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特許7580374ポリマー架橋触媒としての有機スズコポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-31
(45)【発行日】2024-11-11
(54)【発明の名称】ポリマー架橋触媒としての有機スズコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/04 20060101AFI20241101BHJP
   C09D 143/00 20060101ALI20241101BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20241101BHJP
【FI】
C08F230/04
C09D143/00
C08F8/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021527810
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019082239
(87)【国際公開番号】W WO2020104661
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】18207796.6
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】チュー,チョンリヤン
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-161782(JP,A)
【文献】特開昭63-107906(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123388(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2019/0310552(US,A1)
【文献】特開昭60-231771(JP,A)
【文献】特開昭63-304069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 230/04
C08F 220/10
C09D 143/00
C09D 133/04
C08F 8/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー主鎖と、前記ポリマー主鎖に結合した、互いに異なる少なくとも2種類の側鎖(S1)と(S2)、すなわち
少なくとも1つのスズ含有部位を含む1つ以上の側鎖(S1)、
と、
式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する1つ以上の側鎖(S2)
とを含み、
前記1つ以上の側鎖(S1)が、部分構造(PS1)
【化1】
で表され、
式中、
記号
【化2】
は、前記コポリマーの主鎖に対する部分構造(PS1)の共有結合を示し、
パラメータaは、0又は1であり、そして
、R及びRは、互いに独立して、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、又は各場合とも7~30個の炭素原子を有するアルキルアリール基又はアリールアルキル基を表すことを特徴とする、(メタ)アクリルコポリマー。
【請求項2】
前記1つ以上の側鎖(S1)を含有する少なくとも1つの構造単位(SU1)の、前記1つ以上の側鎖(S2)を含有する少なくとも1つの構造単位(SU2)に対する相対モル比が、前記(メタ)アクリルコポリマー中で、15:1~1:2.5の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
前記1つ以上の側鎖(S1)を含有する構造単位(SU1)の量が、前記コポリマーのあらゆる構造単位の合計量に基づいて少なくとも20モル%であること、及び前記1つ以上の側鎖(S2)を含有する構造単位(SU2)の量が、前記コポリマーのあらゆる構造単位の合計量に基づいて少なくとも10モル%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコポリマー。
【請求項4】
パラメータaが1であり、そしてR、R及びRが、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、又は3~20個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基を表すことを特徴とする、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項5】
が、18~60個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の非環式脂肪族残基であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記1つ以上の側鎖(S2)が、部分構造(PS2)
【化3】
で表され、
式中、
記号
【化4】
は、コポリマーの主鎖に対する部分構造(PS2)の共有結合を示し、
パラメータbは、0又は1であり、
パラメータcは、2~20の範囲であり、
は、請求項1又はで定義した意味を有し、
各Rは、独立して、水素、ヒドロキシル、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、又は3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基を表し、そして
各Rは、独立して、水素、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、又は3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基を表すことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載のコポリマー。
【請求項7】
パラメータbが1であり、パラメータcが2~10の範囲であり、各Rが独立して水素又はヒドロキシルを表し、そして各Rが水素を表すことを特徴とする、請求項6に記載のコポリマー。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコポリマーであって、そのポリマー主鎖に結合した、側鎖(S1)及び(S2)の両方と異なる少なくともさらに1種類の側鎖(S3)、すなわち、
部分構造(PS3)
【化5】
で表される1つ以上の側鎖(S3)を有し、
式中、記号
【化6】
は、コポリマーの主鎖に対する部分構造(PS3)の共有結合を示し、
は、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、又は各場合とも7~30個の炭素原子を有するアルキルアリール基又はアリールアルキル基を示すことを特徴とする、コポリマー。
【請求項9】
請求項8に記載のコポリマーであって、互いに異なる構造単位(SU1)、(SU2)及び(SU3)のうちの少なくとも1つを含有し、(SU1)が少なくとも1つの側鎖(S1)を含有し、(SU2)が少なくとも1つの側鎖(S2)を含有し、(SU3)が少なくとも1つの側鎖(S3)を含有すること、そして構造単位(SU1)、(SU2)及び(SU3)の合計量に基づいて、以下のモル%の割合で、
・ 10~70モル%の構造単位(SU1)、
・ 10~40モル%の構造単位(SU2)、及び
・ 5~60モル%の構造単位(SU3)
を含有することを特徴とし、
前記コポリマー中の構造単位(SU1)及び(SU2)及び(SU3)の合計含有量が100モル%まで加算される、コポリマー。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の(メタ)アクリルコポリマーの製造方法であって、少なくとも1つの工程を含み、この工程において、
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させて前記コポリマーを形成するか、
又は
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び
