(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】飛行体の制御装置
(51)【国際特許分類】
B64D 31/18 20240101AFI20241101BHJP
B64D 27/33 20240101ALI20241101BHJP
B64D 27/357 20240101ALI20241101BHJP
B64D 35/024 20240101ALI20241101BHJP
【FI】
B64D31/18
B64D27/33
B64D27/357
B64D35/024
(21)【出願番号】P 2021211054
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 久夫
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-039420(JP,A)
【文献】国際公開第2011/077528(WO,A1)
【文献】特表2019-506327(JP,A)
【文献】特開2020-182372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0346283(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057650(US,A1)
【文献】特表2020-511350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 27/00
B64D 31/00
B64D 35/00
B64C 39/02
B64U 50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体に搭載された発電機と、
前記発電機を駆動させる駆動源と、
前記発電機で発電された電力を貯蓄するバッテリと、
前記発電機及び前記バッテリの少なくとも一方から供給される電力により駆動される電気モータと、
前記電気モータにより回転するプロペラと、
前記飛行体の飛行状態に基づいて、前記発電機から前記電気モータへの電力の供給及び前記バッテリから前記電気モータへの電力の供給を切り替える切替制御部と、
前記バッテリの現在の充電量である第一充電電力量を検出するバッテリ状態検出部と、
前記バッテリ状態検出部により検出された前記第一充電電力量に基づいて、前記発電機から前記バッテリへ供給する電力量を制御する充電量制御部と、
を備え、
前記充電量制御部は、
前記飛行体が巡航を開始した後、前記飛行体の飛行計画に基づいて、次回の飛行時の離陸に必要な前記バッテリの充電量である第二充電電力量を算出し、
前記第一充電電力量及び前記第二充電電力量に基づいて、前記発電機から前記バッテリへ電力を供給するタイミングを予測し、
前記タイミングにおいて前記発電機から前記バッテリへの電力供給を開始させ
、
前記飛行体は、前記発電機及び前記駆動源をそれぞれ複数有し、
前記バッテリを充電する際には、複数の前記発電機及び前記駆動源を作動させ、
前記バッテリから放電する際には、複数の前記発電機及び前記駆動源のうちひとつを作動させることを特徴とする飛行体の制御装置。
【請求項2】
前記飛行体が離陸から巡航に移行したタイミングと、前記充電量制御部により予測された前記タイミングと、のそれぞれにおいて複数の前記発電機及び前記駆動源による前記バッテリへの充電を行うことを特徴とする請求項
1に記載の飛行体の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンエンジンと、ガスタービンエンジンにより発電された電力を貯蓄するバッテリと、を備えた飛行体が知られている。これらの飛行体では、より効率的な飛行制御を実施するための技術が種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ガスタービンエンジン及びバッテリを備えた飛行体において、バッテリに貯蓄された電力量に基づいて、ガスタービンエンジンの作動と停止とを切り替える制御システムの構成が開示されている。少なくともガスタービンエンジンが停止されている間は、電気モータ(及びプロペラ)を回転させるための電力を、ガスタービンエンジンで発電される電力からバッテリにより供給される電力に切り替える。