IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7580366電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法
<>
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図1
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図2
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図3
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図4
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図5
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図6
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図7
  • 特許-電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】電力インフラ設計装置および電力インフラ設計方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241101BHJP
   G06Q 50/06 20240101ALI20241101BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021202605
(22)【出願日】2021-12-14
(65)【公開番号】P2023088002
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】北村 聖一
(72)【発明者】
【氏名】高坂 一郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 健人
(72)【発明者】
【氏名】河野 俊介
(72)【発明者】
【氏名】森 智之輔
(72)【発明者】
【氏名】澤邉 剛志
(72)【発明者】
【氏名】岩田 遥介
(72)【発明者】
【氏名】高野 富裕
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/004454(WO,A1)
【文献】特開2006-048475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力インフラを構成する既設の設備に関する情報および増設する設備に関する情報を少なくとも含む設備情報を設定する設備情報設定部と、
将来の電力需要に関する負荷情報および将来の電力供給環境に関する環境情報を平常時と災害時とで設定する負荷情報・環境情報設定部と、
前記設備情報、平常時の前記負荷情報および平常時の前記環境情報に基づいて増設する設備の設備容量の組み合わせを複数作成し、複数の設備構成パターンとする設備構成パターン作成部と、
前記複数の設備構成パターンに対するイニシャルコストを計算するイニシャルコスト計算部と、
前記複数の設備構成パターンと前記負荷情報および前記環境情報に対する平常時のランニングコストを計算する平常時ランニングコスト計算部と、
前記複数の設備構成パターンと前記負荷情報および前記環境情報に対する災害時のレジリエンス性を評価する災害時レジリエンス性評価部と、
前記イニシャルコストと前記平常時のランニングコストの合計と、前記災害時のレジリエンス性の評価結果に基づいて、前記複数の設備構成パターンから、レジリエンス性を満たすと共に、前記イニシャルコストおよび前記平常時のランニングコストの合計が最小となる最適設備構成パターンを決定する最適設備構成パターン決定部と、を備える電力インフラ設計装置。
【請求項2】
前記平常時ランニングコスト計算部は、
最適化手法を用いて、与えられた複数の制約条件の下で予め定めた目的関数が最小となるような解を求めることで、前記平常時のランニングコストを計算し、
前記複数の制約条件は、
予め設定した温室効果ガスの排出量を超過しないような制約条件を含む、請求項1記載の電力インフラ設計装置。
【請求項3】
前記環境情報は、
再生可能エネルギー電源の発電量および電力購入量を含み、
前記最適設備構成パターン決定部は、
前記再生可能エネルギー電源の発電量および前記電力購入量のうち再生可能エネルギー電源由来のものが、前記電力需要に対して所定の比率以上となるように前記最適設備構成パターンを決定する、請求項1記載の電力インフラ設計装置。
【請求項4】
前記設備情報は、
燃料貯蔵設備に関する情報を含み、
前記設備構成パターン作成部は、
前記複数の設備構成パターンにおいて前記燃料貯蔵設備を含む設備構成パターンを作成し、
前記最適設備構成パターン決定部は、
前記燃料貯蔵設備を含む設備構成パターンを前記最適設備構成パターンとして決定する、請求項1記載の電力インフラ設計装置。
【請求項5】
前記平常時ランニングコスト計算部は、
最適化手法を用いて、与えられた複数の制約条件の下で予め定めた目的関数が最小となるような解を求めることで、前記平常時のランニングコストを計算し、
前記複数の制約条件は、
負荷周波数制御容量または予備力に関する制約条件を含む、請求項1記載の電力インフラ設計装置。
【請求項6】
前記災害時レジリエンス性評価部は
最適化手法を用いて、与えられた複数の制約条件の下で目的関数が最大となるような解を求めることで前記災害時のレジリエンス性を評価し、
前記複数の制約条件は、
負荷周波数制御容量または予備力に関する制約条件を含む、請求項1記載の電力インフラ設計装置。
【請求項7】
前記最適設備構成パターン決定部は、
電力系統を模擬したシミュレーションを実行して、決定した前記最適設備構成パターンでの電力の運用を確認する、請求項1記載の電力インフラ設計装置。
【請求項8】
前記設備構成パターン作成部、前記イニシャルコスト計算部、前記平常時ランニングコスト計算部、前記災害時レジリエンス性評価部および前記最適設備構成パターン決定部の処理をまとめて、前記設備容量に関する値を決定変数として定式化し、最適化手法により前記イニシャルコストと前記平常時のランニングコストの合計および前記災害時のレジリエンス性の何れか、または両方を同時に最適化し、前記最適設備構成パターンを決定する最適化計算部を備える、請求項1記載の電力インフラ設計装置。
【請求項9】
処理回路において、電力インフラを構成する既設の設備に関する情報および増設する設備に関する情報を少なくとも含む設備情報、および、
平常時と災害時における将来の電力需要に関する負荷情報および将来の電力供給環境に関する環境情報に基づいて、前記電力インフラを設計する電力インフラ設計方法であって、
前記設備情報、平常時の前記負荷情報および平常時の前記環境情報に基づいて増設する設備の設備容量の組み合わせを複数作成し、複数の設備構成パターンとする設備構成パターン作成処理と、
前記複数の設備構成パターンに対するイニシャルコストを計算するイニシャルコスト計算処理と、
前記複数の設備構成パターンと前記負荷情報および前記環境情報に対する平常時のランニングコストを計算する平常時ランニングコスト計算処理と、
前記複数の設備構成パターンと前記負荷情報および前記環境情報に対する災害時のレジリエンス性を評価する災害時レジリエンス性評価処理と、
前記イニシャルコストと前記平常時のランニングコストの合計と、前記災害時のレジリエンス性の評価結果に基づいて、前記複数の設備構成パターンから、レジリエンス性を満たすと共に、前記イニシャルコストおよび前記平常時のランニングコストの合計が最小となる最適設備構成パターンを決定する最適設備構成パターン決定処理と、を備える電力インフラ設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、経済性とレジリエンス性を考慮して電力インフラ設備を設計する電力インフラ設計装置に関する。
【背景技術】
【0002】