(s2) 少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマーであって、その少なくとも1つの官能基は式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)で表される少なくとも1つのエステル基に変換するのに好適である、前記少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させて前記コポリマーを形成し、続いてポリマー類似反応で、少なくとも1つのモノマー(s2)から得られた構造単位の少なくとも1つの官能基を、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)で表される少なくとも1つのエステル基に変換する、製造方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の(メタ)アクリルコポリマーを、触媒として、コーティング組成物における架橋反応において、及び/又はコーティング組成物のポットライフを延ばすために、及び/又はコーティング組成物の硬化温度を下げるために、使用する方法。
【請求項12】
少なくとも1つのポリマーをバインダー成分(a)として、請求項1から9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの(メタ)アクリルコポリマーを成分(b)として含むコーティング組成物であって、前記バインダー成分(a)の前記ポリマーが、成分(b)の前記(メタ)アクリルコポリマーとは異なる、コーティング組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリルコポリマーを成分(b)として、前記コーティング組成物の合計質量に基づいて0.1~5質量%の量で含有する、請求項12に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
少なくとも1つの工程(1)、すなわち、(1)請求項12又は13に記載のコーティング組成物を基材に適用する工程、を含む、基材のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー主鎖と、前記ポリマー主鎖に結合した、互いに異なる少なくとも2種類の側鎖(S1)と(S2)、すなわち、少なくとも1つのスズ含有部位を含む1つ以上の側鎖(S1)と、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する1つ以上の側鎖(S2)とを含む、(メタ)アクリルコポリマーに関するものであり、前記コポリマーの製造方法に関するものであり、コーティング組成物における架橋反応の触媒としての、及び/又はコーティング組成物のポットライフを延ばすための、及び/又はコーティング組成物の硬化温度を下げるための、前記コポリマーの使用方法に関するものであり、前記コポリマーを含むコーティング組成物に関するものであり、そして前記コーティング組成物を基材に適用する工程を含む基材のコーティング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排出及び燃料消費を低減するために車両を軽量化する今日の取り組みにおいて、自動車の相手先商標製品製造会社(OEM)は、アルミニウム、マグネシウム及びポリマー基材を含む、より軽量な材料をますます使用している。ポリマー基材の場合、この基材は通常、金属基材に適用される標準的なベーク温度で変形するので、より低い硬化温度が必要である。触媒の使用は、コーティング組成物の所望の架橋反応をこのような低温で進行させるので、より低い温度での硬化を提供するための実行可能なアプローチとして出現した。
【0003】
しかしながら、触媒の使用に関しては欠点がある。特にイソシアネート/ヒドロキシル架橋反応のための触媒として2K自動車コーティングにおいて広範に使用されているジブチルスズジラウレートなどの標準的なスズ触媒は、短い適用時間窓がもたらされるレベルで、許容可能な速い硬化速度及び十分な最終製品特性を提供するのみである。触媒の遺伝的欠点のために、単に触媒量を操作することによって、架橋反応における反応性と安定性の間の作用バランスをとることは、非常に困難なようである。
【0004】
有機スズ化合物及び/又はスズ塩のような従来のスズ触媒などの、先行技術の触媒の欠点を回避するために、触媒のカプセル化が非常に有望な解決策となっている。なぜなら、触媒のカプセル化が成功すれば、触媒を含有するコーティング組成物の早期劣化を避けるために、制御された方法で触媒を供給できるからである。このようなシステムの多くは、使用する触媒を物理的に吸収-脱着するためにポリマー担体を使用している。担体の特性に依存して、担体にせん断力が適用されたときに触媒の放出を制御することさえできるシステムもある。先行技術のカプセル化システムは、例えば、US2015/132592A1A1、US2015/133595A1A1及びUS2016/090455A1に開示されている。US2015/132592A1A1は、フィルム形成樹脂及び触媒、例えばジブチルスズジラウレートなどのスズ触媒を含有するコーティング組成物に関するものであり、これは担体内に含有されるか又は担体でカプセル化されており、周囲温度におけるコーティングシステムの硬化速度の制御及びポットライフの改善を提供することを目的としている。前記触媒は、せん断力を適用するcure と放出されることがある。US2015/133595A1A1は、有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウレートなどの触媒を開示しており、これはエチレン性不飽和モノマーから調製されたポリマーにカプセル化されており、水性コーティングシステムに使用することができる。前記文献は、コーティングシステムのための硬化速度の加速及びポットライフを延ばすことを目的としている。最後に、US2016/090455A1は、熱硬化性樹脂及びポリマーナノ粒子を含む組成物に関するものであり、これはとりわけ硬化プロセス中に触媒を放出する。前記文献は、低い硬化温度、短い硬化時間、同時に長いアウトタイムを可能にすることを目的としている。
【0005】
しかしながら、US2015/132592A1A1、US2015/133595A1A1及びUS2016/090455A1に開示されているようなこれらのカプセル化されたシステムの欠点は、これらが物理的な吸収-脱着プロセスに依存しており、システム全体に触媒の所望の均一な分布が常に観察されるとは限らないという事実をしばしばもたらすことである。さらに、ポットライフ及び/又は硬化速度は常に満足できるものではなく、及び/又は硬化温度の低下は、常に十分な程度まで達成できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】US2015/132592A1A1
【文献】US2015/133595A1A1
【文献】US2016/090455A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の根底にある目的は、コーティング組成物における架橋反応、特にヒドロキシル/イソシアネート架橋反応に有用な触媒を提供することであり、この触媒は先行技術の触媒システムの前述の欠点を示さない。特に、本発明の根底にある目的は、コーティング組成物中で使用されるときに、触媒活性を制御できるだけでなく、これら組成物に改善されたポットライフを提供し、そこで触媒を均一に分布させるような触媒を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本願の特許請求の範囲に記載の主題、及び本明細書に開示するその好ましい実施形態、すなわち本明細書に記載の主題によって解決された。
【0009】
よって本発明の第1の主題は、(メタ)アクリルコポリマーであり、前記(メタ)アクリルコポリマーは、ポリマー主鎖と、前記ポリマー主鎖に結合した、互いに異なる少なくとも2種類の側鎖(S1)と(S2)、すなわち
少なくとも1つのスズ含有部位、すなわち有機スズ部位を含む1つ以上の側鎖(S1)、
と、
式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する1つ以上の側鎖(S2)