特許文献1に記載の技術によれば、ガスタービンエンジン及びバッテリの出力を切り替えることにより、ガスタービンエンジンを常に最も燃費が良好な最大出力付近で使用することができる。これにより、ガスタービンエンジンのエネルギ効率を向上できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、バッテリの電力量が所定値まで減少する度に、バッテリの電力量が最大となるまで充電を行う。このため、バッテリが充放電される時間が増加し、バッテリの劣化が進行し易くなるおそれがあった。さらに、燃費向上のためにガスタービンエンジンを常に最大出力で動作させているので、ガスタービンエンジンの劣化も進行し易くなるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、燃料消費を抑制しつつ、駆動源及びバッテリの劣化を抑制することができる飛行体の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明に係る飛行体の制御装置(例えば、実施形態における制御装置1)は、飛行体に搭載された発電機(例えば、実施形態における発電機2)と、前記発電機を駆動させる駆動源(例えば、実施形態におけるガスタービンエンジン3)と、前記発電機で発電された電力を貯蓄するバッテリ(例えば、実施形態におけるバッテリ4)と、前記発電機及び前記バッテリの少なくとも一方から供給される電力により駆動される電気モータ(例えば、実施形態における電気モータ5)と、前記電気モータにより回転するプロペラ(例えば、実施形態におけるプロペラ6)と、前記飛行体の飛行状態に基づいて、前記発電機から前記電気モータへの電力の供給及び前記バッテリから前記電気モータへの電力の供給を切り替える切替制御部(例えば、実施形態における切替制御部7)と、前記バッテリの現在の充電量である第一充電電力量(例えば、実施形態における第一充電電力量P1)を検出するバッテリ状態検出部(例えば、実施形態におけるバッテリ状態検出部8)と、前記バッテリ状態検出部により検出された前記第一充電電力量に基づいて、前記発電機から前記バッテリへ供給する電力量を制御する充電量制御部(例えば、実施形態における充電量制御部11)と、を備え、前記充電量制御部は、前記飛行体が巡航を開始した後、前記飛行体の飛行計画(例えば、実施形態における次回の飛行計画53及び今回の飛行計画54)に基づいて、次回の飛行時の離陸に必要な前記バッテリの充電量である第二充電電力量(例えば、実施形態における第二充電電力量P2)を算出し、前記第一充電電力量及び前記第二充電電力量に基づいて、前記発電機から前記バッテリへ電力を供給するタイミング(例えば、実施形態における第二充電タイミングT2)を予測し、前記タイミングにおいて前記発電機から前記バッテリへの電力供給を開始させ、前記飛行体は、前記発電機及び前記駆動源をそれぞれ複数有し、前記バッテリを充電する際には、複数の前記発電機及び前記駆動源を作動させ、前記バッテリから放電する際には、複数の前記発電機及び前記駆動源のうちひとつ(例えば、実施形態における第一の発電機21及び第一のガスタービンエンジン31)を作動させることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明に係る飛行体の制御装置は、前記飛行体が離陸から巡航に移行したタイミング(例えば、実施形態における第一充電タイミングT1)と、前記充電量制御部により予測された前記タイミング(例えば、実施形態における第二充電タイミングT2)と、のそれぞれにおいて複数の前記発電機及び前記駆動源による前記バッテリへの充電を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の飛行体の制御装置によれば、充電量制御部は、次回の離陸時に必要な電力量をバッテリに充電する。このため、充電量が減少する度に最大まで充電する従来技術と比較して、バッテリへの充電量及び充放電の回数を低減できる。これにより、バッテリの劣化を抑制できる。
