(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241101BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2021183241
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
(72)【発明者】
【氏名】森岡 育久
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-028961(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141974(WO,A1)
【文献】特開2020-145238(JP,A)
【文献】特開2001-156042(JP,A)
【文献】特開2011-040528(JP,A)
【文献】特開2014-198662(JP,A)
【文献】特開平09-232415(JP,A)
【文献】特表2018-518833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
冷媒流路を有する冷却基材と、
前記セラミック基材と前記冷却基材とを接合する接合層と、
前記冷却基材を上下方向に貫通する穴と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記冷媒流路のうち平面視で前記ウエハ載置面と重複する領域での最上流部と最下流部の前記冷媒流路の断面積は、前記最上流部に比べて前記最下流部の方が小さく、
前記冷媒流路の高さは均一で、前記冷媒流路の幅は前記最上流部に比べて前記最下流部の方が狭くなって
おり、
前記冷媒流路は、前記穴の周辺領域では前記穴の周辺領域から外れた領域に比べて前記冷媒流路の断面積が小さくなるように、前記穴の周辺領域において前記穴から遠い流路壁を前記穴に近づけることにより前記冷媒流路の幅を狭めている、
ウエハ載置台。
【請求項2】
前記冷媒流路の断面積は、前記冷媒流路の前記最上流部から前記最下流部に向かって小さくなっている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記冷媒流路の断面積は、前記冷媒流路に設けられるフィンの数、前記フィンの厚さ及び前記フィンの長さの少なくとも1つによって調整されている、
請求項1又は2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記最下流部での前記冷媒流路の断面積は、前記最上流部での前記冷媒流路の断面積の60~90%である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記冷却基材は、金属マトリックス複合材料で作製され、
前記接合層は、金属接合層である、
請求項1~4のいずれか1項に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハ載置面を有し電極を内蔵するセラミック基材と、冷媒流路を有する冷却基材と、セラミック基材と冷却基材とを接合する接合層とを備えたウエハ載置台が知られている。例えば、特許文献1,2には、こうしたウエハ載置台において、冷却基材として、線熱膨張係数がセラミック基材と同程度の金属マトリックス複合材料で作製されたものを用いる点が記載されている。また、ウエハ載置台に、電極に給電するための給電端子を挿通する端子穴やウエハの裏面にHeガスを供給するためのガス穴やウエハをウエハ載置面から持ち上げるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴を設ける点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5666748号公報
【文献】特許第5666749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷媒は入口から出口にかけて温度が上昇するが、冷媒流路の断面形状は冷媒流路の入口から出口まで一定であるため、ウエハは冷媒流路の入口付近では冷えやすく出口付近では冷えにくい傾向にあり、結果としてウエハの均熱性が十分得られないことがあった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ウエハの均熱性を高めることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハを載置可能なウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
冷媒流路を有する冷却基材と、
前記セラミック基材と前記冷却基材とを接合する接合層と、
を備えたウエハ載置台であって、
前記冷媒流路のうち平面視で前記ウエハ載置面と重複する領域での最上流部と最下流部の前記冷媒流路の断面積は、前記最上流部に比べて前記最下流部の方が小さい、
ものである。
【0007】