台風および震災など、自然災害による大停電が多発し、レジリエンス対策が注目され始めている。また、脱炭素社会に向けて、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる電源、蓄電池および電気自動車などの蓄エネルギー機器が普及し始めている。このような背景の下、地域レベルでレジリエンス性を確保しつつ、なるべく低コストでエネルギー供給を実現する電力インフラの設計が望まれている。
【0003】
従来の電力インフラ設計装置では、例えば特許文献1に開示されるように、様々な業態の負荷に対して電力需要をデータベース化しておき、それを利用して未知の負荷変動を予測し、マイクログリッドを形成する供給設備の適切な容量算定を可能としている。
【0004】
また、例えば非特許文献1に開示されるように、従来の電力インフラ設計装置では、再生可能エネルギーの大量導入が進み、発電した電力をそのエリア内で自給自足するために、オフグリッドまたはマイクログリッドに対して、低コストかつ電力不足が生じないように、発電した電力を貯蔵したり、内燃式発電機で発電したりすることを考慮して、再生可能エネルギーの適切な容量設計を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-213933号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】蓄電池を活用した再生可能エネルギーを主体とする離島オフグリッドシステムの運用手法および容量選定手法(電気学会 電力・エネルギー部門論文誌 Vol.141、No.6、pp.406-414)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような電力インフラ設計装置にあっては、災害時に上位系統からの電力供給が遮断された場合に備えて、再生可能エネルギー電源、蓄電池、エンジン発電機等を設置して、必要最小限の負荷に電力を供給することで、復旧までの停電期間に備えることが可能である。しかし、運用者によって異なる要求に対して、低コストで所望のレジリエンス性を確保するための適切な設備容量を設計することができない。また、エンジン発電機の設備容量が固定、かつ、燃料消費に制限がないため、燃料貯蔵設備の容量が電力不足までの時間に影響する場合、レジリエンス性を正しく評価できない。
【0008】
本開示は上記のような問題を解決するためになされたものであり、所望のレジリエンス性を満たした上で、低コストとなるように電力インフラ設備を設計することができる電力インフラ設計装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る電力インフラ設計装置は、電力インフラを構成する既設の設備に関する情報および増設する設備に関する情報を少なくとも含む設備情報を設定する設備情報設定部と、将来の電力需要に関する負荷情報および将来の電力供給環境に関する環境情報を平常時と災害時とで設定する負荷情報・環境情報設定部と、前記設備情報、平常時の前記負荷情報および平常時の前記環境情報に基づいて増設する設備の設備容量の組み合わせを複数作成し、複数の設備構成パターンとする設備構成パターン作成部と、前記複数の設備構成パターンに対するイニシャルコストを計算するイニシャルコスト計算部と、前記複数の設備構成パターンと前記負荷情報および前記環境情報に対する平常時のランニングコストを計算する平常時ランニングコスト計算部と、前記複数の設備構成パターンと前記負荷情報および前記環境情報に対する災害時のレジリエンス性を評価する災害時レジリエンス性評価部と、前記イニシャルコストと前記平常時のランニングコストの合計と、前記災害時のレジリエンス性の評価結果に基づいて、前記複数の設備構成パターンから、レジリエンス性を満たすと共に、前記イニシャルコストおよび前記平常時のランニングコストの合計が最小となる最適設備構成パターンを決定する最適設備構成パターン決定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る電力インフラ設計装置によれば、イニシャルコスト計算部、平常時ランニングコスト計算部、災害時レジリエンス性評価部および最適設備構成パターン決定部を備えたことにより、所望のレジリエンス性を満たし、かつ、低コストの電力インフラ設備を設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係る実施の形態1の電力インフラ設計装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2】本開示に係る実施の形態1の電力インフラ設計装置の処理フローを示すフローチャートである。
図3】本開示に係る実施の形態1の電力インフラ設計装置の設備構成パターン作成部で作成するテーブルを示す図である。
図4】本開示に係る実施の形態1の電力インフラ設計装置の処理フローを示すフローチャートである。
図5】本開示に係る実施の形態4の電力インフラ設計装置の構成を示すブロック図である。
図6】本開示に係る実施の形態4の電力インフラ設計装置の処理フローを示すフローチャートである。
図7】実施の形態1~4の電力インフラ設計装置を実現するハードウェア構成を示す図である。
図8】実施の形態1~4の電力インフラ設計装置を実現するハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
<装置構成>
図1は本開示に係る実施の形態1の電力インフラ設計装置100の構成を示す機能ブロック図である。
【0013】
図1に示すように、電力インフラ設計装置100は、制御部1、入力部2、計算条件データベース3、設備情報設定部4、設備データベース5、負荷情報・環境情報設定部6、平常時データベース7、災害時データベース8、設備構成パターン作成部9、計算結果データベース10、イニシャルコスト計算部11、平常時ランニングコスト計算部12、災害時レジリエンス性評価部13、最適設備構成パターン決定部14および出力部15を備えている。
【0014】
制御部1、入力部2、計算条件データベース3、設備データベース5、平常時データベース7、災害時データベース8、設備構成パターン作成部9、計算結果データベース10、イニシャルコスト計算部11、平常時ランニングコスト計算部12、災害時レジリエンス性評価部13、最適設備構成パターン決定部14および出力部15は、内部ネットNWを介して互いに接続されている。
【0015】
制御部1は、設備構成パターン作成部9、計算結果データベース10、イニシャルコスト計算部11、平常時ランニングコスト計算部12、災害時レジリエンス性評価部13および最適設備構成パターン決定部14での処理を統括する。
【0016】
入力部2は、電力インフラを運用する期間を計算期間として入力し、また、所定の期間だけ停電せずに電力を供給できるか、または、ある期間における停電時間の合計を所定の値以下に抑えることができるか等の災害時の停電に対する所望の強靭性(レジリエンス性)等も入力し、計算条件データベース3に保存する。
【0017】
設備情報設定部4は、電力供給設備の自系統内の既設の設備の設備容量および接続関係の情報である系統構成、増設の対象となる設備の設備単価、既設の設備および増設の対象となる設備の保守費用、設備寿命、入出力特性、入出力の上下限値および経年劣化に関する特性である設備特性等を設定し、設備データベース5に保存する。
【0018】
負荷情報・環境情報設定部6は、将来の電力需要に関する負荷情報と、将来の電力供給環境に関する環境情報、例えば、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等の予側情報を時系列データとして設定する。ただし、平常時、災害時によって状況が異なるため、平常時および災害時に分けてこれらを設定し、それぞれ平常時データベース7および災害時データベース8に保存する。なお、平常時とは、電力の上位系統からの電力供給を受けられ、かつ、地域の自系統内の電力供給が問題なく行えている状態を表す。災害時とは、何らかの災害により電力の上位系統からの電力供給を受けられない状態、または、地域の自系統内の電力供給に問題がある、例えば、自系統内の一部または全部に電力供給が行えていない状態を表す。
【0019】
設備構成パターン作成部9は、設備データベース5に保存された設備情報と、平常時データベース7に保存された電力需要および再生可能エネルギー電源の発電量から、増設する設備の設備容量の組み合わせを複数作成し、設備構成パターンとして計算結果データベース10に保存する。このとき、電力需要に対して、過剰に大きな設備構成パターンまたは過剰に小さな設備構成パターンとならないように、現在の設備容量に対して増設する設備容量の組み合わせを作成し、設備構成パターンとする。