充電量制御部は、次回の離陸時に必要な電力をバッテリに充電するために必要な充電開始タイミングを予測する。予測されたタイミングで充電を開始することで、次回の離陸時に必要な電力を確保するための発電量分だけ、駆動源を作動させる。これにより、駆動源での燃料消費を最小限に抑えることができる。また、充電量制御部は、駆動源からバッテリへ電力を供給するタイミングを制御する。これにより駆動源の作動時間を抑えることができるので、駆動源の劣化を抑制できる。
したがって、燃料消費を抑制しつつ、駆動源及びバッテリの劣化を抑制することができる飛行体の制御装置を提供できる。
さらに飛行体は、着陸時点で次回の離陸に必要な電力をバッテリに貯蓄している。このため、飛行体が連続飛行を行う場合に電力供給による時間のロスを抑制し、飛行体の飛行計画を効率的に実施することができる。
飛行体は駆動源及び発電機をそれぞれ複数備えるので、例えば駆動源及び発電機の故障等に対応することが可能となり、飛行体の安全性を向上できる。充電時には複数の駆動源及び発電機を作動させることにより、バッテリへの充電を急速に実施することができる。これにより、急な要求出力の増加等に対応することができる。よって、飛行体の安全性をより一層高めるとともに、飛行体の操作性を向上できる。
一方、バッテリの放電時には複数の駆動源及び発電機のうちひとつを作動させることにより、駆動源及び発電機の劣化を抑制できる。さらに放電時に少なくともひとつの駆動源及び発電機が作動するので、バッテリからの放電量も抑制できる。よって、バッテリが充放電される時間を低減し、バッテリの劣化を抑制できる。
また、要求出力に応じて駆動源の稼働基数を変更することで、最適なオペレーションポイントを設定できる。よって、駆動源におけるエネルギ消費量を最小限に抑えることができる。
【0012】
本発明の請求項2に記載の飛行体の制御装置によれば、バッテリへの急速充電を行う回数を制限することにより、バッテリが充放電される時間を低減し、バッテリの劣化を抑制できる。ここで、飛行体は離陸時に最も電力を消費する。このため、離陸から巡航へ移行したタイミングで充電を行うことにより、バッテリの充電量が最低充電量となる前に充電を開始することができる。よって、バッテリへの負荷を低減し、バッテリの劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る飛行体の制御装置の回路構成図。
【
図2】実施形態に係るバッテリの充放電のタイミングを示すグラフ。
【
図3】実施形態に係る制御装置による制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
(飛行体の制御装置)
図1は、実施形態に係る飛行体の制御装置1(以下、単に制御装置1という場合がある。)の回路構成図である。
制御装置1は、例えば航空機等の飛行体(不図示)の機体に搭載されている。制御装置1は、詳しくは後述する発電機2で発電される電力によって駆動される複数の電気モータ5により飛行体を推進させる、ハイブリッド推進システムを構成している。
制御装置1は、駆動源3と、発電機2と、バッテリ4と、電気モータ5と、プロペラ6と、切替制御部7と、バッテリ状態検出部8と、飛行状態検出部9と、飛行計画取得部10と、充電量制御部11と、を備える。
【0016】
(駆動源)
駆動源3は、例えばガスタービンエンジンである。なお、本実施形態ではガスタービンエンジン3を駆動源の一例として説明するが、これに限られない。駆動源3は、発電機2を作動させて電力を生成するための動力装置であればよく、例えば燃料電池等であってもよい。
本実施形態において、ガスタービンエンジン3は複数(本実施形態では2個)設けられる。以下の説明において複数のガスタービンエンジン3を互いに区別しない場合は、単にガスタービンエンジン3という場合がある。各ガスタービンエンジン3は、圧縮機及びタービンを有する。圧縮機は、航空機の機体に設けられた不図示の通風孔から吸入される吸入空気を圧縮する。タービンは、回転軸を介して圧縮機と接続され、圧縮機と一体回転する。
【0017】
(発電機)
発電機2は、各ガスタービンエンジン3と接続されている。本実施形態において、発電機2は、ガスタービンエンジン3に対応して複数(本実施形態では2個)設けられている。以下の説明において複数の発電機2を互いに区別しない場合は、単に発電機2という場合がある。発電機2とガスタービンエンジン3との間には、変速機構等が設けられていてもよい。発電機2は、タービンの駆動によって電力(交流電力)を発電する。発電機2で発電された交流電力は、パワードライブユニット(PDU)のコンバータで直流電力に変換され、バッテリ4に貯留される。