このウエハ載置台では、冷媒流路のうち平面視でウエハ載置面と重複する領域での最上流部と最下流部の冷媒流路の断面積は、最上流部に比べて最下流部の方が小さい。ウエハ載置台の使用時、冷媒は冷媒流路の最上流部から最下流部に向かって高温のウエハから熱を奪いながら流れるため、冷媒流路を流れる冷媒の温度は最上流部に比べて最下流部の方が高くなる。一方、冷媒流路の断面積は冷媒流路の最上流部に比べて最下流部の方が小さいため、圧力損失は最上流部に比べて最下流部の方が大きくなり、冷媒とウエハとの熱交換は最上流部に比べて最下流部の方が促進される。そのため、総合的には、ウエハ載置面のうち冷媒流路の最上流部に対向する位置と最下流部に対向する位置との温度差を小さくすることができる。したがって、ウエハの均熱性が高くなる。
【0008】
本発明のウエハ載置台において、前記冷媒流路の断面積は、前記冷媒流路の前記最上流部から前記最下流部に向かって小さくなっていてもよい。こうすれば、ウエハの均熱性がより高くなる。
【0009】
本発明のウエハ載置台において、前記冷媒流路の断面積は、前記冷媒流路に設けられるフィンの数、前記フィンの厚さ及び前記フィンの長さの少なくとも1つによって調整されていてもよい。
【0010】
本発明のウエハ載置台において、前記最下流部での前記冷媒流路の断面積は、前記最上流部での前記冷媒流路の断面積の60~90%であってもよい。この割合が90%以下であれば、ウエハWの均熱性が十分高くなる。また、この割合が60%以上であれば、圧力損失が大きくなりすぎることがなく、十分な流量で冷媒を流すことができる。
【0011】
本発明のウエハ載置台において、前記冷却基材は、金属マトリックス複合材料で作製されていてもよく、前記接合層は、金属接合層であってもよい。冷却基材が金属マトリックス複合材料、かつ接合層が金属接合層の構造では、冷媒流路からウエハ載置面までの熱抵抗が小さいため、ウエハ温度は冷媒の温度勾配の影響を受けやすい。そのため、本発明を適用する意義が高い。また、金属接合層は熱伝導率が高いため抜熱に適している。更に、セラミック基材と金属マトリックス複合材料製の冷却基材とは熱膨張差を小さくすることができるため、金属接合層の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0012】
本発明のウエハ載置台は、前記冷却基材を上下方向に貫通する穴を備えていてもよく、前記冷媒流路は、前記穴の周辺領域では前記穴の周辺領域から外れた領域に比べて前記冷媒流路の断面積が小さくなっていてもよい。一般にウエハのうちこうした穴の直上周辺はホットスポットになりやすいが、ここではこうした穴の周辺領域では穴の周辺領域から外れた領域に比べて冷媒流路の断面積が小さくなっている。そのため、穴の周辺領域の抜熱が促進される。したがって、ウエハの均熱性がより高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
【
図2】冷媒流路32を通る水平面で冷却基材30を切断した断面を上からみたときの断面図。
【
図4】冷媒流路82を通る水平面で冷却基材30を切断した断面を上からみたときの断面図。
【
図5】冷媒流路32の途中に幅wの狭い部分32xを設けた例の縦断面図。
【
図6】FR載置面を有さないセラミック基材20を用いた例の縦断面図。
【
図7】冷媒流路232を備えたウエハ載置台の縦断面図。
【
図8】冷媒流路332を備えたウエハ載置台の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、
図2は冷媒流路32を通る水平面で冷却基材30を切断した断面を上からみたときの断面図である。なお、
図2には端子穴51、給電端子54及び絶縁管55などを省略した。
【0015】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、冷却基材30と、金属接合層40とを備えている。
【0016】
セラミック基材20は、円形のウエハ載置面22aを有する中央部22の外周に、環状のフォーカスリング載置面24aを有する外周部24を備えている。以下、フォーカスリングは「FR」と略すことがある。ウエハ載置面22aには、ウエハWが載置され、FR載置面24aには、フォーカスリング78が載置される。セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。FR載置面24aは、ウエハ載置面22aに対して一段低くなっている。
【0017】
セラミック基材20の中央部22は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。ウエハ吸着用電極26は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極26は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電吸着用電極である。セラミック基材20のうちウエハ吸着用電極26よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極26には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、ウエハ載置台10のうちウエハ吸着用電極26の下面と冷却基材30の下面との間に設けられた端子穴51に挿通されている。給電端子54は、端子穴51のうち冷却基材30及び金属接合層40を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極26に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極26との間には、ローパスフィルタ(LPF)53が設けられている。