【0020】
イニシャルコスト計算部11は、計算条件データベース3に保存された計算期間を参照し、設備構成パターン作成部9で作成した複数の設備構成パターンに対して、それぞれの設備構成パターンのイニシャルコストを計算し、計算結果データベース10に保存する。例えば、設備データベース5に保存された設備単価と、対象となる設備構成パターンの設備容量から、増設する設備への投資を表すイニシャルコストを計算する。
【0021】
平常時ランニングコスト計算部12は、計算条件データベース3に保存された計算期間を参照し、設備構成パターン作成部9で作成した複数の設備構成パターンに対して、それぞれの設備構成パターンの平常時ランニングコストを計算し、計算結果データベース10に保存する。例えば、平常時データベース7に保存された平常時の電力需要、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等を適用して運用した場合のエネルギー運用コスト、すなわち、電力購入費用と燃料費用と設備の保守費用等の合計を表す平常時ランニングコストを計算する。なお、計算結果データベース10には、平常時ランニングコストと合わせて、設備構成パターンに含まれる各設備の平常時運用計画を保存する。
【0022】
災害時レジリエンス性評価部13は、設備構成パターン作成部9で作成した複数の設備構成パターンに対して、それぞれの設備構成パターンの災害時レジリエンス性を評価し、計算結果データベース10に保存する。例えば、災害時データベース8に保存された災害時の電力需要、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等を適用して運用した場合のレジリエンス性、すなわち、何らかの災害により電力の上位系統からの電力供給を受けられない状態において、入力部2で入力した所望のレジリエンス性を満たせるかどうかを評価する。なお、計算結果データベース10には、災害時レジリエンス性と合わせて、設備構成パターンに含まれる各設備の災害時運用計画を保存する。
【0023】
最適設備構成パターン決定部14は、設備構成パターン作成部9で作成した複数の設備構成パターンに対して、災害時レジリエンス性評価部13で評価した結果に基づいて計算条件データベース3に保存された所望のレジリエンス性を満たす設備構成パターンを抽出する。そして、抽出した設備構成パターンの中からイニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が最小となる設備構成パターンを、最適な設備構成パターンとして決定し、決定した最適設備構成パターン、すなわち、増設する設備の最適な設備容量の組み合わせを、計算結果データベース10に保存する。
【0024】
出力部15は、計算結果データベース10に保存した設備構成パターンのうち、最適設備構成パターン決定部14で決定した最適設備構成パターン、その最適設備構成パターンに含まれる設備容量、その設備構成パターンで計算したイニシャルコスト、平常時ランニングコスト、平常時運用計画、その設備構成パターンで評価した災害時レジリエンス性、災害時運用計画等を出力する。
【0025】
なお、出力部15での出力は上記に限定されず、出力部15のディスプレイに、例えば、設備構成パターン作成部9で作成した複数の設備構成パターンに対する、災害時レジリエンス性と、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計の関係をグラフまたはテーブルで示し、運用者がグラフやテーブルの中から所望の設備構成パターンを選択し、その設備構成パターンを計算結果データベース10に保存する構成とすることもできる。
【0026】
すなわち、最適設備構成パターン決定部14で自動的に設備構成パターンを決定するのではなく、運用者がグラフまたはテーブルを見て設備構成パターンを決定する構成とすることもできる。
【0027】
電力インフラ設計装置100はコンピュータで構成することができる。設備データベース5、平常時データベース7、災害時データベース8および計算結果データベース10は、コンピュータが備えるハードディスクドライブおよびメモリ上にデータが記憶されることで構築されるデータベースで実現できる。
【0028】
制御部1、設備構成パターン作成部9、イニシャルコスト計算部11、平常時ランニングコスト計算部12、災害時レジリエンス性評価部13および最適設備構成パターン決定部14は、計算処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサとDRAMなどのメモリで実現できる。
【0029】
入力部2、設備情報設定部4および負荷情報・環境情報設定部6は、マウス、キーボードおよびタッチパネルディスプレイなどの入力デバイスで構成され、入力したデータを、計算条件データベース3、設備データベース5、平常時データベース7および災害時データベース8に保存することができる。さらに通信端末を備えることで外部とのデータ通信が可能となる。
【0030】
出力部15は、ディスプレイモニタなどの出力デバイスで構成され、計算条件データベース3、設備データベース5、平常時データベース7、災害時データベース8および計算結果データベース10に保存したデータを可視化することができ、さらに通信端末を備えることで外部とのデータ通信が可能となる。
【0031】
<処理フロー>
図2は本開示に係る実施の形態1の電力インフラ設計装置100での処理フローを示すフローチャートである。図2に示すように、電力インフラ設計の処理を開始すると、運用者は、入力部2において、設計対象の電力インフラを運用する期間、例えば5年、10年、15年、20年を計算期間として入力し、また、所定の期間だけ停電せずに電力を供給できるか、または、ある期間における停電時間の合計を所定の値以下に抑えることができるか等の災害時の停電に対する所望の強靭性(レジリエンス性)を入力する(ステップS1)。入力した情報は、計算条件データベース3に保存される。
【0032】
また、運用者は、設備情報設定部4において、電力供給設備の系統構成、すなわち、既存の配電線、電柱、変圧器、開閉器、発電容量および蓄電容量などの設備容量を含む電源設備、負荷設備等の設備情報およびそれらの接続情報を設定する(ステップS2)。
【0033】
また、ステップS2では、運用者は、設備情報として、増設の対象となる設備の設備単価、すなわち、増設する設備の単位量あたりの価格、例えば電源の場合は、10万円/kWのような単価、既設の設備および増設の対象となる設備の保守費用、すなわち、既設および増設する設備の単位量あたり、単位時間あたりの費用、例えば1万円/kW・年のような費用も設定する。
【0034】
また、ステップS2では、運用者は、設備情報として、設備寿命、すなわち、既設の設備の残りの寿命、および増設する設備の寿命、設備特性、すなわち、燃料消費量に対する発電量等の入力と出力の関係を表す入出力特性、入力と出力の上下限値、温度特性、すなわち、同じ入力に対して外気温によって出力が変化するといった特性、経年劣化に関する特性、すなわち、設備の設置年数が経過する毎に同じ入力に対して出力が減少するといった特性などを設定する。設定した設備情報等は、設備データベース5に保存される。
【0035】
運用者は、負荷情報・環境情報設定部6において、将来、例えば現在から20年間、または、途中を間引きして、5年後の1年間、10年後の1年間、15年後の1年間、20年後の1年間の計4年間等の電力需要および、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等を例えば30分毎の時系列データとして設定し、負荷情報・環境情報とする(ステップS3)。
【0036】
ただし、平常時および災害時によって状況が異なるため、平常時と災害時に分けて時系列データを設定する。平常時は上位系統からの電力供給を受けられる状態での通常運転を想定した時系列データを年単位で設定し、災害時は上位系統からの電力供給が受けられない状態を想定し、最も電力供給が厳しい、すなわち供給に対して需要が多い過酷な1週間~2週間程度の期間の時系列データを設定する。なお、この期間に限定されず、後のステップS7において災害時レジリエンス性を評価するために十分な期間に設定される。