【0018】
(バッテリ)
バッテリ4には、ガスタービンエンジン3の駆動によって発電機2において発電された電力のうち、電気モータ5によって消費されなかった余剰電力が貯留される。バッテリ4に貯蓄された電力は、電気モータ5を駆動するための電力として利用可能となっている。つまりバッテリ4は、コンバータの発電電力がインバータの消費電力を上回るとき、余剰電力を吸収して充電する。一方、バッテリ4は、コンバータの発電電力がインバータの消費電力を下回るとき、不足電力を補うように放電する。
【0019】
(電気モータ)
電気モータ5は、例えばロータ及びステータを有するブラシレスDCモータである。電気モータ5は、発電機2及びバッテリ4にそれぞれ接続される。バッテリ4からの放電電力及び発電機2からの電力のうち少なくとも一方は電気モータ5に供給される。なお、電気モータ5は、不図示の姿勢保持用あるいは水平推進用の補助モータ等を含んでもよい。
【0020】
(プロペラ)
プロペラ6は、電気モータ5に接続されている。電気モータ5とプロペラ6との間には、電気モータ5とプロペラ6とを機械的に接続するプロペラシャフトが設けられる。制御信号に応じて電気モータ5のロータが回転することでプロペラ6が回転する。制御信号は、パイロットの操作または自動操縦における指示に基づく航空機を制御するための信号である。
【0021】
つまり、飛行体は、主にガスタービンエンジン3で駆動する発電機2によって発電される電力によって電気モータ5を駆動させ、電気モータ5によって回転するプロペラ6によって推力を得るように構成される。また、発電機2において発電された余剰電力をバッテリ4に貯蓄し、必要に応じてバッテリ4からの電力を電気モータ5を駆動するための電力として利用することが可能である。
【0022】
(切替制御部)
切替制御部7は、発電機2から電気モータ5への電力の供給と、バッテリ4から電気モータ5への電力の供給と、を切り替える。具体的に切替制御部7は、少なくとも以下の(i)~(iii)のいずれかの状態となるように発電機2、バッテリ4、及び電気モータ5を制御する。
(i)発電機2から電気モータ5へ電力を供給するとともにバッテリ4から電気モータ5への電力の供給を停止した状態。
(ii)発電機2から電気モータ5への電力の供給を停止するとともにバッテリ4から電気モータ5へ電力を供給する状態。
(iii)発電機2及びバッテリ4の両方から電気モータ5へ電力を供給する状態。このとき、発電機2又はバッテリ4のそれぞれからの電力の供給量の割合は必要に応じて変化させることが可能である。
切替制御部7は、飛行体の飛行状態に基づいて、上記(i)~(iii)のいずれかの状態に切り替える制御を行う。
【0023】
(バッテリ状態検出部)
バッテリ状態検出部8は、バッテリ4の充電状態を検出する。バッテリ状態検出部8は、バッテリ4の充電状態として、例えばバッテリ4の現在の充電量(第一充電電力量P1)や充電時の充電スピード、放電時の放電スピード等を検出する。
【0024】
(飛行状態検出部)
飛行状態検出部9は、飛行体に搭載された各種センサからの検出結果を取得することにより、飛行体の飛行状態を検出する。具体的に、飛行状態検出部9は、例えば飛行体の現在の高度や速度、姿勢を検出し、これらの情報に基づいて飛行体の要求出力を算出する。加えて飛行状態検出部9は、電気モータ5における消費電力やガスタービンの稼働状態、パイロットからの指示、飛行経路等の情報を検出する。なお、飛行状態検出部9は、フライトコントローラを介した各種情報等、上述した以外の飛行状態に関する情報を取得してもよい。
【0025】
(飛行計画取得部)
飛行計画取得部10は、飛行体の飛行計画を取得する。飛行計画は、飛行体の離陸、上昇、巡航、下降、着陸等の情報を含む。飛行計画は、少なくとも今回の飛行計画54と、次回の飛行計画53と、を含む。なお、実施形態における「上昇」及び「下降」は、請求項における「巡航」に含まれる。
【0026】
(充電量制御部)