【0018】
冷却基材30は、金属マトリックス複合材料(メタル・マトリックス・コンポジット(MMC)ともいう)製の円板部材である。冷却基材30は、内部に冷媒が循環可能な冷媒流路32を備えている。この冷媒流路32は、冷媒供給路36及び冷媒排出路38に接続されており、冷媒排出路38から排出された冷媒は温度調整されたあと再び冷媒供給路36に戻される。MMCとしては、Si,SiC及びTiを含む材料やSiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料などが挙げられる。Si,SiC及びTiを含む材料をSiSiCTiといい、SiC多孔質体にAlを含浸させた材料をAlSiCといい、SiC多孔質体にSiを含浸させた材料をSiSiCという。セラミック基材20がアルミナ基材の場合、冷却基材30に用いるMMCとしては熱膨張係数がアルミナに近いAlSiCやSiSiCTiなどが好ましい。冷却基材30は、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。冷却基材30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。冷却基材30は、下面側にウエハ載置台10を設置板96にクランプするのに用いられるフランジ部34を有する。
【0019】
冷媒流路32は、
図2に示すように、冷媒流路32を水平面で切断した断面を上からみたときに、冷却基材30のうちフランジ部34を除く領域の全体にわたって入口32aから出口32sまで一筆書きの要領で形成されている。本実施形態では、冷媒流路32はジグザグ状に形成されている。具体的には、冷媒流路32は、冷媒供給路36に繋がる入口32aから円弧部32b、折り返し部32c、直線部32d、折り返し部32e、直線部32f、折り返し部32g、直線部32h、折り返し部32i、直線部32j、折り返し部32k、直線部32l、折り返し部32m、直線部32n、折り返し部32o、直線部32p、折り返し部32q及び円弧部32rを経て冷媒排出路38に繋がる出口32sに至るように、ジグザグ状に形成されている。ここで、冷媒流路32のうち平面視でウエハ載置面22aと重複する領域で最上流部32Uと最下流部32Lとを定めたとき、最上流部32Uと最下流部32Lは、
図2に示す位置になる。冷媒流路32の幅wは、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が狭くなっており、最上流部32Uから最下流部32Lに向かって徐々に狭くなっている。換言すれば、冷媒流路32の流路断面積は、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が小さくなっており、最上流部32Uから最下流部32Lに向かって徐々に小さくなっている。そのため、冷媒流路32の圧力損失は、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が大きくなっており、最上流部32Uから最下流部32Lに向かって徐々に大きくなっている。本実施形態では、冷媒流路32の高さ(底面から天井面までの長さ)は均一である。なお、最下流部32Lでの流路断面積は、最上流部32Uでの流路断面積の60~90%であることが好ましい。
【0020】
冷媒流路32の位置と流路断面積との関係をグラフに表したとき、冷媒流路32の流路断面積は、最上流部32Uから最下流部32Lに向かって連続的に小さくなっていてもよいし、階段状に小さくなっていてもよいが、連続的に小さくなっていることが好ましい。最上流部32Uから最下流部32Lに向かって連続的に小さくなる場合としては、例えば、一定の勾配(傾き)で連続的に小さくなっていてもよいし、下に凸の曲線を描きながら小さくなっていてもよいし、上に凸の曲線を描きながら小さくなっていてもよい。
【0021】
金属接合層40は、セラミック基材20の下面と冷却基材30の上面とを接合する。金属接合層40は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層40は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0022】
セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の外周及び冷却基材30の側面は、絶縁膜42で被覆されている。絶縁膜42としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。
【0023】