【0037】
平常時の時系列データを30分毎とする場合、例えば、5年後の1年間、10年後の1年間、15年後の1年間、20年後の1年間の計4年間で、30分毎のデータをそれぞれ1年分用意することもできるが、後段のステップS6において365日分、または366日分の平常時ランニングコストを一気に計算する場合、データ量が多く計算時間がかかる可能性がある。そこで、各年のデータを日毎に分解し、電力需要、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等が似通った日をクラスタリングして代表日を絞り込んだり、季節または曜日等でグループ化して代表日をいくつかに絞り込んだりすることで、計算対象の日数を減らすこともできる。ただし、このようにして平常時ランニングコストを計算する場合は、各代表日のランニングコストに同じクラスタ、またはグループに含まれる日の日数を掛けて加重和を取るなどして、年間を想定したランニングコストを計算することになる。
【0038】
設定した平常時および災害時の負荷情報・環境情報は、それぞれ平常時データベース7および災害時データベース8に保存される。
【0039】
図3は、電力インフラ設計装置100の設備構成パターン作成部9で作成する設備構成パターンをテーブルで表している。設備構成パターン作成部9では、ステップS2で設備データベース5に保存された設備情報と、ステップS3で平常時データベース7に保存された電力需要および再生可能エネルギー電源の発電量から増設する設備の設備容量の組み合わせを複数作成し、それらを設備構成パターンとする(ステップS4)。作成した設備構成パターンは、計算結果データベース10に保存される。
【0040】
ただし、制限を設けないと組み合わせが膨大となるので、適宜に制限を設定する。例えば、設計対象となる電力インフラが、例えば1つの町であって、電力需要が最大で1000kWであれば、追加する発電機の発電容量は、最大でも1000kW程度となるので、0kW、100kW、200kW、・・・、1000kWのように設備容量を100kW間隔で設定し、11種類のパターンを設定する。さらに蓄電池の増設を考慮する場合も同様に、蓄電池の蓄電容量は、最大でも1000kW程度となるので、0kWh、100kWh、200kWh、・・・、1000kWhのように設備容量を100kW間隔で設定し、11種類のパターンを設定する。この場合、これらの2種類の設備のパターンの組み合わせは、11×11=121通りとなる。想定する設備の数が増えると、組み合わせ数が指数関数的に多くなるので、組み合わせ数が多すぎる場合は、設定間隔を大きくして、現実的な時間で計算可能な組み合わせ数、例えば100パターン程度となるように設備構成パターン作成部9での処理を設定する。
【0041】
図3の例では、設備1の設備容量、設備2の設備容量、設備3の設備容量などのように、各設備での設備容量の組み合わせに対して、設備構成パターン1、設備構成パターン2、設備構成パターン3などの名称を付けてテーブルとしている。
【0042】
図3の例に限定されず、例えば、年間の電力需要の最大値に合わせて、電力需要の一部または全部を供給可能な設備容量の組み合わせを作成し、設備構成パターンとすることもできる。
【0043】
簡単な例として、年間の電力需要の最大値が100kW、既設の電源の設備容量が60kWである場合、残りの40kWは購入電力で供給している既存の電力インフラにおいて、ディーゼル発電機を増設する場合、設備容量を10kW間隔で設定し、0kW、10kW、20kW、30kW、40kWの5種類のディーゼル発電機を設定する。30kWのディーゼル発電機を増設する場合は、残りの10kWは購入電力で供給する設備構成パターンとなる。
【0044】
同様に、20kWのディーゼル発電機を増設する場合は、残りの20kWは購入電力で供給し、10kWのディーゼル発電機を増設する場合は、残りの30kWは購入電力で供給する設備構成パターンとなる。
【0045】
このように、設備容量に設定間隔を設けることで設備構成パターンの組み合わせの増大を防止し、かつ、設備構成パターンの作成を簡略化できる。例えば、上記のように設備容量に設定間隔を設ける場合、「電力需要の最大値-Σj(既存の設備容量)=Σi(増設する設備容量)、(i,jは設備を表す)」となるように、増設する設備容量の組み合わせパターンを作成することができる。
【0046】
なお、上記ではディーゼル発電機の例を示したが、それ以外の発電機、蓄電池、太陽光発電、風力発電等を含め、複数種類の電源の組み合わせによる設備容量の組み合わせを作成し、設備構成パターンとすることもできる。さらに、電源だけでなく燃料貯蔵設備等の設備容量も設備構成パターンに含むことができる。
【0047】
この場合、最適設備構成パターン決定部14で燃料貯蔵設備を含めた最適設備構成パターンを決定することができる。
【0048】
また、20年等の長期にわたる設備構成パターンを考える場合、初期の設備構成パターンだけでなく、設備データベース5に保存された各設備の設備寿命を考慮し、途中の設備更新(リプレース)による設備構成パターンも考慮すべきである。このような場合には、設備構成パターンを年毎に作成しても良い。
【0049】
次に、イニシャルコスト計算部11において、計算条件データベース3に保存された計算期間を参照し、ステップS4で作成した複数の設備構成パターンに対して、それぞれの設備構成パターンのイニシャルコストを計算する(ステップS5)。計算したイニシャルコストは、計算結果データベース10に保存される。
【0050】
例えば、ステップS2で設定した設備データベース5に保存された設備単価と、対象となる設備構成パターンの設備容量から、増設する設備への投資を表すイニシャルコストを以下の数式(1)のように計算する。ただし、イニシャルコストをI_cost、設備単価をP[i](iは設備を表す)、設備容量をV[i]とする。
【0051】
【数1】
【0052】
20年等の長期にわたるイニシャルコストを考える場合、初期の設備投資だけでなく、途中の設備更新(リプレース)も考慮する。このような場合は、例えば増設する設備の減価償却を考慮した年毎の設備単価で、年毎の設備単価と、その年の設備構成パターンに含まれる設備容量から、イニシャルコスト、すなわち計算対象となる期間の設備増設に関する費用を以下の数式(2)のように計算することもできる。ただし、年毎の設備単価をP[i、y](yは年を表す)、年毎の設備容量をV[i、y]とする。
【0053】
【数2】
【0054】
次に、平常時ランニングコスト計算部12において、計算条件データベース3に保存された計算期間を参照し、ステップS4で作成した複数の設備構成パターンに対して、それぞれの設備構成パターンの平常時ランニングコストを計算する(ステップS6)。
【0055】
例えば、平常時データベース7に保存された平常時の電力需要、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等を適用して運用した場合のエネルギー運用コスト、すなわち、電力購入費用と燃料費用と設備の保守費用等の合計を表す平常時ランニングコストを計算する。
【0056】
このとき、平常時ランニングコストと合わせて、設備構成パターンに含まれる各設備の平常時運用計画を作成する。具体的には、電力購入費用と燃料費用と設備の保守費用等の合計を表す平常時ランニングコストを、以下の数式(3)で表されるような最小化することを目的とする目的関数とし、数理計画法などの最適化手法を用いて、与えられた制約条件の下で目的関数が最小となるような解を得ることで運用計画を立案し、平常時ランニングコストの計算と平常時運用計画を作成する。ただし、各時刻の電力購入価格をE_price[t]、各時刻の電力購入量をE_buy[t]、各時刻の燃料購入価格をF_price[t]、各時刻の各設備の燃料消費量をF_use[i、t]、年毎の保守費用をM_price[y]とする。ここで、tは平常時の時刻、例えば30分間の時間断面を表し、燃料消費量は燃料を消費する設備のみ値が発生し、燃料を消費しない設備は0となる。
【0057】
【数3】
【0058】
計算した平常時ランニングコストと、作成した平常時運用計画は、計算結果データベース10に保存される。