充電量制御部11には、バッテリ状態検出部8、飛行状態検出部9及び飛行計画取得部10の結果が出力される。充電量制御部11は、バッテリ状態検出部8、飛行状態検出部9及び飛行計画取得部10の結果に基づいて、発電機2からバッテリ4への電力供給、発電機2から電気モータ5への電力供給、及びバッテリ4から電気モータ5への電力供給を制御する。充電量制御部11での制御結果は、切替制御部7に出力される。切替制御部7は、充電量制御部11からの信号に基づいて、発電機2から電気モータ5への電力の供給と、バッテリ4から電気モータ5への電力の供給と、を切り替える。
【0027】
図2は、実施形態に係るバッテリ4の充放電のタイミングを示すグラフである。
図2の横軸(下)は、飛行体の姿勢を表す。
図2の横軸(上)は、バッテリ4の充放電の状態を表す。
図2の縦軸は、バッテリ4の充電量(SOC)を表す。
図2に示すように、充電量制御部11は、バッテリ4の充電及び放電を制御する。
【0028】
図1及び
図2に示すように、飛行体が離陸するとき、発電機2及びバッテリ4の両方から電力が電気モータ5へ供給される。すなわち充電量制御部11は、ガスタービンエンジン3の駆動によって発電機2で発電された電力を電気モータ5へ供給させるとともに、バッテリ4を放電させてバッテリ4からの電力を電気モータ5へ供給させる。
【0029】
飛行体がタイミングT1(本実施形態では上昇を開始したタイミング)に到達すると、切替制御部7により、発電機2から電気モータ5へ電力を供給するとともにバッテリ4から電気モータ5への電力の供給を停止した状態に切り替えられる。その結果、ガスタービンエンジン3の駆動により発電機2で発電された電力のうち電気モータ5の駆動に必要な電力が電気モータ5へ供給される。発電機2で発電された電力の電気モータ5で消費されなかった残りの電力は、バッテリ4へ供給される。すなわち充電量制御部11は、ガスタービンエンジン3の駆動により発電された電力によりバッテリ4を充電させる。上昇時にバッテリ4を充電する際には、複数の発電機2及びガスタービンエンジン3が全て作動する。
【0030】
飛行体が巡航を開始すると、切替制御部7により、発電機2及びバッテリ4の両方から電気モータ5へそれぞれ電力を供給する状態に切り替えられる。その結果、ガスタービンエンジン3の駆動により発電機2で発電された電力は、全て電気モータ5へ供給される。さらにバッテリ4からの電力が電気モータ5へ供給される。すなわち充電量制御部11は、バッテリ4を放電させる。巡航時にバッテリ4を放電する際には、複数の発電機2及びガスタービンエンジン3のうちひとつを作動させる。本実施形態では、2個の発電機2及びガスタービンエンジン3のうち、第一の発電機21及び第一のガスタービンエンジン31のみを作動させ、第二の発電機22及び第二のガスタービンエンジン32の作動を停止する。
【0031】
飛行体がタイミングT2(本実施形態では下降を開始したタイミング)に到達すると、切替制御部7により、発電機2から電気モータ5へ電力を供給するとともにバッテリ4から電気モータ5への電力の供給を停止した状態に再び切り替えられる。その結果、ガスタービンエンジン3の駆動により発電機2で発電された電力のうち電気モータ5の駆動に必要な電力が電気モータ5へ供給される。発電機2で発電された電力の電気モータ5で消費されなかった残りの電力は、バッテリ4へ供給される。すなわち充電量制御部11は、ガスタービンエンジン3の駆動により発電された電力によりバッテリ4を充電させる。下降時にバッテリ4を充電する際には、上昇時と同様、複数の発電機2及びガスタービンエンジン3が全て作動される。
【0032】
飛行体が着陸を開始すると、切替制御部7により、発電機2及びバッテリ4の両方から電気モータ5へそれぞれ電力を供給する状態に切り替えられる。その結果、ガスタービンエンジン3及びバッテリ4の両方から電力が電気モータ5へ供給される。すなわち充電量制御部11は、ガスタービンエンジン3の駆動によって発電機2で発電された電力を電気モータ5へ供給させるとともに、バッテリ4を放電させてバッテリ4からの電力を電気モータ5へ供給させる。
【0033】