こうしたウエハ載置台10は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96にクランプ部材70を用いて取り付けられる。クランプ部材70は、断面が略逆L字状の環状部材であり、内周段差面70aを有する。ウエハ載置台10と設置板96とは、クランプ部材70によって一体化されている。ウエハ載置台10の冷却基材30のフランジ部34に、クランプ部材70の内周段差面70aを載置した状態で、クランプ部材70の上面からボルト72が差し込まれて設置板96の上面に設けられたネジ穴に螺合されている。ボルト72は、クランプ部材70の円周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所(例えば8箇所とか12箇所)に取り付けられる。クランプ部材70やボルト72は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。
【0024】
次に、ウエハ載置台10の製造例を
図3を用いて説明する。
図3はウエハ載置台10の製造工程図である。まず、セラミック基材20の元となる円板状のセラミック焼結体120を、セラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製する(
図3A)。セラミック焼結体120は、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。次に、セラミック焼結体120の下面からウエハ吸着用電極26までの間に端子穴上部151aを形成する(
図3B)。そして、端子穴上部151aに給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極26とを接合する(
図3C)。
【0025】
これと並行して、2つのMMC円板部材131,136を作製する(
図3D)。そして、両方のMMC円板部材131,136に上下方向に貫通する穴をあけると共に、上側のMMC円板部材131の下面に最終的に冷媒流路32となる溝132を形成する(
図3E)。具体的には、上側のMMC円板部材131には、穴として端子穴中間部151bをあけると共に、マシニング加工することにより溝132を形成する。また、下側のMMC円板部材136には、穴として端子穴下部151c、冷媒
供給用の貫通穴133及び冷媒排出用の貫通穴134をあける。セラミック焼結体120がアルミナ製の場合、MMC円板部材131,136はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じだからである
。
【0026】
SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0027】
次に、上側のMMC円板部材131の下面と下側のMMC円板部材136の上面との間に金属接合材を配置すると共に、上側のMMC円板部材131の上面に金属接合材を配置する。各金属接合材には、各穴に対向する位置に貫通穴を設けておく。そして、セラミック焼結体120の給電端子54を端子穴中間部151b及び端子穴下部151cに挿入し、セラミック焼結体120を上側のMMC円板部材131の上面に配置された金属接合材の上に載せる。これにより、下側のMMC円板部材136と金属接合材と上側のMMC円板部材131と金属接合材とセラミック焼結体120とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体110を得る(
図3F)。接合体110は、冷却基材30の元となるMMCブロック130の上面に、金属接合層40を介してセラミック焼結体120が接合されたものである。MMCブロック130は、上側のMMC円板部材131と下側のMMC円板部材136とが金属接合層135を介して接合されたものである。MMCブロック130は、冷媒流路32、冷媒供給路36、冷媒排出路38及び端子穴51を有する。端子穴51は、端子穴上部151aと端子穴中間部151bと端子穴下部151cとが連なった穴である。
【0028】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0029】
続いて、セラミック焼結体120の外周を切削して段差を形成することにより、中央部22と外周部24とを備えたセラミック基材20とする。また、MMCブロック130の外周を切削して段差を形成することにおり、フランジ部34を備えた冷却基材30とする。また、端子穴51のうちセラミック基材20の下面から冷却基材30の下面まで、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する。更に、セラミック基材20の外周部24の側面、金属接合層40の周囲及び冷却基材30の側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜42を形成する(
図3G)。これにより、ウエハ載置台10を得る。
【0030】
なお、
図1の冷却基材30は、一体品として記載したが、
図3Gに示すように2つの部材が金属接合層で接合された構造であってもよいし、3つ以上の部材が金属接合層で接合された構造であってもよい。
【0031】
次に、ウエハ載置台10の使用例について
図1を用いて説明する。チャンバ94の設置板96には、上述したようにウエハ載置台10がクランプ部材70によって固定されている。チャンバ94の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ94の内部へ放出するシャワーヘッド98が配置されている。
【0032】