【0059】
制約条件としては、以下の数式(4)で表されるような、各時刻の電力需要に対して、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、設備構成パターンに含まれる発電設備による発電量の合計で満たすような制約条件が挙げられる。ただし、各時刻の電力需要をE_dem[t]、各時刻の再生可能エネルギー電源の発電量をE_re[t]、各時刻の各設備の発電量をE_gen[i、t]とする。
【0060】
【数4】
【0061】
また、制約条件としては、以下の数式(5)で表されるような、各設備の発電量を燃料消費量の関数として表す制約条件が挙げられる。ただし、各設備の燃料消費量に対する発電量を表す関数で規定される発電特性をfiとする。
【0062】
【数5】
【0063】
また、制約条件としては、以下の数式(6)で表されるような、電力購入量が所定の上限値を超えないようにする制約条件が挙げられる。ただし、各時刻の電力購入量の上限をE_buy_max[t]とする。
【0064】
【数6】
【0065】
また、制約条件としては、以下の数式(7)で表されるような、発電設備による発電量が所定の運用範囲内に収まるようにする制約条件が挙げられる。ただし、各時刻の各設備の運転値、例えば燃料消費量、発電量等をX[i、t]、各設備の運転値の下限値をX_min[i]、各設備の運転値の上限値をX_max[i]とする。
【0066】
【数7】
【0067】
上記数式(3)~(7)において、E_buy[t]、F_use[i、t]、E_gen[i、t]、X[i、t]は連続変数である。また、E_price[t]、F_price[t]、M_price[i、y]、V[i、y]、E_dem[t]、E_re[t]、E_buy_max[t]、X_min[i]、X_max[i]は定数である。
【0068】
ここでは割愛するが、設備構成パターンに蓄電池が加わる場合は、蓄電池の充電残量に関する制約条件、および、蓄電池の充放電量に関する制約条件が付加されることになる。
【0069】
また、ここでは、上位系統からの電力購入について考慮したが、上位系統への電力販売についても考慮する場合は、電力販売費用(収入)に関する項を目的関数に付加すると共に、電力販売量に関する制約条件が付加されることになる。
【0070】
また、ここでは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量については言及していないが、例えば、計算期間において、燃料消費量や電力購入量を二酸化炭素の排出量に換算して、予め定めた所定の排出量を超過しないような制約条件を付加することもできる。
【0071】
この場合、温室効果ガスの排出量が所定の値以上とならないような平常時ランニングコストの計算と平常時運用計画を作成することができる。
【0072】
次に、災害時レジリエンス性評価部13において、ステップS4で作成した複数の設備構成パターンに対して、それぞれの設備構成パターンの災害時レジリエンス性を評価する(ステップS7)。例えば、災害時データベース8に保存された災害時の電力需要、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等を適用して運用した場合のレジリエンス性、すなわち、何らかの災害により電力の上位系統からの電力供給を受けられない状態において、入力部2で入力した所定の期間だけ停電せずに電力を供給できるか、または、ある期間における停電時間の合計を所定の値以下に抑えることができるか等の災害時の停電に対する所望の強靭性(レジリエンス性)を満たせるかどうかを評価する。
【0073】
このとき、災害時レジリエンス性評価と合わせて、設備構成パターンに含まれる各設備の災害時運用計画を作成する。具体的には、災害発生後に初めて電力需要に対して電力供給を満たせなくなる時刻を、以下の数式(8)で表されるような最大化することを目的とする目的関数とし、数理計画法などの最適化手法を用いて、与えられた制約条件の下で目的関数が最大となるような解を得ることで運用計画を立案し、災害時レジリエンス性の評価と災害時運用計画を作成する。ただし、災害発生後に初めて電力供給を満たせなくなる時刻をB_timeとする。
【0074】
【数8】
【0075】
評価した災害時レジリエンス性と、作成した災害時運用計画は、計算結果データベース10に保存される。
【0076】
制約条件としては、以下の数式(9)で表されるような、災害発生後に電力供給を満たせなくなる時刻を最適化問題上で表すための制約条件が挙げられる。ただし、各時刻の電力供給が不足していること、すなわち停電していることを表すフラグ(0:非停電、1:停電)をB_outage[t’]とし、他の値と比べて十分大きい数をBigMとする。ここでt’は災害時の時刻、例えば30分間の時間断面を表す。
【0077】
【数9】
【0078】
また、制約条件としては、以下の数式(10)で表されるような、電力需要に対して電力供給を満たせなくなる場合に制約違反となることを回避するスラック変数、ここでは電力供給不足を回避するための負荷遮断量に関する制約条件が挙げられる。ただし、各時刻のスラック変数をE_slack[t’]とする。
【0079】
【数10】
【0080】
また、制約条件としては、以下の数式(11)で表されるような、各時刻の電力需要に対して、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、設備構成パターンに含まれる発電設備による発電量の合計で満たすような制約条件が挙げられる。これには、制約条件を満たせない場合のスラック変数を含んでいる。ただし、各時刻の電力需要をE_dem[t’]、各時刻の再生可能エネルギー電源の発電量をE_re[t’]、各時刻の電力購入量をE_buy[t’]、各時刻の各設備の発電量をE_gen[i、t’]とする。
【0081】
【数11】
【0082】
また、制約条件としては、以下の数式(12)で表されるような、各設備の発電量を燃料消費量の関数として表す制約条件が挙げられる。ただし、各設備の燃料消費量に対する発電量を表す関数で規定される発電特性をfiとする。
【0083】
【数12】
【0084】
また、制約条件としては、以下の数式(13)で表されるような、電力購入量が所定の上限値を超えないようにする制約条件が挙げられる。ただし、各時刻の電力購入量の上限をE_buy_max[t’]とする。
【0085】
【数13】
【0086】
また、制約条件としては、以下の数式(14)で表されるような、各設備の燃料消費量の合計が燃料貯蔵設備に貯蔵した燃料の量を超えないようにする制約条件が挙げられる。ただし、燃料貯蔵設備の容量をF_tankとする。
【0087】
【数14】
【0088】
また、制約条件としては、以下の数式(15)で表されるような、発電設備による発電量が所定の運用範囲内に収まるようにする制約条件が挙げられる。ただし、各時刻の各設備の運転値、例えば燃料消費量、発電量等をX[i、t’]、各設備の運転値の下限値をX_min[i]、各設備の運転値の上限値をX_max[i]とする。
【0089】
【数15】
【0090】
上記数式(8)~(15)において、B_time、E_slack[t’]、E_buy[t’]、F_use[i、t’]、E_gen[i、t’]、X[i、t’]は連続変数である。B_outage[t’]は0か1を取る離散変数(バイナリ変数)である。また、BigM、E_dem[t’]、E_re[t’]、E_buy_max[t’]、F_tankは定数である。なお、E_buy_max[t’]は、上位系統からの電力供給を受けられない場合は0となる。
【0091】
ここでは割愛するが、設備構成パターンに蓄電池が加わる場合は、蓄電池の充電残量に関する制約条件、蓄電池の充放電量に関する制約条件等が付加されることになる。
【0092】
また、数式(8)の目的関数の代わりに、スラック変数(E_slack[t’])の総和、すなわち負荷遮断量の総和を目的関数として、それを最小化するようにすることも可能である。
【0093】
さらに、数式(8)の代わりに、計算期間において電力供給が不足する時間の総和を最小化することを目的とする目的関数として、電力供給が不足する時間の総和を最小化するように計算することも可能である。
【0094】