このように充電量制御部11は、飛行体の飛行中における所定のタイミングでバッテリ4の充電を行う。本実施形態において、充電量制御部11は、飛行体が離陸から巡航(上昇を含む)に移行したタイミング(第一充電タイミングT1)と、充電量制御部11により予測されたタイミング(第二充電タイミングT2)と、の2つのタイミングにおいて複数の発電機2及びガスタービンエンジン3によるバッテリ4への充電を行う。
【0034】
第一充電タイミングT1は、上述したとおり飛行体が離陸から巡航(上昇)に移行したタイミングである。離陸時は最もバッテリ4の電力消費が大きいので、離陸直後にバッテリ4の充電を開始することにより、バッテリ4の充電量の大幅な低下を抑制している。
【0035】
第二充電タイミングT2は、飛行体が巡航を開始した後であって、本フライトの着陸まで及び次回の離陸時に必要とされる電力をバッテリ4に充電させるために必要と充電量制御部11により予測されたタイミングである。つまり充電量制御部11は、今回の飛行計画54及び次回の飛行計画53に基づいて、将来必要とされる電力量を算出し、その電力量をバッテリ4に充電させるために必要な時間から第二充電タイミングT2を予測する。
【0036】
充電量制御部11における予測制御について以下に詳細に説明する。
まず充電量制御部11は、飛行体が巡航を開始した後、所定のタイミング(本実施形態では上昇から巡航に移行した直後の第三タイミングT3)において充電開始タイミングの予測制御を開始する。予測制御が開始されると、充電量制御部11は、飛行体の次回の飛行計画53に基づいて、次回の飛行時の離陸に必要なバッテリ4の充電量(第二充電電力量P2)を算出する。
【0037】
次に、充電量制御部11は、バッテリ4の現在の充電量である第一充電電力量P1と、次回の離陸に必要なバッテリ4の充電量である第二充電電力量P2と、今回の飛行計画54における着陸までに必要なバッテリ4の充電量である第三充電電力量P3と、に基づいて発電機2からバッテリ4へ電力を供給する第二充電タイミングT2を予測する。第二充電電力量P2とは、少なくとも次回の飛行計画53が開始されてから離陸が完了するまでの間に必要とされるバッテリ4電力の合計値である。第三充電電力量P3とは、充電量制御部11が予測制御を開始した時点(現時点)から、今回の飛行計画54における残りの巡航、下降、及び着陸が完了するまでの間に必要とされるバッテリ4の電力の合計値である。
【0038】
充電量制御部11は、本フライトが完了した時点において第一充電電力量P1から第二充電電力量P2及び第三充電電力量P3の合計値を差し引いた残留SOC予測値が、予め設定された第一目標充電電力量PN以上となるように、第二充電タイミングT2を予測する(P1-(P2+P3)≧PN)。本実施形態において、第一目標充電電力量PNは、バッテリ4の充電可能な総電力量(すなわちバッテリ4の充電容量)の50%に設定されている。なお、第一目標充電電力量PNの値はこれに限定されない。
飛行体の状態が予測された第二充電タイミングT2に達すると、充電量制御部11は、発電機2からバッテリ4へ電力の供給を行わせることにより、バッテリ4の充電を開始する。
【0039】
つまり
図2における第三タイミングT3で予測を開始し、予測された第二充電タイミングT2にて充電を開始する。なお、
図2に示す例では第二充電タイミングT2と、巡航から下降へ移行するタイミングと、が一致しているが、これに限られない。第二充電タイミングT2は、例えば巡航中(実施形態における「巡航中」及び「下降中」を含む)の所定のタイミングで設定されてもよい。
【0040】
(充電量制御部における制御の流れ)
図3は、実施形態に係る制御装置1による制御の流れを示すフローチャートである。以下、
図3を用いて充電量制御部11における制御の流れについてより詳細に説明する。各符号については
図1を併せて参照されたい。
【0041】
まず、充電量制御部11は、バッテリ状態検出部8からの結果を取得することにより、バッテリ4の状態を検出する(ステップS01)。充電量制御部11は、少なくともバッテリ4の現在の充電量である第一充電電力量P1を取得する。次に、充電量制御部11は、飛行計画取得部10から、今回の飛行計画54及び次回の飛行計画53を取得する(ステップS03)。
【0042】
次に、充電量制御部11は、フライトコントローラ等からの情報を取得することにより、機体の情報が正常であるか否かを判定する(ステップS05)。正常であると判定された場合(ステップS05でYES)、充電量制御部11は、さらに飛行体が巡航を開始しているか否かを判定する(ステップS07)。