ウエハ載置台10のFR載置面24aには、フォーカスリング78が載置され、ウエハ載置面22aには、円盤状のウエハWが載置される。フォーカスリング78は、ウエハWと干渉しないように上端部の内周に沿って段差を備えている。この状態で、ウエハ吸着用電極26にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面22aに吸着させる。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、冷却基材30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。なお、ウエハWがプラズマ処理されるのに伴ってフォーカスリング78も消耗するが、フォーカスリング78はウエハWに比べて厚いため、フォーカスリング78の交換は複数枚のウエハWを処理したあとに行われる。
【0033】
ハイパワープラズマでウエハWを処理する場合には、ウエハWを効率的に冷却する必要がある。ウエハ載置台10では、セラミック基材20と冷却基材30との接合層として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属接合層40を用いている。そのため、ウエハWから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。また、セラミック基材20と冷却基材30との熱膨張差は小さいため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。更に、冷媒流路32の幅wは、冷媒流路32の最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が狭くなっている。つまり、冷媒流路32の断面積は、冷媒流路32の最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が小さい。そのため、冷媒流路32の圧力損失は、冷媒流路32の最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が大きい。ウエハ載置台10の使用時、冷媒は冷媒流路32の最上流部32Uから最下流部32Lに向かって高温のウエハWから熱を奪いながら流れるため、冷媒流路32を流れる冷媒の温度は最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が高くなる。一方、冷媒流路32の圧力損失は冷媒流路32の最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が大きくなっているため、冷媒とウエハとの熱交換は最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が促進される。そのため、総合的には、ウエハ載置面22aのうち冷媒流路32の最上流部32Uに対向する位置と最下流部32Lに対向する位置との温度差を小さくすることができる。冷媒流路32を流れる冷媒の流速は、15~50L/minとするのが好ましく、20~40L/minとするのがより好ましい。
【0034】
以上説明した本実施形態のウエハ載置台10では、冷媒流路32の断面積は、冷媒流路32の最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が小さいため、ウエハWの均熱性が高くなる。
【0035】
また、冷媒流路32の断面積は、冷媒流路32の最上流部32Uから最下流部32Lに向かって徐々に小さくなっている。そのため、ウエハWの均熱性がより高くなる。
【0036】
更に、冷媒流路32の断面積は、冷媒流路32の幅wによって調整されている。そのため、冷媒流路32の断面積を比較的容易に調整することができる。
【0037】
更にまた、冷媒流路32は、冷却基材30を平面視したときにジグザグ状に形成されている。そのため、冷媒流路32を冷却基材30の全体にわたって引き回しやすくなる。
【0038】
そして、最下流部32Lでの冷媒流路の断面積は、最上流部32Uでの冷媒流路の断面積の60~90%であることが好ましい。この割合が90%以下であれば、ウエハWの均熱性が十分高くなる。また、この割合が60%以上であれば、圧力損失が大きくなりすぎることがなく、十分な流量で冷媒を流すことができる。
【0039】
そしてまた、冷却基材30は、MMCで作製され、金属接合層40を介してセラミック基材20に接合されている。冷却基材30がMMC、かつ接合層が金属接合層40の構造では、冷媒流路32からウエハ載置面22aまでの熱抵抗が小さいため、ウエハ温度は冷媒の温度勾配の影響を受けやすい。そのため、本発明を適用する意義が高い。また、金属接合層40は熱伝導率が高いため抜熱に適している。更に、セラミック基材20とMMC製の冷却基材30とは熱膨張差を小さくすることができるため、金属接合層40の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0041】
上述した実施形態において、平面視でジグザグ状の冷媒流路32の代わりに、