次に、制御部1において、計算結果データベース10に保存された複数の設備構成パターンの全てに対して、イニシャルコストおよび平常時ランニングコストを計算し、災害時レジリエンス性を評価したかどうかを判定し(ステップS8)、計算が終了していない設備構成パターンがある場合(Noの場合)は、ステップS5以下の処理を再度実行し、全ての設備構成パターンの計算が終了していればステップS9に移行する。
【0095】
ステップS9では、最適設備構成パターン決定部14において、計算結果データベース10に保存された複数の設備構成パターンのうち、災害時レジリエンス性が、計算条件データベース3に保存された所望のレジリエンス性を満たし、かつ、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が最小となる設備構成パターンを抽出して、最適な設備構成パターン、すなわち増設する設備の設備容量の組み合わせとして決定する。決定した最適な設備構成パターンは、計算結果データベース10に保存される。
【0096】
また、ステップS9では、計算結果データベース10に保存された平常時運用計画から、再生可能エネルギー電源の発電量、および、電力購入量のうち再生可能エネルギー電源由来のものが、電力需要に対してある比率以上となっている設備構成パターンに絞った上で、設備構成パターンを決定することもできる。
【0097】
この場合、最適設備構成パターン決定部14で再生可能エネルギー電源による電力供給量が所定の比率以上となるように、最適設備構成パターンを決定することができる。
【0098】
最後に、出力部15において、計算結果データベース10に保存した設備構成パターンのうち、最適設備構成パターン決定部14で決定した最適設備構成パターン、その最適設備構成パターンに含まれる設備容量、その設備構成パターンで計算したイニシャルコスト、平常時ランニングコスト、平常時運用計画、その設備構成パターンで評価した災害時レジリエンス性および災害時運用計画を出力する(ステップS10)。
【0099】
以上説明したように実施の形態1の電力インフラ設計装置100では、イニシャルコスト計算部11においてイニシャルコストを計算し(ステップS5)、平常時ランニングコスト計算部12において平常時ランニングコストを計算し(ステップS6)、災害時レジリエンス性評価部13において災害時レジリエンス性を評価し(ステップS7)、最適設備構成パターン決定部14において設備構成パターンを決定することにより(ステップS9)、所望のレジリエンス性を満たした上で、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が最小となる最適設備構成パターンを決定することができる。
【0100】
<実施の形態2>
実施の形態1の電力インフラ設計装置100では、自系統内への電力供給のために設備容量を全て使って運用するとの前提で運用していたが、実施の形態2の電力インフラ設計装置100Aでは、自系統内の周波数維持、電力需要および再生可能エネルギーの発電量の急変等に備えて、LFC(Load Frequency Control:負荷周波数制御)容量および予備力を考慮して運用するものとする。なお、実施の形態2の電力インフラ設計装置100Aの装置構成は、図1に示した実施の形態1の電力インフラ設計装置100と同じであり、装置構成を表す図は図1と共通である。
【0101】
実施の形態2の電力インフラ設計装置100Aでは、平常時ランニングコスト計算部12での平常時ランニングコストを計算するステップS6での平常時運用計画の立案に使用する制約条件、および災害時レジリエンス性評価部13での災害時レジリエンス性を評価するステップS7での災害時運用計画の立案に使用する制約条件を変更することに特徴がある。
【0102】
すなわち、電力インフラ設計装置100Aでは、平常時ランニングコスト計算部12での平常時運用計画の立案に使用する制約条件として、以下の数式(16)で表されるような平常時の運用にLFC容量および予備力を考慮するような制約条件を追加する。ただし、各時刻で確保する出力抑制可能量をE_down[t]、各時刻で確保する出力増加可能量をE_up[t]とし、何れも定数とする。これらの定数は、入力部2から入力され、計算条件データベース3に保存され、ステップS5およびステップS6で計算を行う際に計算条件データベース3から抽出される。
【0103】
【数16】
【0104】
制約条件として数式(16)を追加することにより、電力需要および再生可能エネルギーの変動に応じて、供給量を変化させられるように、時刻tにおいて、出力を下げる方の余力としてE_down[t]を、出力を上げる方の余力としてE_up[t]を確保するように、X[i、t]すなわち燃料消費量および発電量等を決定することが可能となる。このE_down[t]およびE_up[t]を考慮することで、LFC容量および予備力を表現することが可能となる。
【0105】
この場合、最適設備構成パターン決定部14でLFC容量および予備力の確保を考慮した上で最適設備構成パターンを決定することができる。
【0106】
また、電力インフラ設計装置100Aでは、災害時レジリエンス性評価部13での災害時運用計画の立案に使用する制約条件として、以下の数式(17)で表されるような災害時の運用にLFC容量や予備力を考慮するような制約条件を追加する。ただし、各時刻で確保する出力抑制可能量をE_down[t’]とし、各時刻で確保する出力増加可能量をE_up[t’]とし、何れも定数とする。これらの定数は、入力部2で入力し、計算条件データベース3に保存され、ステップS5およびステップS6で計算を行う際に計算条件データベース3から抽出される。
【0107】
【数17】
【0108】
制約条件として数式(17)を追加することにより、電力需要および再生可能エネルギーの変動に応じて、供給量を変化させられるように、時刻t’において、出力を下げる方の余力としてE_down[t’]を、出力を上げる方の余力としてE_up[t’]を確保するように、X[i、t’]すなわち燃料消費量および発電量等を決定することが可能となる。このE_down[t’]およびE_up[t’]により、LFC容量および予備力を表現することが可能となる。
【0109】
この場合、最適設備構成パターン決定部14でLFC容量および予備力の確保を考慮した上で最適設備構成パターンを決定することができる。
【0110】
以上説明したように、実施の形態2の電力インフラ設計装置100Aでは、LFC容量および予備力を考慮して計算することで、所望のレジリエンス性を満たした上で、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が最小となる設備構成パターンを決定する際に、より精緻な運用を実現することが可能となる。
【0111】
<実施の形態3>
以上説明した実施の形態1の電力インフラ設計装置100および実施の形態2の電力インフラ設計装置100Aでは、最適設備構成パターン決定部14において設備構成パターンを決定することを示したが、その設備構成パターンによる電力の運用が、電力系統に与える影響までは考慮していなかった。
【0112】
実施の形態3の電力インフラ設計装置100Bでは、電力系統を模擬したシミュレーションにより、決定した最適設備構成パターンでの電力の運用に問題がないかを確認することができる。なお、実施の形態3の電力インフラ設計装置100Bの装置構成は、図1に示した実施の形態1の電力インフラ設計装置100と同じであり、装置構成を表す図は図1と共通である。
【0113】
図4は、電力インフラ設計装置100Bでの処理フローを示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、ステップS1~S9までは、図2に示した実施の形態1の電力インフラ設計装置100のフローチャートと同じであるが、ステップS9の直後に電力系統を模擬したシミュレーションを実行するステップS11を有している点で異なっている。
【0114】
ステップS11では、最適設備構成パターン決定部14で決定した最適設備構成パターンに含まれる電源設備を電力系統に設置し、対象となる電力系統を模擬して、平常時データベース7、または、災害時データベース8に保存した電力需要、再生可能エネルギー電源の発電量を考慮して電源設備を運用した場合に、変圧器や配電線等の電力系統の設備における電流、電圧を算出するシミュレーションを行う。