【0043】
ステップS05において機体情報が正常で無いと判定された場合(ステップS05でNO)、及びステップS07で巡航を開始していないと判定された場合(ステップS07でNO)はいずれも、ステップS25に進む。
【0044】
ステップS25では、バッテリ4の現在の充電量である第一充電電力量P1が、第二目標充電電力量PT以上か否かを判定する。第二目標充電電力量PTは、第一目標充電量PNと異なる値に設定されている。第一充電電力量P1が第二目標充電電力量PT以上である場合(ステップS25でYES)、充電量制御部11はバッテリ4への充電を行うことなくガスタービンエンジン3に出力させる(ステップS19)。そして本処理を終了する。
【0045】
ステップS25において第一充電電力量P1が第二目標充電電力量PTより小さい場合(ステップS25でNO)、充電量制御部11はバッテリ4に充電させるとともにガスタービンエンジン3に出力させる(ステップS27)。その後、充電量制御部11は、第一充電電力量P1が第二目標充電電力量PTに到達したか否かを判定する(ステップS29)。充電量制御部11は、第一充電電力量P1が第二目標充電電力量PTに到達するまでバッテリ4への充電及びガスタービンエンジン3での出力を継続する。第一充電電力量P1が第二目標充電電力量PTに到達すると(ステップS29でYES)、ステップS19に進み、バッテリ4への充電を停止してガスタービンエンジン3に出力させ、処理を終了する。
【0046】
一方、ステップS05及びステップS07でいずれもYESの場合、ステップS09に進む。ステップS09では、まず充電量制御部11は、ステップS03で取得した次回の飛行計画53に基づいて第二充電電力量P2を算出するとともに、今回の飛行計画54に基づいて第三充電電力量P3を算出する。その後充電量制御部11は、第一充電電力量P1から第二充電電力量P2及び第三充電電力量P3の合計値を差し引いた値である残留SOC予測値が、第一目標充電電力量PN以上であるか否か判定する(P1-(P2+P3)≧PN)(ステップS09)。残留SOC予測値が第一目標充電電力量PN以上である場合(ステップS09でYES)、ステップS19に進み、バッテリ4への充電を行わずにガスタービンエンジン3に出力させ、処理を終了する。
【0047】
ステップS09において残留SOC予測値が第一目標充電電力量PNより小さい場合(ステップS09でNO)、充電量制御部11は、残留SOC予測値と第一目標充電電力量PNとの差分に基づいて、必要なバッテリ4の電力量を算出する。さらに充電量制御部11は、算出したバッテリ4の電力量をバッテリ4に充電するために必要な時間及びガスタービンエンジン3の出力等から、バッテリ4への充電を開始すべきタイミングである第二充電タイミングT2を予測する(ステップS11)。
【0048】
次に、充電量制御部11は、現在の飛行状態が、予測した第二充電タイミングT2と一致するか否かを判定する(ステップS13)。現在の飛行状態が予測した第二充電タイミングT2と一致するまでステップS13の処理が繰り返し実行される。
【0049】
現在の飛行状態が予測した第二充電タイミングT2と一致した場合(ステップS13でYES)、充電量制御部11は、バッテリ4に充電させるとともにガスタービンエンジン3に出力させる(ステップS15)。その後、充電量制御部11は、残留SOC予測値が第一目標充電電力量PNに到達したか否かを判定する(ステップS17)。充電量制御部11は、残留SOC予測値が第一目標充電電力量PNに到達するまでバッテリ4への充電及びガスタービンエンジン3での出力を継続する。
【0050】
残留SOC予測値が第一目標充電電力量PNに到達すると(ステップS17でYES)、ステップS19に進み、バッテリ4への充電を停止してガスタービンエンジン3に出力させ、処理を終了する。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
【0051】
(作用、効果)
次に、上述の飛行体の制御装置1の作用、効果について説明する。