とを含む。
【0010】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの工程を含む、本発明の(メタ)アクリルコポリマーの調製方法であって、この工程において、
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させてコポリマーを形成するか、又は
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換するのに好適な少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させてコポリマーを形成し、続いてポリマー類似反応で、少なくとも1つのモノマー(s2)から得られた構造単位の少なくとも1つの官能基を、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換する。
【0011】
本発明のさらなる主題は、本発明の(メタ)アクリルコポリマーを、触媒として、特にカプセル化された触媒として、コーティング組成物における架橋反応において、及び/又はコーティング組成物のポットライフを延ばすために、及び/又はコーティング組成物の硬化温度を下げるために、使用する方法である。
【0012】
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つのポリマーをバインダー成分(a)として、少なくとも1つの本発明の(メタ)アクリルを成分(b)として含むコーティング組成物である。ここでバインダー成分(a)のポリマーは、成分(b)の(メタ)アクリルコポリマーとは異なる。
【0013】
さらなる主題は、少なくとも1つの工程(1)、すなわち、(1)本発明のコポリマーを含有する本発明のコーティング組成物を基材に適用する工程、を含む、基材のコーティング方法である。
【0014】
驚くべきことに、本発明のコポリマーの提供によって、新しい触媒カプセル化システムを確立できることがわかった。これは、スズ触媒部位をコポリマーに組み込むために化学反応を利用するものであり、先行技術の単に物理的な吸収-脱着に基づく触媒カプセル化システムと比較して、非常に特別である。
【0015】
さらに、驚くべきことに、本発明のコポリマー上の側鎖(S2)は、或る特定の温度範囲内で、例えば室温(18℃)から上限臨界溶解温度(UCST)までで、コポリマーが炭化水素溶媒に混和しない状態を維持するのに役立つことが分かった。言い換えれば、これらの側鎖(S2)の存在により、本発明のコポリマーの側鎖(S1)内に存在する有機スズ部位が、驚くべきことにカプセル化された状態で存在する。このカプセル化された状態からの制御された触媒の放出は、前記UCSTに到達するとすぐに達成することができる。それは、本発明のコポリマーが完全に混和性となり、触媒部位として使用するためのそのスズ含有部位が、架橋されるべきコーティング組成物中の対象の官能部位と自由に相互作用することができるからである。このシステムの利点は特に、長いポットライフを有するコーティング組成物が提供されることだけでなく、選択された適用温度で、触媒、すなわち本発明のコポリマーのスズ含有部位の性能を制御できるが、適用温度で触媒性能には悪影響が生じないことである。その結果、安定した低温ベークのコーティングシステムに到達することができる。特に、驚くべきことに、本発明のコポリマーを有機溶媒(単数又は複数)ベースのコーティング組成物などのコーティング組成物に組み込んだ場合に、この予想外の効果が起こることが分かった。室温(18℃)でソルベントナフサ及び/又はトルエン混合物のような溶媒にコポリマーを良好に分散させると、溶液全体にコポリマーが均一に分布し、相分離の維持により良好なカプセル化が確実となる。特に55~60℃に加熱すると、コポリマー分散液は完全に混和性の溶液となり、触媒が放出されて、本発明のコポリマーの触媒部位それぞれがコーティング組成物中の対象の官能基と自由に相互作用できるようになる。特に55~60℃の放出温度範囲は、典型的なコーティング組成物の貯蔵温度を克服するのに十分な高温でありながら、ベーク温度に達する前に触媒を放出するのに十分な低温であるので、理想的である。
【0016】
従って、さらに驚くべきことに、先行技術のカプセル化された触媒システムの物理的な吸収-脱着プロセスとは対照的に、本発明のコポリマーは、スズ含有触媒部位をシステム全体にはるかにより均一に分布させ、これらの部位内のスズの触媒活性がより予測できるようになることが期待され、そしてより均一な触媒の供給が可能となることが分かった。
【0017】
触媒として使用するための本発明のコポリマーの製造は、存在する1つ以上の側鎖の結果である、その化学的修飾からも恩恵を得ることができる。前記製造方法の再現がはるかに容易だからである。
【0018】
最後に、驚くべきことに、ジブチルスズオキシドから得られたモノマーから誘導されたスズ含有構造単位を有するコポリマー内で、ジオクチルスズオキシドから得られたモノマーから誘導された構造単位に対する毒性の減少傾向が観察されることも分かった。このように、本発明のコポリマーのスズ含有構造単位に、より長いアルキル鎖を使用することで、毒性を抑制し、特に低下させることができる。これにより、「より環境に優しい」触媒システムを提供することができ、ひいては、より持続可能な化学が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
コポリマー
本発明の(メタ)アクリルコポリマーは、ポリマー主鎖と、前記ポリマー主鎖に結合した互いに異なる少なくとも2種類の側鎖(S1)と(S2)、すなわち、少なくとも1つのスズ含有部位を含む1つ以上の側鎖(S1)と、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する1つ以上の側鎖(S2)とを含む。
【0020】
ここで、本発明による(メタ)アクリルコポリマーは、「(本)発明によるコポリマー」又は「本発明のコポリマー」又は「本発明の(メタ)アクリルコポリマー」とも呼ばれる。
【0021】
「(メタ)アクリル」という用語は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。従って、「(メタ)アクリルコポリマー」とは一般に、「アクリルモノマー」のみから形成されてもよく、「メタクリルモノマー」のみから形成されてもよく、「アクリルモノマー及びメタクリルモノマー」の両方から形成されてもよい。しかし、アクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマー以外のエチレン性不飽和モノマー、例えば、スチレンなども、「(メタ)アクリルコポリマー」に追加で含有されてもよい。換言すれば、(メタ)アクリルコポリマーとは、アクリル及び/又はメタクリルモノマー単位のみからなっていてもよいが、そうである必要はない。好ましくは、(メタ)アクリルコポリマーの主鎖は、50モル%を超える、さらにより好ましくは75モル%を超える、特に100モル%の(メタ)アクリルモノマーから形成される。
【0022】
本発明の(メタ)アクリルコポリマーは、互いに異なる少なくとも2種類の構造単位(SU1)及び(SU2)を含有する。構造単位(SU1)は、少なくとも1つの側鎖(S1)を含有し、少なくとも1つのモノマー(s1)を利用して調製される。このモノマーは、少なくとも1つの側鎖(S1)をコポリマーに導入すること、及びコポリマー内に構造単位(SU1)を形成することに好適である。構造単位(SU2)は、少なくとも1つの側鎖(S2)を含有し、少なくとも1つのモノマー(s2)を利用して調製される。このモノマーは、重合中又はその後のポリマー類似反応において、少なくとも1つの側鎖(S2)をコポリマーに導入すること、及びコポリマー内に構造単位(SU2)を形成することに好適である。本発明のコポリマーは、少なくとも1つの側鎖(S3)を含有し、少なくとも1つのモノマー(s3)を利用して調製される、少なくとも1つの追加の構造単位(SU3)をさらに含んでもよい。このモノマーは、少なくとも1つの側鎖(S3)をコポリマーに導入すること、及びコポリマー内に構造単位(SU3)を形成することに好適である。
【0023】