【0115】
そして、シミュレーションで算出した電流、電圧が、許容範囲に収まるか否かを判断し(ステップS12)、許容範囲に収まる場合(Yesの場合)はステップS10に移行し、一方、許容範囲に収まらない場合(Noの場合)は、許容範囲に収まるように計算条件を変更して再度ステップS1以下の処理を繰り返し、許容範囲に収まるまで同様の処理を繰り返す。
【0116】
当該シミュレーションは、例えば、「河野、北山、高野:「スマートグリッドを支えるシミュレーション技術」,三菱電機技報・Vol.86・No.2・2012」で開示されているような公知のシミュレーション技術を用いることができ、最適設備構成パターン決定部14で実行することができる。
【0117】
以上説明したように、実施の形態3の電力インフラ設計装置100Bでは、最適設備構成パターンを決定した後で、電力系統を模擬したシミュレーションを実行することで、決定した最適設備構成パターンに含まれる電源構成で運用を行った場合に、電流、電圧が許容範囲に収まることを確認した上で、設備構成パターンを決定することが可能となる。
【0118】
<実施の形態4>
以上説明した実施の形態1の電力インフラ設計装置100、実施の形態2の電力インフラ設計装置100Aおよび実施の形態3の電力インフラ設計装置100Bでは、複数の設備構成パターンを設定し、それぞれの設備構成パターンに対して、イニシャルコストと平常時ランニングコストを計算し、災害時レジリエンス性を評価した上で、所望のレジリエンス性を満たし、かつ、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が最小となる設備構成パターンを決定していた。
【0119】
実施の形態4の電力インフラ設計装置200では、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計および災害時レジリエンス性の何れか、または両方を同時に最小化する最適化問題を解くことで、最適設備構成パターンを決定することを特徴としている。
【0120】
すなわち、実施の形態1の電力インフラ設計装置100では、設備容量そのものは変数ではなく、設備構成パターンに組み込まれた定数を使っている。設備構成パターン1つに対して、1回の最適化計算を実施するので、設備構成パターンの組み合わせ数だけ最適化計算を実施し、複数回の最適化計算の結果から、目的関数が最良(最小または最大)となった設備構成パターンを、最終的な設備構成パターンとして決定する。
【0121】
一方、実施の形態4の電力インフラ設計装置200では、設備容量自体を変数(決定変数)として最適化計算を実施するので、最適化計算は1回で済む。
【0122】
<装置構成>
図5は本開示に係る実施の形態4の電力インフラ設計装置200の構成を示す機能ブロック図である。なお、図5においては、図1を用いて説明した電力インフラ設計装置100と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0123】
図5に示すように、電力インフラ設計装置200は、制御部1、入力部2、計算条件データベース3、設備情報設定部4、設備データベース5、負荷情報・環境情報設定部6、平常時データベース7、災害時データベース8、計算結果データベース10、出力部15および最適化計算部16を備えている。
【0124】
最適化計算部16は、計算条件データベース3、設備データベース5、平常時データベース7および災害時データベース8に保存された情報に基づいて、所望のレジリエンス性を満たし、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が最小となる設備構成パターン、すなわち増設する設備の設備容量の組み合わせを決定し、計算結果データベース10に保存する。
【0125】
<処理フロー>
図6は本開示に係る実施の形態4の電力インフラ設計装置200での処理フローを示すフローチャートである。図6に示すように、電力インフラ設計の処理を開始すると、運用者は、入力部2において、災害発生後に何日間また何時間電力を供給し続けたいかを災害時の停電に対する所望のレジリエンス性として入力する(ステップS1)。入力した情報は、計算条件データベース3に保存される。
【0126】
また、運用者は、設備情報設定部4において、電力供給設備の系統構成、すなわち、既存の配電線、電柱、変圧器、開閉器、発電容量および蓄電容量などの設備容量を含む電源設備、負荷設備等の設備情報およびそれらの接続情報を設定する(ステップS2)。
【0127】
また、ステップS2では、運用者は、設備情報として、増設の対象となる設備の設備単価、すなわち、増設する設備の単位量あたりの価格、例えば電源の場合は、10万円/kWのような単価、既設の設備および増設の対象となる設備の保守費用、すなわち、既設および増設する設備の単位量あたり、単位時間あたりの費用、例えば1万円/kW・年のような費用も設定する。
【0128】
運用者は、負荷情報・環境情報設定部6において、将来、例えば現在から20年間、または、途中を間引きして、5年後の1年間、10年後の1年間、15年後の1年間、20年後の1年間の計4年間等の電力需要および、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、電力購入価格、燃料購入価格等を例えば30分毎の時系列データとして設定し、負荷情報・環境情報とする(ステップS3)。
【0129】
実施の形態4の電力インフラ設計装置200では、図2を用いて説明した実施の形態1の電力インフラ設計装置100のステップS4~ステップS9の処理をステップS20の最適化計算の実行で代替する。
【0130】
ステップS20を実行する最適化計算部16では、最適化問題を以下の数式(18)から数式(30)のように定式化する。定式化としては、基本的にはステップS6とステップS7で示した定式化を合わせたものであり、ステップS6で用いていた数式(3)を以下では数式(18)として最小化することを目的とする目的関数で表す。
【0131】
【数18】
【0132】
また、ステップS7では災害発生後に初めて電力供給を満たせなくなる時刻を数式(8)の目的関数で表していたが、以下の数式(19)のように災害発生後に初めて電力供給を満たせなくなる時刻が所望のレジリエンス性として設定する時刻以降となるような制約条件に変換する。ただし、計算条件データベース3に保存された所望のレジリエンス性として設定する時刻、すなわち災害発生後に初めて電力供給を満たせなくなる時刻のうち許容可能な時刻をResilienceとする。また、F_tankを連続変数とし、X_max[i]を設備iの運転値の上限値、すなわち設備iの設備容量を表す連続変数とし、設備iの運転値の下限値を表すX_min[i]は、X_max[i]の変動に応じて変わるものとする。これらの変数は、ステップS11で計算を行う際に計算条件データベース3から抽出される。
【0133】
【数19】
【0134】
また、制約条件としては、以下の数式(20)で表されるような、災害発生後に電力供給を満たせなくなる時刻を最適化問題上で表すための制約条件が挙げられる。なお、数式(20)は数式(9)と同じである。
【0135】
【数20】
【0136】
さらに説明すれば、実施の形態1の電力インフラ設計装置100では、電力供給を満たせなくなる時刻がなるべく遅くなるように、最適化計算を行う。すなわち、設定した設備構成パターンの設備を使って、災害発生後に電力供給できる期間がなるべく長くなるように運用を最適化することになる。換言すれば、設定した設備構成パターンで、災害発生後に最大何日間または何時間電力を供給し続けられるかを計算することになる。
【0137】
一方、実施の形態4の電力インフラ設計装置200では、電力インフラ事業者(運用者)が、災害発生後に何日間また何時間電力を供給し続けたいかを予め設定しておき、その期間を満たし、かつコストが最小となるように設備容量を決定する。換言すれば、災害発生後に所望の期間だけ電力を供給し続けるには、少なくともコストがいくらかかるかを計算することになる。
【0138】
また、制約条件としては、以下の数式(21)で表されるような、電力需要に対して電力供給を満たせなくなる場合に制約違反となることを回避するスラック変数、ここでは電力供給不足を回避するための負荷遮断量に関する制約条件が挙げられる。なお、数式(21)は数式(10)と同じである。
