板面と多穴石英ガラス管1の一方の端面とが融着している。図10又は図11に示すように、熱電対構造400,500では、温度測定対象物の表面と多穴石英ガラス管1の一端1aとが突き合わされて融着されていることが好ましい。測定対象物自体に接合部4を接触させ、かつ、位置を固定することができるので、測定精度がさらに向上する。
【0037】
石英ガラス製の温度測定対象物が、石英ガラス蓋を兼ねる形態においても、多穴石英ガラス管1に曲げ加工部を設けてもよい。曲げ加工部は、熱電対構造を組み立てた後、火炎バーナーなどの加熱によって、多穴石英ガラス管の石英ガラスを軟化させ、L型などに形状を変形させる。
【符号の説明】
【0038】
100,200,300,400,500熱電対構造
1 多穴石英ガラス管
1a 多穴石英ガラス管の一端
1b 穴(座ぐり)
1c 穴の底面(座ぐりの底面)
1d 穴(溝)
1e 多穴石英ガラス管の他端
2 石英ガラス蓋
2a 石英ガラス蓋の一端
3 素線
3a 正極素線
3b 負極素線
4 接合部
5,5a,5b 絶縁管
6 貫通孔
6a 第1貫通穴
6b 第2貫通穴
8 封止部
9 熱電対
12 石英ガラス製リング状部材
22 石英ガラス製台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11