好ましくは、本発明のコポリマー中の構造単位(SU1)の量(モル%)は、本発明のコポリマー中の構造単位(SU2)の量(モル%)よりも多い。
【0024】
好ましくは、少なくとも1つの構造単位(SU1)の少なくとも1つの構造単位(SU2)に対する相対モル比は、(メタ)アクリルコポリマー中で、20:1~1:5の範囲であり、より好ましくは15:1~1:2.5の範囲であり、さらにより好ましくは12:1~1:1の範囲であり、さらになお好ましくは10:1~1:1の範囲であり、特に2:1~1:1の範囲である。
【0025】
好ましくは、(メタ)アクリルコポリマー中の構造単位(SU1)の量は、各場合ともコポリマーのあらゆる構造単位の合計量に基づいて、少なくとも15モル%、より好ましくは少なくとも20モル%、さらにより好ましくは少なくとも25モル%、又は少なくとも30モル%、さらになお好ましくは少なくとも35モル%、特に少なくとも40モル%である。
【0026】
好ましくは、(メタ)アクリルコポリマー中の構造単位(SU2)の量は、各場合ともコポリマーのあらゆる構造単位の合計量に基づいて、少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも10モル%、さらにより好ましくは少なくとも15モル%、特に少なくとも20モル%である。
【0027】
好ましくは、(メタ)アクリルコポリマー中の任意の構造単位(SU3)の量は、各場合ともコポリマーのあらゆる構造単位の合計量に基づいて、少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも10モル%、さらにより好ましくは少なくとも20モル%、特に少なくとも40モル%である。
【0028】
好ましくは、本発明によるコポリマーは、少なくとも2つの構造単位(SU1)及び(SU2)と、任意に存在する少なくとも1つのさらなる構造(SU3)との合計量に基づいて、以下のモル%の割合で、
・ 10~70モル%、好ましくは20~60モル%、より好ましくは30~50モル%の構造単位(SU1)、
・ 10~40モル%、好ましくは10~35モル%、より好ましくは10~30モル%の構造単位(SU2)、及び
・ 0~60モル%、好ましくは5又は10又は15~60モル%、より好ましくは、30~50モル%の構造単位(SU3)
を含有する。
【0029】
ここで、本発明のコポリマー内の少なくとも2つの構造単位(SU1)と(SU2)と、任意に存在する少なくとも1つのさらなる構造(SU3)との合計含有量が、全体で100モル%を占めることは、各場合とも当業者には明らかである。
【0030】
好ましくは、本発明の(メタ)アクリルコポリマーは、1,000~200,000g/molの範囲、より好ましくは1,000~100,000g/molの範囲、さらにより好ましくは1,500~50,000g/molの範囲、さらになお好ましくは2,000~20,000g/molの範囲、なおより好ましくは2,000~15,000g/molの範囲の質量平均分子量(M)を有する。
【0031】
本発明で使用するコポリマーの質量平均分子量は、後述の方法(「試験方法」)によって決定される。すなわち、ポリスチレン標準及び溶離液としてのTHFを使用するGPCによって決定される。
【0032】
好ましくは、本発明のコポリマーは非イオン性コポリマーであり、例えば、アンモニウム塩の基などの如何なるイオン性基も含有しない。好ましくは、本発明の(メタ)アクリルコポリマーは、如何なる酸性基も含有せず、特に如何なるカルボン酸基を、遊離形でも塩の形でも含有しない。
【0033】
本発明のコポリマーを調製するための重合反応は、文献で知られているあらゆる方法、例えばフリーラジカル重合、制御/リビングラジカル重合、イオン重合、又は基移動重合(group transfer polymerization)などで行うことができる。本発明のコポリマーの平均分子量及びその分布は、連鎖移動剤の使用又は制御/リビング重合技術の利用によって制御可能であることは、よく知られている。例えば、共重合中に2官能又は高官能のコモノマーを使用する、及び/又は多官能の開始剤及び/又は多官能の連鎖移動剤を利用することで、分岐状又は星型の構造が 得られる。フリーラジカル重合が好ましい。好ましくは、互いに異なる少なくとも2つのエチレン性不飽和モノマーを使用する。これらのモノマーはそれぞれ、少なくとも1つの、好ましくは正確に1つの末端エチレン性不飽和基、すなわち、少なくとも1つのモノマー(s1)及び少なくとも1つのモノマー(s2)を含有する。
【0034】
好ましくは、本発明のコポリマーは、ランダムコポリマー又は構造化コポリマーである。構造化コポリマーは、例えば、ブロックコポリマー、例えば直鎖状ブロックコポリマー、分岐状ブロックコポリマー、星型ブロックコポリマー、勾配コポリマー及び櫛形コポリマーである。よって本発明で使用するコポリマーは、好適なエチレン性不飽和モノマーから誘導される共重合構造単位のランダムな配列、又は勾配状の配列又はブロック状の配列を有していてもよい。
【0035】
特に、本発明のコポリマーは、共重合構造単位のランダムな配列を有する。本発明のコポリマーの構造は、好ましくは直鎖状又は分岐状であり、特に直鎖状である。
【0036】
側鎖(単数又は複数)(S1)
1つ以上の側鎖(S1)は、少なくとも1つのスズ含有部位を含む。前記スズ含有部位は、有機スズ含有部位である。
【0037】
スズ含有ポリマーは一般的に、先行技術から知られている。例えば、メチルメタクリレート及びアセチルジブチルスズメタクリレートから作られるジブロックコポリマー、及びこのコポリマーの形態の研究が、Leiら、J.Organomet.Chem.2011,696,14116~1424に開示されている。トリブチルスズメタクリレートと、異なる低級アルキルメタクリレートとの重合により得られるスズ含有コポリマーは、Ghanemら、European Polymer 1979,15,823~826より知られている。さらに、スチレンと、ブチルアクリレートと、ジブチルシトラコネート及びジブチルマレエートのうちの1つとから作られるコポリマーは、Al-Deyabら、Molecules 2010,15,1784~1797に開示されている。
【0038】
好ましくは、1つ以上の側鎖(S1)は、部分構造(PS1)
【化1】
で表され、
式中、
記号
【化2】
は、コポリマーの主鎖に対する部分構造(PS1)の共有結合を示し、
パラメータaは、0又は1であり、そして
、R及びRは、互いに独立して、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、又は各場合とも7~30個の炭素原子を有するアルキルアリール基又はアリールアルキル基を表す。
【0039】
好ましくは、パラメータaは1であり、そしてR、R及びRは、互いに独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、又は3~20個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基を表す。
【0040】
より好ましくは、パラメータaは1であり、Rは1~8個、特に1~6個又は2~4個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基を表し、そしてR及びRは互いに独立して、1~8個、特に1~6個又は2~4個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基を表す。特に、Rの炭素原子の数は、R及びRの炭素原子の数よりも少ない。
【0041】
本発明のコポリマーのポリマー主鎖の構築、及び1つ以上の側鎖(S1)の組み込みに好適なモノマー(モノマー(s1))の例は、ラウリルジブチルスズ(メタ)アクリレート、アセチルジブチルスズ(メタ)アクリレート及びアセチルジオクチルスズ(メタ)アクリレートである。アセチルジブチルスズ(メタ)アクリレート及びアセチルジオクチルスズ(メタ)アクリレートが特に好ましい。毒性の点においては、アセチルジオクチルスズ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0042】
側鎖(単数又は複数)(S2)