図4に示すように、平面視で渦巻き状の冷媒流路82を採用してもよい。冷媒流路82は、中心部に設けられた入口82aから外周部に設けられた出口82bまで一筆書きの要領で、冷却基材30のフランジ部34を除く部分の全体に渦巻き状に形成されている。この場合、冷媒流路82のうち平面視でウエハ載置面22aと重複する領域で最上流部82Uと最下流部82Lとを定めたとき、最上流部82Uと最下流部82Lは、
図4に示す位置になる。冷媒流路82の幅w(流路断面積)は、最上流部
82Uに比べて最下流部
82Lの方が短くなっている。幅wは、最上流部82Uから最下流部82Lに向かって徐々に短くなっている。なお、冷媒流路82の外周部を入口とし、中心部を出口としてもよい。
【0042】
上述した実施形態において、
図5に示すように、冷媒流路32は、端子穴51の周辺領域に、端子穴51の周辺領域から外れた領域に比べて冷媒流路32の幅w(流路断面積)が狭くなっている部分32xを設けてもよい。なお、
図5では、冷媒流路32に部分32xを備えたこと以外は、上述した実施形態と同様である。幅wは、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が狭くなっている。また、幅wは、端子穴51の周辺領域を除いて、冷媒流路32の最上流部32Uから最下流部32Lに向かって徐々に狭くなっている。一般にウエハ載置面22aのうちこうした端子穴51の直上周辺はホットスポットになりやすいが、ここではこうした端子穴51の周辺領域ではそこから外れた領域に比べて幅w(流路断面積)が狭くなっている。そのため、端子穴51の周辺領域の抜熱が促進される。したがって、ウエハWの均熱性がより高くなる。なお、部分32xでの流路断面積は、最上流部32Uでの流路断面積の60~90%であることが好ましい。
【0043】
上述した実施形態において、
図6に示すように、セラミック基材20はウエハ載置面22aを有するがFR載置面を有さないものとしてもよい。この場合、冷媒流路32のうち平面視でウエハ載置面22aと重複する領域で最上流部32Uと最下流部32Lとを定めたとき、最上流部32U及び最下流部32Lは、それぞれ入口32a及び出口32sと一致する。
【0044】
上述した実施形態では、冷媒流路32の断面積を、冷媒流路32の幅wによって調整したが、特にこれに限定されない。例えば、冷媒流路32の断面積を冷媒流路32の高さ(底面から天井面までの長さ)によって調整してもよい。このとき、冷媒流路32の天井面からウエハ載置面22aまでの距離や冷媒流路32の幅wは、入口32aから出口32sまで一定とし、冷媒流路32の底面の位置を調整する。このようにしても、冷媒流路32の流路断面積は、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が小さくなり、冷媒流路32の圧力損失は、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が大きくなる。
【0045】
あるいは、
図7に示すように、冷媒流路232の断面積を、冷媒流路232の内面に設けるフィン233の数によって調整してもよい。なお、
図7では、冷媒流路32の代わりにフィン233の付いた冷媒流路232を設けたこと以外は、上述した実施形態と同様である。冷媒流路232を平面視したときの形状は、
図2と同様、入口232aから出口232sまでジグザグ状である。冷媒流路232の幅や高さ(底面から天井面までの長さ)は、流路全体を通して同じだが、フィン233の数は、最上流部232Uに比べて最下流部232Lの方が多くなっている。フィン233の数は、最上流部232Uから最下流部
232Lに向かって徐々に多くなっている。なお、各フィン233の断面形状は、すべて同じとする。このようにしても、冷媒流路
232の断面積を、最上流部232Uに比べて最下流部232Lの方が小さく、最上流部232Uから最下流部232Lに向かって徐々に小さくすることができる。フィン233の数が多い箇所ほど乱流が発生しやすくなり、ウエハWとの熱交換が促進される。フィン233の数は、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が10~40%多くなるようにしてもよい。換言すれば、最下流部32Lのフィン233の数が最上流部32Uのフィン233の数の110~140%となるようにしてもよい。
【0046】
あるいは、
図8に示すように、冷媒流路
332の断面積を、冷媒流路
332の内面に設けるフィン333の長さによって調整してもよい。なお、
図8では、冷媒流路32の代わりにフィン333の付いた冷媒流路332を設けたこと以外は、上述した実施形態と同様である。冷媒流路332を平面視したときの形状は、
図2と同様、入口332aから出口332sまでジグザグ状である。冷媒流路332の幅や高さ(底面から天井面までの長さ)は、流路全体を通して同じである。フィン333の数は、流路全体を通して同じ(ここでは1個)だが、フィン333の長さは、最上流部
332Uに比べて最下流部
332Lの方が長くなっている。フィン333の長さは、最上流部
332Uから最下流部
332Lに向かって徐々に長くなっている。なお、各フィン333の厚みは、すべて同じとする。このようにしても、冷媒流路332の断面積を、最上流部332Uに比べて最下流部332Lの方が小さく、最上流部332Uから最下流部332Lに向かって徐々に小さくすることができる。フィン333の長さが長い箇所ほど乱流が発生しやすくなり、ウエハWとの熱交換が促進される。フィン333の長さは、最上流部332Uに比べて最下流部332Lの方が10~40%長くなるようにしてもよい。換言すれば、最下流部