【0139】
【数21】
【0140】
また、制約条件としては、以下の数式(22)で表されるような、各時刻の電力需要に対して、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、設備構成パターンに含まれる発電設備による発電量の合計で満たすような制約条件が挙げられる。なお、数式(22)は数式(4)と同じである。
【0141】
【数22】
【0142】
また、制約条件としては、以下の数式(23)で表されるような、各時刻の電力需要に対して、再生可能エネルギー電源の発電量、電力購入量、設備構成パターンに含まれる発電設備による発電量の合計で満たすような制約条件が挙げられる。これには、制約条件を満たせない場合のスラック変数を含んでいる。なお、数式(23)は数式(11)と同じである。
【0143】
【数23】
【0144】
また、制約条件としては、以下の数式(24)で表されるような、各設備の発電量を燃料消費量の関数として表す制約条件が挙げられる。なお、数式(24)は数式(5)と同じである。
【0145】
【数24】
【0146】
また、制約条件としては、以下の数式(25)で表されるような、各設備の発電量を燃料消費量の関数として表す制約条件が挙げられる。なお、数式(25)は数式(12)と同じである。
【0147】
【数25】
【0148】
また、制約条件としては、以下の数式(26)で表されるような、電力購入量が所定の上限値を超えないようにする制約条件が挙げられる。なお、数式(26)は数式(6)と同じである。
【0149】
【数26】
【0150】
また、制約条件としては、以下の数式(27)で表されるような、電力購入量が所定の上限値を超えないようにする制約条件が挙げられる。なお、数式(27)は数式(13)と同じである。
【0151】
【数27】
【0152】
また、制約条件としては、以下の数式(28)で表されるような、各設備の燃料消費量の合計が燃料貯蔵設備に貯蔵した燃料の量を超えないようにする制約条件が挙げられる。なお、数式(28)は数式(14)と同じである。
【0153】
【数28】
【0154】
また、制約条件としては、以下の数式(29)で表されるような、発電設備による発電量が所定の運用範囲内に収まるようにする制約条件が挙げられる。なお、数式(29)は数式(7)と同じである。
【0155】
【数29】
【0156】
また、制約条件としては、以下の数式(30)で表されるような、発電設備による発電量が所定の運用範囲内に収まるようにする制約条件が挙げられる。なお、数式(30)は数式(15)と同じである。
【0157】
【数30】
【0158】
<変形例>
上述した実施の形態4の電力インフラ設計装置200では、所望のレジリエンス性を満たすように、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計を最小化する最適化問題を解くことで、最適な設備構成パターンを決定していたが、所望の費用を満たすように、すなわち、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が所定の値以下になるように、レジリエンス性、すなわち、災害発生後に初めて電力供給を満たせなくなる時刻を最大化するように定式化を変更しても良い。
【0159】
具体的には、数式(18)を以下に示す数式(31)のように変更し、数式(19)を以下に示す数式(32)のように変更する。ただし、所望の費用を定数のTargetCostとし、予め入力部2から入力し、計算条件データベース3に保存しているものとする。
【0160】
【数31】
【0161】
【数32】
【0162】
上述した実施の形態4およびその変形例での最適化計算の結果として得られるイニシャルコスト、平常時ランニングコスト、平常時運用計画、災害時レジリエンス性、災害時運用計画およびX_max[i]、F_tankなどの設備容量の組み合わせで表される設備構成パターンは、計算結果データベース10に保存される。
【0163】
以上説明したように、実施の形態4の電力インフラ設計装置200では、最適化計算部16において、設備容量を変数として最適化計算を行うことにより、所望のレジリエンス性を満たした上で、イニシャルコストと平常時ランニングコストの合計が最小となる設備構成パターンを決定することができる。
【0164】
<ハードウェア構成>
なお、以上説明した実施の形態1~4の電力インフラ設計装置100、100A、100Bおよび200の各構成要素は、コンピュータを用いて構成することができ、コンピュータがプログラムを実行することで実現される。すなわち、電力インフラ設計装置100~200は、例えば図7に示す処理回路50により実現される。処理回路50には、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサが適用され、記憶装置に格納されるプログラムを実行することで各部の機能が実現される。
【0165】
なお、処理回路50には、専用のハードウェアが適用されても良い。処理回路50が専用のハードウェアである場合、処理回路50は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたもの等が該当する。
【0166】
電力インフラ設計装置100~200は、構成要素の各々の機能が個別の処理回路で実現されても良いし、それらの機能がまとめて1つの処理回路で実現されても良い。
【0167】
また、図8には、処理回路50がプロセッサを用いて構成されている場合におけるハードウェア構成を示している。この場合、電力インフラ設計装置100~200の各部の機能は、ソフトウェア等(ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェア)との組み合わせにより実現される。ソフトウェア等はプログラムとして記述され、メモリ52に格納される。処理回路50として機能するプロセッサ51は、メモリ52(記憶装置)に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、このプログラムは、電力インフラ設計装置100~200の構成要素の動作の手順および方法をコンピュータに実行させるものであると言える。
【0168】
ここで、メモリ52は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)およびそのドライブ装置等、または、今後使用されるあらゆる記憶媒体であっても良い。
【0169】
以上、電力インフラ設計装置100~200の各構成要素の機能が、ハードウェアおよびソフトウェア等の何れか一方で実現される構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、電力インフラ設計装置100~200の一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であっても良い。例えば、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路50でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ51としての処理回路50がメモリ52に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0170】
以上のように、電力インフラ設計装置100~200は、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0171】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0172】
2 入力部、3 計算条件データベース、4 設備情報設定部、5 設備データベース、6 負荷情報・環境情報設定部、7 平常時データベース、8 災害時データベース、9 設備構成パターン作成部、10 計算結果データベース、11 イニシャルコスト計算部、12 平常時ランニングコスト計算部、13 災害時レジリエンス性評価部、14 最適設備構成パターン決定部、15 出力部、16 最適化計算部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8