1つ以上の側鎖(S2)は、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を含有する。好ましくは、1つ以上の側鎖(S2)は、少なくとも1つのヒドロキシル基をさらに含有する。
【0043】
好ましくは、ラジカルRは、18~65個の炭素原子、より好ましくは18~60個、さらにより好ましくは19~58個、さらになお好ましくは20~56個、特に25~55個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の非環式脂肪族残基である。
【0044】
残基Rは、好ましくは、脂肪酸、例えば1価カルボン酸脂肪酸(primary carboxylic fatty acid)の脂肪族残基である。「脂肪酸」という用語は、合計19~65個の炭素原子を有する脂肪族C19~C65モノカルボン酸、好ましくは合計19~60個の炭素原子を有する脂肪族C19~C60モノカルボン酸、より好ましくは合計20~58個の炭素原子を有する脂肪族C20-C58モノカルボン酸、特に合計22~56個の炭素原子を有する脂肪族C22-C56モノカルボン酸を特に指し、各場合とも正確に1つの-C(=O)-OH基をそれぞれ有する。ここで、「脂肪族」という表現は、非環状の飽和又は不飽和の、好ましくは不飽和の、分岐又は非分岐(直鎖状)の脂肪族ラジカルを包含する。ここで不飽和脂肪族ラジカルは、少なくとも1つの、好ましくは1、2、3、4、又は5つの、より好ましくは1、2、3、又は4つの、非常に好ましくは1、2、又は3つの炭素二重結合(単数又は複数)を有する。脂肪酸は、天然の又は合成して製造された脂肪酸でよい。例示的な脂肪酸は、ノナデカン酸、アラキジン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、ガドレイン酸、イコセン酸、セトレン酸、エルカシン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸、セルボン酸、ヘキサデカトリエン酸、ルメレン酸、α-パリナリン酸、β-パリナリン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ヘンエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、テトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)、エイコサジエン酸、ポドカルピン酸、ボッセオペンタエン酸、ドコサジエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコサテトラエン酸、テトラコサペンタエン酸、ルーメン酸、パウリン酸、15-ドコセン酸、17-テトラコセン酸、ゴンド酸、ミード酸、エルシン酸およびネルボン酸からなる群から選択される。
【0045】
好ましくは、1つ以上の側鎖(S2)は、部分構造(PS2)
【化3】
で表され、
式中、
記号
【化4】
は、コポリマーの主鎖に対する部分構造(PS2)の共有結合を示し、
パラメータbは、0又は1であり、
パラメータcは、2~20の範囲であり、
は、本明細書中上記で定義した意味を有し、
各Rは、独立して、水素、ヒドロキシル、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、又は3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基を表し、そして
各Rは、独立して、水素、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、又は3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基を表す。
【0046】
好ましくは、パラメータbは1であり、パラメータcは2~10の範囲、特に2~8又は2~6、最も好ましくは3であり、各Rは水素又はヒドロキシルを表し、より好ましくは、ラジカルRのうちの1つはヒドロキシルを示し、残りのラジカルは水素を示し、そして各Rは水素を表す。
【0047】
本発明のコポリマーのポリマー主鎖の構築、及び1つ以上の側鎖(S2)の組み込みに好適なモノマー(モノマー(s2))の例は、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシド官能性(メタ)アクリレートと、少なくとも18個及び特に18~60個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の非環式脂肪族残基を有する1価カルボン酸との反応生成物である。あるいは、モノマー(s2)としてグリシジル(メタ)アクリレートそれ自体を使用することができ、そしてポリマー類似反応でコポリマーを形成した後に、例えば、ジメチルエタノールアミンなどの好適な塩基を触媒として使用して、少なくとも18個又は18~60個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の非環式脂肪族残基を有する1価カルボン酸とのエステル化を行うことができる。
【0048】
あるいは、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシド官能性(メタ)アクリレートの代わりに、単にOH官能性のモノマーを使用することもできる。その場合、このようなモノマーのOH基は、後に、少なくとも8個又は8~40個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の非環式脂肪族残基を有する1価カルボン酸とのエステル化に供することができる。そのようなモノマー(s2)の例は、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、例えばヒドロキシブチルビニルエーテル及びビニルベンジルアルコールである。
【0049】
本発明で使用する1価カルボン酸は、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、少なくとも8個又は8~40個の炭素原子を有する非環式脂肪族残基であり、例えば市販品のUnicid(登録商標)350である。
【0050】
任意のさらなる側鎖(単数又は複数)(S3)
好ましくは、本発明のコポリマーは、そのポリマー主鎖に結合した、側鎖(S1)及び(S2)の両方と異なる少なくともさらに1種類の側鎖(S3)、すなわち、
部分構造(PS3)
【化5】
で表される1つ以上の側鎖(S3)を有し、
式中、Rは、1~30個の炭素原子を有する直鎖状の飽和アルキル基、3~30個の炭素原子を有する分岐状の飽和アルキル基、6~30個の炭素原子を有するアリール基、又は各場合とも7~30個の炭素原子を有するアルキルアリール基又はアリールアルキル基を示す。
【0051】
本発明のコポリマーのポリマー主鎖の構築、及び1つ以上の側鎖(S3)の組み込みに好適なモノマー(モノマー(s3))の例は、脂肪族C~C30モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート)、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルアクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、t-ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルアクリレート、ベヘニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレートである。芳香族C~C30モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであるモノマー(s3)の例は、フェニル(メタ)アクリレートである。芳香脂肪族C~C30-モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであるモノマー(s3)の例は、ベンジルアクリレート及びベンジルメタクリレートである。特に好ましいのは、脂肪族C~C25-モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルであり、最も好ましいのは脂肪族C~C18-モノアルコールの(メタ)アクリル酸エステルである。好ましいモノマーは、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及び2-エチルヘキシルメタクリレートである。最も好ましいのは、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及び2-エチルヘキシルメタクリレートである。