332Lのフィン333の長さが最上流部
332Uのフィン333の長さの110~140%となるようにしてもよい。
図7及び
図8において、冷媒流路232,332を平面視したときの形状は、ジグザグ状に限定されるものではなく、例えば渦巻き状(
図4参照)であってもよい。
【0047】
上述した実施形態において、冷媒流路32の幅wは、最上流部32Uから最下流部32Lに向かって徐々に狭くなるようにしたが、これに限定されない。幅wは、最上流部32Uに比べて最下流部32Lの方が狭ければ、最上流部32Uと最下流部32Lとの間はどのように形成されていてもよい。例えば、最上流部32Uと最下流部32Lとの間に、幅wが一定の区間があってもよいし、最上流部32Uから最下流部32Lに向かって幅wが徐々に長くなる区間があってもよいし、幅wが不規則に変化する区間があってもよい。
【0048】
上述した実施形態において、ウエハ載置面22aに、外縁に沿ってシールバンドを形成し、全面に複数の小突起を形成し、シールバンドの頂面及び複数の小突起の頂面でウエハWを支持するようにしてもよい。
【0049】
上述した実施形態において、ウエハ載置台10は、ウエハ載置台10を上下方向に貫通する穴を複数有していてもよい。こうした穴としては、ウエハ載置面22aに開口する複数のガス穴やウエハ載置面22aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通させるためのリフトピン穴がある。ガス穴は、ウエハ載置面22aを平面視したときに適当な位置に複数個設けられている。ガス穴には、Heガスのような熱伝導ガスが供給される。通常、ガス穴は、前出のシールバンドや小突起が設けられたウエハ載置面22aのうちシールバンドや小突起が設けられていない箇所に開口するように設けられる。ガス穴に熱伝導ガスが供給されると、ウエハ載置面22aに載置されたウエハWの裏面側の空間に熱伝導ガスが充填される。リフトピン穴は、ウエハ載置面22aを平面視したときにウエハ載置面22aの同心円に沿って等間隔に複数個設けられる。ウエハ載置台10がガス穴やリフトピン穴を有する場合、
図5の部分32xのように、穴の周辺領域に、穴の周辺領域から外れた領域に比べて冷媒流路32の幅wが狭くなっている部分を設けてもよい。こうすれば、ウエハWの均熱性がより高まる。
【0050】
上述した実施形態では、冷却基材30をMMCで作製したが、特にこれに限定されない。冷却基材30を金属(例えばアルミニウムやチタン、モリブデン、タングステン及びそれらの合金)で作製してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、セラミック基材20と冷却基材30とを金属接合層40を介して接合したが、特にこれに限定されない。例えば、金属接合層40の代わりに、樹脂接合層を用いてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、セラミック基材20の中央部22にウエハ吸着用電極26を内蔵したが、これに代えて又は加えて、プラズマ発生用のRF電極を内蔵してもよいし、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。また、セラミック基材20の外周部24にフォーカスリング(FR)吸着用電極を内蔵してもよいし、RF電極やヒータ電極を内蔵してもよい。
【0053】
上述した実施形態では、
図3Aのセラミック焼結体120はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 ウエハ載置台、20 セラミック基材、22 中央部、22a ウエハ載置面、24 外周部、24a フォーカスリング載置面、26 ウエハ吸着用電極、30 冷却基材、32 冷媒流路、32a 入口、32b,32r 円弧部、32c,32e,32g,32i,32k,32m,32o,32q 折り返し部、32d,32f,32h,32j,32l,32n,32p 直線部、32s 出口、32L 最下流部、32U 最上流部、34 フランジ部、36 冷媒供給路、38 冷媒排出路、40 金属接合層、42 絶縁膜、51 端子穴、52 ウエハ吸着用直流電源、53 ローパスフィルタ、54 給電端子、55 絶縁管、62 RF電源、63 ハイパスフィルタ、64 給電端子、70 クランプ部材、70a 内周段差面、72 ボルト、78 フォーカスリング、82 冷媒流路、82a 入口、82b 出口、82L 最下流部、82U 最上流部、94 チャンバ、96 設置板、98 シャワーヘッド、110 接合体、120 セラミック焼結体、130 MMCブロック、131,136 MMC円板部材、132 溝、133,134 貫通穴、135 金属接合層、151a 端子穴上部、151b 端子穴中間部、151c 端子穴下部、232 冷媒流路、232a 入口、232s 出口、232U 最上流部、232L 最下流部、233 フィン、332 冷媒流路、332a 入口、332s 出口、332U 最上流部、332L 最下流部、333 フィン、w 冷媒流路の幅、W ウエハ。