本実施形態の飛行体の制御装置1によれば、充電量制御部11は、次回の離陸時に必要な電力量をバッテリ4に充電する。このため、充電量が減少する度に最大まで充電する従来技術と比較して、バッテリ4への充電量及び充放電の回数を低減できる。これにより、バッテリ4の劣化を抑制できる。
充電量制御部11は、次回の離陸時に必要な電力をバッテリ4に充電するために必要な充電開始タイミングを予測する。予測されたタイミングで充電を開始することで、次回の離陸時に必要な電力を確保するための発電量分だけ、駆動源(ガスタービンエンジン3)を作動させる。これにより、ガスタービンエンジン3での燃料消費を最小限に抑えることができる。また、充電量制御部11は、ガスタービンエンジン3からバッテリ4へ電力を供給するタイミングT2を制御する。これによりガスタービンエンジン3の作動時間を抑えることができるので、ガスタービンエンジン3の劣化を抑制できる。
したがって、燃料消費を抑制しつつ、ガスタービンエンジン3及びバッテリ4の劣化を抑制することができる飛行体の制御装置1を提供できる。
さらに飛行体は、着陸時点で次回の離陸に必要な電力をバッテリ4に貯蓄している。このため、飛行体が連続飛行を行う場合に電力供給による時間のロスを抑制し、飛行体の飛行計画を効率的に実施することができる。
【0052】
飛行体はガスタービンエンジン3及び発電機2をそれぞれ複数備えるので、例えばガスタービンエンジン3及び発電機2の故障等に対応することが可能となり、飛行体の安全性を向上できる。充電時には複数のガスタービンエンジン3及び発電機2を作動させることにより、バッテリ4への充電を急速に実施することができる。これにより、急な要求出力の増加等に対応することができる。よって、飛行体の安全性をより一層高めるとともに、飛行体の操作性を向上できる。
一方、バッテリ4の放電時には複数のガスタービンエンジン3及び発電機2のうちひとつを作動させることにより、ガスタービンエンジン3及び発電機2の劣化を抑制できる。さらに放電時に少なくともひとつのガスタービンエンジン3及び発電機2が作動するので、バッテリ4からの放電量も抑制できる。よって、バッテリ4が充放電される時間を低減し、バッテリ4の劣化を抑制できる。
また、要求出力に応じてガスタービンエンジン3の稼働基数を変更することで、最適なオペレーションポイントを設定できる。よって、ガスタービンエンジン3におけるエネルギ消費量を最小限に抑えることができる。
【0053】
バッテリ4への急速充電を行う回数を制限することにより、バッテリ4が充放電される時間を低減し、バッテリ4の劣化を抑制できる。ここで、飛行体は離陸時に最も電力を消費する。このため、離陸から巡航へ移行したタイミングT1で充電を行うことにより、バッテリ4の充電量が最低充電量となる前に充電を開始することができる。よって、バッテリ4への負荷を低減し、バッテリ4の劣化を抑制できる。
【0054】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述の実施形態では、2個の発電機2及びガスタービンエンジン3を有する構成について説明したが、発電機2及びガスタービンエンジン3はそれぞれ3個以上設けられてもよい。
【0055】
駆動源としてガスタービンエンジン3が用いられる例について説明したが、これに限られない。駆動源として、例えば燃料電池等が用いられてもよい。
充電量制御部11は、飛行体の動作等を制御する飛行体の制御部と接続されてもよい。充電量制御部11は、飛行体の制御部の一部として構成されてもよい。
第二目標充電電力量PTと第一目標充電量PNとが同じ値に設定されてもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 飛行体の制御装置
2 発電機
3 ガスタービンエンジン(駆動源)
4 バッテリ
5 電気モータ
6 プロペラ
7 切替制御部
8 バッテリ状態検出部
9 飛行状態検出部
10 飛行計画取得部
11 充電量制御部
53 次回の飛行計画(飛行計画)
54 今回の飛行計画(飛行計画)
P1 第一充電電力量
P2 第二充電電力量
P3 第三充電電力量
T1 第一充電タイミング(離陸から巡航に移行したタイミング)
T2 第二充電タイミング(予測されたタイミング)
PN 第一目標充電電力量
PT 第二目標充電電力量