【0052】
本発明のコポリマーのポリマー主鎖を構築し、1つ以上の側鎖(S3)を組み込むためのモノマー(s3)として、他のエチレン性不飽和モノマーを使用することも可能である。すなわち、少なくとも1つのアミノ基を有するようなモノマー、例えばN,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレート、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N-[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、3-ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、2-N-モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N-[3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、2-(tert-ブチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ドデシルアクリルアミド及びN-[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル](メタ)アクリルアミド、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、アリルアミン、及びビニルイミダゾール、並びにN,N-ジエチルアミノスチレン(全異性体)及びN,N-ジエチルアミノ-アルファ-メチルスチレン(全異性体)が挙げられる。これらの例の中では、(メタ)アクリレートベースのモノマー及び(メタ)アクリルアミドベースのモノマーが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーが非常に好ましい。特に好ましいアミノ基含有モノマーは、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリレート及びN,N-ジメチルアミノプロピルメタクリレート又はそれらの混合物である。
【0053】
モノマー(s3)として、他のエチレン性不飽和モノマー、例えばスチレン、アルファ-アルキルスチレン、特にアルファ-メチルスチレン、及び/又はビニルトルエン、ビニル安息香酸(全異性体)、アルファ-メチルビニル安息香酸(全異性体)、及び/又はp-ビニルベンゼンスルホン酸、マレイン酸及び/又はフマル酸及び/又はイタコン酸及びそれらのエステル、アミド、イミド、及び(メタ)アクリル酸、ニトリル、例えばアクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリル、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、及びメトキシポリプロピレングリコールモノアクリレート及びメトキシポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジ(メタ)アクリレートモノマー、トリ(メタ)アクリレートモノマー及びテトラ(メタ)アクリレートモノマーを使用することも可能である。
【0054】
コポリマーの調製
好ましくは、本発明のコポリマーは、モノマー(s1)及び(s2)のうちの少なくとも1つ、さらに任意に少なくともモノマー(s3)、すなわち、
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
の共重合によって得ることができるか、又は、
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換するのに好適な少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させ、続いてポリマー類似反応で、少なくとも1つのモノマー(s2)から得られた構造単位の少なくとも1つの官能基を、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換する
ことによって得ることができる。
【0055】
使用する各モノマー(s1)は、本発明のコポリマーの形成後に各側鎖(S1)の一部となる、少なくとも1つのスズ含有部位を含有する。構造単位(SU1)は、モノマー(s1)の使用によって得られる。各モノマー(s2)は、本発明のコポリマーの形成後に各側鎖(S2)の一部となる、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を含有するか、又はポリマー類似反応におけるコポリマーの形成後に、前記式-O-C(=O)-Rの少なくとも1つのエステル基に変換することができる、エポキシド基などの少なくとも1つの前駆体官能基を含有する。構造単位(SU2)は、モノマー(s2)の使用によって得られる。
【0056】
特に、本発明のコポリマーは、モノマー(s1)及び(s2)のうちの少なくとも1つ、さらに少なくともモノマー(s3)、すなわち
(s1) 10~70モル%、好ましくは20~60モル%、より好ましくは30~50モル%の、少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 10~40モル%、好ましくは10~35モル%、より好ましくは10~30モル%の、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び
(s3) 0~60モル%、好ましくは5又は10又は15~60モル%、より好ましくは30~50モル%の、モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
の共重合によって得ることができるか、又は
(s1) 10~70モル%、好ましくは20~60モル%、より好ましくは30~50モル%の、少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 10~40モル%、好ましくは10~35モル%、より好ましくは10~30モル%の、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換するのに好適な少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、、及び
(s3) 0~60モル%、好ましくは5又は10又は15~60モル%、より好ましくは30~50モル%の、モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させ、続いてポリマー類似反応で、少なくとも1つのモノマー(s2)から得られた構造単位の少なくとも1つの官能基を、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換する
ことによって得ることができ、
ここで、本発明のコポリマーの調製に使用されるあらゆるモノマーの総計は、100モル%まで加算される。
【0057】
コポリマーの調製方法
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つの工程を含む、本発明の(メタ)アクリルコポリマーの調製方法であって、この工程において、
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基を有する少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させてコポリマーを形成するか、又は
(s1) 少なくとも1つのスズ含有部位を含む少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、
(s2) 式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換するのに好適な少なくとも1つの官能基を有する、少なくとも1つの(メタ)アクリルモノマー、及び任意に、
(s3) モノマー(s1)及び(s2)の両方と異なる、少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー
を共重合させてコポリマーを形成し、続いてポリマー類似反応で、少なくとも1つのモノマー(s2)から得られた構造単位の少なくとも1つの官能基を、式-O-C(=O)-R(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の、飽和又は不飽和の、非環式脂肪族残基であり、少なくとも18個の炭素原子を有する)の少なくとも1つのエステル基に変換する。
【0058】
本発明のコポリマー及びその好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したあらゆる好ましい実施形態は、前記コポリマーを調製する本発明の方法の好ましい実施形態でもある。
【0059】
コポリマーの使用
本発明のさらなる主題は、本発明の(メタ)アクリルコポリマーを、触媒として、特にカプセル化された触媒として、コーティング組成物における架橋反応において、及び/又はコーティング組成物のポットライフを延ばすために、及び/又はコーティング組成物の硬化温度を下げるために、使用する方法である。
【0060】
本発明のコポリマー、前記コポリマーを調製する本発明の方法、及びその好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明の使用の好ましい実施形態でもある。
【0061】
コーティング組成物
本発明のさらなる主題は、少なくとも1つのポリマーをバインダー成分(a)として、少なくとも1つの本発明の(メタ)アクリルを成分(b)として含むコーティング組成物である。ここでバインダー成分(a)のポリマーは、成分(b)の(メタ)アクリルコポリマーとは異なる。
【0062】
本発明のコポリマー、前記コポリマーを調製する本発明の方法、本発明の使用方法及びその好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態でもある。
【0063】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、少なくとも1つの(メタ)アクリルコポリマーを成分(b)として、コーティング組成物の合計質量に基づいて、0.05~10質量%の量で、より好ましくは0.1~7.5又は5質量%の量で、さらにより好ましくは0.2~4.5質量%の量で、さらになお好ましくは0.3~4又は3又は2質量%の量で、特に0.4~1.5質量%の量で含有する。
【0064】
コーティング組成物は、水性又は本質的に非水性(すなわち、有機溶媒をベースとする)でよい。好ましくは、コーティング組成物は、少なくとも1つの有機溶媒をベースとし、より好ましくは本質的に非水性である。これは、組成物中に存在する溶媒の量が、主に少なくとも1つの有機溶媒の存在に起因するものであることを意味する。好ましくは、水は意図的に組成物に加えられない。しかし、組成物の調製に使用される1つ以上の成分が水(の残留物)を含有することがあるので、組成物が水を含まないとは断定されない。
【0065】
コーティング組成物中に存在する少なくとも1つの有機溶媒の量は、組成物の合計質量に基づいて、好ましくは5~50質量%の範囲であり、より好ましくは10~40質量%の範囲である。
【0066】
バインダー成分(a)の少なくとも1つのポリマーは、好ましくは、少なくとも1つの架橋性官能基を有する。ここで、当業者に知られている任意の通常の架橋性官能基が可能である。特に、架橋性官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボン酸基、及びエポキシドからなる群から選択される。特に好ましいのは、ヒドロキシル基である。好ましくは、前記少なくとも1つのポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物、及びそれらのハイブリッドポリマー、例えばポリウレタン(メタ)アクリレートからなる群から選択される。ポリ(メタ)アクリレートのようなポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーでよい。特に好ましいのは、OH官能性ポリ(メタ)アクリレート、例えばOH官能性(メタ)アクリルコポリマー及び/又はOH官能性ポリエステルである。
【0067】
バインダー成分(a)は、メラミン樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、遊離及び/又はブロックされたポリイソシアネートなどの第2のポリマーを含んでよい。好ましくは、バインダー成分(a)は、第2のポリマーとして少なくとも1つのポリイソシアネート(好ましくはブロックされている)を含む。特に、そのような好ましくはブロックされているポリイソシアネートは、OH官能性(メタ)アクリルコポリマーなどの少なくとも1つのOH官能性ポリマーと組み合わせて使用される。
【0068】
コーティング組成物中に存在するバインダー成分(a)の少なくとも1つのポリマーの量は、好ましくは、組成物の合計質量に基づいて、10~70質量%の範囲、より好ましくは15~60質量%の範囲、さらにより好ましくは20~55質量%の範囲である。
【0069】
コーティングの方法
さらなる主題は、少なくとも1つの工程(1)、すなわち、(1)本発明のコポリマーを含有する本発明のコーティング組成物を基材に適用する工程、を含む、基材のコーティング方法である。
【0070】
本発明のコポリマー、前記コポリマーを調製する本発明の方法、本発明の使用方法、本発明のコーティング組成物及びその好ましい実施形態に関連して本明細書で上述したあらゆる好ましい実施形態は、本発明のコーティング方法の好ましい実施形態でもある。
【0071】
好ましくは、コーティング組成物は、プライマー又はクリアコート組成物、特にクリアコート組成物である。よって使用する基材は、好ましくは少なくとも1つのコーティング層を有し、本発明のコーティング組成物は前記層上に適用する。基材は、金属製であってよく、又は少なくとも部分的にプラスチック製であってもよい。
【実施例
【0072】
方法
1. 固形物
固形物の量は、DIN EN ISO3251:2008-06により、110℃で60分間決定した。
【0073】
2. 数平均及び質量平均分子量
本発明のコポリマー又はその任意の前駆体の数平均(M)及び質量平均(M)分子量及び分子量分布は、GPC-分析(ゲル浸透クロマトグラフィー分析)により、DIN55672-1:2007-08に準拠して、40℃で高圧液体クロマトグラフィーポンプを使用して決定した。コポリマーに使用する溶離液はテトラヒドロフランであり、溶出速度は1ml/分であった。従来の校正は、ポリスチレン標準を使用して行った。
【0074】
3. 粘度測定
適用例(実験部分の項目4.及び5.参照)の粘度は、Brookfield1/23CAP2000+L粘度計で24℃又は40℃で決定した。Kegel CAP-06を使用する。実施例2A~2C(実験部分の項目2.参照)の粘度は、Brookfield CAP2000+H粘度計で60℃で決定した。Kegel CAP-03を使用した。
【0075】
4. 硬化開始温度
硬化開始温度は、Rheometrics DMTA Mark V動的熱機械分析(DMTA)を使用して、表1に記載の構成で決定した。
【0076】
【表1】
【0077】
各サンプルは、あらかじめDMTAに取り付けておいた単層のグラスファイバーのひもに堆積(数滴)させた(引張形状)。
【0078】
サンプルは以下の時間/温度掃引プログラムで測定した。
1. サンプルを最初に25℃(77°F)まで冷却する。
2. 毎分2°K(5.4°F)の昇温速度で、200℃(392°F)まで加熱する。
【0079】
実施例(実験部分)
以下の実施例により、本発明をさらに説明するが、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。以下では、表に記載するすべての量は、他に示されていない場合、質量部である。
【0080】
1. 有機スズ(メタ)アクリレートモノマー(モノマー(s1))の合成
実施例1A:アセチルジブチルスズメタクリレート
111.65gのジブチルスズオキシド及び200mLのトルエンを、熱電対、コンデンサ、N入口及びパドルブレード撹拌器を備えた500mLの丸底フラスコに加えた。得られた懸濁液をNブランケット下で50℃に加熱し、20mLのトルエン中39.01gのメタクリル酸を30分かけて加えた。均一な溶液が得られるまで、反応混合物の撹拌を50℃で2時間続けた。その後、反応混合物を室温まで冷却し、続いて20mLのトルエン中29.63gの酢酸を20分かけて加えた。反応器の内容物を室温で2時間撹拌した後、ろ過を行った。溶液を回収し、減圧下で揮発性成分を除去した。残留液を、減圧下50℃で1時間乾燥させると、生成物が無色の液体として残った。
【0081】
実施例1Aの調製の反応機構を以下に示す:
【化6】
【0082】
実施例1B: ラウリルジブチルスズメタクリラート
90.11gのジブチルスズオキシド及び150mLのトルエンを、熱電対、コンデンサ、N入口、パドルブレード撹拌器を備えた500mLの丸底フラスコに加えた。得られた懸濁液をNブランケット下で50℃に加熱し、20mLのトルエン中31.50gのメタクリル酸を30分かけて加えた。均一な溶液が得られるまで、反応混合物の撹拌を50℃で2時間続けた。その後、反応混合物を室温まで冷却し、続いて100mLのMEK中40.05gのラウリン酸を1時間かけて加えた。反応器の内容物を室温でさらに2時間撹拌した後、ろ過を行った。溶液を回収し、減圧下で揮発性成分を除去した。残留液を減圧下50℃で1時間乾燥させると、生成物が無色の液体として残った。
【0083】
実施例1C:アセチルジオクチルスズメタクリレート
40.75gのジオクチルスズオキシド及び150mLのトルエンを、熱電対、コンデンサ、N入口、パドルブレード撹拌器を備えた500mLの丸底フラスコに加えた。得られた懸濁液をNブランケット下で50℃に加熱し、10mLのトルエン中9.71gのメタクリル酸を加えた。均一な溶液が得られるまで、反応混合物の撹拌を50℃で2時間続けた。その後、反応混合物を室温まで冷却し、続いて10mLのトルエン中7.11gの酢酸を加えた。反応器の内容物を室温でさらに2時間撹拌した後、ろ過を行った。溶液を回収し、減圧下で揮発性成分を除去した。残留液を、減圧下50℃で1時間乾燥させると、生成物が無色の液体として残った。
【0084】
2. 有機スズポリマーの合成
実施例2A:
スズ含有ポリマーを以下の原料から調製した。
【0085】
【表2】
【0086】
VAZO(登録商標)67は、市販のラジカル開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))である。Unicid(登録商標)350Acidは、直鎖状の1価カルボン酸脂肪酸を含有する市販の製品である。Solvesso(登録商標)100は、市販の有機溶媒混合物である。
【0087】
撹拌機、熱電対、コンデンサー、N入口を備えた反応器に装填物1を加えた。Nブランケットを適用し、反応混合物を105℃に加熱した。2滴のジメチルエタノールアミンを装填物1に加え、反応器の内容物を105℃で4時間撹拌した。その後、反応混合物を100℃に冷却し、装填物2を60分かけて添加した。完了後、装填物2のすすぎとして装填物3を加えた。反応混合物を100℃で120分間保持した。得られた材料は、60℃より上の温度では透明な樹脂であったが、室温ではワックス状の固体であった。固形分(110℃、1時間)は60.07%であり、その粘度は60℃で233.2cpsであった。
【0088】
実施例2B:
スズ含有ポリマーを以下の原料から調製した。
【0089】
【表3】
【0090】
撹拌器、熱電対、コンデンサー、N入口を備えた反応器に、装填物1を加えた。Nブランケットを適用し、反応混合物を105℃に加熱した。2滴のジメチルエタノールアミンを加え、反応器の内容物を105℃で4時間撹拌した。その後、反応混合物を100℃に冷却し、装填物2を50分かけて加えた。完了後、装填物2のすすぎとして装填物3を加えた。反応混合物を100℃で120分間保持した。得られた材料は、60℃より上の温度では透明な樹脂であったが、室温ではワックス状の固体であった。固形分(110℃、1時間)は60.59%であり、その粘度は60℃で67.5cpsであった。
【0091】
実施例2C:
スズ含有ポリマーを以下の原料から調製した。
【0092】
【表4】
【0093】
撹拌器、熱電対、コンデンサ、N入口を備えた反応器に、装填物1を加えた。Nブランケットを適用し、反応混合物を105℃に加熱した。2滴のジメチルエタノールアミンを加え、反応器の内容物を105℃で4時間撹拌した。その後、反応混合物を100℃に冷却し、装填物2を60分かけて加えた。完了後、装填物2のすすぎとして装填物3を加えた。反応混合物を100℃で120分間保持した。得られた材料は、60℃より上の温度では透明な樹脂であったが、室温ではワックス状の固体であった。固形分(110℃、1時間)は58.33%であり、その粘度は60℃で71.3cpsであった。
【0094】
3. ポリ(メタ)アクリレートポリオールの合成
実施例3:ポリ(メタ)アクリレートポリオールの調製
窒素でフラッシュし、コンデンサに適合させた反応器に、157.90質量部のアミルアセテートを入れ、この初期装填物を撹拌しながら142℃に加熱した。これと並行して、2つの別々の供給物を準備した。供給物1は、307.78質量部の2-ヒドロキシエチルメタクリレート、98.86質量部の2-エチルヘキシルメタクリレート、63.41質量部の2-エチルヘキシルアクリレート、151.72質量部のシクロヘキシルメタクリレート、及び7.77質量部のSolvesso(登録商標)100からなっていた。供給物2は、68.40質量部のtert-ブチルペルオキシアセテート(無臭のミネラルスピリット中50wt.%)及び7.77質量部のSolvesso(登録商標)100からなっていた。温度が142℃に達した時点で、供給物1及び2を240分の時間をかけて同時に均一な速度で計量した。計量添加の終了後、反応混合物を後共重合のために142℃でさらに45分間撹拌した。供給物3は、6.39質量部のtert-ブチルペルオキシアセテート(無臭のミネラルスピリット中50質量%)及び3.94質量部のSolvesso(登録商標)100からなり、30分の時間をかけて均一な速度で計量した。計量添加の終了後、反応混合物を後重合のために142℃でさらに60分間攪拌した。得られた生成物の固形分を116.06質量部のアミルアセテートで調整し、67.0%、OH価213.4mgKOH/g(固形分に基づく)、粘度(23℃)38dPa・Sと決定した。
【0095】
4. コーティング組成物の調製
実施例A、B及びC:ポリマー触媒として実施例2A、2B又は2Cのいずれかに1つによるスズ含有ポリマーを含有するコーティング組成物の調製。触媒量は、同じスズ当量となるように調整した。
【0096】
表1に記載の成分を混合カップに加えて混合し、実施例A~Cを得た。Desmodur(登録商標)PL350MPA/SNは、市販の脂肪族ブロックポリイソシアネートである。BYK(登録商標)325は、表面添加剤として使用される市販の変性ポリシロキサンである。
【0097】
比較例である比較例1及び比較例2:如何なるスズ含有触媒も含有しない比較例コーティング組成物(比較例1)、又は市販の非ポリマースズ触媒、すなわちモノマースズ触媒としてジブチルスズジラウレートを含有する製品Durastab(登録商標)LT-2DBTDLを含有する比較例コーティング組成物(比較例2)の調製。
【0098】
表1に記載の原料を混合カップに加えて混合し、比較例である比較例1及び比較例2を得た。
【0099】
【表5】
【0100】
5. 適用及び性能
実施例A、B及びC、並びに比較例1及び比較例2の粘度を、調製直後(初期)及び24℃又は40℃で1ヶ月間貯蔵した後に測定した。さらに、硬化開始温度E’及びタンデルタも測定した。すべての測定は、本明細書で開示の方法に従って行った。結果を表2に示す。
【0101】
【表6】